ふ〇なっしー(1st)-ヒガンバナ(11th)
【ふ〇なっしー】
「うへぇ………やっぱりクソみたいな事始めたなぁ………よりによって殺せか〜はは!めんどくさいなぁ」
いつもの南エリアにある映画館、そこのステージのど真ん中に座りながら独り言を呟く
「さぁて……誰が私を殺すかなぁ?楽しみだなぁ〜どんな殺人鬼予備軍が来るのやら……エムちゃんとかだったら楽しそうな気がする」
【ヒガンバナ】
「やはり貴様は狂っている様だな、1st。」
独り言が聞こえた、あの狂った奴の声が。
たまたま足を踏み入れてしまったので、見つけてしまった、忌々しい相手。
「…………始まってしまったな……貴様は、どうするつもりだ?」
【ふ〇なっしー】
「べーつになんもしないさ、このまま傍観者するよ〜面倒臭いし」
そういうと寝転がるふ○なっしー。まぁ、ガチでなったら普通に殺人鬼予備軍になるだけだし。
真面目にやるつもりもないし殺すつもりもない
「んん〜気になるところがあるんだけどさぁ……僕……1stって言ってないしそもそもフリッツとしか名乗ってないよ?なんで君がそれを知れたのかは疑問だけどまぁ、これは関係ない………君はどうしたい?殺して家族の元へ帰る?仲間と協力する?それとも俺と同じで傍観者になる?さぁ、どっち?」
胡座をかきながら問い掛ける、結構家族愛とか友愛とか強そうだ……恐らく協力を選びそうな気がする
【ヒガンバナ】
「……私は、傍観などしない。
Azothを殺せと言うなら、私は殺す。
仲間と共に、ここを出る。」
相手にとっては予想通りの答えだろうか?
だが、私はこれ以外の選択肢はない。
「……、もしも、私達を害するならば、貴様も斬るがな。」
【ふ〇なっしー】
「うわぁ……偽善者?いや……ちょっと違うな……上っ面だけの友情?僕は思うんだけどさぁ……仲間と共に出るって言うけど、そのアゾートも君の仲間かもしれないよ?クラスのそれちゃんと考えてる?というか僕も斬るとか言ってるけどさ、クラスメイト斬るの?やべぇっしょwwwうわぁ……殺人鬼予備軍がいるわァ……怖いわぁ……へへwww」
アゾートがクラスメイトの可能性がある……いや十中八九クラスメイトだろう。このメンバーはクラスメイト全員つまり同じ机を並べて学んだ仲間、それをあっさりと殺すと言う所を見ると結構狂ってる
「結構さぁ……君殺しに関して戸惑いってのが無いよね〜、あれかい?サイコパスって奴?占いで占ったら占い師が死ぬ奴?怖いわぁ怖いわぁ」
【ヒガンバナ】
「……何とでも言え。」
サイコパス。
確かに、こんなに割り切ってしまっていれば、そう捉えられるかもしれない。
だが、もう覚悟は決めた。
「……やはり、貴様と話しても無駄な時間を使うだけらしい。
ではな。」
そうして私は、早々に立ち去ろうとする。
【ふ〇なっしー】
「えーちょっと待ってよぉー、俺暇してんのよ〜なんかゲームやろうぜ?そうだなぁ……前やった蝋燭の奴とかどう?負けたら………君の大切な何かが無くなってしまう……とかどうよ?まぁ嫌ならポーカーとか謎掛けでもいいけどね〜」
とヘラヘラしながらトランプをポケットの中から取り出す。
上半身だけ起こしトランプをシャッフルしながらニヤニヤしながらカードを広げる
「いまさっきもそうだけどさ……斬るとか強い言葉使った君が逃げるとか無いよねぇ〜?弱い僕が持ちかけるゲームからさ」
【ヒガンバナ】
「…………遊んでいる暇は、無いのだが?」
ゆっくりと振り向くと、そう言ってやる。
こうして立ち止まって受け答えしているだけでも、時間が過ぎると言うのに。
「……ポーカー……確か一本勝負出来たな。
それだけなら、やってやろう。」
一発勝負。
それなら、直ぐに終わる。
【ふ〇なっしー】
「お?やる?やるのー?へへへへ、いいぜぇ〜やろうぜ〜……ん〜そうだなぁ……負けたら何する?」
カードを5枚配る、自分にもヒガンバナにも。
「そうだなぁ………負けたら……仲間を教えるとかどう?いや……それじゃぁダメだなぁ………大切な人の名前を教えるとか?うん、いいね。そうしよう」
【ヒガンバナ】
「良いだろう。」
私はカードを受け取り、確認。
……二枚、交換した。
「……行くぞ?」
手札を公開した。
【ふ〇なっしー】
「はいはーい」
チェンジ無しで公開
【ヒガンバナ】
「……私の勝ちだ。」
……危ない。ツーペア出来たのは奇跡と言うか、運でしかない。
これだから賭け事は本当は嫌いなのだ。
「……さて、約束はどうする?」
【ふ〇なっしー】
「…………へへ!!守るわけねぇじゃァァァん!!!ばーかばーか!」
と素早くトランプを回収……脱兎の如く逃げさろうと……
「約束とルールは破る為にある!!!」
ヘラヘラ笑いながら逃げようと←
【ヒガンバナ】
「……まあ、端から信用してないがな。」
逃げるなら追うまい。
私も、まともに答えるつもりは無かったし、おあいこだ。
私も、映画館を後にした。
【ふ〇なっしー】
「うへぇ………やっぱりクソみたいな事始めたなぁ………よりによって殺せか〜はは!めんどくさいなぁ」
いつもの南エリアにある映画館、そこのステージのど真ん中に座りながら独り言を呟く
「さぁて……誰が私を殺すかなぁ?楽しみだなぁ〜どんな殺人鬼予備軍が来るのやら……エムちゃんとかだったら楽しそうな気がする」
【ヒガンバナ】
「やはり貴様は狂っている様だな、1st。」
独り言が聞こえた、あの狂った奴の声が。
たまたま足を踏み入れてしまったので、見つけてしまった、忌々しい相手。
「…………始まってしまったな……貴様は、どうするつもりだ?」
【ふ〇なっしー】
「べーつになんもしないさ、このまま傍観者するよ〜面倒臭いし」
そういうと寝転がるふ○なっしー。まぁ、ガチでなったら普通に殺人鬼予備軍になるだけだし。
真面目にやるつもりもないし殺すつもりもない
「んん〜気になるところがあるんだけどさぁ……僕……1stって言ってないしそもそもフリッツとしか名乗ってないよ?なんで君がそれを知れたのかは疑問だけどまぁ、これは関係ない………君はどうしたい?殺して家族の元へ帰る?仲間と協力する?それとも俺と同じで傍観者になる?さぁ、どっち?」
胡座をかきながら問い掛ける、結構家族愛とか友愛とか強そうだ……恐らく協力を選びそうな気がする
【ヒガンバナ】
「……私は、傍観などしない。
Azothを殺せと言うなら、私は殺す。
仲間と共に、ここを出る。」
相手にとっては予想通りの答えだろうか?
だが、私はこれ以外の選択肢はない。
「……、もしも、私達を害するならば、貴様も斬るがな。」
【ふ〇なっしー】
「うわぁ……偽善者?いや……ちょっと違うな……上っ面だけの友情?僕は思うんだけどさぁ……仲間と共に出るって言うけど、そのアゾートも君の仲間かもしれないよ?クラスのそれちゃんと考えてる?というか僕も斬るとか言ってるけどさ、クラスメイト斬るの?やべぇっしょwwwうわぁ……殺人鬼予備軍がいるわァ……怖いわぁ……へへwww」
アゾートがクラスメイトの可能性がある……いや十中八九クラスメイトだろう。このメンバーはクラスメイト全員つまり同じ机を並べて学んだ仲間、それをあっさりと殺すと言う所を見ると結構狂ってる
「結構さぁ……君殺しに関して戸惑いってのが無いよね〜、あれかい?サイコパスって奴?占いで占ったら占い師が死ぬ奴?怖いわぁ怖いわぁ」
【ヒガンバナ】
「……何とでも言え。」
サイコパス。
確かに、こんなに割り切ってしまっていれば、そう捉えられるかもしれない。
だが、もう覚悟は決めた。
「……やはり、貴様と話しても無駄な時間を使うだけらしい。
ではな。」
そうして私は、早々に立ち去ろうとする。
【ふ〇なっしー】
「えーちょっと待ってよぉー、俺暇してんのよ〜なんかゲームやろうぜ?そうだなぁ……前やった蝋燭の奴とかどう?負けたら………君の大切な何かが無くなってしまう……とかどうよ?まぁ嫌ならポーカーとか謎掛けでもいいけどね〜」
とヘラヘラしながらトランプをポケットの中から取り出す。
上半身だけ起こしトランプをシャッフルしながらニヤニヤしながらカードを広げる
「いまさっきもそうだけどさ……斬るとか強い言葉使った君が逃げるとか無いよねぇ〜?弱い僕が持ちかけるゲームからさ」
【ヒガンバナ】
「…………遊んでいる暇は、無いのだが?」
ゆっくりと振り向くと、そう言ってやる。
こうして立ち止まって受け答えしているだけでも、時間が過ぎると言うのに。
「……ポーカー……確か一本勝負出来たな。
それだけなら、やってやろう。」
一発勝負。
それなら、直ぐに終わる。
【ふ〇なっしー】
「お?やる?やるのー?へへへへ、いいぜぇ〜やろうぜ〜……ん〜そうだなぁ……負けたら何する?」
カードを5枚配る、自分にもヒガンバナにも。
「そうだなぁ………負けたら……仲間を教えるとかどう?いや……それじゃぁダメだなぁ………大切な人の名前を教えるとか?うん、いいね。そうしよう」
【ヒガンバナ】
「良いだろう。」
私はカードを受け取り、確認。
……二枚、交換した。
「……行くぞ?」
手札を公開した。
【ふ〇なっしー】
「はいはーい」
チェンジ無しで公開
【ヒガンバナ】
「……私の勝ちだ。」
……危ない。ツーペア出来たのは奇跡と言うか、運でしかない。
これだから賭け事は本当は嫌いなのだ。
「……さて、約束はどうする?」
【ふ〇なっしー】
「…………へへ!!守るわけねぇじゃァァァん!!!ばーかばーか!」
と素早くトランプを回収……脱兎の如く逃げさろうと……
「約束とルールは破る為にある!!!」
ヘラヘラ笑いながら逃げようと←
【ヒガンバナ】
「……まあ、端から信用してないがな。」
逃げるなら追うまい。
私も、まともに答えるつもりは無かったし、おあいこだ。
私も、映画館を後にした。
聖☆ビキニマン(14th)-唐揚げ食べたい(18th)
【唐揚げ食べたい】
「………遂に、」
(嗚呼、始まってしまった。
やはり予測通り、これは宛ら"人狼ゲーム"といったところか。
リュックの中には、一つのアイテム。…まあ、使い所は不明……というより。
唐揚げを作るだけの自分にとってはあまり関係ないものか。
今まで買ったものを丸々リュックに詰め込んで、雪像アート展の付近を通っている。)
「……早速、面白いことになってきたな。」
(コロパットの共有チャットを眺めては、フフ…と密かに笑う。
まるで、全てを見守る傍観者かのように。
自身も参加者であるのにこんな態度を取るのは、"彼女"の演劇が故であろうか。)
【聖☆ビキニマン】
「……おい」
そんな彼の側に、巨漢が歩み寄る。
「汝、これに参加するつもりか?」
その顔色は険しく。しかしその瞳には、確かにクラスメートへの、その絆への信頼が浮かんでいる。
【唐揚げ食べたい】
「おん?」
(急に話しかけられ、困惑の表情。
丁度共有チャットに文章を送った時の為に、軽い不意を突かれてしまった。
おっと、と軽く距離を取ってはコロパットをしまい。
嗚呼、コイツもクラスメイト"だった人"か。)
「まァー…俺としては参加したくないけどよ、これどうせ強制参加だろ?
つまりお前も俺も参加してる状態なわけだ。
あ、殺したりはしないから安心してくれよ!だって俺たちクラスメイトだもんな。」
(と、軽く受け答え。
特に敵意を与えるようなことは言っていないはずだ、大丈夫。
こんな状態だとどんな行動や言動が相手の気に触れるか分からないが、出来るだけハッチャケようと思う。)
【聖☆ビキニマン】
「……ふん、どうだかな。この非常時に、巫山戯た態度は目に余る。…だが、信用しよう。クラスメートだからな。」
親愛に満ち満ちた笑み。
「それで、汝。名は?……ああ、信用できぬのなら偽名でも良い。そもそも、おいそれと口に出せぬのは承知している。吾の名は既にチャットに書き込んだがな。」
【唐揚げ食べたい】
「俺か?
俺は"唐揚げ食べたい"ってんだ!唐揚げくんって呼んでくれよな!」
(と、自己紹介。
何の変哲もなく、ゲームが始まる前と変わらぬ言葉。
これが一番いいのだ。無駄なことを一切言わず、偽名を教え呼び方を指定する。
だって、人それぞれで呼び方が違うと紛らわしいだろ?
情なんて、要らないもの。
まあ、嘘かもしれないけど。)
「お前はー…あれだ!ビキニマンだったよな?
チャットの名前が本名かは知らねーが、本当に本名だった時殺したくねーからな!
一応偽名で呼んでおくぜ!あ、フレンド申請送っとくな」
(まあ、本音。出来る限り人を殺したくはないし、出来るなら全員で此処を出たい。
どうせ、無理なんだろうけど。
諦めの感情が渦を巻き。此処で信頼なんざ出来るわけもなく。
とはいえ、輪を広めるのは大切だから。
形式上、"ともだち"として業務的に登録することにしておこう。)
【聖☆ビキニマン】
「……ふっ」
少し考えた後、柔らかく微笑む。
「案ずるな。人を信じろ。…このような茶番に負けるほど、吾の友は、希望は、弱くなどないさ。だから汝は、胸を張ってこう言えばいい。」
一旦切る。
相手の目を、しっかり直視して。
「唐揚げくん、いいか、確かにこう言うんだ。“自分は大丈夫だ”、とな。汝が大丈夫である限り、汝の友もまた大事ない。……支え合うのが友であろう。」
不安気な相手を見て、思わず口を突いた言葉。
全て本心。……この状況に怖がる自分はいる。だがそれは、友を怖がる理由にはならないのだと、巨漢は締めくくり。
【唐揚げ食べたい】
「…………………。」
(暫し、沈黙。
彼の言葉は、自分にとっては深く刺さるような。深イイ話を聞いてるかのような、そんな気分。
というのは、嘘であり。
彼の言葉如きで不安が取り除かれ、全ての人間を信用することなど出来るわけもなく。
目の前の"喝"とやらを入れてくれた彼にすら警戒しているのだから、そうそうこの感情が消えることなどないのだろう。
まあ、……なんてお決まりセリフは。当然その後に付いて来るわけで。)
「"自分は大丈夫だ"…か。
ありがとう、ビキニマン!俺なんか安心できたよ。
クラスメイトだし疑うのは良くないもんな!」
(だけど今は、笑っておこう。上手く笑えているだろうか、なんて心配は置いて。
彼が心からクラスメイトを信用しているのかは知らないが、兎に角。
少なくとも現時点で、目の前の彼は"敵ではない"と。そう断定してもいいのか。
…嗚呼、この良心溢れる姿すら演技かも、なんて疑うのは悪い癖か。)
【聖☆ビキニマン】
「……疑うのは悪いことではないさ。ただ、ああ。信じるのは、それ以上に良いことだ。それを分かっているのなら、良い。」
とはいえ、疑わざるを得ない状況にしたのは、目の前の唐揚げくんじゃあない。
「吾もまた、“覚悟”しよう。…助けが欲しくば、いつでも呼べ。吾は……手の届く限り、誰も殺させん。誰も、だ。」
【唐揚げ食べたい】
「………ああ、ありがとう。人の手が増えるのは嬉しいね。
お前もさ、なんかあったらいつでも連絡くれよな。こっちが忙しくなきゃ、出来る限り協力してやるぜ」
(ニコリ、と笑って。
此処は一旦、協力関係を築いて置こう。
グラグラの足場に作られた、その関係を作っておこう。
嗚呼、素晴らしいね。こういうの。
こういう、人間らしい感じ。上部面だけの。
どうせ裏切るんだろう、なんて思いながら。
もしずっと協力関係が作られたままなら、それはそれで。
どちらにせよ、素晴らしい。)
「じゃ、俺さ。…そろそろ行くよ!ずっと此処で話してても何の解決にもならねーしな!」
(と言って、ビキニマンから離れようと歩き始め。
その通り、何も進歩しない。
進歩しないなら死ぬ危険性もないが、その危険性を考慮してでも今は進歩するべきだ。
だから、俺さ。
もうちょっと頑張ってみるよ、キョーカ姉さん。)
【聖☆ビキニマン】
「ああ!お互い頑張ろうな。」
学校にいた時のような、前を向いた会話が心地好い。この関係は、尊く重いものだと実感する。
唐揚げくんと、反対方向を探索しに。
立ち止まる。
「ああ、そうだ。情報は共有出来ぬだろうか?知れることは、多い方が良い。」
【唐揚げ食べたい】
「じゃあな─────って、ん?」
(突然の声。振り向いて、対応してみる。
正直始まったばかりで何も分かっちゃいないが、…情報共有は有りだと踏んで。)
「何の情報だ?」
(そう、そこが問題。
所属?───Azoth、だとかなんかあった気がする。
ゾディアック?───特殊能力みたいなのだったか。
はたまた、本名?───それは流石に、厳しいが。
別のこと?───そういやアイテムとかもあったな。
何にせよ、信頼していない相手に教える情報なんか殆どないわけだが。)
【聖☆ビキニマン】
「なんでも、だ。……言いたい範囲をな。そう怖い顔をするでない。吾は、汝を信頼している。だからこそ、汝に教えたいのだ。…友とは。そういうものだろう。」
つまりこの提案は、“契約”ではなく“善意”。
伝えたいことを伝えよう。伝えたくないなら伝えなくていい。……そんな、なんの効力もないことを言っていた。
「例えば…吾の名はもう教えたな?ぞでぃあっくとやらは天秤座だ。所属はなく、貰ったアイテムは用具箱。……これに関しては証明も出来る。」
用具箱を取り出し、見せて。
「……吾が信用できないなら、それでいい。ただ、重ねて言うが吾は汝を信頼している。…ただそれだけのことよ。」
【唐揚げ食べたい】
「……へぇ?」
(なるほど、これで信頼度を測れと。
嗚呼、面倒くさい。どうしてこんな面倒なことを思い付いたのやら。
此処で色々と教えれば、信頼は得れる。然し、教えれば教えるほど自身の肩身は狭くなる。
そうか、ふむ。さて、どうしようか…。)
「……分かった。
じゃあ、そうだ。"個別チャット"に現時点で言える情報を送っておくよ。
誰かに聞かれててもおかしくないからな、なんてな。そんな警戒してるわけじゃないが、念には念を入れてって奴だ。」
(と、一先ず時間を取ろう。少し、考えたい。…と言っても、別にそこまで考えるようなものじゃないが。
一歩二歩、と。また彼から離れ。同じように、その場を去ろうとし。
このまま見送っても、唐揚げのことを止めても。"メッセージ"は送られてくることであろう。)
「んじゃ、改めてまたな。
お前の善意、受け止めたぜ!」
【聖☆ビキニマン】
「……ああ。」
……本意通りに受け取ってくれただろうか。
ただ。言えることは全て言った。……後はもう、彼次第だ。
ただただ見送って。
【唐揚げ食べたい】
「………遂に、」
(嗚呼、始まってしまった。
やはり予測通り、これは宛ら"人狼ゲーム"といったところか。
リュックの中には、一つのアイテム。…まあ、使い所は不明……というより。
唐揚げを作るだけの自分にとってはあまり関係ないものか。
今まで買ったものを丸々リュックに詰め込んで、雪像アート展の付近を通っている。)
「……早速、面白いことになってきたな。」
(コロパットの共有チャットを眺めては、フフ…と密かに笑う。
まるで、全てを見守る傍観者かのように。
自身も参加者であるのにこんな態度を取るのは、"彼女"の演劇が故であろうか。)
【聖☆ビキニマン】
「……おい」
そんな彼の側に、巨漢が歩み寄る。
「汝、これに参加するつもりか?」
その顔色は険しく。しかしその瞳には、確かにクラスメートへの、その絆への信頼が浮かんでいる。
【唐揚げ食べたい】
「おん?」
(急に話しかけられ、困惑の表情。
丁度共有チャットに文章を送った時の為に、軽い不意を突かれてしまった。
おっと、と軽く距離を取ってはコロパットをしまい。
嗚呼、コイツもクラスメイト"だった人"か。)
「まァー…俺としては参加したくないけどよ、これどうせ強制参加だろ?
つまりお前も俺も参加してる状態なわけだ。
あ、殺したりはしないから安心してくれよ!だって俺たちクラスメイトだもんな。」
(と、軽く受け答え。
特に敵意を与えるようなことは言っていないはずだ、大丈夫。
こんな状態だとどんな行動や言動が相手の気に触れるか分からないが、出来るだけハッチャケようと思う。)
【聖☆ビキニマン】
「……ふん、どうだかな。この非常時に、巫山戯た態度は目に余る。…だが、信用しよう。クラスメートだからな。」
親愛に満ち満ちた笑み。
「それで、汝。名は?……ああ、信用できぬのなら偽名でも良い。そもそも、おいそれと口に出せぬのは承知している。吾の名は既にチャットに書き込んだがな。」
【唐揚げ食べたい】
「俺か?
俺は"唐揚げ食べたい"ってんだ!唐揚げくんって呼んでくれよな!」
(と、自己紹介。
何の変哲もなく、ゲームが始まる前と変わらぬ言葉。
これが一番いいのだ。無駄なことを一切言わず、偽名を教え呼び方を指定する。
だって、人それぞれで呼び方が違うと紛らわしいだろ?
情なんて、要らないもの。
まあ、嘘かもしれないけど。)
「お前はー…あれだ!ビキニマンだったよな?
チャットの名前が本名かは知らねーが、本当に本名だった時殺したくねーからな!
一応偽名で呼んでおくぜ!あ、フレンド申請送っとくな」
(まあ、本音。出来る限り人を殺したくはないし、出来るなら全員で此処を出たい。
どうせ、無理なんだろうけど。
諦めの感情が渦を巻き。此処で信頼なんざ出来るわけもなく。
とはいえ、輪を広めるのは大切だから。
形式上、"ともだち"として業務的に登録することにしておこう。)
【聖☆ビキニマン】
「……ふっ」
少し考えた後、柔らかく微笑む。
「案ずるな。人を信じろ。…このような茶番に負けるほど、吾の友は、希望は、弱くなどないさ。だから汝は、胸を張ってこう言えばいい。」
一旦切る。
相手の目を、しっかり直視して。
「唐揚げくん、いいか、確かにこう言うんだ。“自分は大丈夫だ”、とな。汝が大丈夫である限り、汝の友もまた大事ない。……支え合うのが友であろう。」
不安気な相手を見て、思わず口を突いた言葉。
全て本心。……この状況に怖がる自分はいる。だがそれは、友を怖がる理由にはならないのだと、巨漢は締めくくり。
【唐揚げ食べたい】
「…………………。」
(暫し、沈黙。
彼の言葉は、自分にとっては深く刺さるような。深イイ話を聞いてるかのような、そんな気分。
というのは、嘘であり。
彼の言葉如きで不安が取り除かれ、全ての人間を信用することなど出来るわけもなく。
目の前の"喝"とやらを入れてくれた彼にすら警戒しているのだから、そうそうこの感情が消えることなどないのだろう。
まあ、……なんてお決まりセリフは。当然その後に付いて来るわけで。)
「"自分は大丈夫だ"…か。
ありがとう、ビキニマン!俺なんか安心できたよ。
クラスメイトだし疑うのは良くないもんな!」
(だけど今は、笑っておこう。上手く笑えているだろうか、なんて心配は置いて。
彼が心からクラスメイトを信用しているのかは知らないが、兎に角。
少なくとも現時点で、目の前の彼は"敵ではない"と。そう断定してもいいのか。
…嗚呼、この良心溢れる姿すら演技かも、なんて疑うのは悪い癖か。)
【聖☆ビキニマン】
「……疑うのは悪いことではないさ。ただ、ああ。信じるのは、それ以上に良いことだ。それを分かっているのなら、良い。」
とはいえ、疑わざるを得ない状況にしたのは、目の前の唐揚げくんじゃあない。
「吾もまた、“覚悟”しよう。…助けが欲しくば、いつでも呼べ。吾は……手の届く限り、誰も殺させん。誰も、だ。」
【唐揚げ食べたい】
「………ああ、ありがとう。人の手が増えるのは嬉しいね。
お前もさ、なんかあったらいつでも連絡くれよな。こっちが忙しくなきゃ、出来る限り協力してやるぜ」
(ニコリ、と笑って。
此処は一旦、協力関係を築いて置こう。
グラグラの足場に作られた、その関係を作っておこう。
嗚呼、素晴らしいね。こういうの。
こういう、人間らしい感じ。上部面だけの。
どうせ裏切るんだろう、なんて思いながら。
もしずっと協力関係が作られたままなら、それはそれで。
どちらにせよ、素晴らしい。)
「じゃ、俺さ。…そろそろ行くよ!ずっと此処で話してても何の解決にもならねーしな!」
(と言って、ビキニマンから離れようと歩き始め。
その通り、何も進歩しない。
進歩しないなら死ぬ危険性もないが、その危険性を考慮してでも今は進歩するべきだ。
だから、俺さ。
もうちょっと頑張ってみるよ、キョーカ姉さん。)
【聖☆ビキニマン】
「ああ!お互い頑張ろうな。」
学校にいた時のような、前を向いた会話が心地好い。この関係は、尊く重いものだと実感する。
唐揚げくんと、反対方向を探索しに。
立ち止まる。
「ああ、そうだ。情報は共有出来ぬだろうか?知れることは、多い方が良い。」
【唐揚げ食べたい】
「じゃあな─────って、ん?」
(突然の声。振り向いて、対応してみる。
正直始まったばかりで何も分かっちゃいないが、…情報共有は有りだと踏んで。)
「何の情報だ?」
(そう、そこが問題。
所属?───Azoth、だとかなんかあった気がする。
ゾディアック?───特殊能力みたいなのだったか。
はたまた、本名?───それは流石に、厳しいが。
別のこと?───そういやアイテムとかもあったな。
何にせよ、信頼していない相手に教える情報なんか殆どないわけだが。)
【聖☆ビキニマン】
「なんでも、だ。……言いたい範囲をな。そう怖い顔をするでない。吾は、汝を信頼している。だからこそ、汝に教えたいのだ。…友とは。そういうものだろう。」
つまりこの提案は、“契約”ではなく“善意”。
伝えたいことを伝えよう。伝えたくないなら伝えなくていい。……そんな、なんの効力もないことを言っていた。
「例えば…吾の名はもう教えたな?ぞでぃあっくとやらは天秤座だ。所属はなく、貰ったアイテムは用具箱。……これに関しては証明も出来る。」
用具箱を取り出し、見せて。
「……吾が信用できないなら、それでいい。ただ、重ねて言うが吾は汝を信頼している。…ただそれだけのことよ。」
【唐揚げ食べたい】
「……へぇ?」
(なるほど、これで信頼度を測れと。
嗚呼、面倒くさい。どうしてこんな面倒なことを思い付いたのやら。
此処で色々と教えれば、信頼は得れる。然し、教えれば教えるほど自身の肩身は狭くなる。
そうか、ふむ。さて、どうしようか…。)
「……分かった。
じゃあ、そうだ。"個別チャット"に現時点で言える情報を送っておくよ。
誰かに聞かれててもおかしくないからな、なんてな。そんな警戒してるわけじゃないが、念には念を入れてって奴だ。」
(と、一先ず時間を取ろう。少し、考えたい。…と言っても、別にそこまで考えるようなものじゃないが。
一歩二歩、と。また彼から離れ。同じように、その場を去ろうとし。
このまま見送っても、唐揚げのことを止めても。"メッセージ"は送られてくることであろう。)
「んじゃ、改めてまたな。
お前の善意、受け止めたぜ!」
【聖☆ビキニマン】
「……ああ。」
……本意通りに受け取ってくれただろうか。
ただ。言えることは全て言った。……後はもう、彼次第だ。
ただただ見送って。
五番目の道化師(3rd)-あいごころ。(20th)
【五番目の道化師】
ホームセンターで、なにやらとても長い丈夫な鉄の棒を手に入れた道化師は他に役に立つものがないかと探していたところ…何かが降ってきたのを目撃した。
「リュック…?」
中に何か入っているようだけど…なんだろう。
道化師は良いもの入ってると良いなぁ…と思いながらリュックを空けて───すぐに閉じた。
「捨てよう、燃やそうっ!!薪を探そう!!ライターとオイルも!!」
嫌なものが入っていたらしい。
【あいごころ。】
「……」
さて、ピエロがそんなこんなで騒いでいる時。彼女の前に“ソレ”はあった。恐らくピエロと同じリュックのつもりであろう代物。しかしそれは場違いな程にピカピカと輝いていた。まるで小学校に入れると聞いてはしゃぐ子供の目のように。
「…なにかしらね?これは。」
いいや、分かっている。それがなにかは。しかし、あんまりにも、あんまりではないか。
彼女に渡されたリュックは…赤いランドセルであった。
【五番目の道化師】
と、とりあえず合流しようか。
リュックが貰えたと考えればそんなに悲しい思いはしないはずだ。
「こころさーん!どこですかー?」
まさか、あいごころ。に酷なものが届いているとは知らずに…
「あ、いたいた。こころさん。どうし…あー……」
これは酷い。
【あいごころ。】
「…私そんなにちっちゃいかしら」
…この状況。正直予想はしていた。なのであまり驚くようなことは無い。…が、しかし。さすがにこれはイレギラーだろう。…いや、一応中身を確認しておこう。もしかしたら役立つものが…
「……」
直ぐにランドセルを閉じる。…私そんなに子供っぽいのかな?…教えてピエロさん。
【五番目の道化師】
「ランドセルが届いてしまったのはきっと偶然でしょう。私は私で酷いものが送られてきていましたし…きっと、きっと!誰にでもランドセルが送られてくる可能性があったと思いますよ!」
だから、あいごころ。さんが小さいというわけではない。とフォローしているつもりだ。だって、私のヤツ、完全に私宛のものだと思えないし…
「こころさんだからランドセルが送られてきたわけじゃないはずですよ」
必死のフォローである。
とりあえず、運って怖い()
【あいごころ。】
「…え、ええ、そうよね。きっとランドセルがあっただけよね。」
…これがまさかリュックの変わり、なんて言うことはないだろう。…多分。
とりあえずランドセルを背負ってみる。何だか懐かしい気分になる。少しだけウキウキしてくるような…いや、気の所為だろう。
「はぁ…にしても、嫌な予感、あたったわね。」
アゾート、だったか。それをクラスメイトの中から探し出せだなんて。本当に…悪趣味だ。何気なくコロパットを覗き込む…?これは…。
「ゾディアック…?」
能力、だろうか。つくづく人間離れした能力を持つ輩だと思う。
「…とりあえず、コロパットを見た方がいいわね。」
ピエロにもコロパットを確認した方がいいと、そういった。
【五番目の道化師】
「えっ?あ、うん」
慌ててコロパットを手にしてみる。
ん?ごめん。よく理解できない。なにこの<ぞでぃあっく>って。内容理解できない。
道化師は理解ができないのか、頭を軽く押さえながら端末を覗き込んでいる。なんで、わかりきっていたとはいえ、嫌な予感が当たるかな。
てか、これマジで理解できないんだけど()
【あいごころ。】
「そう…ね。多分このゾディアックっていうのは…」
悪趣味だ。なんでこんな殺し合い、なんかさせるのか。そんなの無意味じゃないか。なぜ、こんな…いや、よそう。今はそんな事を考えるべきではない。今、考えるべきは何が起きたかをいち早く把握し、どうすればいいか、を考えることだ。
「…このゾディアックっていうのは言わば能力。それも便利なもの。…この、“ゲーム”を盛り上げるための…ね。」
…ここまで心踊らぬゲームは初めてだろう。このゲームに狂人はどれほどまでいるのだろうか?…このゲームに気を狂わせる狂人は。
「あなたは、このゲームに参加するのかしら?」
参加する、というあえて回りくどい言い方をする。だって、口にはしたくなかったから。そんなこと。…あなたは、人を殺すのか、なんてこと。
【五番目の道化師】
「どんな盛り上げ方ですか、ソレ…」
盛り上がるは盛り上がるでも殺伐さが上がってるじゃないですか。嫌ですよ、そんな物騒な…
「いやいや、なんでこんなゲームに参加しなきゃいけないんですか。いくら曲芸ができてもピエロは人殺しなんてしませんって。ピエロな殺人鬼とかどこのホラー映画ですか!?」
道化師に人殺しをする度胸などない。
ある程度自衛はできるだろうが…自分から殺しに行くことは絶対にないといえるだろう。もし、人を殺すようなことになるときは───襲われた時か、それとも人を殺さなければならない相応の理由が現れてしまった時かもしれない。
【あいごころ。】
「そう。…私も、参加はしないかしらね。」
少なくとも自分からは、と付け足しておく。きっとこのピエロはあまりそういうことが好きではないのだろう。そういう、人を疑う、なんてこと。だから、少しだけ試してみることにする。
「そうね…なら、あなたのゾディアック教えてくれるかしら?」
狐面を触って少しニヤッとしてそんなことを言ってみる。…すこし、露骨過ぎたかなぁ。
【五番目の道化師】
「え、ゾディアック?いいですけど」
そう言って端末を操作して自分のゾディアックを確認し──
「私のゾディアックは××××です」
と、素直に教えてしまう。
【あいごころ。】
「あら…そう。言ってしまうのね。」
ああ、なんてこの人は…素直なんだろうか。まあ、嘘なのかもしれないけれど、少なくともそんな素振りは見えなかった。…だから、少しだけ。私も素直になろうと思えたんだと思う。
「そうね。1つ忠告。ゾディアックは絶対に言わない方がいいわ。…死にたくなければね?」
狐面を触って目を細めて。言葉に重みを持たせるように言う。
「そしてもう1つ。私のゾディアックもいわないと公平ではないわね。言わせてもらうわ。」
そして聞き取れるように彼女の耳元に移動しようとして…届かないことに気づき諦める。その代わりならべく近くまで移動して、言う。
「私のゾディアックは…………よ。」
そうしてにこりと笑う。
【五番目の道化師】
え…っ!?ゾディアック教えると死ぬの!?と、ワタワタする道化師。そして…相手のゾディアックを聞き取ると絶対にこの事は口外しないと誓う。
「能力はまだ読んでいないのでわかりませんが、口外しないことを約束します」
道化師はまるで誓いを立てるように、真剣な表情をしてそう言った。もし、誰かに情報を流せといわれても今得た情報のことに関しては決して口を割ることはないだろう。
【あいごころ。】
「ええ、そうしたほうがいいわね。」
その答えに満足げに頷いた。さて、とりあえず確認すべきことは出来ただろう。あとは…このことを言っておこう。
「私も、あなたのゾディアックを口外しないと誓うわ。そして。あなたを信用する。」
そう、決意しためで相手を見る。…ああ、こんなの、私らしくないなぁと。いつか思ったことをまた思いながら。でも嫌な気分ではない。この人は私にとって“信用にあたる人物”となってしまったことは間違いないだろう。
「…私も少し欲しいものがあるの。ちょっと付き合ってもらってもいいかしら?」
そういって彼女にもちかける。さて、探索の開始だ。
【五番目の道化師】
「うん、いいよ」
そう言って、素直にあいごころに着いていきながら何が必要なんだろうと辺りを見てみる。何が必要なんだろう。
この辺りになにか隠されているのかな。
【あいごころ。】
「ええ、ありがとう。」
とりあえずまず必要なのは武器。この状況では武器を持たない、というのはまず論外であろう。とりあえず色んなものを見ながら回っていく。…とりあえず使えるものがあればいいけど。
「…まあ、とりあえずこれよね。」
手にしたのはサバイバルナイフ。自衛道具のひとつとしてはまあ、悪くは無いだろう。それに他のことにも使える。 その他にもチャッカマンと細めの縄も手に入れておく。
さて、他にもなにかあるだろうか…?
【五番目の道化師】
とりあえず、火がつけられるものはほしいなぁ。と100円ライターとマッチをポケットにしまう。リュックの中にはいっているアレを燃やすのは…まぁ、利用価値を考え直してからでもいいかな。と、考えながら別のところで物を探しているあいごころ。に声をかける。
「こころさん、そっちはなにか良いものありました?」
【あいごころ。】
「そうね…自衛道具を中心に集めて言ってるのだけれど、あまり見当たらないわね。」
そういってランドセルを背負い直した。…まあ、この仕草が小学校さながらなのは気にしない。
「スタンガン、とかもあればいいのだけれど。さすがにホームセンターには売ってないみたいね。」
少しだけ肩を落とす。…ふと目線を向けた先になにか気になるものが。
「…これは、防犯ブザーかしら?」
しげしげと見つめる。…もしかしたら使えるかも?とりあえずランドセルに突っ込んでおくことにする。
あとは…大方、このぐらいだろうか。そろそろ出ようか?とピエロに問いかける。
【五番目の道化師】
「私はこの鉄…じゃなかった。杖が欲しかっただけだからね。今、欲しいものはもうないかなー」
リュックとともに背負うようにして持っている一メートルほどの頑強な棒をトントンと叩いて示す。それ、絶対に杖じゃないだろ!?と、中の人が思う。
「そろそろホテルに帰りたいし、もう出ようか」
さすがにショッピングモールとホテルへの帰り道は迷子にはならないのでご安心を。
【あいごころ。】
「…そうね。そろそろ、出ましょう。」
とりあえずここをあとにする前に…トンカチを見つけたのでそれも適当に持っていくことに。近接武器はこのぐらいだろうか。
ホームセンターを出てショッピングモールの入口へ。
「さて、私はあとちょっとだけ用があるから。」
そうピエロに言う。…きっとこの人は裏切らないだろう。何となく、だけれど。けれど、心の中で少しだけ。少しだけ不安があった。だから、だろうなぁ…
「…さようなら。」
またね、って。声をかけられなかったのは。
【五番目の道化師】
『またね』と『さようなら』の違い
ほんの少し前までは二つとも違いはなかったけど今『さようなら』はあまり使われない。たしか、二度と会えないような気がするからと…徐々に死語になっていっていると新聞で読んだことがある。
(不安、なんだね…)
だから、あえて私は不安を拭うように『さようなら』ではなく『またね』と声をかけよう。
「こころさん、またね!」
笑みを浮かべ、ツラいことなど忘れさせるような笑みで。
私の道化師は『他人』のための道化だから。だから──せめて、いつも通りの笑みを浮かべて『またね』という言葉で再会を約束したのだ。
───再会するときに、お互い血に濡れてないことを祈って
【五番目の道化師】
ホームセンターで、なにやらとても長い丈夫な鉄の棒を手に入れた道化師は他に役に立つものがないかと探していたところ…何かが降ってきたのを目撃した。
「リュック…?」
中に何か入っているようだけど…なんだろう。
道化師は良いもの入ってると良いなぁ…と思いながらリュックを空けて───すぐに閉じた。
「捨てよう、燃やそうっ!!薪を探そう!!ライターとオイルも!!」
嫌なものが入っていたらしい。
【あいごころ。】
「……」
さて、ピエロがそんなこんなで騒いでいる時。彼女の前に“ソレ”はあった。恐らくピエロと同じリュックのつもりであろう代物。しかしそれは場違いな程にピカピカと輝いていた。まるで小学校に入れると聞いてはしゃぐ子供の目のように。
「…なにかしらね?これは。」
いいや、分かっている。それがなにかは。しかし、あんまりにも、あんまりではないか。
彼女に渡されたリュックは…赤いランドセルであった。
【五番目の道化師】
と、とりあえず合流しようか。
リュックが貰えたと考えればそんなに悲しい思いはしないはずだ。
「こころさーん!どこですかー?」
まさか、あいごころ。に酷なものが届いているとは知らずに…
「あ、いたいた。こころさん。どうし…あー……」
これは酷い。
【あいごころ。】
「…私そんなにちっちゃいかしら」
…この状況。正直予想はしていた。なのであまり驚くようなことは無い。…が、しかし。さすがにこれはイレギラーだろう。…いや、一応中身を確認しておこう。もしかしたら役立つものが…
「……」
直ぐにランドセルを閉じる。…私そんなに子供っぽいのかな?…教えてピエロさん。
【五番目の道化師】
「ランドセルが届いてしまったのはきっと偶然でしょう。私は私で酷いものが送られてきていましたし…きっと、きっと!誰にでもランドセルが送られてくる可能性があったと思いますよ!」
だから、あいごころ。さんが小さいというわけではない。とフォローしているつもりだ。だって、私のヤツ、完全に私宛のものだと思えないし…
「こころさんだからランドセルが送られてきたわけじゃないはずですよ」
必死のフォローである。
とりあえず、運って怖い()
【あいごころ。】
「…え、ええ、そうよね。きっとランドセルがあっただけよね。」
…これがまさかリュックの変わり、なんて言うことはないだろう。…多分。
とりあえずランドセルを背負ってみる。何だか懐かしい気分になる。少しだけウキウキしてくるような…いや、気の所為だろう。
「はぁ…にしても、嫌な予感、あたったわね。」
アゾート、だったか。それをクラスメイトの中から探し出せだなんて。本当に…悪趣味だ。何気なくコロパットを覗き込む…?これは…。
「ゾディアック…?」
能力、だろうか。つくづく人間離れした能力を持つ輩だと思う。
「…とりあえず、コロパットを見た方がいいわね。」
ピエロにもコロパットを確認した方がいいと、そういった。
【五番目の道化師】
「えっ?あ、うん」
慌ててコロパットを手にしてみる。
ん?ごめん。よく理解できない。なにこの<ぞでぃあっく>って。内容理解できない。
道化師は理解ができないのか、頭を軽く押さえながら端末を覗き込んでいる。なんで、わかりきっていたとはいえ、嫌な予感が当たるかな。
てか、これマジで理解できないんだけど()
【あいごころ。】
「そう…ね。多分このゾディアックっていうのは…」
悪趣味だ。なんでこんな殺し合い、なんかさせるのか。そんなの無意味じゃないか。なぜ、こんな…いや、よそう。今はそんな事を考えるべきではない。今、考えるべきは何が起きたかをいち早く把握し、どうすればいいか、を考えることだ。
「…このゾディアックっていうのは言わば能力。それも便利なもの。…この、“ゲーム”を盛り上げるための…ね。」
…ここまで心踊らぬゲームは初めてだろう。このゲームに狂人はどれほどまでいるのだろうか?…このゲームに気を狂わせる狂人は。
「あなたは、このゲームに参加するのかしら?」
参加する、というあえて回りくどい言い方をする。だって、口にはしたくなかったから。そんなこと。…あなたは、人を殺すのか、なんてこと。
【五番目の道化師】
「どんな盛り上げ方ですか、ソレ…」
盛り上がるは盛り上がるでも殺伐さが上がってるじゃないですか。嫌ですよ、そんな物騒な…
「いやいや、なんでこんなゲームに参加しなきゃいけないんですか。いくら曲芸ができてもピエロは人殺しなんてしませんって。ピエロな殺人鬼とかどこのホラー映画ですか!?」
道化師に人殺しをする度胸などない。
ある程度自衛はできるだろうが…自分から殺しに行くことは絶対にないといえるだろう。もし、人を殺すようなことになるときは───襲われた時か、それとも人を殺さなければならない相応の理由が現れてしまった時かもしれない。
【あいごころ。】
「そう。…私も、参加はしないかしらね。」
少なくとも自分からは、と付け足しておく。きっとこのピエロはあまりそういうことが好きではないのだろう。そういう、人を疑う、なんてこと。だから、少しだけ試してみることにする。
「そうね…なら、あなたのゾディアック教えてくれるかしら?」
狐面を触って少しニヤッとしてそんなことを言ってみる。…すこし、露骨過ぎたかなぁ。
【五番目の道化師】
「え、ゾディアック?いいですけど」
そう言って端末を操作して自分のゾディアックを確認し──
「私のゾディアックは××××です」
と、素直に教えてしまう。
【あいごころ。】
「あら…そう。言ってしまうのね。」
ああ、なんてこの人は…素直なんだろうか。まあ、嘘なのかもしれないけれど、少なくともそんな素振りは見えなかった。…だから、少しだけ。私も素直になろうと思えたんだと思う。
「そうね。1つ忠告。ゾディアックは絶対に言わない方がいいわ。…死にたくなければね?」
狐面を触って目を細めて。言葉に重みを持たせるように言う。
「そしてもう1つ。私のゾディアックもいわないと公平ではないわね。言わせてもらうわ。」
そして聞き取れるように彼女の耳元に移動しようとして…届かないことに気づき諦める。その代わりならべく近くまで移動して、言う。
「私のゾディアックは…………よ。」
そうしてにこりと笑う。
【五番目の道化師】
え…っ!?ゾディアック教えると死ぬの!?と、ワタワタする道化師。そして…相手のゾディアックを聞き取ると絶対にこの事は口外しないと誓う。
「能力はまだ読んでいないのでわかりませんが、口外しないことを約束します」
道化師はまるで誓いを立てるように、真剣な表情をしてそう言った。もし、誰かに情報を流せといわれても今得た情報のことに関しては決して口を割ることはないだろう。
【あいごころ。】
「ええ、そうしたほうがいいわね。」
その答えに満足げに頷いた。さて、とりあえず確認すべきことは出来ただろう。あとは…このことを言っておこう。
「私も、あなたのゾディアックを口外しないと誓うわ。そして。あなたを信用する。」
そう、決意しためで相手を見る。…ああ、こんなの、私らしくないなぁと。いつか思ったことをまた思いながら。でも嫌な気分ではない。この人は私にとって“信用にあたる人物”となってしまったことは間違いないだろう。
「…私も少し欲しいものがあるの。ちょっと付き合ってもらってもいいかしら?」
そういって彼女にもちかける。さて、探索の開始だ。
【五番目の道化師】
「うん、いいよ」
そう言って、素直にあいごころに着いていきながら何が必要なんだろうと辺りを見てみる。何が必要なんだろう。
この辺りになにか隠されているのかな。
【あいごころ。】
「ええ、ありがとう。」
とりあえずまず必要なのは武器。この状況では武器を持たない、というのはまず論外であろう。とりあえず色んなものを見ながら回っていく。…とりあえず使えるものがあればいいけど。
「…まあ、とりあえずこれよね。」
手にしたのはサバイバルナイフ。自衛道具のひとつとしてはまあ、悪くは無いだろう。それに他のことにも使える。 その他にもチャッカマンと細めの縄も手に入れておく。
さて、他にもなにかあるだろうか…?
【五番目の道化師】
とりあえず、火がつけられるものはほしいなぁ。と100円ライターとマッチをポケットにしまう。リュックの中にはいっているアレを燃やすのは…まぁ、利用価値を考え直してからでもいいかな。と、考えながら別のところで物を探しているあいごころ。に声をかける。
「こころさん、そっちはなにか良いものありました?」
【あいごころ。】
「そうね…自衛道具を中心に集めて言ってるのだけれど、あまり見当たらないわね。」
そういってランドセルを背負い直した。…まあ、この仕草が小学校さながらなのは気にしない。
「スタンガン、とかもあればいいのだけれど。さすがにホームセンターには売ってないみたいね。」
少しだけ肩を落とす。…ふと目線を向けた先になにか気になるものが。
「…これは、防犯ブザーかしら?」
しげしげと見つめる。…もしかしたら使えるかも?とりあえずランドセルに突っ込んでおくことにする。
あとは…大方、このぐらいだろうか。そろそろ出ようか?とピエロに問いかける。
【五番目の道化師】
「私はこの鉄…じゃなかった。杖が欲しかっただけだからね。今、欲しいものはもうないかなー」
リュックとともに背負うようにして持っている一メートルほどの頑強な棒をトントンと叩いて示す。それ、絶対に杖じゃないだろ!?と、中の人が思う。
「そろそろホテルに帰りたいし、もう出ようか」
さすがにショッピングモールとホテルへの帰り道は迷子にはならないのでご安心を。
【あいごころ。】
「…そうね。そろそろ、出ましょう。」
とりあえずここをあとにする前に…トンカチを見つけたのでそれも適当に持っていくことに。近接武器はこのぐらいだろうか。
ホームセンターを出てショッピングモールの入口へ。
「さて、私はあとちょっとだけ用があるから。」
そうピエロに言う。…きっとこの人は裏切らないだろう。何となく、だけれど。けれど、心の中で少しだけ。少しだけ不安があった。だから、だろうなぁ…
「…さようなら。」
またね、って。声をかけられなかったのは。
【五番目の道化師】
『またね』と『さようなら』の違い
ほんの少し前までは二つとも違いはなかったけど今『さようなら』はあまり使われない。たしか、二度と会えないような気がするからと…徐々に死語になっていっていると新聞で読んだことがある。
(不安、なんだね…)
だから、あえて私は不安を拭うように『さようなら』ではなく『またね』と声をかけよう。
「こころさん、またね!」
笑みを浮かべ、ツラいことなど忘れさせるような笑みで。
私の道化師は『他人』のための道化だから。だから──せめて、いつも通りの笑みを浮かべて『またね』という言葉で再会を約束したのだ。
───再会するときに、お互い血に濡れてないことを祈って
海月(23rd)-トロンパ(12th)
【海月】
教会の教壇前。最も目立つ所。彼女はそこに立っていた。
「……これも誰かの"計画通り"、だったりするのかな?」
流れていく共有チャット。リュックサックの中には、確かに、ソレが入っていた。
全てのハジマリは何処だったんだろう?あのアナウンス?それとも、もっと前?
分からない。けれど、分からないより先に、分かることがあるのかもしれない。
「……こういったモノは、あまり楽しみたいとは思えないのだけれど。
でも、皆が楽しめるなら、それで。見た限り、"ボク以外にも"楽しんでいる人は数多くいるみたいだし。」
例えば、誰だろうか。匿名での書き込みが多く分からない。けれど。
―――まずは、状況を整理しよう。
【トロンパ】
「…よう。」
協会という、荘厳な場に場違いな赤い服装で
"彼"は、少女に話しかける
「…早速だが、聞きたいことがある。お前は、"何だ"?」
その手には、肉屋の包み。頭にはスキー用の赤いヘルメット、手袋は左だけという奇妙な出で立ちだった
【海月】
「……ああ、恐らく"また会ったね"って言うのが正しいんだろうけれど、不作法なので"初めまして"にしておこう。
ボクが何か…そう、だね。ボクは"道化師"って言うのが正しいのかな。まあ、違うみたいだけれど。
今、胡蝶の夢は夢から覚めてしまった。ボクは海を見たい気分なんだけれど、もしかして夕日はキライ?」
じっと、その場違いな恰好をしている"彼"を見つめていた。
何も変わらない。もし変わっていたとしても、"気付けるものは少ない"だろう。
「ねえ、キミは。このゲームに何を懸けるつもりでいる?」
【トロンパ】
「……懸ける、か……って事は、お前は参加する、って認識でいいんだよな?」
あくまで自分の言いたいことだけを通すように答える
【海月】
「あは。やっぱりそういう人か。そうやって自分の論理ばっか通して何も前も見えなくて…
…ああ。ボクは参加しないよ。"ボク"が参加するだろうからその代弁。"ボク"にはもう会ったの?
それとも、まだ?感想でも聞かせてよ。」
もし、"ボク"であったのなら、もっと話はややこしいことになっていたのか。
それとも、目の前の彼との会話はスムーズに進んでいるのか。
分からなかったけれど。
【トロンパ】
「………意味の分からない事を…いや…それは、本当に…」
頭を抑える
「……ところで、お前は何を懸けるんだ…?」
顔を顰める
【海月】
「意味が分からない。まあ、そうだろうね。ボクもどっちが蝶なのか分からなくてね。
…ボクが何を懸けるか?あはは、そうだな。ボクみたいな価値のないヤツが懸けられるものなんて、少ないんだけど…
…このゲームの終止、でも懸けてみようかな?ボクの命に。」
"どういう"意味かは、彼の受け取り方に任せる。然ういう言い方。
【トロンパ】
「……そう、か…悪い、気分悪くなってきたみたいだ……戻る…」
そう言って、背を向けて歩いていき
入り口の前で、ひた、止まった
【海月】
「あれ、来たのに直ぐ帰っちゃうの?勿体ないなぁ。ボクと話せる機会なんてそうそうないんだから、もっとゆっくりしていってよ。"ボク"になるまで話そう?まだ記憶がおぼろげなんだ。」
けれど、止めはしない。背けもしない。彼の出方を待つ。
殺すならどうぞ、お好きに。交渉なり、情報交換なり、なんなりと。ボクは文字通り"何も"しないからさ。
【トロンパ】
「ええ。そうさせてもらいましょうかぁ!なんて意味不明曇天の星真鍮の虫みたいな事は、流石に言いはしませんとも。ワタクシ?これでも?とぉーっても真面目ちゃんでしたので!毎日部活サボって勉強してましたとも!ええ!」
そう
彼は言って
「ああ、こちらお土産ですので、どうか是非有用にお使い下さーい!痛快、通販、通院間違いなしですですので!では!」
そう言って手に持っていた包みを床に置くと扉を開けて出て行く
「また、会える日を楽しみにしていますよ?ええ!それでは皆様、卒業生のご退場です!拍手でブーイングください!あ、チケット払い戻しはできませーん!」
そう言ってさっさと出て行った
【海月】
「行ってらっしゃい、もう二度と来ないでね。また明日待ってる。」
…………
ああ、頭痛い。…包み?さっきの背が高い人がくれたのか。良くわからないけれど…変人の割にいい人、なのかもしれない。なんて無礼かな…?
でも、まあ、プレゼントなら有難く貰っておこう。
「ご厚意なんだし、受け取らないってのは失礼…だよね?」
包みを、開けた。
【海月】
教会の教壇前。最も目立つ所。彼女はそこに立っていた。
「……これも誰かの"計画通り"、だったりするのかな?」
流れていく共有チャット。リュックサックの中には、確かに、ソレが入っていた。
全てのハジマリは何処だったんだろう?あのアナウンス?それとも、もっと前?
分からない。けれど、分からないより先に、分かることがあるのかもしれない。
「……こういったモノは、あまり楽しみたいとは思えないのだけれど。
でも、皆が楽しめるなら、それで。見た限り、"ボク以外にも"楽しんでいる人は数多くいるみたいだし。」
例えば、誰だろうか。匿名での書き込みが多く分からない。けれど。
―――まずは、状況を整理しよう。
【トロンパ】
「…よう。」
協会という、荘厳な場に場違いな赤い服装で
"彼"は、少女に話しかける
「…早速だが、聞きたいことがある。お前は、"何だ"?」
その手には、肉屋の包み。頭にはスキー用の赤いヘルメット、手袋は左だけという奇妙な出で立ちだった
【海月】
「……ああ、恐らく"また会ったね"って言うのが正しいんだろうけれど、不作法なので"初めまして"にしておこう。
ボクが何か…そう、だね。ボクは"道化師"って言うのが正しいのかな。まあ、違うみたいだけれど。
今、胡蝶の夢は夢から覚めてしまった。ボクは海を見たい気分なんだけれど、もしかして夕日はキライ?」
じっと、その場違いな恰好をしている"彼"を見つめていた。
何も変わらない。もし変わっていたとしても、"気付けるものは少ない"だろう。
「ねえ、キミは。このゲームに何を懸けるつもりでいる?」
【トロンパ】
「……懸ける、か……って事は、お前は参加する、って認識でいいんだよな?」
あくまで自分の言いたいことだけを通すように答える
【海月】
「あは。やっぱりそういう人か。そうやって自分の論理ばっか通して何も前も見えなくて…
…ああ。ボクは参加しないよ。"ボク"が参加するだろうからその代弁。"ボク"にはもう会ったの?
それとも、まだ?感想でも聞かせてよ。」
もし、"ボク"であったのなら、もっと話はややこしいことになっていたのか。
それとも、目の前の彼との会話はスムーズに進んでいるのか。
分からなかったけれど。
【トロンパ】
「………意味の分からない事を…いや…それは、本当に…」
頭を抑える
「……ところで、お前は何を懸けるんだ…?」
顔を顰める
【海月】
「意味が分からない。まあ、そうだろうね。ボクもどっちが蝶なのか分からなくてね。
…ボクが何を懸けるか?あはは、そうだな。ボクみたいな価値のないヤツが懸けられるものなんて、少ないんだけど…
…このゲームの終止、でも懸けてみようかな?ボクの命に。」
"どういう"意味かは、彼の受け取り方に任せる。然ういう言い方。
【トロンパ】
「……そう、か…悪い、気分悪くなってきたみたいだ……戻る…」
そう言って、背を向けて歩いていき
入り口の前で、ひた、止まった
【海月】
「あれ、来たのに直ぐ帰っちゃうの?勿体ないなぁ。ボクと話せる機会なんてそうそうないんだから、もっとゆっくりしていってよ。"ボク"になるまで話そう?まだ記憶がおぼろげなんだ。」
けれど、止めはしない。背けもしない。彼の出方を待つ。
殺すならどうぞ、お好きに。交渉なり、情報交換なり、なんなりと。ボクは文字通り"何も"しないからさ。
【トロンパ】
「ええ。そうさせてもらいましょうかぁ!なんて意味不明曇天の星真鍮の虫みたいな事は、流石に言いはしませんとも。ワタクシ?これでも?とぉーっても真面目ちゃんでしたので!毎日部活サボって勉強してましたとも!ええ!」
そう
彼は言って
「ああ、こちらお土産ですので、どうか是非有用にお使い下さーい!痛快、通販、通院間違いなしですですので!では!」
そう言って手に持っていた包みを床に置くと扉を開けて出て行く
「また、会える日を楽しみにしていますよ?ええ!それでは皆様、卒業生のご退場です!拍手でブーイングください!あ、チケット払い戻しはできませーん!」
そう言ってさっさと出て行った
【海月】
「行ってらっしゃい、もう二度と来ないでね。また明日待ってる。」
…………
ああ、頭痛い。…包み?さっきの背が高い人がくれたのか。良くわからないけれど…変人の割にいい人、なのかもしれない。なんて無礼かな…?
でも、まあ、プレゼントなら有難く貰っておこう。
「ご厚意なんだし、受け取らないってのは失礼…だよね?」
包みを、開けた。
唐揚げ食べたい(18th)-アカエル(GM)
【唐揚げ食べたい】
「…………ズズズズズ…」
(現在ホテルのレストラン。何回来るんだ此処に、というレベルで居る気がするが気にしてはいけない。いけない。(戒め)
体も冷えてきたので、ぽっかぽかしたいなと。でも余りにも唐揚げは食べたばっかりだなと。そう思う唐揚げくんは、あたた?いお茶を頼んだ。
そして現在、そのお茶を啜っているわけである。)
「ああ^?お茶が美味い^?」
(突然のほのぼの。いや然し、何も考えていないわけではあるまい。
俺とてこんなゲームに参加させられたら考えないわけにも行くまい。
唐揚げのこととかゲームのこととか唐揚げのこととか唐揚げのこととかAzothのこととか唐揚げのこととか考えている。
ええ、考えていますとも。)
【アカエル】
「ああ、実に美味いね。気が付いていたかな?この雪国の飲食店で出されるものは、どれも一級品なんだよ。僕は緑茶が一番好きだけど、君はどうかな?」
(いつの間にか、本当にいつの間にか、瞬きをした次の瞬間に、アカエルは唐揚げクンの目の前に着席し、お茶を啜っていた。
あたかも最初からそこにいたかのように、ぺらぺらとフレンドリーに口を動かす)
【唐揚げ食べたい】
「……俺は、そうだな。
ほうじ茶派、ってところだな。」
(特に驚く様子もなく、そう答え。
否、驚いている。…ただ、その感情を出すのもなんだか面倒なのだ。
因みに"ほうじ茶派"というのは完全に(中の人)の都合である。(中の人)はほうじ茶が好きだ。
然し、現在飲んでいるのは緑茶である。残念ながらほうじ茶はなかったようだ。特に温かいのは。)
「……で、お前誰だ?…って言いたいところだけどナ。
その登場の仕方を見るに、────お前"アカエル"って奴だろ?
丁度良かった、少し聞きたい事があったんだ。…折角ゲームが始まったところだしナ」
(と、軽く尋ね。
まあ、聞きたいのはお察しの通り。
"キョーカ姉さん"に関する事だ。
完全な予想でしかないし、知ったところで何かを得るわけじゃないが。
同じ飛行機事故、死。────なんだか、不穏な感じがした。
何もなければいいのだが。)
【アカエル】
「ほうじ茶とは渋いねぇ、僕はちょっと苦手かなぁ」
(ずずずと啜っていた湯飲みを置く。中に入ってるのはミルクティーである。なんだこいつ)
「ほう、僕に聞きたいことが?いいだろう、なんでも教えてあげるよ(嘘)
僕は君たちが大好きだからね」
【唐揚げ食べたい】
「ミルクティー…」
(なんで緑茶あるのに飲まないんですかねぇ。…という質問は辞めておこう、うん。だって明らかにその質問無意味だもの。
なんでも答えてくれる、と聞いて"ふーん…"と呟き。
まあ、どうせ嘘だろうと。大好き、というのも嫌味だろうと。
でもまあ、質問をしてみないことには始まらないな…なんて。)
「嗚呼、じゃあ早速。
自分のことを"わたし鏡"と名乗ったキョーカという人間をお前は知っているか?」
(これは言わば、賭け。…と言っても自分自身に得はあれど損はない、賭けとしては不成立のもの。
別に知らなくても、いい。
知っていたら、運がいい。
その程度のもの。
第一、彼女が自分のことを"わたし鏡"と名乗ったのかも分からない。…否。そもそも、彼女がこのゲームに参加したということすら分からない。
だが。
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。
…なんて、思ってみた。)
【アカエル】
「もちろん知っているとも。前回の"修学旅行"の参加者だね。番号は4th。
実に惨めな死だったなぁ……思い出すだけで、それはそれは……」
(すました顔で訥々と語る。言葉が進むにつれて顔が紅潮していき、ぶるりと体を震わせ、くねらせる)
「ああ、本当に悲惨な死に方だった……苦痛に泣きわめく彼女の顔を思い出すだけで、僕はもう、果ててしまいそうだよ!」
【唐揚げ食べたい】
「………やっぱり」
(大当たり。
彼女はその"前回"とやらの参加者だったみたいだ。
ならば、その彼女はゲーム内で死んだということ。それもアカエルが話しているわけだが、それを聞き流すようにし。
だって、死に方なんかどうでもいい。
そのゲームに参加していたというのが知れれば、それで。
嗚呼、でも。
一つだけ、言う事があれば。
矛盾指摘するとすれば。)
「姉さん、死ぬことに恐怖なんてしないと思うけど。」
(と、淡々と。
知らない人間も多いだろうが、軽く聞いた事がある。
4th、わたし鏡、弐宮京香、キョーカ姉さん。呼び方など何でもいいが、兎に角。
"彼女は恐怖心を抱く事が極端に少ない"
と。そう、聞いた事がある。ご近所さんだったから、だろうか。
まあ、聞いた事があるだけ故それは嘘だったのかもしれないが。それを知る手段はもう無いわけで。
冷静に、冷静に。)
【アカエル】
(あくまで冷静なその言葉を聞いて、ピタリと動きを止めたかと思うと、ふと真顔になった)
「なんだ……面白くないなぁ。もっと怒ってくれないと。
ああ、確かに彼女は恐怖を抱いて死んだわけではなかったよ」
(そう吐き捨てると、残りのミルクティーを飲み干した)
【唐揚げ食べたい】
「はは、こちとら怒る余裕もないもんで。」
(自分自身も死の淵に立たされている身、無駄な感情を出す余裕などない。出来るだけ余力は残しておきたいもの。…まあ、その余力が何に使われるかなんて知ったもんじゃないが。
やはり、嘘。
ならば、どうやって死んだ?
死んだなら、多少なり足掻いたりはするはず。
そもそも、"無所属"であろう彼女が何故死んだ?どうして?Azothによってなのか?
嗚呼、思考が巡らない。この際だから全部ぶちまけてみよう。)
「じゃあ、どう死んだんだ?
…いや、誰に?"Azoth"って奴らか?」
(そんな、幼稚な質問。
なぜ、どうして、誰に。…簡単なものだが、それすらも分からないのだから仕方ない。
今更それを知ったところで遅いのだろうが、それでも。こうなったからには謎を突き止めたい。
近くの人間に、"前回参加者(死亡済)"が居たのだから。
そして今近くに、"ゲームマスター"が居るのだから。
こんな機会、そうそうないだろう?)
【アカエル】
「名前を呼ばれて、殺されたんだ。他でもない彼女の、親友にね」
(再びニヤリと頬を上げる。あの時の光景は、何度思い出しても笑えてしまうのだ。
名を口にする少女。崩れゆく少女。泣き叫ぶ少女。狂う少女。
和気藹々と戯れていた二人に訪れる、死別)
「だからゲームマスターは、やめられない」
【唐揚げ食べたい】
「……へぇ…そりゃ、壮大な悲劇だな。」
(と、一言。
悲劇、喜劇。その場に居合わせて居ない自分に分かることなど何もないし、自分が彼女にとって大切な人だったわけでもない。
自分が其処に茶々を入れるのは少々アレだが、少しだけその"親友"が気になったのも確か。
まあ、一つ言えることと言えば。
…────もし姉さんがその死に方に満足ならば、それは素敵なことだと思う。
…なんて、ね。)
「…お前が悪趣味なのは十分承知してるぜ。……だから、何も言わないが……そうだな。
その姉さんの"親友"ってのは、今も生きてるのか?
生きているんだとしたら、何処にいる?」
(生きているなら、少しだけ会いたい気もする。
いや、でも。…あんまり邪魔をするのもアレかな、なんて。
彼女を殺した人間が死んでても可笑しくない状況なわけだが、それでも一応聞いてみようかなと。
こうして過去話を聞く、というのも悪くない。
このゲームに関係していないのだから、"ネタバレ"という結末も無く。
でも、同じゲームの参加者として面白くて。…そして何より、この"自分の今の状況から逃避し誤魔化せる"。
一番の狙いはそれだった。だって、こんなピリついた空気の中に居たくないし。)
【アカエル】
「ああ、生きているよ。どこにいるかまでは、わからないなぁ。生存者のその後なんて、僕の与るところではないからね」
(嘘をついた。もちろんながら、何から何まで正直に話すつもりはないようだ。生存者の行方を彼女が知らないのは事実であり、弐宮京香を殺した桂木もその生存者の一部である、ということにしておいた)
【唐揚げ食べたい】
「……そうか。」
(まあ、流石に。ゲーム外のことまではゲームマスターは関与しない、ということか。
勿論、彼女を殺した人間が今もパラレルワールドの中でゲームをやっているなど知らないわけで。
だから、納得した。
そこに疑う余地など無く。だって、何も知らないのだから。新しい情報を疑おうが、その真偽など分からないのである。)
「…最後に一つ、聞きたいことがあるんだ。
なあ、アカエル。俺が…──────って言ったらどうする?」
(そんな、巫山戯た質問を。
側から聞いたら、"そんなの冗談だろう"と思うような言葉。
ああ、…いや、冗談。実際に"今のところは"冗談であるが。
然し、一歩踏み出してしまえば本当になってしまうかのような言葉。
それを今、言ってみる。
どうなるか、なんて分かったもんじゃないけど。
だって、まだ。
…それを決断する時じゃないもの。)
【アカエル】
(ピクリ、震えた。顔を伏せ、笑いを堪える。
面白い、面白い。本当にこのゲームで退屈を覚えることがない)
「ーーーーーーーー」
【唐揚げ食べたい】
「………なるほど、な。」
(彼女の言葉を聞いて、そう呟き。
十分に可能性のある未来、彼女の言葉は十分に聞く価値があった。
頷き。
緑茶を飲み干して。
静かに、立ち上がる。)
「まあ、冗談だよ。
そうじゃなくなるかもしれないけどね。」
(ケラケラと笑って、そう嘯く。
アカエルの元から去ろうと足を運び始めては、最後に長々と天使へ呟いた。)
「"どうせ"このゲーム…“前回だけ”じゃないだろうから、時間がありゃ過去データでも見ながら一緒に御茶会議(ティーパーティ)でもしたいけど。
どうにも、全員生還のルートがあるみたいだからね。その鍵でも探すことにするよ。
嗚呼、このゲーム。
十分に"利用"させてもらうぜ。…生存第一だが、とある人を見つけたいもんでな。
あばよ、死に腐れクソ天使。」
【アカエル】
「ふふ……僕は君にも一目置いているんだ。君がどのような結末を迎えるか、楽しみにしているよ。
せいぜい頑張ってくれたまえ、唐揚げ大好きクン。……いや、ーーーー」
(立ち去ろうとする彼の目の前に亡霊のように現れ、恐ろしく嫌らしい笑顔で、顔を覗き込む。
わざとらしく、一語一語区切りながら、彼の本名を口にする。当然、天使の言葉に死亡判定はないようだ。高らかに笑うと、煙のように消えるのであった)
【唐揚げ食べたい】
「…………ズズズズズ…」
(現在ホテルのレストラン。何回来るんだ此処に、というレベルで居る気がするが気にしてはいけない。いけない。(戒め)
体も冷えてきたので、ぽっかぽかしたいなと。でも余りにも唐揚げは食べたばっかりだなと。そう思う唐揚げくんは、あたた?いお茶を頼んだ。
そして現在、そのお茶を啜っているわけである。)
「ああ^?お茶が美味い^?」
(突然のほのぼの。いや然し、何も考えていないわけではあるまい。
俺とてこんなゲームに参加させられたら考えないわけにも行くまい。
唐揚げのこととかゲームのこととか唐揚げのこととか唐揚げのこととかAzothのこととか唐揚げのこととか考えている。
ええ、考えていますとも。)
【アカエル】
「ああ、実に美味いね。気が付いていたかな?この雪国の飲食店で出されるものは、どれも一級品なんだよ。僕は緑茶が一番好きだけど、君はどうかな?」
(いつの間にか、本当にいつの間にか、瞬きをした次の瞬間に、アカエルは唐揚げクンの目の前に着席し、お茶を啜っていた。
あたかも最初からそこにいたかのように、ぺらぺらとフレンドリーに口を動かす)
【唐揚げ食べたい】
「……俺は、そうだな。
ほうじ茶派、ってところだな。」
(特に驚く様子もなく、そう答え。
否、驚いている。…ただ、その感情を出すのもなんだか面倒なのだ。
因みに"ほうじ茶派"というのは完全に(中の人)の都合である。(中の人)はほうじ茶が好きだ。
然し、現在飲んでいるのは緑茶である。残念ながらほうじ茶はなかったようだ。特に温かいのは。)
「……で、お前誰だ?…って言いたいところだけどナ。
その登場の仕方を見るに、────お前"アカエル"って奴だろ?
丁度良かった、少し聞きたい事があったんだ。…折角ゲームが始まったところだしナ」
(と、軽く尋ね。
まあ、聞きたいのはお察しの通り。
"キョーカ姉さん"に関する事だ。
完全な予想でしかないし、知ったところで何かを得るわけじゃないが。
同じ飛行機事故、死。────なんだか、不穏な感じがした。
何もなければいいのだが。)
【アカエル】
「ほうじ茶とは渋いねぇ、僕はちょっと苦手かなぁ」
(ずずずと啜っていた湯飲みを置く。中に入ってるのはミルクティーである。なんだこいつ)
「ほう、僕に聞きたいことが?いいだろう、なんでも教えてあげるよ(嘘)
僕は君たちが大好きだからね」
【唐揚げ食べたい】
「ミルクティー…」
(なんで緑茶あるのに飲まないんですかねぇ。…という質問は辞めておこう、うん。だって明らかにその質問無意味だもの。
なんでも答えてくれる、と聞いて"ふーん…"と呟き。
まあ、どうせ嘘だろうと。大好き、というのも嫌味だろうと。
でもまあ、質問をしてみないことには始まらないな…なんて。)
「嗚呼、じゃあ早速。
自分のことを"わたし鏡"と名乗ったキョーカという人間をお前は知っているか?」
(これは言わば、賭け。…と言っても自分自身に得はあれど損はない、賭けとしては不成立のもの。
別に知らなくても、いい。
知っていたら、運がいい。
その程度のもの。
第一、彼女が自分のことを"わたし鏡"と名乗ったのかも分からない。…否。そもそも、彼女がこのゲームに参加したということすら分からない。
だが。
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。
…なんて、思ってみた。)
【アカエル】
「もちろん知っているとも。前回の"修学旅行"の参加者だね。番号は4th。
実に惨めな死だったなぁ……思い出すだけで、それはそれは……」
(すました顔で訥々と語る。言葉が進むにつれて顔が紅潮していき、ぶるりと体を震わせ、くねらせる)
「ああ、本当に悲惨な死に方だった……苦痛に泣きわめく彼女の顔を思い出すだけで、僕はもう、果ててしまいそうだよ!」
【唐揚げ食べたい】
「………やっぱり」
(大当たり。
彼女はその"前回"とやらの参加者だったみたいだ。
ならば、その彼女はゲーム内で死んだということ。それもアカエルが話しているわけだが、それを聞き流すようにし。
だって、死に方なんかどうでもいい。
そのゲームに参加していたというのが知れれば、それで。
嗚呼、でも。
一つだけ、言う事があれば。
矛盾指摘するとすれば。)
「姉さん、死ぬことに恐怖なんてしないと思うけど。」
(と、淡々と。
知らない人間も多いだろうが、軽く聞いた事がある。
4th、わたし鏡、弐宮京香、キョーカ姉さん。呼び方など何でもいいが、兎に角。
"彼女は恐怖心を抱く事が極端に少ない"
と。そう、聞いた事がある。ご近所さんだったから、だろうか。
まあ、聞いた事があるだけ故それは嘘だったのかもしれないが。それを知る手段はもう無いわけで。
冷静に、冷静に。)
【アカエル】
(あくまで冷静なその言葉を聞いて、ピタリと動きを止めたかと思うと、ふと真顔になった)
「なんだ……面白くないなぁ。もっと怒ってくれないと。
ああ、確かに彼女は恐怖を抱いて死んだわけではなかったよ」
(そう吐き捨てると、残りのミルクティーを飲み干した)
【唐揚げ食べたい】
「はは、こちとら怒る余裕もないもんで。」
(自分自身も死の淵に立たされている身、無駄な感情を出す余裕などない。出来るだけ余力は残しておきたいもの。…まあ、その余力が何に使われるかなんて知ったもんじゃないが。
やはり、嘘。
ならば、どうやって死んだ?
死んだなら、多少なり足掻いたりはするはず。
そもそも、"無所属"であろう彼女が何故死んだ?どうして?Azothによってなのか?
嗚呼、思考が巡らない。この際だから全部ぶちまけてみよう。)
「じゃあ、どう死んだんだ?
…いや、誰に?"Azoth"って奴らか?」
(そんな、幼稚な質問。
なぜ、どうして、誰に。…簡単なものだが、それすらも分からないのだから仕方ない。
今更それを知ったところで遅いのだろうが、それでも。こうなったからには謎を突き止めたい。
近くの人間に、"前回参加者(死亡済)"が居たのだから。
そして今近くに、"ゲームマスター"が居るのだから。
こんな機会、そうそうないだろう?)
【アカエル】
「名前を呼ばれて、殺されたんだ。他でもない彼女の、親友にね」
(再びニヤリと頬を上げる。あの時の光景は、何度思い出しても笑えてしまうのだ。
名を口にする少女。崩れゆく少女。泣き叫ぶ少女。狂う少女。
和気藹々と戯れていた二人に訪れる、死別)
「だからゲームマスターは、やめられない」
【唐揚げ食べたい】
「……へぇ…そりゃ、壮大な悲劇だな。」
(と、一言。
悲劇、喜劇。その場に居合わせて居ない自分に分かることなど何もないし、自分が彼女にとって大切な人だったわけでもない。
自分が其処に茶々を入れるのは少々アレだが、少しだけその"親友"が気になったのも確か。
まあ、一つ言えることと言えば。
…────もし姉さんがその死に方に満足ならば、それは素敵なことだと思う。
…なんて、ね。)
「…お前が悪趣味なのは十分承知してるぜ。……だから、何も言わないが……そうだな。
その姉さんの"親友"ってのは、今も生きてるのか?
生きているんだとしたら、何処にいる?」
(生きているなら、少しだけ会いたい気もする。
いや、でも。…あんまり邪魔をするのもアレかな、なんて。
彼女を殺した人間が死んでても可笑しくない状況なわけだが、それでも一応聞いてみようかなと。
こうして過去話を聞く、というのも悪くない。
このゲームに関係していないのだから、"ネタバレ"という結末も無く。
でも、同じゲームの参加者として面白くて。…そして何より、この"自分の今の状況から逃避し誤魔化せる"。
一番の狙いはそれだった。だって、こんなピリついた空気の中に居たくないし。)
【アカエル】
「ああ、生きているよ。どこにいるかまでは、わからないなぁ。生存者のその後なんて、僕の与るところではないからね」
(嘘をついた。もちろんながら、何から何まで正直に話すつもりはないようだ。生存者の行方を彼女が知らないのは事実であり、弐宮京香を殺した桂木もその生存者の一部である、ということにしておいた)
【唐揚げ食べたい】
「……そうか。」
(まあ、流石に。ゲーム外のことまではゲームマスターは関与しない、ということか。
勿論、彼女を殺した人間が今もパラレルワールドの中でゲームをやっているなど知らないわけで。
だから、納得した。
そこに疑う余地など無く。だって、何も知らないのだから。新しい情報を疑おうが、その真偽など分からないのである。)
「…最後に一つ、聞きたいことがあるんだ。
なあ、アカエル。俺が…──────って言ったらどうする?」
(そんな、巫山戯た質問を。
側から聞いたら、"そんなの冗談だろう"と思うような言葉。
ああ、…いや、冗談。実際に"今のところは"冗談であるが。
然し、一歩踏み出してしまえば本当になってしまうかのような言葉。
それを今、言ってみる。
どうなるか、なんて分かったもんじゃないけど。
だって、まだ。
…それを決断する時じゃないもの。)
【アカエル】
(ピクリ、震えた。顔を伏せ、笑いを堪える。
面白い、面白い。本当にこのゲームで退屈を覚えることがない)
「ーーーーーーーー」
【唐揚げ食べたい】
「………なるほど、な。」
(彼女の言葉を聞いて、そう呟き。
十分に可能性のある未来、彼女の言葉は十分に聞く価値があった。
頷き。
緑茶を飲み干して。
静かに、立ち上がる。)
「まあ、冗談だよ。
そうじゃなくなるかもしれないけどね。」
(ケラケラと笑って、そう嘯く。
アカエルの元から去ろうと足を運び始めては、最後に長々と天使へ呟いた。)
「"どうせ"このゲーム…“前回だけ”じゃないだろうから、時間がありゃ過去データでも見ながら一緒に御茶会議(ティーパーティ)でもしたいけど。
どうにも、全員生還のルートがあるみたいだからね。その鍵でも探すことにするよ。
嗚呼、このゲーム。
十分に"利用"させてもらうぜ。…生存第一だが、とある人を見つけたいもんでな。
あばよ、死に腐れクソ天使。」
【アカエル】
「ふふ……僕は君にも一目置いているんだ。君がどのような結末を迎えるか、楽しみにしているよ。
せいぜい頑張ってくれたまえ、唐揚げ大好きクン。……いや、ーーーー」
(立ち去ろうとする彼の目の前に亡霊のように現れ、恐ろしく嫌らしい笑顔で、顔を覗き込む。
わざとらしく、一語一語区切りながら、彼の本名を口にする。当然、天使の言葉に死亡判定はないようだ。高らかに笑うと、煙のように消えるのであった)
あいごころ。(20th)-ふ〇なっしー(1st)
【あいごころ。】
さて、ショッピングモールから戻ってきたあと。少将色んなことがありすぎて疲れてしまった。…たとえば今回の放送のこと、とか。…まだ考えるべきことはある。だが、今は休むべきだろう。と、言う訳で。
「やっぱりここよね。」
場所は移って商店街の温泉へ。今回はコートを来ているので前回のような失態なく服を脱ぐ。さて、混浴とは言ったもののまあ、この状況では誰も入っていないだろうとタカをくくって浴場へ入っていった。
【ふ〇なっしー】
「なっしーなっしーなっしー」
ゆったり湯船に浸かる、そう……先客が居たのだ……なしとか訳の分からねぇことを呟いているが決して頭はおかしくはない。おかしくはない!!!!
「ぐんぐんぐーんぐんへへへへwwwたぁのしぃなぁ〜たぁのしぃなぁ〜wwww」
【あいごころ。】
「……」
さて、この状況をどう説明しようか。おそらく今まであった人物は常識人であったのだろう。少なくともこんな奇声を発するような人物は初めて見た。…NPCだろうか、という少し現実逃避じみた考えが思い浮かぶ。きっとそうだ。NPCが入っているんだじゃあ日を改めようかなぁと。
「…お邪魔したわね。」
入ってしまったがまあ、問題ない。一応相手に聞こえるか聞こえないかぐらいの声で浴場から出ていこうとする。
【ふ〇なっしー】
「出ていくなんて寂しいことしないでおくれよ〜!こちとらこんなゲームが始まって嫌な気分なんだよ」
と、傍観決め込むクソ野郎が申しとおります←
「君はこのゲーム……どう思ってるー?」
率直に聞く、まぁ他の奴らがどう思っているか知りたいし知った方が面白く見れる。
【あいごころ。】
「…はぁ」
どうやらNPCではなかったようで。残念だなぁと遠い目をしつつ相手と向き合う。…嫌な気分であそこまで奇妙なことを言ってるのだとしたらかなり危ない人物だと思う。というか楽しいっていってたじゃないか…
「ま、少なくともいい趣味ではないわよね。」
そう。本当にいい趣味では無いなと。というかこのゲームをいい趣味だと言えるやつはいるのだろうか…?ああ、そういえば1人知っているな。そう思いながら軽くお湯を体にかける。うん。いい温度だ。
【ふ〇なっしー】
「ほうほう……そうかぁ……うんうん、なら私と楽しいゲームしなぁい?大丈夫!優しくするからさぁ……ポーカーかジョーカー当てゲームとかどうよ? 」
いつの間にか手に握られていたトランプ……それを手に握りながら広げるふ○なっしー
「うんうん〜やりたいかぁ〜そうかそうかぁ〜……んじゃジョーカー当てゲームやろうぜ」
【あいごころ。】
「私、やりたいなんて言ってないのだけれど。」
冷静にそう突っ込んだ。しかしちゃくちゃくと準備は進められていくようで…なんというか、ペースが乱される相手だ。正直まともに相手するだけ無駄だろうか…?というよりも、だ。
「あなた浴場にトランプって…なかなか珍妙なことするわね…」
なにをしてるのだろうかこの人は。言動が突飛で正直ついていける気がしなかった。ついジト目になってしまう。狐面をそっと触っておく。
【ふ〇なっしー】
「んで、やるのかい?ゲームをYESかNoかで」
返事を聞きたい、御託はいいさっさとゲームをやりたい。ただそれだけ
【あいごころ。】
「…はぁ。やるわ。」
どうせNoといってもやらされるのだろう。こういうのはそういうタイプだ。何となく知っている。…しかし、JOKER当てゲームとは、一体?
「いったいどういう遊びなのかしら?」
言葉からある程度の予測は出来るがいまいち想像しにくい。
【ふ〇なっしー】
「簡単なルールさ……僕がシャッフルしたトランプをばら撒く。地面に落ちたトランプを君がジョーカーか否か当てるゲームさ…簡単だろう?誰にでも出来る、誰にでも考えつく簡単なゲームさ」
そういうとトランプをシャッフルする。念入りにちゃんとイカサマをしないように
「んじゃ準備は出来たかな?YESかNoで答えてもらおうか」
【あいごころ。】
「…ああ、そういうことね…」
理解した。つまり。言わせたい、ということなのだろう。だから、あえてこういった。
「やるわ。…別に意思は通じるから、それでもいいでしょう?」
狐面を触り、ニヤリと笑ってみる。これがブラフかどうかは知らない。ただ、少し。相手の意に乗ってやろうじゃないか。そう思いながら相手を見る。
…ああ、少し面倒臭い相手だなぁ。そう思いながら。
【ふ〇なっしー】
「うわぁww露骨に警戒するぅwwwwwwまぁ、君が予想しているゾディアックでは無いんだけどね」
そう言うとカードをばら撒く、パラパラと地面に落ちるカードは表だったり裏だったりする
「さぁ当ててご覧、きっちり52枚あるよ」
【あいごころ。】
「…はぁ。」
またため息を吐く。どうやら相手は真面目にやる気はないようだ。
「…それは、JOKERを抜いている、という認識でいいのかしら?」
正直2枚の誤差など数えてみなければわかったものでは無い。が、もし本当に52枚しかないのであればそれはJOKERが入っていないということになる。…まあ、ひねくれ者ならJOKER以外の他のカードを、抜いているかもしれないが。
【ふ〇なっしー】
「なら……全部捲ってみれば?何も……俺は回数制限なんてしてないぜ?」
余裕な態度でそういう、つまりジョーカーが入っているそういう事…
「そらめくれよ……めくれよ、別に何回とか言ってないぜ?ほら早くしろよ……かきょ……げふんげふん」
【あいごころ。】
「…」
面倒臭い相手だなぁと。今までとはまた違うベクトルで。さて、なら適当に何枚かめくってみようか。
「…じゃあめくりましょうか。」
そもそも本当にあるなら表を向いているかもしれない。が。
そう思いそこら辺のものをいくつか拾う。
【ふ〇なっしー】
「うんうん、さぁどんどん捲って〜どうせ全部ジョーカーだからさ」
ネタバレをしれっと言う。
「さぁて……んじゃジョーカーは当てられたかなぁ?」
ニヤニヤ笑いながら問いかける。勝ちは既に決まってるようなゲームだ。つまり最初っから負けが決まったゲームをしている。というかヒガンバナの蝋燭のゲームもふ○なっしーの負けが決まっているような物。
どれだけ気づけるか、どれだけ答えにたどり着くかそれを見たいだけなのだ……まぁ、相手も全てがジョーカーという事には気づかなかったが…少し意地悪だったかな?
【あいごころ。】
「…ああ、そういう。」
全てJOKER。自分を負けとしたことを前提としたゲーム。なるほど。確かにこれなら…
「わたしのかち、ってことね。…まあ、どちらかと言えば負けかもだけれど。」
少し考えれば予測は出来た。ただどうやら簡単なことすら気づけなかったのも事実。どうやら自分でも分からないほど疲れているらしい。
「…で、これに対して私はどう反応すればよかったのかしら?」
特に悔しい、という感情はない。ただ試合に勝って勝負に負けた。それだけのこと。
【ふ〇なっしー】
「うん……そうだなぁ……そうだなぁ……なやもう1回遊べるドン!」
どんどかどんどか
地面に落ちたトランプを回収するとまた別な物を………そう、次はふ○なっしートランプだった
「そうだなぁ…………ネタ尽きたし好きなマーク3枚取ってね。スペード、クラブ、ハート、ダイアの中から選んでね。」
【あいごころ。】
「…あなたはトランプどんだけ持ってるのかしら。」
トランプマニアかなにかだろうか?とそんなくだらないことまで考えてしまう。どうやらあちらのペースに飲み込まれているらしい。
「…まあ、適当でいいわ。」
そういって目に付いたダイヤ、ハート、クローバーを取る。今度は何をするつもりなのだろうか、と少しだけ憂鬱になった。
【ふ〇なっしー】
「君ってもしかして天秤、双子、水瓶だったりする?ゾディアック……いや、牡牛、乙女、山羊もあるか〜…………んまぁどの道、スペードかダイアだね。君が持っているゾディアックは」
そう、言う。ダイアを1番初めに手を取り、残したのはスペード。
まぁ雑だがゾディアック当てゲームだ
「さて、どうかな?まぁ9分の1の確率だからね、他のカードかもしれないし……でもまぁ……確実にダイア、スペードの中にあるよね?(多分)」
【あいごころ。】
「あら、ざんねん…その中に私のゾディアックはないわね。」
なんでもないように言う。まあ、軽い占いのようなものなのだろう。すっと狐面を触る。…湯気に濡れてるなぁ
「でも、惜しいところまではいってるわ。あなたの勝ちかしら?」
そういってクスクスと笑う。なんだ、なかなか楽しいゲームをやってくるじゃないか。そう思いながら。
【ふ〇なっしー】
「あ、その感じだとあるね」
と、キッパリ言い切る。余裕な態度を見ればわかる確実にある(多分)
多分ある
「んー………そうだね、君の嫌いなマークを僕に渡してもらおうか」
【あいごころ。】
「そうね。私が当てられたから嘘を言ってるかもしれないものね。」
むしろ当たっていても当たっていなくても無いと答えるだろう…いや、当たっていなかったら逆にあると答えたほうがいいのかな?
「嫌いなマーク?そうねぇ…クローバーかしらね。」
なんとなく、インスピレーションで決める。こういうのは直感で選んだ方が面白い結果がでるのだ。
【ふ〇なっしー】
「ほーん……クラブねぇ……ならダイア、ハート、スペードしか残らないね……別になんともないって思っているカードを僕に渡してもらおうか。」
クラブを受け取りニヤニヤしながらあいごころを見る。
胸の方に視線が行っている←
【あいごころ。】
「そうねぇ…なら、ハートかしらね。」
そういってハートを返す。やはりこういう相手の思考をゲームに例える、というのはとても好きだ。少なくともどんな結果が出るのかとても楽しみになるから。
「さて、これでなにがわかるのかしら」
そういって、またクスクス笑う。どうやら少し楽しくなってきたようだ。
…胸に視線がいっていることに彼女は気づいていないのだが。
【ふ〇なっしー】
「じゃあ……好きなカードを僕に渡してもらおうか」
胸に視線が行っている、凝視している。そりゃあもう穴が開くくらいに
「…………………(胸小さいなぁ)」
【あいごころ。】
「好きなカード?んー…スペードかしらね。」
そう言いながらスペードを渡す。手元にはダイヤが残っている。ダイヤ…金、とかそういうイメージがあるわね、とかそういうことを考えてみる。
何気なくあいての表情を見ると…なにやら視線がおかしい事に気づく。…どうやらやっと胸を見られていたことに気づいたらしい。
「…っ!ちょ、どこみてるのよ…」
仮の肉体とはいえ見られることはとても恥ずかしい。どうやら彼女は仮の肉体だと割り切ることが出来ないようだ。
【ふ〇なっしー】
「スペードかぁ……なら君の性格上………牡牛とかありそうだね……君って言葉の誘導が得意そうだから」
そう言うとカードを全て回収する。ちなみに脳内写真にきっちりと全裸写真を収めておいた。
可愛い体をしていたな←
「うんうん、ひんぬーっていいよね、うんうん」
【あいごころ。】
「牡牛、ねぇ…その言葉、そっくりそのまま返すわ。」
確かキーワードを設定してそれを相手が言ったら情報が貰える、だったか。ペースを乱す、という点において秀でている彼女にとっても牡牛というのはありえるな、と考える。
「あとひん…にゅぅ…っ、に関してはあなたも一緒でしょう…?」
恥ずかしくて少々言葉に詰まってしまう。確かにないけれども。胸。…それは仮の肉体だから出会って本当の肉体はもう少しあるし、と心の中でぶつぶつと文句を言う。…少しだけムッとしているだろうなぁ。
相手の胸もそこまでないように見えるが。
【ふ〇なっしー】
「んー、それは無いかなぁ〜……そういうの向いてないからなぁ………まぁ、君がどう思うかは勝手だね」
そう言うとニッコリ笑う。
「胸……?胸か……君よりはあると思うけどね!!!!まぁ、眼福眼福!!!いいもの見せてもらったよ!!!はいお礼にこれあげる」
トランプを渡すふ○なっしー。特に仕掛けは無い
【あいごころ。】
「あ、ありがとう…?」
正直胸を見られて副眼と言われてもあまり嬉しくはないのだが。…というよりこのトランプをどう使えと。…まあ、確かに自分の胸は小さいが。この体型では当たり前っちゃ当たり前である。
「…それで、あなたはこの後どうするのかしら?」
なんとなく、会話が無くなってしまいそうなのでそう聞いてみた。…やっとゆっくり入れる。ズブズブと方のあたりまでお湯に浸かる。うむ。きもちよし。
【ふ〇なっしー】
「このあとー?そうだなぁ……傍観するかなぁー?適当にね、僕は参加者じゃなくて主催者側の方がいいからね」
そう言うと肩まで浸かる、仲間だったものが殺し合う……っていう最高なシチュエーションだ、みんなの反応が気になるし知りたい。
「僕的には結構良いゲームだと思うけどね」
【あいごころ。】
「主催者側…ね。」
だからこその静観。それもひとつの選択なのだろう。あながち間違いではない。動かなければリスクは減るのは当たり前のことだ。それに主催者側、という発言の意図はあまりわからない…が、恐らく。参加者側のほうはつまらない、といったところか。
「あら…そうかしら。私は悪趣味なゲームだと思うわ。」
このゲームは悪趣味。その一言に尽きる。そしてこうして対立した意見を出してくるのはこれで2人目であった。
「…あなたと、同じようなことを言ってる人を見たことあるわ。」
少しだけ似てるのかもしれない、とか思いながら。
【ふ〇なっしー】
「確かに悪趣味……って言ったらそうかもしれない……でも極1部の奴らは喜んでいる…それを見る僕、結構良いゲームだと思うんだよね……ああやって言葉に踊らされて馬鹿まし真面目にゲームやってるのさ……ゲームが始まって最初にあった奴も『アゾート全員殺して仲間と脱出する』とかいうクソみたいな事言ってるサイコパス野郎だったし……もしあいつの顔が1万円札に印刷されてたら速攻5000円札2枚に崩してから持ち歩くね、ああやって自分が強いから正しいとか思ってる奴…嫌いなんだよねぇー、クラスメイトにかける慈悲すら無いし多分この中で1番狂ってるんじゃねぇの?アイツ」
そう言うとボロクソと言う…最初にあった奴…そうヒガンバナ、あの腐れメガネ。自分が正しいと思ってる奴は別にどうでといいんだがああやって殺しを仲間と〜とか誰かの〜とかいうクソみたいな建前で正当化するような奴は嫌い
なんのためにクラスメイトになって同じ学び舎で学んだんだって話
「君さ……結構冷たい人間だと思うんだけど……そうだな…例えば……目の前に殺されそうになっている人間が居てもそれを無視する位の冷たさ?分かりにくいと思うけど……合ってるよね?」
【あいごころ。】
「……」
目の前で殺されそうになっている人物がいたとしてもそれを無視するような、か。そんか冷たい人間に思われているのだろうか。…いや。間違っていない。悪趣味、なんてのも私がそう思っているから。でもね。ちょっとだけ違うのは…
「…見捨てる、までは行かないと思うわ。最低限の道徳はあるつもり。目の前で殺されそうならば、ちょっとぐらいは手を差し伸べるわ。」
…この状況で道徳を語るか。こんな状況では道徳なんてクソの役にもたちやしないのに。…わかってる。ただ、私は“知りたい”だけなんだ。
「…まあ、そんなところね。」
…すこし、この場から離れたくなった。もう出ようかと思い湯から立ち上がる。
【ふ〇なっしー】
「あれ?もう上がるの?ゆっくりしていきんしゃーいほら法隆寺も見えるよ?」
指さすと法隆寺が……ある!!!!
無いけどある!!!ある!!!!あるんだ!!!法隆寺はあるのだ!!!!
「ほらー妹子〜ゆっくりしていきんしゃーい」
【あいごころ。】
「…いや、どこによ。」
思わずまた突っ込んでしまう。…やはり彼女といるとペースが崩される。はぁ…とため息を吐く。…そういえば、まだ名前を聞いていなかったなぁと。
「…私はあいごころ。あなた、名前は?」
別に真名でもいいけれど、と付け足してみる。まあ、ただの軽口だ。
【ふ〇なっしー】
「そうだね、ぼくの名前はフリッツでいいよ。よろしくあいごころちゃん……今度一緒に寝なーい?←」
性欲だだ漏れ野郎のクソなし、変態だぁぁ!
「んじゃフレンド交換しよーぜー」
【あいごころ。】
「いや、遠慮しておくわ。」
…軽口だろうか?というよりフリッツなんていたかしら、とか思いながらコロパットを取り出そうと…するがよく考えたら脱衣場である。…普通浴場の方に持ってこないわよね?とか思いながらコロパットを取りに行った。特に何事もなく戻ってくる。
「待たせたわね。」
そういうとコロパットにフレンド登録を済ます。…毎回思う。なんでフレンド登録、なんて名前にしたのだろうか、と。…そこでひとつ気づいたことがある。
「…あなた。ふ〇なっしーなのね…」
フレンド登録したことで簡単にわかってしまった。
【ふ〇なっしー】
「ん?あーそうだよ、中身と着ぐるみの時と名前変えてるんだよねぇ〜うん、うんその方が良いだろう?分かりにくくてさ」
とニコニコと笑うふ○なっしー、何故あのメガネが1stという事に気づいていたのか分からないがまぁ大方お仲間の事だろう。なんで気付いたのかわかんないけど←
「あいごころちゃん好きだー、結婚してくれーすきすきーだーいすきーへへへwwww」
明らかに冗談、本気にしてない。まぁ、軽く無視されるであろうと踏んでいる。
【あいごころ。】
「あら、私もあなたのこと好きよ?」
そういってニッコリ笑う。ちょっとだけまた狐面を触るとクスクスっと笑ってみる。
「少なくとも、私はね。…多分、相性の悪い人は出てくるだろうけど。」
面倒臭い相手。でも、イラつく相手ではなかった。そう。たとえば例のアイツみたいに。
「さて、先にお暇するわね。」
そういって浴場から出ていく。…ああ、また食えない相手である。が、まあ、悪い気分ではない。…きっと、梨の効果かしらねぇ、とか巫山戯たことを考えてみたりして。
【あいごころ。】
さて、ショッピングモールから戻ってきたあと。少将色んなことがありすぎて疲れてしまった。…たとえば今回の放送のこと、とか。…まだ考えるべきことはある。だが、今は休むべきだろう。と、言う訳で。
「やっぱりここよね。」
場所は移って商店街の温泉へ。今回はコートを来ているので前回のような失態なく服を脱ぐ。さて、混浴とは言ったもののまあ、この状況では誰も入っていないだろうとタカをくくって浴場へ入っていった。
【ふ〇なっしー】
「なっしーなっしーなっしー」
ゆったり湯船に浸かる、そう……先客が居たのだ……なしとか訳の分からねぇことを呟いているが決して頭はおかしくはない。おかしくはない!!!!
「ぐんぐんぐーんぐんへへへへwwwたぁのしぃなぁ〜たぁのしぃなぁ〜wwww」
【あいごころ。】
「……」
さて、この状況をどう説明しようか。おそらく今まであった人物は常識人であったのだろう。少なくともこんな奇声を発するような人物は初めて見た。…NPCだろうか、という少し現実逃避じみた考えが思い浮かぶ。きっとそうだ。NPCが入っているんだじゃあ日を改めようかなぁと。
「…お邪魔したわね。」
入ってしまったがまあ、問題ない。一応相手に聞こえるか聞こえないかぐらいの声で浴場から出ていこうとする。
【ふ〇なっしー】
「出ていくなんて寂しいことしないでおくれよ〜!こちとらこんなゲームが始まって嫌な気分なんだよ」
と、傍観決め込むクソ野郎が申しとおります←
「君はこのゲーム……どう思ってるー?」
率直に聞く、まぁ他の奴らがどう思っているか知りたいし知った方が面白く見れる。
【あいごころ。】
「…はぁ」
どうやらNPCではなかったようで。残念だなぁと遠い目をしつつ相手と向き合う。…嫌な気分であそこまで奇妙なことを言ってるのだとしたらかなり危ない人物だと思う。というか楽しいっていってたじゃないか…
「ま、少なくともいい趣味ではないわよね。」
そう。本当にいい趣味では無いなと。というかこのゲームをいい趣味だと言えるやつはいるのだろうか…?ああ、そういえば1人知っているな。そう思いながら軽くお湯を体にかける。うん。いい温度だ。
【ふ〇なっしー】
「ほうほう……そうかぁ……うんうん、なら私と楽しいゲームしなぁい?大丈夫!優しくするからさぁ……ポーカーかジョーカー当てゲームとかどうよ? 」
いつの間にか手に握られていたトランプ……それを手に握りながら広げるふ○なっしー
「うんうん〜やりたいかぁ〜そうかそうかぁ〜……んじゃジョーカー当てゲームやろうぜ」
【あいごころ。】
「私、やりたいなんて言ってないのだけれど。」
冷静にそう突っ込んだ。しかしちゃくちゃくと準備は進められていくようで…なんというか、ペースが乱される相手だ。正直まともに相手するだけ無駄だろうか…?というよりも、だ。
「あなた浴場にトランプって…なかなか珍妙なことするわね…」
なにをしてるのだろうかこの人は。言動が突飛で正直ついていける気がしなかった。ついジト目になってしまう。狐面をそっと触っておく。
【ふ〇なっしー】
「んで、やるのかい?ゲームをYESかNoかで」
返事を聞きたい、御託はいいさっさとゲームをやりたい。ただそれだけ
【あいごころ。】
「…はぁ。やるわ。」
どうせNoといってもやらされるのだろう。こういうのはそういうタイプだ。何となく知っている。…しかし、JOKER当てゲームとは、一体?
「いったいどういう遊びなのかしら?」
言葉からある程度の予測は出来るがいまいち想像しにくい。
【ふ〇なっしー】
「簡単なルールさ……僕がシャッフルしたトランプをばら撒く。地面に落ちたトランプを君がジョーカーか否か当てるゲームさ…簡単だろう?誰にでも出来る、誰にでも考えつく簡単なゲームさ」
そういうとトランプをシャッフルする。念入りにちゃんとイカサマをしないように
「んじゃ準備は出来たかな?YESかNoで答えてもらおうか」
【あいごころ。】
「…ああ、そういうことね…」
理解した。つまり。言わせたい、ということなのだろう。だから、あえてこういった。
「やるわ。…別に意思は通じるから、それでもいいでしょう?」
狐面を触り、ニヤリと笑ってみる。これがブラフかどうかは知らない。ただ、少し。相手の意に乗ってやろうじゃないか。そう思いながら相手を見る。
…ああ、少し面倒臭い相手だなぁ。そう思いながら。
【ふ〇なっしー】
「うわぁww露骨に警戒するぅwwwwwwまぁ、君が予想しているゾディアックでは無いんだけどね」
そう言うとカードをばら撒く、パラパラと地面に落ちるカードは表だったり裏だったりする
「さぁ当ててご覧、きっちり52枚あるよ」
【あいごころ。】
「…はぁ。」
またため息を吐く。どうやら相手は真面目にやる気はないようだ。
「…それは、JOKERを抜いている、という認識でいいのかしら?」
正直2枚の誤差など数えてみなければわかったものでは無い。が、もし本当に52枚しかないのであればそれはJOKERが入っていないということになる。…まあ、ひねくれ者ならJOKER以外の他のカードを、抜いているかもしれないが。
【ふ〇なっしー】
「なら……全部捲ってみれば?何も……俺は回数制限なんてしてないぜ?」
余裕な態度でそういう、つまりジョーカーが入っているそういう事…
「そらめくれよ……めくれよ、別に何回とか言ってないぜ?ほら早くしろよ……かきょ……げふんげふん」
【あいごころ。】
「…」
面倒臭い相手だなぁと。今までとはまた違うベクトルで。さて、なら適当に何枚かめくってみようか。
「…じゃあめくりましょうか。」
そもそも本当にあるなら表を向いているかもしれない。が。
そう思いそこら辺のものをいくつか拾う。
【ふ〇なっしー】
「うんうん、さぁどんどん捲って〜どうせ全部ジョーカーだからさ」
ネタバレをしれっと言う。
「さぁて……んじゃジョーカーは当てられたかなぁ?」
ニヤニヤ笑いながら問いかける。勝ちは既に決まってるようなゲームだ。つまり最初っから負けが決まったゲームをしている。というかヒガンバナの蝋燭のゲームもふ○なっしーの負けが決まっているような物。
どれだけ気づけるか、どれだけ答えにたどり着くかそれを見たいだけなのだ……まぁ、相手も全てがジョーカーという事には気づかなかったが…少し意地悪だったかな?
【あいごころ。】
「…ああ、そういう。」
全てJOKER。自分を負けとしたことを前提としたゲーム。なるほど。確かにこれなら…
「わたしのかち、ってことね。…まあ、どちらかと言えば負けかもだけれど。」
少し考えれば予測は出来た。ただどうやら簡単なことすら気づけなかったのも事実。どうやら自分でも分からないほど疲れているらしい。
「…で、これに対して私はどう反応すればよかったのかしら?」
特に悔しい、という感情はない。ただ試合に勝って勝負に負けた。それだけのこと。
【ふ〇なっしー】
「うん……そうだなぁ……そうだなぁ……なやもう1回遊べるドン!」
どんどかどんどか
地面に落ちたトランプを回収するとまた別な物を………そう、次はふ○なっしートランプだった
「そうだなぁ…………ネタ尽きたし好きなマーク3枚取ってね。スペード、クラブ、ハート、ダイアの中から選んでね。」
【あいごころ。】
「…あなたはトランプどんだけ持ってるのかしら。」
トランプマニアかなにかだろうか?とそんなくだらないことまで考えてしまう。どうやらあちらのペースに飲み込まれているらしい。
「…まあ、適当でいいわ。」
そういって目に付いたダイヤ、ハート、クローバーを取る。今度は何をするつもりなのだろうか、と少しだけ憂鬱になった。
【ふ〇なっしー】
「君ってもしかして天秤、双子、水瓶だったりする?ゾディアック……いや、牡牛、乙女、山羊もあるか〜…………んまぁどの道、スペードかダイアだね。君が持っているゾディアックは」
そう、言う。ダイアを1番初めに手を取り、残したのはスペード。
まぁ雑だがゾディアック当てゲームだ
「さて、どうかな?まぁ9分の1の確率だからね、他のカードかもしれないし……でもまぁ……確実にダイア、スペードの中にあるよね?(多分)」
【あいごころ。】
「あら、ざんねん…その中に私のゾディアックはないわね。」
なんでもないように言う。まあ、軽い占いのようなものなのだろう。すっと狐面を触る。…湯気に濡れてるなぁ
「でも、惜しいところまではいってるわ。あなたの勝ちかしら?」
そういってクスクスと笑う。なんだ、なかなか楽しいゲームをやってくるじゃないか。そう思いながら。
【ふ〇なっしー】
「あ、その感じだとあるね」
と、キッパリ言い切る。余裕な態度を見ればわかる確実にある(多分)
多分ある
「んー………そうだね、君の嫌いなマークを僕に渡してもらおうか」
【あいごころ。】
「そうね。私が当てられたから嘘を言ってるかもしれないものね。」
むしろ当たっていても当たっていなくても無いと答えるだろう…いや、当たっていなかったら逆にあると答えたほうがいいのかな?
「嫌いなマーク?そうねぇ…クローバーかしらね。」
なんとなく、インスピレーションで決める。こういうのは直感で選んだ方が面白い結果がでるのだ。
【ふ〇なっしー】
「ほーん……クラブねぇ……ならダイア、ハート、スペードしか残らないね……別になんともないって思っているカードを僕に渡してもらおうか。」
クラブを受け取りニヤニヤしながらあいごころを見る。
胸の方に視線が行っている←
【あいごころ。】
「そうねぇ…なら、ハートかしらね。」
そういってハートを返す。やはりこういう相手の思考をゲームに例える、というのはとても好きだ。少なくともどんな結果が出るのかとても楽しみになるから。
「さて、これでなにがわかるのかしら」
そういって、またクスクス笑う。どうやら少し楽しくなってきたようだ。
…胸に視線がいっていることに彼女は気づいていないのだが。
【ふ〇なっしー】
「じゃあ……好きなカードを僕に渡してもらおうか」
胸に視線が行っている、凝視している。そりゃあもう穴が開くくらいに
「…………………(胸小さいなぁ)」
【あいごころ。】
「好きなカード?んー…スペードかしらね。」
そう言いながらスペードを渡す。手元にはダイヤが残っている。ダイヤ…金、とかそういうイメージがあるわね、とかそういうことを考えてみる。
何気なくあいての表情を見ると…なにやら視線がおかしい事に気づく。…どうやらやっと胸を見られていたことに気づいたらしい。
「…っ!ちょ、どこみてるのよ…」
仮の肉体とはいえ見られることはとても恥ずかしい。どうやら彼女は仮の肉体だと割り切ることが出来ないようだ。
【ふ〇なっしー】
「スペードかぁ……なら君の性格上………牡牛とかありそうだね……君って言葉の誘導が得意そうだから」
そう言うとカードを全て回収する。ちなみに脳内写真にきっちりと全裸写真を収めておいた。
可愛い体をしていたな←
「うんうん、ひんぬーっていいよね、うんうん」
【あいごころ。】
「牡牛、ねぇ…その言葉、そっくりそのまま返すわ。」
確かキーワードを設定してそれを相手が言ったら情報が貰える、だったか。ペースを乱す、という点において秀でている彼女にとっても牡牛というのはありえるな、と考える。
「あとひん…にゅぅ…っ、に関してはあなたも一緒でしょう…?」
恥ずかしくて少々言葉に詰まってしまう。確かにないけれども。胸。…それは仮の肉体だから出会って本当の肉体はもう少しあるし、と心の中でぶつぶつと文句を言う。…少しだけムッとしているだろうなぁ。
相手の胸もそこまでないように見えるが。
【ふ〇なっしー】
「んー、それは無いかなぁ〜……そういうの向いてないからなぁ………まぁ、君がどう思うかは勝手だね」
そう言うとニッコリ笑う。
「胸……?胸か……君よりはあると思うけどね!!!!まぁ、眼福眼福!!!いいもの見せてもらったよ!!!はいお礼にこれあげる」
トランプを渡すふ○なっしー。特に仕掛けは無い
【あいごころ。】
「あ、ありがとう…?」
正直胸を見られて副眼と言われてもあまり嬉しくはないのだが。…というよりこのトランプをどう使えと。…まあ、確かに自分の胸は小さいが。この体型では当たり前っちゃ当たり前である。
「…それで、あなたはこの後どうするのかしら?」
なんとなく、会話が無くなってしまいそうなのでそう聞いてみた。…やっとゆっくり入れる。ズブズブと方のあたりまでお湯に浸かる。うむ。きもちよし。
【ふ〇なっしー】
「このあとー?そうだなぁ……傍観するかなぁー?適当にね、僕は参加者じゃなくて主催者側の方がいいからね」
そう言うと肩まで浸かる、仲間だったものが殺し合う……っていう最高なシチュエーションだ、みんなの反応が気になるし知りたい。
「僕的には結構良いゲームだと思うけどね」
【あいごころ。】
「主催者側…ね。」
だからこその静観。それもひとつの選択なのだろう。あながち間違いではない。動かなければリスクは減るのは当たり前のことだ。それに主催者側、という発言の意図はあまりわからない…が、恐らく。参加者側のほうはつまらない、といったところか。
「あら…そうかしら。私は悪趣味なゲームだと思うわ。」
このゲームは悪趣味。その一言に尽きる。そしてこうして対立した意見を出してくるのはこれで2人目であった。
「…あなたと、同じようなことを言ってる人を見たことあるわ。」
少しだけ似てるのかもしれない、とか思いながら。
【ふ〇なっしー】
「確かに悪趣味……って言ったらそうかもしれない……でも極1部の奴らは喜んでいる…それを見る僕、結構良いゲームだと思うんだよね……ああやって言葉に踊らされて馬鹿まし真面目にゲームやってるのさ……ゲームが始まって最初にあった奴も『アゾート全員殺して仲間と脱出する』とかいうクソみたいな事言ってるサイコパス野郎だったし……もしあいつの顔が1万円札に印刷されてたら速攻5000円札2枚に崩してから持ち歩くね、ああやって自分が強いから正しいとか思ってる奴…嫌いなんだよねぇー、クラスメイトにかける慈悲すら無いし多分この中で1番狂ってるんじゃねぇの?アイツ」
そう言うとボロクソと言う…最初にあった奴…そうヒガンバナ、あの腐れメガネ。自分が正しいと思ってる奴は別にどうでといいんだがああやって殺しを仲間と〜とか誰かの〜とかいうクソみたいな建前で正当化するような奴は嫌い
なんのためにクラスメイトになって同じ学び舎で学んだんだって話
「君さ……結構冷たい人間だと思うんだけど……そうだな…例えば……目の前に殺されそうになっている人間が居てもそれを無視する位の冷たさ?分かりにくいと思うけど……合ってるよね?」
【あいごころ。】
「……」
目の前で殺されそうになっている人物がいたとしてもそれを無視するような、か。そんか冷たい人間に思われているのだろうか。…いや。間違っていない。悪趣味、なんてのも私がそう思っているから。でもね。ちょっとだけ違うのは…
「…見捨てる、までは行かないと思うわ。最低限の道徳はあるつもり。目の前で殺されそうならば、ちょっとぐらいは手を差し伸べるわ。」
…この状況で道徳を語るか。こんな状況では道徳なんてクソの役にもたちやしないのに。…わかってる。ただ、私は“知りたい”だけなんだ。
「…まあ、そんなところね。」
…すこし、この場から離れたくなった。もう出ようかと思い湯から立ち上がる。
【ふ〇なっしー】
「あれ?もう上がるの?ゆっくりしていきんしゃーいほら法隆寺も見えるよ?」
指さすと法隆寺が……ある!!!!
無いけどある!!!ある!!!!あるんだ!!!法隆寺はあるのだ!!!!
「ほらー妹子〜ゆっくりしていきんしゃーい」
【あいごころ。】
「…いや、どこによ。」
思わずまた突っ込んでしまう。…やはり彼女といるとペースが崩される。はぁ…とため息を吐く。…そういえば、まだ名前を聞いていなかったなぁと。
「…私はあいごころ。あなた、名前は?」
別に真名でもいいけれど、と付け足してみる。まあ、ただの軽口だ。
【ふ〇なっしー】
「そうだね、ぼくの名前はフリッツでいいよ。よろしくあいごころちゃん……今度一緒に寝なーい?←」
性欲だだ漏れ野郎のクソなし、変態だぁぁ!
「んじゃフレンド交換しよーぜー」
【あいごころ。】
「いや、遠慮しておくわ。」
…軽口だろうか?というよりフリッツなんていたかしら、とか思いながらコロパットを取り出そうと…するがよく考えたら脱衣場である。…普通浴場の方に持ってこないわよね?とか思いながらコロパットを取りに行った。特に何事もなく戻ってくる。
「待たせたわね。」
そういうとコロパットにフレンド登録を済ます。…毎回思う。なんでフレンド登録、なんて名前にしたのだろうか、と。…そこでひとつ気づいたことがある。
「…あなた。ふ〇なっしーなのね…」
フレンド登録したことで簡単にわかってしまった。
【ふ〇なっしー】
「ん?あーそうだよ、中身と着ぐるみの時と名前変えてるんだよねぇ〜うん、うんその方が良いだろう?分かりにくくてさ」
とニコニコと笑うふ○なっしー、何故あのメガネが1stという事に気づいていたのか分からないがまぁ大方お仲間の事だろう。なんで気付いたのかわかんないけど←
「あいごころちゃん好きだー、結婚してくれーすきすきーだーいすきーへへへwwww」
明らかに冗談、本気にしてない。まぁ、軽く無視されるであろうと踏んでいる。
【あいごころ。】
「あら、私もあなたのこと好きよ?」
そういってニッコリ笑う。ちょっとだけまた狐面を触るとクスクスっと笑ってみる。
「少なくとも、私はね。…多分、相性の悪い人は出てくるだろうけど。」
面倒臭い相手。でも、イラつく相手ではなかった。そう。たとえば例のアイツみたいに。
「さて、先にお暇するわね。」
そういって浴場から出ていく。…ああ、また食えない相手である。が、まあ、悪い気分ではない。…きっと、梨の効果かしらねぇ、とか巫山戯たことを考えてみたりして。
みかんちゃん-(2nd)エム(17th)
【みかんちゃん】
「なんでこんな嫌に静かなのよ…いや、元々静かだったかもしれないけれど…」
籠っていてもどうしようもないのだと外に出た。
怖い?そりゃ怖いに決まっているじゃない。
突然流れた放送に部屋にあった見覚えのないリュックに共有チャットのなんかすんごい何か。
異常事態を怖くない人間なんていない。多分。
少なくとも私はそうだから。
みんな適応力凄すぎるのよ。
なんて。
此処に来るまでも辺りをきょろきょろ誰か来ないものかと誰かいないものかと見渡していた。
180超の男がキョロキョロわたわたしてるなんて誰が見ても情けないだろう。
仕方ないじゃない!乙女なんだもの!
【エム】
「…………お兄さんも、クラスメイトなの?」
そんな彼に背後から声をかけたのは、140ない位の小柄な少女。
ゲームが始まり、信頼出来る仲間もまだ居ない、だからとりあえず、ホテルで情報の整理をしてからと、そして見つけたお兄さん。
普通なら怖がって無視するのだろうが、こうやって声をかけたのは、この人は多分すぐには殺しに来ないはず、なんて。
すこし賭けだったけど。
【みかんちゃん】
「ぎゃっ!?」
後ろ…というよりさらに少し低めな場所から聞こえた声に思わず肩を揺らす。
もういつもいつも不意打ちくらいすぎて私が老人だったら心臓発作起こして死んでるわよまったく。
振り替えって視認出来たその人物はまたもや小さい少女。
「はぁぁあ…もぉ、驚いて変な声出ちゃったじゃないのぉ?…」
なんてその少女に対して深い溜息。
安堵した…いや、小さい女の子だからあーんしんっ!なんてさすがに思えはしないのだけれど…いやいや、うん、安心しておこう。
「ええ、勿論クラスメイトよ?というか此処にいるのはNPC以外クラスメイトだと思うけれど…。」
とりあえず聞かれたことには応えて首を傾げる。
みんな小さくなりすぎじゃない?なんて
【エム】
「え、えっと、ごめんなさい。
……それと、知らなかったんだ、教えてくれてありがと」
ペコリと、頭を下げながら謝罪と礼を述べて。
にしても、大きいお兄さんだなって、上の方向かなくちゃ顔が見えないから、首いたくなっちゃうな。
「……クラスメイトなら、さっきのアナウンス聞いたでしょ? お兄さんはあれ、どうするの?」
要は人殺しするのか、しないのか。
生還し皆で帰ることを優先するか、殺し自分だけが生き残ることを優先するか。
そう、エムはお兄さんに聞いて
【みかんちゃん】
「あらそうなの?ならタメになってよかったわ?」
お礼をする彼女によかったよかったと微笑んで。
目線を合わせてお話する、なんてことしないのは警戒してるからとかではなく…この際気にすることではないのだが、まぁこのまま話を続けましょう。
「やぁね、お兄さんじゃなくてみかんちゃんって呼んで頂戴な?」
まず指摘するのはそこである。せめてお姉さんにしてほしいけれどそれはまぁ言ったら言ったでまた言及されそうだからお口ミッフィーで。
「それから、放送は聞いたけれど…そうね、私は人殺しなんて反対よ?見た感じ他の方法がないってわけじゃないみたいだし、ね。」
とはいえみんな信頼してはい安心とはいかないみたいだけれどなんて言葉は口にせず、ただ少なくとも自分は人を殺す気はないのだと。
無論目の前の彼女を殺す気もないのだと口にした。
【エム】
「うん、わかった、みかんちゃんって呼ぶ」
……このお兄さん、さてはオネェだな?
なんて勝手に結論付ければ、せっかくの要望なのだし、そう呼ばせてもらうことにして。
「他の方法……全員で生きて帰れるっていうやつ?」
お手手を繋いで、とか言ったか。
そんなルールがあった気がする。
そのための情報はエリアのどこかに隠されているとか、そんな感じだったか。
そう聞きつつ、即殺す、なんてならずにすんだことをひっそりと安堵して
【みかんちゃん】
「そうそう。よく分からないし人は殺したくないしとりあえずはこの方法に縋ってみるのが無難かしら?なんて思ってるのだけれど…その、あなたは…名前何かしら?」
平和主義的方法があればそれをとるのが波の人間の思考。そして私は俄然それ以外は考えてなどいないと言った素振りで。
彼女にもどうするのか聞こうとして、そういえば彼女の名前聞いてなかったと思いあたり尋ねておくことに。
【エム】
「あ、そうだった。エムはエムって言うんだ、よろしくね? みかんちゃん」
普段から自分で自分の名前を呼んでいたから、すっかり名乗るのを忘れていた。
自分で思っている以上に、この状況に緊張しているらしい。
えへへ、なんて苦笑を浮かべて。
「でもよかった、エムと同じ考えの人がいて。エムもね? みんなで一緒に帰ろうと思っててね? なかまを探してたんだ」
エムの目標は全員生還。
そのためには誰かの協力が必要で、開始してからすぐに同じ考えに会えたのは、きっと日頃の行いがいいからだろうか
【みかんちゃん】
「エムちゃんね、おっけぇよん。こちらこそよろしくね?」
苦笑い浮かべる彼女同様、笑顔を浮かべては依然変わらぬウィンク。
緊張感がないようにしてとりあえず落ち着きたいのかも。
なんて。
全員が全員そうだといいのだけれど。
少なくとも彼女は仲間といったのだから今はこの目の前の彼女の仲間として信頼したいと思う。
彼女が何かしようとも。
「じゃあ丁度よかったわぁ。私も一人じゃ何も出来ないもの。といっても何をすればいいのやら…探索って、適当に見て回ればいいのかしら?」
一人から二人になったことで不安が紛れたとでもいうように探索することを積極的に提案してみることに。
【エム】
「……うん! 一緒に探そう!」
一瞬ぽかんとしたあとに、すぐに笑みを浮かべて元気よく返答。
こうもすぐに仲間ができたのは都合がいい。
はやいうちから探索して、はやいうちに情報を見つけておく方が都合もいい。
「じゃあ、どこから探そうか」
善は急げ、という言葉もあるように、早速どこから探索しようと問いかけて
【みかんちゃん】
「ええ、とりあえずそうね…最初に此処に来た場所。"停留所"なんてどうかしら?」
彼処には最初以来踏み込んでない。
せっかくだからついでにと見る価値はあるかもしれないと。
それだけ告げるとさぁ行こうと歩き初めて、少し進んだ場所で何か思い出したというように立ち止まっては彼女に振り替えった。
「ねぇ…エムちゃんは死にたくない?人を、殺せる?」
切羽詰まったときの疑いとかそんな口調ではなく、好きな物は何?くらい端的にそんな質問を彼女に投げてみた。
【エム】
「うん、わかった!」
停留所……確かにあまり行ってなかったな、なんて。
エムは彼の言ったその提案にすぐ頷き、その後ろをついていこうとします。
……ただ、その後すぐに、投げかけられた質問には、ほんの少しだけ考える素振りを見せて。
「……エムは、死にたくないよ。誰かを殺したくもない。
みんな、クラスメイトなんだから、お友達になれるのに……」
殺し合いなんて、そもそも間違ってる。
しかも、ある程度仲良くしてからそれを始めるなんて、悪趣味もいいところで。
だから、エムは殺し合いなんてしたくないのです。殺すなんて以ての外。
少なくとも、自分からそんなことするのは嫌でした。
【みかんちゃん】
「──そう。」
その応えを聞くとくすりと微笑む。
「よかったわ♡なら、[もしも]のとき頼って頂戴な。何も出来ないけれど、そのときがくれば助けになるかも。…なんてね?」
そう言ってパッドを取り出せば彼女にフレンド申請を送る。
すると再びパッドを仕舞い、さぁ行きましょうかと歩き始めた。
[もしも]がどういうときかは彼女の判断に任せる。
なんせこちらな何もないただの善人ですから。
口から出任せだろうとなんだろうと死にたくない殺したくないという人間を見過ごしたりしない。
何事も疑わず手を差し伸べて信じておく。
だからそのまま二人で停留所まで向かうこともなんら警戒もしなかった。
【エム】
「……わかった、みかんちゃんも、何か困ったことがあったら、エムに連絡ちょうだいね?」
エムに出来ることは少ないけど、それでもきっと、誰かの役には立てるから、なんて言葉は飲み込んで。
きっと、エムなんかよりもいろんなことをみかんちゃんはできるはずだから、せめて対等な関係に、という意味でそんなふうに言って。
コロパッドを取り出せば、送られてきた申請を承諾して。
みかんちゃんの後ろをついていく間、エムは特に何をするでもなく、そのままついて行きました。
【みかんちゃん】
(移動カット♡)
辿り着いた先は停留所。
そこで二人二手に別れるととりあえずその周辺一帯を見てまわることに。
探しているついでに停留所に止まる電車。
その電車が来た、元い自分たちが来た方向を見てみてもやはり相も変わらず先は吹雪で真っ白に覆われていて。
改めて此処から戻れないことを考えてみたりもしたけれど、それ以外は特に感傷も湧かなかった。
【エム】
「…………はぁ」
探索の結果、めぼしいものは見つからなかった。
せいぜい、売店で雑誌を何冊かバックに詰め込んだくらいで。
みんなで生き残るための情報なんて見つかりませんでした。
少し、いやかなりガッカリしながら、とぼとぼと合流地点へと向かいました。
「…………あ、みかんちゃん、なにかあった?」
先に合流地点にいたみかんちゃんに、そう問いかけます。
なにか見つかってたらいいな、なんて。
【みかんちゃん】
「んーん…なぁんもなかったわぁ。まぁ、流石に最初っから見つかるほど簡単じゃないってこと────…」
戻ってきた彼女のほうを振り返り残念ながらというように首を横に振る。
彼女は売店のほうから戻ってきてその売店にも勿論人(といってもNPC)がいるわけだけど。
ちらりと目をやっただけで別段気にする必要もないソレに思わず言葉が詰まった。
「…──は?」
口から漏れた疑問。
いや、いやいやいやいやおかしいだろうソレは。
自分の思考をかき消すように目を逸らすと彼女のほうに目を向けてにこりと笑った。
「…そ、そっちは何か見つかったかしらん?」
【エム】
「えっとね、何も見つからなかったよ。
雑誌を何冊か持ってきたくらいだけど……みかんちゃん、どうかしたの?」
見つからなかった、とだけ告げる。
……が、どうもみかんちゃんの様子がおかしかった。
売店の方を見てたから、あのお姉さんがなにか関係あるのかな、なんて首をかしげて。
【みかんちゃん】
「そう…いや、ええ…大丈夫。少し、考え事をしてただけよ…」
色々なことが起こりすぎて疲れたのだろう。
疲れたから、幻覚擬きを見たのだろう。
よくあること。よくなること。
そう、思うことにした。
何より、彼女に心配させるわけにもいけないと全てのことに蓋をした。
「心配しないで?ちょっと疲れちゃってるのかも。こんな状況だからね。今日はとりあえずここまでにして休みましょうか。」
なんて笑って彼女の頭に手を置いた。
暗に下手に心配する必要もないのだというように。
【エム】
「…………? うん、わかった」
あまり釈然としないけど、みかんちゃんがそう言うなら、エムはなにか指摘するような事もしません。
それに、少し歩き回って疲れちゃいましたし、情報の整理も兼ねて、自室で休みたい、というのもありましたから。
大人しく頷いて、みかんちゃんと一緒にホテルに戻ることにしました。
【みかんちゃん】
「なんでこんな嫌に静かなのよ…いや、元々静かだったかもしれないけれど…」
籠っていてもどうしようもないのだと外に出た。
怖い?そりゃ怖いに決まっているじゃない。
突然流れた放送に部屋にあった見覚えのないリュックに共有チャットのなんかすんごい何か。
異常事態を怖くない人間なんていない。多分。
少なくとも私はそうだから。
みんな適応力凄すぎるのよ。
なんて。
此処に来るまでも辺りをきょろきょろ誰か来ないものかと誰かいないものかと見渡していた。
180超の男がキョロキョロわたわたしてるなんて誰が見ても情けないだろう。
仕方ないじゃない!乙女なんだもの!
【エム】
「…………お兄さんも、クラスメイトなの?」
そんな彼に背後から声をかけたのは、140ない位の小柄な少女。
ゲームが始まり、信頼出来る仲間もまだ居ない、だからとりあえず、ホテルで情報の整理をしてからと、そして見つけたお兄さん。
普通なら怖がって無視するのだろうが、こうやって声をかけたのは、この人は多分すぐには殺しに来ないはず、なんて。
すこし賭けだったけど。
【みかんちゃん】
「ぎゃっ!?」
後ろ…というよりさらに少し低めな場所から聞こえた声に思わず肩を揺らす。
もういつもいつも不意打ちくらいすぎて私が老人だったら心臓発作起こして死んでるわよまったく。
振り替えって視認出来たその人物はまたもや小さい少女。
「はぁぁあ…もぉ、驚いて変な声出ちゃったじゃないのぉ?…」
なんてその少女に対して深い溜息。
安堵した…いや、小さい女の子だからあーんしんっ!なんてさすがに思えはしないのだけれど…いやいや、うん、安心しておこう。
「ええ、勿論クラスメイトよ?というか此処にいるのはNPC以外クラスメイトだと思うけれど…。」
とりあえず聞かれたことには応えて首を傾げる。
みんな小さくなりすぎじゃない?なんて
【エム】
「え、えっと、ごめんなさい。
……それと、知らなかったんだ、教えてくれてありがと」
ペコリと、頭を下げながら謝罪と礼を述べて。
にしても、大きいお兄さんだなって、上の方向かなくちゃ顔が見えないから、首いたくなっちゃうな。
「……クラスメイトなら、さっきのアナウンス聞いたでしょ? お兄さんはあれ、どうするの?」
要は人殺しするのか、しないのか。
生還し皆で帰ることを優先するか、殺し自分だけが生き残ることを優先するか。
そう、エムはお兄さんに聞いて
【みかんちゃん】
「あらそうなの?ならタメになってよかったわ?」
お礼をする彼女によかったよかったと微笑んで。
目線を合わせてお話する、なんてことしないのは警戒してるからとかではなく…この際気にすることではないのだが、まぁこのまま話を続けましょう。
「やぁね、お兄さんじゃなくてみかんちゃんって呼んで頂戴な?」
まず指摘するのはそこである。せめてお姉さんにしてほしいけれどそれはまぁ言ったら言ったでまた言及されそうだからお口ミッフィーで。
「それから、放送は聞いたけれど…そうね、私は人殺しなんて反対よ?見た感じ他の方法がないってわけじゃないみたいだし、ね。」
とはいえみんな信頼してはい安心とはいかないみたいだけれどなんて言葉は口にせず、ただ少なくとも自分は人を殺す気はないのだと。
無論目の前の彼女を殺す気もないのだと口にした。
【エム】
「うん、わかった、みかんちゃんって呼ぶ」
……このお兄さん、さてはオネェだな?
なんて勝手に結論付ければ、せっかくの要望なのだし、そう呼ばせてもらうことにして。
「他の方法……全員で生きて帰れるっていうやつ?」
お手手を繋いで、とか言ったか。
そんなルールがあった気がする。
そのための情報はエリアのどこかに隠されているとか、そんな感じだったか。
そう聞きつつ、即殺す、なんてならずにすんだことをひっそりと安堵して
【みかんちゃん】
「そうそう。よく分からないし人は殺したくないしとりあえずはこの方法に縋ってみるのが無難かしら?なんて思ってるのだけれど…その、あなたは…名前何かしら?」
平和主義的方法があればそれをとるのが波の人間の思考。そして私は俄然それ以外は考えてなどいないと言った素振りで。
彼女にもどうするのか聞こうとして、そういえば彼女の名前聞いてなかったと思いあたり尋ねておくことに。
【エム】
「あ、そうだった。エムはエムって言うんだ、よろしくね? みかんちゃん」
普段から自分で自分の名前を呼んでいたから、すっかり名乗るのを忘れていた。
自分で思っている以上に、この状況に緊張しているらしい。
えへへ、なんて苦笑を浮かべて。
「でもよかった、エムと同じ考えの人がいて。エムもね? みんなで一緒に帰ろうと思っててね? なかまを探してたんだ」
エムの目標は全員生還。
そのためには誰かの協力が必要で、開始してからすぐに同じ考えに会えたのは、きっと日頃の行いがいいからだろうか
【みかんちゃん】
「エムちゃんね、おっけぇよん。こちらこそよろしくね?」
苦笑い浮かべる彼女同様、笑顔を浮かべては依然変わらぬウィンク。
緊張感がないようにしてとりあえず落ち着きたいのかも。
なんて。
全員が全員そうだといいのだけれど。
少なくとも彼女は仲間といったのだから今はこの目の前の彼女の仲間として信頼したいと思う。
彼女が何かしようとも。
「じゃあ丁度よかったわぁ。私も一人じゃ何も出来ないもの。といっても何をすればいいのやら…探索って、適当に見て回ればいいのかしら?」
一人から二人になったことで不安が紛れたとでもいうように探索することを積極的に提案してみることに。
【エム】
「……うん! 一緒に探そう!」
一瞬ぽかんとしたあとに、すぐに笑みを浮かべて元気よく返答。
こうもすぐに仲間ができたのは都合がいい。
はやいうちから探索して、はやいうちに情報を見つけておく方が都合もいい。
「じゃあ、どこから探そうか」
善は急げ、という言葉もあるように、早速どこから探索しようと問いかけて
【みかんちゃん】
「ええ、とりあえずそうね…最初に此処に来た場所。"停留所"なんてどうかしら?」
彼処には最初以来踏み込んでない。
せっかくだからついでにと見る価値はあるかもしれないと。
それだけ告げるとさぁ行こうと歩き初めて、少し進んだ場所で何か思い出したというように立ち止まっては彼女に振り替えった。
「ねぇ…エムちゃんは死にたくない?人を、殺せる?」
切羽詰まったときの疑いとかそんな口調ではなく、好きな物は何?くらい端的にそんな質問を彼女に投げてみた。
【エム】
「うん、わかった!」
停留所……確かにあまり行ってなかったな、なんて。
エムは彼の言ったその提案にすぐ頷き、その後ろをついていこうとします。
……ただ、その後すぐに、投げかけられた質問には、ほんの少しだけ考える素振りを見せて。
「……エムは、死にたくないよ。誰かを殺したくもない。
みんな、クラスメイトなんだから、お友達になれるのに……」
殺し合いなんて、そもそも間違ってる。
しかも、ある程度仲良くしてからそれを始めるなんて、悪趣味もいいところで。
だから、エムは殺し合いなんてしたくないのです。殺すなんて以ての外。
少なくとも、自分からそんなことするのは嫌でした。
【みかんちゃん】
「──そう。」
その応えを聞くとくすりと微笑む。
「よかったわ♡なら、[もしも]のとき頼って頂戴な。何も出来ないけれど、そのときがくれば助けになるかも。…なんてね?」
そう言ってパッドを取り出せば彼女にフレンド申請を送る。
すると再びパッドを仕舞い、さぁ行きましょうかと歩き始めた。
[もしも]がどういうときかは彼女の判断に任せる。
なんせこちらな何もないただの善人ですから。
口から出任せだろうとなんだろうと死にたくない殺したくないという人間を見過ごしたりしない。
何事も疑わず手を差し伸べて信じておく。
だからそのまま二人で停留所まで向かうこともなんら警戒もしなかった。
【エム】
「……わかった、みかんちゃんも、何か困ったことがあったら、エムに連絡ちょうだいね?」
エムに出来ることは少ないけど、それでもきっと、誰かの役には立てるから、なんて言葉は飲み込んで。
きっと、エムなんかよりもいろんなことをみかんちゃんはできるはずだから、せめて対等な関係に、という意味でそんなふうに言って。
コロパッドを取り出せば、送られてきた申請を承諾して。
みかんちゃんの後ろをついていく間、エムは特に何をするでもなく、そのままついて行きました。
【みかんちゃん】
(移動カット♡)
辿り着いた先は停留所。
そこで二人二手に別れるととりあえずその周辺一帯を見てまわることに。
探しているついでに停留所に止まる電車。
その電車が来た、元い自分たちが来た方向を見てみてもやはり相も変わらず先は吹雪で真っ白に覆われていて。
改めて此処から戻れないことを考えてみたりもしたけれど、それ以外は特に感傷も湧かなかった。
【エム】
「…………はぁ」
探索の結果、めぼしいものは見つからなかった。
せいぜい、売店で雑誌を何冊かバックに詰め込んだくらいで。
みんなで生き残るための情報なんて見つかりませんでした。
少し、いやかなりガッカリしながら、とぼとぼと合流地点へと向かいました。
「…………あ、みかんちゃん、なにかあった?」
先に合流地点にいたみかんちゃんに、そう問いかけます。
なにか見つかってたらいいな、なんて。
【みかんちゃん】
「んーん…なぁんもなかったわぁ。まぁ、流石に最初っから見つかるほど簡単じゃないってこと────…」
戻ってきた彼女のほうを振り返り残念ながらというように首を横に振る。
彼女は売店のほうから戻ってきてその売店にも勿論人(といってもNPC)がいるわけだけど。
ちらりと目をやっただけで別段気にする必要もないソレに思わず言葉が詰まった。
「…──は?」
口から漏れた疑問。
いや、いやいやいやいやおかしいだろうソレは。
自分の思考をかき消すように目を逸らすと彼女のほうに目を向けてにこりと笑った。
「…そ、そっちは何か見つかったかしらん?」
【エム】
「えっとね、何も見つからなかったよ。
雑誌を何冊か持ってきたくらいだけど……みかんちゃん、どうかしたの?」
見つからなかった、とだけ告げる。
……が、どうもみかんちゃんの様子がおかしかった。
売店の方を見てたから、あのお姉さんがなにか関係あるのかな、なんて首をかしげて。
【みかんちゃん】
「そう…いや、ええ…大丈夫。少し、考え事をしてただけよ…」
色々なことが起こりすぎて疲れたのだろう。
疲れたから、幻覚擬きを見たのだろう。
よくあること。よくなること。
そう、思うことにした。
何より、彼女に心配させるわけにもいけないと全てのことに蓋をした。
「心配しないで?ちょっと疲れちゃってるのかも。こんな状況だからね。今日はとりあえずここまでにして休みましょうか。」
なんて笑って彼女の頭に手を置いた。
暗に下手に心配する必要もないのだというように。
【エム】
「…………? うん、わかった」
あまり釈然としないけど、みかんちゃんがそう言うなら、エムはなにか指摘するような事もしません。
それに、少し歩き回って疲れちゃいましたし、情報の整理も兼ねて、自室で休みたい、というのもありましたから。
大人しく頷いて、みかんちゃんと一緒にホテルに戻ることにしました。
マリア(9th)-痴漢者トーマス(24th)
【痴漢者トーマス】
……うーん、元、クラスメイトが殺人鬼に…なんて考えたくはないけどねー。
…警戒くらいはしなきゃダメなんだよねー。
(30分後どころか、9分後にはもう廃工場に到着し、丁度良さそうな陰に隠れて、トロンパという人を待つ。
…廃工場を選んだのは、物が多くて隠れる場所が結構あるから。逃げ道さえ把握していれば逃げることはそこまで難しくないから。この二つだ。)
……来るにしろ来ないにしろ、あんな良くわからないことする人がねー、まともな人間とは思えないしねー。隠れてるのは正解だと思うんだけどねー。
【マリア】
『こんにちは。』
狐面に、古めかしいスーツという異様極まりない風采には、私も閉口する所ではあるのだが。
それは良い。
廃工場でわざわざ呼び出したか呼び出されたか待ち構えるなんて、訳の分からぬ行為よりは、恐らくは、怪しくない。
だが、私はあえて声をかける。
死ぬ気か?
否。
死ぬ理由がない。
『無謀なことは…良くない。
貴方、死にたい訳?
もしくは、殺したい?
どちらでもいいけれど……
互いに妙な獲物が釣れた記念に、どう?情報交換なり、取引なり。そんなのでも。』
【痴漢者トーマス】
うん?ありゃ、こんにちはだね!なんかバレちゃったねー。
うーん、死ぬ気も殺す気も…まー、多分、多分だけどね、どっちもないからねー、待ち人が来るまで隠れるつもりだったんだけど…。
ま、敵意はなさそうだしね、情報交換は全然良いよー。と言っても、私が話せる情報なんてほとんどないけどね?
あ、それと君の名前は?美人って感じの名前とご尊顔って気配がぷんぷんするんだけどねー…。当たってる?
(まぁ、不意打ちができる状況で殺しに来ないなら、敵意はないんだろう。…いや、隠れて待ってたつもりだけど意外と目立つのかな?…白スーツってのも目立つ原因かな?…しかし、ウカツ…。)
【マリア】
『…さあ?
まあ、この礼儀に則るんだとしたら、9thで良い。』
概ね察しがつかなくはない。
私が彼女だとしたら二択だ。
やるとしたなら。
無意味な事はしていないはず。
『で、待ち人って……なんでわざわざ呼び出したのかしら。
手を組むっていうお話?
それとも、名前でも握った?』
軽妙に、私は問い。
『まあ、なんにせよ……
貴方が何を考えたか聞かせてくれるかしら。ほら、端末なんてあるんだから、せっかく。』
フレンド申請を求める。
【痴漢者トーマス】
それじゃ、つまんないね?
…ここに来てついた名前があるんじゃないかなー、とは思うけどねー。
ま、キューちゃんって呼べば良い話だけどねー。
(名前を聞けなかったことを心底残念そうにしながら。とりあえず、一歩近づく。セクハラをしたいんだろうけど、斧持ちながら近付いたら殺そうとしてるようにしか見えねぇな?)
あー、待ち人さんはー。12番目のトロンパ君って人だけどねー。
ま、手を組もうとかそういうメールが来たからねー。そんだけね。
ここに来てやろうとしたことはー……。ま、お話をするだけのつもりでもあったけどね。
…ま、場合によっては、殺そうとしたかもしれないね。本当にさ、場合によってはだけどねー。
(コロパッドを取り出して。フレンド登録をして。)
【マリア】
『ふーん…?』
気のない返事。
やや間延びした声音で私は適当に返答する。別に取るに足らない範囲の情報しか取れなかったから。
『まあ良いんじゃない。
殺そうが殺すまいが、私には構わないわよ。』
だから、好きにしちまえと無責任にも背中を押し。
『ただ、そうね。
お互いにお互いが邪魔になると後々面倒だから、出しても構わない情報交換を含むっていう譲歩付きで、中立といかない?
ある程度、他に望みは叶えられなくも、無いけど……?』
中立を優先する。
12thに何かしら思い入れがあるなら、効率も良い。
【痴漢者トーマス】
そうだね。所詮、他人だしねー。
それでー、キューちゃんも他人っちゃ他人だけどねー。まぁ、少なくとも…今は殺す理由もないしね。いいよいいよー、中立でいようか?ま、そもそも、現時点でも中立みたいな物だと思ってるけどね。あ、でもやっぱり永世中立がいいのかな?ベルギーみたいにね?
(ぶっちゃけ、出せる情報ある?って言われたらブーメランパンツ貰ったよ!としか言えないまである。質問されれば答えれる分は答えれるが。)
それでね?あとね、今は望みはそんなにないねー。まぁ、色んな人に愛してるって言えればそれで…キューちゃん愛してるよ!愛してるッッッ!!
(隠れてたのに急に愛してるとか叫ぶアホがいるらしい。)
【マリア】
『ベルギーは永世中立国を保てた試しがないけどね。』
スイスとかの方が出るものではないか。というどうしようもないツッコミはやめた。ドイツ語圏の国は?と言われて、オーストリア!と声高々叫ぶにも似る。
まあネジが足りないのだろう。
私は、ある程度の不信感と皮肉を込めてジョークを口にして。
『ああ、そう。
なら、私も愛してるわよ。』
愛してる、なんてバカバカしい言葉に、取るに足らない嘘で返す。
愛する、とは。
嫌われたがっている事だと思う。
嫌われたがっているという事は、愛されたがっていることだ。
ポエミーで申し訳ないが、私に言わせれば、大体の場合、自分の感情なんて、絶対的に見えて、割と当てにならないという事だ。
そう思うから、私が自身の感情から逸れたことを、偶発的にする可能性は多分にあるわけで、この語すら、全くの信用を持ちえないものに堕落している。
『まあ、嘘かもしれないけど。』
無論、それも嘘かもしれないが。
【痴漢者トーマス】
私達が居る場所が場所だしね。場所ってのは廃工場のことじゃないね?でー、それと、私はキューちゃんのこと多分好きだしねー。守って(はぁと)なんて言われたら守っちゃうかもしれないしー、勿論優先順位ってのはあるけどねー。優先順位的に誰とでも、ほら、キューちゃんとも敵対する自信はあるわけでー。
で、そういう感じの私としてはねー、誰かとスイスみたいにどうでもいい相手で居続けるってのは難しそうじゃないってことね?ある程度の中立は保ててもさ。
これに外交的に近い国はどこだったかな?どうでもいいけどね。
(自分のやるつもりであることは一貫してる。ただ、話し方が衝動的で分かりづらい。
簡単な話、今は中立で全然いいけど、マリアと他の人の関係次第で友好的か敵対的かになるかも知れないよ、ってことだね。簡単だね、当たり前の話だね。)
愛される、ね。良いよねー、愛されるって。私はタダの乙女だからねー、愛してるって言われるとキュンキュンしちゃうねー!
テンションがあがり、あがりーね!
いやー、私のような博愛主義者としては、皆のことを守りたいなー、なんて思うけど、人が大して信用できないってのも知ってる訳でねー。そこは何とも難しい話…難しい話じゃない、ね?
……あ、そうね。結局、何か質問ってあるね?私に情報なんて多分ないけどね、答えられることなら答えるよー。
私の方は聞きたいことも別にそこまでないしねー、今のところさ。
【マリア】
『…今のところはないわ。』
まあ、こんな具合に。
『じゃあね。』
私は無愛想に立ち去った
【痴漢者トーマス】
……うーん、元、クラスメイトが殺人鬼に…なんて考えたくはないけどねー。
…警戒くらいはしなきゃダメなんだよねー。
(30分後どころか、9分後にはもう廃工場に到着し、丁度良さそうな陰に隠れて、トロンパという人を待つ。
…廃工場を選んだのは、物が多くて隠れる場所が結構あるから。逃げ道さえ把握していれば逃げることはそこまで難しくないから。この二つだ。)
……来るにしろ来ないにしろ、あんな良くわからないことする人がねー、まともな人間とは思えないしねー。隠れてるのは正解だと思うんだけどねー。
【マリア】
『こんにちは。』
狐面に、古めかしいスーツという異様極まりない風采には、私も閉口する所ではあるのだが。
それは良い。
廃工場でわざわざ呼び出したか呼び出されたか待ち構えるなんて、訳の分からぬ行為よりは、恐らくは、怪しくない。
だが、私はあえて声をかける。
死ぬ気か?
否。
死ぬ理由がない。
『無謀なことは…良くない。
貴方、死にたい訳?
もしくは、殺したい?
どちらでもいいけれど……
互いに妙な獲物が釣れた記念に、どう?情報交換なり、取引なり。そんなのでも。』
【痴漢者トーマス】
うん?ありゃ、こんにちはだね!なんかバレちゃったねー。
うーん、死ぬ気も殺す気も…まー、多分、多分だけどね、どっちもないからねー、待ち人が来るまで隠れるつもりだったんだけど…。
ま、敵意はなさそうだしね、情報交換は全然良いよー。と言っても、私が話せる情報なんてほとんどないけどね?
あ、それと君の名前は?美人って感じの名前とご尊顔って気配がぷんぷんするんだけどねー…。当たってる?
(まぁ、不意打ちができる状況で殺しに来ないなら、敵意はないんだろう。…いや、隠れて待ってたつもりだけど意外と目立つのかな?…白スーツってのも目立つ原因かな?…しかし、ウカツ…。)
【マリア】
『…さあ?
まあ、この礼儀に則るんだとしたら、9thで良い。』
概ね察しがつかなくはない。
私が彼女だとしたら二択だ。
やるとしたなら。
無意味な事はしていないはず。
『で、待ち人って……なんでわざわざ呼び出したのかしら。
手を組むっていうお話?
それとも、名前でも握った?』
軽妙に、私は問い。
『まあ、なんにせよ……
貴方が何を考えたか聞かせてくれるかしら。ほら、端末なんてあるんだから、せっかく。』
フレンド申請を求める。
【痴漢者トーマス】
それじゃ、つまんないね?
…ここに来てついた名前があるんじゃないかなー、とは思うけどねー。
ま、キューちゃんって呼べば良い話だけどねー。
(名前を聞けなかったことを心底残念そうにしながら。とりあえず、一歩近づく。セクハラをしたいんだろうけど、斧持ちながら近付いたら殺そうとしてるようにしか見えねぇな?)
あー、待ち人さんはー。12番目のトロンパ君って人だけどねー。
ま、手を組もうとかそういうメールが来たからねー。そんだけね。
ここに来てやろうとしたことはー……。ま、お話をするだけのつもりでもあったけどね。
…ま、場合によっては、殺そうとしたかもしれないね。本当にさ、場合によってはだけどねー。
(コロパッドを取り出して。フレンド登録をして。)
【マリア】
『ふーん…?』
気のない返事。
やや間延びした声音で私は適当に返答する。別に取るに足らない範囲の情報しか取れなかったから。
『まあ良いんじゃない。
殺そうが殺すまいが、私には構わないわよ。』
だから、好きにしちまえと無責任にも背中を押し。
『ただ、そうね。
お互いにお互いが邪魔になると後々面倒だから、出しても構わない情報交換を含むっていう譲歩付きで、中立といかない?
ある程度、他に望みは叶えられなくも、無いけど……?』
中立を優先する。
12thに何かしら思い入れがあるなら、効率も良い。
【痴漢者トーマス】
そうだね。所詮、他人だしねー。
それでー、キューちゃんも他人っちゃ他人だけどねー。まぁ、少なくとも…今は殺す理由もないしね。いいよいいよー、中立でいようか?ま、そもそも、現時点でも中立みたいな物だと思ってるけどね。あ、でもやっぱり永世中立がいいのかな?ベルギーみたいにね?
(ぶっちゃけ、出せる情報ある?って言われたらブーメランパンツ貰ったよ!としか言えないまである。質問されれば答えれる分は答えれるが。)
それでね?あとね、今は望みはそんなにないねー。まぁ、色んな人に愛してるって言えればそれで…キューちゃん愛してるよ!愛してるッッッ!!
(隠れてたのに急に愛してるとか叫ぶアホがいるらしい。)
【マリア】
『ベルギーは永世中立国を保てた試しがないけどね。』
スイスとかの方が出るものではないか。というどうしようもないツッコミはやめた。ドイツ語圏の国は?と言われて、オーストリア!と声高々叫ぶにも似る。
まあネジが足りないのだろう。
私は、ある程度の不信感と皮肉を込めてジョークを口にして。
『ああ、そう。
なら、私も愛してるわよ。』
愛してる、なんてバカバカしい言葉に、取るに足らない嘘で返す。
愛する、とは。
嫌われたがっている事だと思う。
嫌われたがっているという事は、愛されたがっていることだ。
ポエミーで申し訳ないが、私に言わせれば、大体の場合、自分の感情なんて、絶対的に見えて、割と当てにならないという事だ。
そう思うから、私が自身の感情から逸れたことを、偶発的にする可能性は多分にあるわけで、この語すら、全くの信用を持ちえないものに堕落している。
『まあ、嘘かもしれないけど。』
無論、それも嘘かもしれないが。
【痴漢者トーマス】
私達が居る場所が場所だしね。場所ってのは廃工場のことじゃないね?でー、それと、私はキューちゃんのこと多分好きだしねー。守って(はぁと)なんて言われたら守っちゃうかもしれないしー、勿論優先順位ってのはあるけどねー。優先順位的に誰とでも、ほら、キューちゃんとも敵対する自信はあるわけでー。
で、そういう感じの私としてはねー、誰かとスイスみたいにどうでもいい相手で居続けるってのは難しそうじゃないってことね?ある程度の中立は保ててもさ。
これに外交的に近い国はどこだったかな?どうでもいいけどね。
(自分のやるつもりであることは一貫してる。ただ、話し方が衝動的で分かりづらい。
簡単な話、今は中立で全然いいけど、マリアと他の人の関係次第で友好的か敵対的かになるかも知れないよ、ってことだね。簡単だね、当たり前の話だね。)
愛される、ね。良いよねー、愛されるって。私はタダの乙女だからねー、愛してるって言われるとキュンキュンしちゃうねー!
テンションがあがり、あがりーね!
いやー、私のような博愛主義者としては、皆のことを守りたいなー、なんて思うけど、人が大して信用できないってのも知ってる訳でねー。そこは何とも難しい話…難しい話じゃない、ね?
……あ、そうね。結局、何か質問ってあるね?私に情報なんて多分ないけどね、答えられることなら答えるよー。
私の方は聞きたいことも別にそこまでないしねー、今のところさ。
【マリア】
『…今のところはないわ。』
まあ、こんな具合に。
『じゃあね。』
私は無愛想に立ち去った
ロティ(7th)-ヒガンバナ(11th)
【ロティ】
「……此処も、記憶に有るな…。」
今度は、船着場から。
この船着場も……この場所自体ではないけれど。
私の中にある、彼奴との記憶。
私と、彼奴と、他の友人達……。
皆で集まって……遊んで、こういう所にも良く来て騒いでいた。
それを、よく覚えている。
潮風に漂う、煙は左に流れていて。
同時にハットとスーツが靡いて、それと共に記憶がまた1つ、思い出される。
頼む……頼むから、辞めてくれ。
「まるで、死んだみたいじゃないか……。」
ハットを深く被り、その代わりに口からは煙草が地面に落ちる。
歯を食いしばり、恨めしそうな顔を見せつつ、吸い殻を踏みつけて火を消し去る。
頼む、頼むから……。
この火のような、末路は辿らないでくれ…。
■■■、君は……生きてくれよ。
そんな事を思いつつ。
一人悲痛な言葉を、大切な彼奴への言葉を。
胸の内の不安を……静まりかえり、眠った船に向かって聞かせてやる。
これで、気が晴れるわけでも無いのに。
【ヒガンバナ】
「…………何を、している?」
船着き場に来てみた。
すると、先客がいた様で、スーツを羽織った……あれは、男か?
どうにも見分けが付きにくい者が居た。
ぼんやりと海を眺めていたが、少し声をかけてみる。
【ロティ】
「…………あ、あぁ…済まない…。
ちょっと…友人の事を思い出してしまってね……色々、あるのさ…。」
嗚呼……人に見られていたか。
これは、多少とはいえ恥であろうか……。
そんな事を思いながらも、声を掛けてきた相手の方を向いて、ハットを脱いで。
とりあえずは会釈と謝罪から。
そして身体を半身にしつつ、そのまま今一度視線を海に向ける。
その目には、どこか物悲しさがあって。
思い出される友人との思い出と、その友人の今。
あまり、思い出したくはないけれど。
もしもの時がと考えてしまうと、どうしても頭にはそればかりが浮かぶ。
「……何か、此処に用事でもあったのかい?」
そして、完全に相手の方を向けば。
頬には一筋の赤い線が見える。
中性的で、整った顔立ちの中に紛れた違和感があるのは否めないが、正直それはどうでも良い。
そんな事を気にするのは後。
今は、目の前の相手に何かしに来たのかと、ハットを整えつつ問いかけるのみ。
【ヒガンバナ】
「……そうなの、か。
いや、特別用事があった訳ではない……色んな所を回っていた途中でな。」
目の前の者は、一体何を思っていたのだろうか?
こちらも会釈をし、もう少し近づいていく。
「……その頬、どうした。
傷、か?」
頬に見えた、赤い線。
傷に見えてしまったが、何だろうか。
【ロティ】
「あぁ……これかい?
何……ちょっと硝子で切ってしまってね…。
ショーウィンドウを割ってしまった時に飛んできた破片が掠めたんだ。」
頬に触れて、その触れた時に伴う痛みは、やはり昔の記憶に繋がってしまうわけで。
ズキリとした痛みと、手袋を赤く染める鮮血。
思い出す…■■■とやんちゃしたあの日を。
けれどそれは、此処にいる限り関係の無い話。
そして、目の前の相手にはあまり聞かせるべきではない話であろう。
だから、その辺の話は伏せる。
この怪我をした時の、簡単な経緯だけを説明しつつ肩を竦めて見せる。
曰く、やってしまったと言った様子で。
「いやはや……参ったね、つまりは不注意でこうなったのさ。
せめて何か身を守る物を、なんて思ったらこうして怪我をしたって訳だね。
……なぁ、君は大切な人は居るかい?
居るか居ないか、だけで良い…教えてくれるかい?」
不注意、な……訳が無い。
硝子を割ったのは、自分の意思によるもの。
また……1つ、嘘をついたのか…。
そして目の前の相手に、大切な人は居るかと問いかける。
もちろん詳しい事は聞かない、居るか居ないかだけでも聞ければ良い。
彼奴と、同じ境遇に立っていない事を願いつつ。
【ヒガンバナ】
「ショーウィンドウなんて……何か取りたい物が有ったのか?」
確かに不注意だ。
こんな状況、盗みはまあ目を瞑るとしよう。
だが、気を付ければ怪我なんてしなかっただろうに……
「大切な人か…………ああ、居る。」
【ロティ】
「いや……取りたい物はそのショーウィンドウでは無く、その近くに置いてあったさ……。
ショーウィンドウは、単にそれを持ち上げた時にぶつかってしまっただけだ。」
……別に、間違った事は言っていないさ。
取りたい物は実際ショーウィンドウの近くにあったし、ぶつかって割れたのも事実。
違うのは、それが事故か故意か、という事のみ。
いや……もうこの際、それすらも大した問題ではないのかも知れないと思いつつ。
大切な人が居ると聞けば、小さく微笑み、それについては少し話そうと決めた。
「そうかい……その人は、元気にしてるのかな?
何か病気とか、怪我とかして居たりは大丈夫かい?
大切な人は、元気で居て欲しい物だ。
君もそう思わないかい?」
大切な人が居るならば、それは良い事だ。
だからこそ、何か病気とか、怪我とかしていたりは大丈夫かと。
他人の大切な人とはいえ気になる。
大切な人には、ずっと元気で居てもらいたい。
それは……普通であろう?
【ヒガンバナ】
「なんとも、不注意だな。
まあ、他人に襲われた訳ではないなら、良いのだが。」
私がその傷を気にしたのは、誰かに襲われたのではと心配したからだ。
だが、そうではないなら……まあ、気を付けろよ、と注意するしかない。
「そうだな……私も、そう思う。
……元気な筈だ、まだな。
どうやら、この事件に巻き込まれている……らしいが。」
【ロティ】
「……そうか、この事件に…巻き込まれているのか……。」
それはつまり、大切な人が目の前で死ぬという可能性を秘めており。
そしてそれはかなりの確率で起こるものだろう。
いつか、会えると良いね。
なんて言えるような状態では無かった。
元気なのは良かったが、この事件に巻き込まれている以上、助かるとは限らない。
最悪、大切な人同士で殺し合う可能性すらあるのだから。
それを考慮しても、まだ、元気にしており、そして上手く行けば帰れる可能性がある。
二人で楽しく過ごせる、その可能性だけでも充分だろう。
「良いね……僕と、同じ気持ちにならないように、君も気張る事をオススメしよう。
……いつ、死んでもおかしくない、殺されてもおかしくない状況だ。
意味は……もう分かるだろう?
…………僕には、もう出来ないけれどね…。」
こんな状態だから。
大切な人がそばに居ると思えれば良い。
だからこそ気張る事を勧める。
これは、ある意味では警告だろう。
その時のための覚悟を…決めるという見方では。
そして、自分と同じように、大切な人が苦しむ姿は見て欲しくないと言った様子で。
あとは、相手次第だろうか?
【ヒガンバナ】
「……ああ、私は必ず……皆と帰るさ。
大切な者と……な。
その為の覚悟は、もう決めた。」
相手に言われずとも、あの放送がされる前から、9thにこれがコロシアイだと伝えられた時から。
もう、覚悟は決まっている。
こんなゲーム、終わらせてやる。
「……それにしても、随分と大切な者……と言うのに拘るな。
……帰って会ったり、どうにか出来る事では、ないのか?」
【ロティ】
「…………正しくは…“出来るが分からない”、と言った方が良いかもしれないね。」
もう話してしまおうか。
話した所で何か起こる訳では無い、知られて彼奴が死ぬ訳では無い。
……きっと、そうだと信じて。
煙草なんて…と、思うかもしれないけれど。
ロティとしての自分、本来の自分だとしても、彼奴との思い出と落ち着きの物で。
ライターで火をつけ、ハットを深く被りながら、その理由を話していこう。
「僕の友人なんだけどね……実は最近体調が良くないらしくてね…。
もしかしたら、治らなくて…そのまま会えなくなるかもしれないんだ。
……だから、そんな思いをして欲しくなくてね…ついこの話はしつこく聞いてしまうんだ。
色々聞いて、すまなかった…。」
話したのは大切な人、もとい、私の友人。
体調が良くないので、もしかしたらもう治らずに会えなくなるかもしれない。
だから、他の人には同じような思いをして欲しくなくて、もしくはそうなるかもと言うことを知っていて欲しくて。
色々と聞いてしまうのはこういう事だ。
彼女にも、色々聞いてしまった。
これは申し訳ないと、謝罪をしたロティの顔は、悲しげな物であろう。
【ヒガンバナ】
「成る程、そう言う事だったか……
なに、気にするな……大切な友人が具合が悪いなら、そう心配になってしまうのも自然な事だ。」
大切な者と、もう会えなくなるかもしれない。
その思いは、何時でも頭の中に残り続ける。
だから、こんなにも私に聞いてきたのだろう。
「……その、もしかしたら……なんだが。
この事件には"前例"があるらしい……その生存者と話せてね。
彼女の言うことには……もしかしたら、事件が終わった後、願いを叶えてくれるかもしれない……」
【ロティ】
「願いを……叶える…?」
そのような事があるならば、私の友人の病は、治って一緒にまたふざけられるのだろうか?
それが本当ならば、まだ生きる価値はある。
前例があるなら、まだやれる。
今の私には……叶えたいと思う夢があるから。
良い事を聞けたかも知れない、それがもし本当の事ならば。
灯火を、再び灯そう。
まだ行ける……まだやれる……此処で選ぶのは、己が願いを叶える為の一手とする。
それを教えてくれたのは、間違いなく彼女。
だから私も願う……相手が生きて、大切な人に会える事を。
「そうか……そうかそうか…。
良いね、それが本当ならば……僕もまだ生きる価値が有るって訳か……。」
諦めかけていた夢が、叶うかもしれないならば……まだ生きる価値は十分にある。
生きる為の手段を選ば無くなるかもしれないが、それよりも叶えたい願いがある。
眠る船の1隻に、煙を続かせゆっくりと乗る。
特に意味は無いけれど、単なる気まぐれでやってみただけ。
揺れる船の上で、一人そう思う。
【ヒガンバナ】
「……ああ、今回もあるかは分からぬが……生きて帰る意味はある。
……協力しよう。生きて帰る為にも。」
私はパッドを取り出して相手に見せる。
フレンド申請したいのだ。
「……私はヒガンバナ。
お前さんの名前は?」
【ロティ】
「……あぁ、勿論だとも。
私に出来ることがあるなら何でもしよう…。
こう言うのも何だが、偽り、他者を演じるのは慣れているからね……。」
協力関係を取るにあたり、こちらへのメリットは沢山あるし、相手にもある。
そう、思いつつ振り向いて。
相手の動きから察したのか近付いていく。
そしてパッドを差し出しながら告げる。
自分の出来る、最大にして最悪の特技……。
───己の偽り。
───他者への成りすまし。
───感情の抑制。
全て、全て全て全て……いつの間にか出来るようになっていた事だ。
「僕はロティだ……。
……なぁ…ヒガンバナ、ひとつ頼みがある。」
ハットを脱いで、一礼と共に名乗る。
偽名ではあるけれど……今の自分の名を。
そして至近距離、パッドを渡せる距離にまで近付いた所で、頼みがあると告げて。
「……これ、操作分からないんだけど…。」
つまりは……そういう事だ。
【ヒガンバナ】
「…………そうか、わかった。」
いや、少しだけ警戒してしまった自分が馬鹿らしい。
軽く拍子抜けしながら、私は相手のパッドに表示されていたフレンド申請を承認した。
……私とて、古いものは好きだが、これ位出来るぞ。
「ロティ、だな。
……所で、失礼な質問をするが……お前さん、男か?女か?」
……すまぬ、見た目では分からんのだ。
こんなに近づいても。
【ロティ】
「申し訳ない……。
どうにも最近の機械に疎くてね……我ながら申し訳ないよ……。」
ハットを被り直し、恥ずかしそうな、申し訳なさそうな様子で。
最近の機械には疎いのは本当。
自分のスマホだって一ヵ月位経ってからようやく慣れ始めたのだ。
しらない機械など、以ての外。
分からないのは、さすがに自分でもどうだろうかと思っているのも事実。
こうして他人にやってもらっている辺り、申し訳ないと言って。
「ん?
……あぁ、性別なら女だよ…これでもね。」
性別を聞かれれば、肩を竦めつつ。
これでも一応女であると伝えて、苦笑いをしてみせる。
見分けにくいのは、自分でもよく分かっているから。
【ヒガンバナ】
「……いや、パッドにはルール等も載ってるからな……それらさえ把握していれば最悪良いのだ。
……分からなければ教えるが。」
下手なスマホより、機能はシンプルなのだが……まあ、仕方なし。
もしも分からなければ教えるつもりだ。
流石に死ぬかもしれないゲームで、『ルール分からないです』なんて言ってられないのだから。
「女か、本当にすまないな。
……では、何かあれば連絡して……くれ。出来る限り。
こちらからも、何かあれば連絡する。
……分からなかったら、今のうちに教える。」
成る程、この容姿で女か。
中々、人を見るのは難しい。
……と、それよりもどちらかと言うと、彼女の機械音痴が気になる。
【ロティ】
「何度も申し訳ない……出来れば教えて欲しい…。」
教えてくれるならば……。
申し訳ないと伝えつつ、その言葉に甘えさせてもらう。
どうしたらいいのか分からないのも事実なので、ヒガンバナの隣に行く。
ハットを整えつつ、船から陸に戻る際、ハットの後ろにふわりとポニーテールが舞う。
唯一、女かと思わせるポイントかも知れない。
「連絡すらとれないのは、流石に不味いからね……必要最低限の事を教えて貰えれば構わないよ。」
連絡するといって連絡が出来ませんでした、では問題であろう。
だから必要最低限の事を教えて欲しいと言う。
【ヒガンバナ】
「ああ、私も基本くらいしか分からぬからな。」
教える所は割愛させて貰う。
出来うる限り丁寧に、繰り返し教える。
……いや、本当に連絡して返信出来ませんでしたなんて洒落にならない。
「……さあ、こんなものでどうだ?
まあ、また分からなければ教えるぞ?」
こうやって誰かに教えるのも悪くない。
【ロティ】
「え……っと、これをこうして…こう、か。
なるほど……ありがとう、ヒガンバナ。」
まだまだ手つきはぎこちないけれど。
なんとか最低限の操作だけは覚えた、これで連絡はとれるだろう。
操作が出来たと分かれば、安堵の表情をヒガンバナに見せつつ、ありがとうと伝えて微笑み掛けて見せた。
此処で教えてもらわなければ、恐らくずっと操作については教えてもらうまで分からなかっただろう。
……だから、助かった。
「とりあえず……うん、何とかなりそうだ。」
最低限の確認をした後、何とかなりそうだと言って。
一旦落ち着こう。
そう思って近くの段差に腰掛ける。
ロティとしては、充分すぎる程にやったつもり。
【ヒガンバナ】
「……どういたしまして。
さて、これで連絡は取れそうだな。」
これで、彼女が生き残る可能性はぐんと上がった筈だ。
……が、悲報もある。
こんな中、まだ会ってもいない者が、また死を迎えたらしい。
急がなくては、いけない。
「……すまない、私は行かなければ。
また会おう……ロティ。」
腰の手作りの刀を確認してから、私は歩き出した。
【ロティ】
「あぁ……本当に助かったよ。」
ヒガンバナにはなんと御礼を言えばいいのか。
それは分からないけれど、助かったのは事実。
そう伝えて、ヒガンバナの言葉を聞けば、何かあったのだろうかと思いつつパッドを見て理解した。
一人、誰かが死んだらしい。
それを見て、悟れば、止める理由はない。
「……分かった、また会おう。
多少の戦力にもなれる、君が困った時には…此方にも頼っておくれ。」
そしてそう伝えて、見送る。
金属バットだけで出来ることは限られるかも知れないが、それでも一般人相手ならば問題は無いだろう。
何かあったら頼ってくれと言って、此方も船着き場から去ることに決めた。
……次に会う時、生きていられる事を願う。
そうして、ヒガンバナとは別の方角へ、少し遅れてから歩いていくのだった。
【ロティ】
「……此処も、記憶に有るな…。」
今度は、船着場から。
この船着場も……この場所自体ではないけれど。
私の中にある、彼奴との記憶。
私と、彼奴と、他の友人達……。
皆で集まって……遊んで、こういう所にも良く来て騒いでいた。
それを、よく覚えている。
潮風に漂う、煙は左に流れていて。
同時にハットとスーツが靡いて、それと共に記憶がまた1つ、思い出される。
頼む……頼むから、辞めてくれ。
「まるで、死んだみたいじゃないか……。」
ハットを深く被り、その代わりに口からは煙草が地面に落ちる。
歯を食いしばり、恨めしそうな顔を見せつつ、吸い殻を踏みつけて火を消し去る。
頼む、頼むから……。
この火のような、末路は辿らないでくれ…。
■■■、君は……生きてくれよ。
そんな事を思いつつ。
一人悲痛な言葉を、大切な彼奴への言葉を。
胸の内の不安を……静まりかえり、眠った船に向かって聞かせてやる。
これで、気が晴れるわけでも無いのに。
【ヒガンバナ】
「…………何を、している?」
船着き場に来てみた。
すると、先客がいた様で、スーツを羽織った……あれは、男か?
どうにも見分けが付きにくい者が居た。
ぼんやりと海を眺めていたが、少し声をかけてみる。
【ロティ】
「…………あ、あぁ…済まない…。
ちょっと…友人の事を思い出してしまってね……色々、あるのさ…。」
嗚呼……人に見られていたか。
これは、多少とはいえ恥であろうか……。
そんな事を思いながらも、声を掛けてきた相手の方を向いて、ハットを脱いで。
とりあえずは会釈と謝罪から。
そして身体を半身にしつつ、そのまま今一度視線を海に向ける。
その目には、どこか物悲しさがあって。
思い出される友人との思い出と、その友人の今。
あまり、思い出したくはないけれど。
もしもの時がと考えてしまうと、どうしても頭にはそればかりが浮かぶ。
「……何か、此処に用事でもあったのかい?」
そして、完全に相手の方を向けば。
頬には一筋の赤い線が見える。
中性的で、整った顔立ちの中に紛れた違和感があるのは否めないが、正直それはどうでも良い。
そんな事を気にするのは後。
今は、目の前の相手に何かしに来たのかと、ハットを整えつつ問いかけるのみ。
【ヒガンバナ】
「……そうなの、か。
いや、特別用事があった訳ではない……色んな所を回っていた途中でな。」
目の前の者は、一体何を思っていたのだろうか?
こちらも会釈をし、もう少し近づいていく。
「……その頬、どうした。
傷、か?」
頬に見えた、赤い線。
傷に見えてしまったが、何だろうか。
【ロティ】
「あぁ……これかい?
何……ちょっと硝子で切ってしまってね…。
ショーウィンドウを割ってしまった時に飛んできた破片が掠めたんだ。」
頬に触れて、その触れた時に伴う痛みは、やはり昔の記憶に繋がってしまうわけで。
ズキリとした痛みと、手袋を赤く染める鮮血。
思い出す…■■■とやんちゃしたあの日を。
けれどそれは、此処にいる限り関係の無い話。
そして、目の前の相手にはあまり聞かせるべきではない話であろう。
だから、その辺の話は伏せる。
この怪我をした時の、簡単な経緯だけを説明しつつ肩を竦めて見せる。
曰く、やってしまったと言った様子で。
「いやはや……参ったね、つまりは不注意でこうなったのさ。
せめて何か身を守る物を、なんて思ったらこうして怪我をしたって訳だね。
……なぁ、君は大切な人は居るかい?
居るか居ないか、だけで良い…教えてくれるかい?」
不注意、な……訳が無い。
硝子を割ったのは、自分の意思によるもの。
また……1つ、嘘をついたのか…。
そして目の前の相手に、大切な人は居るかと問いかける。
もちろん詳しい事は聞かない、居るか居ないかだけでも聞ければ良い。
彼奴と、同じ境遇に立っていない事を願いつつ。
【ヒガンバナ】
「ショーウィンドウなんて……何か取りたい物が有ったのか?」
確かに不注意だ。
こんな状況、盗みはまあ目を瞑るとしよう。
だが、気を付ければ怪我なんてしなかっただろうに……
「大切な人か…………ああ、居る。」
【ロティ】
「いや……取りたい物はそのショーウィンドウでは無く、その近くに置いてあったさ……。
ショーウィンドウは、単にそれを持ち上げた時にぶつかってしまっただけだ。」
……別に、間違った事は言っていないさ。
取りたい物は実際ショーウィンドウの近くにあったし、ぶつかって割れたのも事実。
違うのは、それが事故か故意か、という事のみ。
いや……もうこの際、それすらも大した問題ではないのかも知れないと思いつつ。
大切な人が居ると聞けば、小さく微笑み、それについては少し話そうと決めた。
「そうかい……その人は、元気にしてるのかな?
何か病気とか、怪我とかして居たりは大丈夫かい?
大切な人は、元気で居て欲しい物だ。
君もそう思わないかい?」
大切な人が居るならば、それは良い事だ。
だからこそ、何か病気とか、怪我とかしていたりは大丈夫かと。
他人の大切な人とはいえ気になる。
大切な人には、ずっと元気で居てもらいたい。
それは……普通であろう?
【ヒガンバナ】
「なんとも、不注意だな。
まあ、他人に襲われた訳ではないなら、良いのだが。」
私がその傷を気にしたのは、誰かに襲われたのではと心配したからだ。
だが、そうではないなら……まあ、気を付けろよ、と注意するしかない。
「そうだな……私も、そう思う。
……元気な筈だ、まだな。
どうやら、この事件に巻き込まれている……らしいが。」
【ロティ】
「……そうか、この事件に…巻き込まれているのか……。」
それはつまり、大切な人が目の前で死ぬという可能性を秘めており。
そしてそれはかなりの確率で起こるものだろう。
いつか、会えると良いね。
なんて言えるような状態では無かった。
元気なのは良かったが、この事件に巻き込まれている以上、助かるとは限らない。
最悪、大切な人同士で殺し合う可能性すらあるのだから。
それを考慮しても、まだ、元気にしており、そして上手く行けば帰れる可能性がある。
二人で楽しく過ごせる、その可能性だけでも充分だろう。
「良いね……僕と、同じ気持ちにならないように、君も気張る事をオススメしよう。
……いつ、死んでもおかしくない、殺されてもおかしくない状況だ。
意味は……もう分かるだろう?
…………僕には、もう出来ないけれどね…。」
こんな状態だから。
大切な人がそばに居ると思えれば良い。
だからこそ気張る事を勧める。
これは、ある意味では警告だろう。
その時のための覚悟を…決めるという見方では。
そして、自分と同じように、大切な人が苦しむ姿は見て欲しくないと言った様子で。
あとは、相手次第だろうか?
【ヒガンバナ】
「……ああ、私は必ず……皆と帰るさ。
大切な者と……な。
その為の覚悟は、もう決めた。」
相手に言われずとも、あの放送がされる前から、9thにこれがコロシアイだと伝えられた時から。
もう、覚悟は決まっている。
こんなゲーム、終わらせてやる。
「……それにしても、随分と大切な者……と言うのに拘るな。
……帰って会ったり、どうにか出来る事では、ないのか?」
【ロティ】
「…………正しくは…“出来るが分からない”、と言った方が良いかもしれないね。」
もう話してしまおうか。
話した所で何か起こる訳では無い、知られて彼奴が死ぬ訳では無い。
……きっと、そうだと信じて。
煙草なんて…と、思うかもしれないけれど。
ロティとしての自分、本来の自分だとしても、彼奴との思い出と落ち着きの物で。
ライターで火をつけ、ハットを深く被りながら、その理由を話していこう。
「僕の友人なんだけどね……実は最近体調が良くないらしくてね…。
もしかしたら、治らなくて…そのまま会えなくなるかもしれないんだ。
……だから、そんな思いをして欲しくなくてね…ついこの話はしつこく聞いてしまうんだ。
色々聞いて、すまなかった…。」
話したのは大切な人、もとい、私の友人。
体調が良くないので、もしかしたらもう治らずに会えなくなるかもしれない。
だから、他の人には同じような思いをして欲しくなくて、もしくはそうなるかもと言うことを知っていて欲しくて。
色々と聞いてしまうのはこういう事だ。
彼女にも、色々聞いてしまった。
これは申し訳ないと、謝罪をしたロティの顔は、悲しげな物であろう。
【ヒガンバナ】
「成る程、そう言う事だったか……
なに、気にするな……大切な友人が具合が悪いなら、そう心配になってしまうのも自然な事だ。」
大切な者と、もう会えなくなるかもしれない。
その思いは、何時でも頭の中に残り続ける。
だから、こんなにも私に聞いてきたのだろう。
「……その、もしかしたら……なんだが。
この事件には"前例"があるらしい……その生存者と話せてね。
彼女の言うことには……もしかしたら、事件が終わった後、願いを叶えてくれるかもしれない……」
【ロティ】
「願いを……叶える…?」
そのような事があるならば、私の友人の病は、治って一緒にまたふざけられるのだろうか?
それが本当ならば、まだ生きる価値はある。
前例があるなら、まだやれる。
今の私には……叶えたいと思う夢があるから。
良い事を聞けたかも知れない、それがもし本当の事ならば。
灯火を、再び灯そう。
まだ行ける……まだやれる……此処で選ぶのは、己が願いを叶える為の一手とする。
それを教えてくれたのは、間違いなく彼女。
だから私も願う……相手が生きて、大切な人に会える事を。
「そうか……そうかそうか…。
良いね、それが本当ならば……僕もまだ生きる価値が有るって訳か……。」
諦めかけていた夢が、叶うかもしれないならば……まだ生きる価値は十分にある。
生きる為の手段を選ば無くなるかもしれないが、それよりも叶えたい願いがある。
眠る船の1隻に、煙を続かせゆっくりと乗る。
特に意味は無いけれど、単なる気まぐれでやってみただけ。
揺れる船の上で、一人そう思う。
【ヒガンバナ】
「……ああ、今回もあるかは分からぬが……生きて帰る意味はある。
……協力しよう。生きて帰る為にも。」
私はパッドを取り出して相手に見せる。
フレンド申請したいのだ。
「……私はヒガンバナ。
お前さんの名前は?」
【ロティ】
「……あぁ、勿論だとも。
私に出来ることがあるなら何でもしよう…。
こう言うのも何だが、偽り、他者を演じるのは慣れているからね……。」
協力関係を取るにあたり、こちらへのメリットは沢山あるし、相手にもある。
そう、思いつつ振り向いて。
相手の動きから察したのか近付いていく。
そしてパッドを差し出しながら告げる。
自分の出来る、最大にして最悪の特技……。
───己の偽り。
───他者への成りすまし。
───感情の抑制。
全て、全て全て全て……いつの間にか出来るようになっていた事だ。
「僕はロティだ……。
……なぁ…ヒガンバナ、ひとつ頼みがある。」
ハットを脱いで、一礼と共に名乗る。
偽名ではあるけれど……今の自分の名を。
そして至近距離、パッドを渡せる距離にまで近付いた所で、頼みがあると告げて。
「……これ、操作分からないんだけど…。」
つまりは……そういう事だ。
【ヒガンバナ】
「…………そうか、わかった。」
いや、少しだけ警戒してしまった自分が馬鹿らしい。
軽く拍子抜けしながら、私は相手のパッドに表示されていたフレンド申請を承認した。
……私とて、古いものは好きだが、これ位出来るぞ。
「ロティ、だな。
……所で、失礼な質問をするが……お前さん、男か?女か?」
……すまぬ、見た目では分からんのだ。
こんなに近づいても。
【ロティ】
「申し訳ない……。
どうにも最近の機械に疎くてね……我ながら申し訳ないよ……。」
ハットを被り直し、恥ずかしそうな、申し訳なさそうな様子で。
最近の機械には疎いのは本当。
自分のスマホだって一ヵ月位経ってからようやく慣れ始めたのだ。
しらない機械など、以ての外。
分からないのは、さすがに自分でもどうだろうかと思っているのも事実。
こうして他人にやってもらっている辺り、申し訳ないと言って。
「ん?
……あぁ、性別なら女だよ…これでもね。」
性別を聞かれれば、肩を竦めつつ。
これでも一応女であると伝えて、苦笑いをしてみせる。
見分けにくいのは、自分でもよく分かっているから。
【ヒガンバナ】
「……いや、パッドにはルール等も載ってるからな……それらさえ把握していれば最悪良いのだ。
……分からなければ教えるが。」
下手なスマホより、機能はシンプルなのだが……まあ、仕方なし。
もしも分からなければ教えるつもりだ。
流石に死ぬかもしれないゲームで、『ルール分からないです』なんて言ってられないのだから。
「女か、本当にすまないな。
……では、何かあれば連絡して……くれ。出来る限り。
こちらからも、何かあれば連絡する。
……分からなかったら、今のうちに教える。」
成る程、この容姿で女か。
中々、人を見るのは難しい。
……と、それよりもどちらかと言うと、彼女の機械音痴が気になる。
【ロティ】
「何度も申し訳ない……出来れば教えて欲しい…。」
教えてくれるならば……。
申し訳ないと伝えつつ、その言葉に甘えさせてもらう。
どうしたらいいのか分からないのも事実なので、ヒガンバナの隣に行く。
ハットを整えつつ、船から陸に戻る際、ハットの後ろにふわりとポニーテールが舞う。
唯一、女かと思わせるポイントかも知れない。
「連絡すらとれないのは、流石に不味いからね……必要最低限の事を教えて貰えれば構わないよ。」
連絡するといって連絡が出来ませんでした、では問題であろう。
だから必要最低限の事を教えて欲しいと言う。
【ヒガンバナ】
「ああ、私も基本くらいしか分からぬからな。」
教える所は割愛させて貰う。
出来うる限り丁寧に、繰り返し教える。
……いや、本当に連絡して返信出来ませんでしたなんて洒落にならない。
「……さあ、こんなものでどうだ?
まあ、また分からなければ教えるぞ?」
こうやって誰かに教えるのも悪くない。
【ロティ】
「え……っと、これをこうして…こう、か。
なるほど……ありがとう、ヒガンバナ。」
まだまだ手つきはぎこちないけれど。
なんとか最低限の操作だけは覚えた、これで連絡はとれるだろう。
操作が出来たと分かれば、安堵の表情をヒガンバナに見せつつ、ありがとうと伝えて微笑み掛けて見せた。
此処で教えてもらわなければ、恐らくずっと操作については教えてもらうまで分からなかっただろう。
……だから、助かった。
「とりあえず……うん、何とかなりそうだ。」
最低限の確認をした後、何とかなりそうだと言って。
一旦落ち着こう。
そう思って近くの段差に腰掛ける。
ロティとしては、充分すぎる程にやったつもり。
【ヒガンバナ】
「……どういたしまして。
さて、これで連絡は取れそうだな。」
これで、彼女が生き残る可能性はぐんと上がった筈だ。
……が、悲報もある。
こんな中、まだ会ってもいない者が、また死を迎えたらしい。
急がなくては、いけない。
「……すまない、私は行かなければ。
また会おう……ロティ。」
腰の手作りの刀を確認してから、私は歩き出した。
【ロティ】
「あぁ……本当に助かったよ。」
ヒガンバナにはなんと御礼を言えばいいのか。
それは分からないけれど、助かったのは事実。
そう伝えて、ヒガンバナの言葉を聞けば、何かあったのだろうかと思いつつパッドを見て理解した。
一人、誰かが死んだらしい。
それを見て、悟れば、止める理由はない。
「……分かった、また会おう。
多少の戦力にもなれる、君が困った時には…此方にも頼っておくれ。」
そしてそう伝えて、見送る。
金属バットだけで出来ることは限られるかも知れないが、それでも一般人相手ならば問題は無いだろう。
何かあったら頼ってくれと言って、此方も船着き場から去ることに決めた。
……次に会う時、生きていられる事を願う。
そうして、ヒガンバナとは別の方角へ、少し遅れてから歩いていくのだった。
五番目の道化師(3rd)-トロンパ(12th)
【トロンパ】
スケート場
「〜♪〜〜♪〜」
鼻唄を歌いながら、彼はリンクを滑り回っていた
とは言ってもジャンプとかせずにホントにただ滑っているだけなんだが
「さぁ〜て、これでこなかった場合?ワタクシ、待ちぼうけ?夕焼け小焼け?それ即ちさようなら!まあ、気楽に待ちましょうかね〜ぇ。」
そんな独り言を言いながらシャーって滑る赤い服
リンクの隅ドラム缶が一つ置かれており、その上には布を被せられた何かが置かれているようだ
【五番目の道化師】
「あれ、だれかから通知来てる」
北エリアを散策していたら誰かからメッセージが届いたのを確認する道化師。どうやら送り手はトロンパのようだ。
「スケートリンクかぁ…」
近いし、行ってみよう。『今、行きますね!』と返信してから道化師は急いでスケート場へと向かい…その場所に辿り着いたのは案外早い。連絡が来てから15分後のことだった。もし、異なるエリアにいたら辿り着くのに一時間以上かかっただろう。
【トロンパ】
「お、来た。」
ピタリ、と動きを止め、道化師の方を見る。
やっぱ止まらなかった、少し横にズレる
「いや〜あ、すみませぇん!急に呼び出したりしてしまい!どうしても確かめたい事があったものでぇ〜!」
【五番目の道化師】
「えっ?どうしても確かめたいこと…?」
きょとーん、と首をかしげる。
道化師はさっき此処に着いたばかりなのでスケートシューズを履いておらず、リンクには上がらない。てか、シューズを履いていないのに上がったらまずいし。
「えっと…私、まだスケートうまくできませんよ?」
どうやらメイクはしていてもピエロの口調はやめたらしい。
【トロンパ】
「まぁ〜、それはそれ、これはこれというやつです。確かめたい事は実に簡単、『あなたは今すぐこのスケートリンクに足を踏み入れる事ができますか?』という事です。」
割と真面目な顔で彼は話す。"確かめたい事"を
「スケート靴を履かずに、なおかつ先に私がこうして待っている状態でもあなたはここに平然と入ってくる事が出来るのか。…私が確かめたいのは、"それ"です。…どうしますか?」
【五番目の道化師】
試されてる…?とは直ぐにわかった。
でも、何を試されているのかがよくわからない道化師は間違いなく馬鹿。どういう状況なのか把握するため辺りを見渡してみると…あぁ、そういうことかもしれない。
「私は、殺されることがないと信じていますから」
ピエロは表情ひとつ崩すことなくスケートシューズを履かぬままリンクへ上がり──ツルン!と勢いよく滑り転んだ。ちなみにわざとではない。事故だ。
【トロンパ】
「……そうですか。」
多くは語らず、リンクに上がる道化師をジッと見つめる
あ、こけた
「…大丈夫ですかー?」
ツイーっと滑って近寄っていく
【五番目の道化師】
「大丈夫…じゃないです…。結構痛いです」
おでこを強打したらしく、涙目で押さえているが…その手にはめている手袋は少しだけ赤い血が染みている。
(げ…っ、玉乗り練習した時と同じところに怪我した!?)
バランス系は案外苦手らしい。
今はピエロをしているのでこれで済んでいるが…もし、ピエロでなかったら…?そう考えると道化師の運動神経が少し心配になってきた中の人であった。
【トロンパ】
「おや、怪我を…とりあえずリンクから出ましょうか。」
そう言って、道化師を起こしてリンクの外へ運ぶ
「どうぞ、絆創膏です」
そう言ってドラム缶の上に置いてあった消毒液と包帯と絆創膏とムヒを取ってきて渡す
【五番目の道化師】
「なんか、すみません…」
自分で怪我してどうするんだよ私。
道化師はトロンパから治療道具を受け取り(なんでムヒがあるんだろう)自分の怪我を手当てした。さすがに包帯とムヒは使わない。
「あっ、結局、トロンパさんは私の何を試していたんですか?」
治療道具を返却しながらストレートに問いかけてみる。
【トロンパ】
「その節につきましては、先ずはお詫びを。」
そう言って彼は、道化師の前に跪く
「…私が確認したかった事は。"この状況において人を信じるのか"という点。…人間不信に陥っているような者は、残念ながら混乱を引き起こし兼ねない、と。」
袖に隠していたナイフを取り出し、床に置く
「…あなたが"そう"であったのならば-殺す他ない、と。そう思っておりました。しかしあなたはそうではなかった」
頭を下げ、誓う
「…ここに。ワタクシ、トロンパ=ヴァン・ルードツィッヒは誓いましょう。今後二度と貴女にこのような試しをしない、と。…そして、必ずや貴女の助けとなることを。」
【五番目の道化師】
「あぁ…やっぱり、そういうことだったんだね」
自分だって、そうしていた可能性があった。混乱を引き起こすヤツは輪を乱すから弾く。だけど、人を信じるならまず自分からだ。人間不振になって混乱していても『手遅れ』でなければ救える。
「トロンパさん、とりあえず…頭下げるの止めようか♪」
こういうのは道化師にやるものじゃない。
道化師が誰かに従うことはあっても、誰かを従えてはならない。道化師がピエロの修行を積むときに先輩方から言われた言葉によっての判断だった。
「私は道化師だから、誰かに従うことがあるかもしれない。道化師故に他者を従えることはない。これは私が道化師となった時からの誓い。
あっ、あえていうなら、トロンパさんは誰にも従わず、自分の考えで行動して自由にしておいてほしいんだ。極力、人殺しは控えてほしいけど…」
【トロンパ】
「……やはり、貴女はそう言う人ですか。」
降参だ、とでも言うかのように、もう片方の袖からナイフを取り出して床に。
「ええ、貴女がそう望むのでしたら。ワタクシはそのように致しますとも。…どうか、これからもご自愛を。」
そう言うと立ち上がり、歩いて行く
【トロンパ】
スケート場
「〜♪〜〜♪〜」
鼻唄を歌いながら、彼はリンクを滑り回っていた
とは言ってもジャンプとかせずにホントにただ滑っているだけなんだが
「さぁ〜て、これでこなかった場合?ワタクシ、待ちぼうけ?夕焼け小焼け?それ即ちさようなら!まあ、気楽に待ちましょうかね〜ぇ。」
そんな独り言を言いながらシャーって滑る赤い服
リンクの隅ドラム缶が一つ置かれており、その上には布を被せられた何かが置かれているようだ
【五番目の道化師】
「あれ、だれかから通知来てる」
北エリアを散策していたら誰かからメッセージが届いたのを確認する道化師。どうやら送り手はトロンパのようだ。
「スケートリンクかぁ…」
近いし、行ってみよう。『今、行きますね!』と返信してから道化師は急いでスケート場へと向かい…その場所に辿り着いたのは案外早い。連絡が来てから15分後のことだった。もし、異なるエリアにいたら辿り着くのに一時間以上かかっただろう。
【トロンパ】
「お、来た。」
ピタリ、と動きを止め、道化師の方を見る。
やっぱ止まらなかった、少し横にズレる
「いや〜あ、すみませぇん!急に呼び出したりしてしまい!どうしても確かめたい事があったものでぇ〜!」
【五番目の道化師】
「えっ?どうしても確かめたいこと…?」
きょとーん、と首をかしげる。
道化師はさっき此処に着いたばかりなのでスケートシューズを履いておらず、リンクには上がらない。てか、シューズを履いていないのに上がったらまずいし。
「えっと…私、まだスケートうまくできませんよ?」
どうやらメイクはしていてもピエロの口調はやめたらしい。
【トロンパ】
「まぁ〜、それはそれ、これはこれというやつです。確かめたい事は実に簡単、『あなたは今すぐこのスケートリンクに足を踏み入れる事ができますか?』という事です。」
割と真面目な顔で彼は話す。"確かめたい事"を
「スケート靴を履かずに、なおかつ先に私がこうして待っている状態でもあなたはここに平然と入ってくる事が出来るのか。…私が確かめたいのは、"それ"です。…どうしますか?」
【五番目の道化師】
試されてる…?とは直ぐにわかった。
でも、何を試されているのかがよくわからない道化師は間違いなく馬鹿。どういう状況なのか把握するため辺りを見渡してみると…あぁ、そういうことかもしれない。
「私は、殺されることがないと信じていますから」
ピエロは表情ひとつ崩すことなくスケートシューズを履かぬままリンクへ上がり──ツルン!と勢いよく滑り転んだ。ちなみにわざとではない。事故だ。
【トロンパ】
「……そうですか。」
多くは語らず、リンクに上がる道化師をジッと見つめる
あ、こけた
「…大丈夫ですかー?」
ツイーっと滑って近寄っていく
【五番目の道化師】
「大丈夫…じゃないです…。結構痛いです」
おでこを強打したらしく、涙目で押さえているが…その手にはめている手袋は少しだけ赤い血が染みている。
(げ…っ、玉乗り練習した時と同じところに怪我した!?)
バランス系は案外苦手らしい。
今はピエロをしているのでこれで済んでいるが…もし、ピエロでなかったら…?そう考えると道化師の運動神経が少し心配になってきた中の人であった。
【トロンパ】
「おや、怪我を…とりあえずリンクから出ましょうか。」
そう言って、道化師を起こしてリンクの外へ運ぶ
「どうぞ、絆創膏です」
そう言ってドラム缶の上に置いてあった消毒液と包帯と絆創膏とムヒを取ってきて渡す
【五番目の道化師】
「なんか、すみません…」
自分で怪我してどうするんだよ私。
道化師はトロンパから治療道具を受け取り(なんでムヒがあるんだろう)自分の怪我を手当てした。さすがに包帯とムヒは使わない。
「あっ、結局、トロンパさんは私の何を試していたんですか?」
治療道具を返却しながらストレートに問いかけてみる。
【トロンパ】
「その節につきましては、先ずはお詫びを。」
そう言って彼は、道化師の前に跪く
「…私が確認したかった事は。"この状況において人を信じるのか"という点。…人間不信に陥っているような者は、残念ながら混乱を引き起こし兼ねない、と。」
袖に隠していたナイフを取り出し、床に置く
「…あなたが"そう"であったのならば-殺す他ない、と。そう思っておりました。しかしあなたはそうではなかった」
頭を下げ、誓う
「…ここに。ワタクシ、トロンパ=ヴァン・ルードツィッヒは誓いましょう。今後二度と貴女にこのような試しをしない、と。…そして、必ずや貴女の助けとなることを。」
【五番目の道化師】
「あぁ…やっぱり、そういうことだったんだね」
自分だって、そうしていた可能性があった。混乱を引き起こすヤツは輪を乱すから弾く。だけど、人を信じるならまず自分からだ。人間不振になって混乱していても『手遅れ』でなければ救える。
「トロンパさん、とりあえず…頭下げるの止めようか♪」
こういうのは道化師にやるものじゃない。
道化師が誰かに従うことはあっても、誰かを従えてはならない。道化師がピエロの修行を積むときに先輩方から言われた言葉によっての判断だった。
「私は道化師だから、誰かに従うことがあるかもしれない。道化師故に他者を従えることはない。これは私が道化師となった時からの誓い。
あっ、あえていうなら、トロンパさんは誰にも従わず、自分の考えで行動して自由にしておいてほしいんだ。極力、人殺しは控えてほしいけど…」
【トロンパ】
「……やはり、貴女はそう言う人ですか。」
降参だ、とでも言うかのように、もう片方の袖からナイフを取り出して床に。
「ええ、貴女がそう望むのでしたら。ワタクシはそのように致しますとも。…どうか、これからもご自愛を。」
そう言うと立ち上がり、歩いて行く
あいごころ。(20th)-海月(23rd)
【海月】
白が際立つ建物、と言えば病院。教会とかも白っぽそうだけどそれは知らないし自分の範疇じゃない。
病院と言えば医療器具とかがあるのが基本だよね?
「……というわけで、ここで何か見つかればいいんだけど…」
流石に誰もいないか分からないところを一人で歩くのは怖かったりする。
別に死ぬのとかは怖くないんだけど、ほら、こう、おばけとか…いや、別にボクはおばけも怖くないんだよ!
でも、ほら、何というかそういうの意識するとアレじゃない?
「…だ、だれかいませんかー。なんて…」
部屋を一つ一つ開けながら回っていた。
【あいごころ。】
「病院、ね。」
ゲームが始まった。…けれどそこまでやることは変わらない。全ての場所をとりあえず探索することに変わりはないのだ。…まあ、それに多少のリスクが伴ってきただけの話。と、いうわけで。なにかないかなぁと思いつつこの病院にやってきた。怪我をするリスクのあるなか、医療用具を持たないのは少々不安である。
「…正直、あまりいい思い出はないわね。」
1人そんなことを呟く。…本当に、いい思い出はないからね。…さて、この病院なのだが。1つ問題があった。それは。
「………誰も、いないのかしら?」
…別に怖い訳では無い。けれど。この病院という空間においてNPCすら見当たらない、というのは少々不気味であった。…なんというか、何か出てきそうというか。…いや、怖い訳では無いのだ。うん。
とりあえず適当にそこらへんの病室にでも入ってみようかとか考えた時だった。
『…だれ…か…』
「にゃ!?」
だれか?!誰かってなに?!思わず変な声が出てしまい近くにあった病室に急いで隠れる。…いや、なんか近づいてきてない…?うそ、まさか本当に…扉を閉めて、それに寄りかかるようにして座る。…体が震えているのがわかる。…こ、怖くなんか…
【海月】
分からない。如何して此処には誰もいないんだろう?ショッピングモールも展望台のカフェも、ちょっと不安にはなる感じだったけど人がいたはず。
もしかしたら此処、本当に…いや、やめようやめようこういう考えは。怖くない…
「…ほ、本当に誰もいない、の…?」
誰かがいることに期待したいけど、誰にも気づかれたくなくて小声になってしまう。
どうしよう。とりあえず、次の病室を……
ガタッ、ガタガタッ
……え、え?開かない。何で開かないの?
待って、ここ鍵はかかってないよね?扉が壊れてるとかそういう感じでも……
まさか、本当に…?
「……あの……いますか…?」
トイレでもないのにそんな言葉を投げかけてしまった。
でもほら、おばけと直接対話とかしたくないし…
【あいごころ。】
ガタッガタガタ
「にゃ!?」
扉、扉が動いた…?一応鍵は閉めておいたけれど…いや、嘘だよね。本当にお、おば…いや、そんな非科学的なことは信じない主義だ。確かに病院って死体安置所とかそういうの怖いなぁとか思うけれど。手術中に死ぬ人の霊とか出るのかなとか考えるけどそんな非科学的なこと絶対ありえないしおばけなんてないし私は食べても美味しくないしぃぃ…
『あの…いますか?』
「にゃぁ!?」
しゃ、喋った…いや、いるのだろう。そこに。なにかが。もしかしておばけだろうか?いや、おばけなんて…少しずつ視界が歪んでくる。…昔からそういうおばけとかは苦手だ。なんというか、その。未知に触れるって行為が恐ろしく感じて…
「いゃ…」
こわい…です。
【海月】
中から何か音…え、本当に、何もないよね?大丈夫なんだよね?
…あ。もしかして、地縛霊的な…そういうおばけ…?いや、いやいや…ないない。そう言うのはあり得ないって"ボク"も言ってた…覚えてないけど言ってた!!言ってたから大丈夫!!
というか、だったら本当に何で開かないの…鍵を強引に開けるとか出来ないし…ぶち破る力とかボクにはないし…
いや、諦めちゃダメ…?もしかしてここで諦めて帰るとおばけに憑りつかれ…いやいやそういうのはないとして。
でも、中に誰かが閉じ込められているとかだったら…?可能性は、無くはないよね…?
ドン。
「ねえ、えっと…いるなら開けて!!開けてよ!!」
ドンドン。
押し入り強盗みたいなことしているけど、もし仮説が本当だったら大変だし…そもそも重要な情報がここにあるかもしれないし…というか怖いから何か放っておけないし…!!!
【あいごころ。】
ドンドンと扉が叩かれる。…やはりおばけだろうか?いや、違う。そんなものいるわけ…
『ねえ、えっと…いるなら開けて!!開けてよ!!』
「い、いやぁ…」
思わずそう言ってしまいます。…これは中に私がいることがバレたのでは…?…涙が、出てきちゃいます。でも、ダメです。まだ泣いちゃ。こころは強い子だから…あれ、なんか侵食されてるような…?
「う、うらめしやー!」
もうこうなったらやけである。向こうが怖い存在ならばこっちも怖くなればいいのだ。おばけとおばけならきっと大丈夫だから…(謎理論)目には目を。歯には歯をってやつである。
…まあ、彼女なりのその脅かし方にはまったく恐怖を感じられないのは言うまでもないだろう。
【海月】
ひっ、と少し距離を取る。いきなり大声で"うらめしや"とか言われると恨めしくなくてもびっくりする。
て、いうか、おばけが………ん?
あれ、さっきの声って。
「……え、えっと…其処にいるの…こころさん、だったり、する?」
向こうにいるのがおばけじゃないと仮定しよう。とすれば、人。
ボクの記憶の中で、その、こういう"幼い声"が出てくる…あ、でも、こころさんそこまで子供っぽくないから違うかも…?
いや、でも、いいか。相手に意図が伝わってくれれば…
……おばけなら意味がない。むしろ会話したことがアウトなんじゃないかと気づいたのは今。
【あいごころ。】
「…え?」
うらめしや攻撃が聞いたのだろうか?と一瞬思ったがどうやら違うらしい。…というよりもこの声、聞いたことあるような、というか多分、間違いなくあいつだろう。恐る恐る鍵を開ける。そっと外をのぞき込む。
「あ…」
…えぇ。知っていました。よーく知っていましたとも。このエチゼンクラゲであったってこと。さて。まずはこの状況を、せつめいとか、そう…いう…
「くら、げぇ…」
あれ、なんか涙が…あ、そっか。怖かったからか。うん。だっておばけ怖いから。おばけ怖かったから…
「うう…うわああああ!こわかったのぉ!」
また、ないちゃいました。そして、くらげさんにとっしん。ガバッとだきついちゃいます。しってる人はとてもあんしんするのです。それがくらげだとしても、です。
【海月】
「……え?」
取り敢えず、予想は当たっていた。声の主はこころさんだったらしい。だからまず話、を…
と、思っていたところに、突進された。ちょっとよろけはしたけれど、とりあえず、抱き留めて。
「…え、ええと…大丈夫…?怖かったんだね…んと…よしよし…?」
子供をあやすなんてやった事ないから、まず頭を撫でておく。…ボクの役回りではない気がする。
怖かったというのは間違いないだろうし…彼女にはまず笑顔でいてほしいから、その、泣いてほしくはない。
「…えっと、ごめん?」
あと何故か一応謝っておいた。
【あいごころ。】
「うぅ…ひっく…」
なみだがでてしまってもしかたないですよね。
こわかったらないてしまうものです。
「…くらげ、さん?」
くらげさんはたしかにじゅうじんかくになってて…それで、どうなってるのか分からないんでしたっけ。…なら、ここでなくとくらげさんのめーわくになってしまいます。こころはつよい子です。がんばって泣きやみます。
「…ぅん。もうだいじょーぶ。」
そういって笑います。ひとをあんしんさせるには、えがおが1ばんですから。にぱー
【海月】
「…そっ、か。良かった。ボクは皆が笑顔でいてくれるのが一番だからさ。」
皆が一番大事。それは目の前の少女に対しても同じこと。だったら、今だけは、ボクなりに彼女を励ましておこう。ボクが出来ることはそのくらいだし…
「…えっと、さ。落ち着いたなら、でいいんだけど。ボク、ここ探索しようと思ってて…ただ、その、一人じゃ怖いからさ。
こころさんについてきてもらいたいな、って思うんだけど…平気かなぁ?あ、ごめん、ダメだったら遠慮なく言ってもらっていいから…!」
病院を探索してみたいのは本心。…だけども、一人では流石に怖い。
こころさんの気持ちを落ち着かせるのも兼ねて、ボクと一緒になら、どうかなあって思ったんだけど…
【あいごころ。】
「…うん。いっしょにいっていーい?」
わたしもびょういんにきたもくてきはあります。もしもおけがしたときにたいへんだから、いろいろいりょうどうぐをもっていこうと思うのです。
「こころね、ひとりじゃこわいから…」
そういいながらくらげさんからはなれます。そして、くらげさんのみぎ手をぎゅーっとにぎります。おててをつないでふたりでいけばこわくないのです!
「うん、だいじょーぶ。」
じぶんがこわがっていてはだめです。もっとしっかり、しないと…こころはつよい子ですから…!
【海月】
「分かった。ボクなんかと一緒で悪いだろうけど…ボクも怖いし。一緒に行こうか。」
彼女がここまで言ってくれたんだし、ここで「はいダメです」なんて言う人はいないだろう。"ボク"もそのはず。…そのはずだよね?
…女の子に手を握られる経験はそうそうないからちょっとドキドキするけど。
うん。大丈夫。
…探索に目を向けよう。ボクも探したいものは色々あるし。
――――――
二人は人の名前が連なったA4用紙を見つけた。
============
第二十回「殺人学園」計画:被験者リスト
【生還者】
豊穣 松稔(青葉陽光)
赤城 結奈(ニノマエ)
桂木 巳之(月乃うさぎ)
山中 優子(マツヨUSDX)
光浦 総馬(ミソラ)
神谷 霖之助(桐間 紗路)
白幽 玉楼(しょうちゃん)
【死亡者】
横地 健太郎(委員長)
明星 憂奈(パフェ)
如月 澪音(Idolfried=Ehrenberg)
弐宮 京香(わたし鏡)
五十嵐 蓮司(とっぽぎ三郎丸)
水谷 浩美(L.L.)
夏川 高帆(古宮 ノエル)
橋形 摩耶(夢幻の魔女)
姫川 赤城(ガラクタ)
東滝 洸子(ディラン)
羽野 紫織(六葉 マリア)
東雲 束(マリファナ)
=========
――――――
【あいごころ。】
しばらくたんさくしていると。ふいにあるふぁいるがめにはいりました。…なんとなく、それをひろいあげます。
「…さつじん、がくえん」
いったいこれはなんなのでしょう…いや、すこしだけ。すこしだけこころあたりはあります。。…ああ、そうか。あの“しっそうじけん”。ここにかかれたりすとのじんぶつたちといっしょです。…なるほど。すこしだけ、あのじけんがわかったきがします。つまり、あのひとたちもさんかしていた、ということでまちがいなさそうです。
「…もうすこし、じょうほうがほしいかも。」
こくびをかしげながらそうつぶやきます。
…とりあえずいりょうきっとをてにいれました。
【海月】
「……殺人、学園?」
こころさんが拾い上げたファイルをのぞき込む。大方、見たことのない名前が羅列されている。
ボクには良くわからない…けれど、きっと、"ボク"なら良く分かるのだろうか。
「…こころさんはこの、殺人学園っての、覚えがあったりするの…?」
良く分からないけれど、彼女がつぶやいた"情報が欲しい"という言葉に反応して聞いてしまった。
…ボクも情報は欲しい。けれど、彼女は何か、分かっていているような気がして。
…なんで、ボクは分からないんだろう。
【あいごころ。】
「…んーん」
くびをよこにふる。…これは、あまりいわないほうがいいことだとおもったから。へんにひろめてこんらんをおこしてもこまる。
「どう?ほしいものみつかった?」
とりあえずまずはたんさくのせいかを聞くのです。くらげさんはいいの見つかったでしょうか…?
…あと、ひつようなのは…
【海月】
「欲しいもの…うん。流石に病院だし医療器具は見つかったよ。後は…その紙?みたいなものがもっとあれば、ここの事について詳しく分かるのかもしれないけれど…」
まあ、あったとしても、ボクには良く分からないか。…もしかしたら、"彼女"の名前があってもおかしくはないと感じたけど。いや、まあ、やめておこう。
こころさんが欲しいものは大体見つかったみたいだし。…まあ、というか、病院に来ている時点で欲しいものは両方とも同じって考えた方がよかったかもしれない。
「じゃあ、他に何もないなら、引き返そう……」
と、踵を返した時。
ちょうど足元にお求めの医療器具を置きっぱなしだったのか。それとも態となのか。
盛大に転んだ。
【あいごころ。】
くらげさんがせいだいにころびました。…しかし、それを見ることはありませんでした。…手をぎゅーっとしてたのです。くらげさんが転んだらわたしもころんでしまうのは…当たり前ですよね?
「にゃぁ!」
ペターン!って、感じでふたりいっしょにころんじゃいます。わたしは転びなれてるからいいけど、くらげさんはだいじょうぶでしょうか…?
「いてて…だいじょーぶ?」
そうききます。…あれ、なんだろう。すごく、いやなかんじが。…いや、きのせいならいいのです。
【海月】
「ああ……っはは、大丈夫大丈夫。キミの方こそって感じだと思うけど?大丈夫?」
心配は意にもせず、目の前の彼女の手をふっと払って立ち上がる。
怪我の場所を確認して、別に気にするほどでもないことを確かめると……
素早くコロパッドを手に取った。
【あいごころ。】
「…?」
きゅうにてをふりはらわれました。どうしたのでしょう。…ころぱっとをみてるけど…
ころんだ。つまりしょうげきがはいった。…いや、まさかそんなかんたんなことでもとにもどるものなのでしょうか?
「あの…どーしたの?」
そうききました。…いや、このふんいき、たぶん…
【海月】
「…ん?どーしたのって?さっきまで探索してて、キミと一緒に転んじゃったーってところまで、でしょ?
どうもしてないよね。…それより、そんな転んだままだといつか床にでも張り付くと思うし、起き上がらない?」
冗談っぽく笑う。…写真は撮らない事にしておこう。痛いのはいつでも嫌いだ。
それに、今は"記憶があるまま"戻れたワケだし。
ちょっとぐらい弄ってみても問題ないよね?
【あいごころ。】
「う、うん…」
とりあえずいそいそとからだをおこします…なんか、すこしだけふんいきがかわったような…?いや、きっと、きのせいでしょう。
「えっと…その、もうでようか?」
すこしうつむきながらききます。…もう、ここにようはないのです。…ないよね?とりあえずかるくからだのよごれをはたくと、わたしはでぐちへとあるきだします。
【海月】
「…もう出るの?ほら、まだ全部調べたってわけじゃないし…それに、キミと二人で話したいこともあるんだよね」
"あいつ"にはないだろうけどね。オレからしてみたらないワケではないし。
それに、目の前の彼女が何を持っているのか、情報があるのか、色々と気になるし。
「こうやって二人で歩いてると…何か、デートしてるみたいな気分になるよね。
…あ、ごめんね。ボクみたいなヤツとデートとか嫌かな。」
"なんちゃって"。アイツはオレのこと知らないかもしれないけど、オレはアイツのこと割と知り尽くしてるから。
演じるくらいワケ…ないよね。バレてないよね?
【あいごころ。】
…いわかん、でしょうか?なんだろう。ひょうめんじょうはふつうだけれど…いや、たぶんきのせいです。
「はなしたいこと?」
なんだろうとおもいながらくびをかしげます。そんなはなすようなこと、のこっていましたっけ。
「でーと?いやじゃないよ!たのしいもん!」
たのしいことはすきなのです。でーとはたのしいのですきです。…ほんとうですよ?いっぱいたのしいことがあるのですから!
【海月】
「んー……調子狂うなぁ…まあいっか。もうゲエムは始まっちゃったけど…こころさん、は、始まってから気づいたこととかある?
あとさ、ゲエムをみんなで生き残る為には情報を分け合うことが大切だと思うんだよね…ほら、ゾディアックとか道具とかは、一人に一つしか与えられてないワケでしょ?
それをみんなで共有しておいたら、警戒出来るものも増えるし、協力できるものも増える。
そうじゃないかな?って思うんだけど、どうかな!」
よくもまあ、此処まで口が回るものだね。本心からそこまで思ってないクセに。
むしろゲエムを愉しもうとしてるクセに?まあ、オレのコトなんだけどね!
…今のこころちゃんなら結構色々絞れそうなのだけれど、ライバルが一人減ってしまうのは悲しいかな。
早いところもとに戻ってほしいなー、でも情報は欲しいなー。あー、どうしようかなー。
…まあいいか。
【あいごころ。】
「…あ」
…いわかん。わかりました!なんというか…こう…
「…すっごく、すっごくしゃべるね!」
…いきなり、じょうべんになったってことでした!こんなことにきづいちゃうこころは、やっぱりつよい子なのです!
「えっとね、えっとね、ひとがしんだの!すっごくこわいよね!」
ああ!さっきまでなかったこのいやなかんじ!もどってきたんですね!“くらげおねぇちゃん”!!
「ぞでぃあっくはね!なんだとおもう?あててみて!」
いっぱいあそんでほしいのです!ああ!ほんとうに…だいっきらいです!わたしはいま、とてもえがおなのです!きっとりゆうはわからないでしょうけど、とってもうれしいのです!あはは!
【海月】
「人が死んだんだよねー!ああ怖いよね。怖い怖い!何かしないとすぐに自分達も殺されちゃいそうだよね。」
ああ、なるほどね。"戻ってきた"のかな?キミはそんな回りくどく毒を吐くタイプだったね!
そんな可哀想な状態じゃダメだよね。やっぱり好敵手(ライバル)には敵(ライバル)でいてもらわないと。
「キミのゾディアックが、何か…かぁ。実直に天秤座とかなんじゃない?って思うけど。
どうせ答える気、ないんでしょ?」
【あいごころ。】
笑顔でこういいます。
「うん!ないよ!」
今はちょっと、肉体に引っ張られてしまっているけれども。やはり、くらげおねぇちゃんはこうでないとね!!
「ねぇ!やっぱりいまのじょうきょうはたのしいの?」
きっといってくれるでしょう?私とは正反対の、あの言葉。…悪趣味と言い続ける私と、正反対のあなただもの!
【海月】
「っはは!今の状況が愉しいか、なんて。答え、一つじゃない?」
きっと彼女は望んでいる。彼女と正反対の、あの言葉。良い趣味だと褒め続けるオレの、あの言葉を。
残念だったね。こころちゃんはまだオレをあんまり知れてない?それとも知った上で?
いいや、知れてないさ。オレが如何いう考えをしているのか誰にも知れはしないよ。
――でも、期待には応えてあげないと!素直で、正直で、やさしーいオレだからね!
「"愉しい"に決まってるじゃん。クラスメイト、知っている人達同士の、命がけの裏切り合い騙し合い嘘吐き合いのデスゲエム!
敗者に待っているのは"死"で、勝者に待っているのは"絶望"だ。誰にも変えれはしない。
…こころちゃん。キミは、このゲエム、参加するつもりなの?」
【あいごころ。】
参加するの、ですか。…それは答えを知ってて聞いてるのですかね。何を考えてるかわからない狂人です。だから…嫌いなのですけれどね。だから。“狐面をさわってすこし、頬をあげる。”
「参加なんてしないわよ。こんな、悪趣味なゲーム。」
そういってクスクス笑う。…だってそれが『あいごころ。』だから。彼女とは反対を行く、狂人を理解出来ない存在。それが、わたしだから。
「さて、このファイルは…うん。あなたにあげる。…お祝い、としてね。」
そう。お祝いとして。この瞬間だけは、私はあなたを祝おう。…自己的な、理由。それだけで。ね?
【海月】
「そう?釣れないこと言うね。まあ、それなら"傍観"でもいいんじゃない?
参加出来ないというのは物悲しいもんだよ?ゲエムは娯楽、愉しむためのものなのに愉しめないんだから。
ああ、ファイルはありがとう!有効に使わせてもらっちゃおっかな!
こころちゃんがくれた唯一のプレゼントってことで、ね!」
有り難う、だなんて。仮初の言葉だけれど、唯一本心で言ったのはこれだけ、か。
若し彼女がオレと同じ"狂人"だったのなら、その時は一緒に祝杯でもあげようか。
けれど、若し彼女が"オレ"と同じ"狂人じゃない"のなら、その時は一緒に手を取って喜ぼう。
――一瞬だけ、ね。
でもそれだけ。ゲエムは愉しむ為のモノ。それを楽しめないと言った彼女とはもう離別しているのだから。
シンジツがどうであれ。
「じゃあ、ここでお別れかな!こころちゃん。楽しい話が出来て良かったね?」
【あいごころ。】
「ええ。…またね。」
今回はさようなら、じゃない。またね、であった。多分、だけど。…まあ、彼女には会う気がしたから。
…ああ、そうだ。ついでにあれでも取っておこうか。そう思いながら彼女の元を後にする。
あれ、を取ったあとに病院を後にしする。…ああ、やっとだ。やっと楽しくなってきたじゃないか。さて、そろそろ誰かがあれ、見つけてもいい頃だけど。そうしてクスリと笑う。
「ああ、本当に…悪趣味ね」
【海月】
白が際立つ建物、と言えば病院。教会とかも白っぽそうだけどそれは知らないし自分の範疇じゃない。
病院と言えば医療器具とかがあるのが基本だよね?
「……というわけで、ここで何か見つかればいいんだけど…」
流石に誰もいないか分からないところを一人で歩くのは怖かったりする。
別に死ぬのとかは怖くないんだけど、ほら、こう、おばけとか…いや、別にボクはおばけも怖くないんだよ!
でも、ほら、何というかそういうの意識するとアレじゃない?
「…だ、だれかいませんかー。なんて…」
部屋を一つ一つ開けながら回っていた。
【あいごころ。】
「病院、ね。」
ゲームが始まった。…けれどそこまでやることは変わらない。全ての場所をとりあえず探索することに変わりはないのだ。…まあ、それに多少のリスクが伴ってきただけの話。と、いうわけで。なにかないかなぁと思いつつこの病院にやってきた。怪我をするリスクのあるなか、医療用具を持たないのは少々不安である。
「…正直、あまりいい思い出はないわね。」
1人そんなことを呟く。…本当に、いい思い出はないからね。…さて、この病院なのだが。1つ問題があった。それは。
「………誰も、いないのかしら?」
…別に怖い訳では無い。けれど。この病院という空間においてNPCすら見当たらない、というのは少々不気味であった。…なんというか、何か出てきそうというか。…いや、怖い訳では無いのだ。うん。
とりあえず適当にそこらへんの病室にでも入ってみようかとか考えた時だった。
『…だれ…か…』
「にゃ!?」
だれか?!誰かってなに?!思わず変な声が出てしまい近くにあった病室に急いで隠れる。…いや、なんか近づいてきてない…?うそ、まさか本当に…扉を閉めて、それに寄りかかるようにして座る。…体が震えているのがわかる。…こ、怖くなんか…
【海月】
分からない。如何して此処には誰もいないんだろう?ショッピングモールも展望台のカフェも、ちょっと不安にはなる感じだったけど人がいたはず。
もしかしたら此処、本当に…いや、やめようやめようこういう考えは。怖くない…
「…ほ、本当に誰もいない、の…?」
誰かがいることに期待したいけど、誰にも気づかれたくなくて小声になってしまう。
どうしよう。とりあえず、次の病室を……
ガタッ、ガタガタッ
……え、え?開かない。何で開かないの?
待って、ここ鍵はかかってないよね?扉が壊れてるとかそういう感じでも……
まさか、本当に…?
「……あの……いますか…?」
トイレでもないのにそんな言葉を投げかけてしまった。
でもほら、おばけと直接対話とかしたくないし…
【あいごころ。】
ガタッガタガタ
「にゃ!?」
扉、扉が動いた…?一応鍵は閉めておいたけれど…いや、嘘だよね。本当にお、おば…いや、そんな非科学的なことは信じない主義だ。確かに病院って死体安置所とかそういうの怖いなぁとか思うけれど。手術中に死ぬ人の霊とか出るのかなとか考えるけどそんな非科学的なこと絶対ありえないしおばけなんてないし私は食べても美味しくないしぃぃ…
『あの…いますか?』
「にゃぁ!?」
しゃ、喋った…いや、いるのだろう。そこに。なにかが。もしかしておばけだろうか?いや、おばけなんて…少しずつ視界が歪んでくる。…昔からそういうおばけとかは苦手だ。なんというか、その。未知に触れるって行為が恐ろしく感じて…
「いゃ…」
こわい…です。
【海月】
中から何か音…え、本当に、何もないよね?大丈夫なんだよね?
…あ。もしかして、地縛霊的な…そういうおばけ…?いや、いやいや…ないない。そう言うのはあり得ないって"ボク"も言ってた…覚えてないけど言ってた!!言ってたから大丈夫!!
というか、だったら本当に何で開かないの…鍵を強引に開けるとか出来ないし…ぶち破る力とかボクにはないし…
いや、諦めちゃダメ…?もしかしてここで諦めて帰るとおばけに憑りつかれ…いやいやそういうのはないとして。
でも、中に誰かが閉じ込められているとかだったら…?可能性は、無くはないよね…?
ドン。
「ねえ、えっと…いるなら開けて!!開けてよ!!」
ドンドン。
押し入り強盗みたいなことしているけど、もし仮説が本当だったら大変だし…そもそも重要な情報がここにあるかもしれないし…というか怖いから何か放っておけないし…!!!
【あいごころ。】
ドンドンと扉が叩かれる。…やはりおばけだろうか?いや、違う。そんなものいるわけ…
『ねえ、えっと…いるなら開けて!!開けてよ!!』
「い、いやぁ…」
思わずそう言ってしまいます。…これは中に私がいることがバレたのでは…?…涙が、出てきちゃいます。でも、ダメです。まだ泣いちゃ。こころは強い子だから…あれ、なんか侵食されてるような…?
「う、うらめしやー!」
もうこうなったらやけである。向こうが怖い存在ならばこっちも怖くなればいいのだ。おばけとおばけならきっと大丈夫だから…(謎理論)目には目を。歯には歯をってやつである。
…まあ、彼女なりのその脅かし方にはまったく恐怖を感じられないのは言うまでもないだろう。
【海月】
ひっ、と少し距離を取る。いきなり大声で"うらめしや"とか言われると恨めしくなくてもびっくりする。
て、いうか、おばけが………ん?
あれ、さっきの声って。
「……え、えっと…其処にいるの…こころさん、だったり、する?」
向こうにいるのがおばけじゃないと仮定しよう。とすれば、人。
ボクの記憶の中で、その、こういう"幼い声"が出てくる…あ、でも、こころさんそこまで子供っぽくないから違うかも…?
いや、でも、いいか。相手に意図が伝わってくれれば…
……おばけなら意味がない。むしろ会話したことがアウトなんじゃないかと気づいたのは今。
【あいごころ。】
「…え?」
うらめしや攻撃が聞いたのだろうか?と一瞬思ったがどうやら違うらしい。…というよりもこの声、聞いたことあるような、というか多分、間違いなくあいつだろう。恐る恐る鍵を開ける。そっと外をのぞき込む。
「あ…」
…えぇ。知っていました。よーく知っていましたとも。このエチゼンクラゲであったってこと。さて。まずはこの状況を、せつめいとか、そう…いう…
「くら、げぇ…」
あれ、なんか涙が…あ、そっか。怖かったからか。うん。だっておばけ怖いから。おばけ怖かったから…
「うう…うわああああ!こわかったのぉ!」
また、ないちゃいました。そして、くらげさんにとっしん。ガバッとだきついちゃいます。しってる人はとてもあんしんするのです。それがくらげだとしても、です。
【海月】
「……え?」
取り敢えず、予想は当たっていた。声の主はこころさんだったらしい。だからまず話、を…
と、思っていたところに、突進された。ちょっとよろけはしたけれど、とりあえず、抱き留めて。
「…え、ええと…大丈夫…?怖かったんだね…んと…よしよし…?」
子供をあやすなんてやった事ないから、まず頭を撫でておく。…ボクの役回りではない気がする。
怖かったというのは間違いないだろうし…彼女にはまず笑顔でいてほしいから、その、泣いてほしくはない。
「…えっと、ごめん?」
あと何故か一応謝っておいた。
【あいごころ。】
「うぅ…ひっく…」
なみだがでてしまってもしかたないですよね。
こわかったらないてしまうものです。
「…くらげ、さん?」
くらげさんはたしかにじゅうじんかくになってて…それで、どうなってるのか分からないんでしたっけ。…なら、ここでなくとくらげさんのめーわくになってしまいます。こころはつよい子です。がんばって泣きやみます。
「…ぅん。もうだいじょーぶ。」
そういって笑います。ひとをあんしんさせるには、えがおが1ばんですから。にぱー
【海月】
「…そっ、か。良かった。ボクは皆が笑顔でいてくれるのが一番だからさ。」
皆が一番大事。それは目の前の少女に対しても同じこと。だったら、今だけは、ボクなりに彼女を励ましておこう。ボクが出来ることはそのくらいだし…
「…えっと、さ。落ち着いたなら、でいいんだけど。ボク、ここ探索しようと思ってて…ただ、その、一人じゃ怖いからさ。
こころさんについてきてもらいたいな、って思うんだけど…平気かなぁ?あ、ごめん、ダメだったら遠慮なく言ってもらっていいから…!」
病院を探索してみたいのは本心。…だけども、一人では流石に怖い。
こころさんの気持ちを落ち着かせるのも兼ねて、ボクと一緒になら、どうかなあって思ったんだけど…
【あいごころ。】
「…うん。いっしょにいっていーい?」
わたしもびょういんにきたもくてきはあります。もしもおけがしたときにたいへんだから、いろいろいりょうどうぐをもっていこうと思うのです。
「こころね、ひとりじゃこわいから…」
そういいながらくらげさんからはなれます。そして、くらげさんのみぎ手をぎゅーっとにぎります。おててをつないでふたりでいけばこわくないのです!
「うん、だいじょーぶ。」
じぶんがこわがっていてはだめです。もっとしっかり、しないと…こころはつよい子ですから…!
【海月】
「分かった。ボクなんかと一緒で悪いだろうけど…ボクも怖いし。一緒に行こうか。」
彼女がここまで言ってくれたんだし、ここで「はいダメです」なんて言う人はいないだろう。"ボク"もそのはず。…そのはずだよね?
…女の子に手を握られる経験はそうそうないからちょっとドキドキするけど。
うん。大丈夫。
…探索に目を向けよう。ボクも探したいものは色々あるし。
――――――
二人は人の名前が連なったA4用紙を見つけた。
============
第二十回「殺人学園」計画:被験者リスト
【生還者】
豊穣 松稔(青葉陽光)
赤城 結奈(ニノマエ)
桂木 巳之(月乃うさぎ)
山中 優子(マツヨUSDX)
光浦 総馬(ミソラ)
神谷 霖之助(桐間 紗路)
白幽 玉楼(しょうちゃん)
【死亡者】
横地 健太郎(委員長)
明星 憂奈(パフェ)
如月 澪音(Idolfried=Ehrenberg)
弐宮 京香(わたし鏡)
五十嵐 蓮司(とっぽぎ三郎丸)
水谷 浩美(L.L.)
夏川 高帆(古宮 ノエル)
橋形 摩耶(夢幻の魔女)
姫川 赤城(ガラクタ)
東滝 洸子(ディラン)
羽野 紫織(六葉 マリア)
東雲 束(マリファナ)
=========
――――――
【あいごころ。】
しばらくたんさくしていると。ふいにあるふぁいるがめにはいりました。…なんとなく、それをひろいあげます。
「…さつじん、がくえん」
いったいこれはなんなのでしょう…いや、すこしだけ。すこしだけこころあたりはあります。。…ああ、そうか。あの“しっそうじけん”。ここにかかれたりすとのじんぶつたちといっしょです。…なるほど。すこしだけ、あのじけんがわかったきがします。つまり、あのひとたちもさんかしていた、ということでまちがいなさそうです。
「…もうすこし、じょうほうがほしいかも。」
こくびをかしげながらそうつぶやきます。
…とりあえずいりょうきっとをてにいれました。
【海月】
「……殺人、学園?」
こころさんが拾い上げたファイルをのぞき込む。大方、見たことのない名前が羅列されている。
ボクには良くわからない…けれど、きっと、"ボク"なら良く分かるのだろうか。
「…こころさんはこの、殺人学園っての、覚えがあったりするの…?」
良く分からないけれど、彼女がつぶやいた"情報が欲しい"という言葉に反応して聞いてしまった。
…ボクも情報は欲しい。けれど、彼女は何か、分かっていているような気がして。
…なんで、ボクは分からないんだろう。
【あいごころ。】
「…んーん」
くびをよこにふる。…これは、あまりいわないほうがいいことだとおもったから。へんにひろめてこんらんをおこしてもこまる。
「どう?ほしいものみつかった?」
とりあえずまずはたんさくのせいかを聞くのです。くらげさんはいいの見つかったでしょうか…?
…あと、ひつようなのは…
【海月】
「欲しいもの…うん。流石に病院だし医療器具は見つかったよ。後は…その紙?みたいなものがもっとあれば、ここの事について詳しく分かるのかもしれないけれど…」
まあ、あったとしても、ボクには良く分からないか。…もしかしたら、"彼女"の名前があってもおかしくはないと感じたけど。いや、まあ、やめておこう。
こころさんが欲しいものは大体見つかったみたいだし。…まあ、というか、病院に来ている時点で欲しいものは両方とも同じって考えた方がよかったかもしれない。
「じゃあ、他に何もないなら、引き返そう……」
と、踵を返した時。
ちょうど足元にお求めの医療器具を置きっぱなしだったのか。それとも態となのか。
盛大に転んだ。
【あいごころ。】
くらげさんがせいだいにころびました。…しかし、それを見ることはありませんでした。…手をぎゅーっとしてたのです。くらげさんが転んだらわたしもころんでしまうのは…当たり前ですよね?
「にゃぁ!」
ペターン!って、感じでふたりいっしょにころんじゃいます。わたしは転びなれてるからいいけど、くらげさんはだいじょうぶでしょうか…?
「いてて…だいじょーぶ?」
そうききます。…あれ、なんだろう。すごく、いやなかんじが。…いや、きのせいならいいのです。
【海月】
「ああ……っはは、大丈夫大丈夫。キミの方こそって感じだと思うけど?大丈夫?」
心配は意にもせず、目の前の彼女の手をふっと払って立ち上がる。
怪我の場所を確認して、別に気にするほどでもないことを確かめると……
素早くコロパッドを手に取った。
【あいごころ。】
「…?」
きゅうにてをふりはらわれました。どうしたのでしょう。…ころぱっとをみてるけど…
ころんだ。つまりしょうげきがはいった。…いや、まさかそんなかんたんなことでもとにもどるものなのでしょうか?
「あの…どーしたの?」
そうききました。…いや、このふんいき、たぶん…
【海月】
「…ん?どーしたのって?さっきまで探索してて、キミと一緒に転んじゃったーってところまで、でしょ?
どうもしてないよね。…それより、そんな転んだままだといつか床にでも張り付くと思うし、起き上がらない?」
冗談っぽく笑う。…写真は撮らない事にしておこう。痛いのはいつでも嫌いだ。
それに、今は"記憶があるまま"戻れたワケだし。
ちょっとぐらい弄ってみても問題ないよね?
【あいごころ。】
「う、うん…」
とりあえずいそいそとからだをおこします…なんか、すこしだけふんいきがかわったような…?いや、きっと、きのせいでしょう。
「えっと…その、もうでようか?」
すこしうつむきながらききます。…もう、ここにようはないのです。…ないよね?とりあえずかるくからだのよごれをはたくと、わたしはでぐちへとあるきだします。
【海月】
「…もう出るの?ほら、まだ全部調べたってわけじゃないし…それに、キミと二人で話したいこともあるんだよね」
"あいつ"にはないだろうけどね。オレからしてみたらないワケではないし。
それに、目の前の彼女が何を持っているのか、情報があるのか、色々と気になるし。
「こうやって二人で歩いてると…何か、デートしてるみたいな気分になるよね。
…あ、ごめんね。ボクみたいなヤツとデートとか嫌かな。」
"なんちゃって"。アイツはオレのこと知らないかもしれないけど、オレはアイツのこと割と知り尽くしてるから。
演じるくらいワケ…ないよね。バレてないよね?
【あいごころ。】
…いわかん、でしょうか?なんだろう。ひょうめんじょうはふつうだけれど…いや、たぶんきのせいです。
「はなしたいこと?」
なんだろうとおもいながらくびをかしげます。そんなはなすようなこと、のこっていましたっけ。
「でーと?いやじゃないよ!たのしいもん!」
たのしいことはすきなのです。でーとはたのしいのですきです。…ほんとうですよ?いっぱいたのしいことがあるのですから!
【海月】
「んー……調子狂うなぁ…まあいっか。もうゲエムは始まっちゃったけど…こころさん、は、始まってから気づいたこととかある?
あとさ、ゲエムをみんなで生き残る為には情報を分け合うことが大切だと思うんだよね…ほら、ゾディアックとか道具とかは、一人に一つしか与えられてないワケでしょ?
それをみんなで共有しておいたら、警戒出来るものも増えるし、協力できるものも増える。
そうじゃないかな?って思うんだけど、どうかな!」
よくもまあ、此処まで口が回るものだね。本心からそこまで思ってないクセに。
むしろゲエムを愉しもうとしてるクセに?まあ、オレのコトなんだけどね!
…今のこころちゃんなら結構色々絞れそうなのだけれど、ライバルが一人減ってしまうのは悲しいかな。
早いところもとに戻ってほしいなー、でも情報は欲しいなー。あー、どうしようかなー。
…まあいいか。
【あいごころ。】
「…あ」
…いわかん。わかりました!なんというか…こう…
「…すっごく、すっごくしゃべるね!」
…いきなり、じょうべんになったってことでした!こんなことにきづいちゃうこころは、やっぱりつよい子なのです!
「えっとね、えっとね、ひとがしんだの!すっごくこわいよね!」
ああ!さっきまでなかったこのいやなかんじ!もどってきたんですね!“くらげおねぇちゃん”!!
「ぞでぃあっくはね!なんだとおもう?あててみて!」
いっぱいあそんでほしいのです!ああ!ほんとうに…だいっきらいです!わたしはいま、とてもえがおなのです!きっとりゆうはわからないでしょうけど、とってもうれしいのです!あはは!
【海月】
「人が死んだんだよねー!ああ怖いよね。怖い怖い!何かしないとすぐに自分達も殺されちゃいそうだよね。」
ああ、なるほどね。"戻ってきた"のかな?キミはそんな回りくどく毒を吐くタイプだったね!
そんな可哀想な状態じゃダメだよね。やっぱり好敵手(ライバル)には敵(ライバル)でいてもらわないと。
「キミのゾディアックが、何か…かぁ。実直に天秤座とかなんじゃない?って思うけど。
どうせ答える気、ないんでしょ?」
【あいごころ。】
笑顔でこういいます。
「うん!ないよ!」
今はちょっと、肉体に引っ張られてしまっているけれども。やはり、くらげおねぇちゃんはこうでないとね!!
「ねぇ!やっぱりいまのじょうきょうはたのしいの?」
きっといってくれるでしょう?私とは正反対の、あの言葉。…悪趣味と言い続ける私と、正反対のあなただもの!
【海月】
「っはは!今の状況が愉しいか、なんて。答え、一つじゃない?」
きっと彼女は望んでいる。彼女と正反対の、あの言葉。良い趣味だと褒め続けるオレの、あの言葉を。
残念だったね。こころちゃんはまだオレをあんまり知れてない?それとも知った上で?
いいや、知れてないさ。オレが如何いう考えをしているのか誰にも知れはしないよ。
――でも、期待には応えてあげないと!素直で、正直で、やさしーいオレだからね!
「"愉しい"に決まってるじゃん。クラスメイト、知っている人達同士の、命がけの裏切り合い騙し合い嘘吐き合いのデスゲエム!
敗者に待っているのは"死"で、勝者に待っているのは"絶望"だ。誰にも変えれはしない。
…こころちゃん。キミは、このゲエム、参加するつもりなの?」
【あいごころ。】
参加するの、ですか。…それは答えを知ってて聞いてるのですかね。何を考えてるかわからない狂人です。だから…嫌いなのですけれどね。だから。“狐面をさわってすこし、頬をあげる。”
「参加なんてしないわよ。こんな、悪趣味なゲーム。」
そういってクスクス笑う。…だってそれが『あいごころ。』だから。彼女とは反対を行く、狂人を理解出来ない存在。それが、わたしだから。
「さて、このファイルは…うん。あなたにあげる。…お祝い、としてね。」
そう。お祝いとして。この瞬間だけは、私はあなたを祝おう。…自己的な、理由。それだけで。ね?
【海月】
「そう?釣れないこと言うね。まあ、それなら"傍観"でもいいんじゃない?
参加出来ないというのは物悲しいもんだよ?ゲエムは娯楽、愉しむためのものなのに愉しめないんだから。
ああ、ファイルはありがとう!有効に使わせてもらっちゃおっかな!
こころちゃんがくれた唯一のプレゼントってことで、ね!」
有り難う、だなんて。仮初の言葉だけれど、唯一本心で言ったのはこれだけ、か。
若し彼女がオレと同じ"狂人"だったのなら、その時は一緒に祝杯でもあげようか。
けれど、若し彼女が"オレ"と同じ"狂人じゃない"のなら、その時は一緒に手を取って喜ぼう。
――一瞬だけ、ね。
でもそれだけ。ゲエムは愉しむ為のモノ。それを楽しめないと言った彼女とはもう離別しているのだから。
シンジツがどうであれ。
「じゃあ、ここでお別れかな!こころちゃん。楽しい話が出来て良かったね?」
【あいごころ。】
「ええ。…またね。」
今回はさようなら、じゃない。またね、であった。多分、だけど。…まあ、彼女には会う気がしたから。
…ああ、そうだ。ついでにあれでも取っておこうか。そう思いながら彼女の元を後にする。
あれ、を取ったあとに病院を後にしする。…ああ、やっとだ。やっと楽しくなってきたじゃないか。さて、そろそろ誰かがあれ、見つけてもいい頃だけど。そうしてクスリと笑う。
「ああ、本当に…悪趣味ね」
ふ〇なっしー(1st)-五番目の道化師(3rd)
【五番目の道化師】
中央エリアにある商店街にあるとある銭湯で道化師は湯に浸かっていた。こんな状況では軽はずみにメイクはとれないので、しぶしぶメイクをとらないまま…湯に浸かる。
「…はぁ、静に風呂が入れるのがこれが初か」
愚痴を溢し…バスタオルで締め付けた自分の体に湯をかけて…癒されていた
【ふ〇なっしー】
「おふろーおふろー」
と結構の頻度で入っているふ○なっしーお風呂が好きらしい←
ガラガラっと脱衣場のドアを開けピエロがいる温泉へ足を運ぶクソなし
「やぁ!こんにちわ!調子どう?」
【五番目の道化師】
「こんにちは」
誰もいない時間帯を選んだのに人に遭遇ばっかしてるなぁ!?と、内心で思いつつ温泉で癒される。
「調子は…まぁまぁねー。気分は最悪だけど」
【ふ〇なっしー】
「気分悪いのかー……それもそうだな!こんなゲームが始まってしまったからね!!!」
と、勢いよく湯船に飛び込む、飛び込んだ表紙にお湯が飛び散りピエロの顔にかかろうと…
「さぁ!何して遊ぶー?」
【五番目の道化師】
「遊ぶないッ!風呂は静かにはいるものなんだから」
子供に叱責するように言う道化師は顔にかかった水飛沫を拭う。どうやら今回は防水性の特殊な化粧品を使ってきたらしい。白塗りメイクはいっさい取れていない。
「…静かに癒させなさいよ、おねがいだから」
どうやら道化師は風呂は静かに入り、その静かな入浴タイムを楽しむタイプらしい。
【ふ〇なっしー】
「はいはーい……んじゃ何して遊ぶ?」
といつの間にか持ち込んでいたトランプを出す……こいついっつもトランプ持ち込んでんな←
「ポーカー?ブラック・ジャック?何がいい?」
【五番目の道化師】
「だから、遊ぶなって…」
だいたい風呂にトランプとかマナー違反過ぎるだろ。
道化師は風呂に入ってきた子供に背を向け
「興味ない」
【ふ〇なっしー】
「んー、やっぱりクソザコナメクジかぁ……僕みたいな雑魚が持ちかけるゲームを受けないなんて…僕以下だね!!!!!」
おお、露骨に警戒してらっしゃるwwww
そんな事はどぅでぃもいい、取り敢えずゲームがやりたいんだやりたい!!やりたい!!やりたい!!やりたい!!
「ゲームやりたい!!やりたい!!!!やりたい!!!!やりたい!!!!!!」
【五番目の道化師】
お前以下とかどうでもいいんだが。
しかし、あれだな。うるさい。プチッと来るくらいうるさい。
「静かに風呂、入らせろよ。まず、ゲームなんて興味ないしお前以下と言うのも別にどうでもいい。第一風呂は遊び場じゃないんだから遊びたいなら他所へいけ。迷惑だ。なぁ、お前、人の迷惑なんて考えたことある?あっ、もしかしてその見た目なら何でもしていいと思っちゃったパターン?ざんねーん、私は見た目子供でも優しくするつもりねぇわ。だって、よく考えてみ?名前わかんなくともクラスメイト確定だよ?クラスメイトが風呂にトランプ持ち込むとかないわー。マジないわー。マナーの一つもまもれないのかよ。ほんとに高校生?頭、大丈夫?」
道化師は一呼吸もせず言い切った。
【ふ〇なっしー】
「うわぁ……よくそんな長い事言えるねぇ……あとルールは破るもの!!そう!こんなご時世!はいはいとルールに従うような男になりたくはない!!!つまりそういう事だ」
そう、ルールは破る為にある。破ってまたルールが作られてまた破られるその繰り返し
「さぁ!ゲームをしよう!拒否権は無い!!!」
【五番目の道化師】
「へぇ…ルールは破るもの…ねぇ?」
なら、ルール違反が自分だけだとは思ってないよな。
笑顔だ、めっちゃ笑顔だ。
「もう一回、いうけど『静かにしろ』」
道化師はそっと風呂底とバスタオルの端に手を伸ばし
【ふ〇なっしー】
「いいぜ、だがこいつは黙らねぇけどな!!!」
トランプをいつの間にか持ち込んでたハンカチで被せると……
「さて、何が出るかなー?へへへwww出てきたのは〜にゅーなんぶでしたぁーなーんてねぇー」
とハンカチを上に上げると出てきたのは全裸の男の娘の写真
「あれれー?どういうことだー!クソザコナメクジのアイテムだ!さぁこれを君にあげよう」
タオルでどうするか……まぁなんかヌンチャクみたいにするのだろう←
さてさてぇどうする?
【五番目の道化師】
道化師は冷ややかな目を向け…伸ばした手を引っ込めて再び湯に浸かる。どうやら、呆れで怒りのボルテージは下がったらしい。
「……いらない、アイテムだな」
かなりふかーいため息を吐いた。
どうやら自分に届いたアイテムもなかなか酷いアイテムだったらしい。
「……大事にもっとけば?私は要らないけど探索し続ければいい情報が得られるかもよ」
尚、怒りのゲージが下がりすぎて脱力した模様
【ふ〇なっしー】
「あれー?なになに?攻撃しないの?うわぁ…楽しくねぇ…まぁいいや!」
そう言うと湯船に浸かり直し、泳ぐ←
バシャバシャと
「やっぱり温泉って最高だぜぇ〜へへへwww」
クロール、バタフライを、交互にやりながら温泉を楽しむ。
【五番目の道化師】
「…上がろ」
そう言って風呂から上がろうとするピエロ、そしてその手には一メートルほどの長い鉄パイプ。どうやら水が筒内に入らないようにしてあるようだが…それを風呂に持ち込むのも中々にルール違反である。
流石に泳いでる餓鬼がいたら癒されるどころかストレスがたまる。
【ふ〇なっしー】
「あ、上がんの?さようなら〜ピエロくーんまた会おうぜ」
ヘラヘラ笑いながら手を振る。
【五番目の道化師】
中央エリアにある商店街にあるとある銭湯で道化師は湯に浸かっていた。こんな状況では軽はずみにメイクはとれないので、しぶしぶメイクをとらないまま…湯に浸かる。
「…はぁ、静に風呂が入れるのがこれが初か」
愚痴を溢し…バスタオルで締め付けた自分の体に湯をかけて…癒されていた
【ふ〇なっしー】
「おふろーおふろー」
と結構の頻度で入っているふ○なっしーお風呂が好きらしい←
ガラガラっと脱衣場のドアを開けピエロがいる温泉へ足を運ぶクソなし
「やぁ!こんにちわ!調子どう?」
【五番目の道化師】
「こんにちは」
誰もいない時間帯を選んだのに人に遭遇ばっかしてるなぁ!?と、内心で思いつつ温泉で癒される。
「調子は…まぁまぁねー。気分は最悪だけど」
【ふ〇なっしー】
「気分悪いのかー……それもそうだな!こんなゲームが始まってしまったからね!!!」
と、勢いよく湯船に飛び込む、飛び込んだ表紙にお湯が飛び散りピエロの顔にかかろうと…
「さぁ!何して遊ぶー?」
【五番目の道化師】
「遊ぶないッ!風呂は静かにはいるものなんだから」
子供に叱責するように言う道化師は顔にかかった水飛沫を拭う。どうやら今回は防水性の特殊な化粧品を使ってきたらしい。白塗りメイクはいっさい取れていない。
「…静かに癒させなさいよ、おねがいだから」
どうやら道化師は風呂は静かに入り、その静かな入浴タイムを楽しむタイプらしい。
【ふ〇なっしー】
「はいはーい……んじゃ何して遊ぶ?」
といつの間にか持ち込んでいたトランプを出す……こいついっつもトランプ持ち込んでんな←
「ポーカー?ブラック・ジャック?何がいい?」
【五番目の道化師】
「だから、遊ぶなって…」
だいたい風呂にトランプとかマナー違反過ぎるだろ。
道化師は風呂に入ってきた子供に背を向け
「興味ない」
【ふ〇なっしー】
「んー、やっぱりクソザコナメクジかぁ……僕みたいな雑魚が持ちかけるゲームを受けないなんて…僕以下だね!!!!!」
おお、露骨に警戒してらっしゃるwwww
そんな事はどぅでぃもいい、取り敢えずゲームがやりたいんだやりたい!!やりたい!!やりたい!!やりたい!!
「ゲームやりたい!!やりたい!!!!やりたい!!!!やりたい!!!!!!」
【五番目の道化師】
お前以下とかどうでもいいんだが。
しかし、あれだな。うるさい。プチッと来るくらいうるさい。
「静かに風呂、入らせろよ。まず、ゲームなんて興味ないしお前以下と言うのも別にどうでもいい。第一風呂は遊び場じゃないんだから遊びたいなら他所へいけ。迷惑だ。なぁ、お前、人の迷惑なんて考えたことある?あっ、もしかしてその見た目なら何でもしていいと思っちゃったパターン?ざんねーん、私は見た目子供でも優しくするつもりねぇわ。だって、よく考えてみ?名前わかんなくともクラスメイト確定だよ?クラスメイトが風呂にトランプ持ち込むとかないわー。マジないわー。マナーの一つもまもれないのかよ。ほんとに高校生?頭、大丈夫?」
道化師は一呼吸もせず言い切った。
【ふ〇なっしー】
「うわぁ……よくそんな長い事言えるねぇ……あとルールは破るもの!!そう!こんなご時世!はいはいとルールに従うような男になりたくはない!!!つまりそういう事だ」
そう、ルールは破る為にある。破ってまたルールが作られてまた破られるその繰り返し
「さぁ!ゲームをしよう!拒否権は無い!!!」
【五番目の道化師】
「へぇ…ルールは破るもの…ねぇ?」
なら、ルール違反が自分だけだとは思ってないよな。
笑顔だ、めっちゃ笑顔だ。
「もう一回、いうけど『静かにしろ』」
道化師はそっと風呂底とバスタオルの端に手を伸ばし
【ふ〇なっしー】
「いいぜ、だがこいつは黙らねぇけどな!!!」
トランプをいつの間にか持ち込んでたハンカチで被せると……
「さて、何が出るかなー?へへへwww出てきたのは〜にゅーなんぶでしたぁーなーんてねぇー」
とハンカチを上に上げると出てきたのは全裸の男の娘の写真
「あれれー?どういうことだー!クソザコナメクジのアイテムだ!さぁこれを君にあげよう」
タオルでどうするか……まぁなんかヌンチャクみたいにするのだろう←
さてさてぇどうする?
【五番目の道化師】
道化師は冷ややかな目を向け…伸ばした手を引っ込めて再び湯に浸かる。どうやら、呆れで怒りのボルテージは下がったらしい。
「……いらない、アイテムだな」
かなりふかーいため息を吐いた。
どうやら自分に届いたアイテムもなかなか酷いアイテムだったらしい。
「……大事にもっとけば?私は要らないけど探索し続ければいい情報が得られるかもよ」
尚、怒りのゲージが下がりすぎて脱力した模様
【ふ〇なっしー】
「あれー?なになに?攻撃しないの?うわぁ…楽しくねぇ…まぁいいや!」
そう言うと湯船に浸かり直し、泳ぐ←
バシャバシャと
「やっぱり温泉って最高だぜぇ〜へへへwww」
クロール、バタフライを、交互にやりながら温泉を楽しむ。
【五番目の道化師】
「…上がろ」
そう言って風呂から上がろうとするピエロ、そしてその手には一メートルほどの長い鉄パイプ。どうやら水が筒内に入らないようにしてあるようだが…それを風呂に持ち込むのも中々にルール違反である。
流石に泳いでる餓鬼がいたら癒されるどころかストレスがたまる。
【ふ〇なっしー】
「あ、上がんの?さようなら〜ピエロくーんまた会おうぜ」
ヘラヘラ笑いながら手を振る。
臨海 凪乃(6th)-唐揚げ食べたい(18th)
【臨海 凪乃】
電波塔に持ち帰った死体はゲームの始まりを知らせる合図だった。
10th,あなたは……残念だったわね。
覆水盆に返らず 失われた命は……もう戻りはしない。
こうして、赤を見ると 今が応にも思い出す。
嘗ての私が犯した 曼荼羅模様の過ちを
雪は絶え間なく降りつづける。
赤に染めた大地を隠蔽するがごとく白に塗りつぶしていく。
心に垂れた醤油のようにしみていく黒はその白よりも書き換える
「案外、私が殺人鬼というのは 間違いじゃないのかもしれない
なぜならば、人で無くした時点で その人は死んでいるのだから」
ゲーム開始で混線するタイムラインを再び見る。
人は 醜く 愚かで 卑劣だ。
それゆえに 雪よりも 美しく 儚い。
眼下に広がる雪国には 有象無象の陰謀がある。
クラスメイトを躊躇いなく葬れる人間がある意味一番人間に近いのかもしれない。
このゲームを愉悦する人間 絶望する人間 娯楽とする人間 正義を振りかざす人間
そんな人間が織りなす一種の群像劇なのかもしれない。
【唐揚げ食べたい】
「中々深いことを言うね」
(SCTに登ってきて早々、臨海の呟いた独り言に反応し。
静かに、静かに歩いて。展望台から景色を見れば、鼻先で密かに笑った。
ふと、臨海の方を見れば。
嫌でも目に付くだろう、その緋華に彩られたようなその死体が。
然し、それを気にすることもなく。だってそうだろう、この状況じゃ誰かの死体が突然現れたってなんら不思議じゃないのだから。)
「ソイツは、お前が殺したのか?」
(どこか冷めたようなその眼差しで、そう問いかけ。
相手に敵意を抱いているつもりもなく、そうなれば当然殺意すら抱いていない。
彼は死ぬ運命だったのだ、と。そう何処か楽観的に思った。
自身が目指すは、全員生存。
そう、“生き残っている人間の”全員生存。
それはつまり、“死んだら人間としてカウントされなくなる”わけであり。
最早どうでもよく、唯の過程とかしていて───
Azothが何人人を殺そうが、“生き残っている人”の全員生存は達成出来ると。
そんな、妥協点。
まあ、嘘かもね。───という定番のセリフは、勿論後に付いてくる。)
【臨海 凪乃】
「……いずれそうなっていたかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
とどのつまり、殺していたかもしれないし 殺してないかもしれない。
曖昧な言葉で返答をする。
所詮ここでの駆け引きなど、夢の浮橋……。
誰が……誰を殺そうと
誰が生きようと……。
何が陰謀で、何が正義で、そんなものはまるでない。
「誰が殺人鬼でもおかしくはないもの。そうは思わない?」
ここでは全員が等しく人を殺す可能性がある。
今はまだ殺していないだけで、いつか殺すかもしれないし
今はまだ死んでないだけで、いつか死ぬかもしれない。
結論、どうでもいいのだ。
ここで大切なのはきっとそこじゃない
もう一歩先 大局を見ること。
将棋やチェスと全く同じなのだ。
自分に有利な詭弁で詰将棋をすればいい
【唐揚げ食べたい】
「はは、曖昧だね。そういうの嫌いだ」
(と、笑いながら平然と"嫌いだ"と返し。
勿論、嫌いだからなんだと言うわけでもなく。…というより、元々好きな人間など居ないわけで。
まあ、"無関心"から"嫌い"変わっただけでも大きな進歩である。
…ああ、いや。…別に目の前の彼女のことを言ってるわけでもない。
一体誰に向かって言ってるんだろうね?)
「そう思うよ。俺がお前に殺されるかもしれないし、逆に俺がお前を殺すかもしれない。
そういう危険が蔓延ってんだ、此処には。
人を信用なんかしちゃいけなくて、でも疑心ばっかりじゃ何も出来ない。
そういう場所なんだろ?」
(分かりきっていることを、ペラペラと呟き。
その通り。いきなり誰かが殺しに来るかもしれないし、自分が誰かを殺しに行くかもしれない。
だから人は慌て、協力し、裏切りを重ねる。
嗚呼、面倒くさい。
でも、それが人間の良さでもある。
…────少し、思考があの天使に似たかな。)
「まあ、さ。
俺は"今のところは"誰も殺すつもりなんかないからさ、協力しないか?…ああ、無理ならいいぜ?
今から俺は探索するからさ、情報交換とか質問とか…何かあったら言ってくれよ。」
(協力と言うのも烏滸がましいもの。
これから何かあったときのために、"利用し利用される"ことを前提とした関係。
何度も言うようだが、交流の輪を広めるのは何もデメリットだけじゃない。
“不可能”が“可能”になる可能性があるわけで。…別に、必要なければ登録してから使わなければいい。
そんな意気込みで、臨海へフレンド申請を送り。
そして、思い出したかのように突如としてSCTの探索を始めた。
警戒はしているが、臨海に背中を向けている形である。)
【臨海 凪乃】
嫌い……ねぇ……。
無興味よりもある程度 どんな感情でも
向けられている方が幸せなんだよ。
目の前の人間はごった返した将棋の盤面よりも
白黒きっちりしたオセロゲームの盤面の方がお好みだったらしい。
まぁ、だからどうしたという話だけど。
「まぁ、そういう事。 誰が誰に殺されるかはわからない
Azothを狩りだそうとした民間人に首を駆られるかもしれないし
自分を正当化したCerestiaが正義を振りかざして殺すかもしれない
ただ…… 信用してはいけないとは思わないわ。 したければすればいい。
信用して裏切られても、それは裏切った人間が悪いわけではないもの。
その人を信じようとした人間が悪いのよ」
自己責任、という奴だろうか。
「それに、疑心なんて私は持ち合わせてないわ。
そんな心を持つ人間は必ずしも殺される側の人間なのだから
私は、心底どうでもいいのよ。 こんなゲームが誰の娯楽なのか、とか
ただ生き残れば官軍、死ねば賊軍」
言い終えるとフレンド登録の申請はされていた。
協力をしようと言ってるわけではない。 しかし、反対する理由もない
私を利用したければすればいい。 私はそれを否定しない。
背を向ける18thを襲うことなどしない。
ただ、降り積もる雪を眺めているだけ。
【唐揚げ食べたい】
「ふーん…よく言う"騙される方が悪いんだよ!"って奴?
まあ、その通りだね……別に信用しちゃいけないなんてルールも無ければ裏切っちゃいけないなんてルールもないからね。
言わば"ルールがない人狼ゲーム"みたいなもんさ。1日に何人殺してもいい人狼が居る、無法地帯同然の場所だよ。」
(そう返しながらも探索を続けるのは、まあ形式上は"全員生存"を目指しているから、だろうか。
まあ、特に何もなかったようで。
しばらくして探索を辞めたわけだが。
死にたきゃ死ねばいいし。
殺したきゃ殺せばいいし。
そんな場所。そういう舞台。
信じるとか信じないとか裏切るとか裏切らないとか、結局言葉だけのもので。
信じる、とか言ったって。…どうせ、"生きる為には殺すしかない"なんて状況になったらすぐに殺す癖に。
まあ、でも。
一度裏切られた自分には、既にどうでもいいこと。
情とか。愛とか。信用とか。そんな感情。
全部、紛い物じゃない?
今の話が本当かって、そんなの。
─────フェイクよ。演技(フェイク)。
嘘じゃないけど、虚偽(フェイク)。
だって、本当は。
少しだけ、愛に触れてみたい。)
「…AzothとかCelestiaとかどうでもいいけどよ。
元の世界でどれだけ善行を重ねても、結局誰もが此処じゃ"殺人鬼"なんだろ?
あーあー、なんか面倒だぜ。考えるのダルいナ。
みんな仲良しこよしで帰りたくねーのかな?」
(帰りたくないんだろうね、と自問自答。
だって、自分だって率先して帰りたいとは思わない。
帰ったって、教室の隅に居るような人生。ただ何かが変わるわけじゃない。
いっそ、それなら。
吹っ切れて、罪汚しの化け物になったほうが。何か、変わるような気もするけれど。
でも、殺すのは嫌かな。───でも、それしか道が無いならやるしかない。
それは、まあ…みんな同じなんだけどね。)
【臨海 凪乃】
無法地帯
言い得て妙ってところか。
現代法が通用しないこんな地獄じゃそんな表現がよく似合う。
オセロよりも人狼か……。
なるほど、グレーもいるゲームの盤面の方がよりお好みなようで。
「人狼……。 詭弁を通せば真実になる。
この世界では真実なんて何の役にも立ちはしない。
自分の都合のいい真実を正しいとすればそれでいい。
私たちは神ではない、真実を知ることなど不可能なのだから
まぁ、浮世もここも大して変わらないわよ。
限りなく浮世に近い地獄」
現実だってそうだ。
真実は何度も闇に葬られてきた。
本能寺の変、徳川埋蔵金、真実などわかりっこない
「ただ、これだけはいえる。 我思う故に我あり
結局、信じれるのも、身をもって証明できるのも
自分自身だけなのよ」
真実なんて 作り上げるもの
偽証で有れ詭弁で有れ、正史であればいいの。
故に、信じるものを作ればいい。
まぁ……。これも詭弁だろうけど。
「善行……。 そんなものは関係ない。
全ては金か愛か、権力か…… 人によっては違うけれど
きっとそんなもの。何が善なのかなんて分かりはしない
アナタや私の命よりも大切なものがここの人間にはあるのよ」
この死体が、何よりの証明でしょう?
【唐揚げ食べたい】
「真実も、虚構も。此処じゃ全部同じだからね。言葉なんかに何の効力もないが、言葉を上手く並べれば人の信用を得れる。
俺の言葉は全て嘘かもしれないし本当かもしれないけど、それすらも人間は分かりやしない。
それは俺も同じだけど…、人間ってのは脆いからね。
いつ壊れても、いつ崩れても、何もおかしくない。
まだソイツしか人は殺されていないし、ゲームが始まって何が起きるかも分からないけど。
────"何が起きるか分からない"は"何が起きても可笑しくない"からね。」
(と、言葉を連ね。
全て適当に並べただけの虚構。然しそれは彼の真実の言葉かもしれない。
無様、愚か、憐れ。
人の言葉を信用しちゃいけないというのは正にこのことか。世の中にはこんな人間が蔓延っていて、そしてこのクラスメイト内でもそれは同じで。
虚構だけの人間が嫌いだと言うのに、自身が今そう成り果てているのもまた一興。
だから、自分のことが嫌いなのだ。そうしていかないと生きていけない自分が。)
「…生か死か、…これは"大切な物の為に命を賭けることが出来るか?"と言った大きな質問みたいだ…。
そして、"大切な物の為に人を殺せるか"とも書かれているね。
そして、"YES"と答えた人間がソイツを殺した。ただそれだけ。
でも一体、その"大切な物"が死んだり壊れたりする危機でも無いのに。
───どうして、人を殺そうとするんだろうね?」
(一番の問題点はそれだ。大切な物が"自分の命"だとか言うならばこんな質問は無意味だが、そうじゃない場合。
人を殺す必要なんか、全く無いわけだ。だって"全員生存"のルートがあるわけだから。
なのに、ソイツを殺した人間は"殺人"を選んだ。これって妙なことだと思わないか?
…──────まあ、そんなのも結局。
結論としては、"死んだり壊れたりする危機"にあるかもしれないから。…なんて馬鹿げた事しか出ないのだろうが。
あいや、別に。人質とか、物質とか、そんなのを自分が知ってるわけじゃ無いけど。
それが一番、導くのに手間がかからず。…そして、分かりやすい動機にもなり得る。
ただ、そう思っただけ。)
【臨海 凪乃】
「幾らKGBが戒厳令を布こうとも、一度切った堰の水の流れは変わらないわ
殺人をしてはいけない、金科玉条のルールでも容易く破られているのだから。
……あなた、ずいぶん人間らしい顔になってきたじゃない。 素敵よ」
讃頌に皮肉を添えて。
たとえこの世界がどんなに虚構だとしても、それが私たちの現実だ。
力ない虚ろな言葉で羅列して作り上げられた虚構だとしても、だ。
もちろん、そんな中身のないものはすぐに瓦解するだろう。
関係、信用、何もかも、 脆い。
それは、18thの言う通りである。 まったくもって同感だ。
「そう、人間は脆い。 私も……もちろんアナタも」
つまり、我々は……その程度なのだ。
悲しいね……。
「どうして人を殺すか……ねぇ。
どうでもいいのよ、所詮他人の命なんて。
自分だけが生き残れば、それでいいのでしょう。
だって、私たちの幸せは幾何の屍の上に成り立っているんだもの」
全員生存 それに、価値を置かなかっただけ。
殺人がいけないこと。 そんなルールよりも矜持を持った何かが強かった。
「単純に 人を殺す事 それに意味があるのかもね」
【唐揚げ食べたい】
「はは、ありがとよ。お前も十分素敵だぜ、"天使"のようだよ。」
(皮肉には皮肉で返さなければ、なんて。…余り得意でもないものを持ち出してみる。
"天使"なんて、思ってもないことを。
───あのクソ天使は、そんな表情じゃなかったのにな。
虚構も真実も現実であり、虚偽だって真実に成り得る。
酷く襤褸襤褸な、例えるならば崩れかけの廃墟のような。人間も現実もそんな物。
だから簡単に人を信じ、簡単に人に騙され、簡単に人に利用される。
そのまた逆も、至極簡単に起こる。
"そんなの分からない"って?
はは、何をおっしゃるか。…─────紛れも無い俺が、そう成り果てたんだ。
自分自身で結論付けるのは、もう遅いくらいだろう。その程度のものだと、人は認めたくはないんだから。)
「嗚呼、確かに。その可能性は考えてなかったな。
"殺人"を犯すことに快楽を感じる人間。"人を殺す事"が目的な人間。
どっちにしろクソだが、俺達がそうなる可能性も十分にあり得る未来だ。
…いや、屍の上に成り立っている幸せなら。────既に俺達は人殺しかもな。」
(そんな、冗談を呟きながら。ケラリと笑ってみせる。
一応の目的である探索も終えたし、そろそろ帰ろうかと思った彼はゆっくりと歩みを始め。
彼女との会話は有益でも無益でもなかった。
然し、このゲームの"傍観者"としての立ち位置からの愉しさは感じられた。
さて、次はどの立場から愉しもうかな…なんて。楽しむ気はあれど愉しむ気など全く無い癖に、随分と巫山戯たことを思うのね。)
「んじゃ、俺はそろそろ帰りますかね。
此処も安全じゃないから、気を付けろよ。…なんて、安全な場所なんか無いけどナ!
バイバーイ、また会えたら会おうぜ。」
【臨海 凪乃】
「…………」
面白いことを言うじゃないか。
敢えてなにも言わないでおこう。
この辺獄では、天使の意味合いもきっと違うだろうから
だからって、何かを意味するわけでもないのだけど
「さぁ……どうかしら。
だけど、生きる行為は何かを殺す事よ。
命を繋ぐためには、何かの死が必要なのよ。
自然界ではなにも珍しい事じゃない。
生きるために殺す事は 当たり前のことなのよ」
だって、幾何の死の上に私たちの生があるんだもの。
何も殺さないで今日まで生きながらえた生物はいない。
広い定義で言えば、私は殺している。
「では……お元気で
死ぬなとは言わないわ」
そういって彼を見送る。
…………。
……………………。
本当の敵は、敵のような顔をしてないものって……。
言うのに。
【臨海 凪乃】
電波塔に持ち帰った死体はゲームの始まりを知らせる合図だった。
10th,あなたは……残念だったわね。
覆水盆に返らず 失われた命は……もう戻りはしない。
こうして、赤を見ると 今が応にも思い出す。
嘗ての私が犯した 曼荼羅模様の過ちを
雪は絶え間なく降りつづける。
赤に染めた大地を隠蔽するがごとく白に塗りつぶしていく。
心に垂れた醤油のようにしみていく黒はその白よりも書き換える
「案外、私が殺人鬼というのは 間違いじゃないのかもしれない
なぜならば、人で無くした時点で その人は死んでいるのだから」
ゲーム開始で混線するタイムラインを再び見る。
人は 醜く 愚かで 卑劣だ。
それゆえに 雪よりも 美しく 儚い。
眼下に広がる雪国には 有象無象の陰謀がある。
クラスメイトを躊躇いなく葬れる人間がある意味一番人間に近いのかもしれない。
このゲームを愉悦する人間 絶望する人間 娯楽とする人間 正義を振りかざす人間
そんな人間が織りなす一種の群像劇なのかもしれない。
【唐揚げ食べたい】
「中々深いことを言うね」
(SCTに登ってきて早々、臨海の呟いた独り言に反応し。
静かに、静かに歩いて。展望台から景色を見れば、鼻先で密かに笑った。
ふと、臨海の方を見れば。
嫌でも目に付くだろう、その緋華に彩られたようなその死体が。
然し、それを気にすることもなく。だってそうだろう、この状況じゃ誰かの死体が突然現れたってなんら不思議じゃないのだから。)
「ソイツは、お前が殺したのか?」
(どこか冷めたようなその眼差しで、そう問いかけ。
相手に敵意を抱いているつもりもなく、そうなれば当然殺意すら抱いていない。
彼は死ぬ運命だったのだ、と。そう何処か楽観的に思った。
自身が目指すは、全員生存。
そう、“生き残っている人間の”全員生存。
それはつまり、“死んだら人間としてカウントされなくなる”わけであり。
最早どうでもよく、唯の過程とかしていて───
Azothが何人人を殺そうが、“生き残っている人”の全員生存は達成出来ると。
そんな、妥協点。
まあ、嘘かもね。───という定番のセリフは、勿論後に付いてくる。)
【臨海 凪乃】
「……いずれそうなっていたかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
とどのつまり、殺していたかもしれないし 殺してないかもしれない。
曖昧な言葉で返答をする。
所詮ここでの駆け引きなど、夢の浮橋……。
誰が……誰を殺そうと
誰が生きようと……。
何が陰謀で、何が正義で、そんなものはまるでない。
「誰が殺人鬼でもおかしくはないもの。そうは思わない?」
ここでは全員が等しく人を殺す可能性がある。
今はまだ殺していないだけで、いつか殺すかもしれないし
今はまだ死んでないだけで、いつか死ぬかもしれない。
結論、どうでもいいのだ。
ここで大切なのはきっとそこじゃない
もう一歩先 大局を見ること。
将棋やチェスと全く同じなのだ。
自分に有利な詭弁で詰将棋をすればいい
【唐揚げ食べたい】
「はは、曖昧だね。そういうの嫌いだ」
(と、笑いながら平然と"嫌いだ"と返し。
勿論、嫌いだからなんだと言うわけでもなく。…というより、元々好きな人間など居ないわけで。
まあ、"無関心"から"嫌い"変わっただけでも大きな進歩である。
…ああ、いや。…別に目の前の彼女のことを言ってるわけでもない。
一体誰に向かって言ってるんだろうね?)
「そう思うよ。俺がお前に殺されるかもしれないし、逆に俺がお前を殺すかもしれない。
そういう危険が蔓延ってんだ、此処には。
人を信用なんかしちゃいけなくて、でも疑心ばっかりじゃ何も出来ない。
そういう場所なんだろ?」
(分かりきっていることを、ペラペラと呟き。
その通り。いきなり誰かが殺しに来るかもしれないし、自分が誰かを殺しに行くかもしれない。
だから人は慌て、協力し、裏切りを重ねる。
嗚呼、面倒くさい。
でも、それが人間の良さでもある。
…────少し、思考があの天使に似たかな。)
「まあ、さ。
俺は"今のところは"誰も殺すつもりなんかないからさ、協力しないか?…ああ、無理ならいいぜ?
今から俺は探索するからさ、情報交換とか質問とか…何かあったら言ってくれよ。」
(協力と言うのも烏滸がましいもの。
これから何かあったときのために、"利用し利用される"ことを前提とした関係。
何度も言うようだが、交流の輪を広めるのは何もデメリットだけじゃない。
“不可能”が“可能”になる可能性があるわけで。…別に、必要なければ登録してから使わなければいい。
そんな意気込みで、臨海へフレンド申請を送り。
そして、思い出したかのように突如としてSCTの探索を始めた。
警戒はしているが、臨海に背中を向けている形である。)
【臨海 凪乃】
嫌い……ねぇ……。
無興味よりもある程度 どんな感情でも
向けられている方が幸せなんだよ。
目の前の人間はごった返した将棋の盤面よりも
白黒きっちりしたオセロゲームの盤面の方がお好みだったらしい。
まぁ、だからどうしたという話だけど。
「まぁ、そういう事。 誰が誰に殺されるかはわからない
Azothを狩りだそうとした民間人に首を駆られるかもしれないし
自分を正当化したCerestiaが正義を振りかざして殺すかもしれない
ただ…… 信用してはいけないとは思わないわ。 したければすればいい。
信用して裏切られても、それは裏切った人間が悪いわけではないもの。
その人を信じようとした人間が悪いのよ」
自己責任、という奴だろうか。
「それに、疑心なんて私は持ち合わせてないわ。
そんな心を持つ人間は必ずしも殺される側の人間なのだから
私は、心底どうでもいいのよ。 こんなゲームが誰の娯楽なのか、とか
ただ生き残れば官軍、死ねば賊軍」
言い終えるとフレンド登録の申請はされていた。
協力をしようと言ってるわけではない。 しかし、反対する理由もない
私を利用したければすればいい。 私はそれを否定しない。
背を向ける18thを襲うことなどしない。
ただ、降り積もる雪を眺めているだけ。
【唐揚げ食べたい】
「ふーん…よく言う"騙される方が悪いんだよ!"って奴?
まあ、その通りだね……別に信用しちゃいけないなんてルールも無ければ裏切っちゃいけないなんてルールもないからね。
言わば"ルールがない人狼ゲーム"みたいなもんさ。1日に何人殺してもいい人狼が居る、無法地帯同然の場所だよ。」
(そう返しながらも探索を続けるのは、まあ形式上は"全員生存"を目指しているから、だろうか。
まあ、特に何もなかったようで。
しばらくして探索を辞めたわけだが。
死にたきゃ死ねばいいし。
殺したきゃ殺せばいいし。
そんな場所。そういう舞台。
信じるとか信じないとか裏切るとか裏切らないとか、結局言葉だけのもので。
信じる、とか言ったって。…どうせ、"生きる為には殺すしかない"なんて状況になったらすぐに殺す癖に。
まあ、でも。
一度裏切られた自分には、既にどうでもいいこと。
情とか。愛とか。信用とか。そんな感情。
全部、紛い物じゃない?
今の話が本当かって、そんなの。
─────フェイクよ。演技(フェイク)。
嘘じゃないけど、虚偽(フェイク)。
だって、本当は。
少しだけ、愛に触れてみたい。)
「…AzothとかCelestiaとかどうでもいいけどよ。
元の世界でどれだけ善行を重ねても、結局誰もが此処じゃ"殺人鬼"なんだろ?
あーあー、なんか面倒だぜ。考えるのダルいナ。
みんな仲良しこよしで帰りたくねーのかな?」
(帰りたくないんだろうね、と自問自答。
だって、自分だって率先して帰りたいとは思わない。
帰ったって、教室の隅に居るような人生。ただ何かが変わるわけじゃない。
いっそ、それなら。
吹っ切れて、罪汚しの化け物になったほうが。何か、変わるような気もするけれど。
でも、殺すのは嫌かな。───でも、それしか道が無いならやるしかない。
それは、まあ…みんな同じなんだけどね。)
【臨海 凪乃】
無法地帯
言い得て妙ってところか。
現代法が通用しないこんな地獄じゃそんな表現がよく似合う。
オセロよりも人狼か……。
なるほど、グレーもいるゲームの盤面の方がよりお好みなようで。
「人狼……。 詭弁を通せば真実になる。
この世界では真実なんて何の役にも立ちはしない。
自分の都合のいい真実を正しいとすればそれでいい。
私たちは神ではない、真実を知ることなど不可能なのだから
まぁ、浮世もここも大して変わらないわよ。
限りなく浮世に近い地獄」
現実だってそうだ。
真実は何度も闇に葬られてきた。
本能寺の変、徳川埋蔵金、真実などわかりっこない
「ただ、これだけはいえる。 我思う故に我あり
結局、信じれるのも、身をもって証明できるのも
自分自身だけなのよ」
真実なんて 作り上げるもの
偽証で有れ詭弁で有れ、正史であればいいの。
故に、信じるものを作ればいい。
まぁ……。これも詭弁だろうけど。
「善行……。 そんなものは関係ない。
全ては金か愛か、権力か…… 人によっては違うけれど
きっとそんなもの。何が善なのかなんて分かりはしない
アナタや私の命よりも大切なものがここの人間にはあるのよ」
この死体が、何よりの証明でしょう?
【唐揚げ食べたい】
「真実も、虚構も。此処じゃ全部同じだからね。言葉なんかに何の効力もないが、言葉を上手く並べれば人の信用を得れる。
俺の言葉は全て嘘かもしれないし本当かもしれないけど、それすらも人間は分かりやしない。
それは俺も同じだけど…、人間ってのは脆いからね。
いつ壊れても、いつ崩れても、何もおかしくない。
まだソイツしか人は殺されていないし、ゲームが始まって何が起きるかも分からないけど。
────"何が起きるか分からない"は"何が起きても可笑しくない"からね。」
(と、言葉を連ね。
全て適当に並べただけの虚構。然しそれは彼の真実の言葉かもしれない。
無様、愚か、憐れ。
人の言葉を信用しちゃいけないというのは正にこのことか。世の中にはこんな人間が蔓延っていて、そしてこのクラスメイト内でもそれは同じで。
虚構だけの人間が嫌いだと言うのに、自身が今そう成り果てているのもまた一興。
だから、自分のことが嫌いなのだ。そうしていかないと生きていけない自分が。)
「…生か死か、…これは"大切な物の為に命を賭けることが出来るか?"と言った大きな質問みたいだ…。
そして、"大切な物の為に人を殺せるか"とも書かれているね。
そして、"YES"と答えた人間がソイツを殺した。ただそれだけ。
でも一体、その"大切な物"が死んだり壊れたりする危機でも無いのに。
───どうして、人を殺そうとするんだろうね?」
(一番の問題点はそれだ。大切な物が"自分の命"だとか言うならばこんな質問は無意味だが、そうじゃない場合。
人を殺す必要なんか、全く無いわけだ。だって"全員生存"のルートがあるわけだから。
なのに、ソイツを殺した人間は"殺人"を選んだ。これって妙なことだと思わないか?
…──────まあ、そんなのも結局。
結論としては、"死んだり壊れたりする危機"にあるかもしれないから。…なんて馬鹿げた事しか出ないのだろうが。
あいや、別に。人質とか、物質とか、そんなのを自分が知ってるわけじゃ無いけど。
それが一番、導くのに手間がかからず。…そして、分かりやすい動機にもなり得る。
ただ、そう思っただけ。)
【臨海 凪乃】
「幾らKGBが戒厳令を布こうとも、一度切った堰の水の流れは変わらないわ
殺人をしてはいけない、金科玉条のルールでも容易く破られているのだから。
……あなた、ずいぶん人間らしい顔になってきたじゃない。 素敵よ」
讃頌に皮肉を添えて。
たとえこの世界がどんなに虚構だとしても、それが私たちの現実だ。
力ない虚ろな言葉で羅列して作り上げられた虚構だとしても、だ。
もちろん、そんな中身のないものはすぐに瓦解するだろう。
関係、信用、何もかも、 脆い。
それは、18thの言う通りである。 まったくもって同感だ。
「そう、人間は脆い。 私も……もちろんアナタも」
つまり、我々は……その程度なのだ。
悲しいね……。
「どうして人を殺すか……ねぇ。
どうでもいいのよ、所詮他人の命なんて。
自分だけが生き残れば、それでいいのでしょう。
だって、私たちの幸せは幾何の屍の上に成り立っているんだもの」
全員生存 それに、価値を置かなかっただけ。
殺人がいけないこと。 そんなルールよりも矜持を持った何かが強かった。
「単純に 人を殺す事 それに意味があるのかもね」
【唐揚げ食べたい】
「はは、ありがとよ。お前も十分素敵だぜ、"天使"のようだよ。」
(皮肉には皮肉で返さなければ、なんて。…余り得意でもないものを持ち出してみる。
"天使"なんて、思ってもないことを。
───あのクソ天使は、そんな表情じゃなかったのにな。
虚構も真実も現実であり、虚偽だって真実に成り得る。
酷く襤褸襤褸な、例えるならば崩れかけの廃墟のような。人間も現実もそんな物。
だから簡単に人を信じ、簡単に人に騙され、簡単に人に利用される。
そのまた逆も、至極簡単に起こる。
"そんなの分からない"って?
はは、何をおっしゃるか。…─────紛れも無い俺が、そう成り果てたんだ。
自分自身で結論付けるのは、もう遅いくらいだろう。その程度のものだと、人は認めたくはないんだから。)
「嗚呼、確かに。その可能性は考えてなかったな。
"殺人"を犯すことに快楽を感じる人間。"人を殺す事"が目的な人間。
どっちにしろクソだが、俺達がそうなる可能性も十分にあり得る未来だ。
…いや、屍の上に成り立っている幸せなら。────既に俺達は人殺しかもな。」
(そんな、冗談を呟きながら。ケラリと笑ってみせる。
一応の目的である探索も終えたし、そろそろ帰ろうかと思った彼はゆっくりと歩みを始め。
彼女との会話は有益でも無益でもなかった。
然し、このゲームの"傍観者"としての立ち位置からの愉しさは感じられた。
さて、次はどの立場から愉しもうかな…なんて。楽しむ気はあれど愉しむ気など全く無い癖に、随分と巫山戯たことを思うのね。)
「んじゃ、俺はそろそろ帰りますかね。
此処も安全じゃないから、気を付けろよ。…なんて、安全な場所なんか無いけどナ!
バイバーイ、また会えたら会おうぜ。」
【臨海 凪乃】
「…………」
面白いことを言うじゃないか。
敢えてなにも言わないでおこう。
この辺獄では、天使の意味合いもきっと違うだろうから
だからって、何かを意味するわけでもないのだけど
「さぁ……どうかしら。
だけど、生きる行為は何かを殺す事よ。
命を繋ぐためには、何かの死が必要なのよ。
自然界ではなにも珍しい事じゃない。
生きるために殺す事は 当たり前のことなのよ」
だって、幾何の死の上に私たちの生があるんだもの。
何も殺さないで今日まで生きながらえた生物はいない。
広い定義で言えば、私は殺している。
「では……お元気で
死ぬなとは言わないわ」
そういって彼を見送る。
…………。
……………………。
本当の敵は、敵のような顔をしてないものって……。
言うのに。
みかんちゃん(2nd)-トロンパ(12th)
【トロンパ】
協会
「……さてはて、果たして来るのでしょうか?来ないのでしょうか?」
『至急話したい事アリ 協会にてマツ』
罠と取られる可能性の高いメッセージ
それをわざわざ送り、待っていた
傍らにはナイフ3本、マッチ2箱
頭にはヘルメットを被り、口元はスカーフで覆っていた
「…まあ?来なかったのなら来なかった、で済む話ですとも。ええ。」
彼は待つ。…まるで、来ない方がいいとでもいうような事を呟きながら
【みかんちゃん】
聞こえなかったはずのソレは聞こえていた。
いや、正確には聞こえないふりをしていただけで本当はずっと聞こえていたのかもしれない。
動悸が煩くて五月蝿くて吐きそうだ。
吐いても戻るのは胃液のみ。過去も後悔も何も何も戻ってはこないというのに。
ホテルの自室に籠って自問自答押し問答の繰り返し。
そのとき、静寂を割るように響いた着信音。
光るメッセージ。
「──…」
それを見て、また、蓋をした。
よかった。
行き道の記憶は伽藍堂。
気づけば呼び出されたその協会へと着いていた。
重たい扉を開いて、中に待っていたその人物に柔らかに微笑む。
「お久しぶりね?身体流して欲しいの?」
なんて冗談混じえ首を傾げて。
【トロンパ】
「ようこそ、おいでくださいました2nd。ワタクシ、トロンパ=ヴァン・ルードツィッヒと申します。」
そう言って
「シッ」
正面から全力疾走、素手のまま走り寄り
そのまま右ストレート
【みかんちゃん】
「へぇ…──」
名前を聞いて、嗚呼そんな長い名前だったのねなんて口にしようとして止めた。
正確にいうならばそんなこと口にする暇もなく。
疾走する彼にびっくりして、慌てて横に避けようとして足が絡まり転んだ。尻もちついた。
「ななななな、なにしてんのよ!?」
不意打ちで声をかけられたことは何度もあったけれどこれはまた新しい。
心臓飛び出るどころか冷や汗たらたらである。
【トロンパ】
「……」
問いかけには何も返さず、懐から「ZIPO」と書かれた缶を取り出し、中身をぶちまける
そして半歩程の距離を跳んで下がると、その手には
左手にチャッカマン
右手にはナイフ
(…さあ、どうする?)
【みかんちゃん】
「きゃっ──」
かけられたのは何かはよくわからないけれど思わずたじろいだ。
それから嫌な予感に後退り。
とはいえ足が震えて立ち上がることは出来ないわけで、尻もちをついたままになるのだけれど
「ちょっと…それで何するつもりよ?」
なんて眉を顰めて警戒するような声色で問う。
フリをした。
抵抗しろ、殺せ、奪え。
なんてのとはまた逆の声が聞こえるから。
聞こえないふり見えないふり。
この状況も蓋をして。
蓋をすれば人は狂わず怯えてそれ以上の先はなく。
【トロンパ】
「………………!」
チャッカマンを点火し、そして火を相手に-
(…………………できる、かよぉ)
できない
(……そんな事、やれる訳がねぇだろうが…!)
どうしてもそれだけは
できなかった
「……ほんと、ダッセェな。」
そう言って協会の外へ飛び出して行き
とある小瓶を取り出して
火を
爆音
【みかんちゃん】
──…。
この次に彼は死ぬんだろうなと客席で傍観する一人の客のように誰かが思っていた。
だからこの反転は予想外というやつで。
止める暇もなく走り出したトロンパと名乗った男は協会の外に飛び出し、その刹那聞こえる爆音。
「は?え──ど、どういう…」
外の様子が気になって立ち上がった。
まではよかったが、その足が震えてよろめいて。
第一今外に出れば火がうつるかもしれないと。
濃霧のように纏う声をかき消した思考がそう問うた。
爆音に声は消えていた。
危なかったのかもしれないのに。
今だって危ないかもしれないのに。
私は首を傾げて、蓋をしてしまった感情を空けることもできなかい。
その蓋をしてしまったものが感情かもそれすらわからないわけで。
さて、どうしたものか。
協会を見渡して、裏庭に続く扉を見つけてそちらから外に出た。
表は暗澹とした闇に呑まれんと朱色の瞬きがチラついていた。
彼は大丈夫かしらなんて。
この場に及んでも人の心配をするのが私で。
いや、これは自分か。
遠目に表へと向かえばそこに彼はいないものかと見渡していた。
【トロンパ】
協会
「……さてはて、果たして来るのでしょうか?来ないのでしょうか?」
『至急話したい事アリ 協会にてマツ』
罠と取られる可能性の高いメッセージ
それをわざわざ送り、待っていた
傍らにはナイフ3本、マッチ2箱
頭にはヘルメットを被り、口元はスカーフで覆っていた
「…まあ?来なかったのなら来なかった、で済む話ですとも。ええ。」
彼は待つ。…まるで、来ない方がいいとでもいうような事を呟きながら
【みかんちゃん】
聞こえなかったはずのソレは聞こえていた。
いや、正確には聞こえないふりをしていただけで本当はずっと聞こえていたのかもしれない。
動悸が煩くて五月蝿くて吐きそうだ。
吐いても戻るのは胃液のみ。過去も後悔も何も何も戻ってはこないというのに。
ホテルの自室に籠って自問自答押し問答の繰り返し。
そのとき、静寂を割るように響いた着信音。
光るメッセージ。
「──…」
それを見て、また、蓋をした。
よかった。
行き道の記憶は伽藍堂。
気づけば呼び出されたその協会へと着いていた。
重たい扉を開いて、中に待っていたその人物に柔らかに微笑む。
「お久しぶりね?身体流して欲しいの?」
なんて冗談混じえ首を傾げて。
【トロンパ】
「ようこそ、おいでくださいました2nd。ワタクシ、トロンパ=ヴァン・ルードツィッヒと申します。」
そう言って
「シッ」
正面から全力疾走、素手のまま走り寄り
そのまま右ストレート
【みかんちゃん】
「へぇ…──」
名前を聞いて、嗚呼そんな長い名前だったのねなんて口にしようとして止めた。
正確にいうならばそんなこと口にする暇もなく。
疾走する彼にびっくりして、慌てて横に避けようとして足が絡まり転んだ。尻もちついた。
「ななななな、なにしてんのよ!?」
不意打ちで声をかけられたことは何度もあったけれどこれはまた新しい。
心臓飛び出るどころか冷や汗たらたらである。
【トロンパ】
「……」
問いかけには何も返さず、懐から「ZIPO」と書かれた缶を取り出し、中身をぶちまける
そして半歩程の距離を跳んで下がると、その手には
左手にチャッカマン
右手にはナイフ
(…さあ、どうする?)
【みかんちゃん】
「きゃっ──」
かけられたのは何かはよくわからないけれど思わずたじろいだ。
それから嫌な予感に後退り。
とはいえ足が震えて立ち上がることは出来ないわけで、尻もちをついたままになるのだけれど
「ちょっと…それで何するつもりよ?」
なんて眉を顰めて警戒するような声色で問う。
フリをした。
抵抗しろ、殺せ、奪え。
なんてのとはまた逆の声が聞こえるから。
聞こえないふり見えないふり。
この状況も蓋をして。
蓋をすれば人は狂わず怯えてそれ以上の先はなく。
【トロンパ】
「………………!」
チャッカマンを点火し、そして火を相手に-
(…………………できる、かよぉ)
できない
(……そんな事、やれる訳がねぇだろうが…!)
どうしてもそれだけは
できなかった
「……ほんと、ダッセェな。」
そう言って協会の外へ飛び出して行き
とある小瓶を取り出して
火を
爆音
【みかんちゃん】
──…。
この次に彼は死ぬんだろうなと客席で傍観する一人の客のように誰かが思っていた。
だからこの反転は予想外というやつで。
止める暇もなく走り出したトロンパと名乗った男は協会の外に飛び出し、その刹那聞こえる爆音。
「は?え──ど、どういう…」
外の様子が気になって立ち上がった。
まではよかったが、その足が震えてよろめいて。
第一今外に出れば火がうつるかもしれないと。
濃霧のように纏う声をかき消した思考がそう問うた。
爆音に声は消えていた。
危なかったのかもしれないのに。
今だって危ないかもしれないのに。
私は首を傾げて、蓋をしてしまった感情を空けることもできなかい。
その蓋をしてしまったものが感情かもそれすらわからないわけで。
さて、どうしたものか。
協会を見渡して、裏庭に続く扉を見つけてそちらから外に出た。
表は暗澹とした闇に呑まれんと朱色の瞬きがチラついていた。
彼は大丈夫かしらなんて。
この場に及んでも人の心配をするのが私で。
いや、これは自分か。
遠目に表へと向かえばそこに彼はいないものかと見渡していた。
エム(17th)-痴漢者トーマス(24th)
【エム】
「……………………んー」
みかんちゃんと別れたあと、エムは荷物を軽くまとめたリュックを床に起きながら、ホテルのロビーでコロパッドをじっと見ていました。
開いているのは共有チャットとルール説明のところで。
「…………んー?」
なんだかむずかしいことがいっぱいかいてあってわかりません。んー? ってうめきながらずっとがめんとにらめっこをしています。
【痴漢者トーマス】
いやー、外行っても別に良いことがある訳じゃないんだねー。
(斧を担いでホテルに帰ってくる。まぁ、別に何もなかった。それだけである。)
おお!エムちゃん!愛してるね!愛の使者、ちかんお姉さんだね!ピース!愛してるね!護るのね!!
……ところで、何か困ってるのね?
(エムちゃんへの想いをある程度伝えてから、まともな質問を。)
【エム】
「あ、ちかんお姉さん、こんにちわ!」
重すぎる想いを並べ立てられてもニッコリと笑顔で挨拶して、全てを受け流します。
いや、好きでいてくれるのは嬉しいから、無下にもしませんけど。
「……えっとね、みんな難しい事考えるんだなって」
ここに来てから、久しぶりに見たクラスメイトの名前の並べられている共有チャット。
だれそれの本名はこれだ、いやこれじゃない。
なんて、不毛な言い争いが並んでいて。
『エム』には何を話してるのかさっぱりわかりません。
だから、お姉さんが来てくれて、少し安心しました。
【痴漢者トーマス】
なになに…ああ、それねー。
難しい…うーん、これは正直さ、難しく考える必要はないものだよね?
ぶっちゃけ、この中には根拠も理由もないっていうかー、信頼できる物がないしー、考えない方が良いくらいじゃない?
(本当にどうでもいい。物を信じるには理由が必要だ。この書きなぐられた云々にはそれらがないし。まだ、雑談してる方が有益なんじゃないかな。)
あ、それともさ。…エムちゃんは、皆の名前当てたかったりするね?それだったら、いつかは必要な時が来るかもしれないけどねー。
【エム】
「…………うん、そうだよね」
そう言って、コロパッドの電源を落とします。
長時間画面とにらめっこしていたから、目が痛くなってきてしまいました。
うー、とまた呻きながら、背もたれに体を預けました。
「……名前はね、別にどうでもいい」
この姿で名前を当てるなんて、それ系統のゾディアックがなければ無謀な訳ですし。
エムが今できるのは、状況の整理くらいです。
…………疲れたな
【痴漢者トーマス】
ん、そうなのね。それで、良いんじゃないかな?
あ、ちょっと大事なこと聞くねー?エムちゃんはね、どうしたい?たとえばねー、生き残りたいとか、皆揃って帰りたい、とか?
(エムちゃんの頭に手を置くと、彼女の望みを聞こうとする。)
【エム】
「みんな揃って帰りたい」
即答。
エムはこれを目標にしています。
だれそれがだれそれを殺した、というのなら、その人のことは諦めて。
最小限の犠牲で、全員生きて帰るのが、目標です。
「お姉さんは? 違うの?」
【痴漢者トーマス】
そっかー。良いことだねー。
あ、私?ちかんお姉さんはねー。ちょっとだけ、違うかな?
私の一番の目標は…エムちゃんを守ること、かな!あと、他にも守りたい子はいくらでも居るしねー、他にも、その子達の望みをできる限りこの身体で叶えてあげたいな、って思うわけでー。
もしかしたら、それが原因で人殺しもしちゃう可能性はあるかもしれないけれど…まぁ、皆良い子だし。そんなことは多分ないとは思うんだけどー。
とりあえず、エムちゃんの望みは皆揃って、生き残りたいんだねー、わかったねー。ちかんお姉さんも手を貸すね?
(そういう事らしい。自分の守りたい子を守って、その子達の望みを頑張って叶えよう!みたいな。分かりやすい目標である。
そして、その子達以外の誰が死んでもどうでも良いとも思ってたりするらしい。)
【エム】
「……そっか」
エムは、みんなで帰りたい。
お姉さんは、エムを守りたい。
なら、やることはひとつだけ。
「わかった、じゃあ、エムはみんなで帰る為にも、お姉さんのこと頑張って守るね?」
エムは、みんなのことを助けてあげよう。
だから、お姉さんにはエムのことを守って貰おう。
誰かのことを気にかけていたら、自分のことが疎かになっちゃうからね。
【痴漢者トーマス】
ううん、エムちゃんもう可愛い最高男前……。守るなんて言われたら私もう結婚したくなっちゃうネ!!ふふん、というか、そもそもお互いに守り合うなんてこれ実質結婚じゃないのね?これはもう、エムちゃんのお母さんやお父さんに報告とかしないとー。
(両手を頬に。いつもの乙女なポーズ。愛情度が更に上がった▼。拙者、命に変えても…レベルなのに、エムちゃんのことを考えたら死んじゃいけないジレンマ。
暴走しながらも、
……とりあえず、エムちゃんには丁度よく話が聞けた。あとは、他の子や人達ともちょっと話してこなければ。とは考えるけれども。)
【エム】
「えへへ……」
なんだか、随分と好かれちゃったようで、本人的にも困惑です。エムこんなに好かれるようなことしてないと思いますけど、なんて。
ひとまず、これで表面上は仲間になってくれると言ってくれる人も二人出来ましたし、序盤にしては上々でしょうか。
なんて思ってた時に、パッドからの通知。
内容は――――
『12th【トロンパ】が死亡しました』
「……――――――」
幸先は、悪いみたいです
【痴漢者トーマス】
うん?……ああら…。一人死んじゃったね…。
……トロンパ?あ、メールくれた人かぁ…。
誰に殺されたとか書いてあるのかな…?
【エム】
「…………なんか、みんなで生還できるのか不安になってきたよ、お姉さん」
あっさりと1人死んでしまったから、自分の全員生還が本当に実現できるのか不安になってきました。
すこしガッカリしたような、しょんぼりしたような、少し暗い顔でお姉さんの方を見て、そう言います。
【痴漢者トーマス】
んん…。大丈夫大丈夫ネ。エムちゃんみたいな良い子の願いだしねー。きっと、叶うね。お姉さんもがんばるし、協力してくれる人も居るね。大丈夫だよ。
(そう言いながら、エムの頭を撫でる。
……しかし。その為にはまず何をどうすれば良いのだろう?と。そこから始まるのであった。)
さて…。ちょっと、他にも会いたい…というか、話を聞きたい子が居るからねー。ちかんお姉さんもう行っちゃうね?
【エム】
「うん、わかった! ばいばい、お姉さん。
――――――――死なないでね」
何か用があるのなら、そちらを優先してもらった方がいい。
エムばっかり優先されても困るからね。
そういって、去っていくお姉さんに手を振りました。
【エム】
「……………………んー」
みかんちゃんと別れたあと、エムは荷物を軽くまとめたリュックを床に起きながら、ホテルのロビーでコロパッドをじっと見ていました。
開いているのは共有チャットとルール説明のところで。
「…………んー?」
なんだかむずかしいことがいっぱいかいてあってわかりません。んー? ってうめきながらずっとがめんとにらめっこをしています。
【痴漢者トーマス】
いやー、外行っても別に良いことがある訳じゃないんだねー。
(斧を担いでホテルに帰ってくる。まぁ、別に何もなかった。それだけである。)
おお!エムちゃん!愛してるね!愛の使者、ちかんお姉さんだね!ピース!愛してるね!護るのね!!
……ところで、何か困ってるのね?
(エムちゃんへの想いをある程度伝えてから、まともな質問を。)
【エム】
「あ、ちかんお姉さん、こんにちわ!」
重すぎる想いを並べ立てられてもニッコリと笑顔で挨拶して、全てを受け流します。
いや、好きでいてくれるのは嬉しいから、無下にもしませんけど。
「……えっとね、みんな難しい事考えるんだなって」
ここに来てから、久しぶりに見たクラスメイトの名前の並べられている共有チャット。
だれそれの本名はこれだ、いやこれじゃない。
なんて、不毛な言い争いが並んでいて。
『エム』には何を話してるのかさっぱりわかりません。
だから、お姉さんが来てくれて、少し安心しました。
【痴漢者トーマス】
なになに…ああ、それねー。
難しい…うーん、これは正直さ、難しく考える必要はないものだよね?
ぶっちゃけ、この中には根拠も理由もないっていうかー、信頼できる物がないしー、考えない方が良いくらいじゃない?
(本当にどうでもいい。物を信じるには理由が必要だ。この書きなぐられた云々にはそれらがないし。まだ、雑談してる方が有益なんじゃないかな。)
あ、それともさ。…エムちゃんは、皆の名前当てたかったりするね?それだったら、いつかは必要な時が来るかもしれないけどねー。
【エム】
「…………うん、そうだよね」
そう言って、コロパッドの電源を落とします。
長時間画面とにらめっこしていたから、目が痛くなってきてしまいました。
うー、とまた呻きながら、背もたれに体を預けました。
「……名前はね、別にどうでもいい」
この姿で名前を当てるなんて、それ系統のゾディアックがなければ無謀な訳ですし。
エムが今できるのは、状況の整理くらいです。
…………疲れたな
【痴漢者トーマス】
ん、そうなのね。それで、良いんじゃないかな?
あ、ちょっと大事なこと聞くねー?エムちゃんはね、どうしたい?たとえばねー、生き残りたいとか、皆揃って帰りたい、とか?
(エムちゃんの頭に手を置くと、彼女の望みを聞こうとする。)
【エム】
「みんな揃って帰りたい」
即答。
エムはこれを目標にしています。
だれそれがだれそれを殺した、というのなら、その人のことは諦めて。
最小限の犠牲で、全員生きて帰るのが、目標です。
「お姉さんは? 違うの?」
【痴漢者トーマス】
そっかー。良いことだねー。
あ、私?ちかんお姉さんはねー。ちょっとだけ、違うかな?
私の一番の目標は…エムちゃんを守ること、かな!あと、他にも守りたい子はいくらでも居るしねー、他にも、その子達の望みをできる限りこの身体で叶えてあげたいな、って思うわけでー。
もしかしたら、それが原因で人殺しもしちゃう可能性はあるかもしれないけれど…まぁ、皆良い子だし。そんなことは多分ないとは思うんだけどー。
とりあえず、エムちゃんの望みは皆揃って、生き残りたいんだねー、わかったねー。ちかんお姉さんも手を貸すね?
(そういう事らしい。自分の守りたい子を守って、その子達の望みを頑張って叶えよう!みたいな。分かりやすい目標である。
そして、その子達以外の誰が死んでもどうでも良いとも思ってたりするらしい。)
【エム】
「……そっか」
エムは、みんなで帰りたい。
お姉さんは、エムを守りたい。
なら、やることはひとつだけ。
「わかった、じゃあ、エムはみんなで帰る為にも、お姉さんのこと頑張って守るね?」
エムは、みんなのことを助けてあげよう。
だから、お姉さんにはエムのことを守って貰おう。
誰かのことを気にかけていたら、自分のことが疎かになっちゃうからね。
【痴漢者トーマス】
ううん、エムちゃんもう可愛い最高男前……。守るなんて言われたら私もう結婚したくなっちゃうネ!!ふふん、というか、そもそもお互いに守り合うなんてこれ実質結婚じゃないのね?これはもう、エムちゃんのお母さんやお父さんに報告とかしないとー。
(両手を頬に。いつもの乙女なポーズ。愛情度が更に上がった▼。拙者、命に変えても…レベルなのに、エムちゃんのことを考えたら死んじゃいけないジレンマ。
暴走しながらも、
……とりあえず、エムちゃんには丁度よく話が聞けた。あとは、他の子や人達ともちょっと話してこなければ。とは考えるけれども。)
【エム】
「えへへ……」
なんだか、随分と好かれちゃったようで、本人的にも困惑です。エムこんなに好かれるようなことしてないと思いますけど、なんて。
ひとまず、これで表面上は仲間になってくれると言ってくれる人も二人出来ましたし、序盤にしては上々でしょうか。
なんて思ってた時に、パッドからの通知。
内容は――――
『12th【トロンパ】が死亡しました』
「……――――――」
幸先は、悪いみたいです
【痴漢者トーマス】
うん?……ああら…。一人死んじゃったね…。
……トロンパ?あ、メールくれた人かぁ…。
誰に殺されたとか書いてあるのかな…?
【エム】
「…………なんか、みんなで生還できるのか不安になってきたよ、お姉さん」
あっさりと1人死んでしまったから、自分の全員生還が本当に実現できるのか不安になってきました。
すこしガッカリしたような、しょんぼりしたような、少し暗い顔でお姉さんの方を見て、そう言います。
【痴漢者トーマス】
んん…。大丈夫大丈夫ネ。エムちゃんみたいな良い子の願いだしねー。きっと、叶うね。お姉さんもがんばるし、協力してくれる人も居るね。大丈夫だよ。
(そう言いながら、エムの頭を撫でる。
……しかし。その為にはまず何をどうすれば良いのだろう?と。そこから始まるのであった。)
さて…。ちょっと、他にも会いたい…というか、話を聞きたい子が居るからねー。ちかんお姉さんもう行っちゃうね?
【エム】
「うん、わかった! ばいばい、お姉さん。
――――――――死なないでね」
何か用があるのなら、そちらを優先してもらった方がいい。
エムばっかり優先されても困るからね。
そういって、去っていくお姉さんに手を振りました。
ふ〇なっしー(1st)-聖☆ビキニマン(14th)
【ふ〇なっしー】
中央エリア、商店街そこにふ○なっしーはふらふらと歩いていた。
何もする事が無い…つまんないし暇だしかと言って殺し合いするとかそんな事は嫌だ…一応クラスメイトだから殺すとかそんな事は論外だ
「暇だなー暇暇〜なーんか無いかなぁ……面白そうな物」
周りの店を軽く見渡しながら良い物が無いか探す。何も無い面白そうな物は何も無い、詰まんねぇなぁと呟きながらふらふらと近くにあったベンチに座る
「うーん………このゲームの主催者性格悪いわーなぁんで一々殺し合いさせるのかね」
【聖☆ビキニマン】
「……目的などなんであれ関係あるまい。ただ吾らは、この茶番に負けなければ良い。違うか?」
金槌片手に後ろに立つは巨漢。
探索中だったのか、身体には埃がついている
【ふ〇なっしー】
「茶番……まぁそうだねぇ……確かに茶番だね……っと君は誰だい?」
後ろを振り向かずに答える。容姿なんてどうでも良い必要なのは相手の反応だ
「確かに負けたら……僕達は死ぬ可能性があるねぇ〜……まぁ、別に僕以外の誰かが殺し合いしてくれるんなら別にそれでもいいんだけどね…さて君はなんの用で私に話しかけてきたのかい?用があるの?もしかして……殺しに来たとか?」
落ち着いた雰囲気…今まであった者が見れば誰だこいつってなるほどかなり大人しい。
出会ったら速攻でゲーム仕掛けるのだが←
「僕の名前は……そうだねぇ…フリッツだ、公にされた偽名はあるけどね〜」
トランプ弄りながら喋る、手馴れた手つきまるでマジシャンかのように手足のようにトランプを操る
「座りなよ横に……立って話すのは疲れるだろう?」
ぽんぽんと椅子を軽く叩く
【聖☆ビキニマン】
「結構。吾もまた武人。聊か、この状況下で“黒幕を警戒しない”という愚行は犯すに難い。」
彼、未だ一睡もせず。
「吾の名は聖☆ビキニマン。…本名は、既にチャットに載せた筈だ。」
しかし、その眼、些かも衰えず。
「汝もまた吾の友である。ならばこそ吾は殺さぬし、汝もまた誰かを殺すこと断じてないと信じている。故に吾は、汝らが黒幕に殺されることが断じてないよう、友を護らんが為に汝と会った。」
【ふ〇なっしー】
「………へぇ………あんた見たいなのいるんだ……ゲーム始まってからあったヤツら結構変なの多かったし……まぁ、君も変ちゃ変なんだけどね……ってデカ!!」
となんか凄い古風な喋りだから後ろを振り向いてみる……後ろに居たのはまさかの筋肉ダルマ
ビキニ付けてる
「………………せぇたけぇなぁ……取り敢えず見上げるの疲れるからサ、座ってくんね?」
【聖☆ビキニマン】
「……すまない。それは出来ぬのだ。吾は、汝らを護らねばならん。」
申し訳なさそうに顔を伏せるも、座る気はなく。
「吾が側に居て、汝が殺される。少なくともそれだけは避けねばならん。故に……すまん。」
【ふ〇なっしー】
「なんで君はそんなに護りたがる?僕はそれか気になるね」
護るものがあればそれだけ行動が遅れるし思考がロックされてしまう。
「君が護りたい理由を言ってくれ」
【聖☆ビキニマン】
「汝が、汝らが友であるからだ。……それ以外あるまい。」
即答。
迷いなどなく、“ただのクラスメート”が、”護るべき友“であると言い放つ。
……親友でなくとも、例えば会話すら少なかったとしても。
「吾の師なら、先生ならばそうするだろう。故に、吾もまたそうするのみ。」
【ふ〇なっしー】
「ふーん………怖いなぁ……後ろからざっくり行きそうでさ」
と結構腹黒い奴だったらしそうだなって考える
「まぁ、君の感じだとそれは無さそうだけど」
【聖☆ビキニマン】
「……信用出来ぬのは、仕方ない。わかるとは言わんが、吾もまた、苦悩したこともあった。」
……苦悩、とはいえそれは一瞬のことであった。何故か?
「…汝らが、吾の友が善良であると、吾は知っている。故に、吾は信じる。汝が吾を信じれぬのは仕方ないこと。だが、せめて、汝の中の、友は信じて欲しい。」
【ふ〇なっしー】
「…………まぁいいよ、信用はしてあげる…今のところはね」
さて、ビキニマンというかなんか偽善の塊で出来てそうな奴とあった訳だが
「………暇だからゲームに付き合ってくれよ」
【聖☆ビキニマン】
「…遊戯か。それで汝が少しでも楽になるのなら、是非もない。」
乗るらしい。
「ただし、座るものはダメだ。これは吾の定めた”覚悟“の一環である故に。……ルールは?」
【ふ〇なっしー】
「ふむ………そうか……そうなのかわかったよ……んじゃぁ……そうだなぁ……ポーカー……は分からなさそうだなぁ……んじゃジョーカー当てゲームする?ルールは、簡単シャッフルしたトランプを僕がばらまいて君がジョーカーを当てるゲームさ」
そう言うとこちらも立ち上がりトランプをシャッフルする。
一通りのシャッフルし追えると
「…んじゃばら撒くよ?」
勢いよく空中に疎らにして投げ捨てる。パラパラと落ちるトランプは表だったり裏だったりする
「さぁ、時間制限は無いよ……ジョーカーを当ててご覧」
【聖☆ビキニマン】
「……ふっ。その手の遊戯には必勝法があるのだよ。」
巨漢の姿がブレたかと思えば、その手には投げ捨てられたトランプが。……空中で、全て取ったのだ。
「全て、取ってしまえば良いのだよ。落ちる前に、な。」
【ふ〇なっしー】
「うはー……全部取られた……でもまぁ……残念…」
「ハズレだ……53枚あるけどね君が持っている52枚のカードにジョーカーはその中には無いよ」
そう、53枚あるしかし中身にジョーカーはない
あと1枚だけ…捲れてないカードあるんじゃないのかな?
「ほらあと1枚だけだ、捲ってないのは」
【聖☆ビキニマン】
「……む。…鍛練が足りなんだのを見抜くとは、流石よな。」
ビキニを開けば、そこには”捲られてない“残りの一枚が。
「流石に、吾も精密さが足りん。速度が速度である故に。……本当は、両の手で全て取りたかったのだが。」
【ふ〇なっしー】
「はい、おめでとう……一応正解だ」
と、トランプを受け取ろうと近寄る
「どうだい?楽しかった?僕的にはこのゲーム使い回しなんだけど……まぁ、次会ったらもっと楽しいゲーム考えとくよ」
ニコニコと笑いながら感想を求めるふ○なっしー
【聖☆ビキニマン】
「中々に有意義であったとも。……しかし驚いたぞ。よもや汝が、吾が先生と同じことをするとは。何か、武術でも嗜んでおるのか?」
トランプを手渡して。
【ふ〇なっしー】
「奇術師やってるぅ☆」
と、回収したトランプをまたばら撒く……ばらまかれた量はさっきより多い、200枚位あるんじゃね?ってくらい多い。
「また会おうか、優しいクラスメイト君」
視界が晴れればそこには誰もいなかった……歩く気配も無かったし歩く素振りも見せなかった……まぁ、よく見て探せば近くの店でお饅頭勝手に食べてるんだけど
【聖☆ビキニマン】
「…………ふむ、まあ良いか。」
フレンド申請をしたくはあったが……気配は覚えた。奇術師、というだけあって呼吸にすら相手に気付かれない工夫を感じるが、故にこそ一度覚えればそれを彼であると覚えるのに時間は要らなかった。
「また逢おう、吾の友、奇術師よ。……助けが要れば呼ぶといい。」
追うことも出来たが、奇術は明かされぬからこそ粋なもの。武術家に誇りがあるように、奇術師にもプライドはあるはずだ。それに泥を塗る真似はしたくなかった。
【ふ〇なっしー】
中央エリア、商店街そこにふ○なっしーはふらふらと歩いていた。
何もする事が無い…つまんないし暇だしかと言って殺し合いするとかそんな事は嫌だ…一応クラスメイトだから殺すとかそんな事は論外だ
「暇だなー暇暇〜なーんか無いかなぁ……面白そうな物」
周りの店を軽く見渡しながら良い物が無いか探す。何も無い面白そうな物は何も無い、詰まんねぇなぁと呟きながらふらふらと近くにあったベンチに座る
「うーん………このゲームの主催者性格悪いわーなぁんで一々殺し合いさせるのかね」
【聖☆ビキニマン】
「……目的などなんであれ関係あるまい。ただ吾らは、この茶番に負けなければ良い。違うか?」
金槌片手に後ろに立つは巨漢。
探索中だったのか、身体には埃がついている
【ふ〇なっしー】
「茶番……まぁそうだねぇ……確かに茶番だね……っと君は誰だい?」
後ろを振り向かずに答える。容姿なんてどうでも良い必要なのは相手の反応だ
「確かに負けたら……僕達は死ぬ可能性があるねぇ〜……まぁ、別に僕以外の誰かが殺し合いしてくれるんなら別にそれでもいいんだけどね…さて君はなんの用で私に話しかけてきたのかい?用があるの?もしかして……殺しに来たとか?」
落ち着いた雰囲気…今まであった者が見れば誰だこいつってなるほどかなり大人しい。
出会ったら速攻でゲーム仕掛けるのだが←
「僕の名前は……そうだねぇ…フリッツだ、公にされた偽名はあるけどね〜」
トランプ弄りながら喋る、手馴れた手つきまるでマジシャンかのように手足のようにトランプを操る
「座りなよ横に……立って話すのは疲れるだろう?」
ぽんぽんと椅子を軽く叩く
【聖☆ビキニマン】
「結構。吾もまた武人。聊か、この状況下で“黒幕を警戒しない”という愚行は犯すに難い。」
彼、未だ一睡もせず。
「吾の名は聖☆ビキニマン。…本名は、既にチャットに載せた筈だ。」
しかし、その眼、些かも衰えず。
「汝もまた吾の友である。ならばこそ吾は殺さぬし、汝もまた誰かを殺すこと断じてないと信じている。故に吾は、汝らが黒幕に殺されることが断じてないよう、友を護らんが為に汝と会った。」
【ふ〇なっしー】
「………へぇ………あんた見たいなのいるんだ……ゲーム始まってからあったヤツら結構変なの多かったし……まぁ、君も変ちゃ変なんだけどね……ってデカ!!」
となんか凄い古風な喋りだから後ろを振り向いてみる……後ろに居たのはまさかの筋肉ダルマ
ビキニ付けてる
「………………せぇたけぇなぁ……取り敢えず見上げるの疲れるからサ、座ってくんね?」
【聖☆ビキニマン】
「……すまない。それは出来ぬのだ。吾は、汝らを護らねばならん。」
申し訳なさそうに顔を伏せるも、座る気はなく。
「吾が側に居て、汝が殺される。少なくともそれだけは避けねばならん。故に……すまん。」
【ふ〇なっしー】
「なんで君はそんなに護りたがる?僕はそれか気になるね」
護るものがあればそれだけ行動が遅れるし思考がロックされてしまう。
「君が護りたい理由を言ってくれ」
【聖☆ビキニマン】
「汝が、汝らが友であるからだ。……それ以外あるまい。」
即答。
迷いなどなく、“ただのクラスメート”が、”護るべき友“であると言い放つ。
……親友でなくとも、例えば会話すら少なかったとしても。
「吾の師なら、先生ならばそうするだろう。故に、吾もまたそうするのみ。」
【ふ〇なっしー】
「ふーん………怖いなぁ……後ろからざっくり行きそうでさ」
と結構腹黒い奴だったらしそうだなって考える
「まぁ、君の感じだとそれは無さそうだけど」
【聖☆ビキニマン】
「……信用出来ぬのは、仕方ない。わかるとは言わんが、吾もまた、苦悩したこともあった。」
……苦悩、とはいえそれは一瞬のことであった。何故か?
「…汝らが、吾の友が善良であると、吾は知っている。故に、吾は信じる。汝が吾を信じれぬのは仕方ないこと。だが、せめて、汝の中の、友は信じて欲しい。」
【ふ〇なっしー】
「…………まぁいいよ、信用はしてあげる…今のところはね」
さて、ビキニマンというかなんか偽善の塊で出来てそうな奴とあった訳だが
「………暇だからゲームに付き合ってくれよ」
【聖☆ビキニマン】
「…遊戯か。それで汝が少しでも楽になるのなら、是非もない。」
乗るらしい。
「ただし、座るものはダメだ。これは吾の定めた”覚悟“の一環である故に。……ルールは?」
【ふ〇なっしー】
「ふむ………そうか……そうなのかわかったよ……んじゃぁ……そうだなぁ……ポーカー……は分からなさそうだなぁ……んじゃジョーカー当てゲームする?ルールは、簡単シャッフルしたトランプを僕がばらまいて君がジョーカーを当てるゲームさ」
そう言うとこちらも立ち上がりトランプをシャッフルする。
一通りのシャッフルし追えると
「…んじゃばら撒くよ?」
勢いよく空中に疎らにして投げ捨てる。パラパラと落ちるトランプは表だったり裏だったりする
「さぁ、時間制限は無いよ……ジョーカーを当ててご覧」
【聖☆ビキニマン】
「……ふっ。その手の遊戯には必勝法があるのだよ。」
巨漢の姿がブレたかと思えば、その手には投げ捨てられたトランプが。……空中で、全て取ったのだ。
「全て、取ってしまえば良いのだよ。落ちる前に、な。」
【ふ〇なっしー】
「うはー……全部取られた……でもまぁ……残念…」
「ハズレだ……53枚あるけどね君が持っている52枚のカードにジョーカーはその中には無いよ」
そう、53枚あるしかし中身にジョーカーはない
あと1枚だけ…捲れてないカードあるんじゃないのかな?
「ほらあと1枚だけだ、捲ってないのは」
【聖☆ビキニマン】
「……む。…鍛練が足りなんだのを見抜くとは、流石よな。」
ビキニを開けば、そこには”捲られてない“残りの一枚が。
「流石に、吾も精密さが足りん。速度が速度である故に。……本当は、両の手で全て取りたかったのだが。」
【ふ〇なっしー】
「はい、おめでとう……一応正解だ」
と、トランプを受け取ろうと近寄る
「どうだい?楽しかった?僕的にはこのゲーム使い回しなんだけど……まぁ、次会ったらもっと楽しいゲーム考えとくよ」
ニコニコと笑いながら感想を求めるふ○なっしー
【聖☆ビキニマン】
「中々に有意義であったとも。……しかし驚いたぞ。よもや汝が、吾が先生と同じことをするとは。何か、武術でも嗜んでおるのか?」
トランプを手渡して。
【ふ〇なっしー】
「奇術師やってるぅ☆」
と、回収したトランプをまたばら撒く……ばらまかれた量はさっきより多い、200枚位あるんじゃね?ってくらい多い。
「また会おうか、優しいクラスメイト君」
視界が晴れればそこには誰もいなかった……歩く気配も無かったし歩く素振りも見せなかった……まぁ、よく見て探せば近くの店でお饅頭勝手に食べてるんだけど
【聖☆ビキニマン】
「…………ふむ、まあ良いか。」
フレンド申請をしたくはあったが……気配は覚えた。奇術師、というだけあって呼吸にすら相手に気付かれない工夫を感じるが、故にこそ一度覚えればそれを彼であると覚えるのに時間は要らなかった。
「また逢おう、吾の友、奇術師よ。……助けが要れば呼ぶといい。」
追うことも出来たが、奇術は明かされぬからこそ粋なもの。武術家に誇りがあるように、奇術師にもプライドはあるはずだ。それに泥を塗る真似はしたくなかった。
五番目の道化師(3rd)-酢豚に極稀に入ってるパイナポー(8th)
【酢豚パイナポー】
ショッピングモールでタコスとの出会いを終えた後。パイナポーは一度ホテルに立ち寄って準備をすませると、この雪国へと来て案内を見てより、行きたいと願っていた場所へと向かう。
スノーカントリータワー…略称SCT。中々に安直なネーミングセンスであると…(パイナポーも人の事を言うことができないが)彼女も考えざるを得ないそのタワーへと。
「……ふわぁ。凄いです…ね。あんなに広い雪国が…小さなジオラマみたい…。」
最上階、展望台。パイナポーはそこより下に広がる白い世界へと想いを馳せる。
広がるのは、広大な大地と点在する施設群。白く覆われたそれらはまさに幻想的という言葉を送るのがもっとも相応しいだろう。
パイナポーは、感嘆の息を漏らす。
【五番目の道化師】
南エリアにはショッピングモールとスノーカントリータワーという長々しい名前の展望台がある。道化師はなんとなくふらっと南エリアにやってきてショッピングモールの商品を拝借しようかなぁ。と考えていたが、そういえば展望台に来たことがないことを思い出し、スノーカントリータワーへとやってきた。
展望台へ登り、景色を見て───道化師はひきつる。
「た、高いなぁ…」
先客がいることに気づかず呟いた言葉がソレである。
【酢豚パイナポー】
「あら、ピエロさん…ですかね?こんにちは。」
ふと声がして後ろを振り向けば、そこにいたのはピエロメイクの不思議な人。メイクのせいで良く表情のほどは見えないけれど…。
この人も、自分と同じように“コロシアイ”に参加させられた人物なのだろうか。むしろショッピングモールにいた無味乾燥した機械みたいな店員みたいな人なのだろうか。
良く分からないけど、とりあえず挨拶。
挨拶をする事はパイナポーのルーチンワークの一つでもある。それがどんな人物だと言え、変わる事はない。
【五番目の道化師】
「あっ、こんにちは」
声をかけられてから先客に気がついた道化師は挨拶する。あれ、そういえばこの人初対面かなぁ。今まで会ったことないよね?
「はじめまして?なのかな…。私は五番目の道化師。あなたは…」
話が通じそうな人だからとりあえず名乗ってみる。
とりあえず、こういう感じの人はNPCではないのはわかっているのでクラスメイトの誰かなんだろう。
【酢豚パイナポー】
「こんにちはっ。私は…8th、又の名を“酢豚に極稀に入っているパイナポー”ですっ。パイナップル…って呼んでもらえば嬉しいですねっ。」
どうやら、自分と同じ境遇の人物で合っていたようだ。パイナポーは制服のスカートをひらりと翻して、目の前にいる5番目の道化師、と名乗った人物へと名乗りをあげる。
もはやこの偽名も手馴れたもの、顔に朱の一つも差し込む事はないのだ。これはもう完璧なパイナポーだ。輪切りにでもなんでもしたまえ。
【五番目の道化師】
「酢豚に極希に入っているパイナポー…さん」
長いな!?って、そういえば共通チャットで喋ってた気もしなくはない。
「あの…パイナップルもなかなかに言いづらいんですが。パインさんと呼んでも?」
パイナップルより、パインさんと呼んだほうが楽である。
「私のことはピエロと呼んでください」
【酢豚パイナポー】
「ええ。パイン、で大丈夫ですよ。ピエロさん。」
微笑みを浮かべたまま、パイナポーは窓から離れてピエロへと近づく。パイナポーはあの放送が頭からこびりついて離れない。
人をも殺せぬ性分である彼女は人を殺す事など無いであろうが、それだとしても彼女にとって“殺されるかもしれない”というのは中々にショッキングな出来事であったのだ。
「あっ、そうですピエロさんっ。フレンド登録、しませんか?私…心細くって。あんな放送がありましたし…。」
そう言って彼女は、数メートルほどの距離まで近づくとコロパッドを取り出すために服の中へと腕を差し入れた。勘の良いものであれば、その顔が若干苦々しく歪められている事に気づくだろう。
【五番目の道化師】
「うん、いいよ」
笑顔でそう答えた。
フレンドは多い方がいい。
「あの…大丈夫ですか?」
やっぱり、あんな出来事があったからだろうか。パインさんの顔が歪んでいて心配になった道化師は端末を取り出しながら声をかけた。
【酢豚パイナポー】
「…ええ、大丈夫です。でも、やっぱり…怖いですよね…人殺し、なんて。」
コロパッドを取り出し、ちゃっちゃと慣れた手つきでフレンド登録の登録を済ませると。パイナポーはピエロへと己が心の考えを語り出す。
「だって…人を殺すなんて。でっきこないじゃないですか…。私、私…死にたくないです。でも…人を殺すことも嫌なんです。
みんなで仲良くバカンスを楽しむんじゃ、ダメなのですか…。みんなで脱出方法探すのじゃ…ダメなのですか…。
私…怖くてっ、でも、分かんなくてっ…!」
言葉は洪水のように溢れ出る。既に一人死んでしまった、さっきもう一人死んでしまった。
嫌だ嫌だ。パイナポーは、生きていたい。
でも、みんなも生きていてもらいたい。本来なら生命としてありふれた願い。
でも。
ここでは、ひどく傲慢な願いだ。
【五番目の道化師】
「えぇ、そうですよね…」
私も怖い。でも、その恐怖すら感じていない者がクラスメイトに混じり混んでいるから…こうなってしまっている。
私も皆で脱出したかったけど、既に死者が出てしまった。そういう人がいないと信じていたのに…その願望は叶わなかったのだ。
「…探しましょう。脱出する手を、怖いけど私も既に探しています。」
怖いなら怖いでしかたない。だけど、怖くて動かないは一番いけないことだ。行動しろ、行動しろ。動くしかいきる道はない。
【酢豚パイナポー】
「…そうです、ねっ。弱気になっちゃダメですねっ…頑張らないとっ!」
パイナポーはピエロの言葉を聞き、濁流の如く流れる言葉を飲み込んで。
その顔に笑顔を浮かべて頷く。
そうだ、弱音は無しだ。
こんな時こそ最善を尽くすために頑張らないと。
パイナポーは自分自身にそう言い聞かせ、これからの事についての決意を新たにする。
これから生き残るために頑張らないと、と。
【五番目の道化師】
「えぇ、弱気になってばかりではいけません。どうしよう、と悩んでばかりで手遅れになってしまった人を私は知っていますからね」
『何かあればチャットで知らせてください。』
道化師は笑顔で(このメイクで笑みを浮かべても怖いだけかもしれないが)そう言ってその場から立ち去った
【酢豚パイナポー】
ショッピングモールでタコスとの出会いを終えた後。パイナポーは一度ホテルに立ち寄って準備をすませると、この雪国へと来て案内を見てより、行きたいと願っていた場所へと向かう。
スノーカントリータワー…略称SCT。中々に安直なネーミングセンスであると…(パイナポーも人の事を言うことができないが)彼女も考えざるを得ないそのタワーへと。
「……ふわぁ。凄いです…ね。あんなに広い雪国が…小さなジオラマみたい…。」
最上階、展望台。パイナポーはそこより下に広がる白い世界へと想いを馳せる。
広がるのは、広大な大地と点在する施設群。白く覆われたそれらはまさに幻想的という言葉を送るのがもっとも相応しいだろう。
パイナポーは、感嘆の息を漏らす。
【五番目の道化師】
南エリアにはショッピングモールとスノーカントリータワーという長々しい名前の展望台がある。道化師はなんとなくふらっと南エリアにやってきてショッピングモールの商品を拝借しようかなぁ。と考えていたが、そういえば展望台に来たことがないことを思い出し、スノーカントリータワーへとやってきた。
展望台へ登り、景色を見て───道化師はひきつる。
「た、高いなぁ…」
先客がいることに気づかず呟いた言葉がソレである。
【酢豚パイナポー】
「あら、ピエロさん…ですかね?こんにちは。」
ふと声がして後ろを振り向けば、そこにいたのはピエロメイクの不思議な人。メイクのせいで良く表情のほどは見えないけれど…。
この人も、自分と同じように“コロシアイ”に参加させられた人物なのだろうか。むしろショッピングモールにいた無味乾燥した機械みたいな店員みたいな人なのだろうか。
良く分からないけど、とりあえず挨拶。
挨拶をする事はパイナポーのルーチンワークの一つでもある。それがどんな人物だと言え、変わる事はない。
【五番目の道化師】
「あっ、こんにちは」
声をかけられてから先客に気がついた道化師は挨拶する。あれ、そういえばこの人初対面かなぁ。今まで会ったことないよね?
「はじめまして?なのかな…。私は五番目の道化師。あなたは…」
話が通じそうな人だからとりあえず名乗ってみる。
とりあえず、こういう感じの人はNPCではないのはわかっているのでクラスメイトの誰かなんだろう。
【酢豚パイナポー】
「こんにちはっ。私は…8th、又の名を“酢豚に極稀に入っているパイナポー”ですっ。パイナップル…って呼んでもらえば嬉しいですねっ。」
どうやら、自分と同じ境遇の人物で合っていたようだ。パイナポーは制服のスカートをひらりと翻して、目の前にいる5番目の道化師、と名乗った人物へと名乗りをあげる。
もはやこの偽名も手馴れたもの、顔に朱の一つも差し込む事はないのだ。これはもう完璧なパイナポーだ。輪切りにでもなんでもしたまえ。
【五番目の道化師】
「酢豚に極希に入っているパイナポー…さん」
長いな!?って、そういえば共通チャットで喋ってた気もしなくはない。
「あの…パイナップルもなかなかに言いづらいんですが。パインさんと呼んでも?」
パイナップルより、パインさんと呼んだほうが楽である。
「私のことはピエロと呼んでください」
【酢豚パイナポー】
「ええ。パイン、で大丈夫ですよ。ピエロさん。」
微笑みを浮かべたまま、パイナポーは窓から離れてピエロへと近づく。パイナポーはあの放送が頭からこびりついて離れない。
人をも殺せぬ性分である彼女は人を殺す事など無いであろうが、それだとしても彼女にとって“殺されるかもしれない”というのは中々にショッキングな出来事であったのだ。
「あっ、そうですピエロさんっ。フレンド登録、しませんか?私…心細くって。あんな放送がありましたし…。」
そう言って彼女は、数メートルほどの距離まで近づくとコロパッドを取り出すために服の中へと腕を差し入れた。勘の良いものであれば、その顔が若干苦々しく歪められている事に気づくだろう。
【五番目の道化師】
「うん、いいよ」
笑顔でそう答えた。
フレンドは多い方がいい。
「あの…大丈夫ですか?」
やっぱり、あんな出来事があったからだろうか。パインさんの顔が歪んでいて心配になった道化師は端末を取り出しながら声をかけた。
【酢豚パイナポー】
「…ええ、大丈夫です。でも、やっぱり…怖いですよね…人殺し、なんて。」
コロパッドを取り出し、ちゃっちゃと慣れた手つきでフレンド登録の登録を済ませると。パイナポーはピエロへと己が心の考えを語り出す。
「だって…人を殺すなんて。でっきこないじゃないですか…。私、私…死にたくないです。でも…人を殺すことも嫌なんです。
みんなで仲良くバカンスを楽しむんじゃ、ダメなのですか…。みんなで脱出方法探すのじゃ…ダメなのですか…。
私…怖くてっ、でも、分かんなくてっ…!」
言葉は洪水のように溢れ出る。既に一人死んでしまった、さっきもう一人死んでしまった。
嫌だ嫌だ。パイナポーは、生きていたい。
でも、みんなも生きていてもらいたい。本来なら生命としてありふれた願い。
でも。
ここでは、ひどく傲慢な願いだ。
【五番目の道化師】
「えぇ、そうですよね…」
私も怖い。でも、その恐怖すら感じていない者がクラスメイトに混じり混んでいるから…こうなってしまっている。
私も皆で脱出したかったけど、既に死者が出てしまった。そういう人がいないと信じていたのに…その願望は叶わなかったのだ。
「…探しましょう。脱出する手を、怖いけど私も既に探しています。」
怖いなら怖いでしかたない。だけど、怖くて動かないは一番いけないことだ。行動しろ、行動しろ。動くしかいきる道はない。
【酢豚パイナポー】
「…そうです、ねっ。弱気になっちゃダメですねっ…頑張らないとっ!」
パイナポーはピエロの言葉を聞き、濁流の如く流れる言葉を飲み込んで。
その顔に笑顔を浮かべて頷く。
そうだ、弱音は無しだ。
こんな時こそ最善を尽くすために頑張らないと。
パイナポーは自分自身にそう言い聞かせ、これからの事についての決意を新たにする。
これから生き残るために頑張らないと、と。
【五番目の道化師】
「えぇ、弱気になってばかりではいけません。どうしよう、と悩んでばかりで手遅れになってしまった人を私は知っていますからね」
『何かあればチャットで知らせてください。』
道化師は笑顔で(このメイクで笑みを浮かべても怖いだけかもしれないが)そう言ってその場から立ち去った
海月(23rd)-アカエル(GM)
【海月】
SCTの展望台、外から景色を眺めていた。
特段意味はないものだ、と信じたいけれど。何処かでこのゲエムが進むことを望んでいて。
「……つまんないの。もう死んじゃったんだ。」
コロパッドの画面に、確かに【DEAD END】の表示が出ていることを、覚えて。
…彼には少しだけ、本当に少しだけ期待していたのだけれど。もう終わってしまった。
だけれど、それならそれでいい。自殺?他殺?分からないけれど。このゲエムは"始まっている"ことに。
それはとっても"愉しい"じゃないか。
…ああ、然ういえば、こんなゲエムを仕組んだヤツらが混ざっているんだよね。
会ったらお礼でも言おうかな、だなんて。
「まあ、そうやすやすと"そっち側"の人間に会えるとは思ってはいないんだけれどね。」
【アカエル】
「はいどーもぉ!"そっち側"の人間です!」
(海月の目の前に、逆さ吊りの状態で現れる。神出鬼没はもはやお家芸であった)
「君と会うのは二回目だねぇ。あ、ゲームの方はどうかな?早速一人目の死者が出てくれて、僕としては嬉しいなぁ」
【海月】
「わあ!呼んだら出てきてくれるなんて、やっぱりキミ親切だね!
前も素直に質問に答えてくれたし、やっぱりキミ良い趣味してるし良い性格してると思うよ!」
にこにこ、にこにこ。嬉しそうな目の前の"自称天使"を目の前にして、驚く素振りはなかった。
いきなり出てくるのは"最初"で慣れたし、その"最初"で色々説明してくれたのだもの。
「ああ、ホント?オレがやったわけじゃないけど、そうだねぇ、オレも嬉しいよ!
だって、ゲエムが本物だったってことでしょ?こっからまた、誰一人希望を見ないデスゲエムがはじまる。
敗者に待つのは死で、勝者に待つのは絶望だ。ああ、本当に良い趣味してるよね。」
どちらに転んでも、参加者が嬉しさを感じることはない。だから、こんなにも皮肉な感想を聞かせるのだろう。
ああ、本当に"良い趣味"をしている。オレに似ては、無いと思うよ?
「…然ういえば、あの時、一個質問し忘れたんだったね。
キミは、"オレたちのことをどこまで把握している"の?クラスメートであること?個人のこと?
…過去全てとか、それこそ今考えていることも、だったりするの?」
【アカエル】
「そうだろう?僕は君達が大好きだからさ。君達の要望には出来る限り応えていきたいね。
ふふ、君にもゲームの素晴らしさが伝わったかな?」
(ふわりと回転し、彼女の隣に着地した。両手をわざとらしく広げ、尊大に構えて話し続ける)
「君達のことは、そうだな。身体的データはもちろん、生い立ちや人間関係なんかも全て把握しているよ。そこから君達の心境や、抱えているものを推察するのは容易いね。
でも、心を読めるわけじゃない。だから僕の予想が外れることもあるし、君達がどのような行動に出るのかまで、読むことはできない。
そこがまた面白いんだけどね」
【海月】
「っはは、オレは既にゲエムの素晴らしさに関しては理解してるつもりなんだけどなー。節穴かなー?
…それで、要望には出来る限り答えてくれる、と。」
これは、嘘ではないだろう。質問の時にも見たが、アカエルちゃんは楽しい場面でしか嘘を吐かない。
…気がするってだけ。ゲームマスターだからって過信すぎるのが良くないのも理解はしている。つもり。
そして、生い立ちや人間関係…これは、どうだかね。ただ、もし、理解していたとすれば。
…オレの心境や抱えているものを推測するのが、容易いとすれば。
「じゃあじゃあ、オレが何を考えてるのか予想することは出来るの!?凄いねぇ!!
やっぱりゲームマスターは"全知"じゃなくちゃいけないし、"全能"であっちゃいけないよね!
と、いうわけで!
そんな全知で全能じゃないアカエルちゃんに、ちょっと要望…というか、取引があるんだけど、聞いてもらってもいい?
…キミとしても愉しめる、いい取引だと思うよ?」
【アカエル】
「ああ、もちろん聞くとも……。僕が楽しむためだったら、なんだってするさ。
まあ、嘘かもしれないけど」
(背後から瞬く間に海月の後ろに現れ、背中から腕を回す。顔を寄せ、内緒話のスタンバイ。最後のフレーズは勝手に他の参加者からパクりました)
【海月】
「っはは!嘘かもしれない、か。オレの言うことは信用してくれるんだね?嘘かもしれないのに。
…ああ、提案に関しては嘘を吐かないから問題ないよ。」
背中から圧を感じる、けれど今はどうでもいいことか。
……ああ、こんな"愉しい"ことを思いついてしまうなんて、ね。
「条件はー…まあ、単純に"オレが生き残ること、でいいよね!
それと引き換えに、オレを――――――してくれないかな?
…オレから、"こういう"提案が出てくるなんて、キミとしては嬉しくて愉しくてしょうがないんじゃないかなって、考えてるんだけど。どう?
ああ、もちろんさっきのキミの言葉が本当だと仮定して、ね!」
内緒話の姿勢に関しては、甘んじて受け入れよう。誰にも聞かれないように、そのフレーズだけ、小声で。
――ほうら、とっても、つまらなくないでしょ?
【アカエル】
「ふふふふ。やっぱり僕は君達が大好きだ。マリアくん、唐揚げくん……僕を愉しませてくれる人間が、ここには沢山だ。
海月くん、君もその例に漏れることはない。
ーーーーーーーーーー」
(纏わり付くような笑声をクスクスと漏らすと、耳元で、その要求に対する返答を囁いた)
【海月】
「…っはは。ああ、"やっぱり"期待通りだった。
じゃあ、キミも期待しておいてよ、アカエルちゃん。大好きなオレの為に。途中で約束を投げ出したりしないでよね?
そういうつまらないコトは、オレ、大嫌いなんだからさ。」
ああ、そう。期待通り。キミが"深く"話さないのも、その返答もすべて。予想通り。
…そして、唐揚げちゃんに…マリアちゃん、ね。確か9thだったっけ?分からないけれど。
会ってみる価値はあるのかもしれないね。
だって、それだけ、その分だけこのゲエムを"愉しめる"ってことでしょう?
「そっか、そっか。いやあ、ありがとうね!アカエルちゃん!
また、今度はゲエム終了後かそれとも次に会う時かは分からないけれど、オレからは以上だよ。
"またね"。」
【アカエル】
「ああ。僕は君達の命に価値があるなど思ってはいないが、ゲームマスターとして極力フェアであるつもりだ。約束を反故にすることはないよ」
(彼女がこのゲームで生き延びることができるだろうか?それは、アカエルにもわからない。不確定要素が多すぎるからこそ、このゲームは面白いのさ)
「ああ……"またね"」
(ふわりと、夜空へ消えて行くのであった)
【海月】
SCTの展望台、外から景色を眺めていた。
特段意味はないものだ、と信じたいけれど。何処かでこのゲエムが進むことを望んでいて。
「……つまんないの。もう死んじゃったんだ。」
コロパッドの画面に、確かに【DEAD END】の表示が出ていることを、覚えて。
…彼には少しだけ、本当に少しだけ期待していたのだけれど。もう終わってしまった。
だけれど、それならそれでいい。自殺?他殺?分からないけれど。このゲエムは"始まっている"ことに。
それはとっても"愉しい"じゃないか。
…ああ、然ういえば、こんなゲエムを仕組んだヤツらが混ざっているんだよね。
会ったらお礼でも言おうかな、だなんて。
「まあ、そうやすやすと"そっち側"の人間に会えるとは思ってはいないんだけれどね。」
【アカエル】
「はいどーもぉ!"そっち側"の人間です!」
(海月の目の前に、逆さ吊りの状態で現れる。神出鬼没はもはやお家芸であった)
「君と会うのは二回目だねぇ。あ、ゲームの方はどうかな?早速一人目の死者が出てくれて、僕としては嬉しいなぁ」
【海月】
「わあ!呼んだら出てきてくれるなんて、やっぱりキミ親切だね!
前も素直に質問に答えてくれたし、やっぱりキミ良い趣味してるし良い性格してると思うよ!」
にこにこ、にこにこ。嬉しそうな目の前の"自称天使"を目の前にして、驚く素振りはなかった。
いきなり出てくるのは"最初"で慣れたし、その"最初"で色々説明してくれたのだもの。
「ああ、ホント?オレがやったわけじゃないけど、そうだねぇ、オレも嬉しいよ!
だって、ゲエムが本物だったってことでしょ?こっからまた、誰一人希望を見ないデスゲエムがはじまる。
敗者に待つのは死で、勝者に待つのは絶望だ。ああ、本当に良い趣味してるよね。」
どちらに転んでも、参加者が嬉しさを感じることはない。だから、こんなにも皮肉な感想を聞かせるのだろう。
ああ、本当に"良い趣味"をしている。オレに似ては、無いと思うよ?
「…然ういえば、あの時、一個質問し忘れたんだったね。
キミは、"オレたちのことをどこまで把握している"の?クラスメートであること?個人のこと?
…過去全てとか、それこそ今考えていることも、だったりするの?」
【アカエル】
「そうだろう?僕は君達が大好きだからさ。君達の要望には出来る限り応えていきたいね。
ふふ、君にもゲームの素晴らしさが伝わったかな?」
(ふわりと回転し、彼女の隣に着地した。両手をわざとらしく広げ、尊大に構えて話し続ける)
「君達のことは、そうだな。身体的データはもちろん、生い立ちや人間関係なんかも全て把握しているよ。そこから君達の心境や、抱えているものを推察するのは容易いね。
でも、心を読めるわけじゃない。だから僕の予想が外れることもあるし、君達がどのような行動に出るのかまで、読むことはできない。
そこがまた面白いんだけどね」
【海月】
「っはは、オレは既にゲエムの素晴らしさに関しては理解してるつもりなんだけどなー。節穴かなー?
…それで、要望には出来る限り答えてくれる、と。」
これは、嘘ではないだろう。質問の時にも見たが、アカエルちゃんは楽しい場面でしか嘘を吐かない。
…気がするってだけ。ゲームマスターだからって過信すぎるのが良くないのも理解はしている。つもり。
そして、生い立ちや人間関係…これは、どうだかね。ただ、もし、理解していたとすれば。
…オレの心境や抱えているものを推測するのが、容易いとすれば。
「じゃあじゃあ、オレが何を考えてるのか予想することは出来るの!?凄いねぇ!!
やっぱりゲームマスターは"全知"じゃなくちゃいけないし、"全能"であっちゃいけないよね!
と、いうわけで!
そんな全知で全能じゃないアカエルちゃんに、ちょっと要望…というか、取引があるんだけど、聞いてもらってもいい?
…キミとしても愉しめる、いい取引だと思うよ?」
【アカエル】
「ああ、もちろん聞くとも……。僕が楽しむためだったら、なんだってするさ。
まあ、嘘かもしれないけど」
(背後から瞬く間に海月の後ろに現れ、背中から腕を回す。顔を寄せ、内緒話のスタンバイ。最後のフレーズは勝手に他の参加者からパクりました)
【海月】
「っはは!嘘かもしれない、か。オレの言うことは信用してくれるんだね?嘘かもしれないのに。
…ああ、提案に関しては嘘を吐かないから問題ないよ。」
背中から圧を感じる、けれど今はどうでもいいことか。
……ああ、こんな"愉しい"ことを思いついてしまうなんて、ね。
「条件はー…まあ、単純に"オレが生き残ること、でいいよね!
それと引き換えに、オレを――――――してくれないかな?
…オレから、"こういう"提案が出てくるなんて、キミとしては嬉しくて愉しくてしょうがないんじゃないかなって、考えてるんだけど。どう?
ああ、もちろんさっきのキミの言葉が本当だと仮定して、ね!」
内緒話の姿勢に関しては、甘んじて受け入れよう。誰にも聞かれないように、そのフレーズだけ、小声で。
――ほうら、とっても、つまらなくないでしょ?
【アカエル】
「ふふふふ。やっぱり僕は君達が大好きだ。マリアくん、唐揚げくん……僕を愉しませてくれる人間が、ここには沢山だ。
海月くん、君もその例に漏れることはない。
ーーーーーーーーーー」
(纏わり付くような笑声をクスクスと漏らすと、耳元で、その要求に対する返答を囁いた)
【海月】
「…っはは。ああ、"やっぱり"期待通りだった。
じゃあ、キミも期待しておいてよ、アカエルちゃん。大好きなオレの為に。途中で約束を投げ出したりしないでよね?
そういうつまらないコトは、オレ、大嫌いなんだからさ。」
ああ、そう。期待通り。キミが"深く"話さないのも、その返答もすべて。予想通り。
…そして、唐揚げちゃんに…マリアちゃん、ね。確か9thだったっけ?分からないけれど。
会ってみる価値はあるのかもしれないね。
だって、それだけ、その分だけこのゲエムを"愉しめる"ってことでしょう?
「そっか、そっか。いやあ、ありがとうね!アカエルちゃん!
また、今度はゲエム終了後かそれとも次に会う時かは分からないけれど、オレからは以上だよ。
"またね"。」
【アカエル】
「ああ。僕は君達の命に価値があるなど思ってはいないが、ゲームマスターとして極力フェアであるつもりだ。約束を反故にすることはないよ」
(彼女がこのゲームで生き延びることができるだろうか?それは、アカエルにもわからない。不確定要素が多すぎるからこそ、このゲームは面白いのさ)
「ああ……"またね"」
(ふわりと、夜空へ消えて行くのであった)
みかんちゃん(2nd)-唐揚げ食べたい(18th)
【みかんちゃん】
協会の一帯を探しても彼は見つからず、火元に迂闊に近づけないまま。
捜索することを早々に諦めては協会に戻り
リュックに入れていた服に着替えてその場を跡にした。
色々と混乱しているはずの頭の中は意外にも冴えていて。
寧ろ冷静にどうしたものかと考える程度には頭が回っていた。
あのときに似ている。
なんてぼんやり朧気な記憶を辿って、
思考を放棄。
面倒なとき、考え事をするときは考えなければ気づけば全てことが進んでくれるから。
あのときと同じ、私は病院に居た。
正確には廃病院か。
ほのぼのとした月の光が白い壁を泛ばせて、嫌に青々と死人の顔を想起させた。
その病院へと踏み込む。
目を、思い出していた。
××の目がこっちを見ていた。
目なんか開かないはずだろう?
いや、いや、いや訂正。
──、修正。
此処は違う。此処に自分はいない。
…いるけれど。
それは私でしょう?
ポケットにいれたそれを上から触れて、落ち着けというように息を吐いた。
蓋の閉め方は知っている。
大丈夫。
奥へと進む。
【唐揚げ食べたい】
(ぐるぐるぐる、ぐるるぐるり。
思考が巡る音がする。音なんて無いのに、そんな幻聴が聞こえる。
病院に特に思い入れはないが、彼の一足先に病院に入っていた唐揚げはとある病室に居た。
これからどうしようか、これから何をしようか、なんて考えて。
ぎゅるり、と俺は眼を開く。その目で見る人間など今は居ないわけだが、そんなことはどうでもよくて。
如何してこんな薄暗いところにいるんだって?それはとある作業の為さ。
誰にも見られたくない、ただの武器作成。弱い自分でも使えるような、そんなチャチな物。
察しの良い人間ならば、俺の持ち物を見て分かるだろう?)
「──────、あ」
(不意に、誰かの足音が聞こえた気がした。ううん、気の所為じゃなくてね。
こんな静かなところなんだから、その音が聞こえないわけがない。
作り終えたソレを、手探りでリュックへ隠すように入れて。
配られたアイテムを、一つ取り出してまた戻す。確認、ただの確認だ。
徐々に近付いてくる足音を感じて、それが丁度目の前へ。真隣、近く、部屋の前。
俺は、唐揚げは、一つ声を上げた。
彼へと聞こえるように、不穏にも唐突に。)
「誰か居るのか?」
【みかんちゃん】
一つの部屋の前を通り過ぎようとしたとき聞こえた声。感じた気配に振り返り、その場で立ち止まった。静寂は嫌に耳鳴りを五月蝿くして通り抜ける。
嗚呼誰か人が居たみたいだと、私ならば驚かねばならないこの状況に驚くことも出来ず。
暫し思考するようにするフリをして、ぼんやり立ち尽くしていた。修正と訂正と廃棄と放棄全て繰り返して蓋をしてからそれからようやく口は動く。
「…──誰かしら?」
発した声が空気を震わす。
上手く言葉が紡げたかは定かではないけれど、きっと掠れていただろう。
ならばちゃんと紡げたといえる。
声を発してみて、それからはちゃんと蓋も出来た。
扉に手をかけようとして躊躇って手を引っ込めて少しだけ後退り。
「誰か、いるなら…ねぇ?開けて頂戴よ?」
怯えた口調に何処か怖々と切羽詰まった声色を交えてみればそれはもう紛れもなく私の声でありまして。
【唐揚げ食べたい】
「誰?…愚問だね。
お前と俺は出会ったことがあるだろ?」
(なんて、意地悪に。揶揄っているわけでも無ければ、嘘も言っておらず。
そう、自分と彼は出会ったことがある。一度、このゲームが始まる前に。
嗚呼、なんで姿を見ていないのに分かるかって?…───そりゃあ、話し方だ。男声で、その女口調は生憎一人しか知らないもので。
素直に"唐揚げ食べたい"であると言えば良いものを、彼のことを探りたかったからとこんなまどろっこしいコトを言って。)
「こんな煽るようなことをやっている人間が誰か知りたいなら、お前が開ければいい。
鍵は開いてるから、すぐにでも開けられる。」
(と、冷淡に。
声を変えたりはしていないとは言え、彼と出会った時よりか幾分かテンションは落ちている。
もしあの高いテンションの状態での声を覚えているのならば、"唐揚げ食べたい"であると判別するのには些か時間が掛かるかもしれない。
いや、というより。
別に分かっていても構わない。扉を開けられても構わない。
ただ相手がどういう反応をするか気になった。
…そして、"開ける勇気のある者"か"開けない臆病者"かを知りたかった。
嗚呼、別に。臆病者が悪いとは言わない。勇敢すぎるのも考えものだ。
俺だって、この状況になったら開けるわけない。)
【みかんちゃん】
「──…」
扉の向こうに見えない誰かが待っている。
手招きする誰かが待っている。
無知で開けたあの扉と同じ匂いがした。
ならば私はあのときの私であらねばならないと、恐る恐る手を掛けて、片手でポケットの中にあるモノを手にした。
恐怖の感情にはとっくに蓋をしてしまっていたのだけれど。
それは自分であって私ではない。
私、いや、自分も同じか。
時々わからなくなる。
嘘味の飴を舐めているようなざらついた気持ち。
それでも警鐘を鳴らようなは心臓の音は私のものであり、それは恐怖ととってもいいのかもしれない。
そう、恐怖と捉えておこう。
きっと病院だから、こうも記憶が混濁するのだろうと知らないフリを続けよう。知ったかぶりを続けなくてはならない。
手をかけたその扉を、勢いよく開けて放った。
片手に持つソレをいつでも取り出せるように構えて。
【唐揚げ食べたい】
「 」
(ドタドタ、ドタ。地面が、床が無機質な音を立て。
足音であると、そう分かるだろう。
部屋の中のものが歩いているのだろうと、そう分かるだろう。
暫くし、その音は突如止むこととなる。
下手な準備を終えたということか、何なのか。急に動き始め急に動きを止める、嵐のような。
それは最早不気味の域で───…病院の雰囲気も相成り、それはホラーゲームを彷彿とさせている。
もっとも、そんな摩訶不思議なものでもないが。)
ギギ、バタッ────
(そう勢いを立てて開いた扉。
その先に見えるのは、ただの病室。
そう、唯の。
誰も居ない、病室だ。
物音一つしない、彼の息だけが木霊するような部屋。
今迄話していた、居たはずの人間の痕跡も、何もなく。
乱雑する廃病室には、ベッドやらが置いてあるが。
目を惹くものといえば、やはりロッカーか。)
【みかんちゃん】
音はしていた。
雑音。
声はしていた。
騒音。
それら全て扉が空いたときには消えていて、何処までも何処までも閑散とした空間。
真っ赤な空間。
──訂正、真っ白な空間が広がっていた。
病室に設置された洗面台に取り付けられた鏡。
そこに映る姿に目をやった。
そこには紛れもない自分が居て、あのときと変わらない自分がそこに居て、
なんで笑っていたのか、あのときも笑っていたけれど。
「──っ」
誰が笑っていた?
違う、多分誰かが笑っていた。
怖い、怖い怖い怖い怖いだけだ私は。
あのときとは違う。手に持つソレも、今いる私も全て全て。
深く、息を吐いた。
笑っていたのはきっと虚像だ。
恐怖の先に見えた虚像。
「──ねぇ、誰なのよ…ほら、ねえ?悪趣味なことはよして頂戴よ?」
踏み込むことはせず、その場で声を発す。
この空間に踏み込めない。
どうしても、病室という空間には踏み込みたくなかった。
【唐揚げ食べたい】
(居たはずのそれは、何処にもおらず。
泡沫のように、消えており。
幻か。
──────否、唯の遊戯(トリック)。
嗚呼、そういえば。
×××があった時、あの誰かさんも気が付いた時には消えていた。
逃げるように、否。実際に逃げ消えていたな、と。
まあ、そんなこと今はどうでもよくて。
ふと弱い風に吹かれ。ヒラリと、何かが落ちる。白い布、の切れ端だろうか。ヨロヨロとした、シワだらけのもの。
何の変哲もない唯の小さな布だ。
───血であろう紅い文字で、"ロッカー"と書かれていること以外は。)
【みかんちゃん】
ひらりと落ちたそれにビクリと肩を揺らした。
身体中の神経がその部屋に集中していたからか、それとも他のことを考えていたからか声も出さず驚いた。
この先に踏み込むのは、病室に踏み込むのは駄目なのに。
此処は彼処ではないのに、この先に踏み込みたくないのに。
視線はそのハンカチから外れることはなく。
こんなときにハンカチ落としなんて遊びを思い出してしまうのも、きっと思考を誤魔化すためでしょう。
恐怖と、それに期待する誰かが、背中を、押した。
あの骸のような目を思い出す。
[あなたが死ねば私も死ねるのに]
踏み込んだ先、落ちているそれを見る。
白いハンカチに赤い血。
[あなたのせいで私は死ねない]
病室に、鳴り響くはずもない心電計の音。
否、鳴ってなどいない。鳴るはずもないのだから。
鏡を見ると××が言った。
[ロッカーを開ければいいのよ。]
××が無邪気に笑ってロッカーを指さした。
上がる心拍数と合わせるように吐き出す呼吸。
見えないフリ気づかないフリ知らないフリ。
目を離した鏡。
視界の端で口を[い]のカタチに開けて私に言っていた。
それも聞こえないフリをして、ロッカーを開けてみた。
【唐揚げ食べたい】
ガタッ、バタン
(何もない場所、静寂な場所。
その無音を掻き消すように、音を鳴らしては開かれたロッカー。
そこに、
そこにいるのは。
──────無。虚無。虚空。
何もない、空っぽのロッカー。
嗚呼、まるで。
────誰かの心のようだね、■■■?
その声は、聞き覚えがあった。
嫌いな、大嫌いな、今にも消してしまいたいモノ。)
「そこに俺は居ないよ」
(そう一言上げて、突如として背後から話しかけ。
軽い、答え合わせをしよう。
何処に隠れて居たのか?簡単、ベットの下。
なぜ紙は上から降ってきた?簡単、壊れた照明の上に置いたのだ。
じゃあ、その文字は?
──────右手を見れば、分かるだろう?
右手からは血が垂れて居た。
からんからん、そう音が鳴っては左手から鉄が落ちる。…否、それはメス。
この悪趣味で、不気味な"かくれんぼ"。
君はどうやら、間違ってしまったみたいだね。)
「こんばんは、みかんちゃん。」
【みかんちゃん】
「う、あ────」
声に対して振り替えるまでワンテンポ遅れた。
鳴り止まぬ心音と背中を伝う冷や汗に笑顔を作ろうとしても痙攣するように引き攣って上手く笑えなかった。
そこに居た人物は紛れもなく見覚えのある彼であり、××とは違う。
違うのだけれど、重なって見えたのはこの空間のせいで。
……───××って誰?
口は動かず、代わりに視線だけ動かしてその手に流れる血を見ていた。
あ。
顔が歪んで、それに気づいて咄嗟に両手で顔を覆い隠す。
動悸が、吐き気が、目眩が、思考がぐるぐるぐるぐる気持ち悪い。耳鳴りが五月蝿い。
──………
そのままその場に蹲った。
【唐揚げ食べたい】
「大丈夫?気分でも悪い?」
(意地悪な笑み。嗚呼…不快、不快、不快。
その原因は自分に有り、自分がこんな悪趣味なことをしなければ。…彼はこうにはならなかったのに、まるで。
自分は何も悪いことはしていないと。
自分はただその場に居合わせた傍観者だと。
そう言うように。ニィ、と。口角を上げては。
傍らのベッドシーツを掴んで、自身の隠れていたベッドに座り込んだ。)
「まあそんな怖がらないでよ、ねぇ…?」
(きっと今の表情は。
自分でも想像出来ないくらい、不気味なほどに微笑んでいるのだと思う。
嗚呼、不味い。
嫌いなのに。
───のようにはなりたくはないのに。
笑い嗤い微笑い哂い破顔い咲い、笑え。
普通に、俺は普通の人間なのだから。
唯の被害者だから。
×××をしたのは、───なのに。
だから、だから。
咲えなくても、笑ってみせてよ。
ねぇ、"僕"は元気だからさ────…。)
【みかんちゃん】
目を閉じれば目を開いていれば何もかも光景が張り付いてこびりついてこびりついて流れても洗い流しても流れないその思い出は柔らかで暖かく冷たくて冷酷で穏やかで気持ち悪くて心地よくてみんなみんなみんかみんなみんなみんな消えた消えてしまった記憶。
蓋をしろ。やい、蓋をしてしまえ。
ほら、蓋をしろ蓋をしろ蓋をしろ蓋をしろ蓋をしてお願いだから蓋をしなくちゃ…
笑え。
大丈夫。
いつも通り、あなたの分も私は笑って生きます。
あなたのために笑います。
今日も今日とて元気です。
今日この頃笑いが止まりません今日この頃。
[死んでしまえ]
いいえ、死ねません。
あなたを生かすために私は生きます。
訂正、私が生きるためにあなたを生かします。
その蓋には鍵がかかっていますから、ご安心を。
「────あぁ、うん。大丈夫。ちょっと取り乱したみたいね…」
顔を上げて笑う。
次は穏やかに、ほら、朗らかに笑えていた。
【唐揚げ食べたい】
「そう、何も無いならいいんだけどね。」
(何も無い。取り乱しただけ。
だけ、だと割り切ってしまえばそれで終わり。
どれだけトラウマを抉られて、絶望し慌て叫んで狂っても。…───発狂した"だけ"だと。
まあ、そんなもの。その程度のもの。
俺には心を読む力なんて無いのだから、彼の心内なんて知らないけれど。
彼が言うなら、取り乱しただけなのだろう。
じゃあ、これで────なんて。
こんなにも悪趣味なコトを続けた人間が、これで終わらせるわけないだろう?
少し、探りを入れてみたっていいじゃないか。)
「………にしても…この仕掛け、そんなに取り乱すかなぁ…?
もしかして何かあった?
例えば───…トラウマを思い出した、とか。」
(意味深気に、そう尋ね。
その例えを出したのは、"自分がそう"だからか。ある種の同士を見つけたいという深層心理からか、それとも別の理由か。
まあ、トラウマの恐怖というのは知っているつもりだ。だからと言って、詮索を辞める理由にはならない。
嗚呼、人の気持ちを考えられない悪い子ね。
でも、それは貴方も同じでしょう。
此処に居る人全員、自分の事で精一杯だもの。
それは、俺も。彼もきっと同じ。
自分と、大切な人の事しか考えられない醜い子。)
【みかんちゃん】
「──トラウマ?やぁね、
[そんなもの]ないわよ。」
なんの冗談?とでもいうようにけらりと笑って応える。
先刻取り乱した人間とは思えないほどあっさりと。
トラウマ?
トラウマではない。
あれはトラウマなんかではなく、夢なのよ。
これは夢ではなく現実だけれど。
だってアレは実際に存在しないもの。
なんて蓋をしてしまえば切り替えるのも簡単なもので。世界の一部分として歯車のように廻ることなんてとうに慣れている。
少しだけ取り乱したのは、本当に、
何故でしょうね?
なんて疑問が浮かぶくらいには。
だって、そんなものに縛られる暇も自分にはありはしないのだから。
誰かのために生きるのが私なのだから。
訂正も修正ももう必要ない。
心音計の音は未だ鼓膜の内側で鳴り響いてはいたけれど、それは聞こえない。
「それよりあなたは何がしたかったの?」
今、何がしたかったのか?
そんな意味もあったけれど、それ以上根本的な意味で。
これまで、何をしていたの?
この先、何がしたいの?
なんて。
アホみたいに短絡的な言葉を投げて、私としての私は笑うのだ。
【唐揚げ食べたい】
「へえ?違うんだ。
…────そりゃ、素敵だねぇ。」
(なんて、皮肉げに。
誰かに似たのか、勝手に歪んだのか。
なぁ、どっちなんだい?
─────あは、残念だけど。
それがどちらでもないんだよ、■■■。
あら、そう?それは愉快だね。
脳内会話。相手は誰も居ない。脳内で作られたもう一人の■■■。
それは虚像、それは人形。彼の意のままに操られ会話する、人でもない何か。
全く、こうさせたのは誰の所為だろうね。
分かっている質問を、分からないフリをして。
必死に足掻いて掻き消してひた隠して、見えないように繕って。
その結果が、これ。)
「何がしたかった、って。
そりゃ、────何がしたかったんだろうなァ…
んふ、"かくれんぼ"かな?」
(かくれんぼ。
10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、数字を数えて。
"もういいかい?"
"まーだだよ"
されども鬼は待ってくれず。
見つかっちゃって、さあおしまい。
でも、今回は。
どうやら見つからずに済んだようだね?
だって、彼が。…──騙されて、くれたんだもの。)
「君は何しに此処に来たの?」
【みかんちゃん】
「私は、」
何をしに此処にきたのか。
分からなかった。
多分それは閉じた蓋の向こうにあるのだけれど。
あれ、もう狂ってる?
鏡を見ていた。
彼という虚像を見ていた。
その虚像は自分と似ていた。
その自分は虚ろで、相も変わらず、
愛も分からず醜い顔して笑っている。
似ていて、それでいて私とは違っていて。
笑顔は塗り固めたまま。
吐き出しそうになる苦さに喉がイガイガしたけれど、それすら飲み込んで。
「踊りにきた……ただ、それだけ」
騙されて信用して手を伸ばして誰かを生かして私は死ぬために踊らされにきた。
なんて、悲劇の舞台に立った哀れな役者のように嗤った。
「悪役が死のうとも私はそれに手を伸ばすの。見ないふりして。聞こえないふりして。私が死んで。気づかないふりして。」
それで、おわり。
【唐揚げ食べたい】
「踊りにきた?
────…変なことを言う人もいるんだね。」
(変なことじゃないことは分かっているけれども。
でも、知らないフリをした。見ないフリをした。
ただの傍観者のように。第三者のように。
アイツら、コイツら、それは誰だ?
嗚呼、ああ、知らない。俺は私は僕は知らない。
知らないんだけど。
全ての行動が、自分の何処かの誰かに似てる気がして気が散るんだ。
全て見られている気がして、監視されている気がして、不快不快誠に不快。
変なこと、だなんて彼の言葉を割り切って見せても。
結局何も変わらない。)
「演者、役者。操り人形。
果たして、どれかな?踊り子、かな?
お前のことなんて何も分からないけれど。分かる気がするよ、少しだけ。
ああ、いや。分からないな、やっぱり。」
(────…まあ、フェイクかもしれないけど。
だなんて、もう。聞き飽きたでしょう?皆さん。
独り言のようにパラリ、と口を巻けば。戯言虚言譫言、ご唱和ください皆々様方。やっぱり辞めましょう、不謹慎。
嗚呼、皆して壊れていく。それを眺めている。
俺が壊れるわけないでしょう。もう壊れているのだから。
それを見て楽しんでいるのは、少しだけ罪悪感があるな。でも、もう戻れない。戻る気もない、全て全て全て。
八つ当たりで、全部ぶっ壊れてしまえ。)
「…やっぱり、お前は何か隠してる気がするよ。」
【みかんちゃん】
「さぁ…どれかしら?」
全部と言ったら笑う?
誰が笑うのか。誰が笑うものか。
いや、きっと誰でもない誰かが誰かと一緒に手を叩いて笑うのだろう。
演劇って、サーカスって、人形劇って、
そんなものでしょうから。
胡散臭い?
やぁね、あなたも胡散臭くて反吐が出る。
ああ、いや、うん、あなたに言ったんじゃないのだけれど、あなたに言ったことにしておこう。
俄然、貼り付けた笑顔は仏の微笑みとでもいいましょうか。自分を哀れんでいるわけではなくてね。
「隠していること、あるわよ?人間だもの。」
私は人間だもの。
人形だけれど、機械だけれど、演者だけれど、
此処にいる私は間違いなく人間として今この歪な世界に当てはめられて動いているのだから、紛れもなく私は私であって。
「ただ、操る糸が欲しいのよ」
なんて強請ることすら出来るの。
誰をとか誰にとかではなく。
強請ることくらいは出来るのよ。
【唐揚げ食べたい】
「…まあ、そりゃ。…俺にもあるくらいだから、誰にもあるだろうさ。」
("俺にも"なんて随分謙虚なことを。そんなに自分の隠し事がちっぽけなことか?
…────嗚呼、いや。ちっぽけなことだろうさ。他人にとっては。今となっては。
もう、砂のようなもの。
でも、私は。僕は、俺は。…自分にとっては、紛れも無く。それは、永遠に秘密にしておきたいもので──────嗚呼、なんて愚かなんでしょう。
でも、それが真実。紛い物じゃなくて、お目汚しじゃなくて、真実。
じゃあ、もっと。───…惨くて、酷じゃないか。)
「操る糸?」
(一言、聞き返す。繰り返すように、巻き戻るように。
糸、糸。
糸なんてすぐに切れてしまうのに、どうしてそんなものを強請っているの?
嗚呼、俺には分からない。蜘蛛の糸の如く、希望溢れ、そして堕とす。
そんな、悪魔の趣味だろう?
────さあ、私にも分からないわ。
自問自答のようで、それは確かに違う。二重人格のようで、それは確かに違う。
空想上の生き物が彼の中には居て、それと対話。
生き物は、元々ココロには居なかったのに。いつからか、生まれてしまった善良なもの。
その"本人"も、"本体"も、今はすぐそばに居ないのに。
"糸が欲しい"と誰かが云う
支配と欲に塗れても
希望に打ち勝たんとするならば )
「─────私がなろう 糸になろう
…なんて、嘘ばっか。
操る糸を人はくれないから、自分で見つけるしかないだろうに。」
(嗚呼、何処かで聞いた言葉。子供の頃の、お遊び?
でも良い気分はしない。だって、俺を糸だった思った人間が。俺をこう、させたんだから。)
【みかんちゃん】
「見つけたよ、もう…ほら、わたし。」
今にも切れそうなアンバランスな糸がほら目の前に、なんて伽藍堂な笑みを彼に向けて。
彼を指さして。
自分を指さして。
鏡の向こうの、俺を指さして。
私は[嗤った]。
鏡の向こうで××も笑っていた。
やっぱり狂ってなんかいないのだと間違ってなどいないのだと肯定。
万歳三唱。万歳万歳万歳。
無邪気に××が手を広げていた。
これも全部全部あんたのせいだ。
指した指。
赤く血塗れたように染まっていた。
──気がした。
「私はあなたの糸に絡まりましょう。あなたが死ねば私は死にましょう。
なんて、メフィストの契約はお好きかしら?」
堕ちる糸を欲する朽ちる悪魔を落としてはくれまいか
なんて言ったのはきっと××の戯言ね。
【唐揚げ食べたい】
「受け入れようか。受け入れないか。
壊れるか。壊れないか。
──────嗚呼、考えるのなんて面倒。
受け入れないなら、受け入れさせてしまえ。
壊れないなら、壊してしまえ。
欲に従ってしまえ。
何をやっても良い、それが許される。
───だって、
"君はそういう運命だった"のだから 」
(独り言のように、ボコリと湧き出るように呟いて。
それは、それはきっと。アイツの言葉、耳から離れない、アイツの譫言。囈言。
無機質な自分の声は、まるで人形。
脳内で全て終えて居るのだから、その比喩も合っているかもね。
狂ってる、狂ってない。じゃあ何が狂ってる?
自分が正気なら相手は狂気で、自分が狂気なら相手は正気だろう。
自己肯定と自己否定の繰り返しで、最後にはココロすら壊れてしまった。
復讐に燃えるココロだけは一丁前で、他は最底辺のクソみたいな人間。
嗚呼、誰のことって?
…──────どうだか、俺には知らないな。)
「メフィスト?…嗚呼、好きだよ。
──でも、操られるのは嫌いだね。大嫌いだ。」
(だから、好きでも嫌いでも。足し算引き算して、結局ゼロ。無関心。
どうでもよくて、なんでもよくて。自分じゃなければ良いと、そう第三者に成り果てるんだ。
喰らって、騙されて、死んで、死んで、死んで。けれども今こうして生きている。
だけど、誰かを愛せたら。信じられたら。
操られても、裏切られても、全部なんでも良くなるんだろうなって。
契約とか、愛とか、楽しいんだろうなって。
目の前の人間を見下したような、酷い目、酷い心。…嗚呼、俺にもそんなのがあったんだ。)
【みかんちゃん】
「──残念。」
何が残念なのかはわからないけれど。
兎に角、笑っておいた。
彼という私のようなソレには興味があるのだけれど、私とは違う彼はソレには興味がなかったみたいで。
──…
吐き戻した感覚と似たソレにまた、蓋をした。
結局蓋をするだけで私は変わらないのだろうなとやけに感傷的な私が居た。
過去形だけれど、きっと居たのだろう。
紛れもない事実。
気づけばそこに鏡はなく、誰かという存在が目の前に貼り付けられていた。
ふらりと立ち上がるとぐんとその誰か、否彼との距離を詰め、その首に[スタンガン]をあてがった。
次には全て夢物語で終わるだろうと、そう願って。
彼にも蓋をすることにした。
【唐揚げ食べたい】
「…………」
(そう静かに彼を見守るような表情で、近くの自分のリュックを手に取る。そして、中を見て。
服の残骸とか、ビニール袋とかそういうので全部包み隠したその中身。
まるで、自分の心のよう。
全部隠して、思い出さないように必死にして。
彼は自分のような人間ではないけれど、自分と少しだけ似ていた。
でも、確実に違った。どこが、という質問は愚問。
似ているのも何もかもであり、違うのも何もかも。根本が似ていて根本が違う、そんな矛盾。
分からない、と。一言で言うならそれが適切か。
楽しかったが、詰まらなかった。楽しいものはあっても愉しいものなんてなくて、やっぱり心なんか空っぽなのだと。
そう考えて、そろそろ去ろうかと。
…──────その、刹那だった。きっと、何かに気を取られていたんだと思う。)
「なッ──────」
(彼が近付いてきて、咄嗟にリュックに手を伸ばし。
中を見ていたものだから、チャックは開いていたけれど。
丁重に奥の奥に、バレないようにしまっていたのが悪手だった。
結局。
作ったモノも出せず、提供されたモノを出せず。
ただ電気の振動に狩られて、意識は一瞬の間に混濁した。
嗚呼、だってまだ。
やることがあったのに。
なんで、なんでなの。
どうして、誰も彼も僕を狙うの?
どうして、どうして、なんでなんでなんで──。
"被害者は、どう足掻いても被害者だよ"
──────、プツ。)
【みかんちゃん】
「あーあ。」
力なく崩れた彼はそれこそ糸の切れた操り人形そのもので。
あのときと同じで、けどあのときとは違っていた。
嗚呼、違っていたとも。
手のひらを見て確認するように笑った。
…多分違う。
似ていた彼は多分違っていた。
被害者になりきれない加害者と。
加害者になりきれない被害者。
壊せ壊したくないなんて互いに知ったかぶって嘘を吐いて笑って軽蔑して。
虚像は結局自分ではないのだけれど。
そりゃそうよ。
だから蓋をしておいた。
足元に倒れた彼の傍、落ちたリュックを手に取るとその中からパッドを取り出して、
それだけ彼の傍に残して
立ち去る。
[あなたが死ねば私も死ねるのに]
そう言った××のいた病室を後して。
自分はのうのうと生きていく。
もう死んでるけど。
なんて笑う君を置いて生きていく。
植物のように水やり如雨露に縋る××は今日も明日も明後日も俺のために生きているのであって私のためには生きていないのだから。
あの骸に水をやるために、
何もかもに蓋をして、それを見ないふり気づかないふりして立ち去ろう。
勿論、
この歪な世界のことも。
【みかんちゃん】
協会の一帯を探しても彼は見つからず、火元に迂闊に近づけないまま。
捜索することを早々に諦めては協会に戻り
リュックに入れていた服に着替えてその場を跡にした。
色々と混乱しているはずの頭の中は意外にも冴えていて。
寧ろ冷静にどうしたものかと考える程度には頭が回っていた。
あのときに似ている。
なんてぼんやり朧気な記憶を辿って、
思考を放棄。
面倒なとき、考え事をするときは考えなければ気づけば全てことが進んでくれるから。
あのときと同じ、私は病院に居た。
正確には廃病院か。
ほのぼのとした月の光が白い壁を泛ばせて、嫌に青々と死人の顔を想起させた。
その病院へと踏み込む。
目を、思い出していた。
××の目がこっちを見ていた。
目なんか開かないはずだろう?
いや、いや、いや訂正。
──、修正。
此処は違う。此処に自分はいない。
…いるけれど。
それは私でしょう?
ポケットにいれたそれを上から触れて、落ち着けというように息を吐いた。
蓋の閉め方は知っている。
大丈夫。
奥へと進む。
【唐揚げ食べたい】
(ぐるぐるぐる、ぐるるぐるり。
思考が巡る音がする。音なんて無いのに、そんな幻聴が聞こえる。
病院に特に思い入れはないが、彼の一足先に病院に入っていた唐揚げはとある病室に居た。
これからどうしようか、これから何をしようか、なんて考えて。
ぎゅるり、と俺は眼を開く。その目で見る人間など今は居ないわけだが、そんなことはどうでもよくて。
如何してこんな薄暗いところにいるんだって?それはとある作業の為さ。
誰にも見られたくない、ただの武器作成。弱い自分でも使えるような、そんなチャチな物。
察しの良い人間ならば、俺の持ち物を見て分かるだろう?)
「──────、あ」
(不意に、誰かの足音が聞こえた気がした。ううん、気の所為じゃなくてね。
こんな静かなところなんだから、その音が聞こえないわけがない。
作り終えたソレを、手探りでリュックへ隠すように入れて。
配られたアイテムを、一つ取り出してまた戻す。確認、ただの確認だ。
徐々に近付いてくる足音を感じて、それが丁度目の前へ。真隣、近く、部屋の前。
俺は、唐揚げは、一つ声を上げた。
彼へと聞こえるように、不穏にも唐突に。)
「誰か居るのか?」
【みかんちゃん】
一つの部屋の前を通り過ぎようとしたとき聞こえた声。感じた気配に振り返り、その場で立ち止まった。静寂は嫌に耳鳴りを五月蝿くして通り抜ける。
嗚呼誰か人が居たみたいだと、私ならば驚かねばならないこの状況に驚くことも出来ず。
暫し思考するようにするフリをして、ぼんやり立ち尽くしていた。修正と訂正と廃棄と放棄全て繰り返して蓋をしてからそれからようやく口は動く。
「…──誰かしら?」
発した声が空気を震わす。
上手く言葉が紡げたかは定かではないけれど、きっと掠れていただろう。
ならばちゃんと紡げたといえる。
声を発してみて、それからはちゃんと蓋も出来た。
扉に手をかけようとして躊躇って手を引っ込めて少しだけ後退り。
「誰か、いるなら…ねぇ?開けて頂戴よ?」
怯えた口調に何処か怖々と切羽詰まった声色を交えてみればそれはもう紛れもなく私の声でありまして。
【唐揚げ食べたい】
「誰?…愚問だね。
お前と俺は出会ったことがあるだろ?」
(なんて、意地悪に。揶揄っているわけでも無ければ、嘘も言っておらず。
そう、自分と彼は出会ったことがある。一度、このゲームが始まる前に。
嗚呼、なんで姿を見ていないのに分かるかって?…───そりゃあ、話し方だ。男声で、その女口調は生憎一人しか知らないもので。
素直に"唐揚げ食べたい"であると言えば良いものを、彼のことを探りたかったからとこんなまどろっこしいコトを言って。)
「こんな煽るようなことをやっている人間が誰か知りたいなら、お前が開ければいい。
鍵は開いてるから、すぐにでも開けられる。」
(と、冷淡に。
声を変えたりはしていないとは言え、彼と出会った時よりか幾分かテンションは落ちている。
もしあの高いテンションの状態での声を覚えているのならば、"唐揚げ食べたい"であると判別するのには些か時間が掛かるかもしれない。
いや、というより。
別に分かっていても構わない。扉を開けられても構わない。
ただ相手がどういう反応をするか気になった。
…そして、"開ける勇気のある者"か"開けない臆病者"かを知りたかった。
嗚呼、別に。臆病者が悪いとは言わない。勇敢すぎるのも考えものだ。
俺だって、この状況になったら開けるわけない。)
【みかんちゃん】
「──…」
扉の向こうに見えない誰かが待っている。
手招きする誰かが待っている。
無知で開けたあの扉と同じ匂いがした。
ならば私はあのときの私であらねばならないと、恐る恐る手を掛けて、片手でポケットの中にあるモノを手にした。
恐怖の感情にはとっくに蓋をしてしまっていたのだけれど。
それは自分であって私ではない。
私、いや、自分も同じか。
時々わからなくなる。
嘘味の飴を舐めているようなざらついた気持ち。
それでも警鐘を鳴らようなは心臓の音は私のものであり、それは恐怖ととってもいいのかもしれない。
そう、恐怖と捉えておこう。
きっと病院だから、こうも記憶が混濁するのだろうと知らないフリを続けよう。知ったかぶりを続けなくてはならない。
手をかけたその扉を、勢いよく開けて放った。
片手に持つソレをいつでも取り出せるように構えて。
【唐揚げ食べたい】
「 」
(ドタドタ、ドタ。地面が、床が無機質な音を立て。
足音であると、そう分かるだろう。
部屋の中のものが歩いているのだろうと、そう分かるだろう。
暫くし、その音は突如止むこととなる。
下手な準備を終えたということか、何なのか。急に動き始め急に動きを止める、嵐のような。
それは最早不気味の域で───…病院の雰囲気も相成り、それはホラーゲームを彷彿とさせている。
もっとも、そんな摩訶不思議なものでもないが。)
ギギ、バタッ────
(そう勢いを立てて開いた扉。
その先に見えるのは、ただの病室。
そう、唯の。
誰も居ない、病室だ。
物音一つしない、彼の息だけが木霊するような部屋。
今迄話していた、居たはずの人間の痕跡も、何もなく。
乱雑する廃病室には、ベッドやらが置いてあるが。
目を惹くものといえば、やはりロッカーか。)
【みかんちゃん】
音はしていた。
雑音。
声はしていた。
騒音。
それら全て扉が空いたときには消えていて、何処までも何処までも閑散とした空間。
真っ赤な空間。
──訂正、真っ白な空間が広がっていた。
病室に設置された洗面台に取り付けられた鏡。
そこに映る姿に目をやった。
そこには紛れもない自分が居て、あのときと変わらない自分がそこに居て、
なんで笑っていたのか、あのときも笑っていたけれど。
「──っ」
誰が笑っていた?
違う、多分誰かが笑っていた。
怖い、怖い怖い怖い怖いだけだ私は。
あのときとは違う。手に持つソレも、今いる私も全て全て。
深く、息を吐いた。
笑っていたのはきっと虚像だ。
恐怖の先に見えた虚像。
「──ねぇ、誰なのよ…ほら、ねえ?悪趣味なことはよして頂戴よ?」
踏み込むことはせず、その場で声を発す。
この空間に踏み込めない。
どうしても、病室という空間には踏み込みたくなかった。
【唐揚げ食べたい】
(居たはずのそれは、何処にもおらず。
泡沫のように、消えており。
幻か。
──────否、唯の遊戯(トリック)。
嗚呼、そういえば。
×××があった時、あの誰かさんも気が付いた時には消えていた。
逃げるように、否。実際に逃げ消えていたな、と。
まあ、そんなこと今はどうでもよくて。
ふと弱い風に吹かれ。ヒラリと、何かが落ちる。白い布、の切れ端だろうか。ヨロヨロとした、シワだらけのもの。
何の変哲もない唯の小さな布だ。
───血であろう紅い文字で、"ロッカー"と書かれていること以外は。)
【みかんちゃん】
ひらりと落ちたそれにビクリと肩を揺らした。
身体中の神経がその部屋に集中していたからか、それとも他のことを考えていたからか声も出さず驚いた。
この先に踏み込むのは、病室に踏み込むのは駄目なのに。
此処は彼処ではないのに、この先に踏み込みたくないのに。
視線はそのハンカチから外れることはなく。
こんなときにハンカチ落としなんて遊びを思い出してしまうのも、きっと思考を誤魔化すためでしょう。
恐怖と、それに期待する誰かが、背中を、押した。
あの骸のような目を思い出す。
[あなたが死ねば私も死ねるのに]
踏み込んだ先、落ちているそれを見る。
白いハンカチに赤い血。
[あなたのせいで私は死ねない]
病室に、鳴り響くはずもない心電計の音。
否、鳴ってなどいない。鳴るはずもないのだから。
鏡を見ると××が言った。
[ロッカーを開ければいいのよ。]
××が無邪気に笑ってロッカーを指さした。
上がる心拍数と合わせるように吐き出す呼吸。
見えないフリ気づかないフリ知らないフリ。
目を離した鏡。
視界の端で口を[い]のカタチに開けて私に言っていた。
それも聞こえないフリをして、ロッカーを開けてみた。
【唐揚げ食べたい】
ガタッ、バタン
(何もない場所、静寂な場所。
その無音を掻き消すように、音を鳴らしては開かれたロッカー。
そこに、
そこにいるのは。
──────無。虚無。虚空。
何もない、空っぽのロッカー。
嗚呼、まるで。
────誰かの心のようだね、■■■?
その声は、聞き覚えがあった。
嫌いな、大嫌いな、今にも消してしまいたいモノ。)
「そこに俺は居ないよ」
(そう一言上げて、突如として背後から話しかけ。
軽い、答え合わせをしよう。
何処に隠れて居たのか?簡単、ベットの下。
なぜ紙は上から降ってきた?簡単、壊れた照明の上に置いたのだ。
じゃあ、その文字は?
──────右手を見れば、分かるだろう?
右手からは血が垂れて居た。
からんからん、そう音が鳴っては左手から鉄が落ちる。…否、それはメス。
この悪趣味で、不気味な"かくれんぼ"。
君はどうやら、間違ってしまったみたいだね。)
「こんばんは、みかんちゃん。」
【みかんちゃん】
「う、あ────」
声に対して振り替えるまでワンテンポ遅れた。
鳴り止まぬ心音と背中を伝う冷や汗に笑顔を作ろうとしても痙攣するように引き攣って上手く笑えなかった。
そこに居た人物は紛れもなく見覚えのある彼であり、××とは違う。
違うのだけれど、重なって見えたのはこの空間のせいで。
……───××って誰?
口は動かず、代わりに視線だけ動かしてその手に流れる血を見ていた。
あ。
顔が歪んで、それに気づいて咄嗟に両手で顔を覆い隠す。
動悸が、吐き気が、目眩が、思考がぐるぐるぐるぐる気持ち悪い。耳鳴りが五月蝿い。
──………
そのままその場に蹲った。
【唐揚げ食べたい】
「大丈夫?気分でも悪い?」
(意地悪な笑み。嗚呼…不快、不快、不快。
その原因は自分に有り、自分がこんな悪趣味なことをしなければ。…彼はこうにはならなかったのに、まるで。
自分は何も悪いことはしていないと。
自分はただその場に居合わせた傍観者だと。
そう言うように。ニィ、と。口角を上げては。
傍らのベッドシーツを掴んで、自身の隠れていたベッドに座り込んだ。)
「まあそんな怖がらないでよ、ねぇ…?」
(きっと今の表情は。
自分でも想像出来ないくらい、不気味なほどに微笑んでいるのだと思う。
嗚呼、不味い。
嫌いなのに。
───のようにはなりたくはないのに。
笑い嗤い微笑い哂い破顔い咲い、笑え。
普通に、俺は普通の人間なのだから。
唯の被害者だから。
×××をしたのは、───なのに。
だから、だから。
咲えなくても、笑ってみせてよ。
ねぇ、"僕"は元気だからさ────…。)
【みかんちゃん】
目を閉じれば目を開いていれば何もかも光景が張り付いてこびりついてこびりついて流れても洗い流しても流れないその思い出は柔らかで暖かく冷たくて冷酷で穏やかで気持ち悪くて心地よくてみんなみんなみんかみんなみんなみんな消えた消えてしまった記憶。
蓋をしろ。やい、蓋をしてしまえ。
ほら、蓋をしろ蓋をしろ蓋をしろ蓋をしろ蓋をしてお願いだから蓋をしなくちゃ…
笑え。
大丈夫。
いつも通り、あなたの分も私は笑って生きます。
あなたのために笑います。
今日も今日とて元気です。
今日この頃笑いが止まりません今日この頃。
[死んでしまえ]
いいえ、死ねません。
あなたを生かすために私は生きます。
訂正、私が生きるためにあなたを生かします。
その蓋には鍵がかかっていますから、ご安心を。
「────あぁ、うん。大丈夫。ちょっと取り乱したみたいね…」
顔を上げて笑う。
次は穏やかに、ほら、朗らかに笑えていた。
【唐揚げ食べたい】
「そう、何も無いならいいんだけどね。」
(何も無い。取り乱しただけ。
だけ、だと割り切ってしまえばそれで終わり。
どれだけトラウマを抉られて、絶望し慌て叫んで狂っても。…───発狂した"だけ"だと。
まあ、そんなもの。その程度のもの。
俺には心を読む力なんて無いのだから、彼の心内なんて知らないけれど。
彼が言うなら、取り乱しただけなのだろう。
じゃあ、これで────なんて。
こんなにも悪趣味なコトを続けた人間が、これで終わらせるわけないだろう?
少し、探りを入れてみたっていいじゃないか。)
「………にしても…この仕掛け、そんなに取り乱すかなぁ…?
もしかして何かあった?
例えば───…トラウマを思い出した、とか。」
(意味深気に、そう尋ね。
その例えを出したのは、"自分がそう"だからか。ある種の同士を見つけたいという深層心理からか、それとも別の理由か。
まあ、トラウマの恐怖というのは知っているつもりだ。だからと言って、詮索を辞める理由にはならない。
嗚呼、人の気持ちを考えられない悪い子ね。
でも、それは貴方も同じでしょう。
此処に居る人全員、自分の事で精一杯だもの。
それは、俺も。彼もきっと同じ。
自分と、大切な人の事しか考えられない醜い子。)
【みかんちゃん】
「──トラウマ?やぁね、
[そんなもの]ないわよ。」
なんの冗談?とでもいうようにけらりと笑って応える。
先刻取り乱した人間とは思えないほどあっさりと。
トラウマ?
トラウマではない。
あれはトラウマなんかではなく、夢なのよ。
これは夢ではなく現実だけれど。
だってアレは実際に存在しないもの。
なんて蓋をしてしまえば切り替えるのも簡単なもので。世界の一部分として歯車のように廻ることなんてとうに慣れている。
少しだけ取り乱したのは、本当に、
何故でしょうね?
なんて疑問が浮かぶくらいには。
だって、そんなものに縛られる暇も自分にはありはしないのだから。
誰かのために生きるのが私なのだから。
訂正も修正ももう必要ない。
心音計の音は未だ鼓膜の内側で鳴り響いてはいたけれど、それは聞こえない。
「それよりあなたは何がしたかったの?」
今、何がしたかったのか?
そんな意味もあったけれど、それ以上根本的な意味で。
これまで、何をしていたの?
この先、何がしたいの?
なんて。
アホみたいに短絡的な言葉を投げて、私としての私は笑うのだ。
【唐揚げ食べたい】
「へえ?違うんだ。
…────そりゃ、素敵だねぇ。」
(なんて、皮肉げに。
誰かに似たのか、勝手に歪んだのか。
なぁ、どっちなんだい?
─────あは、残念だけど。
それがどちらでもないんだよ、■■■。
あら、そう?それは愉快だね。
脳内会話。相手は誰も居ない。脳内で作られたもう一人の■■■。
それは虚像、それは人形。彼の意のままに操られ会話する、人でもない何か。
全く、こうさせたのは誰の所為だろうね。
分かっている質問を、分からないフリをして。
必死に足掻いて掻き消してひた隠して、見えないように繕って。
その結果が、これ。)
「何がしたかった、って。
そりゃ、────何がしたかったんだろうなァ…
んふ、"かくれんぼ"かな?」
(かくれんぼ。
10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、数字を数えて。
"もういいかい?"
"まーだだよ"
されども鬼は待ってくれず。
見つかっちゃって、さあおしまい。
でも、今回は。
どうやら見つからずに済んだようだね?
だって、彼が。…──騙されて、くれたんだもの。)
「君は何しに此処に来たの?」
【みかんちゃん】
「私は、」
何をしに此処にきたのか。
分からなかった。
多分それは閉じた蓋の向こうにあるのだけれど。
あれ、もう狂ってる?
鏡を見ていた。
彼という虚像を見ていた。
その虚像は自分と似ていた。
その自分は虚ろで、相も変わらず、
愛も分からず醜い顔して笑っている。
似ていて、それでいて私とは違っていて。
笑顔は塗り固めたまま。
吐き出しそうになる苦さに喉がイガイガしたけれど、それすら飲み込んで。
「踊りにきた……ただ、それだけ」
騙されて信用して手を伸ばして誰かを生かして私は死ぬために踊らされにきた。
なんて、悲劇の舞台に立った哀れな役者のように嗤った。
「悪役が死のうとも私はそれに手を伸ばすの。見ないふりして。聞こえないふりして。私が死んで。気づかないふりして。」
それで、おわり。
【唐揚げ食べたい】
「踊りにきた?
────…変なことを言う人もいるんだね。」
(変なことじゃないことは分かっているけれども。
でも、知らないフリをした。見ないフリをした。
ただの傍観者のように。第三者のように。
アイツら、コイツら、それは誰だ?
嗚呼、ああ、知らない。俺は私は僕は知らない。
知らないんだけど。
全ての行動が、自分の何処かの誰かに似てる気がして気が散るんだ。
全て見られている気がして、監視されている気がして、不快不快誠に不快。
変なこと、だなんて彼の言葉を割り切って見せても。
結局何も変わらない。)
「演者、役者。操り人形。
果たして、どれかな?踊り子、かな?
お前のことなんて何も分からないけれど。分かる気がするよ、少しだけ。
ああ、いや。分からないな、やっぱり。」
(────…まあ、フェイクかもしれないけど。
だなんて、もう。聞き飽きたでしょう?皆さん。
独り言のようにパラリ、と口を巻けば。戯言虚言譫言、ご唱和ください皆々様方。やっぱり辞めましょう、不謹慎。
嗚呼、皆して壊れていく。それを眺めている。
俺が壊れるわけないでしょう。もう壊れているのだから。
それを見て楽しんでいるのは、少しだけ罪悪感があるな。でも、もう戻れない。戻る気もない、全て全て全て。
八つ当たりで、全部ぶっ壊れてしまえ。)
「…やっぱり、お前は何か隠してる気がするよ。」
【みかんちゃん】
「さぁ…どれかしら?」
全部と言ったら笑う?
誰が笑うのか。誰が笑うものか。
いや、きっと誰でもない誰かが誰かと一緒に手を叩いて笑うのだろう。
演劇って、サーカスって、人形劇って、
そんなものでしょうから。
胡散臭い?
やぁね、あなたも胡散臭くて反吐が出る。
ああ、いや、うん、あなたに言ったんじゃないのだけれど、あなたに言ったことにしておこう。
俄然、貼り付けた笑顔は仏の微笑みとでもいいましょうか。自分を哀れんでいるわけではなくてね。
「隠していること、あるわよ?人間だもの。」
私は人間だもの。
人形だけれど、機械だけれど、演者だけれど、
此処にいる私は間違いなく人間として今この歪な世界に当てはめられて動いているのだから、紛れもなく私は私であって。
「ただ、操る糸が欲しいのよ」
なんて強請ることすら出来るの。
誰をとか誰にとかではなく。
強請ることくらいは出来るのよ。
【唐揚げ食べたい】
「…まあ、そりゃ。…俺にもあるくらいだから、誰にもあるだろうさ。」
("俺にも"なんて随分謙虚なことを。そんなに自分の隠し事がちっぽけなことか?
…────嗚呼、いや。ちっぽけなことだろうさ。他人にとっては。今となっては。
もう、砂のようなもの。
でも、私は。僕は、俺は。…自分にとっては、紛れも無く。それは、永遠に秘密にしておきたいもので──────嗚呼、なんて愚かなんでしょう。
でも、それが真実。紛い物じゃなくて、お目汚しじゃなくて、真実。
じゃあ、もっと。───…惨くて、酷じゃないか。)
「操る糸?」
(一言、聞き返す。繰り返すように、巻き戻るように。
糸、糸。
糸なんてすぐに切れてしまうのに、どうしてそんなものを強請っているの?
嗚呼、俺には分からない。蜘蛛の糸の如く、希望溢れ、そして堕とす。
そんな、悪魔の趣味だろう?
────さあ、私にも分からないわ。
自問自答のようで、それは確かに違う。二重人格のようで、それは確かに違う。
空想上の生き物が彼の中には居て、それと対話。
生き物は、元々ココロには居なかったのに。いつからか、生まれてしまった善良なもの。
その"本人"も、"本体"も、今はすぐそばに居ないのに。
"糸が欲しい"と誰かが云う
支配と欲に塗れても
希望に打ち勝たんとするならば )
「─────私がなろう 糸になろう
…なんて、嘘ばっか。
操る糸を人はくれないから、自分で見つけるしかないだろうに。」
(嗚呼、何処かで聞いた言葉。子供の頃の、お遊び?
でも良い気分はしない。だって、俺を糸だった思った人間が。俺をこう、させたんだから。)
【みかんちゃん】
「見つけたよ、もう…ほら、わたし。」
今にも切れそうなアンバランスな糸がほら目の前に、なんて伽藍堂な笑みを彼に向けて。
彼を指さして。
自分を指さして。
鏡の向こうの、俺を指さして。
私は[嗤った]。
鏡の向こうで××も笑っていた。
やっぱり狂ってなんかいないのだと間違ってなどいないのだと肯定。
万歳三唱。万歳万歳万歳。
無邪気に××が手を広げていた。
これも全部全部あんたのせいだ。
指した指。
赤く血塗れたように染まっていた。
──気がした。
「私はあなたの糸に絡まりましょう。あなたが死ねば私は死にましょう。
なんて、メフィストの契約はお好きかしら?」
堕ちる糸を欲する朽ちる悪魔を落としてはくれまいか
なんて言ったのはきっと××の戯言ね。
【唐揚げ食べたい】
「受け入れようか。受け入れないか。
壊れるか。壊れないか。
──────嗚呼、考えるのなんて面倒。
受け入れないなら、受け入れさせてしまえ。
壊れないなら、壊してしまえ。
欲に従ってしまえ。
何をやっても良い、それが許される。
───だって、
"君はそういう運命だった"のだから 」
(独り言のように、ボコリと湧き出るように呟いて。
それは、それはきっと。アイツの言葉、耳から離れない、アイツの譫言。囈言。
無機質な自分の声は、まるで人形。
脳内で全て終えて居るのだから、その比喩も合っているかもね。
狂ってる、狂ってない。じゃあ何が狂ってる?
自分が正気なら相手は狂気で、自分が狂気なら相手は正気だろう。
自己肯定と自己否定の繰り返しで、最後にはココロすら壊れてしまった。
復讐に燃えるココロだけは一丁前で、他は最底辺のクソみたいな人間。
嗚呼、誰のことって?
…──────どうだか、俺には知らないな。)
「メフィスト?…嗚呼、好きだよ。
──でも、操られるのは嫌いだね。大嫌いだ。」
(だから、好きでも嫌いでも。足し算引き算して、結局ゼロ。無関心。
どうでもよくて、なんでもよくて。自分じゃなければ良いと、そう第三者に成り果てるんだ。
喰らって、騙されて、死んで、死んで、死んで。けれども今こうして生きている。
だけど、誰かを愛せたら。信じられたら。
操られても、裏切られても、全部なんでも良くなるんだろうなって。
契約とか、愛とか、楽しいんだろうなって。
目の前の人間を見下したような、酷い目、酷い心。…嗚呼、俺にもそんなのがあったんだ。)
【みかんちゃん】
「──残念。」
何が残念なのかはわからないけれど。
兎に角、笑っておいた。
彼という私のようなソレには興味があるのだけれど、私とは違う彼はソレには興味がなかったみたいで。
──…
吐き戻した感覚と似たソレにまた、蓋をした。
結局蓋をするだけで私は変わらないのだろうなとやけに感傷的な私が居た。
過去形だけれど、きっと居たのだろう。
紛れもない事実。
気づけばそこに鏡はなく、誰かという存在が目の前に貼り付けられていた。
ふらりと立ち上がるとぐんとその誰か、否彼との距離を詰め、その首に[スタンガン]をあてがった。
次には全て夢物語で終わるだろうと、そう願って。
彼にも蓋をすることにした。
【唐揚げ食べたい】
「…………」
(そう静かに彼を見守るような表情で、近くの自分のリュックを手に取る。そして、中を見て。
服の残骸とか、ビニール袋とかそういうので全部包み隠したその中身。
まるで、自分の心のよう。
全部隠して、思い出さないように必死にして。
彼は自分のような人間ではないけれど、自分と少しだけ似ていた。
でも、確実に違った。どこが、という質問は愚問。
似ているのも何もかもであり、違うのも何もかも。根本が似ていて根本が違う、そんな矛盾。
分からない、と。一言で言うならそれが適切か。
楽しかったが、詰まらなかった。楽しいものはあっても愉しいものなんてなくて、やっぱり心なんか空っぽなのだと。
そう考えて、そろそろ去ろうかと。
…──────その、刹那だった。きっと、何かに気を取られていたんだと思う。)
「なッ──────」
(彼が近付いてきて、咄嗟にリュックに手を伸ばし。
中を見ていたものだから、チャックは開いていたけれど。
丁重に奥の奥に、バレないようにしまっていたのが悪手だった。
結局。
作ったモノも出せず、提供されたモノを出せず。
ただ電気の振動に狩られて、意識は一瞬の間に混濁した。
嗚呼、だってまだ。
やることがあったのに。
なんで、なんでなの。
どうして、誰も彼も僕を狙うの?
どうして、どうして、なんでなんでなんで──。
"被害者は、どう足掻いても被害者だよ"
──────、プツ。)
【みかんちゃん】
「あーあ。」
力なく崩れた彼はそれこそ糸の切れた操り人形そのもので。
あのときと同じで、けどあのときとは違っていた。
嗚呼、違っていたとも。
手のひらを見て確認するように笑った。
…多分違う。
似ていた彼は多分違っていた。
被害者になりきれない加害者と。
加害者になりきれない被害者。
壊せ壊したくないなんて互いに知ったかぶって嘘を吐いて笑って軽蔑して。
虚像は結局自分ではないのだけれど。
そりゃそうよ。
だから蓋をしておいた。
足元に倒れた彼の傍、落ちたリュックを手に取るとその中からパッドを取り出して、
それだけ彼の傍に残して
立ち去る。
[あなたが死ねば私も死ねるのに]
そう言った××のいた病室を後して。
自分はのうのうと生きていく。
もう死んでるけど。
なんて笑う君を置いて生きていく。
植物のように水やり如雨露に縋る××は今日も明日も明後日も俺のために生きているのであって私のためには生きていないのだから。
あの骸に水をやるために、
何もかもに蓋をして、それを見ないふり気づかないふりして立ち去ろう。
勿論、
この歪な世界のことも。
ふ〇なっしー(1st)【DEAD END】-ヒガンバナ(11th)
【ヒガンバナ】
私は、中央エリアの停留所で、路面電車を待っていた。
幾ら焦ったとしても、限度はある。
体力の事も考えれば、こうして電車を使うのが一番なのだ。
来るのが遅くて、ちょっと苛々などはしていない。
「……トロンパ、か。」
誰だったのだろう、どんな奴だったのだろう。
今となってはもう、わからない。
【ふ〇なっしー】
「お隣しつれーい!」
といつの間にか居たふ○なっしー、相手が己のことを嫌っている事を知っていてわざと隣に座る
「やぁ!こんにちは……またあったね」
【ヒガンバナ】
「……どうした、雑魚。
私にゲームでも負けるような輩が、まだ用があるのか?」
……会いたくない奴ほど、頻繁に会う。
嫌な話だ。
取り敢えず、前回私はゲームで勝っているのだから、相手は雑魚で良いだろう。
【ふ〇なっしー】
「あらー?どうしたのー?カリカリしちゃってさぁ……××?」
煽るただそれだけ相手が雑魚と会うならこちらもそれ相応の対応をしよう
「ふふ……ゲームしようぜ……今度は逃げもしないぜぇ……負けた奴は…前と同じで大切な人を言う、今度はポーカーではなくジョーカー当てゲームだ、ルールは簡単だよ僕がシャッフルした53枚のトランプをばら撒く、地面に落ちたトランプからョーカーを当てるゲームさ」
ポーカーより簡単で単純だろ?って表情をしながらニヤニヤ笑う。
前は負けて逃げたが今回は逃げないでやろう
「ほら、ビキニマンって言う優しい奴も楽しかったって言ってたしあいごころちゃんも楽しいと言ってた(と思う)……結構君の為に考えてきたんだぜ?このゲーム」
と懐から出したトランプをシャッフルする、柄は髑髏、趣味が悪いがまぁ結構イカしてるトランプだと思う
【ヒガンバナ】
「……始めろ。
だが逃げたら……覚悟しろ。」
煽られるのは苛つくが、仕方ない。
私はベンチに座ったまま、相手に始めるように言った。
…………ジョーカー、か。
【ふ〇なっしー】
「さてんじゃ始めるねぇ〜……それ!!」
そう言うとカードをばら撒く、雪の上に落ちるカード。ドクロのどこにあるのかわかりやすいだろう。
表になったり裏になったりしているカードがある
「さぁ、53枚あるよ……あぁ、大丈夫、ジョーカーは抜いて他のカード差し込んでる訳では無いから安心してよ…」
ニコニコと笑う
【ヒガンバナ】
「ふむ…………」
取り敢えずは、一通り見て探し、ゆっくりと屈む。
……どうやら、裏の中に有るのだろうが。
「……捲っていい回数は?」
【ふ〇なっしー】
「んー、そうだね……何回でもいいよ〜、何回てまも……ね」
余裕そうな笑、
「さっさとめくれよ〜」
【ヒガンバナ】
「…………ふん。」
何回でも、か。
なら……一枚一枚捲っていく。
……これなら、必ず見つかる筈だが。
【ふ〇なっしー】
「あったー?」
ニコニコしながらヒガンバナがジョーカーを見つけるまで待つ
「まだかなぁ……」
まぁ、その"中"にはないんだが
【ヒガンバナ】
「……無い?どう言うことだ。」
……全部捲った、が。
ジョーカーが無い。
やはり、ずるでもしてたのか。
「……これは、どう言うことだ?」
【ふ〇なっしー】
「んー?僕はちゃんとばらまいたよ?ちゃんとね……カードの枚数ちゃんと数えてみてね……ちゃんとあるからさ」
ニコニコ笑う、まるで勝利を確信しているかのような表情。
「さて、………ジョーカーはその中のどれかな?」
【ヒガンバナ】
「…………。」
カードは、53枚……いや、ならある筈だ。
もう一度、全て捲ったカードを見つめる。
【ふ〇なっしー】
「おやおやぁ?すぐそこにあるじゃァないかぁ……ジョーカーのカードがさぁ…あれ?もしかして………見つけられないのかなぁ?僕に雑魚とか言ったのに…」
嗤う、嗤う
カードの中にジョーカーは必ずある、そうその中には無いが……この中にはある
「さぁて……そろそろ答え言うけど……いい?」
【ヒガンバナ】
「煩い!待っていろ!」
路面電車が来たらしいが、知った事か。
私は仕方なく、マーク毎に数字を順番に並べていく。
こうすれば、必ず見つかるはず。
【ふ〇なっしー】
「あれあれぇ?どうしたのかなぁ……余裕無さそうだけど……まぁ、その中には無いけどこの中にはちゃんとあるよ……というか無茶苦茶ヒント与えてるんだけど」
そう、ジョーカーはこの中にある、その中には無いがちゃんとある
「はぁ……もう答え言うよぉ〜?ジョーカーのカードは…僕でした〜」
と、両手を広げると同時に大量のジョーカーが落ちる、大量のジョーカーってなんだ……
「まぁ、今回は意地悪すぎたし……まぁ、いいよォ今回は君の勝ちってことで……まぁ、ぼくの大切な人は居ないね、というか人じゃない……そう!猫!猫なのだ!猫!ねこねこねこねこねこねこねこねこねこねこねこ!!!!!そう!猫!!猫が好きだ!!猫が大切な人なのだ!!!ねこ!あのつぶらな瞳が好きだ!!あの気分屋な所が好きだ!!全てを愛している!!さぁ!君も猫になれ!!!」
【ヒガンバナ】
「…………とんだゲームだ。
この今起きているゲームと同じだな。」
私は、気がつけば刀を抜いていた。
何度かコイツの事は許してきたが、もう限界だ。
「……貴様は、"Azoth"だな?」
私は問い掛ける。
相手はAzothなのだろうと。
【ふ〇なっしー】
「は?何言ってんのお前?」
真顔、嫌そうでしょ……だってアゾートとかいきなり言い出すもん
「え?なになに?殺すの?やべぇわぁ……次ももっと楽しいゲームやらせるために生きたいのに……」
【ヒガンバナ】
「……黙れ。」
私は、
容赦なく
刀を振るった。
しっかりと踏み込み、コイツの首を断つ為に、横薙ぎに。
……切れ味としては、完全には断てないだろうが、十分だ。
【ふ〇なっしー】
「とぉ!」
しゃがみ間一髪で回避する
「うわぁあぶねえし辞めてくんない?そんなに殺したいの?クラスメイトの事……しかもアゾートじゃないし」
【ヒガンバナ】
「……はぁッ!!」
クラスメイト?
知った事か、私はコイツを一度たりともクラスメイトと認めた事はない。
しゃがんだコイツを仕留める為に、右下から振り上げる。
正確な太刀筋で、私の最高の速さで。
【ふ〇なっしー】
「とぉー!」
地面に転がりながら回避する
「ふふーん!どうだい?この身の子なし!!君たちを楽しませるために頑張ったんだぜ?」
そう言い、素早く起き上がり距離を話す
【ヒガンバナ】
「…………ふっ!」
もはや、言葉は不要。
避ける先を先読みし、そちらへと距離を詰める。
そして、立ち上がる瞬間に、その土手っ腹に風穴を開けるため、刀を突く。
【ふ〇なっしー】
「がふ……うわぁ痛てぇー痛てぇーよー…………いやまじで洒落になんねぇくらい痛いんすけどwwwwwwwウケるぅwwwwwww」
「まぁ、アンタのお陰で……あ、眠い痛いいや痛くねぇ!!!つまり最強だ!?」
謎の発言……お腹にはァ〜あら不思議〜……危ないものが突き刺さってるぅ〜
「言ってぇ〜……痛いなぁ……取り敢えず……痛いっす、いや痛くねぇけど……早く抜いてくんね?眠いし…」
絶叫したい気持ちを抑えながら早く抜けと急かす
抜けってなんか卑猥だよね
【ヒガンバナ】
「…………はぁッ!!」
私は無情にも、奴の体から刀を抜きつつ、上へと斬り上げる。
……傷口は拡がり、余程の事でなければ助からないだろう。
【ヒガンバナ】
私は、中央エリアの停留所で、路面電車を待っていた。
幾ら焦ったとしても、限度はある。
体力の事も考えれば、こうして電車を使うのが一番なのだ。
来るのが遅くて、ちょっと苛々などはしていない。
「……トロンパ、か。」
誰だったのだろう、どんな奴だったのだろう。
今となってはもう、わからない。
【ふ〇なっしー】
「お隣しつれーい!」
といつの間にか居たふ○なっしー、相手が己のことを嫌っている事を知っていてわざと隣に座る
「やぁ!こんにちは……またあったね」
【ヒガンバナ】
「……どうした、雑魚。
私にゲームでも負けるような輩が、まだ用があるのか?」
……会いたくない奴ほど、頻繁に会う。
嫌な話だ。
取り敢えず、前回私はゲームで勝っているのだから、相手は雑魚で良いだろう。
【ふ〇なっしー】
「あらー?どうしたのー?カリカリしちゃってさぁ……××?」
煽るただそれだけ相手が雑魚と会うならこちらもそれ相応の対応をしよう
「ふふ……ゲームしようぜ……今度は逃げもしないぜぇ……負けた奴は…前と同じで大切な人を言う、今度はポーカーではなくジョーカー当てゲームだ、ルールは簡単だよ僕がシャッフルした53枚のトランプをばら撒く、地面に落ちたトランプからョーカーを当てるゲームさ」
ポーカーより簡単で単純だろ?って表情をしながらニヤニヤ笑う。
前は負けて逃げたが今回は逃げないでやろう
「ほら、ビキニマンって言う優しい奴も楽しかったって言ってたしあいごころちゃんも楽しいと言ってた(と思う)……結構君の為に考えてきたんだぜ?このゲーム」
と懐から出したトランプをシャッフルする、柄は髑髏、趣味が悪いがまぁ結構イカしてるトランプだと思う
【ヒガンバナ】
「……始めろ。
だが逃げたら……覚悟しろ。」
煽られるのは苛つくが、仕方ない。
私はベンチに座ったまま、相手に始めるように言った。
…………ジョーカー、か。
【ふ〇なっしー】
「さてんじゃ始めるねぇ〜……それ!!」
そう言うとカードをばら撒く、雪の上に落ちるカード。ドクロのどこにあるのかわかりやすいだろう。
表になったり裏になったりしているカードがある
「さぁ、53枚あるよ……あぁ、大丈夫、ジョーカーは抜いて他のカード差し込んでる訳では無いから安心してよ…」
ニコニコと笑う
【ヒガンバナ】
「ふむ…………」
取り敢えずは、一通り見て探し、ゆっくりと屈む。
……どうやら、裏の中に有るのだろうが。
「……捲っていい回数は?」
【ふ〇なっしー】
「んー、そうだね……何回でもいいよ〜、何回てまも……ね」
余裕そうな笑、
「さっさとめくれよ〜」
【ヒガンバナ】
「…………ふん。」
何回でも、か。
なら……一枚一枚捲っていく。
……これなら、必ず見つかる筈だが。
【ふ〇なっしー】
「あったー?」
ニコニコしながらヒガンバナがジョーカーを見つけるまで待つ
「まだかなぁ……」
まぁ、その"中"にはないんだが
【ヒガンバナ】
「……無い?どう言うことだ。」
……全部捲った、が。
ジョーカーが無い。
やはり、ずるでもしてたのか。
「……これは、どう言うことだ?」
【ふ〇なっしー】
「んー?僕はちゃんとばらまいたよ?ちゃんとね……カードの枚数ちゃんと数えてみてね……ちゃんとあるからさ」
ニコニコ笑う、まるで勝利を確信しているかのような表情。
「さて、………ジョーカーはその中のどれかな?」
【ヒガンバナ】
「…………。」
カードは、53枚……いや、ならある筈だ。
もう一度、全て捲ったカードを見つめる。
【ふ〇なっしー】
「おやおやぁ?すぐそこにあるじゃァないかぁ……ジョーカーのカードがさぁ…あれ?もしかして………見つけられないのかなぁ?僕に雑魚とか言ったのに…」
嗤う、嗤う
カードの中にジョーカーは必ずある、そうその中には無いが……この中にはある
「さぁて……そろそろ答え言うけど……いい?」
【ヒガンバナ】
「煩い!待っていろ!」
路面電車が来たらしいが、知った事か。
私は仕方なく、マーク毎に数字を順番に並べていく。
こうすれば、必ず見つかるはず。
【ふ〇なっしー】
「あれあれぇ?どうしたのかなぁ……余裕無さそうだけど……まぁ、その中には無いけどこの中にはちゃんとあるよ……というか無茶苦茶ヒント与えてるんだけど」
そう、ジョーカーはこの中にある、その中には無いがちゃんとある
「はぁ……もう答え言うよぉ〜?ジョーカーのカードは…僕でした〜」
と、両手を広げると同時に大量のジョーカーが落ちる、大量のジョーカーってなんだ……
「まぁ、今回は意地悪すぎたし……まぁ、いいよォ今回は君の勝ちってことで……まぁ、ぼくの大切な人は居ないね、というか人じゃない……そう!猫!猫なのだ!猫!ねこねこねこねこねこねこねこねこねこねこねこ!!!!!そう!猫!!猫が好きだ!!猫が大切な人なのだ!!!ねこ!あのつぶらな瞳が好きだ!!あの気分屋な所が好きだ!!全てを愛している!!さぁ!君も猫になれ!!!」
【ヒガンバナ】
「…………とんだゲームだ。
この今起きているゲームと同じだな。」
私は、気がつけば刀を抜いていた。
何度かコイツの事は許してきたが、もう限界だ。
「……貴様は、"Azoth"だな?」
私は問い掛ける。
相手はAzothなのだろうと。
【ふ〇なっしー】
「は?何言ってんのお前?」
真顔、嫌そうでしょ……だってアゾートとかいきなり言い出すもん
「え?なになに?殺すの?やべぇわぁ……次ももっと楽しいゲームやらせるために生きたいのに……」
【ヒガンバナ】
「……黙れ。」
私は、
容赦なく
刀を振るった。
しっかりと踏み込み、コイツの首を断つ為に、横薙ぎに。
……切れ味としては、完全には断てないだろうが、十分だ。
【ふ〇なっしー】
「とぉ!」
しゃがみ間一髪で回避する
「うわぁあぶねえし辞めてくんない?そんなに殺したいの?クラスメイトの事……しかもアゾートじゃないし」
【ヒガンバナ】
「……はぁッ!!」
クラスメイト?
知った事か、私はコイツを一度たりともクラスメイトと認めた事はない。
しゃがんだコイツを仕留める為に、右下から振り上げる。
正確な太刀筋で、私の最高の速さで。
【ふ〇なっしー】
「とぉー!」
地面に転がりながら回避する
「ふふーん!どうだい?この身の子なし!!君たちを楽しませるために頑張ったんだぜ?」
そう言い、素早く起き上がり距離を話す
【ヒガンバナ】
「…………ふっ!」
もはや、言葉は不要。
避ける先を先読みし、そちらへと距離を詰める。
そして、立ち上がる瞬間に、その土手っ腹に風穴を開けるため、刀を突く。
【ふ〇なっしー】
「がふ……うわぁ痛てぇー痛てぇーよー…………いやまじで洒落になんねぇくらい痛いんすけどwwwwwwwウケるぅwwwwwww」
「まぁ、アンタのお陰で……あ、眠い痛いいや痛くねぇ!!!つまり最強だ!?」
謎の発言……お腹にはァ〜あら不思議〜……危ないものが突き刺さってるぅ〜
「言ってぇ〜……痛いなぁ……取り敢えず……痛いっす、いや痛くねぇけど……早く抜いてくんね?眠いし…」
絶叫したい気持ちを抑えながら早く抜けと急かす
抜けってなんか卑猥だよね
【ヒガンバナ】
「…………はぁッ!!」
私は無情にも、奴の体から刀を抜きつつ、上へと斬り上げる。
……傷口は拡がり、余程の事でなければ助からないだろう。
エム(17th)-柏木 愛(25th)
【柏木 愛】
「神よ、俺はこの状況をどこか甘くみていたようです。
ここは、地獄です。法や人権など存在しない、騙し合い殺し合いが渦巻く国です。
助けてください、助けてください……」
(これまでのあらすじ。トロンパにトロンパされて精神崩壊した彼は、ピエロの乙πのパワーで復活。しかしトロンパ死亡の報せを受け、普通にショック。
教会の祭壇前で跪きながら、コロパッドの中の幼女(裸)の写真に祈りを捧げていた。もし神がこれを聞いていたのならば、7発くらい殴られていただろう)
【エム】
「…………お兄さん?」
ちょっとした用事で教会を訪れ、扉を開けて見つけたのはいつしか身体をがんみしてきたお姉さんの姿をしたお兄さん。
助けてください、と言っていたような気がしたから、どうかしたんだろうかと、そう問いかけながら歩み寄っていく。
【柏木 愛】
「オァアチ!?」
(声をかけられて慌てて振り向く。もちろんコロパッドは即仕舞っている)
「ああ、エムちゃんですか……。ええ、ちょっと精神的に参ってまして……って、それはエムちゃんも一緒ですよね。俺がしっかりしないとだめなのに、ごめんなさい、ごめんなさい」
(平常運転で中の人も安心。ちなみに服はあの後、結局ショッピングモールで揃えました。ごめんなさいピエロちゃん)
【エム】
「……まぁ、大変なことになっちゃったからね……殺し合いなんて間違ってるのに」
たしかに、あんなとんでもないことをしたお兄さんでも、混乱はしてしまうだろうし、そうなったら神に縋りたくもなると思います。
【柏木 愛】
「俺は今まで、殺し合いなんて言われても、どこか他人事のように考えていたのかもしれません。
でも、今となっては……」
(手元のコロパッドが振動した。反射的に目を向けると、画面にメッセージが表示されている。
また、死者が出たようだ)
「……今となっては、恐ろしくて仕方がない……。
エムちゃん、貴方は怖くないのですか……!?俺はもう、怖くて、怖くて……!」
(目に涙を溜めながら、ガタガタと震える)
【エム】
「…………怖いよ」
人が死ぬ、近しい人が死ぬ。
それを怖がらない人間がいるわけない。いたとしても、それは狂っただれかで。
少なくとも、エムはそういうのを怖いと思える人種でした。
でも、だからといってなにもしないでいるのは、エムの性に合わないから。
お兄さんの方に近づいていって、エムはその頭を抱き締めました。
「だから、エムはみんなで帰れるように、頑張るんだ。
お兄さんも、ピエロのお姉さんも、お母さんも、みんなで帰れるように」
死んでしまった人がいるから、完全に目標達成はできないけど、自分にできることは精一杯やりたいから。
【柏木 愛】
「エムちゃん……。
ありがとうございまずっ、俺、俺も頑張りますっ!皆で帰りましょう!絶対に!」
(抑えていた気持ちが溢れ、涙が流れる。自分より幾分も幼い少女に縋りつきながら、彼は一つの決心をした。
この時、彼は初めて……女子と抱擁を交わしても、下心を感じなかった。後世に残る感動のシーンである)
「ぐすっ、はぁ、泣いたらスッキリしました!俺、やっていけそうな気がします。で、でも男で行こうかな、女で行こうかな……」
【エム】
「うん、頑張ろうね!」
元気付けることができたようで、何よりでした。
性別のことを云々いっているのは、まあおいておくとして。
「ところでおにいさん、こころちゃんの裸写真で撮ったって、ホントウデスカ?」
さっきとは一転して、冷ややかな笑みを浮かべてお兄さんのことを見つめました。
一応、おねえちゃんと呼んでくれたあの子は、別の意味で守らなきゃいけないので
【柏木 愛】
「はい……はい……え」
(変化球。なんか今良い感じな流れだったのに、まさかここでその話を出されるとは。というより、なぜそれを知っている?あいごころ。が伝えたのだろうか?いや、消すと言ったはず。嘘だとバレていた……?
様々な思考が頭を巡る。どうする?ブラフかもしれないが、パッドを見せろと言われたらお手上げだ。
万事休す……)
「ご、ごめんなさいでしたぁ!欲に目がくらんでしまったのです!許してください!なんでもしますから!」
(結局はヘッドバット土下座でやり過ごそうとするのであった)
【エム】
「こういうエッチぃことはエム以外にしちゃダメって、言いましたよね? 何でやっちゃうんですか?
ねえ、おにいさん?」
これに関しては、ふつうにおこっていました。
見るとか、そういうのならまだ仕方ない人だなと思えましたが、写真ですよ?
妹の裸が写真でとられたんですよ?
怒りますよね?
【柏木 愛】
「いや、でも、待ってくださいよ!これを見れば、エムちゃんも納得してくれますよ」
(額に血を滲ませながら、あろうことかコロパッドを開き、件の写真をエムに見せた。隠すべき場所が堂々と露見しているこころちゃんに降り注ぐ、雪の写真である)
「ほら、これ、すごくないですか?なんというか、芸術ですよね。性と自然の融合っていうか、そう思いません?これを目の前にしちゃったら、シャッター切らずにはいられないですよ!これを止めろだなんて、それは不当な弾圧だ!芸術家には表現の自由があるっ!」
【エム】
「えいっ」
お兄さんの芸術家がうんぬんなんて、そんな説明に集中している隙に、がら空きのコロパッドを操作して、見せられた写真を即刻削除した。
妹の裸の写真とか、許しませんよ。
そこに慈悲なんて、ありません
【柏木 愛】
「あ、ああ……アアアアアアアアアアアアアアッ!!マイ・サンタマリアァァァッァァアアアアアッ!!!」
(神は死んだのか?正義は滅びたのか?このような不条理が罷り通る世の中でいいのか?
どれだけ憤慨しようとも、彼では世界を変えることはできない。所詮は腐りきった籠の中の鳥である。
彼は膝から崩れ落ち、天に向けてただ、嘆くのであった……)
【エム】
「悪は去った」
そう言って、ピースを天高々と掲げました。
こころちゃんの裸写真とか、絶対にこの世にあってはいけないものなのです。
存在はエムが認めません。
エムがこころちゃんを(尊厳的な意味で)救うのです。
そして、みんなを(命的な意味で)救うのです。
「それに、これ合意の上ならエムも許しましたけど、話を聞く限りじゃ盗撮ですよね? やっちゃいけないことですよね?
そこがゆるせません、ちゃんと許可をとってからこういうことはしてください」
【柏木 愛】
「いや、正面から堂々と盗ったし、盗撮とは違うというか……でもまぁ許可は取ってないけど、芸術だしゴニョゴニョ」
(未練を捨てきれないようだ。ぐちぐちと呪詛を垂れ流す。
その時、柏木に電流走るーー!
「エム以外の人にこういうことしちゃ」
つまり、エムになら許される……!?
コペルニクス的転回。IQ230。次期ノーベル賞候補。それらの称号を全て得ても足りないほど、画期的な閃きであった)
「じゃあエムちゃんの裸盗らせてください」
【エム】
「…………そう来ると思いましたよ、お兄さん」
正直、最悪のパターンとしてでしたけど。
予想通りになってしまったこととか、呆れとか色々なものが出てきちゃって、軽く頭を抱えました。
とはいえ、言い出したのはエムですし
「――いいですよ、別に。撮られて困るものじゃないですから」
仮の姿の裸くらい、見せても恥ずかしくないですし
【柏木 愛】
「ほ、本当なんだすか!?
ありがとうございます!あの、じゃあ裸で外に出てもらっていいですか!?やっぱり雪がないとだめなんで!」
(彼の笑顔が、開花。興奮して早口でまくし立てると、コロパッドを片手に、教会の外へ飛び出るのであった)
【柏木 愛】
「神よ、俺はこの状況をどこか甘くみていたようです。
ここは、地獄です。法や人権など存在しない、騙し合い殺し合いが渦巻く国です。
助けてください、助けてください……」
(これまでのあらすじ。トロンパにトロンパされて精神崩壊した彼は、ピエロの乙πのパワーで復活。しかしトロンパ死亡の報せを受け、普通にショック。
教会の祭壇前で跪きながら、コロパッドの中の幼女(裸)の写真に祈りを捧げていた。もし神がこれを聞いていたのならば、7発くらい殴られていただろう)
【エム】
「…………お兄さん?」
ちょっとした用事で教会を訪れ、扉を開けて見つけたのはいつしか身体をがんみしてきたお姉さんの姿をしたお兄さん。
助けてください、と言っていたような気がしたから、どうかしたんだろうかと、そう問いかけながら歩み寄っていく。
【柏木 愛】
「オァアチ!?」
(声をかけられて慌てて振り向く。もちろんコロパッドは即仕舞っている)
「ああ、エムちゃんですか……。ええ、ちょっと精神的に参ってまして……って、それはエムちゃんも一緒ですよね。俺がしっかりしないとだめなのに、ごめんなさい、ごめんなさい」
(平常運転で中の人も安心。ちなみに服はあの後、結局ショッピングモールで揃えました。ごめんなさいピエロちゃん)
【エム】
「……まぁ、大変なことになっちゃったからね……殺し合いなんて間違ってるのに」
たしかに、あんなとんでもないことをしたお兄さんでも、混乱はしてしまうだろうし、そうなったら神に縋りたくもなると思います。
【柏木 愛】
「俺は今まで、殺し合いなんて言われても、どこか他人事のように考えていたのかもしれません。
でも、今となっては……」
(手元のコロパッドが振動した。反射的に目を向けると、画面にメッセージが表示されている。
また、死者が出たようだ)
「……今となっては、恐ろしくて仕方がない……。
エムちゃん、貴方は怖くないのですか……!?俺はもう、怖くて、怖くて……!」
(目に涙を溜めながら、ガタガタと震える)
【エム】
「…………怖いよ」
人が死ぬ、近しい人が死ぬ。
それを怖がらない人間がいるわけない。いたとしても、それは狂っただれかで。
少なくとも、エムはそういうのを怖いと思える人種でした。
でも、だからといってなにもしないでいるのは、エムの性に合わないから。
お兄さんの方に近づいていって、エムはその頭を抱き締めました。
「だから、エムはみんなで帰れるように、頑張るんだ。
お兄さんも、ピエロのお姉さんも、お母さんも、みんなで帰れるように」
死んでしまった人がいるから、完全に目標達成はできないけど、自分にできることは精一杯やりたいから。
【柏木 愛】
「エムちゃん……。
ありがとうございまずっ、俺、俺も頑張りますっ!皆で帰りましょう!絶対に!」
(抑えていた気持ちが溢れ、涙が流れる。自分より幾分も幼い少女に縋りつきながら、彼は一つの決心をした。
この時、彼は初めて……女子と抱擁を交わしても、下心を感じなかった。後世に残る感動のシーンである)
「ぐすっ、はぁ、泣いたらスッキリしました!俺、やっていけそうな気がします。で、でも男で行こうかな、女で行こうかな……」
【エム】
「うん、頑張ろうね!」
元気付けることができたようで、何よりでした。
性別のことを云々いっているのは、まあおいておくとして。
「ところでおにいさん、こころちゃんの裸写真で撮ったって、ホントウデスカ?」
さっきとは一転して、冷ややかな笑みを浮かべてお兄さんのことを見つめました。
一応、おねえちゃんと呼んでくれたあの子は、別の意味で守らなきゃいけないので
【柏木 愛】
「はい……はい……え」
(変化球。なんか今良い感じな流れだったのに、まさかここでその話を出されるとは。というより、なぜそれを知っている?あいごころ。が伝えたのだろうか?いや、消すと言ったはず。嘘だとバレていた……?
様々な思考が頭を巡る。どうする?ブラフかもしれないが、パッドを見せろと言われたらお手上げだ。
万事休す……)
「ご、ごめんなさいでしたぁ!欲に目がくらんでしまったのです!許してください!なんでもしますから!」
(結局はヘッドバット土下座でやり過ごそうとするのであった)
【エム】
「こういうエッチぃことはエム以外にしちゃダメって、言いましたよね? 何でやっちゃうんですか?
ねえ、おにいさん?」
これに関しては、ふつうにおこっていました。
見るとか、そういうのならまだ仕方ない人だなと思えましたが、写真ですよ?
妹の裸が写真でとられたんですよ?
怒りますよね?
【柏木 愛】
「いや、でも、待ってくださいよ!これを見れば、エムちゃんも納得してくれますよ」
(額に血を滲ませながら、あろうことかコロパッドを開き、件の写真をエムに見せた。隠すべき場所が堂々と露見しているこころちゃんに降り注ぐ、雪の写真である)
「ほら、これ、すごくないですか?なんというか、芸術ですよね。性と自然の融合っていうか、そう思いません?これを目の前にしちゃったら、シャッター切らずにはいられないですよ!これを止めろだなんて、それは不当な弾圧だ!芸術家には表現の自由があるっ!」
【エム】
「えいっ」
お兄さんの芸術家がうんぬんなんて、そんな説明に集中している隙に、がら空きのコロパッドを操作して、見せられた写真を即刻削除した。
妹の裸の写真とか、許しませんよ。
そこに慈悲なんて、ありません
【柏木 愛】
「あ、ああ……アアアアアアアアアアアアアアッ!!マイ・サンタマリアァァァッァァアアアアアッ!!!」
(神は死んだのか?正義は滅びたのか?このような不条理が罷り通る世の中でいいのか?
どれだけ憤慨しようとも、彼では世界を変えることはできない。所詮は腐りきった籠の中の鳥である。
彼は膝から崩れ落ち、天に向けてただ、嘆くのであった……)
【エム】
「悪は去った」
そう言って、ピースを天高々と掲げました。
こころちゃんの裸写真とか、絶対にこの世にあってはいけないものなのです。
存在はエムが認めません。
エムがこころちゃんを(尊厳的な意味で)救うのです。
そして、みんなを(命的な意味で)救うのです。
「それに、これ合意の上ならエムも許しましたけど、話を聞く限りじゃ盗撮ですよね? やっちゃいけないことですよね?
そこがゆるせません、ちゃんと許可をとってからこういうことはしてください」
【柏木 愛】
「いや、正面から堂々と盗ったし、盗撮とは違うというか……でもまぁ許可は取ってないけど、芸術だしゴニョゴニョ」
(未練を捨てきれないようだ。ぐちぐちと呪詛を垂れ流す。
その時、柏木に電流走るーー!
「エム以外の人にこういうことしちゃ」
つまり、エムになら許される……!?
コペルニクス的転回。IQ230。次期ノーベル賞候補。それらの称号を全て得ても足りないほど、画期的な閃きであった)
「じゃあエムちゃんの裸盗らせてください」
【エム】
「…………そう来ると思いましたよ、お兄さん」
正直、最悪のパターンとしてでしたけど。
予想通りになってしまったこととか、呆れとか色々なものが出てきちゃって、軽く頭を抱えました。
とはいえ、言い出したのはエムですし
「――いいですよ、別に。撮られて困るものじゃないですから」
仮の姿の裸くらい、見せても恥ずかしくないですし
【柏木 愛】
「ほ、本当なんだすか!?
ありがとうございます!あの、じゃあ裸で外に出てもらっていいですか!?やっぱり雪がないとだめなんで!」
(彼の笑顔が、開花。興奮して早口でまくし立てると、コロパッドを片手に、教会の外へ飛び出るのであった)
ヒガンバナ(11th)-フェルナ(22nd)
【ヒガンバナ】
ホテルで私は、シャワーを浴びていた。
ヤツを殺した時に、汚物が身体に付いてしまったからだ。
成る程、殺人犯はこんな心境なのかと、私はその汚物を綺麗にしようと、何度も何度も洗い流した。
そして、暫くしてから、気分転換の為に、ホテルの近くを歩いていた。
制服は洗濯してしまったので、今はホテルで借りた浴衣を羽織っている。
上着を羽織っても少し肌寒いが、それが赤く火照った体と頭を落ち着かせてくれる。
……髪の華が、増えた気がする。
【フェルナ】
「……これは魔力だから仕方ない。」
これを何度も良いながらぶつぶつ歩く包帯少女が居るそうだ。
いやもう、包帯をファッションのように扱うのは、少なくともこの中で一人しかいない。
「…おっと、君は…誰だ?」
暫く様子見を繰り返していたからか、面識は結構狭い。だからこそ、名前と顔を一致できない場合が殆どだ。あれだけの情報で顔まで推測しろという方が無理がある。
因みに、どうしてここへ来たのかって?
決まっているだろう温泉さ。
【ヒガンバナ】
「……む?」
まるで雪景色と同化してしまいそうな格好の少女が、話し掛けてきた。
私は、静かに立ち止まると、そちらに視線を向ける。
「……本来なら、名前は自分から名乗る物だ……と、言うのが常だが。
……私はヒガンバナだ、お前さんは?」
何故、皆自分の名前を名乗らず、相手の名を先に聞こうとするのか。
……まあ、然程気にはしないが。
【フェルナ】
「はは、その通りさ。」
勿論、それは分かっている。
相手に信用を求める為には、先ず自分から動くこと。それが至極当然の社交であり、関係を作る為に大切な行為と言えるだろう。
それにも関わらず答えてくれたのだから、私は1つ解ることがある。相手のガードが比較的緩そうで困る。
「私の名前はフェルナ。そう呼んでくれて構わない。」
名を返すと、早速横を見る。
勿論、その先はホテルである。
【ヒガンバナ】
「フェルナ、か。
確か、22nd……だったな。宜しく頼む。」
包帯を巻いているせいか、儚く脆そうな少女かと思いきや、話してみると案外鋭そうな者だ。
……人は見た目に寄らないとは、よく言ったものだ。
「……ホテルに用事か?」
彼女の向いた先がホテルだったので、そう尋ねてみる。
自分が取った部屋は施錠してあるので、見られる問題は無いし、腰に提げている刀も既に綺麗にしたのだが。
……どうにも、落ち着かない。
【フェルナ】
「ああ、少し風呂に行こうかとね。」
ここは正直でも良いだろう。特に嘘をつく理由もなく、寧ろ相手が正直だ。
彼女に振り向いた途端に、その様子は直感的に伝わった。
「…そうか。
君は…そういう奴だったのか。」
刀。
それが、少女にとっては推測の一つであった。
【ヒガンバナ】
「成る程、風呂か。
ここは寒いからな、私も先程入ってきた所だ。」
嘘は言っていない。
かなり念入りな入浴と言っても、過言では無いはずだ。
「……?
なんだ、懐かしい台詞を言ったりして……私が……何だと言うのだ?」
小学生時代……ほら、題名はうろ覚えだが、こんな台詞あっただろう。
『そうかそうか、君はそう言う奴だったんだな。』
刀を見た様だが……一体何を考えているのだ。
【フェルナ】
「……いや、何でもない。
今のは忘れてくれ。」
流石に走り過ぎただろうか。
と考えるのはきっと少女もこの世界に慣れ切っていないせいだろう。駄目だ、もっと馴染まなくては。嘘をチラつかせなければ、この少女は…。
「君のその刀は、一体何処で手に入れた?
そんな大層な刃物…簡単に手に入るものなのか。」
中身を悟られるのは面倒なので、他に気になった部分を話題に上げてみる。ここもここで本命と呼べるし、寧ろ今後に役立つ情報だ。
【ヒガンバナ】
「……そうか。
っと、この刀か?これは自作だ。
中々に良く出来ているだろう?」
スラリと腰から抜いて見せる。
無論、斬るような構えではなく、普通に見せびらかす様に。
かなり日本刀等とは作り方は違うが、自慢の逸品なのは確かだ。
「こんなもの、その辺に落ちていたら堪らんからな。
……それこそ、三人程度の死では済んでないだろう。」
【フェルナ】
「自作…だって?」
少女の瞳が小さくなる。
それは、どういう事だ。彼女は、刀について詳しく知っているという事になるのか…?
危険だ。
「…君は、誰か斬ったのか?」
それは、信じたくもない事実。
こんな事が許される世界とはいえ、実際にそれを実行したとなれば話は別だ。
じりじりと後ずさりを始めているのは、それが怖いからなのか、それとも…。
【ヒガンバナ】
「……そう怖がるな。
お前さんの様な奴を斬る様な事はしない。
───誰かを斬った、と言うことについては、認めるが。」
これは、隠しても仕方の無い事なので、正直に白状しよう。
既に、この刀は血を吸っている。
それは紛れもない事実なのだから。
「……Azoth……裏切り者……敵……
奴らを殺さなければ、私達は出られぬのだろう?
……誰が、殺す?
…………誰が、罪を背負う?
………………私で、十分だろう。」
【フェルナ】
「……そう、か。」
ああ、そうか。
少女は愚かだ。
だからこそ今の言葉できっと決まったのだろう。
…この世界は、敵だらけだと。
「解ったから、お前はそれ以上近付くな。
"この人殺しが"。」
一瞬で瞳の雰囲気を変えることが出来たのは上々だろう。
明らかに、敵に向ける瞳だ。
【ヒガンバナ】
「………………。
そうだな、私は人斬りだ。」
こう、言われるのは覚悟の上だった。
人殺し、嫌な響きだ。
どうにも、覚悟は足らなかったらしい。
彼女の一言だけでも、こんなにも堪えるなんて。
……洗い落とした筈なのに、体が赤い。
何故だ。
「……分かった。
これ以上お前さんには近付かぬさ……」
刀を仕舞い、私はそのまま佇む。
……赤い。
地面にも、赤い何かが落ちた。
……ああ、私の華か……私の彼岸花が散ったのか。
【フェルナ】
「…お前は、どうして私が拒絶したか…その理由が解るか?」
だが、彼女の気持ちを全て捨て去るつもりなどない。解っているからこそ、それに相応する私の気持ちというものが存在して、初めて敵と認識したのだ。
「自分が殺されるかもしれない恐怖?
……違うな。
私がお前と戦わないといけないと感じるから?
…いや、違う。
それとも、道徳心で人殺しは良くないと観念を持っているから?
…全然、違うさ。」
彼女には解るのか、この少女の信念は。
この包帯に包まれた中身は、一体何処を向いているのか。
「お前が、"誰か"を殺した。その可能性が存在しているだけで、私がお前を敵にする…充分な理由を持っているという事だよ。」
これでも隠せた方だ。
必死に抑え込んだ方だ。
だから、ここで少女は言葉を切った。
【ヒガンバナ】
はらり、はらり……私の髪から華が枯れ落ちていく。
「……理由?」
私を拒む、理由。
人を斬ったから、人を殺したから。
……それだけで、十分過ぎるほどに、嫌われる要素なんて有るじゃないか。
「…………どうした、過去に……人殺しに恨みでも有るか?」
なら、私も……
まあ、遅かれ早かれ裁かれる覚悟もある。
……まだ、赤い花弁が落ち続ける。
【フェルナ】
「ふっ…"全く"無いよ。」
違う。
恨みなんてない。寧ろ、こんな事態が起こるまではずっと少女は幸せだった。だが、こうなってしまった。
ある小さな可能性は、少女の心を締め付け、潰そうとする程にその力は大きい。それこそ、その小さな可能性を引いてしまえば、どうなるか…なんて。
「お前はまだ、人殺しとしてどんな責任を持つのか…全てを解っていない。…いや、私が隠し過ぎというのもあるがな。
ゆっくり考えろ。そして、それを知った時に初めて、刀を抜く権利を知れ。
私から伝えられるのは、これだけだ。」
そうして包帯に巻かれた少女は、その布を風に靡かせながら背を向け、ホテルの方へと歩き出す。
その背中に映るのは、敵意などではなく…
あらぬ方向に向けられた、恐怖だった。
【ヒガンバナ】
「なっ、おい…………」
少女は行ってしまった……
一体何だと言うのだ。
……この手の会話の読み合いは、一番の苦手だと言うのに。
……モヤモヤとした気分も追加され、私はまた歩き出した。
刀を抜く権利、か。
……少なくなった彼岸花を眺め、私は雪道を歩く。
【ヒガンバナ】
ホテルで私は、シャワーを浴びていた。
ヤツを殺した時に、汚物が身体に付いてしまったからだ。
成る程、殺人犯はこんな心境なのかと、私はその汚物を綺麗にしようと、何度も何度も洗い流した。
そして、暫くしてから、気分転換の為に、ホテルの近くを歩いていた。
制服は洗濯してしまったので、今はホテルで借りた浴衣を羽織っている。
上着を羽織っても少し肌寒いが、それが赤く火照った体と頭を落ち着かせてくれる。
……髪の華が、増えた気がする。
【フェルナ】
「……これは魔力だから仕方ない。」
これを何度も良いながらぶつぶつ歩く包帯少女が居るそうだ。
いやもう、包帯をファッションのように扱うのは、少なくともこの中で一人しかいない。
「…おっと、君は…誰だ?」
暫く様子見を繰り返していたからか、面識は結構狭い。だからこそ、名前と顔を一致できない場合が殆どだ。あれだけの情報で顔まで推測しろという方が無理がある。
因みに、どうしてここへ来たのかって?
決まっているだろう温泉さ。
【ヒガンバナ】
「……む?」
まるで雪景色と同化してしまいそうな格好の少女が、話し掛けてきた。
私は、静かに立ち止まると、そちらに視線を向ける。
「……本来なら、名前は自分から名乗る物だ……と、言うのが常だが。
……私はヒガンバナだ、お前さんは?」
何故、皆自分の名前を名乗らず、相手の名を先に聞こうとするのか。
……まあ、然程気にはしないが。
【フェルナ】
「はは、その通りさ。」
勿論、それは分かっている。
相手に信用を求める為には、先ず自分から動くこと。それが至極当然の社交であり、関係を作る為に大切な行為と言えるだろう。
それにも関わらず答えてくれたのだから、私は1つ解ることがある。相手のガードが比較的緩そうで困る。
「私の名前はフェルナ。そう呼んでくれて構わない。」
名を返すと、早速横を見る。
勿論、その先はホテルである。
【ヒガンバナ】
「フェルナ、か。
確か、22nd……だったな。宜しく頼む。」
包帯を巻いているせいか、儚く脆そうな少女かと思いきや、話してみると案外鋭そうな者だ。
……人は見た目に寄らないとは、よく言ったものだ。
「……ホテルに用事か?」
彼女の向いた先がホテルだったので、そう尋ねてみる。
自分が取った部屋は施錠してあるので、見られる問題は無いし、腰に提げている刀も既に綺麗にしたのだが。
……どうにも、落ち着かない。
【フェルナ】
「ああ、少し風呂に行こうかとね。」
ここは正直でも良いだろう。特に嘘をつく理由もなく、寧ろ相手が正直だ。
彼女に振り向いた途端に、その様子は直感的に伝わった。
「…そうか。
君は…そういう奴だったのか。」
刀。
それが、少女にとっては推測の一つであった。
【ヒガンバナ】
「成る程、風呂か。
ここは寒いからな、私も先程入ってきた所だ。」
嘘は言っていない。
かなり念入りな入浴と言っても、過言では無いはずだ。
「……?
なんだ、懐かしい台詞を言ったりして……私が……何だと言うのだ?」
小学生時代……ほら、題名はうろ覚えだが、こんな台詞あっただろう。
『そうかそうか、君はそう言う奴だったんだな。』
刀を見た様だが……一体何を考えているのだ。
【フェルナ】
「……いや、何でもない。
今のは忘れてくれ。」
流石に走り過ぎただろうか。
と考えるのはきっと少女もこの世界に慣れ切っていないせいだろう。駄目だ、もっと馴染まなくては。嘘をチラつかせなければ、この少女は…。
「君のその刀は、一体何処で手に入れた?
そんな大層な刃物…簡単に手に入るものなのか。」
中身を悟られるのは面倒なので、他に気になった部分を話題に上げてみる。ここもここで本命と呼べるし、寧ろ今後に役立つ情報だ。
【ヒガンバナ】
「……そうか。
っと、この刀か?これは自作だ。
中々に良く出来ているだろう?」
スラリと腰から抜いて見せる。
無論、斬るような構えではなく、普通に見せびらかす様に。
かなり日本刀等とは作り方は違うが、自慢の逸品なのは確かだ。
「こんなもの、その辺に落ちていたら堪らんからな。
……それこそ、三人程度の死では済んでないだろう。」
【フェルナ】
「自作…だって?」
少女の瞳が小さくなる。
それは、どういう事だ。彼女は、刀について詳しく知っているという事になるのか…?
危険だ。
「…君は、誰か斬ったのか?」
それは、信じたくもない事実。
こんな事が許される世界とはいえ、実際にそれを実行したとなれば話は別だ。
じりじりと後ずさりを始めているのは、それが怖いからなのか、それとも…。
【ヒガンバナ】
「……そう怖がるな。
お前さんの様な奴を斬る様な事はしない。
───誰かを斬った、と言うことについては、認めるが。」
これは、隠しても仕方の無い事なので、正直に白状しよう。
既に、この刀は血を吸っている。
それは紛れもない事実なのだから。
「……Azoth……裏切り者……敵……
奴らを殺さなければ、私達は出られぬのだろう?
……誰が、殺す?
…………誰が、罪を背負う?
………………私で、十分だろう。」
【フェルナ】
「……そう、か。」
ああ、そうか。
少女は愚かだ。
だからこそ今の言葉できっと決まったのだろう。
…この世界は、敵だらけだと。
「解ったから、お前はそれ以上近付くな。
"この人殺しが"。」
一瞬で瞳の雰囲気を変えることが出来たのは上々だろう。
明らかに、敵に向ける瞳だ。
【ヒガンバナ】
「………………。
そうだな、私は人斬りだ。」
こう、言われるのは覚悟の上だった。
人殺し、嫌な響きだ。
どうにも、覚悟は足らなかったらしい。
彼女の一言だけでも、こんなにも堪えるなんて。
……洗い落とした筈なのに、体が赤い。
何故だ。
「……分かった。
これ以上お前さんには近付かぬさ……」
刀を仕舞い、私はそのまま佇む。
……赤い。
地面にも、赤い何かが落ちた。
……ああ、私の華か……私の彼岸花が散ったのか。
【フェルナ】
「…お前は、どうして私が拒絶したか…その理由が解るか?」
だが、彼女の気持ちを全て捨て去るつもりなどない。解っているからこそ、それに相応する私の気持ちというものが存在して、初めて敵と認識したのだ。
「自分が殺されるかもしれない恐怖?
……違うな。
私がお前と戦わないといけないと感じるから?
…いや、違う。
それとも、道徳心で人殺しは良くないと観念を持っているから?
…全然、違うさ。」
彼女には解るのか、この少女の信念は。
この包帯に包まれた中身は、一体何処を向いているのか。
「お前が、"誰か"を殺した。その可能性が存在しているだけで、私がお前を敵にする…充分な理由を持っているという事だよ。」
これでも隠せた方だ。
必死に抑え込んだ方だ。
だから、ここで少女は言葉を切った。
【ヒガンバナ】
はらり、はらり……私の髪から華が枯れ落ちていく。
「……理由?」
私を拒む、理由。
人を斬ったから、人を殺したから。
……それだけで、十分過ぎるほどに、嫌われる要素なんて有るじゃないか。
「…………どうした、過去に……人殺しに恨みでも有るか?」
なら、私も……
まあ、遅かれ早かれ裁かれる覚悟もある。
……まだ、赤い花弁が落ち続ける。
【フェルナ】
「ふっ…"全く"無いよ。」
違う。
恨みなんてない。寧ろ、こんな事態が起こるまではずっと少女は幸せだった。だが、こうなってしまった。
ある小さな可能性は、少女の心を締め付け、潰そうとする程にその力は大きい。それこそ、その小さな可能性を引いてしまえば、どうなるか…なんて。
「お前はまだ、人殺しとしてどんな責任を持つのか…全てを解っていない。…いや、私が隠し過ぎというのもあるがな。
ゆっくり考えろ。そして、それを知った時に初めて、刀を抜く権利を知れ。
私から伝えられるのは、これだけだ。」
そうして包帯に巻かれた少女は、その布を風に靡かせながら背を向け、ホテルの方へと歩き出す。
その背中に映るのは、敵意などではなく…
あらぬ方向に向けられた、恐怖だった。
【ヒガンバナ】
「なっ、おい…………」
少女は行ってしまった……
一体何だと言うのだ。
……この手の会話の読み合いは、一番の苦手だと言うのに。
……モヤモヤとした気分も追加され、私はまた歩き出した。
刀を抜く権利、か。
……少なくなった彼岸花を眺め、私は雪道を歩く。
海月(23rd)-柏木 愛(25th)
【柏木 愛】
「Hark how the bells,Sweet silver bells,All seem to say,Throw cares away……」
(海外のクリスマスソングを口ずさみながら、船着場で海を眺めていた。霧のせいで、綺麗な海だとは言えない。なぜそんな事をしているかというと……暇だからである。とにかくやることがない。敵を警戒しまくるのも疲れてしまった)
「……雪だるまでも作って遊びましょうか」
【海月】
暇だから、という理由だけれどまたふらふらと歩きまわっていた。
特に目的もない。今は誰かを殺すこともー…まあないんじゃない?
というわけで、まだ行ったことのない船着場。船を待つほど悠長じゃないけれど。
「…お。前見た…柏木ちゃん?だっけ」
何か朧気な記憶だけど盛大に墓穴掘っていた子、のような気がする。
まあ、アッチでのことだしこっちとは無関係か。
「おーい、柏木ちゃーんっ!何してるの?ねえねえこんなところで一人で何してるの?
ぼっち?」
【柏木 愛】
「ォアア!?ああ、海月さんですか。やっぱりなんか、雰囲気違いますよね?テンションおかしいですよね?あと俺はぼっちじゃないです。俺にはお守り(写真)がついています。
海月さんもなんだか暇そうですね?」
(重い腰を上げ、スコップでも探すかとなった時に、突如現れた海洋生物。驚いて海に落ちそうになるが、どうにかセーフだった)
【海月】
「えー?テンション違うかなぁ?オレはこれが平常運転だよ!それに柏木ちゃんの方こそ何か嬉しそうだね?
そのお守りとやら結構気になるんだけど見せてくれない?」
まあ、あっちとの会話を鑑みるに写真に何か入っているんだろうけれど。
正直、相手にしか分からない情報とあれば、手に入れないっていう選択肢はないよね?
「見せてよー!ほらほらー!」
【柏木 愛】
「だ、ダメですよ!これは他の人に見せちゃダメって言われたんです!」
(服の内ポケットに入っていたコロパッドを隠す。嘘が苦手な人間であった。どこぞの詐欺師もどきに伝授してもらおうかしら)
【海月】
「んー?でも、よく考えてみてよ。他の人に見せちゃダメって、他の人に言われたんだよね?
だったらその人は見てるじゃん。柏木ちゃん、その人には見せるのにオレには見せないって言うの?
それってさ…この状況だと、「疑ってください!」って言ってるようなものじゃない?」
まあ、彼が分かりやすい行動しか取っていないのはおいておいて。
他の人に見せちゃダメ…それほど重要な情報が入っているのかな?というか、他の人って何人だろうね。
流石に周囲全員ってことはあり得ない、だろうけれど…
「柏木ちゃんもすぐには死にたくないでしょ?信用を得るためなら…何でもしなきゃいけないんじゃない?」
【柏木 愛】
「ん?ん?他の人に見せちゃだめだけど他の人は見てて……あれ?ん?
いや、俺にはそんな、疑う要素なんて、ん?」
(大混乱。相手の口が達者というのもあるが、あまりにもアホなのである。極めつけに「死」というワードを出され、応じないわけにはいかなかった)
「わ、わかりましたよ……絶対誰にも見せないでくださいね?」
(こうして彼は、コロパッド内の秘蔵の写真を見せてしまうのであった……)
【海月】
「よし!何が入ってる、の、か…あー…?」
何でもいいけれど、秘匿の情報がゲットできる!
…って思ったのが割と間違いだった。ああ、いや、オレこういうのは別にどうとも思わないんだけど、ほら、ね?
…何でオレ幼女の裸見せられてんの?
いや別にほら、恥ずかしいとかじゃないんだけどさ!!こういうのって犯罪じゃないの!?
仮の身体だとしても柏木ちゃん結構、え?え、ああ、ううううう…
「え、え?ああ…ああー、うん…
…柏木ちゃんこれ、どうやって撮ったの…?」
結論。
虎穴に入って虎子を得ることは割と少ない。
【柏木 愛】
「本人に頼んだんですよ……流石の俺も盗撮の趣味はないです」
(こころちゃんの件は盗撮ではなく芸術だと思い込んでいる)
「俺がこれ見せたこと、本当に内緒ですよ?あ、ていうか海月ちゃんも写真も撮らせてくれませんか?俺、アートに目覚めてしまったようです」
【海月】
「本人に…え?頼んで撮らせてもらえるものなのこれ?」
もしかしたらオレの常識が間違って…いや、いやいやいや…
流石にオレでも女の子の裸撮る趣味はないって…
……え?
「いや、ほらさぁ!オレ仮の身体は女の子だけど男だから、柏木ちゃんの期待には応えられないんじゃないかなー?
ここにはもっと他に色々いるでしょー?そっち当たった方がいいと思うんだけどッ!」
待って。マズい。こういう人本当に苦手、というか、無理。
くっそ!!何でこういう時に万能なアカエルちゃんは出てこないのさ!!オレの命の危機なんだけど!?
【柏木 愛】
「いや、元の身体とか、芸術に関係ないです。
わかりますか?女の子の裸に雪って、めっちゃ合うんですよ。俺はこれを可能な限り集めてみたい……あ、ちなみに自分のもあります」
(コロパッドを操作し、別の写真を見せる。全裸の柏木が夜空を背景に佇んでいる……)
「お願いします!裸撮らせてください!なんでもしますから!」
(土下座。彼の辞書にプライドという文字は存在しない)
【海月】
「……あー…」
最初の共有チャットを見た時点で気づくべきだった。柏木ちゃんは"こういう"人だって。
何でそれなのに不用心に近づいたかなぁ!!!何でかなぁ!!?
「いや、オレにはちょっと分かりかねる、かなぁ?というか、そんなことしてたら風邪引くし…
なんでもって言われてもさぁ………」
ぶっちゃけ、なんでもするって言われると聞きたいことは山ほどあるんだけれど。
流石にそれを自分の裸体と比べるのは酷ってものじゃないかなって思うんだけれど。
「オレはそのー、ちょっと遠慮しておこうかなって!」
ただ、オレは結構優しいから、声には出さないでおいてあげるよ!
だから早くどっか行って!!!!
【柏木 愛】
「そ、そうですよね……いきなりこんなこと、嫌ですよね……」
(頼み事としてはあまりにもムシが良すぎるというか、自分勝手すぎた。自分だってトロンパに無理やりトロンパされるのは嫌だったではないか。相手の心を思いやるということが……)
「でもやっぱり見たいいいいいい!!見せてくださいいい!」
(理性に勝てなかった。服を脱がさんと海月に飛びかかる)
【海月】
「そうそう、嫌だ…ッてはあ!!??」
いきなり飛びかかってきた、が流石に警戒はしていたし避けた。
待って、なんだこいつ、待って、え?え?女子の裸そんなに見たいの!?別にどうでもよくない!?
まず相手に許可とか合意とか得るっていう段階を踏むことが先じゃないの!?
「あ、あー…ほら!!また今度会った時ね!?それでいい!?」
異論は聞かない、反論も聞かない、弁解もさせてたまるか。
返事を聞く前に逃げ出した。こころちゃんの時より割と全力で。
【柏木 愛】
「わぶっ!ま、待てぇ!裸ぁぁぁぁぁあ!」
(受け身も何も考えず飛びかかったため、雪の地面に思いっきりダイブする。走り去る相手を追おうとするが、雪に足を取られて叶わない。小さくなっていく相手の背中に、手を伸ばすのみであった……)
【柏木 愛】
「Hark how the bells,Sweet silver bells,All seem to say,Throw cares away……」
(海外のクリスマスソングを口ずさみながら、船着場で海を眺めていた。霧のせいで、綺麗な海だとは言えない。なぜそんな事をしているかというと……暇だからである。とにかくやることがない。敵を警戒しまくるのも疲れてしまった)
「……雪だるまでも作って遊びましょうか」
【海月】
暇だから、という理由だけれどまたふらふらと歩きまわっていた。
特に目的もない。今は誰かを殺すこともー…まあないんじゃない?
というわけで、まだ行ったことのない船着場。船を待つほど悠長じゃないけれど。
「…お。前見た…柏木ちゃん?だっけ」
何か朧気な記憶だけど盛大に墓穴掘っていた子、のような気がする。
まあ、アッチでのことだしこっちとは無関係か。
「おーい、柏木ちゃーんっ!何してるの?ねえねえこんなところで一人で何してるの?
ぼっち?」
【柏木 愛】
「ォアア!?ああ、海月さんですか。やっぱりなんか、雰囲気違いますよね?テンションおかしいですよね?あと俺はぼっちじゃないです。俺にはお守り(写真)がついています。
海月さんもなんだか暇そうですね?」
(重い腰を上げ、スコップでも探すかとなった時に、突如現れた海洋生物。驚いて海に落ちそうになるが、どうにかセーフだった)
【海月】
「えー?テンション違うかなぁ?オレはこれが平常運転だよ!それに柏木ちゃんの方こそ何か嬉しそうだね?
そのお守りとやら結構気になるんだけど見せてくれない?」
まあ、あっちとの会話を鑑みるに写真に何か入っているんだろうけれど。
正直、相手にしか分からない情報とあれば、手に入れないっていう選択肢はないよね?
「見せてよー!ほらほらー!」
【柏木 愛】
「だ、ダメですよ!これは他の人に見せちゃダメって言われたんです!」
(服の内ポケットに入っていたコロパッドを隠す。嘘が苦手な人間であった。どこぞの詐欺師もどきに伝授してもらおうかしら)
【海月】
「んー?でも、よく考えてみてよ。他の人に見せちゃダメって、他の人に言われたんだよね?
だったらその人は見てるじゃん。柏木ちゃん、その人には見せるのにオレには見せないって言うの?
それってさ…この状況だと、「疑ってください!」って言ってるようなものじゃない?」
まあ、彼が分かりやすい行動しか取っていないのはおいておいて。
他の人に見せちゃダメ…それほど重要な情報が入っているのかな?というか、他の人って何人だろうね。
流石に周囲全員ってことはあり得ない、だろうけれど…
「柏木ちゃんもすぐには死にたくないでしょ?信用を得るためなら…何でもしなきゃいけないんじゃない?」
【柏木 愛】
「ん?ん?他の人に見せちゃだめだけど他の人は見てて……あれ?ん?
いや、俺にはそんな、疑う要素なんて、ん?」
(大混乱。相手の口が達者というのもあるが、あまりにもアホなのである。極めつけに「死」というワードを出され、応じないわけにはいかなかった)
「わ、わかりましたよ……絶対誰にも見せないでくださいね?」
(こうして彼は、コロパッド内の秘蔵の写真を見せてしまうのであった……)
【海月】
「よし!何が入ってる、の、か…あー…?」
何でもいいけれど、秘匿の情報がゲットできる!
…って思ったのが割と間違いだった。ああ、いや、オレこういうのは別にどうとも思わないんだけど、ほら、ね?
…何でオレ幼女の裸見せられてんの?
いや別にほら、恥ずかしいとかじゃないんだけどさ!!こういうのって犯罪じゃないの!?
仮の身体だとしても柏木ちゃん結構、え?え、ああ、ううううう…
「え、え?ああ…ああー、うん…
…柏木ちゃんこれ、どうやって撮ったの…?」
結論。
虎穴に入って虎子を得ることは割と少ない。
【柏木 愛】
「本人に頼んだんですよ……流石の俺も盗撮の趣味はないです」
(こころちゃんの件は盗撮ではなく芸術だと思い込んでいる)
「俺がこれ見せたこと、本当に内緒ですよ?あ、ていうか海月ちゃんも写真も撮らせてくれませんか?俺、アートに目覚めてしまったようです」
【海月】
「本人に…え?頼んで撮らせてもらえるものなのこれ?」
もしかしたらオレの常識が間違って…いや、いやいやいや…
流石にオレでも女の子の裸撮る趣味はないって…
……え?
「いや、ほらさぁ!オレ仮の身体は女の子だけど男だから、柏木ちゃんの期待には応えられないんじゃないかなー?
ここにはもっと他に色々いるでしょー?そっち当たった方がいいと思うんだけどッ!」
待って。マズい。こういう人本当に苦手、というか、無理。
くっそ!!何でこういう時に万能なアカエルちゃんは出てこないのさ!!オレの命の危機なんだけど!?
【柏木 愛】
「いや、元の身体とか、芸術に関係ないです。
わかりますか?女の子の裸に雪って、めっちゃ合うんですよ。俺はこれを可能な限り集めてみたい……あ、ちなみに自分のもあります」
(コロパッドを操作し、別の写真を見せる。全裸の柏木が夜空を背景に佇んでいる……)
「お願いします!裸撮らせてください!なんでもしますから!」
(土下座。彼の辞書にプライドという文字は存在しない)
【海月】
「……あー…」
最初の共有チャットを見た時点で気づくべきだった。柏木ちゃんは"こういう"人だって。
何でそれなのに不用心に近づいたかなぁ!!!何でかなぁ!!?
「いや、オレにはちょっと分かりかねる、かなぁ?というか、そんなことしてたら風邪引くし…
なんでもって言われてもさぁ………」
ぶっちゃけ、なんでもするって言われると聞きたいことは山ほどあるんだけれど。
流石にそれを自分の裸体と比べるのは酷ってものじゃないかなって思うんだけれど。
「オレはそのー、ちょっと遠慮しておこうかなって!」
ただ、オレは結構優しいから、声には出さないでおいてあげるよ!
だから早くどっか行って!!!!
【柏木 愛】
「そ、そうですよね……いきなりこんなこと、嫌ですよね……」
(頼み事としてはあまりにもムシが良すぎるというか、自分勝手すぎた。自分だってトロンパに無理やりトロンパされるのは嫌だったではないか。相手の心を思いやるということが……)
「でもやっぱり見たいいいいいい!!見せてくださいいい!」
(理性に勝てなかった。服を脱がさんと海月に飛びかかる)
【海月】
「そうそう、嫌だ…ッてはあ!!??」
いきなり飛びかかってきた、が流石に警戒はしていたし避けた。
待って、なんだこいつ、待って、え?え?女子の裸そんなに見たいの!?別にどうでもよくない!?
まず相手に許可とか合意とか得るっていう段階を踏むことが先じゃないの!?
「あ、あー…ほら!!また今度会った時ね!?それでいい!?」
異論は聞かない、反論も聞かない、弁解もさせてたまるか。
返事を聞く前に逃げ出した。こころちゃんの時より割と全力で。
【柏木 愛】
「わぶっ!ま、待てぇ!裸ぁぁぁぁぁあ!」
(受け身も何も考えず飛びかかったため、雪の地面に思いっきりダイブする。走り去る相手を追おうとするが、雪に足を取られて叶わない。小さくなっていく相手の背中に、手を伸ばすのみであった……)
五番目の道化師(3rd)-ロティ(7th)
【五番目の道化師】
中央エリアにあるホテルに道化師は戻ってきていた。
ホテルのフロントにある待ち合い用のソファに座り、ジャグリングの練習をしていた。
(あー、もう。部屋が清掃中じゃなかったら部屋で練習していたのになぁ!)
普段、すべての荷物を持ち歩いているので未使用の部屋として扱われてしまったらしい。
【ロティ】
「道化……か…?」
そんなホテルのロビーに、私はふらりと戻る。
そこで見たのは道化と、ジャグリングの練習をする光景そのもの。
……何故ここで?
……何故道化が?
……何故練習を?
そんな事を思いつつ、バットはしまってその道化の元へと歩み寄る。
何か、話が聞ければ良いのだが。
少しでも生きて帰れる可能性を高める為に、命を落とす可能性を下げる為に。
まずは情報が欲しいだろう?
「そこの道化師君、何をしているんだい?
ジャグリング……の、練習と考えて良いのだろうか……?」
まずはファーストコンタクトだ。
ジャグリング練習中に悪いが、少し話をしようと思いつつ声をかけた。
見てわかるが、何をしているのかと聞き、分かり切った事を聞く。
これだけでも、十分会話に繋がる。
【五番目の道化師】
「んー、ジャグリングの練習だよー。使ってた部屋がね。暫く使っていなかったこともあって清掃中だから練習をしてるんだよ」
ポーンと二つの玉を高く放りなげてからバッとリュックを仕舞うと次々とボールがリュックに収まった。このリュックは配布された道具が入っていたリュックである。
「はじめまして?かな。私は五番目の道化師。みんなは私のことをピエロと呼ぶからピエロと呼んでくれると嬉しいな」
ニコッと微笑むがピエロが微笑んでも…なあ?
【ロティ】
「成程……ではピエロと呼ばせてもらうよ。
僕の事はロティと呼んでおくれ、よろしくね。」
なるほどと頷き、それならば此方も合わせてピエロと呼ばせてもらう。
そして名乗ってもらったのだ、此方も名乗り返そう。
偽名だが、ロティと名乗る。
そしてよろしくと伝えて、手を差し出して。
簡単な握手位はしても良かろう、そう思いつつ、ハットを脱いで。
「その顔は…メイクかな?」
そしてピエロの顔はメイクかと問い掛けつつ、再びハットを被り直し。
【五番目の道化師】
「よろしく、ロティ」
握手に応じてから、メイクについての指摘に答える。
「うん、メイクだよ。お風呂に入っても落ちない特殊なものを使い始めたんだ」
前使ってた化粧品は水で落ちてしまうし、ココアの染みができてしまったから変えたのだ。
「とりあえず、あんな放送があったから隣は不安だろうけど…座る?」
自分の右隣の空いてるソファを示す。
【ロティ】
「握手に応じて貰ったからね…少しは信用するさ。」
少なくとも、直ぐに殺しに来るような輩では無いだろうと思いつつ。
握手に応じてくれたのなら信じると告げて、そのままピエロの隣に失礼する。
殺されたなら、それは運が無かった。
しかし、そう易々と殺されてたまるか。
そんな事を思いながら、ピエロの隣に座りながらもメイクを見て、なるほどなと思う。
「君は、何故道化師なんだい?
………人を驚かし、楽しませるのが仕事だろう?」
自分の中の道化師とは。
他人を驚かせ、他人を楽しませる物と認識している。
君はどうなのかと言った様子で、問いかける。
【五番目の道化師】
「私は人を笑顔にさせることが好きでね。バイトでもピエロをしてるんだ。」
人を笑顔にする仕事はたくさんあるがピエロは心から人を楽しませることができる職業だと私は思っている。
「『他人が喜ぶ』これがとても嬉しくてね。やめられないんだよ。高校を卒業すれば正式にサーカスに入団してより多くの人を笑顔にできる!そう考えると楽しみだよ!」
【ロティ】
「成程ね……僕は人を驚かすピエロも好きだけどね。
……あ、でも偶に怖がらせに来るピエロも居たりするね……色々あるのかな…。」
そうなのかと言った様子で頷いて。
しかし、ロティとしては楽しませるだけではなく、驚かすピエロもいいと思うと述べる。
そして最近を思えば。
驚かすとか笑わせるだけではなく、怖がらせに来るピエロも居ると呟いた。
「僕は……どれになれるのだろうか…。
出来る事といえば……これ位だけどね。」
そう言って、とある物を懐から取り出した。
それは……黒い、1目見ただけで何か分かるものであろう。
単純に、よく知られている。
黒いだけの…………ハンドガンの様なもの。
これが何かは、この後話すとしよう。
【五番目の道化師】
「人を怖がらせるピエロって、ホラー映画のピエロだよ。流石に現実でピエロな殺人鬼がいたら警察が動いて捕まえちゃうよ!」
ちなみに許可なくピエロのコスプレをして道を歩いていても警察に不振人物として拘束されます(事実)。
「それは…本物?」
本物を見たことがないので恐る恐る聞いてみる…が、ちょっと怖かったのか数センチほど距離をとって、身構えてしまうのは許してほしい。
【ロティ】
「ああ……これかい…。
……本物かどうか、君で確かめさせてあげよう。」
黒い、黒い、ただそれだけのハンドガン。
これが本物かどうかなど、一般人に見分ける事など至難の業にも等しく。
それを知りたいのかと呟けば。
私は……銃口を、ピエロに向けた。
本物かどうか、確かめさせてやる。
そう伝えてただ引き金を引いた……なんの躊躇いも無く。
だってそうだろう?
────ただのクラッカーだからね。
……つまり、引き金を引くと。
同時に軽快なパンッ!という音と共に銃口からは紙吹雪や紐がピエロへ向かって飛び出す。
……ただ、それだけ。
「……偽物のクラッカーだよ、ショッピングモールで見つけたから買った。
これ位しか、驚かせる方法が思い付かなくてね……悪かったよ。」
【五番目の道化師】
銃口が自分に向いたとき、道化師は声にならない悲鳴を上げて、耳を塞ぎ目を強くつぶった。
(やだ、死にたくない!!)
怖い、その思いだけが感情を占め──パンッ!と聞き慣れた音を聞いた時、力が抜けた。
「〜〜〜〜〜っ、馬鹿ばかばかばか!!死ぬかと思ったじゃない!!もう、やっていい冗談とやっちゃダメな冗談くらいわかってよぉ!!もお!!」
力ない拳でポコポコとロティを叩きながら大号泣である。
【ロティ】
「そ、そこまでかい……?
……って…そうか、こんな状況なら当たり前か……いや、本当に済まなかった……。」
まさかここまでとは。
そう言いながらも、今は状況が状況である事を思い出し、反省する。
人が、いつ死んでもおかしくないこの場所で。
この悪戯、もとい、行動は本当と思わせるには充分すぎる出来事だと分かった。
それを理解すれば、力なく叩いてくるピエロに、申し訳ないと言った様子で謝罪する。
「ちょっとしたレクリエーション的な感じにしたかったんだけど……。
思ったより怖がらせてしまった様だ……。」
此方としては本来、ちょっとしたお遊びというか、レクリエーション的な感じでやるつもりだった。
しかし、それは上手くいかない物だった。
思いのほか怖がらせてしまった。
コミュニケーションの難しさを実感しつつ、ピエロに謝罪を続けて。
【五番目の道化師】
「ばかぁぁあ……っ!!」
一度泣くと中々泣き止むの大変なんだからなぁ!!たまった不安とかも爆発するから小一時間とか泣いてるのとかはまだマシな方なんだからなぁ!!←
「もう、もう二度とこんなおふざけはやめてね。絶対だからね…もう、やだからね。こんなの…っ!」
グズグズ泣きながら言っている道化師のメイクが取れていないのはまさに奇跡だと思う。
「あと、できればわたしが泣いたのは内緒にして…」
これはかなり小声だった。
【ロティ】
「ああ……分かった…。」
ただ、それだけの返事を。
今回の悪ふざけは、もうやらないようにしようと思いつつ、ハットを深く被って。
メイクが崩れないのは、ほぼ奇跡なのかと思いつつ、それに関しては今触れるべき物では無いだろう。
話を逸らすことはしない。
今は、自分のやった事の振り返りをする時間で、そして目の前のピエロを宥める時間だから。
「……言わないよ、約束しよう。」
そして誰にも言わないでという言葉も聞こえた。
それならば、勿論言わない。
原因は自分、なら相手の言う通りにする事も、償いの一環だとして。
【五番目の道化師】
どれくらいの時間泣き続けたのだろうか。(時計がないから経過時間は把握できないが)少なくとも30分以上は泣き続けてしまったのだろう。
だんだん溢れる涙が収まってきて…落ち着いてくる。
凄いことに(目は赤くなってしまったが)これだけ泣いてもメイクは取れていない。
「すみません…泣き出してしまって…」
申し訳なさそう…と、いうか。かなり気まずそうだ。
だって、クラスメイトの前で泣くつもりは一切なかったからだ。そんな失態みせたら恥ずかしいし()
【ロティ】
「いいや……気にしなくても良い。
元はと言えば僕のせいだからね……こちらこそすまない…。」
泣き出したことに関しては此方に非がある。
だから、気にする必要はピエロにはこれっぽっちも無いのだ。
無論、それはこちらのせいなのだから。
だから、すまないと伝えて。
気まずい雰囲気で、そのホテルロビーに漂うのは火薬の残り香。
少し経ってから、言葉を籠らせて。
「…………これ、あげるよ。
本当に悪かったね、そろそろ僕は行くよ……。
……フレンド登録…しておくかい?」
そして残っていたハンドガンクラッカーをピエロにあげることにした。
そしてそろそろロティは去るつもり。
……とりあえず、フレンド登録はするかと問いかけて、最近操作を覚えたパッドを片手に持って。
【五番目の道化師】
「えっ…いいの?」
ピエロが銃(クラッカー)を持っていても違和感があると思うが困惑した表情を浮かべてハンドガンクラッカーを受けとる。
「うん、してもらえると助かる」
道化師は端末を取り出してフレンド登録を受け入れた。
あっ…もう部屋の清掃も終わったかな。そろそろ私も部屋に戻ろうか…。
【ロティ】
「よし、分かったよ。」
ハンドガンクラッカーを渡しフレンド登録についてはパッドを操作する。
ヒガンバナに教えてもらったように、ぎこちない手つきではあるが。
「……あれ?
えー……っと、確か此処を…あれ?
…………すまない、少し待っておくれ…。
これは……違うな……えぇ…?」
ぎこちない手つきで、何か色々一人で葛藤。
フレンド登録するだけはずなのに、関係ない所に触れて別の物を開いたり、危うく一度電源を落としそうになったり。
ピエロに少し待ってくれと伝えつつ、何とかしなければと少し焦っている。
機械音痴全開である。
そしてしばらくしてから、ピエロの方へ。
「……すまない、やり方、分からなくなった……。
…から……やってもらえるだろうか……。」
結局は他人に頼らざるを得なかった。
そろそろ本当に覚えなければと、ピエロがやってくれるならばその様子を見てメモでもしておこうかと思った程に。
【五番目の道化師】
「あー…この端末使いづらいもんねぇ」
初日にぽちぽちしてなかったら自分も使い方がわからなかったんだよなぁ。
「とりあえず、こっちからフレンド申請するね!」
申請をしてから『これをOKすれば大丈夫』と教える。
そして、チャットの使い方を中心に一通り教えてみるが───わかってくれただろうか。
【ロティ】
「いや……本当に申し訳ない…。
やり方はメモしたし、多分大丈夫だ。」
やり方はしっかりと覚えた……筈。
操作方法はメモした。
少し不安が残る物の、やれないことは無い。
いけるだろう、そう思いつつパッドを受け取る。
次に人に会う時は、上手くやる。
「ありがとう、世話になった。
……いずれまた会おう、その時は素顔でも見せてもらおうかな?」
ソファーから立ち上がり、世話になったと告げる。
いずれまた会える時には、メイクの下の素顔でも見せてもらおうかな、なんて言って。
そのままホテルの外へと向かうのみ。
次は、何処へ行こうか……なんて思いつつ。
【五番目の道化師】
中央エリアにあるホテルに道化師は戻ってきていた。
ホテルのフロントにある待ち合い用のソファに座り、ジャグリングの練習をしていた。
(あー、もう。部屋が清掃中じゃなかったら部屋で練習していたのになぁ!)
普段、すべての荷物を持ち歩いているので未使用の部屋として扱われてしまったらしい。
【ロティ】
「道化……か…?」
そんなホテルのロビーに、私はふらりと戻る。
そこで見たのは道化と、ジャグリングの練習をする光景そのもの。
……何故ここで?
……何故道化が?
……何故練習を?
そんな事を思いつつ、バットはしまってその道化の元へと歩み寄る。
何か、話が聞ければ良いのだが。
少しでも生きて帰れる可能性を高める為に、命を落とす可能性を下げる為に。
まずは情報が欲しいだろう?
「そこの道化師君、何をしているんだい?
ジャグリング……の、練習と考えて良いのだろうか……?」
まずはファーストコンタクトだ。
ジャグリング練習中に悪いが、少し話をしようと思いつつ声をかけた。
見てわかるが、何をしているのかと聞き、分かり切った事を聞く。
これだけでも、十分会話に繋がる。
【五番目の道化師】
「んー、ジャグリングの練習だよー。使ってた部屋がね。暫く使っていなかったこともあって清掃中だから練習をしてるんだよ」
ポーンと二つの玉を高く放りなげてからバッとリュックを仕舞うと次々とボールがリュックに収まった。このリュックは配布された道具が入っていたリュックである。
「はじめまして?かな。私は五番目の道化師。みんなは私のことをピエロと呼ぶからピエロと呼んでくれると嬉しいな」
ニコッと微笑むがピエロが微笑んでも…なあ?
【ロティ】
「成程……ではピエロと呼ばせてもらうよ。
僕の事はロティと呼んでおくれ、よろしくね。」
なるほどと頷き、それならば此方も合わせてピエロと呼ばせてもらう。
そして名乗ってもらったのだ、此方も名乗り返そう。
偽名だが、ロティと名乗る。
そしてよろしくと伝えて、手を差し出して。
簡単な握手位はしても良かろう、そう思いつつ、ハットを脱いで。
「その顔は…メイクかな?」
そしてピエロの顔はメイクかと問い掛けつつ、再びハットを被り直し。
【五番目の道化師】
「よろしく、ロティ」
握手に応じてから、メイクについての指摘に答える。
「うん、メイクだよ。お風呂に入っても落ちない特殊なものを使い始めたんだ」
前使ってた化粧品は水で落ちてしまうし、ココアの染みができてしまったから変えたのだ。
「とりあえず、あんな放送があったから隣は不安だろうけど…座る?」
自分の右隣の空いてるソファを示す。
【ロティ】
「握手に応じて貰ったからね…少しは信用するさ。」
少なくとも、直ぐに殺しに来るような輩では無いだろうと思いつつ。
握手に応じてくれたのなら信じると告げて、そのままピエロの隣に失礼する。
殺されたなら、それは運が無かった。
しかし、そう易々と殺されてたまるか。
そんな事を思いながら、ピエロの隣に座りながらもメイクを見て、なるほどなと思う。
「君は、何故道化師なんだい?
………人を驚かし、楽しませるのが仕事だろう?」
自分の中の道化師とは。
他人を驚かせ、他人を楽しませる物と認識している。
君はどうなのかと言った様子で、問いかける。
【五番目の道化師】
「私は人を笑顔にさせることが好きでね。バイトでもピエロをしてるんだ。」
人を笑顔にする仕事はたくさんあるがピエロは心から人を楽しませることができる職業だと私は思っている。
「『他人が喜ぶ』これがとても嬉しくてね。やめられないんだよ。高校を卒業すれば正式にサーカスに入団してより多くの人を笑顔にできる!そう考えると楽しみだよ!」
【ロティ】
「成程ね……僕は人を驚かすピエロも好きだけどね。
……あ、でも偶に怖がらせに来るピエロも居たりするね……色々あるのかな…。」
そうなのかと言った様子で頷いて。
しかし、ロティとしては楽しませるだけではなく、驚かすピエロもいいと思うと述べる。
そして最近を思えば。
驚かすとか笑わせるだけではなく、怖がらせに来るピエロも居ると呟いた。
「僕は……どれになれるのだろうか…。
出来る事といえば……これ位だけどね。」
そう言って、とある物を懐から取り出した。
それは……黒い、1目見ただけで何か分かるものであろう。
単純に、よく知られている。
黒いだけの…………ハンドガンの様なもの。
これが何かは、この後話すとしよう。
【五番目の道化師】
「人を怖がらせるピエロって、ホラー映画のピエロだよ。流石に現実でピエロな殺人鬼がいたら警察が動いて捕まえちゃうよ!」
ちなみに許可なくピエロのコスプレをして道を歩いていても警察に不振人物として拘束されます(事実)。
「それは…本物?」
本物を見たことがないので恐る恐る聞いてみる…が、ちょっと怖かったのか数センチほど距離をとって、身構えてしまうのは許してほしい。
【ロティ】
「ああ……これかい…。
……本物かどうか、君で確かめさせてあげよう。」
黒い、黒い、ただそれだけのハンドガン。
これが本物かどうかなど、一般人に見分ける事など至難の業にも等しく。
それを知りたいのかと呟けば。
私は……銃口を、ピエロに向けた。
本物かどうか、確かめさせてやる。
そう伝えてただ引き金を引いた……なんの躊躇いも無く。
だってそうだろう?
────ただのクラッカーだからね。
……つまり、引き金を引くと。
同時に軽快なパンッ!という音と共に銃口からは紙吹雪や紐がピエロへ向かって飛び出す。
……ただ、それだけ。
「……偽物のクラッカーだよ、ショッピングモールで見つけたから買った。
これ位しか、驚かせる方法が思い付かなくてね……悪かったよ。」
【五番目の道化師】
銃口が自分に向いたとき、道化師は声にならない悲鳴を上げて、耳を塞ぎ目を強くつぶった。
(やだ、死にたくない!!)
怖い、その思いだけが感情を占め──パンッ!と聞き慣れた音を聞いた時、力が抜けた。
「〜〜〜〜〜っ、馬鹿ばかばかばか!!死ぬかと思ったじゃない!!もう、やっていい冗談とやっちゃダメな冗談くらいわかってよぉ!!もお!!」
力ない拳でポコポコとロティを叩きながら大号泣である。
【ロティ】
「そ、そこまでかい……?
……って…そうか、こんな状況なら当たり前か……いや、本当に済まなかった……。」
まさかここまでとは。
そう言いながらも、今は状況が状況である事を思い出し、反省する。
人が、いつ死んでもおかしくないこの場所で。
この悪戯、もとい、行動は本当と思わせるには充分すぎる出来事だと分かった。
それを理解すれば、力なく叩いてくるピエロに、申し訳ないと言った様子で謝罪する。
「ちょっとしたレクリエーション的な感じにしたかったんだけど……。
思ったより怖がらせてしまった様だ……。」
此方としては本来、ちょっとしたお遊びというか、レクリエーション的な感じでやるつもりだった。
しかし、それは上手くいかない物だった。
思いのほか怖がらせてしまった。
コミュニケーションの難しさを実感しつつ、ピエロに謝罪を続けて。
【五番目の道化師】
「ばかぁぁあ……っ!!」
一度泣くと中々泣き止むの大変なんだからなぁ!!たまった不安とかも爆発するから小一時間とか泣いてるのとかはまだマシな方なんだからなぁ!!←
「もう、もう二度とこんなおふざけはやめてね。絶対だからね…もう、やだからね。こんなの…っ!」
グズグズ泣きながら言っている道化師のメイクが取れていないのはまさに奇跡だと思う。
「あと、できればわたしが泣いたのは内緒にして…」
これはかなり小声だった。
【ロティ】
「ああ……分かった…。」
ただ、それだけの返事を。
今回の悪ふざけは、もうやらないようにしようと思いつつ、ハットを深く被って。
メイクが崩れないのは、ほぼ奇跡なのかと思いつつ、それに関しては今触れるべき物では無いだろう。
話を逸らすことはしない。
今は、自分のやった事の振り返りをする時間で、そして目の前のピエロを宥める時間だから。
「……言わないよ、約束しよう。」
そして誰にも言わないでという言葉も聞こえた。
それならば、勿論言わない。
原因は自分、なら相手の言う通りにする事も、償いの一環だとして。
【五番目の道化師】
どれくらいの時間泣き続けたのだろうか。(時計がないから経過時間は把握できないが)少なくとも30分以上は泣き続けてしまったのだろう。
だんだん溢れる涙が収まってきて…落ち着いてくる。
凄いことに(目は赤くなってしまったが)これだけ泣いてもメイクは取れていない。
「すみません…泣き出してしまって…」
申し訳なさそう…と、いうか。かなり気まずそうだ。
だって、クラスメイトの前で泣くつもりは一切なかったからだ。そんな失態みせたら恥ずかしいし()
【ロティ】
「いいや……気にしなくても良い。
元はと言えば僕のせいだからね……こちらこそすまない…。」
泣き出したことに関しては此方に非がある。
だから、気にする必要はピエロにはこれっぽっちも無いのだ。
無論、それはこちらのせいなのだから。
だから、すまないと伝えて。
気まずい雰囲気で、そのホテルロビーに漂うのは火薬の残り香。
少し経ってから、言葉を籠らせて。
「…………これ、あげるよ。
本当に悪かったね、そろそろ僕は行くよ……。
……フレンド登録…しておくかい?」
そして残っていたハンドガンクラッカーをピエロにあげることにした。
そしてそろそろロティは去るつもり。
……とりあえず、フレンド登録はするかと問いかけて、最近操作を覚えたパッドを片手に持って。
【五番目の道化師】
「えっ…いいの?」
ピエロが銃(クラッカー)を持っていても違和感があると思うが困惑した表情を浮かべてハンドガンクラッカーを受けとる。
「うん、してもらえると助かる」
道化師は端末を取り出してフレンド登録を受け入れた。
あっ…もう部屋の清掃も終わったかな。そろそろ私も部屋に戻ろうか…。
【ロティ】
「よし、分かったよ。」
ハンドガンクラッカーを渡しフレンド登録についてはパッドを操作する。
ヒガンバナに教えてもらったように、ぎこちない手つきではあるが。
「……あれ?
えー……っと、確か此処を…あれ?
…………すまない、少し待っておくれ…。
これは……違うな……えぇ…?」
ぎこちない手つきで、何か色々一人で葛藤。
フレンド登録するだけはずなのに、関係ない所に触れて別の物を開いたり、危うく一度電源を落としそうになったり。
ピエロに少し待ってくれと伝えつつ、何とかしなければと少し焦っている。
機械音痴全開である。
そしてしばらくしてから、ピエロの方へ。
「……すまない、やり方、分からなくなった……。
…から……やってもらえるだろうか……。」
結局は他人に頼らざるを得なかった。
そろそろ本当に覚えなければと、ピエロがやってくれるならばその様子を見てメモでもしておこうかと思った程に。
【五番目の道化師】
「あー…この端末使いづらいもんねぇ」
初日にぽちぽちしてなかったら自分も使い方がわからなかったんだよなぁ。
「とりあえず、こっちからフレンド申請するね!」
申請をしてから『これをOKすれば大丈夫』と教える。
そして、チャットの使い方を中心に一通り教えてみるが───わかってくれただろうか。
【ロティ】
「いや……本当に申し訳ない…。
やり方はメモしたし、多分大丈夫だ。」
やり方はしっかりと覚えた……筈。
操作方法はメモした。
少し不安が残る物の、やれないことは無い。
いけるだろう、そう思いつつパッドを受け取る。
次に人に会う時は、上手くやる。
「ありがとう、世話になった。
……いずれまた会おう、その時は素顔でも見せてもらおうかな?」
ソファーから立ち上がり、世話になったと告げる。
いずれまた会える時には、メイクの下の素顔でも見せてもらおうかな、なんて言って。
そのままホテルの外へと向かうのみ。
次は、何処へ行こうか……なんて思いつつ。
まにょ(5th)-マリア(9th)
【まにょ】
不規則な揺れが訪れる、小さな部屋の話だ。
向かい合わせに席があり、距離は一メールと少しぐらいの狭い空間。テーブルの類はなく、窓も椅子に座った頭の後ろに頭部ほどの高さしかない横長のもので、遠くの真一文字を誤魔化す白い霧を見せる。
ここは船の上だ。
発着場に近いからかさほど波も高くないようで揺れは小さいものの、電車のように規則的なものではないからか苦手な人は苦手な感覚だろう。
狭い空間で逃げ場もなく、危険な状況…といえなくもないが、今日は降雪で寒い海辺に近寄ろうと考える人間はそう多くないだろう。雪のおかげで視界も悪く、ここに自分がやってきたことを知る人物は殆ど皆無と行って良い。
こっそり、誰かと会うには丁度良い。少し寒いのが難点だが、行く心積もりで居るならそれなりに準備もする。張るタイプのホッカイロのおかげで、寧ろ少し体はホカホカしているぐらいだ。
少し前に、今も開いている`共有チャット`とはまた別のチャット…所謂、特定の人物にのみ送る`個人チャット`と言うものを使った。話がしたいから、ここであえないだろうか、などと……機密組織の諜報員が密会をするときはこんな漢字なのだろうか。少しドキドキする。少し大きい波で船が揺れた。エンジンもなく、港につながれた船はお気に流されることはないが、揺れの大きさに思わず顔を上げてしまう。
【マリア】
『…話って?』
案の定呼び出された私は、船酔いに盛大に顔を顰めながら、極めて一般的な定型文を口にする。
私は、船がダメだ。
一度、かつてのクラスメイトの弔いに、"修学旅行"を果たすため、南洋の島に出向いたことがあるのだが、そのときも――仔細は下品なので省くが――半死半生、ぐったりとしてしまった。
だから、船は天敵であると言っても良い。しかし、だからてめぇが私のホテルに来やがれってんだ馬鹿野郎!と、江戸の侠客のような気炎を吐くわけにいかず、結局来たのだが、気持ち悪いものは気持ち悪い。
この手の気持ち悪さは、一生にいっぺん味わったらそれでもう許してくれて良いのではないだろうか、と、らしくもない弱気を吐く。それだけキツいのだ。
『なるだけ…早く、済ませて。
ほらここ、逃げ場も…ないし。』
ぜえぜえと荒い呼吸をし、顔を青くしながら、私は精一杯のフォローを入れる。頑張ったと褒められても良いのではないかと思う。
イエス・キリストだって、船に弱ければ、汝隣人をと言い終える前に吐き戻しておかしくないのだ。
私にしては上出来である。
【まにょ】
はっきりと考えていることを、飾らず騙らず誤魔化さず言うならば、驚いていた。
出会った当初に、まるでひょんなことでこの世の全てを敵に回しても何の差支えもないと考えているかのような頑強な人間であるイメージが付いていたからか、こうも弱った彼女を目の当たりにすると一瞬ぽかんとしてしまう。別に、それでどうこうとからかうつもりも、悪巧みをするつもりも毛頭ない。寧ろほっとした気すらする。弱みがあるのは、人間らしいとも言えることだからだ。
「ごめんなさい、貴女、船酔いするんですね…苦手なものなんてなさそうだったからつい……あぁ、いえ、そんなことより場所を変えましょう。落ち着いて話が出来ないなら、意味がありませんから」
はっとして、あたふたと立ち上がるとマリアを支えて船から降りていく。ここを選んだのは本当に人が寄り付かなさそうだったからと言うのと、乗船場というものに興味を持ったからに過ぎない。結局エンジンも抜かれたただの海上で揺れる個室でしかなかったのだが。マリアが辛いと言うなら、無理にそこに留まるだけの強い理由もないのだ。
【マリア】
『……ありがと。割とマシ。』
船着場のへりに腰を下ろし、頭を片手で抱えながら、思考のネジを無理やり巻き上げる。
何か折り入って話したいことがあるというのなら、重大な用事なのは間違いないし、こちらに良い話にしろ、悪い話にしろ、命に関わる用事はぽんぽん出るのがこのゲームの倣いだ。
防諜は皆無にしても。
兵は拙速を尊ぶともいう。
まず、要件から先に入ろう。
『…で、要件は?』
【まにょ】
さっきの今で話しを続けて大丈夫なものかと疑問には思うが、それこそ彼女の魂胆を鑑みるべき場面だろう。大事な話であることは変わりない。
「…昨晩の放送をお聞きになったかと思うのですが、単刀直入に申し上げまして……出来れば今後、なるべく行動を共にしていただきたいのです」
冷気の中に吐かれる白い靄と共に滑り出たのは、少しだけ弱弱しい一言だった。本名の名簿を見てここにいる参加者と言うのがクラスメイトであることは知っていた。だが共有チャットを見ていても分かるとおり顔見知り相手でも`頓着なく`敵意を向けることが出来る人が存在することを知って、元々知っている相手のその記憶を頼りにするのは控えたほうがいいと考えるようになった。今信じるべきは、今信じられる存在である。
その相手として思い浮かんだのが、マリアだった。
ここに来てから出会った人が少なかったと言うのもあるが、それを差し引いても、共に行動して頼れる相手であると実感したのは彼女ただ一人だ。だが自分はそうであっても、彼女から見て自分がそうするに値するかどうかは分からない。だいぶ、当たって砕けろと言う気持ちで今はいる。
「四六時中とは言いません。この島にある幾つかの宿泊施設のうち、どこか同じ場所で近い部屋をとっておきたいのです。…お恥ずかしい話、今、この状況で一番信頼できるのが、貴女なので」
どうでしょうか、と、窺うように視線を向ける。腰掛けたマリアも入るように傾けた番傘の上で、少しだけ雪が積もっていた。
【マリア】
『頼みは聞いても良いけれど。』
不安になる気持ちはわからなく無いし、いちいち遠方まで連絡をするよりは、部屋が近い方が勝手も良い。電車を乗り継ぐうちに殺されました、では話にならない。
何のことはない。極一般の神経だ。私が前に推察したように当てはめるのならば、普通の女子高生のアタマをしている、と評価をしておいても良い。
だが。
苦笑する。
私に、信じる、なんていうワードを投げかけるところに。
概ね、信用なんて取るに足らない。疑いたくないから信じるのであって、それは、相手の人間性を見た行為ではなく、破産したくないから貯金する、という位の、事務的な行為でしかない。
誰々を信じる。
と言った事は誰しもあるだろう。
だが。
信じ続けたことはないはずだ。
一人の人間を、徹頭徹尾、生涯に渡り信じ続けたことがあるなら、それは狂信か盲信だ。評価しなくもないが、バカバカしい。
よって。
大体の信用とは、郵便物にする判子のようなもので、当日消印有効である場合が多い。
土壇場でたやすく消えるのだ。
それに引き換えるなら、疑心とは面白い。相手の人間性と向き合って、判断する。健康的だ。
だから、私に言わせれば、こんな言葉は笑止千万。騙すだけ騙して、郵便物の比喩に重ねるなら、元旦しか使わない年賀はがきによろしく、適当に使い捨てる絶好のカモ、と言える。
だから――――――
『私の事なんて、信用しない方が良い。どれだけ、私の言葉が真実めいていても信じないでいなさい。後悔するわよ。』
は?
何を言っている、私は。
バカバカしい。これでは、自らあなたを騙しませんよ、と顔に書き殴ったようなものではないか。
『私は――詐欺師でもあるから。
まあ、全部嘘かもしれないけど』
やれやれ全く。
思い通りにはいかないものだ。
【まにょ】
「……体験談、ですか?」
どちらの立場のとまで言及はしないが、嫌に生々しい響きを持っている言葉にぽつりと問いかけた。言葉そのものは突き放すように聞こえても、裏には自分を諭す何かがあるのは感じていた。ただ甘いだけの言葉よりずっと嬉しいものだ。多少のとげとげしさなど、今更、この心を傷つけるだけの痛みなど持ち合わせては居ないのだから。
相手が自分の要求を呑んでくれたことに大いにほっとして微笑んだ。簡単に信用するな、そう教えてくれる人と言うのは、総じて、自分の中にずっと残っていくものなのかもしれない。
「それでも構いませんよ。それにきっと……貴女が私を騙すときは…私なんて騙されたとも分からないほど巧妙にしてくださるのでしょう?」
―――そういってくださる間の言葉は、貴女の本心であるのでしょうから。
【マリア】
『経験談、かしら。』
さて、詐欺師それ自体とはなんぞや。という問を投げる相手がいた場合、私は辞書をその御仁の頭に投げつける自信がある。
言ってなかったかもしれないが、私はのんびり屋のくせに、割とキレやすいのだ。相手から頓珍漢な問いや、返答が来るだけで限界である。これは私の不徳の致すところだが、さらに罪を告白するなら言葉がつっかえたり、迂遠だったりするともう、つまらなくなる。
よって。
取り敢えず彼女が出会い頭に地面の味を刷り込むことにはならなかったのは、奇跡と言って良い。
というのは悲しいくらい照れ隠しだとバレバレか。
『まあね、その時は騙してあげる。何も分からないくらい。』
何も騙されたと分からない嘘は、本当に嘘かしら。
『取り敢えず、あなたが泊まる部屋と、今ある情報は個人メッセージに送って。
それまでに死んだら殴るわよ?』
そろそろ気分が悪いので、かっこ悪い姿を見せる前に私は退散する。
【まにょ】
不規則な揺れが訪れる、小さな部屋の話だ。
向かい合わせに席があり、距離は一メールと少しぐらいの狭い空間。テーブルの類はなく、窓も椅子に座った頭の後ろに頭部ほどの高さしかない横長のもので、遠くの真一文字を誤魔化す白い霧を見せる。
ここは船の上だ。
発着場に近いからかさほど波も高くないようで揺れは小さいものの、電車のように規則的なものではないからか苦手な人は苦手な感覚だろう。
狭い空間で逃げ場もなく、危険な状況…といえなくもないが、今日は降雪で寒い海辺に近寄ろうと考える人間はそう多くないだろう。雪のおかげで視界も悪く、ここに自分がやってきたことを知る人物は殆ど皆無と行って良い。
こっそり、誰かと会うには丁度良い。少し寒いのが難点だが、行く心積もりで居るならそれなりに準備もする。張るタイプのホッカイロのおかげで、寧ろ少し体はホカホカしているぐらいだ。
少し前に、今も開いている`共有チャット`とはまた別のチャット…所謂、特定の人物にのみ送る`個人チャット`と言うものを使った。話がしたいから、ここであえないだろうか、などと……機密組織の諜報員が密会をするときはこんな漢字なのだろうか。少しドキドキする。少し大きい波で船が揺れた。エンジンもなく、港につながれた船はお気に流されることはないが、揺れの大きさに思わず顔を上げてしまう。
【マリア】
『…話って?』
案の定呼び出された私は、船酔いに盛大に顔を顰めながら、極めて一般的な定型文を口にする。
私は、船がダメだ。
一度、かつてのクラスメイトの弔いに、"修学旅行"を果たすため、南洋の島に出向いたことがあるのだが、そのときも――仔細は下品なので省くが――半死半生、ぐったりとしてしまった。
だから、船は天敵であると言っても良い。しかし、だからてめぇが私のホテルに来やがれってんだ馬鹿野郎!と、江戸の侠客のような気炎を吐くわけにいかず、結局来たのだが、気持ち悪いものは気持ち悪い。
この手の気持ち悪さは、一生にいっぺん味わったらそれでもう許してくれて良いのではないだろうか、と、らしくもない弱気を吐く。それだけキツいのだ。
『なるだけ…早く、済ませて。
ほらここ、逃げ場も…ないし。』
ぜえぜえと荒い呼吸をし、顔を青くしながら、私は精一杯のフォローを入れる。頑張ったと褒められても良いのではないかと思う。
イエス・キリストだって、船に弱ければ、汝隣人をと言い終える前に吐き戻しておかしくないのだ。
私にしては上出来である。
【まにょ】
はっきりと考えていることを、飾らず騙らず誤魔化さず言うならば、驚いていた。
出会った当初に、まるでひょんなことでこの世の全てを敵に回しても何の差支えもないと考えているかのような頑強な人間であるイメージが付いていたからか、こうも弱った彼女を目の当たりにすると一瞬ぽかんとしてしまう。別に、それでどうこうとからかうつもりも、悪巧みをするつもりも毛頭ない。寧ろほっとした気すらする。弱みがあるのは、人間らしいとも言えることだからだ。
「ごめんなさい、貴女、船酔いするんですね…苦手なものなんてなさそうだったからつい……あぁ、いえ、そんなことより場所を変えましょう。落ち着いて話が出来ないなら、意味がありませんから」
はっとして、あたふたと立ち上がるとマリアを支えて船から降りていく。ここを選んだのは本当に人が寄り付かなさそうだったからと言うのと、乗船場というものに興味を持ったからに過ぎない。結局エンジンも抜かれたただの海上で揺れる個室でしかなかったのだが。マリアが辛いと言うなら、無理にそこに留まるだけの強い理由もないのだ。
【マリア】
『……ありがと。割とマシ。』
船着場のへりに腰を下ろし、頭を片手で抱えながら、思考のネジを無理やり巻き上げる。
何か折り入って話したいことがあるというのなら、重大な用事なのは間違いないし、こちらに良い話にしろ、悪い話にしろ、命に関わる用事はぽんぽん出るのがこのゲームの倣いだ。
防諜は皆無にしても。
兵は拙速を尊ぶともいう。
まず、要件から先に入ろう。
『…で、要件は?』
【まにょ】
さっきの今で話しを続けて大丈夫なものかと疑問には思うが、それこそ彼女の魂胆を鑑みるべき場面だろう。大事な話であることは変わりない。
「…昨晩の放送をお聞きになったかと思うのですが、単刀直入に申し上げまして……出来れば今後、なるべく行動を共にしていただきたいのです」
冷気の中に吐かれる白い靄と共に滑り出たのは、少しだけ弱弱しい一言だった。本名の名簿を見てここにいる参加者と言うのがクラスメイトであることは知っていた。だが共有チャットを見ていても分かるとおり顔見知り相手でも`頓着なく`敵意を向けることが出来る人が存在することを知って、元々知っている相手のその記憶を頼りにするのは控えたほうがいいと考えるようになった。今信じるべきは、今信じられる存在である。
その相手として思い浮かんだのが、マリアだった。
ここに来てから出会った人が少なかったと言うのもあるが、それを差し引いても、共に行動して頼れる相手であると実感したのは彼女ただ一人だ。だが自分はそうであっても、彼女から見て自分がそうするに値するかどうかは分からない。だいぶ、当たって砕けろと言う気持ちで今はいる。
「四六時中とは言いません。この島にある幾つかの宿泊施設のうち、どこか同じ場所で近い部屋をとっておきたいのです。…お恥ずかしい話、今、この状況で一番信頼できるのが、貴女なので」
どうでしょうか、と、窺うように視線を向ける。腰掛けたマリアも入るように傾けた番傘の上で、少しだけ雪が積もっていた。
【マリア】
『頼みは聞いても良いけれど。』
不安になる気持ちはわからなく無いし、いちいち遠方まで連絡をするよりは、部屋が近い方が勝手も良い。電車を乗り継ぐうちに殺されました、では話にならない。
何のことはない。極一般の神経だ。私が前に推察したように当てはめるのならば、普通の女子高生のアタマをしている、と評価をしておいても良い。
だが。
苦笑する。
私に、信じる、なんていうワードを投げかけるところに。
概ね、信用なんて取るに足らない。疑いたくないから信じるのであって、それは、相手の人間性を見た行為ではなく、破産したくないから貯金する、という位の、事務的な行為でしかない。
誰々を信じる。
と言った事は誰しもあるだろう。
だが。
信じ続けたことはないはずだ。
一人の人間を、徹頭徹尾、生涯に渡り信じ続けたことがあるなら、それは狂信か盲信だ。評価しなくもないが、バカバカしい。
よって。
大体の信用とは、郵便物にする判子のようなもので、当日消印有効である場合が多い。
土壇場でたやすく消えるのだ。
それに引き換えるなら、疑心とは面白い。相手の人間性と向き合って、判断する。健康的だ。
だから、私に言わせれば、こんな言葉は笑止千万。騙すだけ騙して、郵便物の比喩に重ねるなら、元旦しか使わない年賀はがきによろしく、適当に使い捨てる絶好のカモ、と言える。
だから――――――
『私の事なんて、信用しない方が良い。どれだけ、私の言葉が真実めいていても信じないでいなさい。後悔するわよ。』
は?
何を言っている、私は。
バカバカしい。これでは、自らあなたを騙しませんよ、と顔に書き殴ったようなものではないか。
『私は――詐欺師でもあるから。
まあ、全部嘘かもしれないけど』
やれやれ全く。
思い通りにはいかないものだ。
【まにょ】
「……体験談、ですか?」
どちらの立場のとまで言及はしないが、嫌に生々しい響きを持っている言葉にぽつりと問いかけた。言葉そのものは突き放すように聞こえても、裏には自分を諭す何かがあるのは感じていた。ただ甘いだけの言葉よりずっと嬉しいものだ。多少のとげとげしさなど、今更、この心を傷つけるだけの痛みなど持ち合わせては居ないのだから。
相手が自分の要求を呑んでくれたことに大いにほっとして微笑んだ。簡単に信用するな、そう教えてくれる人と言うのは、総じて、自分の中にずっと残っていくものなのかもしれない。
「それでも構いませんよ。それにきっと……貴女が私を騙すときは…私なんて騙されたとも分からないほど巧妙にしてくださるのでしょう?」
―――そういってくださる間の言葉は、貴女の本心であるのでしょうから。
【マリア】
『経験談、かしら。』
さて、詐欺師それ自体とはなんぞや。という問を投げる相手がいた場合、私は辞書をその御仁の頭に投げつける自信がある。
言ってなかったかもしれないが、私はのんびり屋のくせに、割とキレやすいのだ。相手から頓珍漢な問いや、返答が来るだけで限界である。これは私の不徳の致すところだが、さらに罪を告白するなら言葉がつっかえたり、迂遠だったりするともう、つまらなくなる。
よって。
取り敢えず彼女が出会い頭に地面の味を刷り込むことにはならなかったのは、奇跡と言って良い。
というのは悲しいくらい照れ隠しだとバレバレか。
『まあね、その時は騙してあげる。何も分からないくらい。』
何も騙されたと分からない嘘は、本当に嘘かしら。
『取り敢えず、あなたが泊まる部屋と、今ある情報は個人メッセージに送って。
それまでに死んだら殴るわよ?』
そろそろ気分が悪いので、かっこ悪い姿を見せる前に私は退散する。
聖☆ビキニマン(14th)-あいごころ。(20th)
【聖☆ビキニマン】
商店街。
「…………」
歩く。
覇気のない目で、鋼鉄の身体は木偶の坊。
「…………」
言葉を発する気力もなく、ただただ惰性で歩いていた。
彼は、最後に何を思ったのだろう。
”手の届く範囲は必ず守る“
…………烏滸がましいにも程がある。
後悔は、最早気力を呼び戻さない。
悔やみ、悔やみ、悲しみ、そして前に進むのを恐れた時、覚悟を全うするのに恐怖を抱いたとき。
人はそれを絶望と呼ぶ。
【あいごころ。】
ああ、いい気分だ。…まあ、理由は言わないけれど。とりあえず今はこの気分がいい、という状態を崩したくなかった。だからとりあえず探索はうちやめ。温泉でも入ろうと思い商店街にやってきた。
「…あら?」
すると前から人がやってくる。…いや、人?だよね。身長がすごく大きい…少し首が疲れそうだな、とか思いながら話しかけることにする。
「…ごきげんよう。」
そう言う。…まあ、気分はよくないだろうけどね。相手は。
【聖☆ビキニマン】
「………………?」
ごきげんよう、その言葉で、やっと人がいることに気付く。無気力な瞳を向け。
「………………ああ。」
一言。
……ふなっしーの死は、彼から誰かを助けたいという気概すら奪っていた。
【あいごころ。】
「……。」
無気力な目。おおかた何かに対してのやる気をなくしている、といったような、そんな表情。…絶望、かしら?
「…あなたは、さっきの放送聞いたかしら?」
もちろんその放送はふ○なっしー死亡、というアナウンスだ。…だれに殺されたのか、そもそもなぜ死んだのかすら分からないけれども。
「コロパットを見る限りもうすでに3人死んでいるわね。…これから、どうなるのかしらねぇ。」
いつも通りに会話をする。まるで、だれかが死んだことに対して興味が無いかのように。…これはただの会話のきっかけ。それがたまたまさっきのアナウンスだっただけのこと。
【聖☆ビキニマン】
「……放送…?アレは…俺のせいだ。」
ポツリ、と意味のある声が出る。
特に、目の前の彼女がタイプだった、とか、彼女が特別なことを言った、だとか、そんな特別は無かった。
ただ、人と話したことで、張り詰めた糸が切れるように。コップに張った水が溢れるように、一言が出て。
出たら、もう止まらなかった。
「そうだ…俺が、守らなきゃ…いけなかった。守りたかった、守るべきだった、守れなかった!…守ると誓いながら、守ろうとすら……しなかったんだ!俺は!!!」
慟哭。
巌のような顔、その窪みから落ちるは涙か。
目の前が霞んで見えた。
死んだ者への惜別より、自らの行いに絶望した。
そして、死んだにもかかわらず“自らの行い”について考えてしまった自分に気が付き絶望した。
「なあ……!俺は、どうしたらいい…?もう、立ち上がるのが怖いんだ。覚悟するのが、守ろうと決めるのが怖いんだ!」
膝をつき、顔を覆う。
クラスメートであったとしても、まだ誰かもわからない彼女に聞くべきでないことはわかっていた。
だからこれは、誰に向けてでもない、自分自身の葛藤なのだろう。
【あいごころ。】
「あなたのせい?」
…つまりふ○なっしーを殺したのはこの男ということだろうか?…よくわからないこと言う。
「なにがあなたをそこまで追い詰めてるのか、よく分からないのだけれど…」
なぜこんなにも追い詰められているのだろうか。もしかして自責の念に駆られている?…ふ○なっしーを殺したから?この人はこんなにも追い詰められている、ということなのかしら…?
「あの…なぜあなたがふ○なっしーを殺したのかしら…?」
自分は動揺してるのだろう。何も考えずにそんなことを聞いてしまう。
【聖☆ビキニマン】
「何故……?何故ッ!?…わからない。俺は、彼なら殺されないと思ったのだ。…何故、そんなことを思ってしまった!?………………殺したんだ。俺の、甘えが、俺の迂闊こそが、彼を……」
脱力。
巨漢は赤児のように蹲って、ただただ嗚咽を響かせる。
【あいごころ。】
「…ああ。」
そういうことか。つまり、彼が殺した訳では無い。と。彼の友人を守れなかったから悲しんでいると。…ああ、なんだ。私の嫌いなタイプじゃないか。
「なに、それ。気持ち悪いこというのね。」
自己満足。守れなかった、なんて言うけれど守っていたつもりなのだろうか?この状況で人に頼るということがどんなに難しいことが理解ができていないのだろうか?…ああ、こいつは。お人好しすぎる。
「彼なら大丈夫だとおもって?何様のつもりなのかしらね。人が死んだところでいったいなに?なんでそこまであなたがそこまで追い詰められるのかしら?いったいあなたが守ろうとしてるものってなんなの?仲間だと思っている人?いいえ、違うわよね。だって仲間を守るのならば死んだものに思いを馳せることよりもやることがあるでしょう?じゃああなたが守ってるものはいったいなにか。簡単よね。」
ああ、柄じゃないなぁこんなこと。ただ、気分のいい時に気持ち悪いことを言われたのであれば仕方ないと思う。だから。
「あなたが守ってるのってただの自分のエゴでしょう?仲間守れなかった自分に酔ってるだけ。つまらない。ほんっとうにつまらない理由ね?」
こんなにも、イライラしてしまっているのは。
【聖☆ビキニマン】
目を見開く。
……それは、的を射た意見だから。
だが、それが却って彼を冷静にさせた。
エゴ。つまり欲望。
…そうか、だから俺はーーー
「…一つ、訂正をしよう。俺は、決して彼の死に絶望したわけじゃあない。俺が、俺が怖いのは。俺自身のエゴだ。俺が悔やむのは、この事態が俺自身のエゴ故であるからだ。俺は、俺が許せなくて、俺なんかが皆を守れるわけがない、そう思ってしまった自分が許せなくて、覚悟出来ないのさ。」
彼の勝手な思い込みがふなっしーを見殺しにし、彼のエゴはそんな悲劇の自分に酔おうとした。…それがなにより許せない。
覚悟とは、自分自身に誓うこと。
……自分自身を許せない彼に、覚悟はできなかった。嫌いな自分自身に、誓うことなど出来なかった。
【あいごころ。】
「…はぁ」
ため息を、吐く。面倒臭い性格してるなぁ、とか思う。自分のエゴが怖い、か。…そのエゴは多分、私には理解出来ない。
「…そうね。そもそも、私はあなたに期待なんてしないけれども。」
初対面に失礼な話ではあるが。正直だれかに守ってもらう、なんで誰一人思ってもいないだろう。
「守るのはあなたの自由よ。でも、それを相手が期待してるかどうかでいったらしてないと思うわよ。こんな状況じゃね。…だから、なんでそんな気負っているのかが、私には理解できない。」
こういう人の思考とわたしの考え方はすこし“ズレている”。…別に、狂人まで落ちてしまっている訳でもないけれどね。わたしを普通、というのもまた、違うのは理解している。
【聖☆ビキニマン】
「……分かってる。それを望んでないどころか、そもそも俺は信用すらされちゃあいない。…………そうか。いや。」
目に火が灯る。
彼が今言おうとしたことは、彼のオリジンで。
先生の言葉が頭を過る。
ああ。だからか。だから俺は…
絶望を、意思が捩じ伏せて。
「他人の心なんざ、誰にもわからねえ。だから、せめて自分の心には誠実でありたいーーーそれが、エゴだ。…期待されなくってもいい。石を投げられたっていい。”誓い“ってのは、例えば荒野の中、道がわからなかった時ッ!それでも自分の中に信じられる柱があることッ!」
顔を上げる。
ああ、自分のエゴは今でも怖い。
絶望を、掻き消すような希望があったわけでもない。だが。“私はあなたに期待なんてしない”。
……覚悟とは、つまるところエゴであった。
ならば、最早立ち止まる理由なんてない。
「ああ、ありがとう。お蔭で原点を思い出せた。俺は、俺が“死なせたくない”と思ったから“覚悟”したんだ。否定も、嫌悪も必要ない。俺は俺だ!……そうだろう?」
【あいごころ。】
「…そうね。そう思うならそうなんじゃないかしら。」
なんか言いたいことを言っていたら目の前の大男が元気を取り戻していた。…まあ、さっきよりは話しやすくなったしいいのかしら?…いや、これもこれで面倒ね。
「まあ、元気が出たのならなによりだわ。…私はあいごころ。あなたの名前は?」
そしてついでに、とコロパットを取り出す。まあ、言わずもがなフレンド登録だ。…エゴ、ね。私も私のエゴがあるけれど、それを突き通そうとするのであれば…いや、もう不可能ね。すでに悪趣味なゲームは始まってしまっているもの。
【聖☆ビキニマン】
「聖☆ビキニマンだ。本名は既にチャットに送ってある。…最早、あの口調も使うまい。」
相手を見据える。
彼女は、“私はあなたに期待なんてしない”と言っていた。故にーー
「俺は”お前も守る“!何かあれば、相談してくれ。」
故に、これはエゴである。
これは覚悟である。これは誓いである。
間違えた男は、もう間違えないように、背筋を伸ばした。……死者とは、背負うものではなく、共に往くもの。
故に、見ていてくれ。付いてきてくれ。
俺が導こう。ハッピーエンドを、この手に。
……これが、彼の新しい覚悟の話だ。
【あいごころ。】
「……。」
なんだろう。私と彼の間に確かな温度差を感じる。にしても、私を守る、ねぇ…。本当に守ってくれるならいいのだけれど。正直。はやり信用ならないなぁ。
「まあ、とりあえずフレンド登録しないかしら?」
覚悟決めたのはいいのだけれど、出来ればフレンド登録はしておいて欲しい。…私のために、ね?
【聖☆ビキニマン】
「勿論だ。」
フレンド登録、拒む理由は無かった。
「ああ、そうだ。護身用に、これをやろう。」
……とある、形見のナイフを取り出し。
【あいごころ。】
「ナイフ?」
護身用に…っていってもまあ、これでも自衛道具は持ってるつもりだけれども。…まあ、貰えるものは貰っておこうと思う。ナイフに手を伸ばす…
ーー赤い。
赤い。赤いんだよ。床も、服も、××××も。…私も。どうして?なんでこんなことになってる?…ああ、違う。違うんだ。こんなこと望んでないんだ。
『あーあ、またやられちゃったねぇ。』
どうしてこんなことになるの?わからない。私には。日常が、風景が、赤くなるの。一体なぜ?
『気づいてないんだ?それ。全部■■■■じゃないか。』
…ああ、本当だ。だからこんなに寒いんだね?…やだ、つらいなぁ。
『死んじゃえば楽になるんじゃない?』
死ぬ?嫌だよ。そんなこと。なんで死ぬなんて…そんな酷いこと言うの?
『ハハ!死ぬのがひどいかぁ!』
そうだよ、死ぬなんて悲しいこと言っちゃダメだよ。…ああ、寒いなぁ。…このまま、死んじゃうのかな?ねぇ?□□□□?…私、死んだ方がいいのかな?
「…っ!」
…ダメだ。これは。ああ、このナイフは受け取れないなぁ。
「…いえ、遠慮しておくわ。」
【聖☆ビキニマン】
「?……そう、か。いや。無理強いはせん。誰か他の者に渡すとしよう。」
しまう。
彼はーー悲しいかなーー物理的には守れても、精神的には救えない。
故に、これは彼女が解決することである。
「だが……何もないのでは不都合だろう。ホテルの一室に簡単な拠点がある。……防具と、武具…といってもこれも簡易な奴だが…がある。食料もな。良ければ持っていくといい。」
そして、一室の番号を教えて
【あいごころ。】
「…あら、ありがとう。」
つい、昔のことを思い出してしまった。…他者から凶器を受け渡されるなんてこと、“久々”だったから。
「もしかしたら、使わせてもらうかもしれないわ。…それじゃ。」
そして、軽く手を振って別れを告げる。
…多分。最後に込めた言葉はさようなら、かな。とか思いながら。
【聖☆ビキニマン】
「ああ。“また会おう”。」
さようなら、ではなく文字通りまたね。
彼は、彼女を取り零す気など毛頭無かった。
【聖☆ビキニマン】
商店街。
「…………」
歩く。
覇気のない目で、鋼鉄の身体は木偶の坊。
「…………」
言葉を発する気力もなく、ただただ惰性で歩いていた。
彼は、最後に何を思ったのだろう。
”手の届く範囲は必ず守る“
…………烏滸がましいにも程がある。
後悔は、最早気力を呼び戻さない。
悔やみ、悔やみ、悲しみ、そして前に進むのを恐れた時、覚悟を全うするのに恐怖を抱いたとき。
人はそれを絶望と呼ぶ。
【あいごころ。】
ああ、いい気分だ。…まあ、理由は言わないけれど。とりあえず今はこの気分がいい、という状態を崩したくなかった。だからとりあえず探索はうちやめ。温泉でも入ろうと思い商店街にやってきた。
「…あら?」
すると前から人がやってくる。…いや、人?だよね。身長がすごく大きい…少し首が疲れそうだな、とか思いながら話しかけることにする。
「…ごきげんよう。」
そう言う。…まあ、気分はよくないだろうけどね。相手は。
【聖☆ビキニマン】
「………………?」
ごきげんよう、その言葉で、やっと人がいることに気付く。無気力な瞳を向け。
「………………ああ。」
一言。
……ふなっしーの死は、彼から誰かを助けたいという気概すら奪っていた。
【あいごころ。】
「……。」
無気力な目。おおかた何かに対してのやる気をなくしている、といったような、そんな表情。…絶望、かしら?
「…あなたは、さっきの放送聞いたかしら?」
もちろんその放送はふ○なっしー死亡、というアナウンスだ。…だれに殺されたのか、そもそもなぜ死んだのかすら分からないけれども。
「コロパットを見る限りもうすでに3人死んでいるわね。…これから、どうなるのかしらねぇ。」
いつも通りに会話をする。まるで、だれかが死んだことに対して興味が無いかのように。…これはただの会話のきっかけ。それがたまたまさっきのアナウンスだっただけのこと。
【聖☆ビキニマン】
「……放送…?アレは…俺のせいだ。」
ポツリ、と意味のある声が出る。
特に、目の前の彼女がタイプだった、とか、彼女が特別なことを言った、だとか、そんな特別は無かった。
ただ、人と話したことで、張り詰めた糸が切れるように。コップに張った水が溢れるように、一言が出て。
出たら、もう止まらなかった。
「そうだ…俺が、守らなきゃ…いけなかった。守りたかった、守るべきだった、守れなかった!…守ると誓いながら、守ろうとすら……しなかったんだ!俺は!!!」
慟哭。
巌のような顔、その窪みから落ちるは涙か。
目の前が霞んで見えた。
死んだ者への惜別より、自らの行いに絶望した。
そして、死んだにもかかわらず“自らの行い”について考えてしまった自分に気が付き絶望した。
「なあ……!俺は、どうしたらいい…?もう、立ち上がるのが怖いんだ。覚悟するのが、守ろうと決めるのが怖いんだ!」
膝をつき、顔を覆う。
クラスメートであったとしても、まだ誰かもわからない彼女に聞くべきでないことはわかっていた。
だからこれは、誰に向けてでもない、自分自身の葛藤なのだろう。
【あいごころ。】
「あなたのせい?」
…つまりふ○なっしーを殺したのはこの男ということだろうか?…よくわからないこと言う。
「なにがあなたをそこまで追い詰めてるのか、よく分からないのだけれど…」
なぜこんなにも追い詰められているのだろうか。もしかして自責の念に駆られている?…ふ○なっしーを殺したから?この人はこんなにも追い詰められている、ということなのかしら…?
「あの…なぜあなたがふ○なっしーを殺したのかしら…?」
自分は動揺してるのだろう。何も考えずにそんなことを聞いてしまう。
【聖☆ビキニマン】
「何故……?何故ッ!?…わからない。俺は、彼なら殺されないと思ったのだ。…何故、そんなことを思ってしまった!?………………殺したんだ。俺の、甘えが、俺の迂闊こそが、彼を……」
脱力。
巨漢は赤児のように蹲って、ただただ嗚咽を響かせる。
【あいごころ。】
「…ああ。」
そういうことか。つまり、彼が殺した訳では無い。と。彼の友人を守れなかったから悲しんでいると。…ああ、なんだ。私の嫌いなタイプじゃないか。
「なに、それ。気持ち悪いこというのね。」
自己満足。守れなかった、なんて言うけれど守っていたつもりなのだろうか?この状況で人に頼るということがどんなに難しいことが理解ができていないのだろうか?…ああ、こいつは。お人好しすぎる。
「彼なら大丈夫だとおもって?何様のつもりなのかしらね。人が死んだところでいったいなに?なんでそこまであなたがそこまで追い詰められるのかしら?いったいあなたが守ろうとしてるものってなんなの?仲間だと思っている人?いいえ、違うわよね。だって仲間を守るのならば死んだものに思いを馳せることよりもやることがあるでしょう?じゃああなたが守ってるものはいったいなにか。簡単よね。」
ああ、柄じゃないなぁこんなこと。ただ、気分のいい時に気持ち悪いことを言われたのであれば仕方ないと思う。だから。
「あなたが守ってるのってただの自分のエゴでしょう?仲間守れなかった自分に酔ってるだけ。つまらない。ほんっとうにつまらない理由ね?」
こんなにも、イライラしてしまっているのは。
【聖☆ビキニマン】
目を見開く。
……それは、的を射た意見だから。
だが、それが却って彼を冷静にさせた。
エゴ。つまり欲望。
…そうか、だから俺はーーー
「…一つ、訂正をしよう。俺は、決して彼の死に絶望したわけじゃあない。俺が、俺が怖いのは。俺自身のエゴだ。俺が悔やむのは、この事態が俺自身のエゴ故であるからだ。俺は、俺が許せなくて、俺なんかが皆を守れるわけがない、そう思ってしまった自分が許せなくて、覚悟出来ないのさ。」
彼の勝手な思い込みがふなっしーを見殺しにし、彼のエゴはそんな悲劇の自分に酔おうとした。…それがなにより許せない。
覚悟とは、自分自身に誓うこと。
……自分自身を許せない彼に、覚悟はできなかった。嫌いな自分自身に、誓うことなど出来なかった。
【あいごころ。】
「…はぁ」
ため息を、吐く。面倒臭い性格してるなぁ、とか思う。自分のエゴが怖い、か。…そのエゴは多分、私には理解出来ない。
「…そうね。そもそも、私はあなたに期待なんてしないけれども。」
初対面に失礼な話ではあるが。正直だれかに守ってもらう、なんで誰一人思ってもいないだろう。
「守るのはあなたの自由よ。でも、それを相手が期待してるかどうかでいったらしてないと思うわよ。こんな状況じゃね。…だから、なんでそんな気負っているのかが、私には理解できない。」
こういう人の思考とわたしの考え方はすこし“ズレている”。…別に、狂人まで落ちてしまっている訳でもないけれどね。わたしを普通、というのもまた、違うのは理解している。
【聖☆ビキニマン】
「……分かってる。それを望んでないどころか、そもそも俺は信用すらされちゃあいない。…………そうか。いや。」
目に火が灯る。
彼が今言おうとしたことは、彼のオリジンで。
先生の言葉が頭を過る。
ああ。だからか。だから俺は…
絶望を、意思が捩じ伏せて。
「他人の心なんざ、誰にもわからねえ。だから、せめて自分の心には誠実でありたいーーーそれが、エゴだ。…期待されなくってもいい。石を投げられたっていい。”誓い“ってのは、例えば荒野の中、道がわからなかった時ッ!それでも自分の中に信じられる柱があることッ!」
顔を上げる。
ああ、自分のエゴは今でも怖い。
絶望を、掻き消すような希望があったわけでもない。だが。“私はあなたに期待なんてしない”。
……覚悟とは、つまるところエゴであった。
ならば、最早立ち止まる理由なんてない。
「ああ、ありがとう。お蔭で原点を思い出せた。俺は、俺が“死なせたくない”と思ったから“覚悟”したんだ。否定も、嫌悪も必要ない。俺は俺だ!……そうだろう?」
【あいごころ。】
「…そうね。そう思うならそうなんじゃないかしら。」
なんか言いたいことを言っていたら目の前の大男が元気を取り戻していた。…まあ、さっきよりは話しやすくなったしいいのかしら?…いや、これもこれで面倒ね。
「まあ、元気が出たのならなによりだわ。…私はあいごころ。あなたの名前は?」
そしてついでに、とコロパットを取り出す。まあ、言わずもがなフレンド登録だ。…エゴ、ね。私も私のエゴがあるけれど、それを突き通そうとするのであれば…いや、もう不可能ね。すでに悪趣味なゲームは始まってしまっているもの。
【聖☆ビキニマン】
「聖☆ビキニマンだ。本名は既にチャットに送ってある。…最早、あの口調も使うまい。」
相手を見据える。
彼女は、“私はあなたに期待なんてしない”と言っていた。故にーー
「俺は”お前も守る“!何かあれば、相談してくれ。」
故に、これはエゴである。
これは覚悟である。これは誓いである。
間違えた男は、もう間違えないように、背筋を伸ばした。……死者とは、背負うものではなく、共に往くもの。
故に、見ていてくれ。付いてきてくれ。
俺が導こう。ハッピーエンドを、この手に。
……これが、彼の新しい覚悟の話だ。
【あいごころ。】
「……。」
なんだろう。私と彼の間に確かな温度差を感じる。にしても、私を守る、ねぇ…。本当に守ってくれるならいいのだけれど。正直。はやり信用ならないなぁ。
「まあ、とりあえずフレンド登録しないかしら?」
覚悟決めたのはいいのだけれど、出来ればフレンド登録はしておいて欲しい。…私のために、ね?
【聖☆ビキニマン】
「勿論だ。」
フレンド登録、拒む理由は無かった。
「ああ、そうだ。護身用に、これをやろう。」
……とある、形見のナイフを取り出し。
【あいごころ。】
「ナイフ?」
護身用に…っていってもまあ、これでも自衛道具は持ってるつもりだけれども。…まあ、貰えるものは貰っておこうと思う。ナイフに手を伸ばす…
ーー赤い。
赤い。赤いんだよ。床も、服も、××××も。…私も。どうして?なんでこんなことになってる?…ああ、違う。違うんだ。こんなこと望んでないんだ。
『あーあ、またやられちゃったねぇ。』
どうしてこんなことになるの?わからない。私には。日常が、風景が、赤くなるの。一体なぜ?
『気づいてないんだ?それ。全部■■■■じゃないか。』
…ああ、本当だ。だからこんなに寒いんだね?…やだ、つらいなぁ。
『死んじゃえば楽になるんじゃない?』
死ぬ?嫌だよ。そんなこと。なんで死ぬなんて…そんな酷いこと言うの?
『ハハ!死ぬのがひどいかぁ!』
そうだよ、死ぬなんて悲しいこと言っちゃダメだよ。…ああ、寒いなぁ。…このまま、死んじゃうのかな?ねぇ?□□□□?…私、死んだ方がいいのかな?
「…っ!」
…ダメだ。これは。ああ、このナイフは受け取れないなぁ。
「…いえ、遠慮しておくわ。」
【聖☆ビキニマン】
「?……そう、か。いや。無理強いはせん。誰か他の者に渡すとしよう。」
しまう。
彼はーー悲しいかなーー物理的には守れても、精神的には救えない。
故に、これは彼女が解決することである。
「だが……何もないのでは不都合だろう。ホテルの一室に簡単な拠点がある。……防具と、武具…といってもこれも簡易な奴だが…がある。食料もな。良ければ持っていくといい。」
そして、一室の番号を教えて
【あいごころ。】
「…あら、ありがとう。」
つい、昔のことを思い出してしまった。…他者から凶器を受け渡されるなんてこと、“久々”だったから。
「もしかしたら、使わせてもらうかもしれないわ。…それじゃ。」
そして、軽く手を振って別れを告げる。
…多分。最後に込めた言葉はさようなら、かな。とか思いながら。
【聖☆ビキニマン】
「ああ。“また会おう”。」
さようなら、ではなく文字通りまたね。
彼は、彼女を取り零す気など毛頭無かった。
酢豚に極稀に入ってるパイナポー(8th)-海月(23rd)
【酢豚パイナポー】
「ここ、一回も来てないですね。雪像アート…一体どんな所なのでしょうか…。」
パイナポーが次にやって来たのは雪像アート展。雪像についてはあまり知らないけれど…多分雪だるまとかそのあたりに類似したものだろう…なんて考えてた。
現在、そんな自分に言い聞かせたい。…殴るのは痛いからやらないけれど。
そこにあったのは一般的な有名な石像の雪像からアニメのキャラクター、果てには奇抜すぎるよく分からない物体まで。
多種多様な雪像がそこには存在していた。
【海月】
特に意味もなくふらついてみる。他の人からしてみれば警戒もなく不用心に歩いているように見えるだろう。
そして、実際そうなのだ。
生きれた方があの"天使"との取引も成立するし、そっちの方が愉しいのだけれど。
別に死んでも構わない、というのが本心なわけで。
だったら、何かがまた始まるまで観光でも楽しもうかなあって思った次第。
…え?嘘に決まってるじゃん。
雪像アート展、だっけ。特に意味はないけれど、来たことないし、踏み入れた意味はあるだろう。
…ほら、
「あれー?こんなところに人がいるなんて、ね。ねえねえ、キミもゲエムの参加者、で合ってる?」
【酢豚パイナポー】
「あ、そうです…
ゲームの参加者、であってます。」
雪像を見て回っていると出会った少年。
つまりは…ゲームの参加者にして、敵か味方かは分からない人物。今まであった人物は誰もが温かみのある、優しい人物であった。
しかし、パイナポーの勘は告げる。
…コイツには気をつけろ、と。
「はじめましてっ!私は8th…“酢豚に極稀に入っているパイナポーですっ!よろしくお願いしますねっ!」
しかし、自身の勘が言うとはいえ、それを相手に伝えることはとても失礼きわまりない事。勘なんて当てにしてはいけないのだから。
パイナポーはその思いを振り払うと、目の前の人物へと好意的に名前を名乗った。
【海月】
「へえー。キミが、あの送信間違いだらけの酢豚ちゃんだね?うん、よろしくね!!
オレは…クラゲでいいよ。知ってる?海の月、って書いて海月って読むんだよ。」
友好的。というのが第一印象ではあった。
聞いてもいないのに名を名乗るし、むしろ"相手も名乗るのだろう"という根拠のない確信が見え透いた感じ。
ああ、オレが嫌いなタイプだな。
とはいえ、相手を"そういう"勘で見るのは良くない、か。オレみたいな例も、トロンパちゃんみたいな例もあるわけだし。
…まあ、弄れるうちは、ね。
「んーっと…酢豚ちゃんはここで何してたの?」
【酢豚パイナポー】
「あっ、あなたが海月さんなんですねっ。共有チャットで何回か名前だけ見ましたっ!」
ホテルの部屋のコート掛けに付属していた結構コート。きっと寒い雪国を歩くためにホテル側が用意してくれたのだろう、それをくるりと後ろを向くことで翻らせて…パイナポーはその微笑みを強くさせる。
海月…という名前の人物がいる事は既に共有チャットの方で知っていた。と言うか向こうも言っている様に何回か誤爆しているのだ…彼女が共有チャットを見ていない方がおかしい。
他にも何人か気になる人が居たが…中でも有効的そうなコメントを残していた彼女には会いたかった所だ。
パイナポーは心に警戒の念を抱かず、彼女へと近づこうと…一歩。海月へと足を踏み出した。
「私はですねっ。ここ、今まで来てなかったのでですねっ。ちょっと寄ってこうと思ったんですっ!
だって、雪像って私見た事ないですし…気になるじゃないですかっ…。」
無警戒、無神経。悪意を何も知らない彼女は、顔に花開かせて海月へと語る。
【海月】
「うんうん。オレもキミのことは名前だけ何回か見たから知ってるよ!」
顔は彼女を向いてはいるけれど、意識は蚊帳の外。足元からしても表情からしても。
無警戒、無用心、無神経、無節操。ああ、そういう人なんだなって分かるよ。
このゲエムで"最も足を掬われるタイプ"の人間だ。
「へえ。オレもおんなじかなー、今まで来てなかったトコに行きたくなってみるよね!
そしたら新しい人にも会えて一石二鳥ってね!」
こういう人は"反応"を見るのが毎回愉しくて仕方がない。
さて、どういう"反応"を見せてくれるのか。
「ああ、そういえばさ、酢豚ちゃん。
キミはこのゲエム、参加するつもりなの?」
【酢豚パイナポー】
「ゲーム、ですか…。」
パイナポーはその言葉に顔を小さく歪め、何かを答えようとして口をもごもごと動かす。パイナポーの心情としては人を殺したいとは思わないのだ。
しかし、ゲームに参加しなければ自分が殺される…そう考えると、参加せざるを得ないのだから。
「……私は、参加…自体はします。でも、人を殺そうなんて思いませんっ!目指すのはみんなで脱出ですよっ!
3人死んじゃったけど…ゾディアックには生き返らせる事の出来るのがあるらしいじゃないですか、だから…それを見つけないとですねっ!」
パイナポーは自身の決意を、意気揚々と海月へと語る。それはとても甘く難しい考えである事は重々承知しているのだが、パイナポーはそれが出来るとどこか確信しているのだ。
人の善意を信じる…という無根拠な信念によって。
【海月】
はぁ。
その返事を聞いて、心底から、心の底から、落胆を覚えた。
人は殺さないのに参加する?そんなの参加していないのと同じだし、傍観者だ。つまらない。
"何もせずに見ている"参加しないヤツらよりよっぽど偽善的な考えの持ち主。
おおかた、"自分は死にたくないけど皆にも死んでほしくない、あくまでも目指すは全員生還"なんて思っているんでしょう?
それでこのデスゲエムに参加する?笑わせるな。
「ねえ、そんな甘い考えでこのゲエムを愉しめるとでも思ってるの?」
自分も、彼女に一歩、一歩ずつ歩みを近づける。
彼女が不用心であったことを、見越して。
「それとも何?みんなで脱出の"みんな"にはこのゲエムを仕組んだヤツらも含まれてますよだなんていうつもり?」
もっと、近づいて。彼女の目の前へ。逃げられないように、手を掴んだ。
「ああ、笑止。やっぱりキミ、つまらないヤツだよ。
生き返らせる?みんなで脱出?そんな興醒めでつまらないコトをしてこのゲエムの何に参加するつもりなの?
命は一回しかないから愉しいし、コンティニューがないから死に物狂いで生きるし、だからこそ。
人を殺すヤツも、自分で死ぬヤツもいる。
キミがそれをどうこう言う権利も、何とかする権利もない。
自分の意志だけで何もかもを救えるだとか、みんなを助けなきゃいけないだとか、エゴイストにも程があるよ。
その信念が何処から来てるのか疑っちゃう。」
【酢豚パイナポー】
「ええ。当たり前じゃないですかっ。」
一言。
近づかれても、腕を掴まれても。
ニコニコと、ニコニコと。
その笑顔は変わらず、その笑顔は曇らず。
「私が目指すのはAzothもCelestiaもMadmanも。
全員の脱出、全員の解放に決まってるじゃないですか。貴方は何を言っているのですか?」
パイナポーは、続ける。
「人を殺す?自分で死ぬ?それこそ馬鹿らしい。
命は蝋燭です。火の勢いを強くして、一時の明るさを求めたとしても意味はない。必要なのは継続的に闇を照らすこと。ただ強く明るいだけの蝋燭など誰も買いませんよね?必要ないですよね?
…それが分からないのですか?」
それに、と付け加えて笑う。
「私はとびっきりのエゴイストですから。
必要ならば汚濁を注ぎましょう。
必要ならば泥も啜りましょう。
必要ならば人を殺しましょう。
結果こそ全て。GAME OVERなどあってはならない。“俺”は、そうして生きているのです。そこに他者の介在など許さない。自身の道を歩むだけです。
お分かりですか?プレイヤーさん♪」
くすくすと、くすくすと。
くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす。
パイナポーは、嗤う。
【海月】
「ああ、分からないよ。」
偽善。偽善者。偽善者、偽善者!!嘘つきッ!!
人を何に例えて、何が効率的だとか、何が非効率的だとか、何が必要だとか何が不必要だとか。
"ゲエムは娯楽であるべきだ"なんて。
「誰も買わない、必要のないミチだって。継続的に照らすモノだって。
"買い手がいなければ何も意味がない"。
オレたちは買われる側で、飼われる側で、代われる側だ。必要価値がなくなったらゴミ箱にポイだよ。
それなのに必要ならば必要ならばって、キミは必要事項でしか生きることができないの?」
キミが何と言おうと。
「皆が生きる、皆が皆でハッピーエンド?荒唐無稽だって。
GAME OVERを楽しむコトもゲエムなのだから。
キミが"然う"したいのは良く分かったけれど、その信念に人様の娯楽を巻き込まないでくれるかな。」
それにね、と言葉を狂わせて。
「必要ならば、不必要ならば、そんな単語で生きていいほど"オレたち"は従順じゃない。
照らせない光も染まらない闇もある。それを総てだなんて。
――分からないからこそ愉しいんじゃないか。ゲエムは"愉しむ"為のモノ。
ただ効率的にモノゴトを進めて生きたいヤツが"参加"する必要はない。」
手は放した。
…彼女と同じように哂った。
【酢豚パイナポー】
「ふふっ、それこそ笑止千万、荒唐無稽にも程があるのですよ。海月さん♪」
「どんなにそれが良いものでも、買われなければ意味がない。ええ、ええ。その通り全くもって正しい事実でしょう。
だからこそ、長く要を得ることに意義があるのですよ。そこにどんな不純があっても、存在価値の証明をされなければただのゴミ。最良のして最善、それを目指さなきゃ過程は無駄ですからね。」
パイナポーは頬に当てた手を唇へと動かす。
嗤い声は、止まる。
「バッドエンドはリスタートしなければならない。
グッドエンドはもう一度。
ファニーエンドには笑いましょう。
目指すのはただ一つのハッピーエンド。貴方がどこを目指そうが勝手だけど…、プレイヤーはフラッグに勝てないですよ?
既に、終わったイベントは復刻しませんので♪」
「では、海月さん♪貴方は擦り切れたレコードを一人で何度も繰り返していてくださいな。ビートルズはオススメですよ?
美味しい美味しい料理でも、食べる事を夢想していてくださいな。とっぽぎ料理なんてどうでしょう?私に大きく縁は有りますしっ。
その間に私は歩いていますので。小さな夢を見ている貴方を尻目に、俺は願いを叶えるから、さ。」
嘆く自分はもう死んだ。今居るのは失敗を知った死人ただ一人。もう枯れた井戸には雨は降り注がない。あるのは忘れ去られた大地のみ。
海月が浮く程の大きな海は、既にパイナポーの中には存在しない。
【海月】
「あはは。そうだね。オレからしても、キミが何処を目指すかは勝手。
キミからしても、オレが何処を目指すかは勝手。
――今回は、それが摺り合わなかっただけ。そうでしょう?」
ゆったりと、おもむろに、彼女から距離を離す。
「だったなら、オレとしては、キミの願いをバラバラに壊すのも手ではある。
大きな願望を抱えきれるほど、アンタは大きい存在じゃないって教え込んでやる。
ずっとずっと歩いていればいいさ。其れは手段だ。
ずっとずっと進んでいればいいさ。其れは結論だ。
けれど、道の先に願望への近道があるとは限らない。停滞も選択肢であり、結末であり、願望だ。
歩きすぎてキミが世界を見失う事でも心待ちにしておくよ。」
井戸の中の蛙は大海を知らないと言う。
大海にいるというものはとても退屈で。何処へ進んでも何処へ歩いても逃げ道はない。
その分、枯れて忘れられて何もなくなった大地の方が有意義なのだろう。
其方の方がとても希望があるのだろう。
けれどそれだけ。
その希望を手に出来るかなんて人次第だ。文字通り、"歩きすぎて彷徨ってしまう"前に戻らなければいけない。
行きは良い良い、帰りは怖いなんてことになってしまえばもう遅い。
「それに。夢を叶えるというのもつまらないものだから。
停滞するだけで、永遠に夢を見ていられるなんて、素敵な事だと思わない?
―――分からないか。」
【酢豚パイナポー】
「よく分かってるじゃないですか。物分かりのいい人は好きですよ、面倒ごとが少なくて。」
「まぁ、私は足が千切れようと歩くだけです。止まらず留まらず。それが私が生きる理由、私が死なない理由なのですから。
精々遠くから見ていて下さいね?道半ばで頭だけになったら、笑って下さいね?
ならないですけど。」
パイナポーも、海月からゆっくりと離れるように歩んでいく。本当なら次会った人物は“コレ”で殺そうなんて思っていたけど…面白いし、やめておこう。
歩き続けるために必要なパーツは、まだまだ擦り切れていないのだから。
パイナポーは無価値だ。
価値のあるものはパイナポーが手にしようと夢見る光。愚者が伸ばす蜘蛛の糸。
ああ、ああ。それを誰かが手を伸ばしてくれればどれだけ良かったか。それに手が届かないと知ればどれだけ良かったか。
…でも、誰も伸ばさない、進まない。
ならば、私しかいない。太陽を目指すイカロスのように。命を捨てて、命を手に入れなければ。
何も知らない自分は、進む事しかできない哀れな絡繰人形でしかないのだから。
「あぁ、そうです。一個だけ間違ってました。
私に縁があるのは、きりたんぽでしたねっ。」
秋田生まれのパイナポーはそう言って、静かに微笑んだ。
【酢豚パイナポー】
「ここ、一回も来てないですね。雪像アート…一体どんな所なのでしょうか…。」
パイナポーが次にやって来たのは雪像アート展。雪像についてはあまり知らないけれど…多分雪だるまとかそのあたりに類似したものだろう…なんて考えてた。
現在、そんな自分に言い聞かせたい。…殴るのは痛いからやらないけれど。
そこにあったのは一般的な有名な石像の雪像からアニメのキャラクター、果てには奇抜すぎるよく分からない物体まで。
多種多様な雪像がそこには存在していた。
【海月】
特に意味もなくふらついてみる。他の人からしてみれば警戒もなく不用心に歩いているように見えるだろう。
そして、実際そうなのだ。
生きれた方があの"天使"との取引も成立するし、そっちの方が愉しいのだけれど。
別に死んでも構わない、というのが本心なわけで。
だったら、何かがまた始まるまで観光でも楽しもうかなあって思った次第。
…え?嘘に決まってるじゃん。
雪像アート展、だっけ。特に意味はないけれど、来たことないし、踏み入れた意味はあるだろう。
…ほら、
「あれー?こんなところに人がいるなんて、ね。ねえねえ、キミもゲエムの参加者、で合ってる?」
【酢豚パイナポー】
「あ、そうです…
ゲームの参加者、であってます。」
雪像を見て回っていると出会った少年。
つまりは…ゲームの参加者にして、敵か味方かは分からない人物。今まであった人物は誰もが温かみのある、優しい人物であった。
しかし、パイナポーの勘は告げる。
…コイツには気をつけろ、と。
「はじめましてっ!私は8th…“酢豚に極稀に入っているパイナポーですっ!よろしくお願いしますねっ!」
しかし、自身の勘が言うとはいえ、それを相手に伝えることはとても失礼きわまりない事。勘なんて当てにしてはいけないのだから。
パイナポーはその思いを振り払うと、目の前の人物へと好意的に名前を名乗った。
【海月】
「へえー。キミが、あの送信間違いだらけの酢豚ちゃんだね?うん、よろしくね!!
オレは…クラゲでいいよ。知ってる?海の月、って書いて海月って読むんだよ。」
友好的。というのが第一印象ではあった。
聞いてもいないのに名を名乗るし、むしろ"相手も名乗るのだろう"という根拠のない確信が見え透いた感じ。
ああ、オレが嫌いなタイプだな。
とはいえ、相手を"そういう"勘で見るのは良くない、か。オレみたいな例も、トロンパちゃんみたいな例もあるわけだし。
…まあ、弄れるうちは、ね。
「んーっと…酢豚ちゃんはここで何してたの?」
【酢豚パイナポー】
「あっ、あなたが海月さんなんですねっ。共有チャットで何回か名前だけ見ましたっ!」
ホテルの部屋のコート掛けに付属していた結構コート。きっと寒い雪国を歩くためにホテル側が用意してくれたのだろう、それをくるりと後ろを向くことで翻らせて…パイナポーはその微笑みを強くさせる。
海月…という名前の人物がいる事は既に共有チャットの方で知っていた。と言うか向こうも言っている様に何回か誤爆しているのだ…彼女が共有チャットを見ていない方がおかしい。
他にも何人か気になる人が居たが…中でも有効的そうなコメントを残していた彼女には会いたかった所だ。
パイナポーは心に警戒の念を抱かず、彼女へと近づこうと…一歩。海月へと足を踏み出した。
「私はですねっ。ここ、今まで来てなかったのでですねっ。ちょっと寄ってこうと思ったんですっ!
だって、雪像って私見た事ないですし…気になるじゃないですかっ…。」
無警戒、無神経。悪意を何も知らない彼女は、顔に花開かせて海月へと語る。
【海月】
「うんうん。オレもキミのことは名前だけ何回か見たから知ってるよ!」
顔は彼女を向いてはいるけれど、意識は蚊帳の外。足元からしても表情からしても。
無警戒、無用心、無神経、無節操。ああ、そういう人なんだなって分かるよ。
このゲエムで"最も足を掬われるタイプ"の人間だ。
「へえ。オレもおんなじかなー、今まで来てなかったトコに行きたくなってみるよね!
そしたら新しい人にも会えて一石二鳥ってね!」
こういう人は"反応"を見るのが毎回愉しくて仕方がない。
さて、どういう"反応"を見せてくれるのか。
「ああ、そういえばさ、酢豚ちゃん。
キミはこのゲエム、参加するつもりなの?」
【酢豚パイナポー】
「ゲーム、ですか…。」
パイナポーはその言葉に顔を小さく歪め、何かを答えようとして口をもごもごと動かす。パイナポーの心情としては人を殺したいとは思わないのだ。
しかし、ゲームに参加しなければ自分が殺される…そう考えると、参加せざるを得ないのだから。
「……私は、参加…自体はします。でも、人を殺そうなんて思いませんっ!目指すのはみんなで脱出ですよっ!
3人死んじゃったけど…ゾディアックには生き返らせる事の出来るのがあるらしいじゃないですか、だから…それを見つけないとですねっ!」
パイナポーは自身の決意を、意気揚々と海月へと語る。それはとても甘く難しい考えである事は重々承知しているのだが、パイナポーはそれが出来るとどこか確信しているのだ。
人の善意を信じる…という無根拠な信念によって。
【海月】
はぁ。
その返事を聞いて、心底から、心の底から、落胆を覚えた。
人は殺さないのに参加する?そんなの参加していないのと同じだし、傍観者だ。つまらない。
"何もせずに見ている"参加しないヤツらよりよっぽど偽善的な考えの持ち主。
おおかた、"自分は死にたくないけど皆にも死んでほしくない、あくまでも目指すは全員生還"なんて思っているんでしょう?
それでこのデスゲエムに参加する?笑わせるな。
「ねえ、そんな甘い考えでこのゲエムを愉しめるとでも思ってるの?」
自分も、彼女に一歩、一歩ずつ歩みを近づける。
彼女が不用心であったことを、見越して。
「それとも何?みんなで脱出の"みんな"にはこのゲエムを仕組んだヤツらも含まれてますよだなんていうつもり?」
もっと、近づいて。彼女の目の前へ。逃げられないように、手を掴んだ。
「ああ、笑止。やっぱりキミ、つまらないヤツだよ。
生き返らせる?みんなで脱出?そんな興醒めでつまらないコトをしてこのゲエムの何に参加するつもりなの?
命は一回しかないから愉しいし、コンティニューがないから死に物狂いで生きるし、だからこそ。
人を殺すヤツも、自分で死ぬヤツもいる。
キミがそれをどうこう言う権利も、何とかする権利もない。
自分の意志だけで何もかもを救えるだとか、みんなを助けなきゃいけないだとか、エゴイストにも程があるよ。
その信念が何処から来てるのか疑っちゃう。」
【酢豚パイナポー】
「ええ。当たり前じゃないですかっ。」
一言。
近づかれても、腕を掴まれても。
ニコニコと、ニコニコと。
その笑顔は変わらず、その笑顔は曇らず。
「私が目指すのはAzothもCelestiaもMadmanも。
全員の脱出、全員の解放に決まってるじゃないですか。貴方は何を言っているのですか?」
パイナポーは、続ける。
「人を殺す?自分で死ぬ?それこそ馬鹿らしい。
命は蝋燭です。火の勢いを強くして、一時の明るさを求めたとしても意味はない。必要なのは継続的に闇を照らすこと。ただ強く明るいだけの蝋燭など誰も買いませんよね?必要ないですよね?
…それが分からないのですか?」
それに、と付け加えて笑う。
「私はとびっきりのエゴイストですから。
必要ならば汚濁を注ぎましょう。
必要ならば泥も啜りましょう。
必要ならば人を殺しましょう。
結果こそ全て。GAME OVERなどあってはならない。“俺”は、そうして生きているのです。そこに他者の介在など許さない。自身の道を歩むだけです。
お分かりですか?プレイヤーさん♪」
くすくすと、くすくすと。
くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす。
パイナポーは、嗤う。
【海月】
「ああ、分からないよ。」
偽善。偽善者。偽善者、偽善者!!嘘つきッ!!
人を何に例えて、何が効率的だとか、何が非効率的だとか、何が必要だとか何が不必要だとか。
"ゲエムは娯楽であるべきだ"なんて。
「誰も買わない、必要のないミチだって。継続的に照らすモノだって。
"買い手がいなければ何も意味がない"。
オレたちは買われる側で、飼われる側で、代われる側だ。必要価値がなくなったらゴミ箱にポイだよ。
それなのに必要ならば必要ならばって、キミは必要事項でしか生きることができないの?」
キミが何と言おうと。
「皆が生きる、皆が皆でハッピーエンド?荒唐無稽だって。
GAME OVERを楽しむコトもゲエムなのだから。
キミが"然う"したいのは良く分かったけれど、その信念に人様の娯楽を巻き込まないでくれるかな。」
それにね、と言葉を狂わせて。
「必要ならば、不必要ならば、そんな単語で生きていいほど"オレたち"は従順じゃない。
照らせない光も染まらない闇もある。それを総てだなんて。
――分からないからこそ愉しいんじゃないか。ゲエムは"愉しむ"為のモノ。
ただ効率的にモノゴトを進めて生きたいヤツが"参加"する必要はない。」
手は放した。
…彼女と同じように哂った。
【酢豚パイナポー】
「ふふっ、それこそ笑止千万、荒唐無稽にも程があるのですよ。海月さん♪」
「どんなにそれが良いものでも、買われなければ意味がない。ええ、ええ。その通り全くもって正しい事実でしょう。
だからこそ、長く要を得ることに意義があるのですよ。そこにどんな不純があっても、存在価値の証明をされなければただのゴミ。最良のして最善、それを目指さなきゃ過程は無駄ですからね。」
パイナポーは頬に当てた手を唇へと動かす。
嗤い声は、止まる。
「バッドエンドはリスタートしなければならない。
グッドエンドはもう一度。
ファニーエンドには笑いましょう。
目指すのはただ一つのハッピーエンド。貴方がどこを目指そうが勝手だけど…、プレイヤーはフラッグに勝てないですよ?
既に、終わったイベントは復刻しませんので♪」
「では、海月さん♪貴方は擦り切れたレコードを一人で何度も繰り返していてくださいな。ビートルズはオススメですよ?
美味しい美味しい料理でも、食べる事を夢想していてくださいな。とっぽぎ料理なんてどうでしょう?私に大きく縁は有りますしっ。
その間に私は歩いていますので。小さな夢を見ている貴方を尻目に、俺は願いを叶えるから、さ。」
嘆く自分はもう死んだ。今居るのは失敗を知った死人ただ一人。もう枯れた井戸には雨は降り注がない。あるのは忘れ去られた大地のみ。
海月が浮く程の大きな海は、既にパイナポーの中には存在しない。
【海月】
「あはは。そうだね。オレからしても、キミが何処を目指すかは勝手。
キミからしても、オレが何処を目指すかは勝手。
――今回は、それが摺り合わなかっただけ。そうでしょう?」
ゆったりと、おもむろに、彼女から距離を離す。
「だったなら、オレとしては、キミの願いをバラバラに壊すのも手ではある。
大きな願望を抱えきれるほど、アンタは大きい存在じゃないって教え込んでやる。
ずっとずっと歩いていればいいさ。其れは手段だ。
ずっとずっと進んでいればいいさ。其れは結論だ。
けれど、道の先に願望への近道があるとは限らない。停滞も選択肢であり、結末であり、願望だ。
歩きすぎてキミが世界を見失う事でも心待ちにしておくよ。」
井戸の中の蛙は大海を知らないと言う。
大海にいるというものはとても退屈で。何処へ進んでも何処へ歩いても逃げ道はない。
その分、枯れて忘れられて何もなくなった大地の方が有意義なのだろう。
其方の方がとても希望があるのだろう。
けれどそれだけ。
その希望を手に出来るかなんて人次第だ。文字通り、"歩きすぎて彷徨ってしまう"前に戻らなければいけない。
行きは良い良い、帰りは怖いなんてことになってしまえばもう遅い。
「それに。夢を叶えるというのもつまらないものだから。
停滞するだけで、永遠に夢を見ていられるなんて、素敵な事だと思わない?
―――分からないか。」
【酢豚パイナポー】
「よく分かってるじゃないですか。物分かりのいい人は好きですよ、面倒ごとが少なくて。」
「まぁ、私は足が千切れようと歩くだけです。止まらず留まらず。それが私が生きる理由、私が死なない理由なのですから。
精々遠くから見ていて下さいね?道半ばで頭だけになったら、笑って下さいね?
ならないですけど。」
パイナポーも、海月からゆっくりと離れるように歩んでいく。本当なら次会った人物は“コレ”で殺そうなんて思っていたけど…面白いし、やめておこう。
歩き続けるために必要なパーツは、まだまだ擦り切れていないのだから。
パイナポーは無価値だ。
価値のあるものはパイナポーが手にしようと夢見る光。愚者が伸ばす蜘蛛の糸。
ああ、ああ。それを誰かが手を伸ばしてくれればどれだけ良かったか。それに手が届かないと知ればどれだけ良かったか。
…でも、誰も伸ばさない、進まない。
ならば、私しかいない。太陽を目指すイカロスのように。命を捨てて、命を手に入れなければ。
何も知らない自分は、進む事しかできない哀れな絡繰人形でしかないのだから。
「あぁ、そうです。一個だけ間違ってました。
私に縁があるのは、きりたんぽでしたねっ。」
秋田生まれのパイナポーはそう言って、静かに微笑んだ。
五番目の道化師(3rd)-海月(23rd)
【海月】
まだ探索出来てないところは多くあるけれど、一応記憶に残っている場所と言えば、この電波塔の展望台。
確かさっきは、柏木さんとカフェでお話しでもしていたんだっけ?
――外の退廃的な景色を眺めて。
ああ、良い景色だねとは言えないけれど。
皆はもしかして、これでも満足だったりするのかな?分からないや。
「……まあ。一人で見る雪国の世界って言うのも…あながち、悪くはないのかもしれないね。」
独りなんて意味はないけれど、と付け足して。展望台から外を眺めていた。
【五番目の道化師】
特に来て意味はないがとりあえず景色が綺麗だったから写真を撮りに来た道化師は展望台に訪れた。
「あっ、海月さん。こんにちは」
道化師はリュックを背負い、曲芸以外に使い道のない一メートル杖(鉄パイプ)を持っている。
「海月さんも景色を見に来たんですか?」
にこやかに挨拶する道化師の雰囲気は完全に普通の人である。
【海月】
景色を見ているところに、道化師…?ピエロ?がやってきた。
この状況でなければ驚いたんだろうけど、正直びっくりすることが起きすぎて、ね。
それに、目の前の人もクラスメイトだし。
「…ああ。えっと、ボクを知ってるのかな?
キミの名前は?」
相手は知っているのだろうけれど、こちらからは知らないので。
そういう風に突っぱねて聞いてしまった。
「…ああ、うん。ボクも景色を見に来たんだ。キミも、なんだね」
【五番目の道化師】
「え、あれ…人違いだったかな。私は五番目の道化師と言います。あなたは…海月(くらげ)さんですよね…?」
人違いだったら申し訳ないな。
道化師は困惑の表情を浮かべる。
「えぇ、ここの景色は綺麗だったので記念に写真を撮ろうかと」
【海月】
「…ああ、ああ。やっぱり、えっとね、ボクは海月(ミヅキ)だよ。紛らわしいとは思うけどね、自分でも…
ちょっと、そういう病気でさ。」
厳密には病気というわけでもないんだけど、そういうはぐらし方をしておいた。
人違いっていうわけでもないので、道化師さんには申し訳ないことをしている気分になるけれど。
「…まあ、間違われるのはよくあることだから。しょうがない、しょうがないよ。
ボクも、ここの景色は…ね。でも、やっぱり、真っ白で先が見えない。
…おかしいよね」
【五番目の道化師】
「そうですか…」
悪いことを聞いてしまったな。と、さらに申し訳なくなる。よく間違えられるとしても…間違えてしまったら…。
「白いからこそ美しいんじゃないですか。先が見えなくても」
今日は白いね。でも、それがまた綺麗だ。
【海月】
「…そうなのかな。まあ、ボクは、キミがそう思ってくれてるならそれでいいと思うけど」
ボクの感想なんて個々人の、価値などないどうでもいいもので。
それより目の前の道化師さんの意見が勝るのは当然のことでしょう。
「……此処といえば。
…キミはこの、殺し合いについて。如何思ってるか聞かせてもらってもいいかな。」
ここには、この殺し合いを楽しむ人もいれば、止めようとする人も様々だと思う。
今、目の前の人がどちらなのか、調べてみるにはいい機会だな、と。
…ボク個人の意見なんて、どうでもいいでしょう?
【五番目の道化師】
「えっ、この殺しあいについてですか。そりゃあ、最低だと思います。だって、人殺しは人を苦しませる。私が行う行動とは真逆。クラスメイトが、友人が殺し合うんですよ?私は『ふざけるな!』と叫んでもいいレベルの悲劇だと思っています。」
まぁ、叫ばないけど。てか…ピエロは基本的に喋ること許されてなかったりするし。
「まぁ、私は自分からは手を出すつもりはないので『関係ない』ってところですかねぇ。」
【海月】
「…そっか。」
ああ、然ういう。無干渉な人間か。道徳的な心は持っているけど、自分で決断するつもりはない。
けれど、それも一つの選択肢だ。
ボクはキミがそうしたいならそれでいいと思うし。…それに。
「ボクからは手を出すかもしれないのに、大丈夫なの?
…あ、いや、冗談でもキミに手を出すつもりなんてないんだけれどね。ボクなんかが何を出来るってわけでもないし。
…でも、ほら。一応…ね」
【五番目の道化師】
「そうですね…今のところは『まだ』脱出の手がかりをさがそうと思います。」
だから、今は頑張って脱出の手がかりを探そう。
「あっ、そうだ…海月さん。聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
【海月】
「…ん?聞きたいこと?」
景色にまた集中しようと思って、声をかけられてまた振り返る。
もしかして、ボクに何かお願いか何かかな…なんて。
【五番目の道化師】
「この状況が始まった時に何かアイテムが配られたと思うんですが…何が届いたのか教えてもらえませんか?私は…同人誌が…」
これはなるべく把握しとかないと。
役に立つかはわからないが…
【海月】
「ああ、そんなことか。確か共有チャットにも書いてあったと思うんだけど」
そういってリュックからそれを取り出す。傍から見れば不用心だし、この状況では、少なくとも安全とは言えない。
それほど、この状況に釣り合っている。
刃物。
「これ、マチェット…って言うのかな?ボク、こういった刃物とかよくわからないんだけど…
えっと、これでいい?」
【五番目の道化師】
「共通チャットはあまり見てないもので…」
フレンド登録と個人チャットくらいにしか使ってない。
共通チャットは…なんか、電波状況でも悪いのか開くのに時間がかかるのでみるのがめんどくさいのだ。
「うん、ありがとう」
海月さんはマチェットか。
あぁ、別の人と会ったときにも確認しとけばよかったな。あれを持ってる人は誰だろう。
道化師は端末のカメラを使って真っ白すぎる景色を写真を撮ってから…そのことについてメモを取った。
【海月】
「いえいえ。ボクが頼りになったなら、よかった。
また、何かあったら頼ってくれても…なんて、ボクなんかを頼るわけないか。」
その姿を見ておく。こういうひと時も、良いものかもしれないね。
願わくば、普通の修学旅行で、ほしかったのだけれど。
…でも、こちらの方が、よりよく皆を見れている。それはとても、素敵なコト?
「…ボクはもう行こうかな。ありがとうね、話し相手になってくれて」
【五番目の道化師】
「こちらこそ、ありがとうございました。」
私はもう少しだけ此処にいて白い景色を堪能しようか。
「はい、何かあったらまた頼らせて貰いますね。」
【海月】
まだ探索出来てないところは多くあるけれど、一応記憶に残っている場所と言えば、この電波塔の展望台。
確かさっきは、柏木さんとカフェでお話しでもしていたんだっけ?
――外の退廃的な景色を眺めて。
ああ、良い景色だねとは言えないけれど。
皆はもしかして、これでも満足だったりするのかな?分からないや。
「……まあ。一人で見る雪国の世界って言うのも…あながち、悪くはないのかもしれないね。」
独りなんて意味はないけれど、と付け足して。展望台から外を眺めていた。
【五番目の道化師】
特に来て意味はないがとりあえず景色が綺麗だったから写真を撮りに来た道化師は展望台に訪れた。
「あっ、海月さん。こんにちは」
道化師はリュックを背負い、曲芸以外に使い道のない一メートル杖(鉄パイプ)を持っている。
「海月さんも景色を見に来たんですか?」
にこやかに挨拶する道化師の雰囲気は完全に普通の人である。
【海月】
景色を見ているところに、道化師…?ピエロ?がやってきた。
この状況でなければ驚いたんだろうけど、正直びっくりすることが起きすぎて、ね。
それに、目の前の人もクラスメイトだし。
「…ああ。えっと、ボクを知ってるのかな?
キミの名前は?」
相手は知っているのだろうけれど、こちらからは知らないので。
そういう風に突っぱねて聞いてしまった。
「…ああ、うん。ボクも景色を見に来たんだ。キミも、なんだね」
【五番目の道化師】
「え、あれ…人違いだったかな。私は五番目の道化師と言います。あなたは…海月(くらげ)さんですよね…?」
人違いだったら申し訳ないな。
道化師は困惑の表情を浮かべる。
「えぇ、ここの景色は綺麗だったので記念に写真を撮ろうかと」
【海月】
「…ああ、ああ。やっぱり、えっとね、ボクは海月(ミヅキ)だよ。紛らわしいとは思うけどね、自分でも…
ちょっと、そういう病気でさ。」
厳密には病気というわけでもないんだけど、そういうはぐらし方をしておいた。
人違いっていうわけでもないので、道化師さんには申し訳ないことをしている気分になるけれど。
「…まあ、間違われるのはよくあることだから。しょうがない、しょうがないよ。
ボクも、ここの景色は…ね。でも、やっぱり、真っ白で先が見えない。
…おかしいよね」
【五番目の道化師】
「そうですか…」
悪いことを聞いてしまったな。と、さらに申し訳なくなる。よく間違えられるとしても…間違えてしまったら…。
「白いからこそ美しいんじゃないですか。先が見えなくても」
今日は白いね。でも、それがまた綺麗だ。
【海月】
「…そうなのかな。まあ、ボクは、キミがそう思ってくれてるならそれでいいと思うけど」
ボクの感想なんて個々人の、価値などないどうでもいいもので。
それより目の前の道化師さんの意見が勝るのは当然のことでしょう。
「……此処といえば。
…キミはこの、殺し合いについて。如何思ってるか聞かせてもらってもいいかな。」
ここには、この殺し合いを楽しむ人もいれば、止めようとする人も様々だと思う。
今、目の前の人がどちらなのか、調べてみるにはいい機会だな、と。
…ボク個人の意見なんて、どうでもいいでしょう?
【五番目の道化師】
「えっ、この殺しあいについてですか。そりゃあ、最低だと思います。だって、人殺しは人を苦しませる。私が行う行動とは真逆。クラスメイトが、友人が殺し合うんですよ?私は『ふざけるな!』と叫んでもいいレベルの悲劇だと思っています。」
まぁ、叫ばないけど。てか…ピエロは基本的に喋ること許されてなかったりするし。
「まぁ、私は自分からは手を出すつもりはないので『関係ない』ってところですかねぇ。」
【海月】
「…そっか。」
ああ、然ういう。無干渉な人間か。道徳的な心は持っているけど、自分で決断するつもりはない。
けれど、それも一つの選択肢だ。
ボクはキミがそうしたいならそれでいいと思うし。…それに。
「ボクからは手を出すかもしれないのに、大丈夫なの?
…あ、いや、冗談でもキミに手を出すつもりなんてないんだけれどね。ボクなんかが何を出来るってわけでもないし。
…でも、ほら。一応…ね」
【五番目の道化師】
「そうですね…今のところは『まだ』脱出の手がかりをさがそうと思います。」
だから、今は頑張って脱出の手がかりを探そう。
「あっ、そうだ…海月さん。聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
【海月】
「…ん?聞きたいこと?」
景色にまた集中しようと思って、声をかけられてまた振り返る。
もしかして、ボクに何かお願いか何かかな…なんて。
【五番目の道化師】
「この状況が始まった時に何かアイテムが配られたと思うんですが…何が届いたのか教えてもらえませんか?私は…同人誌が…」
これはなるべく把握しとかないと。
役に立つかはわからないが…
【海月】
「ああ、そんなことか。確か共有チャットにも書いてあったと思うんだけど」
そういってリュックからそれを取り出す。傍から見れば不用心だし、この状況では、少なくとも安全とは言えない。
それほど、この状況に釣り合っている。
刃物。
「これ、マチェット…って言うのかな?ボク、こういった刃物とかよくわからないんだけど…
えっと、これでいい?」
【五番目の道化師】
「共通チャットはあまり見てないもので…」
フレンド登録と個人チャットくらいにしか使ってない。
共通チャットは…なんか、電波状況でも悪いのか開くのに時間がかかるのでみるのがめんどくさいのだ。
「うん、ありがとう」
海月さんはマチェットか。
あぁ、別の人と会ったときにも確認しとけばよかったな。あれを持ってる人は誰だろう。
道化師は端末のカメラを使って真っ白すぎる景色を写真を撮ってから…そのことについてメモを取った。
【海月】
「いえいえ。ボクが頼りになったなら、よかった。
また、何かあったら頼ってくれても…なんて、ボクなんかを頼るわけないか。」
その姿を見ておく。こういうひと時も、良いものかもしれないね。
願わくば、普通の修学旅行で、ほしかったのだけれど。
…でも、こちらの方が、よりよく皆を見れている。それはとても、素敵なコト?
「…ボクはもう行こうかな。ありがとうね、話し相手になってくれて」
【五番目の道化師】
「こちらこそ、ありがとうございました。」
私はもう少しだけ此処にいて白い景色を堪能しようか。
「はい、何かあったらまた頼らせて貰いますね。」
臨海 凪乃(6th)-エム(17th)
【エム】
「……けほっけほっ……」
エムはどうやら、完全に風邪を引いてしまったようです。
ゾクゾクするし、咳は出るし、頭もぼーっとしていて、熱もありそうです。
でも、今ほかの人たちに、風邪を引いたから、なんて理由で連絡して助けに来てもらうのは、申し訳ないですから、なるべく厚着をして、ショッピングモールで少しお買い物。
風邪薬とか、生姜湯とか、そんなものを買って。
そして、帰ろうと思ってモールを出たあと、ちょうど近くにあった電波塔が目に着きました。
まだ、行ったことなかったな、なんて。
ぼーっとした頭で考えて、電波塔の中へと足を踏み入れることにしました。
大人しく帰ればよかったのに。
【臨海 凪乃】
この銀世界はよく冷える。
故に、体調を崩すのもおかしくない。
私が勝手に根城にしている電波塔に踏み込む少女
しぼりたての牛乳、山の畑で採れた野菜
そして新鮮な肉をシチューにして煮込む。
たまたま食事の時間だ。
「風邪かい……
きたまえ、温めてあげよう」
3名の死者がすでに出ている中で……
雰囲気的には状況に合わない。
何処か隔離された世界の住人、そんな印象だ。
【エム】
「…………」
中に入ると、暖かくて、少しだけ、楽になりました。
そして、声をかけてきてくれたお姉さんがいて。
とりあえずエムは、お姉さんの方へと近づいていきます。
「……お姉さん、なんでこんなとこにいるんですか?」
それは、素朴な疑問でした。
みんながホテルとか、ペンションとかで過ごしている中、こんなところで過ごしているのは少し不思議で。
そんなことを質問しました。
【臨海 凪乃】
「…………何故とは?」
展望台には場違いなティーセットの置かれた机、椅子に座って紅茶を嗜む
そして眼下の雪国を見る
そして淡々と降り積もる雪のように
「特に理由はないよ。 ただ好きだから
さぁ、座りたまえ、冷えてしまう」
と、促す。
勿論こんな状況だから不信感は生まれるだろうが
毒物など仕込んではいない。
【エム】
「…………失礼します」
怪しい、とは思いました。
でもそれに逆らうことは、しませんでした。
体力を無駄に使いたくはないし、他人のこと疑っていたら、自分のことも疑われてしまいますから。
敵を騙すなら味方から、ならぬ、信じてもらうなら自分から、ということで。
促されたまま、席に座りました。荷物は自分の前に、抱くように置いておいて。
【臨海 凪乃】
自分からシチューを口に運ぶ
何の問題もないのだから。
それを自ら証明する。
13thといい、この目の前の少女といい
なぜこの場にいるのだろうか。
本当に、憐みの念を感じる。
こんな人生になってしまって、まぁそれはいい。
「君は……生きたいかね?」
【エム】
「……死にたくはないです」
やり残したこととか、やれなかったこととか、いっぱいあるから。
向こうに置いてきたものとか、沢山あるから。
いただきます、と一言呟いて、出されていたシチューを口元に運びました。
お店で出されるような、そんな大層な味ではないですけど、どこか家庭的や感じで、少しほっとしました。
「……お姉さんはどうなんですか?」
エムは死にたくありません。死なせたくもありません。
でも、お姉さんはどうなんだろうなって、そう聞きました。
【臨海 凪乃】
「興味がない」
そう一言。
「なぜならば……私はこのゲームにおいて必ずしも生きるから」
そう決まっている。 これは揺るぎない事実である。
すでに3名の死者が出ているがそんなことは関係ない。
こんなゲーム、誰の人生が絡もうと何の意味もない。
人生は歩き回る影法師、哀れな役者だ。
出番の間は大袈裟な身振りでのし歩き、大声でわめいても、
それが終わると黙ってしまう。
人生は間抜けが語る物語。声の響きと激情に満ちてはいるが、
何の意味はアリはしない。
「君を生かしてあげよう ただし、 金次第だがね」
【エム】
「お金、なんてここにありましたっけ」
なんて、少し意味がわからないように話してみて。
多分、向こうに戻ってからの話なんだろうな、とは思うけど。
命を守ってもらえるほどのお金、『お兄さん』は持っていたかは、もう忘れてしまいましたけど。
「それに、エムのこと、ちゃんと守ってくれるんですか?」
お金次第、とは言いましたが、払えるだけの何かを、この人は持ってるのでしょうか。
確証がないのに、金次第で守ってやる、なんて話は、信じられる訳もなくて。
まぁ、足元見られてるような気もしますけど、念の為それだけ聞きました。
【臨海 凪乃】
「単刀直入に言おう 私はこのゲームの黒幕なのよ
このゲームでは好き勝手できる、宣言しよう。
金さえ払えばこんなクソみたいなゲームから完全に君を守り、君に人生を与えよう」
ヌルゲーすぎる。
何もしなくてもいろんな人間が死ぬ。
様々な思いが混線し 混沌し 堕ちる
たとえ見栄を張ってウソをついたとしても
所詮人間のどうでもいい群像劇でしかない
「あと……そのシチューの肉はね 人肉だよ ほら」
顎で指すと無残に朽ちた10thの死体である
「生きる人間は、様々な死を乗り越えた人間
私はそう思うのよ」
【エム】
「――――――はぁ」
出たのは、驚きによる叫びでも、人を食べてしまったという後悔からでた悲鳴でもない、ただただ、無感動なため息でした。
いまさら、死体を見せられてもどうこう思うこともありません。
というより、仮の姿の死体なんて、所詮は模型が壊れたような、そんな程度のものにしか思えませんでした。
これがクラスメイトの本当の姿で死体になっていたなら、もう少し違っていたかも知れませんけど。
スプーンを置いて、席をたちます。
座ったばかりですけど、こんな所にいられるような精神状態ではありませんでした。
「なら、お断りします。
エムは少なくとも、死体を食べるような人のお世話になるつもりはありませんから」
たとえ、人肉だというのが嘘であろうと、真であろうと、やることは変わらない。
みんなを守って帰るだけ、みんなで生きて帰るだけ。
それが『エム』の願いなら、『ボク』はそれを叶えるだけだから。
…………風邪をひいて、ちょっとだけ『エム』が薄れてきちゃったんでしょうか。
早いうちに治さないとな……
【臨海 凪乃】
「…………そう」
ふぅ…… っと一息入れる
そしてわざとらしくフォークを肉塊に突き立てて口に運ぶ
「あなたには無理よ……
そういう人間じゃないから
このゲームはね、10人の屍の上で生を与えられる
そういう規律の上に成り立っているのよ。
結局、勝つのはそういう人間なの
他人の死を自分の血肉にできる人間」
紅茶を飲んで一息入れる
「お帰りはあちらですよ」
にこっと笑う
【エム】
「……10人殺して生きたって、生きた心地はしませんよ」
ありがとうございました、なんて。
大して思ってもいない感謝を伝えれば、エムは再び荷物を持って、電波塔を出ました。
やっぱり温度差で1層寒く感じてしまいますけど。
「…………風邪、治さないとな」
そう呟いて、エムはホテルへの帰路に着きました。
【エム】
「……けほっけほっ……」
エムはどうやら、完全に風邪を引いてしまったようです。
ゾクゾクするし、咳は出るし、頭もぼーっとしていて、熱もありそうです。
でも、今ほかの人たちに、風邪を引いたから、なんて理由で連絡して助けに来てもらうのは、申し訳ないですから、なるべく厚着をして、ショッピングモールで少しお買い物。
風邪薬とか、生姜湯とか、そんなものを買って。
そして、帰ろうと思ってモールを出たあと、ちょうど近くにあった電波塔が目に着きました。
まだ、行ったことなかったな、なんて。
ぼーっとした頭で考えて、電波塔の中へと足を踏み入れることにしました。
大人しく帰ればよかったのに。
【臨海 凪乃】
この銀世界はよく冷える。
故に、体調を崩すのもおかしくない。
私が勝手に根城にしている電波塔に踏み込む少女
しぼりたての牛乳、山の畑で採れた野菜
そして新鮮な肉をシチューにして煮込む。
たまたま食事の時間だ。
「風邪かい……
きたまえ、温めてあげよう」
3名の死者がすでに出ている中で……
雰囲気的には状況に合わない。
何処か隔離された世界の住人、そんな印象だ。
【エム】
「…………」
中に入ると、暖かくて、少しだけ、楽になりました。
そして、声をかけてきてくれたお姉さんがいて。
とりあえずエムは、お姉さんの方へと近づいていきます。
「……お姉さん、なんでこんなとこにいるんですか?」
それは、素朴な疑問でした。
みんながホテルとか、ペンションとかで過ごしている中、こんなところで過ごしているのは少し不思議で。
そんなことを質問しました。
【臨海 凪乃】
「…………何故とは?」
展望台には場違いなティーセットの置かれた机、椅子に座って紅茶を嗜む
そして眼下の雪国を見る
そして淡々と降り積もる雪のように
「特に理由はないよ。 ただ好きだから
さぁ、座りたまえ、冷えてしまう」
と、促す。
勿論こんな状況だから不信感は生まれるだろうが
毒物など仕込んではいない。
【エム】
「…………失礼します」
怪しい、とは思いました。
でもそれに逆らうことは、しませんでした。
体力を無駄に使いたくはないし、他人のこと疑っていたら、自分のことも疑われてしまいますから。
敵を騙すなら味方から、ならぬ、信じてもらうなら自分から、ということで。
促されたまま、席に座りました。荷物は自分の前に、抱くように置いておいて。
【臨海 凪乃】
自分からシチューを口に運ぶ
何の問題もないのだから。
それを自ら証明する。
13thといい、この目の前の少女といい
なぜこの場にいるのだろうか。
本当に、憐みの念を感じる。
こんな人生になってしまって、まぁそれはいい。
「君は……生きたいかね?」
【エム】
「……死にたくはないです」
やり残したこととか、やれなかったこととか、いっぱいあるから。
向こうに置いてきたものとか、沢山あるから。
いただきます、と一言呟いて、出されていたシチューを口元に運びました。
お店で出されるような、そんな大層な味ではないですけど、どこか家庭的や感じで、少しほっとしました。
「……お姉さんはどうなんですか?」
エムは死にたくありません。死なせたくもありません。
でも、お姉さんはどうなんだろうなって、そう聞きました。
【臨海 凪乃】
「興味がない」
そう一言。
「なぜならば……私はこのゲームにおいて必ずしも生きるから」
そう決まっている。 これは揺るぎない事実である。
すでに3名の死者が出ているがそんなことは関係ない。
こんなゲーム、誰の人生が絡もうと何の意味もない。
人生は歩き回る影法師、哀れな役者だ。
出番の間は大袈裟な身振りでのし歩き、大声でわめいても、
それが終わると黙ってしまう。
人生は間抜けが語る物語。声の響きと激情に満ちてはいるが、
何の意味はアリはしない。
「君を生かしてあげよう ただし、 金次第だがね」
【エム】
「お金、なんてここにありましたっけ」
なんて、少し意味がわからないように話してみて。
多分、向こうに戻ってからの話なんだろうな、とは思うけど。
命を守ってもらえるほどのお金、『お兄さん』は持っていたかは、もう忘れてしまいましたけど。
「それに、エムのこと、ちゃんと守ってくれるんですか?」
お金次第、とは言いましたが、払えるだけの何かを、この人は持ってるのでしょうか。
確証がないのに、金次第で守ってやる、なんて話は、信じられる訳もなくて。
まぁ、足元見られてるような気もしますけど、念の為それだけ聞きました。
【臨海 凪乃】
「単刀直入に言おう 私はこのゲームの黒幕なのよ
このゲームでは好き勝手できる、宣言しよう。
金さえ払えばこんなクソみたいなゲームから完全に君を守り、君に人生を与えよう」
ヌルゲーすぎる。
何もしなくてもいろんな人間が死ぬ。
様々な思いが混線し 混沌し 堕ちる
たとえ見栄を張ってウソをついたとしても
所詮人間のどうでもいい群像劇でしかない
「あと……そのシチューの肉はね 人肉だよ ほら」
顎で指すと無残に朽ちた10thの死体である
「生きる人間は、様々な死を乗り越えた人間
私はそう思うのよ」
【エム】
「――――――はぁ」
出たのは、驚きによる叫びでも、人を食べてしまったという後悔からでた悲鳴でもない、ただただ、無感動なため息でした。
いまさら、死体を見せられてもどうこう思うこともありません。
というより、仮の姿の死体なんて、所詮は模型が壊れたような、そんな程度のものにしか思えませんでした。
これがクラスメイトの本当の姿で死体になっていたなら、もう少し違っていたかも知れませんけど。
スプーンを置いて、席をたちます。
座ったばかりですけど、こんな所にいられるような精神状態ではありませんでした。
「なら、お断りします。
エムは少なくとも、死体を食べるような人のお世話になるつもりはありませんから」
たとえ、人肉だというのが嘘であろうと、真であろうと、やることは変わらない。
みんなを守って帰るだけ、みんなで生きて帰るだけ。
それが『エム』の願いなら、『ボク』はそれを叶えるだけだから。
…………風邪をひいて、ちょっとだけ『エム』が薄れてきちゃったんでしょうか。
早いうちに治さないとな……
【臨海 凪乃】
「…………そう」
ふぅ…… っと一息入れる
そしてわざとらしくフォークを肉塊に突き立てて口に運ぶ
「あなたには無理よ……
そういう人間じゃないから
このゲームはね、10人の屍の上で生を与えられる
そういう規律の上に成り立っているのよ。
結局、勝つのはそういう人間なの
他人の死を自分の血肉にできる人間」
紅茶を飲んで一息入れる
「お帰りはあちらですよ」
にこっと笑う
【エム】
「……10人殺して生きたって、生きた心地はしませんよ」
ありがとうございました、なんて。
大して思ってもいない感謝を伝えれば、エムは再び荷物を持って、電波塔を出ました。
やっぱり温度差で1層寒く感じてしまいますけど。
「…………風邪、治さないとな」
そう呟いて、エムはホテルへの帰路に着きました。
ヒガンバナ(11th)-柏木 愛(25th)
【柏木 愛】
「うーん、すげぇいっぱいあるけど……どれがいいのかサッパリですね……」
(ショッピングモール3Fの電化製品コーナーにて、彼はカメラを眺めていた。高校生ではとても手が出せない高額なカメラが無料で手に入る貴重な機会だが、何分カメラなんぞに詳しくなく、どれを買えばいいのか迷いに迷う)
【ヒガンバナ】
ショッピングモール
こんな明るい場所であれば、きっと気分も晴れるかと思っていたのだが……そんな事は無かった。
寧ろ、周りの音は鬱陶しく、煩わしく思え、私の気分は更に落ち込む。
それに呼応するかの様に、髪の彼岸花も、少し萎れている。
「…………あれ、は。」
ぼんやりと、店員ではない人影を見つけた。
……まともな話を出来る気はしないが、少しずつ近づいていく。
【柏木 愛】
「あ……」
(一人の少女がこちらにくるのがわかった。
刀らしきものを携えているのを見て、戦慄。え、殺す?これ、殺される?
よく見るとなんだか暗い雰囲気だし、これ斬られる?なんで?)
「ごめんなさいでしたぁ!殺さないでください!なんでもしますから!」
(先手必勝。相手の目の前に滑り込むように両手両膝をつき、ヘッドバット土下座を繰り返す)
【ヒガンバナ】
「…………殺しはしないさ。」
私はただ一言、そう答えた。
……と言っても、信じては貰えないのだろう。
刀を持ち、人を斬った私など。
【柏木 愛】
「ほ、本当ですか?し、信じることにします。
どのみち襲われたら俺、終わりなんで。俺は確かにゴミカスですけど死にたくないです、はい」
(諸手を上げて信じます!というわけにはいかないが、疑ったところでどうしようもない。全員で生きて帰ると決めたからには、相手と和解する心が必要なのだ。そう、彼はいい子なんだよ)
「あ、俺柏木愛っていいます……あなたはえっと、ヒガンバナさん、ですよね?」
(参加者一覧で名前は見ているし、彼女は共有チャットで名乗っていた気もする)
【ヒガンバナ】
「柏木か……ああ、私はヒガンバナだ。
宜しく、頼む。」
……どうにも、言葉が絞り出す様な物になってしまう。
全く、引きずり過ぎだ、私。
「……はぁ……なあ、柏木。
貴様は、どんなアイテムを貰ったか教えて貰っても構わないか?」
【柏木 愛】
「アイテムですか?ええと、なんかよくわからない大きな白い布だったんですけれど……トロンパさんに奪われました。まぁ、今となっては、彼は亡き人ですが……」
(少し悲しそうに目を伏せる。きっと彼も、状況が状況なせいで錯乱していたのだろう。悪いのは彼ではない、このゲームだ!つまり自分の暴走もゲームのせいである。Q.E.D)
「ヒガンバナさんは?その刀みたいなやつですか?」
【ヒガンバナ】
「……トロンパに、奪われたか。」
確か彼は死んでいる。
……なら、そのアイテムも行方不明だ。
困ったものだ。
「……まあいい、それからこの刀は自作だ。
私のアイテムは……(言わなくてもわかるよね?)
後だな……少し行きたい所があるが、付いてくるか?」
行きたいところは、KFCだ。
何故って?……まあ、聞くな。
【柏木 愛】
「はぇ〜、これまた微妙なアイテムですね……。
ええ、構いませんよ。時間は有り余っております」
(詳しくは言えないけどとりあえず微妙である。
カメラなんぞ後からいくらでも見ることはできる。ここは相手の用事に付き合うとしよう)
〜〜というわけでKFCへ〜〜
「なんですかこのカーネル、キモ……。
あ、あの人は……!」
(店の前で同じセリフを繰り返すカーネルさんを冷めた目で見つめる。少し離れたところにいる幼女に気が付くと、若干気まずい気持ちになるのだった)
【あいごころ。】
「…あら?」
KFCでチキンナゲットを食べていた。もぐもぐ。そしたら見覚えのある顔が1人と…刀?をもった女性が1人やってくるのが見えた。
「…ごきげんよう」
狐面を触る。とりあえずまずは挨拶。変態はともかく刀を持ったほうは初対面だ。…武器を見せびらかしているあたり、威嚇のためか、あるいは腕に自信があるかどうか…はたまたその両方かしら?
「柏木…だったかしら?さっきぶりね?」
とりあえず変態にはそう言葉をかけておく。
【ヒガンバナ】
「……知り合い、か。」
エムとは会っているので然程驚かなかったが、かなり幼そうな少女だと思った。
どうやら柏木と知り合いらしい。
「…………眼鏡……か。」
そして、煩く騒いでいるカーネル爺さん……眼鏡、と言われて思い付くのは、自分の掛けてるこれ。
……そもそも伊達眼鏡なのではずしても構わないのだ。
試しに、自分の掛けていた物を、じいさんに付けてやる。
『カーネル』
『なんやこの眼鏡?お前センスなさすぎやわー。人生やり直したほうがええで』
(違ったようだ……)
【柏木 愛】
「なんか、どんまいです」
(無駄に罵倒されるヒガンバナに同情の視線を送る)
「あ、せっかくですし三人で一緒に食べます?あ、ヒガンバナさんの注文も俺取ってきますよ、はい」
(下っ端根性が見についている。将来は立派な社畜になれるだろう)
【あいごころ。】
「ええ。そうね。せっかくだし“あのこと”についても詳しくはなさいといけないものねぇ?」
ニッコリと柏木に微笑む。あの時はどうかしていたが後々になって怒りがふつふつと沸いてきたようで。
「ま、食べるのはいいのだけれども。その前に自己紹介かしらね。私はあいごころ。あなたの名前を聞いてもいいかしら?」
そういって刀をもつ少女を見る。…雰囲気は鋭いわね。下手な事言うと切られそうかしら?…まあ、下手な事言うつもりなんて毛頭ないけれども。こういう人物はいまだ見たことない。さて、あなたはどういう人物なのかしらね?
【ヒガンバナ】
「………………。」
喧しい罵倒を浴びせられても、刀を抜く気にはなれなかった。
じいさんに掛けた眼鏡を掛け直して、また元の眼鏡をじいさんに掛けた。
「……余り、腹は減ってなくてな、
少しでいい。」
今の気分では、食い物も受け付けてくれなさそうだ。
柏木にそう頼むと、私は少女の向かいの席に、重い体を下ろした。
病は気から、昔の人は頭がいい。
「……私はヒガンバナだ。
……かなり萎れているが、髪のこれに因んで付けた。」
あいごころ。か……エムよりも、幼く見える。
【柏木 愛】
「いや、あれは不可抗力というか、芸術だし……ていうかこの場でそれは勘弁してくださいよ……!」
(ヒガンバナを横目で気にしつつ。凶器を提げている人の前であれこれ言われるのは流石に勘弁願いたかった)
「す、少しですね!わかりました!行ってきます!いてっ!」
(テーブルの角に腰をぶつけながら、シュバババとカウンターに駆けていく)
【あいごころ。】
「…はぁ」
そそくさと逃げていく柏木にため息を吐きつつ。とりあえずはヒガンバナに話しかけることにする。
「あの人にはなにかされたかしら?たとえば…裸の写真を取られた、とか。」
いつも通りの会話のきっかけだ。正直柏木が犠牲になるとかはどうでもいい。それよりも、今は彼女のことをしることが目的。
「ま、あなたなら例えそんなことされても返り討ちにしそうだけれども…ね?」
刀をチラリと見てクスッと笑う。凶器。それを持つということは少なくとも人に危害を加えるかもしれない、という意識がある証拠。この状況ではたとえ威嚇のつもりでもそれだけでは意味が無いということは分かっているはずだ。…彼女はもう、なにかを“壊した”のだろうか?
【ヒガンバナ】
「……裸?
お前さんは、撮られたのか?」
彼女の言葉を聞いていると、その様に聞こえてしまう。
そう考えると、何故か柏木の様子が変なのも頷ける。
と言うよりも、やはり刀を見られるか。
流石にもう、自慢する気力はない。
「……どうだろうな。」
……私がこんなだからか、また彼岸花の花弁が落ちる。堕ちる。
机の上に、別の華を咲かせ、広がっていく。
【柏木 愛】
「お、お待たせしましたぁっ!お、俺こういう所きたことが無くて、よくわからなかったので、適当に買ってきました!ごめんなさい!」
(率先して買いに行ったのは良いが、KFCに一度も来たことがなかったので、何が美味しいのかサッパリわからず。とりあえず普通のフライドチキンに、クリスピーやらポテトやらコーラやらを付け、お盆一杯にして戻ってくるのだった。
それをテーブル中央に置くと、ヒガンバナの横の席に座り)
「へ、変な話してませんよね?よね?」
【あいごころ。】
「ええ。まったく“変な話”はしてないわよ?」
別に変なことではない。ただこんなことされてないよね?という確認なのだから。戻ってきた彼女にそういいながらお盆に置かれたドリンクを適当にとる。…ふむ。コーラか。嫌いではない。
「…そういえば、また死者が出たわね?」
唐突にそう切り出す。もちろん。その死者というのは1st…ふ○なっしーのことだ。正直彼女が死ぬ、というのはなかなか驚いたことではあったのだが、別に、それだけ。死んでしまった。それだけの話なのだから。
「一体誰が殺したのかしら。現場見てないからよく分からないけれど。…少なくとも殺した、ということはゲームに参加する意思がある、ということよね。」
ゲームに参加する意思。もちろん遠回しの意味。…参加者のなかに人殺しがいる、と言うことを遠回しに言った。その、人殺しが誰なのか。全く知る由もないのだけれどね。…例えそれが目の前にいたとしても。
【ヒガンバナ】
「……していなかった、か。」
彼女がそう言うなら、そう言うことにしておこう。
余り、深く聞く気もない
「……ああ、死んだな。
これで、三人……」
彼女は、私が殺したことを分かっているのだろうか。
それとも、私の顔にでも書いてあったか。
『私は人斬りです。』と……
【柏木 愛】
「そ、そうですね……。本当にクラスメートなのかなって、思います。
それにしても、人を殺すなんて……クズですよクズ!そんな奴が目の前にいたら俺、怒りで手がでちまうかもしれません!どんな顔してるんでしょう?きっとブスなんでしょうね!」
(チキンを手にしたところで、この話。食欲削がれること甚だしいが、状況が状況である以上仕方がない。彼はあくまで正直に、己の思う所を吐露するのであった)
【あいごころ。】
「…?どうして許せないのかしら。」
…まただ。人の言ってることが理解できなかった。どうして許せない?この状況で人が死ぬなんて…当たり前のことじゃないだろうか?
「ねぇ。この状況じゃ人なんて死んでも当たり前よね?どうして許せないのか理解が出来ないのだけれど…。…この状況。誰が何をしてもおかしくないのよ。例えばあなたが襲われたら?あなたが殺されそうになったらどうするの?無抵抗で死ぬ気なのかしら。いいえ、きっとあなたは抵抗する。そして相手を殺してしまうかもしれないわね。」
そうして一つ呼吸をおく。…なんでまたこんなこと言ってるんだろうなぁ。私、やっぱりズレてるのかしら。…いや、きっと興味があるだけなんだろうな。
「今、私たちに必要なのは人殺しを許さない心得じゃない。…人を殺す、覚悟よ。」
人を殺す覚悟。別に本当に人を殺す訳では無い。ただ、いつ、どのようなことで人を殺すのかわからない状態なのだ。…なら、“そういう”覚悟も必要だと思う。
「別に、人を殺せって言ってる訳じゃない。…人を殺しても、どう自分を正当化できるか。そういうことよ。これはやらざるおえない事だったと自分に言い聞かせられなければ…あなた、潰れるわよ?」
そういって狐面を触って目を細める。…人を殺す、なんて悪趣味なこと。それでも、この状況ならば…いずれは私も…などと想像してしまうが。いや、これは想定しなくていい事項だと思考を打ち切る。
…ああ、本当に嫌なゲームだ。
【ヒガンバナ】
「………………。」
やはり、彼女は、気付いているのだろう。
私が人斬りだと。
……なのに、庇うのか?
これは、庇っていると捉えて良いのだろうか。
それとも、弱った私が、彼女の言葉にすがりたいだけなのか。
「…………そうだな。
もしもAzothに襲われたら、こちらも抵抗するしかないからな。」
……ポテトを一つ頂きながら、私は言葉をまた絞り出した。
【柏木 愛】
「……は……」
(チキンを頂こうと口を開けた姿勢のまま、あいごころ。の言葉に聞き入っていた。その言葉は、年端も行かないような少女の口から出てくるものではなく、脳の処理能力を著しく低下させるのだった)
「い、いや、わけがわからないです。人殺しが正当とか……。そ、そりゃ、殺されそうになったら正当防衛が成り立つかもしれませんが、だからってそれを良しとしろなんて……ぜ、絶対におかしい。殺してしまったら、罪の意識を持つべきです。
お、おかしい。おかしいですよ。周りが殺してるから、自分も殺していいとでも言うんですか?小学生の言い訳ですね。ああ、小学生でしたか……」
(恐怖を感じた彼は、手に持っているチキンを静かに置く。それでも、間違っている、と思った彼は、震えた声で精いっぱいの反論をするのだった。最後はランドセルをチラ見して)
【あいごころ。】
「罪の意識をもつべき?」
コーラをとんと机の上に置いて。きっと柏木を睨む。
「…意味がわからない。意味がわからないわ。罪の意識とか、そんなの絶対おかしいだとか。あなたの言っているそれはね。きちんとした秩序が整っている場所でしか成り立たないことなの。あなたはこの状況で、罪悪感に囚われるなんてことがどんなに愚かなことか理解出来ていないわね?物言わぬ死者に対して感じる罪悪感なんて、ただのエゴ。過去の執着に過ぎないのよ。別にね、私は人殺しを推奨してる訳では無いのよ。ただ、もし人を殺しても仕方ない状況にある。そういうことが言いたいの。」
別に私だって好き好んで人を殺したい訳じゃない。そんな“無意味”なこと、したくないから。少しだけ、縋るような目で柏木を見る。
「ねぇ、聞かせて。正当防衛でもいい。もし、あなたが人を殺したとして…あなたは、生きることを諦めるの?」
もし、罪悪感なんてものに苛まれたとしたら、それ相応の罰を人は求める。…人を殺してしまった時の罰なんて、それは…1つしかないでしょう?
【ヒガンバナ】
「…………確かに、な。
だが、罪悪感を持つこと……それは、正常な事だ。
元の世界においてはな。」
そう、彼女が言っているのは、ここでの考え方の事。
誰かを殺してしまい、それで落ち込んでいる場合では無いのだろう。
……ただ、本来なら柏木の方が正しいのだ。
「だから、そう彼女を責めるな……
……勿論、覚悟を持つことは、私も同感だがな。」
【柏木 愛】
「ぼ、僕が、人を殺したら……?そ、そんなの……」
(わからない。いや、わかる。自分は絶対に死にたくない。殺されそうになったら、どんな手段に出るかわからない。
その時自分は?罪の意識を持てなど啖呵を切って置いて、罪の意識が何なのか、わかっていない。
なぜ俺がこんなことで悩まなくてはならない?俺は、ただ、誰にも死んでほしくなくて……)
「し、知らないです、そんなの!殺すとか、殺さないとか……わかるわけがないですよ!」
(感情のぶつけ先がわからず、ただ喚いた。勢い良く立ち上がった衝撃で、椅子が後ろに倒れ、机の上の自分のコーラが溢れた)
【あいごころ。】
「…そう。いますぐわかる必要はないわ。」
突然こんなことになったのだ。そうだ、と割り切れる人の方がおかしいだろう…ああ、やっぱり私ってズレてるのかしらね。
「でも、これだけは覚えておいて。…いつか、あなたは人を殺すかもしれない。その時に、きっとこの覚悟は必要になる。ってことを。」
そういって置いたコーラを飲む。うん。美味しい。…さて、私の言いたいことは終わったけれども、少しだけシーンとした空気になってしまった。どうしようか、と考えたけれども…結局私に言えるのは先を見すえた言葉だけだった。
「…ヒガンバナさん、だったかしら。フレンド交換、しておきましょう?」
そういってコロパットを取り出す。…この言葉にも慣れてしまったこと自体、異常なんだよな、とか思いながら。
【ヒガンバナ】
「……そうだな、フレンド登録しておこう。」
きっと、私も彼女も考え方はずれているのだ。
たから、こうして混乱の最中にいる柏木を無視して、フレンド登録なんてしていられるのだろう。
「……それと、誰かメガネのアイテムを貰った奴を探そう。
……あのふざけた像を黙らせたい。」
【柏木 愛】
「……す、すいません……」
(感情的になってしまったことを謝罪する。恥ずかしい気分であった。
自分もヒガンバナとはフレンド登録をしていないが、言い出せる空気でもなく、黙っていた。この選択が後に、多大な後悔を生むことになる……という展開になるのだったらそれはそれで面白いと思う)
「そ、そういえばアイテム一覧に、黒縁メガネってのがありましたね……き、共有チャットで呼びかけてみましょうか」
【あいごころ。】
「ああ、それならもう呼びかけてあるわ。」
フレンド登録を済ませてから、柏木の言葉に答えた。…まあ、友好的な言葉が来るとは思ってもいないが。この様子だと二人とも持っていない、ということだろう。コーラを飲もうとストローに口をつける。ガラガラガラ…と音が鳴った。チューチューとコーラを飲んでいたがどうやら飲み終わってしまったようだ。
「とりあえず、もう私は行くわね。」
そういいながら椅子を降りる。…地味に椅子が高かったので少し飛び降りるような感じになってしまうことがなんとも言えない気持ちになる。
「…さようなら。」
…きっとこんなことを言ってしまう私は不安なんだろう。“さようなら”、なんて言葉。何回いっても心を暗くするものなのに。
…悪趣味、だな。
【ヒガンバナ】
「呼び掛けてあるのか……早いな、ありがたい。」
その内、生きていれば誰か持ってきてくれるだろう。
……得られるものは、なんだろうか。
「ああ、さらばだあいごころ。……また会おう。」
【柏木 愛】
「あの、お見苦しいところをお見せしてすみません……あ、これ俺が片づけておきます、はい」
(テーブルの上のトレーをそそくさと、あの燃えるゴミとかプラとか分けるタイプのゴミ箱まで持っていく。KFCにこういうのあったっけ)
「あのーヒガンバナさんに一個聞いておきたいんですけれど……ヒガンバナさんって、自分の裸の写真撮られるのに抵抗あったりします?あ、変な意味じゃないですよ?ええ、本当に」
(芸術家はあんな空気の後でもペースを崩さない。かの有名なパブロ・ナンチャラ・ピカソもそうだった。多分)
【ヒガンバナ】
「………………。
裸の、写真?」
流石の私でも、少し理解するのに時間が掛かった。
……こいつは何を言っているんだ?
「抵抗あるな。
流石に仮の体とは言え、裸体を見せるのはな……」
【柏木 愛】
「で、ですよね!そうですよね!いやなんでもないんですよ、忘れてください」
(もしヒガンバナが刀を持っていなければ、海月の時のように飛びかかったかもしれない。
危なそうな相手に迂闊なことをしないというのは、生きていく上で重要である。決してビビリだというわけではない)
「じゃあ、俺はこれで……。あの、死なないでくださいね」
【ヒガンバナ】
「……おい待て。」
彼女を引き止める。
誤魔化そうとしていたが、詰まる所。
「貴様は、まさかと思うが……色んな奴の裸体を盗撮でもしているのか?」
【柏木 愛】
「エ"ッ!」
(ビクリ、と肩を震わせる。なぜそれがわかった?こやつはシャーロックホームズ?明智小五郎?
全身に嫌な汗が噴き出す)
「いや、そんなわけないじゃないですか。そうやって人を疑うの、俺、良くないと思うんですよね。やっぱり今は状況的に協力することが大事ですしうんぬんかんぬん」
(精一杯の真顔で誤魔化す)
【ヒガンバナ】
「……コロパッド、見せろ。」
焦りすぎだ。
つまりは、黒。
確実に何かを盗撮している。
「さあ、見せてもらおうか?」
【柏木 愛】
「あ……」
(完全に終わった。もはや言い逃れなどできない……否!まだ手はある!)
「ご、ごめんなさいでしたぁ!実は、自分の裸で興奮してしまい、自分の裸の写真を撮ってたんです!でも、そのうち他の人の裸も見たくなって……ほら!ヒガンバナさんスタイルいいから!美人だし!可愛い!ヨッ!
俺の裸を見られるの嫌なんで、コロパッドは勘弁してください!なんでもしますから!」
(土下座 of 土下座。自分の裸がコロパッドに入ってるのは本当である。それを見られたくないということにしよう。エムの写真を見られるのは非常にマズイ)
【ヒガンバナ】
「…………見せろ。」
何だろうか、この嫌な予感は。
このコロパッドには、彼女の裸体以外の物も入っている気がする。
「………………。」
ただただ、彼女を睨み付ける。
【柏木 愛】
「…………はい」
(終わった。万事休すである。全てを諦めてコロパッドを取り出しエムの裸体(計23枚)を見せる)
「いや、でもこれ、盗撮じゃないんですよ。本人の許可を取ってます。ええ、マジで」
【ヒガンバナ】
「よりにもよって、エムのか。」
……これは、怒りか?
……それとも、私の知らない感情なのだろうか。
許可など、そんなものは耳には届かず、ただパッドを持って固まった。
「…………エムはな、私をお母さんと呼んでくれた。
……私は、彼女を護ると誓っている。」
ぽつり、ぽつり、独り言の様に私は言葉を発する。
【柏木 愛】
「……え?」
(妙な落ち着きが逆に不安を駆り立てた。怒ってるのか、そうでないのかもわからないというのは、ただただ恐怖である。身体を震わせながら、必死に弁明する)
「いや、でも、このアングル見てくださいよ。本人も笑ってますし、マジで許可済みなんですよ。ね?お母さん、落ち着いてください。ね?」
【ヒガンバナ】
「……貴様にお母さんと呼ばれる筋合いは無い。」
気がつけば、私は柏木に刀を向けていた。
……何時、抜刀した?自分でも、分からない。
「……こころの事も、撮ったのか?
いや、他の参加者もだ。ここには保存されていないが。」
【柏木 愛】
「ヒァアア!?」
(最も恐れていた事態が起きてしまった。ガタガタ震えながら、身も世もなく土下座する)
「ご、ごめんなさいでしたぁ!こころさんの写真も撮りましたがそれは消しました!もうしませんので許してください!お願いします!なんでもしますからっ!」
(今までで一番のヘッドバット土下座を繰り返す。今までで一番のピンチであるのだから、謝罪のパワーも上げなければならぬ)
【ヒガンバナ】
「…………何でもする、と。
言ったな?」
よく命乞いで使われる台詞だが、何でもとは恐ろしい物だ。
今回は、良い具合に利用させて貰おう。
「……では…………」
命令をしよう。
……命より重いものなど、無いだろう?
【柏木 愛】
「は、はいぃ!何でもします!だから殺さないで!」
(情けなく泣きながらも、命令に従わざるを得ないのであった……)
【ヒガンバナ】
「…………命拾いしたな。」
これだけ従順なら、生かしておく価値はある。
……どうせ、変な事はすまい。
写真?無論、消した。
「……それから、私と会う度、コロパッドを必ず見せろ。
また、エムや他の奴を盗撮すれば……ああ、殺しはしないが、地獄を見せる。
他の媒体に隠そうなんて、考えるなよ?」
後は、盗撮しないように釘を刺す。
再犯すれば、今度は監禁でもしてやろう。
「……それから、今後も連絡したら……従えよ?」
【柏木 愛】
「は、はい!はい!仰る通りにいたしますです、はい!」
(赤べこのように首を縦に振る。え、もう撮れないの?と正直思ったが、トロンパのトラウマが再発するので、絶対に守ろうと違うのであった)
【ヒガンバナ】
「……今、盗撮できないの?
なんて、考えなかったか?」
切っ先を更に顔に近付け、脅す。
このくらい釘を刺さないと、また優しいエムの事だ、こやつに撮らせてしまうかもしれない。
「……では、私は行く。
……何かしら情報があったら伝えろよ。」
【柏木 愛】
「エェ!?オモッテナイオモッテナイ!」
(首をブンブン横に降る。エスパーなの?舞園さんなの?)
「あ、はい!お気をつけて行ってらっしゃいませー!」
(90度のお辞儀で見送る。完全に舎弟であった)
【柏木 愛】
「うーん、すげぇいっぱいあるけど……どれがいいのかサッパリですね……」
(ショッピングモール3Fの電化製品コーナーにて、彼はカメラを眺めていた。高校生ではとても手が出せない高額なカメラが無料で手に入る貴重な機会だが、何分カメラなんぞに詳しくなく、どれを買えばいいのか迷いに迷う)
【ヒガンバナ】
ショッピングモール
こんな明るい場所であれば、きっと気分も晴れるかと思っていたのだが……そんな事は無かった。
寧ろ、周りの音は鬱陶しく、煩わしく思え、私の気分は更に落ち込む。
それに呼応するかの様に、髪の彼岸花も、少し萎れている。
「…………あれ、は。」
ぼんやりと、店員ではない人影を見つけた。
……まともな話を出来る気はしないが、少しずつ近づいていく。
【柏木 愛】
「あ……」
(一人の少女がこちらにくるのがわかった。
刀らしきものを携えているのを見て、戦慄。え、殺す?これ、殺される?
よく見るとなんだか暗い雰囲気だし、これ斬られる?なんで?)
「ごめんなさいでしたぁ!殺さないでください!なんでもしますから!」
(先手必勝。相手の目の前に滑り込むように両手両膝をつき、ヘッドバット土下座を繰り返す)
【ヒガンバナ】
「…………殺しはしないさ。」
私はただ一言、そう答えた。
……と言っても、信じては貰えないのだろう。
刀を持ち、人を斬った私など。
【柏木 愛】
「ほ、本当ですか?し、信じることにします。
どのみち襲われたら俺、終わりなんで。俺は確かにゴミカスですけど死にたくないです、はい」
(諸手を上げて信じます!というわけにはいかないが、疑ったところでどうしようもない。全員で生きて帰ると決めたからには、相手と和解する心が必要なのだ。そう、彼はいい子なんだよ)
「あ、俺柏木愛っていいます……あなたはえっと、ヒガンバナさん、ですよね?」
(参加者一覧で名前は見ているし、彼女は共有チャットで名乗っていた気もする)
【ヒガンバナ】
「柏木か……ああ、私はヒガンバナだ。
宜しく、頼む。」
……どうにも、言葉が絞り出す様な物になってしまう。
全く、引きずり過ぎだ、私。
「……はぁ……なあ、柏木。
貴様は、どんなアイテムを貰ったか教えて貰っても構わないか?」
【柏木 愛】
「アイテムですか?ええと、なんかよくわからない大きな白い布だったんですけれど……トロンパさんに奪われました。まぁ、今となっては、彼は亡き人ですが……」
(少し悲しそうに目を伏せる。きっと彼も、状況が状況なせいで錯乱していたのだろう。悪いのは彼ではない、このゲームだ!つまり自分の暴走もゲームのせいである。Q.E.D)
「ヒガンバナさんは?その刀みたいなやつですか?」
【ヒガンバナ】
「……トロンパに、奪われたか。」
確か彼は死んでいる。
……なら、そのアイテムも行方不明だ。
困ったものだ。
「……まあいい、それからこの刀は自作だ。
私のアイテムは……(言わなくてもわかるよね?)
後だな……少し行きたい所があるが、付いてくるか?」
行きたいところは、KFCだ。
何故って?……まあ、聞くな。
【柏木 愛】
「はぇ〜、これまた微妙なアイテムですね……。
ええ、構いませんよ。時間は有り余っております」
(詳しくは言えないけどとりあえず微妙である。
カメラなんぞ後からいくらでも見ることはできる。ここは相手の用事に付き合うとしよう)
〜〜というわけでKFCへ〜〜
「なんですかこのカーネル、キモ……。
あ、あの人は……!」
(店の前で同じセリフを繰り返すカーネルさんを冷めた目で見つめる。少し離れたところにいる幼女に気が付くと、若干気まずい気持ちになるのだった)
【あいごころ。】
「…あら?」
KFCでチキンナゲットを食べていた。もぐもぐ。そしたら見覚えのある顔が1人と…刀?をもった女性が1人やってくるのが見えた。
「…ごきげんよう」
狐面を触る。とりあえずまずは挨拶。変態はともかく刀を持ったほうは初対面だ。…武器を見せびらかしているあたり、威嚇のためか、あるいは腕に自信があるかどうか…はたまたその両方かしら?
「柏木…だったかしら?さっきぶりね?」
とりあえず変態にはそう言葉をかけておく。
【ヒガンバナ】
「……知り合い、か。」
エムとは会っているので然程驚かなかったが、かなり幼そうな少女だと思った。
どうやら柏木と知り合いらしい。
「…………眼鏡……か。」
そして、煩く騒いでいるカーネル爺さん……眼鏡、と言われて思い付くのは、自分の掛けてるこれ。
……そもそも伊達眼鏡なのではずしても構わないのだ。
試しに、自分の掛けていた物を、じいさんに付けてやる。
『カーネル』
『なんやこの眼鏡?お前センスなさすぎやわー。人生やり直したほうがええで』
(違ったようだ……)
【柏木 愛】
「なんか、どんまいです」
(無駄に罵倒されるヒガンバナに同情の視線を送る)
「あ、せっかくですし三人で一緒に食べます?あ、ヒガンバナさんの注文も俺取ってきますよ、はい」
(下っ端根性が見についている。将来は立派な社畜になれるだろう)
【あいごころ。】
「ええ。そうね。せっかくだし“あのこと”についても詳しくはなさいといけないものねぇ?」
ニッコリと柏木に微笑む。あの時はどうかしていたが後々になって怒りがふつふつと沸いてきたようで。
「ま、食べるのはいいのだけれども。その前に自己紹介かしらね。私はあいごころ。あなたの名前を聞いてもいいかしら?」
そういって刀をもつ少女を見る。…雰囲気は鋭いわね。下手な事言うと切られそうかしら?…まあ、下手な事言うつもりなんて毛頭ないけれども。こういう人物はいまだ見たことない。さて、あなたはどういう人物なのかしらね?
【ヒガンバナ】
「………………。」
喧しい罵倒を浴びせられても、刀を抜く気にはなれなかった。
じいさんに掛けた眼鏡を掛け直して、また元の眼鏡をじいさんに掛けた。
「……余り、腹は減ってなくてな、
少しでいい。」
今の気分では、食い物も受け付けてくれなさそうだ。
柏木にそう頼むと、私は少女の向かいの席に、重い体を下ろした。
病は気から、昔の人は頭がいい。
「……私はヒガンバナだ。
……かなり萎れているが、髪のこれに因んで付けた。」
あいごころ。か……エムよりも、幼く見える。
【柏木 愛】
「いや、あれは不可抗力というか、芸術だし……ていうかこの場でそれは勘弁してくださいよ……!」
(ヒガンバナを横目で気にしつつ。凶器を提げている人の前であれこれ言われるのは流石に勘弁願いたかった)
「す、少しですね!わかりました!行ってきます!いてっ!」
(テーブルの角に腰をぶつけながら、シュバババとカウンターに駆けていく)
【あいごころ。】
「…はぁ」
そそくさと逃げていく柏木にため息を吐きつつ。とりあえずはヒガンバナに話しかけることにする。
「あの人にはなにかされたかしら?たとえば…裸の写真を取られた、とか。」
いつも通りの会話のきっかけだ。正直柏木が犠牲になるとかはどうでもいい。それよりも、今は彼女のことをしることが目的。
「ま、あなたなら例えそんなことされても返り討ちにしそうだけれども…ね?」
刀をチラリと見てクスッと笑う。凶器。それを持つということは少なくとも人に危害を加えるかもしれない、という意識がある証拠。この状況ではたとえ威嚇のつもりでもそれだけでは意味が無いということは分かっているはずだ。…彼女はもう、なにかを“壊した”のだろうか?
【ヒガンバナ】
「……裸?
お前さんは、撮られたのか?」
彼女の言葉を聞いていると、その様に聞こえてしまう。
そう考えると、何故か柏木の様子が変なのも頷ける。
と言うよりも、やはり刀を見られるか。
流石にもう、自慢する気力はない。
「……どうだろうな。」
……私がこんなだからか、また彼岸花の花弁が落ちる。堕ちる。
机の上に、別の華を咲かせ、広がっていく。
【柏木 愛】
「お、お待たせしましたぁっ!お、俺こういう所きたことが無くて、よくわからなかったので、適当に買ってきました!ごめんなさい!」
(率先して買いに行ったのは良いが、KFCに一度も来たことがなかったので、何が美味しいのかサッパリわからず。とりあえず普通のフライドチキンに、クリスピーやらポテトやらコーラやらを付け、お盆一杯にして戻ってくるのだった。
それをテーブル中央に置くと、ヒガンバナの横の席に座り)
「へ、変な話してませんよね?よね?」
【あいごころ。】
「ええ。まったく“変な話”はしてないわよ?」
別に変なことではない。ただこんなことされてないよね?という確認なのだから。戻ってきた彼女にそういいながらお盆に置かれたドリンクを適当にとる。…ふむ。コーラか。嫌いではない。
「…そういえば、また死者が出たわね?」
唐突にそう切り出す。もちろん。その死者というのは1st…ふ○なっしーのことだ。正直彼女が死ぬ、というのはなかなか驚いたことではあったのだが、別に、それだけ。死んでしまった。それだけの話なのだから。
「一体誰が殺したのかしら。現場見てないからよく分からないけれど。…少なくとも殺した、ということはゲームに参加する意思がある、ということよね。」
ゲームに参加する意思。もちろん遠回しの意味。…参加者のなかに人殺しがいる、と言うことを遠回しに言った。その、人殺しが誰なのか。全く知る由もないのだけれどね。…例えそれが目の前にいたとしても。
【ヒガンバナ】
「……していなかった、か。」
彼女がそう言うなら、そう言うことにしておこう。
余り、深く聞く気もない
「……ああ、死んだな。
これで、三人……」
彼女は、私が殺したことを分かっているのだろうか。
それとも、私の顔にでも書いてあったか。
『私は人斬りです。』と……
【柏木 愛】
「そ、そうですね……。本当にクラスメートなのかなって、思います。
それにしても、人を殺すなんて……クズですよクズ!そんな奴が目の前にいたら俺、怒りで手がでちまうかもしれません!どんな顔してるんでしょう?きっとブスなんでしょうね!」
(チキンを手にしたところで、この話。食欲削がれること甚だしいが、状況が状況である以上仕方がない。彼はあくまで正直に、己の思う所を吐露するのであった)
【あいごころ。】
「…?どうして許せないのかしら。」
…まただ。人の言ってることが理解できなかった。どうして許せない?この状況で人が死ぬなんて…当たり前のことじゃないだろうか?
「ねぇ。この状況じゃ人なんて死んでも当たり前よね?どうして許せないのか理解が出来ないのだけれど…。…この状況。誰が何をしてもおかしくないのよ。例えばあなたが襲われたら?あなたが殺されそうになったらどうするの?無抵抗で死ぬ気なのかしら。いいえ、きっとあなたは抵抗する。そして相手を殺してしまうかもしれないわね。」
そうして一つ呼吸をおく。…なんでまたこんなこと言ってるんだろうなぁ。私、やっぱりズレてるのかしら。…いや、きっと興味があるだけなんだろうな。
「今、私たちに必要なのは人殺しを許さない心得じゃない。…人を殺す、覚悟よ。」
人を殺す覚悟。別に本当に人を殺す訳では無い。ただ、いつ、どのようなことで人を殺すのかわからない状態なのだ。…なら、“そういう”覚悟も必要だと思う。
「別に、人を殺せって言ってる訳じゃない。…人を殺しても、どう自分を正当化できるか。そういうことよ。これはやらざるおえない事だったと自分に言い聞かせられなければ…あなた、潰れるわよ?」
そういって狐面を触って目を細める。…人を殺す、なんて悪趣味なこと。それでも、この状況ならば…いずれは私も…などと想像してしまうが。いや、これは想定しなくていい事項だと思考を打ち切る。
…ああ、本当に嫌なゲームだ。
【ヒガンバナ】
「………………。」
やはり、彼女は、気付いているのだろう。
私が人斬りだと。
……なのに、庇うのか?
これは、庇っていると捉えて良いのだろうか。
それとも、弱った私が、彼女の言葉にすがりたいだけなのか。
「…………そうだな。
もしもAzothに襲われたら、こちらも抵抗するしかないからな。」
……ポテトを一つ頂きながら、私は言葉をまた絞り出した。
【柏木 愛】
「……は……」
(チキンを頂こうと口を開けた姿勢のまま、あいごころ。の言葉に聞き入っていた。その言葉は、年端も行かないような少女の口から出てくるものではなく、脳の処理能力を著しく低下させるのだった)
「い、いや、わけがわからないです。人殺しが正当とか……。そ、そりゃ、殺されそうになったら正当防衛が成り立つかもしれませんが、だからってそれを良しとしろなんて……ぜ、絶対におかしい。殺してしまったら、罪の意識を持つべきです。
お、おかしい。おかしいですよ。周りが殺してるから、自分も殺していいとでも言うんですか?小学生の言い訳ですね。ああ、小学生でしたか……」
(恐怖を感じた彼は、手に持っているチキンを静かに置く。それでも、間違っている、と思った彼は、震えた声で精いっぱいの反論をするのだった。最後はランドセルをチラ見して)
【あいごころ。】
「罪の意識をもつべき?」
コーラをとんと机の上に置いて。きっと柏木を睨む。
「…意味がわからない。意味がわからないわ。罪の意識とか、そんなの絶対おかしいだとか。あなたの言っているそれはね。きちんとした秩序が整っている場所でしか成り立たないことなの。あなたはこの状況で、罪悪感に囚われるなんてことがどんなに愚かなことか理解出来ていないわね?物言わぬ死者に対して感じる罪悪感なんて、ただのエゴ。過去の執着に過ぎないのよ。別にね、私は人殺しを推奨してる訳では無いのよ。ただ、もし人を殺しても仕方ない状況にある。そういうことが言いたいの。」
別に私だって好き好んで人を殺したい訳じゃない。そんな“無意味”なこと、したくないから。少しだけ、縋るような目で柏木を見る。
「ねぇ、聞かせて。正当防衛でもいい。もし、あなたが人を殺したとして…あなたは、生きることを諦めるの?」
もし、罪悪感なんてものに苛まれたとしたら、それ相応の罰を人は求める。…人を殺してしまった時の罰なんて、それは…1つしかないでしょう?
【ヒガンバナ】
「…………確かに、な。
だが、罪悪感を持つこと……それは、正常な事だ。
元の世界においてはな。」
そう、彼女が言っているのは、ここでの考え方の事。
誰かを殺してしまい、それで落ち込んでいる場合では無いのだろう。
……ただ、本来なら柏木の方が正しいのだ。
「だから、そう彼女を責めるな……
……勿論、覚悟を持つことは、私も同感だがな。」
【柏木 愛】
「ぼ、僕が、人を殺したら……?そ、そんなの……」
(わからない。いや、わかる。自分は絶対に死にたくない。殺されそうになったら、どんな手段に出るかわからない。
その時自分は?罪の意識を持てなど啖呵を切って置いて、罪の意識が何なのか、わかっていない。
なぜ俺がこんなことで悩まなくてはならない?俺は、ただ、誰にも死んでほしくなくて……)
「し、知らないです、そんなの!殺すとか、殺さないとか……わかるわけがないですよ!」
(感情のぶつけ先がわからず、ただ喚いた。勢い良く立ち上がった衝撃で、椅子が後ろに倒れ、机の上の自分のコーラが溢れた)
【あいごころ。】
「…そう。いますぐわかる必要はないわ。」
突然こんなことになったのだ。そうだ、と割り切れる人の方がおかしいだろう…ああ、やっぱり私ってズレてるのかしらね。
「でも、これだけは覚えておいて。…いつか、あなたは人を殺すかもしれない。その時に、きっとこの覚悟は必要になる。ってことを。」
そういって置いたコーラを飲む。うん。美味しい。…さて、私の言いたいことは終わったけれども、少しだけシーンとした空気になってしまった。どうしようか、と考えたけれども…結局私に言えるのは先を見すえた言葉だけだった。
「…ヒガンバナさん、だったかしら。フレンド交換、しておきましょう?」
そういってコロパットを取り出す。…この言葉にも慣れてしまったこと自体、異常なんだよな、とか思いながら。
【ヒガンバナ】
「……そうだな、フレンド登録しておこう。」
きっと、私も彼女も考え方はずれているのだ。
たから、こうして混乱の最中にいる柏木を無視して、フレンド登録なんてしていられるのだろう。
「……それと、誰かメガネのアイテムを貰った奴を探そう。
……あのふざけた像を黙らせたい。」
【柏木 愛】
「……す、すいません……」
(感情的になってしまったことを謝罪する。恥ずかしい気分であった。
自分もヒガンバナとはフレンド登録をしていないが、言い出せる空気でもなく、黙っていた。この選択が後に、多大な後悔を生むことになる……という展開になるのだったらそれはそれで面白いと思う)
「そ、そういえばアイテム一覧に、黒縁メガネってのがありましたね……き、共有チャットで呼びかけてみましょうか」
【あいごころ。】
「ああ、それならもう呼びかけてあるわ。」
フレンド登録を済ませてから、柏木の言葉に答えた。…まあ、友好的な言葉が来るとは思ってもいないが。この様子だと二人とも持っていない、ということだろう。コーラを飲もうとストローに口をつける。ガラガラガラ…と音が鳴った。チューチューとコーラを飲んでいたがどうやら飲み終わってしまったようだ。
「とりあえず、もう私は行くわね。」
そういいながら椅子を降りる。…地味に椅子が高かったので少し飛び降りるような感じになってしまうことがなんとも言えない気持ちになる。
「…さようなら。」
…きっとこんなことを言ってしまう私は不安なんだろう。“さようなら”、なんて言葉。何回いっても心を暗くするものなのに。
…悪趣味、だな。
【ヒガンバナ】
「呼び掛けてあるのか……早いな、ありがたい。」
その内、生きていれば誰か持ってきてくれるだろう。
……得られるものは、なんだろうか。
「ああ、さらばだあいごころ。……また会おう。」
【柏木 愛】
「あの、お見苦しいところをお見せしてすみません……あ、これ俺が片づけておきます、はい」
(テーブルの上のトレーをそそくさと、あの燃えるゴミとかプラとか分けるタイプのゴミ箱まで持っていく。KFCにこういうのあったっけ)
「あのーヒガンバナさんに一個聞いておきたいんですけれど……ヒガンバナさんって、自分の裸の写真撮られるのに抵抗あったりします?あ、変な意味じゃないですよ?ええ、本当に」
(芸術家はあんな空気の後でもペースを崩さない。かの有名なパブロ・ナンチャラ・ピカソもそうだった。多分)
【ヒガンバナ】
「………………。
裸の、写真?」
流石の私でも、少し理解するのに時間が掛かった。
……こいつは何を言っているんだ?
「抵抗あるな。
流石に仮の体とは言え、裸体を見せるのはな……」
【柏木 愛】
「で、ですよね!そうですよね!いやなんでもないんですよ、忘れてください」
(もしヒガンバナが刀を持っていなければ、海月の時のように飛びかかったかもしれない。
危なそうな相手に迂闊なことをしないというのは、生きていく上で重要である。決してビビリだというわけではない)
「じゃあ、俺はこれで……。あの、死なないでくださいね」
【ヒガンバナ】
「……おい待て。」
彼女を引き止める。
誤魔化そうとしていたが、詰まる所。
「貴様は、まさかと思うが……色んな奴の裸体を盗撮でもしているのか?」
【柏木 愛】
「エ"ッ!」
(ビクリ、と肩を震わせる。なぜそれがわかった?こやつはシャーロックホームズ?明智小五郎?
全身に嫌な汗が噴き出す)
「いや、そんなわけないじゃないですか。そうやって人を疑うの、俺、良くないと思うんですよね。やっぱり今は状況的に協力することが大事ですしうんぬんかんぬん」
(精一杯の真顔で誤魔化す)
【ヒガンバナ】
「……コロパッド、見せろ。」
焦りすぎだ。
つまりは、黒。
確実に何かを盗撮している。
「さあ、見せてもらおうか?」
【柏木 愛】
「あ……」
(完全に終わった。もはや言い逃れなどできない……否!まだ手はある!)
「ご、ごめんなさいでしたぁ!実は、自分の裸で興奮してしまい、自分の裸の写真を撮ってたんです!でも、そのうち他の人の裸も見たくなって……ほら!ヒガンバナさんスタイルいいから!美人だし!可愛い!ヨッ!
俺の裸を見られるの嫌なんで、コロパッドは勘弁してください!なんでもしますから!」
(土下座 of 土下座。自分の裸がコロパッドに入ってるのは本当である。それを見られたくないということにしよう。エムの写真を見られるのは非常にマズイ)
【ヒガンバナ】
「…………見せろ。」
何だろうか、この嫌な予感は。
このコロパッドには、彼女の裸体以外の物も入っている気がする。
「………………。」
ただただ、彼女を睨み付ける。
【柏木 愛】
「…………はい」
(終わった。万事休すである。全てを諦めてコロパッドを取り出しエムの裸体(計23枚)を見せる)
「いや、でもこれ、盗撮じゃないんですよ。本人の許可を取ってます。ええ、マジで」
【ヒガンバナ】
「よりにもよって、エムのか。」
……これは、怒りか?
……それとも、私の知らない感情なのだろうか。
許可など、そんなものは耳には届かず、ただパッドを持って固まった。
「…………エムはな、私をお母さんと呼んでくれた。
……私は、彼女を護ると誓っている。」
ぽつり、ぽつり、独り言の様に私は言葉を発する。
【柏木 愛】
「……え?」
(妙な落ち着きが逆に不安を駆り立てた。怒ってるのか、そうでないのかもわからないというのは、ただただ恐怖である。身体を震わせながら、必死に弁明する)
「いや、でも、このアングル見てくださいよ。本人も笑ってますし、マジで許可済みなんですよ。ね?お母さん、落ち着いてください。ね?」
【ヒガンバナ】
「……貴様にお母さんと呼ばれる筋合いは無い。」
気がつけば、私は柏木に刀を向けていた。
……何時、抜刀した?自分でも、分からない。
「……こころの事も、撮ったのか?
いや、他の参加者もだ。ここには保存されていないが。」
【柏木 愛】
「ヒァアア!?」
(最も恐れていた事態が起きてしまった。ガタガタ震えながら、身も世もなく土下座する)
「ご、ごめんなさいでしたぁ!こころさんの写真も撮りましたがそれは消しました!もうしませんので許してください!お願いします!なんでもしますからっ!」
(今までで一番のヘッドバット土下座を繰り返す。今までで一番のピンチであるのだから、謝罪のパワーも上げなければならぬ)
【ヒガンバナ】
「…………何でもする、と。
言ったな?」
よく命乞いで使われる台詞だが、何でもとは恐ろしい物だ。
今回は、良い具合に利用させて貰おう。
「……では…………」
命令をしよう。
……命より重いものなど、無いだろう?
【柏木 愛】
「は、はいぃ!何でもします!だから殺さないで!」
(情けなく泣きながらも、命令に従わざるを得ないのであった……)
【ヒガンバナ】
「…………命拾いしたな。」
これだけ従順なら、生かしておく価値はある。
……どうせ、変な事はすまい。
写真?無論、消した。
「……それから、私と会う度、コロパッドを必ず見せろ。
また、エムや他の奴を盗撮すれば……ああ、殺しはしないが、地獄を見せる。
他の媒体に隠そうなんて、考えるなよ?」
後は、盗撮しないように釘を刺す。
再犯すれば、今度は監禁でもしてやろう。
「……それから、今後も連絡したら……従えよ?」
【柏木 愛】
「は、はい!はい!仰る通りにいたしますです、はい!」
(赤べこのように首を縦に振る。え、もう撮れないの?と正直思ったが、トロンパのトラウマが再発するので、絶対に守ろうと違うのであった)
【ヒガンバナ】
「……今、盗撮できないの?
なんて、考えなかったか?」
切っ先を更に顔に近付け、脅す。
このくらい釘を刺さないと、また優しいエムの事だ、こやつに撮らせてしまうかもしれない。
「……では、私は行く。
……何かしら情報があったら伝えろよ。」
【柏木 愛】
「エェ!?オモッテナイオモッテナイ!」
(首をブンブン横に降る。エスパーなの?舞園さんなの?)
「あ、はい!お気をつけて行ってらっしゃいませー!」
(90度のお辞儀で見送る。完全に舎弟であった)
五番目の道化師(3rd)-マリア(9th)
【五番目の道化師】
展望台で景色を堪能した後、道化師は空腹を満たすためそのまま同じエリアにあるショッピングモールに訪れていた。現在いるのは…ファーストフード店付近。道化師はハンバーガーとポテトを食べていた。ちなみに飲み物は牛乳である。
「最近のハッピーセットは絵本までついてくるのか」
おまえ、ハッピーセットを頼んだのか…
【マリア】
『……』
つかつかと私はそこに歩み寄る。
一度見たら忘れられないような―――それはそうである、道化師のメイクなど他にいたら、というか、一人居るだけで異常だ――顔だから、すぐに判別がつく。
だから、私は声をかける事にしたのだった。情報を手早く集めるために。私の当面の庇護するべき存在がいたりする事も、無論理由の一つとして、何より。
私は殺されない自信はあるが。
殺さない自信が無いから。
味方と言っても良いセレスティアを、間違って始末しましたごめんなさいでは、間違いなく済まされないだろう。
世間体的に。
だから私はこうすることにした。
『少し、お願いがあったりするんだけどぉ……いいかしらぁ?
勿論、強制的に♡』
アインシュタインもガンディーも言っている。結局は腕力だ、と。
いや、言っていないが。
割と皮肉は効いているが。
そんなブラックジョークが問題という話ではなく。
私が、食事中の彼ないし彼女の頭の真横スレスレにめがけ、椅子をフルスイングで叩きつけたのが、目下の大問題である。
色んな意味で目下だ。あの宰相ビスマルクも真っ青だ。
椅子の足が折れ。
めきりと後ろの壁にめり込み、穴を開け、パラパラと壁の残骸と木片が、憐れ儚くも脆い朝露のように散りゆく中。
私は、実に気持ち悪く甘ったるい声で、交渉という名を借りた脅迫をした。ファーストインプレッション的には、ある意味勝ちだ。
彼ないし彼女を。
道化師を。
他の人間がこれから口説こうとしたって、これ以上の迫力を持った挨拶はあるまい。
『…ハンバーガーとオレンジジュースをください。』
何事もなかったかのように、私は、椅子を放り投げ、道化師の前の席に座り、店員を呼びつけ、ハンバーガーとオレンジジュースを頼んだ。これは、勝ったな、と。
私は心中胸がすく思いだった。
【五番目の道化師】
えっ、今、何が起きたの?なんか飛んでいったように見えたんだけど。道化師はハンバーガーにかぶりつこうとしたところでフリーズ…するわけもなく普通を装って食事する。
「ちょっと乱暴なんじゃないかな」
そう、冷静に返すが…手がかなり震えている。
間違いなくメイクをしていなかったら顔が青白くなってしまっていることがわかってしまっただろう。
【マリア】
『私の地元では普通の作法よ。』
何もなかったように、私は非難の言葉を払い除ける。けんもほろろ、取り付く島も与えない。
仮にそんな作法があるならば、一億国民皆、食事をするやいなや椅子を叩きつけるもんだと思って私は食事をとらねばならない。
落ち着いて食べれやしない。
何より、喧しくて仕方ない。
まあ、やったのは私だが。
運ばれて来たハンバーガーとオレンジジュースに、微かに顔をほころばせる。
自然的で菜食主義的な。
文化的で健康的な。
ちゃんとした食事ばかりで、ジャンクフードなど絶無であったから、こういうのは嬉しい。
で。
『頼みとは他でもないわ。
貴方はセレスティア?アゾート?それとも、狂人?或いは―――
青葉陽光を知っている人間?』
オレンジジュースをちうちうと少しずつストローから啜りつつ。
咳払いをして、私は問いかけ。
『無所属なら、まあ安心していつでもぶっ殺せるから構わないけれど。何かあるなら、教えて。
私の仲間に情報収集のゾディアックを持つ人がいるから――――
嘘をついていたら、そうね…【ここから、どうしようもなく無残な言葉が続くので割愛】』
その後元も子もない嘘をついた。
【五番目の道化師】
道化師はセレスティアでもアゾートでもない。しかし、とある名を聞いて───首をかしげた。
「私は正真正銘無所属ですよ」
青葉陽光…って誰だろう。
『青葉』という名字には聞き覚えあるけど…先輩は陽光という名前ではないし…誰のことなんだろう。青葉ということは先輩の家の人なのかな…。
「私の先輩が<青葉>ですけど…陽光という人は知りません。」
てか、こういうのも隠してたらまずい気がするし…言っとこう。そういえば…先輩のお見舞いには私以外にもう一人、見知らぬ女の子がよく来てたなぁ。と思いながら。
【マリア】
『…そう。』
割と大きい舌打ちが出た。
まあ、取り敢えず敵ではないなら捨て置いても構わない、というのは行幸ではあるだろうが。
アゾートでも。
セレスティアでも。
私は尻尾を振るだろう。
唯々諾々と、大体のあちらの要求に合わせることであろう。
私の一番の焦りは、どちらにたってこれを攻略するか。
別に、全員で帰ろうが構わないが、私は、それが中々難しい――強いて言ったら、宝くじを当たるかな、と買うような――ものだというのは痛いほど知っているので、現実的な方策から模索すべきであると思われる。
『先輩、ね。
もしかして、小学生くらいの小さい子だったり、その関係者だったりするのかしら。厳つい男が保護者にいたリしたのを見たなら、あながち有り得るかも。』
私の雇い主の、大体の印象だ。
私にしては割と、悪印象を持っている訳では無いのだが、これまた厄介な事に、これ、という特徴を提示しにくい気がする。
割と、あの男がいて良かった。
後で何か買ってやるか。
と、私は妙な気になる。
【五番目の道化師】
なんで舌打ちされたの!?と、思うが表情に出さないようにしてハンバーガーの包み紙を綺麗に折り畳んでポテトを食べ始める。
「ん…?小学生くらいの子が毎日お見舞いに来てますね。髪の長い育ちの良さそうな子が」
全然似てないから兄妹では無さそうなんだけど…。そういえばたまに厳つい男の人が女の子を迎えに来てたのを見た気がする。
「まぁ、話したことは一度もないんですけどね…」
だって、なんか裏がありそうだし。
【マリア】
『…なるほど?』
要するに。
あの少女の【青葉】とは、可愛らしくも、縁者の。それも、割と大事な人の名前からだった、という話であったか。
割と胸がすく思いだ。
悪巧みも無く。
裏も無いけど。
人の秘密を知る、というのは、なんとなく嬉しい気分になる。
『まあ、お見舞いであれなんであれ。生きて帰らないなら仕方ないわ。多分、皆で帰る手段は、あのクソ天使の悪趣味を体験から鑑みるに、ちゃんとこの箱庭の中にあるだろうから、貴方は、それを探しなさいな。軽業が無いと探索できない場所もあるでしょうし。
そして……
大事な人は、離さないように。
これが最後の"命令"よ。』
ハンバーガーを口に手早く放り込み、私は立ち上がる。
散々な乱暴狼藉の後だから。
些細な善行を添えて。
【五番目の道化師】
展望台で景色を堪能した後、道化師は空腹を満たすためそのまま同じエリアにあるショッピングモールに訪れていた。現在いるのは…ファーストフード店付近。道化師はハンバーガーとポテトを食べていた。ちなみに飲み物は牛乳である。
「最近のハッピーセットは絵本までついてくるのか」
おまえ、ハッピーセットを頼んだのか…
【マリア】
『……』
つかつかと私はそこに歩み寄る。
一度見たら忘れられないような―――それはそうである、道化師のメイクなど他にいたら、というか、一人居るだけで異常だ――顔だから、すぐに判別がつく。
だから、私は声をかける事にしたのだった。情報を手早く集めるために。私の当面の庇護するべき存在がいたりする事も、無論理由の一つとして、何より。
私は殺されない自信はあるが。
殺さない自信が無いから。
味方と言っても良いセレスティアを、間違って始末しましたごめんなさいでは、間違いなく済まされないだろう。
世間体的に。
だから私はこうすることにした。
『少し、お願いがあったりするんだけどぉ……いいかしらぁ?
勿論、強制的に♡』
アインシュタインもガンディーも言っている。結局は腕力だ、と。
いや、言っていないが。
割と皮肉は効いているが。
そんなブラックジョークが問題という話ではなく。
私が、食事中の彼ないし彼女の頭の真横スレスレにめがけ、椅子をフルスイングで叩きつけたのが、目下の大問題である。
色んな意味で目下だ。あの宰相ビスマルクも真っ青だ。
椅子の足が折れ。
めきりと後ろの壁にめり込み、穴を開け、パラパラと壁の残骸と木片が、憐れ儚くも脆い朝露のように散りゆく中。
私は、実に気持ち悪く甘ったるい声で、交渉という名を借りた脅迫をした。ファーストインプレッション的には、ある意味勝ちだ。
彼ないし彼女を。
道化師を。
他の人間がこれから口説こうとしたって、これ以上の迫力を持った挨拶はあるまい。
『…ハンバーガーとオレンジジュースをください。』
何事もなかったかのように、私は、椅子を放り投げ、道化師の前の席に座り、店員を呼びつけ、ハンバーガーとオレンジジュースを頼んだ。これは、勝ったな、と。
私は心中胸がすく思いだった。
【五番目の道化師】
えっ、今、何が起きたの?なんか飛んでいったように見えたんだけど。道化師はハンバーガーにかぶりつこうとしたところでフリーズ…するわけもなく普通を装って食事する。
「ちょっと乱暴なんじゃないかな」
そう、冷静に返すが…手がかなり震えている。
間違いなくメイクをしていなかったら顔が青白くなってしまっていることがわかってしまっただろう。
【マリア】
『私の地元では普通の作法よ。』
何もなかったように、私は非難の言葉を払い除ける。けんもほろろ、取り付く島も与えない。
仮にそんな作法があるならば、一億国民皆、食事をするやいなや椅子を叩きつけるもんだと思って私は食事をとらねばならない。
落ち着いて食べれやしない。
何より、喧しくて仕方ない。
まあ、やったのは私だが。
運ばれて来たハンバーガーとオレンジジュースに、微かに顔をほころばせる。
自然的で菜食主義的な。
文化的で健康的な。
ちゃんとした食事ばかりで、ジャンクフードなど絶無であったから、こういうのは嬉しい。
で。
『頼みとは他でもないわ。
貴方はセレスティア?アゾート?それとも、狂人?或いは―――
青葉陽光を知っている人間?』
オレンジジュースをちうちうと少しずつストローから啜りつつ。
咳払いをして、私は問いかけ。
『無所属なら、まあ安心していつでもぶっ殺せるから構わないけれど。何かあるなら、教えて。
私の仲間に情報収集のゾディアックを持つ人がいるから――――
嘘をついていたら、そうね…【ここから、どうしようもなく無残な言葉が続くので割愛】』
その後元も子もない嘘をついた。
【五番目の道化師】
道化師はセレスティアでもアゾートでもない。しかし、とある名を聞いて───首をかしげた。
「私は正真正銘無所属ですよ」
青葉陽光…って誰だろう。
『青葉』という名字には聞き覚えあるけど…先輩は陽光という名前ではないし…誰のことなんだろう。青葉ということは先輩の家の人なのかな…。
「私の先輩が<青葉>ですけど…陽光という人は知りません。」
てか、こういうのも隠してたらまずい気がするし…言っとこう。そういえば…先輩のお見舞いには私以外にもう一人、見知らぬ女の子がよく来てたなぁ。と思いながら。
【マリア】
『…そう。』
割と大きい舌打ちが出た。
まあ、取り敢えず敵ではないなら捨て置いても構わない、というのは行幸ではあるだろうが。
アゾートでも。
セレスティアでも。
私は尻尾を振るだろう。
唯々諾々と、大体のあちらの要求に合わせることであろう。
私の一番の焦りは、どちらにたってこれを攻略するか。
別に、全員で帰ろうが構わないが、私は、それが中々難しい――強いて言ったら、宝くじを当たるかな、と買うような――ものだというのは痛いほど知っているので、現実的な方策から模索すべきであると思われる。
『先輩、ね。
もしかして、小学生くらいの小さい子だったり、その関係者だったりするのかしら。厳つい男が保護者にいたリしたのを見たなら、あながち有り得るかも。』
私の雇い主の、大体の印象だ。
私にしては割と、悪印象を持っている訳では無いのだが、これまた厄介な事に、これ、という特徴を提示しにくい気がする。
割と、あの男がいて良かった。
後で何か買ってやるか。
と、私は妙な気になる。
【五番目の道化師】
なんで舌打ちされたの!?と、思うが表情に出さないようにしてハンバーガーの包み紙を綺麗に折り畳んでポテトを食べ始める。
「ん…?小学生くらいの子が毎日お見舞いに来てますね。髪の長い育ちの良さそうな子が」
全然似てないから兄妹では無さそうなんだけど…。そういえばたまに厳つい男の人が女の子を迎えに来てたのを見た気がする。
「まぁ、話したことは一度もないんですけどね…」
だって、なんか裏がありそうだし。
【マリア】
『…なるほど?』
要するに。
あの少女の【青葉】とは、可愛らしくも、縁者の。それも、割と大事な人の名前からだった、という話であったか。
割と胸がすく思いだ。
悪巧みも無く。
裏も無いけど。
人の秘密を知る、というのは、なんとなく嬉しい気分になる。
『まあ、お見舞いであれなんであれ。生きて帰らないなら仕方ないわ。多分、皆で帰る手段は、あのクソ天使の悪趣味を体験から鑑みるに、ちゃんとこの箱庭の中にあるだろうから、貴方は、それを探しなさいな。軽業が無いと探索できない場所もあるでしょうし。
そして……
大事な人は、離さないように。
これが最後の"命令"よ。』
ハンバーガーを口に手早く放り込み、私は立ち上がる。
散々な乱暴狼藉の後だから。
些細な善行を添えて。
五番目の道化師(3rd)-エム(17th)
【五番目の道化師】
ホテルの広すぎる厨房で道化師は調理器具を借り、スープをコトコト煮込んでいた。さっき、胃を痛めたから胃に優しい、消化によろしいスープを。
「味、薄かったかな」
スープを味見し、味覚が鈍らないようにコップ一杯の水を飲む。野菜は十分に柔らかく簡単に崩れるようになってるし…大丈夫かな。一応、出汁を利かせてはいるけど…って、自分しか食べないのになんで味を気にしてるんだろう。
【エム】
「……ゲホッゲホッ……ピエロのお姉さん、こんな所で何してるの?」
エムは、注文受付のカウンターから顔をひょっこりと出しながら、奥の方に見つけたお姉さんに声をかけました。
咳は顔を背けて隠しましたし、マスクもしていたのでエチケットは完璧です。
ここに来たのは、単純な話。
空腹のまま薬を飲んじゃいけない、と言われていたので、なにか食べに来て、いざ注文、というタイミングだったのです。
まさかピエロのお姉さんがいるとは思わなかったので、少し驚いた表情をしているとは思いますが。
【五番目の道化師】
「ん、スープを作ってるんだよ」
咳き込んでいるようだけど、大丈夫かな。と、顔をあげて受け付けカウンターを覗くと…声が少し変になっているから気がつかなかった。
「あれ、エムちゃん。風邪?」
そういえば共通チャットにも風邪を引くとか別の人が書き込んでいたような気もしなくはないが、風邪を引くなんてなにをしたんだろう。
【エム】
「……うん、ちょっとね……体冷やしすぎちゃったみたいで……」
まさか、“あのこと”を他の人に言うなんて、約束を破るようなことは言えないし、かと言ってお姉さんに嘘はつきたくないからと、無難な答えを選択して。
お兄さんの尊厳的にも、これはちょっと黙っておかなくちゃいけない。
外で見ようものならお母さんに言うけど。
「スープか……いいなぁ……
エム食べてみたいんだけど、いい?」
どうせなら、ピエロのお姉さんの手料理が食べたいなって、そう思って注文してみたり。
【五番目の道化師】
「えぇ、いいですよ。作りすぎてしまいましたし」
道化師は食器棚から食器を取りだし、スープをよそってお盆にスープの入った皿とスプーンを乗せエムに渡した。
「熱いので火傷しないように注意してくださいね」
具材、少し煮込みすぎたかもしれない。
とても崩れやすい…
【エム】
「……うん、ありがとうお姉さん」
手渡されたお盆を受け取って、微笑んで近くのテーブルに向かいました。
暖かいスープなら、小腹を満たすのにも十分だろうし、ちょうど良かったです。
席に腰掛けて、両手を合わせていただきますと言って、早速スプーンでスープを掬う。
のせたお肉が崩れるようにして、口に運ぶのを一瞬ためらって。
「……これ、なんのお肉ですか?」
少し気になって、そう聞きました。
【五番目の道化師】
「え?豚ですけど…」
なんでそんなことを聞くんだろう。
普通に売ってる肉を持ってきたんだけど…。
道化師は鍋の火をとめ、自分の分のスープを持ってエムの前に座る。まぁ、道化師は風邪を引いたことないので特に問題ない。
「もしかして、豚肉苦手でした?」
【エム】
「あ、ううん、さっき変なもの食べさせられたので……少し気になって…………」
そうですよね、ピエロのお姉さんが“あんなもの”をエムに食べさせるわけもないですし、それにお姉さんも食べるわけないですよね。
そう自分に言い聞かせて、スプーンを口に運びました、今度こそ。
【五番目の道化師】
(誰だよその変なものを食わせようとした料理を侮辱したやつ)
少し、気になるなぁ。教えてくれないかなぁ?
道化師は笑みを浮かべながらスプーンでスープを口に運ぶ…が、なんかスプーンを握る手が強いのかカタカタと震えていた。
「ねぇ、エムちゃん。あなたに変なものを食べさせようとした人…教えてくれる?」
とても優しい微笑みだった(ピエロメイクなのが残念)
【エム】
「……名前はわからないです……」
けほっけほっ、と咳をしながら、そう答えました。
出会ったばかりでしたし、エムも名乗っていませんでしたから、知らなくて当然とは思いますが。
……ピエロメイクの微笑み、少し不気味です。
【五番目の道化師】
「じゃあ、エムちゃんの体を冷やした人は同じ人かな?」
変な物を食べさせようとした人を聞き出せないのなら、違う質問をしよう。姿は子供でも中身は高校生だ。自分から風邪を引くリスクがあるというのに体を冷やすような馬鹿なマネはしないだろう。と、いうことは…そうさせた人がいるのだろう。
病人に質問を重ねるのは酷だと思うが…、一応、聞いとこうかな。ちなみにこれが私が聞きたい最後の質問である。道化師はスープを口に運ぶが…煮すぎたな。
【エム】
「えっ、いや違いますよ。風邪はお外で少し頑張りすぎただけですから……」
これは絶対に言わない。
約束は絶対に守ります、それで信用なんて失ったらあとが怖いですから。
だから、これは絶対に話しません。
ニッコリと笑いながら、嘘をついているのが悟られないように笑いました。
【五番目の道化師】
「へぇ、まあ、そういうことにしとこうか。風邪引いてるのにごめんね。ホットミルクでも作ってくるから少し待っててね」
言いたくないならしかたない。これ以上無理させるわけにもいかないし、風邪を引いてるなら体を暖めた方がいいだろう、と思い道化師は厨房に戻る。(早いことに皿は空だった)
鍋に牛乳と少量の生姜を入れて…甘味が強くなりすぎない程度に蜂蜜をいれて火にかける。
「甘めがお好みかな?」
甘めが好みならさらに蜂蜜や砂糖をいれて味を整えるのだが。
【エム】
「あ、はい、甘いほうが好きです」
ピエロのお姉さんは優しいな、なんて。
今まであってきた人達の中でもずばぬけて優しいと思います。
エムも、もっとこうやっていろんな人に優しくしたいなって思いました。
【五番目の道化師】
「じゃあ、甘めにするね」
生姜の辛味がでないように、蜂蜜の優しさがしつこくないように、砂糖の甘味がドロドロしない丁度いい味にするにはこの量だったかな。小さな小皿で味見をして──うん、大丈夫。
「体が暖まるように生姜も入れてあるけど…辛くないから大丈夫だよ。おかわりもあるから」
ティーカップにホットミルクを注ぎ、エムちゃんの前にコトリと置く。ホント、ピエロメイクをしてるのが残念だわ。
【エム】
「……ゲホッ、はい、ありがとうございます…………」
差し出されたホットミルクを受け取って、ふーっふーっ、と少し冷ましてから、口をつけました。
…………あぁ、温かい。
まぁ、さっきのトンデモ料理にくらべれば、どんなものでもこう感じるようなものですが。
もちろん、先に出されていたスープも頂いて、こっちはすぐにカラになりました。
ミルクは、ちょっとずつ飲むことにします。
「……お姉さん、このゲームには参加するんですか?」
ゲホッ、と何度目かの咳をしながら投げかけるのは、いつもの質問。
この人は殺すのか、殺さないのか。
その問で。
【五番目の道化師】
「さぁ…。未来予知ができるわけではないので私にはわかりません」
大丈夫だよ。なんていう言葉が軽々しく出せる状況ではないから『わからない』としか言えない。むしろ、人殺しをしたクラスメイトがいる以上…まだ悲劇の連鎖は続くだろう。
「ちなみに、風邪薬は牛乳を飲んだ後に服用しても平気ですよ。ダメなのは胃薬や下剤です」
一応、不安そうだからアドバイスをしておこう。
「ホットミルクで薬を飲むことはあまりオススメしませんけどね」
クスクスと笑ってみる。
ちなみにホットミルクはもちろん温かい飲み物で薬を飲もうものなら薬が溶けて悲惨な目にあいます(体験談)
【エム】
「……そっか、うん、ありがとうお姉さん」
心を読んでくるなんてエスパー? なんて思ったけど、きっと顔に出てしまっていたんでしょうと、納得して。
グイッと、残ったミルクを飲み干すと、席をたちました。
「それじゃあお姉さん。スープとかご馳走様でした。
死なないでくださいね?」
なんて、死なせるつもりもないけれど。
にこりと笑って、レストランから去っていきます。
【五番目の道化師】
ホテルの広すぎる厨房で道化師は調理器具を借り、スープをコトコト煮込んでいた。さっき、胃を痛めたから胃に優しい、消化によろしいスープを。
「味、薄かったかな」
スープを味見し、味覚が鈍らないようにコップ一杯の水を飲む。野菜は十分に柔らかく簡単に崩れるようになってるし…大丈夫かな。一応、出汁を利かせてはいるけど…って、自分しか食べないのになんで味を気にしてるんだろう。
【エム】
「……ゲホッゲホッ……ピエロのお姉さん、こんな所で何してるの?」
エムは、注文受付のカウンターから顔をひょっこりと出しながら、奥の方に見つけたお姉さんに声をかけました。
咳は顔を背けて隠しましたし、マスクもしていたのでエチケットは完璧です。
ここに来たのは、単純な話。
空腹のまま薬を飲んじゃいけない、と言われていたので、なにか食べに来て、いざ注文、というタイミングだったのです。
まさかピエロのお姉さんがいるとは思わなかったので、少し驚いた表情をしているとは思いますが。
【五番目の道化師】
「ん、スープを作ってるんだよ」
咳き込んでいるようだけど、大丈夫かな。と、顔をあげて受け付けカウンターを覗くと…声が少し変になっているから気がつかなかった。
「あれ、エムちゃん。風邪?」
そういえば共通チャットにも風邪を引くとか別の人が書き込んでいたような気もしなくはないが、風邪を引くなんてなにをしたんだろう。
【エム】
「……うん、ちょっとね……体冷やしすぎちゃったみたいで……」
まさか、“あのこと”を他の人に言うなんて、約束を破るようなことは言えないし、かと言ってお姉さんに嘘はつきたくないからと、無難な答えを選択して。
お兄さんの尊厳的にも、これはちょっと黙っておかなくちゃいけない。
外で見ようものならお母さんに言うけど。
「スープか……いいなぁ……
エム食べてみたいんだけど、いい?」
どうせなら、ピエロのお姉さんの手料理が食べたいなって、そう思って注文してみたり。
【五番目の道化師】
「えぇ、いいですよ。作りすぎてしまいましたし」
道化師は食器棚から食器を取りだし、スープをよそってお盆にスープの入った皿とスプーンを乗せエムに渡した。
「熱いので火傷しないように注意してくださいね」
具材、少し煮込みすぎたかもしれない。
とても崩れやすい…
【エム】
「……うん、ありがとうお姉さん」
手渡されたお盆を受け取って、微笑んで近くのテーブルに向かいました。
暖かいスープなら、小腹を満たすのにも十分だろうし、ちょうど良かったです。
席に腰掛けて、両手を合わせていただきますと言って、早速スプーンでスープを掬う。
のせたお肉が崩れるようにして、口に運ぶのを一瞬ためらって。
「……これ、なんのお肉ですか?」
少し気になって、そう聞きました。
【五番目の道化師】
「え?豚ですけど…」
なんでそんなことを聞くんだろう。
普通に売ってる肉を持ってきたんだけど…。
道化師は鍋の火をとめ、自分の分のスープを持ってエムの前に座る。まぁ、道化師は風邪を引いたことないので特に問題ない。
「もしかして、豚肉苦手でした?」
【エム】
「あ、ううん、さっき変なもの食べさせられたので……少し気になって…………」
そうですよね、ピエロのお姉さんが“あんなもの”をエムに食べさせるわけもないですし、それにお姉さんも食べるわけないですよね。
そう自分に言い聞かせて、スプーンを口に運びました、今度こそ。
【五番目の道化師】
(誰だよその変なものを食わせようとした料理を侮辱したやつ)
少し、気になるなぁ。教えてくれないかなぁ?
道化師は笑みを浮かべながらスプーンでスープを口に運ぶ…が、なんかスプーンを握る手が強いのかカタカタと震えていた。
「ねぇ、エムちゃん。あなたに変なものを食べさせようとした人…教えてくれる?」
とても優しい微笑みだった(ピエロメイクなのが残念)
【エム】
「……名前はわからないです……」
けほっけほっ、と咳をしながら、そう答えました。
出会ったばかりでしたし、エムも名乗っていませんでしたから、知らなくて当然とは思いますが。
……ピエロメイクの微笑み、少し不気味です。
【五番目の道化師】
「じゃあ、エムちゃんの体を冷やした人は同じ人かな?」
変な物を食べさせようとした人を聞き出せないのなら、違う質問をしよう。姿は子供でも中身は高校生だ。自分から風邪を引くリスクがあるというのに体を冷やすような馬鹿なマネはしないだろう。と、いうことは…そうさせた人がいるのだろう。
病人に質問を重ねるのは酷だと思うが…、一応、聞いとこうかな。ちなみにこれが私が聞きたい最後の質問である。道化師はスープを口に運ぶが…煮すぎたな。
【エム】
「えっ、いや違いますよ。風邪はお外で少し頑張りすぎただけですから……」
これは絶対に言わない。
約束は絶対に守ります、それで信用なんて失ったらあとが怖いですから。
だから、これは絶対に話しません。
ニッコリと笑いながら、嘘をついているのが悟られないように笑いました。
【五番目の道化師】
「へぇ、まあ、そういうことにしとこうか。風邪引いてるのにごめんね。ホットミルクでも作ってくるから少し待っててね」
言いたくないならしかたない。これ以上無理させるわけにもいかないし、風邪を引いてるなら体を暖めた方がいいだろう、と思い道化師は厨房に戻る。(早いことに皿は空だった)
鍋に牛乳と少量の生姜を入れて…甘味が強くなりすぎない程度に蜂蜜をいれて火にかける。
「甘めがお好みかな?」
甘めが好みならさらに蜂蜜や砂糖をいれて味を整えるのだが。
【エム】
「あ、はい、甘いほうが好きです」
ピエロのお姉さんは優しいな、なんて。
今まであってきた人達の中でもずばぬけて優しいと思います。
エムも、もっとこうやっていろんな人に優しくしたいなって思いました。
【五番目の道化師】
「じゃあ、甘めにするね」
生姜の辛味がでないように、蜂蜜の優しさがしつこくないように、砂糖の甘味がドロドロしない丁度いい味にするにはこの量だったかな。小さな小皿で味見をして──うん、大丈夫。
「体が暖まるように生姜も入れてあるけど…辛くないから大丈夫だよ。おかわりもあるから」
ティーカップにホットミルクを注ぎ、エムちゃんの前にコトリと置く。ホント、ピエロメイクをしてるのが残念だわ。
【エム】
「……ゲホッ、はい、ありがとうございます…………」
差し出されたホットミルクを受け取って、ふーっふーっ、と少し冷ましてから、口をつけました。
…………あぁ、温かい。
まぁ、さっきのトンデモ料理にくらべれば、どんなものでもこう感じるようなものですが。
もちろん、先に出されていたスープも頂いて、こっちはすぐにカラになりました。
ミルクは、ちょっとずつ飲むことにします。
「……お姉さん、このゲームには参加するんですか?」
ゲホッ、と何度目かの咳をしながら投げかけるのは、いつもの質問。
この人は殺すのか、殺さないのか。
その問で。
【五番目の道化師】
「さぁ…。未来予知ができるわけではないので私にはわかりません」
大丈夫だよ。なんていう言葉が軽々しく出せる状況ではないから『わからない』としか言えない。むしろ、人殺しをしたクラスメイトがいる以上…まだ悲劇の連鎖は続くだろう。
「ちなみに、風邪薬は牛乳を飲んだ後に服用しても平気ですよ。ダメなのは胃薬や下剤です」
一応、不安そうだからアドバイスをしておこう。
「ホットミルクで薬を飲むことはあまりオススメしませんけどね」
クスクスと笑ってみる。
ちなみにホットミルクはもちろん温かい飲み物で薬を飲もうものなら薬が溶けて悲惨な目にあいます(体験談)
【エム】
「……そっか、うん、ありがとうお姉さん」
心を読んでくるなんてエスパー? なんて思ったけど、きっと顔に出てしまっていたんでしょうと、納得して。
グイッと、残ったミルクを飲み干すと、席をたちました。
「それじゃあお姉さん。スープとかご馳走様でした。
死なないでくださいね?」
なんて、死なせるつもりもないけれど。
にこりと笑って、レストランから去っていきます。
ふ〇なっしー(1st/DEAD)-あいごころ。(20th)
【あいごころ。】
彼女らから別れたあと。どこか探索していない所あったかなぁと思い返してみると。そういえば。最初のところ、探索してなかったなぁと思い返す。
…一応、探索しておこうかな。そう思って停留所に向かった。
「……っ!」
それは、赤だった。…なんだこれは。死体?…ああ、そっか。このゲームでは人が死ぬ。…死体が残るのも当たり前のことじゃないか。
「……悪趣味ね。」
悪趣味だ。このゲームは。こんなゲーム、こんな…“無意味なものを作り出す”ゲーム、誰が望んでいるのだろうか…
「…ああ、ふ○なっしーね。」
あの巫山戯た態度をしていた少女。それがいま、物言わぬ死体となって転がっていた。…この死体に、“意味”があればいいのに。
【ふ〇なっしー】
「やぁ!またあったね!あいごころちゃん!!」
と死体が喋る……死体の下に隠れて喋ってるだけだが
「なにかようかい?あいごころちゃん〜」
【あいごころ。】
「にゃっ!?」
え?死体が喋った?…え?お化け?いや、非科学的なことは信じないたちだ。ありえない。…でも、確かに死体は喋っている…え、嘘でしょ?
「あら、もしかして生きていたりするのかしら?」
いたって冷静に問いかける。…まあ、死体から10mほど逃げているし足はめちゃくちゃ震えているのだけれども。
…おばけなんかい、いないし…
【ふ〇なっしー】
「いや……生きてはいないよ……幽霊となって生きてはいるけどね……殺された僕だが……暇なんだよ……だからさぁ……協力しようぜ?」
とゆっくり自分の死体のお腹から顔をひょっこりと出す
「さなぁ協力しようぜ?YESかNOかで答えてもらおうか」
完全に幽体になった体を出し切る、いつも通りニコニコと笑いながらあいごころに近づくと
「……いいことを教えてやろう……俺はある情報を見握っている……俺が持っている情報を手に入れれば……このゲームを有利に進められるかもな?」
【あいごころ。】
「……」
え?幽霊?…科学的な…あれ?幽霊?幽霊って科学的だっけ?協力?僕と契約して魔法少女的な…いや、違うか。幽霊って…え、え?
「…本当に、幽霊、なのかし…ら?」
プルプルと足が震える。…怖い。だって証明仕様がないじゃないこれ。え?おばけ?お化けだよねこれ?…な、泣いちゃダメ。きっと黒幕がなんかしたんだろう…そ、そうだきっとそうだ。
「う、うらめしやー!」
とりあえず威嚇する。
…まあ、怖いかどうかはお察しの通りで。
【ふ〇なっしー】
「ふむ……まぁ、反応はそんなもんか……だがわかって欲しいのは……私は君の味方だよ、初めっから最後まで」
少し困った顔をする……彼女がここまでビビるとは思わなかった。
だがまぁいい、そんな事は些細な事だ気にしてる暇があったらさっさと話を進めたい
「そんなビビってないでさぁ……取り敢えず話そうぜ?」
【あいごころ。】
「……」
相手の態度を見る限り…本当に、彼女なのだろう。…怖いけれど、このまま怖がっていてもどうしようもない。…狐面を触って深呼吸。よし。
「…ごめんなさい。少し取り乱したわ。」
いつもの調子を取り戻す。…まあ、今も多少怖いがこちらに害はなさそう、と判断する。…一体どうなってるのかしらね。
「どうしてそうなっているのか聞きたいところだけれども…意味が無いわね。それよりも、協力しようってのはどういうことかしら?」
興味深い話だ。もし、なにか情報が手に入るのであれば、話を聞く価値は十分ある。…それに、この状況だけでも十分な情報、だしね?
【ふ〇なっしー】
「そうだなぁ……まぁ、そこに座れよ話はそれからだ」
と停留所のベンチを指さすとベンチまで移動し座る
「まぁなんだ……君がこの情報を得られれば……確実に相手の精神追い込めると思うんだよね!まぁ僕が殺した奴の情報なんだけど……今のうち危険は排除した方が良い…君もそう思うだろう?」
【あいごころ。】
座ろうという提案には特に拒否する理由もないので指されたベンチに座る。…にしても不思議な状況ね。死んだ人と話す、なんて。
「あなたを殺した人?」
チラリと彼女の死体を見る。…検死、なんて技術持っていないし凶器を判定するなんて不可能だ。出来たとしても傷口を確認するぐらいしかできないだろう。
「…危険分子を取り除く。そういうことね。ただ、その口ぶりからすると…」
すこし、躊躇ったあと、それを口にする。
「…私に人を殺せ、といっているのかしら?」
そういって相手の目を見る。…嘘をついている様子もない。つまり、私と協力したいというのは本当だろう。
【ふ〇なっしー】
「ああ、出来れば殺して欲しいなぁ……うん、絶対……あの切り傷見れば分かるが確実に殺意を持って殺してきた」
自分の死体を見て呟く、本当に腹が立つな……俺が煽りまくったりしたのが悪いのだが、普通に考えてクラスメイトを殺すのはどうかと思うのだ
「どういう思念があったのか、どういう覚悟をしたのか……俺にはわからないだがな、俺をアゾートとか言って殺してきたのは許せないし人を殺すのに戸惑いの無いクソ野郎を野放しには出来ない」
【あいごころ。】
「そう…」
これは…私にとって重要な選択になりそうだ。その人を殺す、というのは…出来ればやりたくない、かな。…さて、どうするべきか。
「…正直、私は嬉嬉として人を殺すタイプでは無いわよ。それに、その相手を殺せるかどうかもわからない。…あなたのその怒りは、わたしには関係ないもの。」
協力する、ということは人を殺さなければならなくなる。私はまだ、…そういうのはしたくない、と思う。…多分。人を殺すことは無意味なことだから。
【ふ〇なっしー】
「───────────だ、俺のゾディアックは」
─の部分DMに送るお
「まぁ、確かにあいごころちゃんと俺の怒りは関係が無いな、だけど……殺した奴の特徴とかをしれたら君の生存確率はぐーんと上がる、何、別に今殺せとか言ってるわけじゃないし、絶対に殺せと言ったが物理的に殺せって訳じゃない」
【あいごころ。】
「…なるほど、ね?」
なるほど。そのゾディアックならば…
「…ひとつ、約束して欲しい。まず、本当に殺せるかどうかはわからない。もしかしたらその人物を殺せないし、会えて殺さないこともあるかもしれない。」
狐面を触る。…この契約は、私の今後を左右するものだ…わたしは、覚悟をきめるべきなのだろうか?
「私はできる限り死者を出したくないもの。…みな、あんな無意味なものになるなんて、つまらないから。」
…きっとこれは私の本心だ。…だから、頼む。私の中にある“それ”をどうにかして抑える。…違う。私は『狂人』じゃない。
「…それでもいいなら。その話、乗りましょう。」
相手の目を見て、覚悟を決め。しっかりと、見つめる。
【ふ〇なっしー】
「別に物理的に殺せって言ってないし別にいいけど?」
まぁ、いい殺すには種類がある社会的、精神的に
他に1杯あるだろうが俺が知っている殺し方はこれしか知らない
「メガネを掛けていてオマケに刀を持っていた……頭に花の髪飾りも付けていたなそれが俺を殺した犯人の外見はな」
思い出す、思い出したくもない記憶を……結構痛かったなぁって思いながら自身のお腹を擦る
「ンでそいつの情報は─────だ、少ししか得られなかったがまぁ……弱みにはなると思うな」
【あいごころ。】
「…そう。ありがとう。」
契約を、しよう。ここで得られる情報が。どれほど先の未来を左右するか分からないけれど。
「…さて、とりあえずこの後どうしましょうか。」
死体があるこの場にはあまり居たくないが…いや、元々は探索をしに来たのだ。ならばここは探索すべきだろう。
「私はここを探索するけれども…あなたは?」
そう言って聞く。
【ふ〇なっしー】
「んー着いていくぜー、暇だし」
と言ってあいごころに取り憑く←
「こころちゃーん僕寂しいよ〜服の中に入れてー」
変態糞ザコナメクジの梨があいごころの服の中に潜り込むを繰り出す
【あいごころ。】
「やめなさい。殺すわよ。」
もう死んでいるのだけれど。…コロパット見る限り探索されてるってことかしら?
「無駄足だったかしらね…ここから近いのは商店街かしら?」
とりあえず情報が、欲しい。商店街に移動することにする。
「あなたもそれでいいかしらね?」
【ふ〇なっしー】
「ええで〜」
と言って大人しくあいごころの背後に回る
あいごころはキチガイに取り憑かれた!!
【あいごころ。】
「ふぅん…」
このメモは…うん。わかった。
「…失礼、ちょっといいかしら?」
八百屋のNPCに話しかける。
『八百屋の店員』
『いらっしゃいませ』
(八百屋の店員もNPCの例に漏れず、固められたように無表情である。この店員は、あなたたちと同年代くらいの少年であった)
【あいごころ。】
「…は?」
なんで、あなたがここにいるのだろう。…その顔は知っている。知っているんだ。
「…なん…で、」
無機質なはずのNPCが急に怖くなる。…ああ、そんな。あなたは。死んでしまったということだろうか…?
「…いったいどういうことかしら。」
…違う。これは私を動揺させるための…罠。きっと、そう。そう信じないと…私は、“私”でなくなってしまう。
「…っ!」
NPCを突き飛ばす。顔を見たくないから。そして、そのままレジのお金を強奪する。…まあ、袋はレジ袋で問題ないだろう。
「…ちがう、ちがう、違う…!!」
【ふ〇なっしー】
「どうしたの?って……見たくないもん見た感じか………大丈夫かー?こころちゃん、なんか見たくないもんでもあった?」
心配する……いやまさかここまで取り乱すとは思わなんだ。
「………まぁ、話せる範囲で話せ、溜め込んでもあれだからな!」
『八百屋の店員』
『本日は、大根がお安くなっております』
(突き飛ばされて後ろに倒れるが、何事も無かったかのように起き上がり、立ち尽くすのみであった)
【あいごころ。】
「…ねぇ、一体これはどういうことなの。」
…違う。このままじゃ、壊れる。その顔で、それを言うな。だめだ、これは違うんだ。
「…あなたはきっと、違う人。そうだよね?」
つい、口調が元に戻る。
『死んじゃったんじゃない?』
…違う。
『でも、ここの人って妙に人間味帯びてるよね?』
…違う。
『ねぇ、どう思う?彼が死んでさ。』
…違う。
『…君は彼が死んでさ。“悲しい”なんて思っていないだろう?』
「……違う!!」
叫ぶ。違う、私は“あいごころ。”であって…狂人なんかじゃない。
「わたしは、私なの!狂人じゃない。私はただズレているだけで…違う…」
……わかっているだろう?と、“それ”が笑うのを感じる。…ダメなんだ。“それ”を理解しちゃ…!!
『八百屋の店員』
『ほうれん草やキャベツも旬ですよ』
(真顔。無表情。ただただ、決められたセリフを繰り返す)
【ふ〇なっしー】
「………あーダメだ完全に混乱してるなぁ……」
「おい、あんた名前は?」
と店員に名前を聞く
『八百屋の店員』
『果物も新鮮なものばかりです』
(会話は成立しないようだ……)
【あいごころ。】
無機質に続けられる声。…その声に少しだけ、本当に少しだけ落ち着きを取り戻す。
「…はぁ、はぁ。」
大丈夫、まだ、私は私だ。…あいごころ。だ。
『ふぅん…まだ耐えるんだね。素直になればいいのに。』
「……」
頭の中で声が響く。…ああ、これはずっと居座りそうだな。
「…ごめんなさい、少し混乱させたわね。」
ふ○なっしーに謝る。…ああ、なんて悪趣味なゲームなんだろうか。
「…いきましょう。」
『無意味、ねぇ…自分でも笑えるなぁ!』
頭の声は無視して。
【ふ〇なっしー】
「………そうか………まぁ、無理はするな……泣きたい時は私に泣きつけばいい、話とか聞いてあげる」
体がないのがこんなに悔しいとは思わなかった、目の前で落ち込んでいる様子のあいごころを見ると同情……とか糞な事は無いが、この先この調子なら生き残れない、そう思った
「………そうだな、次に行こうか」
【あいごころ。】
彼女らから別れたあと。どこか探索していない所あったかなぁと思い返してみると。そういえば。最初のところ、探索してなかったなぁと思い返す。
…一応、探索しておこうかな。そう思って停留所に向かった。
「……っ!」
それは、赤だった。…なんだこれは。死体?…ああ、そっか。このゲームでは人が死ぬ。…死体が残るのも当たり前のことじゃないか。
「……悪趣味ね。」
悪趣味だ。このゲームは。こんなゲーム、こんな…“無意味なものを作り出す”ゲーム、誰が望んでいるのだろうか…
「…ああ、ふ○なっしーね。」
あの巫山戯た態度をしていた少女。それがいま、物言わぬ死体となって転がっていた。…この死体に、“意味”があればいいのに。
【ふ〇なっしー】
「やぁ!またあったね!あいごころちゃん!!」
と死体が喋る……死体の下に隠れて喋ってるだけだが
「なにかようかい?あいごころちゃん〜」
【あいごころ。】
「にゃっ!?」
え?死体が喋った?…え?お化け?いや、非科学的なことは信じないたちだ。ありえない。…でも、確かに死体は喋っている…え、嘘でしょ?
「あら、もしかして生きていたりするのかしら?」
いたって冷静に問いかける。…まあ、死体から10mほど逃げているし足はめちゃくちゃ震えているのだけれども。
…おばけなんかい、いないし…
【ふ〇なっしー】
「いや……生きてはいないよ……幽霊となって生きてはいるけどね……殺された僕だが……暇なんだよ……だからさぁ……協力しようぜ?」
とゆっくり自分の死体のお腹から顔をひょっこりと出す
「さなぁ協力しようぜ?YESかNOかで答えてもらおうか」
完全に幽体になった体を出し切る、いつも通りニコニコと笑いながらあいごころに近づくと
「……いいことを教えてやろう……俺はある情報を見握っている……俺が持っている情報を手に入れれば……このゲームを有利に進められるかもな?」
【あいごころ。】
「……」
え?幽霊?…科学的な…あれ?幽霊?幽霊って科学的だっけ?協力?僕と契約して魔法少女的な…いや、違うか。幽霊って…え、え?
「…本当に、幽霊、なのかし…ら?」
プルプルと足が震える。…怖い。だって証明仕様がないじゃないこれ。え?おばけ?お化けだよねこれ?…な、泣いちゃダメ。きっと黒幕がなんかしたんだろう…そ、そうだきっとそうだ。
「う、うらめしやー!」
とりあえず威嚇する。
…まあ、怖いかどうかはお察しの通りで。
【ふ〇なっしー】
「ふむ……まぁ、反応はそんなもんか……だがわかって欲しいのは……私は君の味方だよ、初めっから最後まで」
少し困った顔をする……彼女がここまでビビるとは思わなかった。
だがまぁいい、そんな事は些細な事だ気にしてる暇があったらさっさと話を進めたい
「そんなビビってないでさぁ……取り敢えず話そうぜ?」
【あいごころ。】
「……」
相手の態度を見る限り…本当に、彼女なのだろう。…怖いけれど、このまま怖がっていてもどうしようもない。…狐面を触って深呼吸。よし。
「…ごめんなさい。少し取り乱したわ。」
いつもの調子を取り戻す。…まあ、今も多少怖いがこちらに害はなさそう、と判断する。…一体どうなってるのかしらね。
「どうしてそうなっているのか聞きたいところだけれども…意味が無いわね。それよりも、協力しようってのはどういうことかしら?」
興味深い話だ。もし、なにか情報が手に入るのであれば、話を聞く価値は十分ある。…それに、この状況だけでも十分な情報、だしね?
【ふ〇なっしー】
「そうだなぁ……まぁ、そこに座れよ話はそれからだ」
と停留所のベンチを指さすとベンチまで移動し座る
「まぁなんだ……君がこの情報を得られれば……確実に相手の精神追い込めると思うんだよね!まぁ僕が殺した奴の情報なんだけど……今のうち危険は排除した方が良い…君もそう思うだろう?」
【あいごころ。】
座ろうという提案には特に拒否する理由もないので指されたベンチに座る。…にしても不思議な状況ね。死んだ人と話す、なんて。
「あなたを殺した人?」
チラリと彼女の死体を見る。…検死、なんて技術持っていないし凶器を判定するなんて不可能だ。出来たとしても傷口を確認するぐらいしかできないだろう。
「…危険分子を取り除く。そういうことね。ただ、その口ぶりからすると…」
すこし、躊躇ったあと、それを口にする。
「…私に人を殺せ、といっているのかしら?」
そういって相手の目を見る。…嘘をついている様子もない。つまり、私と協力したいというのは本当だろう。
【ふ〇なっしー】
「ああ、出来れば殺して欲しいなぁ……うん、絶対……あの切り傷見れば分かるが確実に殺意を持って殺してきた」
自分の死体を見て呟く、本当に腹が立つな……俺が煽りまくったりしたのが悪いのだが、普通に考えてクラスメイトを殺すのはどうかと思うのだ
「どういう思念があったのか、どういう覚悟をしたのか……俺にはわからないだがな、俺をアゾートとか言って殺してきたのは許せないし人を殺すのに戸惑いの無いクソ野郎を野放しには出来ない」
【あいごころ。】
「そう…」
これは…私にとって重要な選択になりそうだ。その人を殺す、というのは…出来ればやりたくない、かな。…さて、どうするべきか。
「…正直、私は嬉嬉として人を殺すタイプでは無いわよ。それに、その相手を殺せるかどうかもわからない。…あなたのその怒りは、わたしには関係ないもの。」
協力する、ということは人を殺さなければならなくなる。私はまだ、…そういうのはしたくない、と思う。…多分。人を殺すことは無意味なことだから。
【ふ〇なっしー】
「───────────だ、俺のゾディアックは」
─の部分DMに送るお
「まぁ、確かにあいごころちゃんと俺の怒りは関係が無いな、だけど……殺した奴の特徴とかをしれたら君の生存確率はぐーんと上がる、何、別に今殺せとか言ってるわけじゃないし、絶対に殺せと言ったが物理的に殺せって訳じゃない」
【あいごころ。】
「…なるほど、ね?」
なるほど。そのゾディアックならば…
「…ひとつ、約束して欲しい。まず、本当に殺せるかどうかはわからない。もしかしたらその人物を殺せないし、会えて殺さないこともあるかもしれない。」
狐面を触る。…この契約は、私の今後を左右するものだ…わたしは、覚悟をきめるべきなのだろうか?
「私はできる限り死者を出したくないもの。…みな、あんな無意味なものになるなんて、つまらないから。」
…きっとこれは私の本心だ。…だから、頼む。私の中にある“それ”をどうにかして抑える。…違う。私は『狂人』じゃない。
「…それでもいいなら。その話、乗りましょう。」
相手の目を見て、覚悟を決め。しっかりと、見つめる。
【ふ〇なっしー】
「別に物理的に殺せって言ってないし別にいいけど?」
まぁ、いい殺すには種類がある社会的、精神的に
他に1杯あるだろうが俺が知っている殺し方はこれしか知らない
「メガネを掛けていてオマケに刀を持っていた……頭に花の髪飾りも付けていたなそれが俺を殺した犯人の外見はな」
思い出す、思い出したくもない記憶を……結構痛かったなぁって思いながら自身のお腹を擦る
「ンでそいつの情報は─────だ、少ししか得られなかったがまぁ……弱みにはなると思うな」
【あいごころ。】
「…そう。ありがとう。」
契約を、しよう。ここで得られる情報が。どれほど先の未来を左右するか分からないけれど。
「…さて、とりあえずこの後どうしましょうか。」
死体があるこの場にはあまり居たくないが…いや、元々は探索をしに来たのだ。ならばここは探索すべきだろう。
「私はここを探索するけれども…あなたは?」
そう言って聞く。
【ふ〇なっしー】
「んー着いていくぜー、暇だし」
と言ってあいごころに取り憑く←
「こころちゃーん僕寂しいよ〜服の中に入れてー」
変態糞ザコナメクジの梨があいごころの服の中に潜り込むを繰り出す
【あいごころ。】
「やめなさい。殺すわよ。」
もう死んでいるのだけれど。…コロパット見る限り探索されてるってことかしら?
「無駄足だったかしらね…ここから近いのは商店街かしら?」
とりあえず情報が、欲しい。商店街に移動することにする。
「あなたもそれでいいかしらね?」
【ふ〇なっしー】
「ええで〜」
と言って大人しくあいごころの背後に回る
あいごころはキチガイに取り憑かれた!!
【あいごころ。】
「ふぅん…」
このメモは…うん。わかった。
「…失礼、ちょっといいかしら?」
八百屋のNPCに話しかける。
『八百屋の店員』
『いらっしゃいませ』
(八百屋の店員もNPCの例に漏れず、固められたように無表情である。この店員は、あなたたちと同年代くらいの少年であった)
【あいごころ。】
「…は?」
なんで、あなたがここにいるのだろう。…その顔は知っている。知っているんだ。
「…なん…で、」
無機質なはずのNPCが急に怖くなる。…ああ、そんな。あなたは。死んでしまったということだろうか…?
「…いったいどういうことかしら。」
…違う。これは私を動揺させるための…罠。きっと、そう。そう信じないと…私は、“私”でなくなってしまう。
「…っ!」
NPCを突き飛ばす。顔を見たくないから。そして、そのままレジのお金を強奪する。…まあ、袋はレジ袋で問題ないだろう。
「…ちがう、ちがう、違う…!!」
【ふ〇なっしー】
「どうしたの?って……見たくないもん見た感じか………大丈夫かー?こころちゃん、なんか見たくないもんでもあった?」
心配する……いやまさかここまで取り乱すとは思わなんだ。
「………まぁ、話せる範囲で話せ、溜め込んでもあれだからな!」
『八百屋の店員』
『本日は、大根がお安くなっております』
(突き飛ばされて後ろに倒れるが、何事も無かったかのように起き上がり、立ち尽くすのみであった)
【あいごころ。】
「…ねぇ、一体これはどういうことなの。」
…違う。このままじゃ、壊れる。その顔で、それを言うな。だめだ、これは違うんだ。
「…あなたはきっと、違う人。そうだよね?」
つい、口調が元に戻る。
『死んじゃったんじゃない?』
…違う。
『でも、ここの人って妙に人間味帯びてるよね?』
…違う。
『ねぇ、どう思う?彼が死んでさ。』
…違う。
『…君は彼が死んでさ。“悲しい”なんて思っていないだろう?』
「……違う!!」
叫ぶ。違う、私は“あいごころ。”であって…狂人なんかじゃない。
「わたしは、私なの!狂人じゃない。私はただズレているだけで…違う…」
……わかっているだろう?と、“それ”が笑うのを感じる。…ダメなんだ。“それ”を理解しちゃ…!!
『八百屋の店員』
『ほうれん草やキャベツも旬ですよ』
(真顔。無表情。ただただ、決められたセリフを繰り返す)
【ふ〇なっしー】
「………あーダメだ完全に混乱してるなぁ……」
「おい、あんた名前は?」
と店員に名前を聞く
『八百屋の店員』
『果物も新鮮なものばかりです』
(会話は成立しないようだ……)
【あいごころ。】
無機質に続けられる声。…その声に少しだけ、本当に少しだけ落ち着きを取り戻す。
「…はぁ、はぁ。」
大丈夫、まだ、私は私だ。…あいごころ。だ。
『ふぅん…まだ耐えるんだね。素直になればいいのに。』
「……」
頭の中で声が響く。…ああ、これはずっと居座りそうだな。
「…ごめんなさい、少し混乱させたわね。」
ふ○なっしーに謝る。…ああ、なんて悪趣味なゲームなんだろうか。
「…いきましょう。」
『無意味、ねぇ…自分でも笑えるなぁ!』
頭の声は無視して。
【ふ〇なっしー】
「………そうか………まぁ、無理はするな……泣きたい時は私に泣きつけばいい、話とか聞いてあげる」
体がないのがこんなに悔しいとは思わなかった、目の前で落ち込んでいる様子のあいごころを見ると同情……とか糞な事は無いが、この先この調子なら生き残れない、そう思った
「………そうだな、次に行こうか」
唐揚げ食べたい(18th)-あいごころ。(20th)
【あいごころ。】
ああ、気分が悪い。なんでこんなにも気分が悪いのだろうか。…いや、だめだ。これ以上は考えてはいけない。そう思考を打ち切る。
…1回休んだ方がいい。そう思って商店街から1番近いホテルへ向かった。こういう時は甘いものを食べるのが1番なのだ。
[ホテル]
到着。適当な部屋の番号を受け取るとそのままレストランへ。 窓際の席を選んで座る。
「…しろくまひとつお願いするわね。」
とりあえず今は和のテイストの気分だ。それにホテルの中は暖かい。アイスを食べても問題はないだろう。…ああ、久々の平穏にこころが癒されていくのを感じる。
【唐揚げ食べたい】
「緑茶を一つ」
(淡々と、そう歩きながら茶を頼み。
今は少し、ちゃんとした物を何かを食べる気分にはなれなかった。
あいごころ。の背後から、彼女へ近付くようにゆっくりとゆっくりと歩いて。
後ろ姿、声、口調。
全て、見たことのない者。嗚呼、まだ会っていない人が居るのね。…まあ、最初は26人も居たのだから当たり前だけれど。)
「…初めましてだよね?確か、…こころちゃん」
(雰囲気が違うのは、今は置いておくことにする。耳鳴りが酷いのも、今はどうでもいい。
確か彼女は、共有チャットで見たかな。誰かが送っていた写真と同じ見た目だから、気が付いた。
あまり、覚えてないけど。
なんて、記憶の片隅にあったものを取り出して。
間違ってようが、合ってようが、最早何でもいい。
背後から、ゆらりゆらり。
こころの肩を唐突に叩こうとしながら、それと同時に突然声をかけた。)
【あいごころ。】
「っ!!」
突然、声をかけられた。名前を知られている。…つまり、共有チャットで名前を知ったという事。情報は、もういくらか知られている、という事だ。
背後を取られている、というのはどうも落ち着かない。叩かれた手を払い避けるように、椅子から飛び降りる。…そのままテーブルを挟んで反対側へ。
…見たことがない。一体誰だろうか。 いや、26人もいれば見たことない人など、何人もいる。
「…あなたは?」
端的な質問。それだけで十分だろう。それに…
背後からやってくる奴に、いい思い出なんてないから。大抵、そういうやつはただのイタズラ好きか、抜け目のないピエロか、はたまた…
狂人か。
ああ、これは油断出来ないなぁ。こんなの、“あいつ”だけで良かったのに。…そういえば、こういう時は自分から自己紹介するんだっけ。けれどそんなのどうでもいい。少なくとも、背後から声をかけるような、失礼な者には。名前も、既に知られているようだし。
【唐揚げ食べたい】
「…おっと」
(そう声を漏らして、弾かれた手を軽く見て。そしてすぐ視線をこころの方へ戻せば、ニコリと笑みを向けた。
嗚呼、こいつは。
なるほど。何も分からないけれど。
油断は、出来ないな。
ふふ、なんて不気味に笑って。何が面白いのか、分かんないけど哂う。
笑顔が一番、とかそんなしょうもない理由すら無いけど。何となく、笑みが溢れてしまった。)
「…18th、"唐揚げ食べたい"。呼び方は何でもいい。」
(前までは呼び方を指定していたのに、変わったのには理由があるの?
無いよ、気分さ。
あんまり、良い気分じゃなくてね。
─────そう。なら、いいけど。
何時もの脳内会話。ぐるぐるぐるぐる、廻ってる。
其処に人は居ないのに、居るかのように脳内で話してみせる。
ああ、こんなことどうでもいいか。閑話休題。
少し静かなトーンで自己紹介をするわけだが。相手は自ら名乗る気はないようで。
まあ、知っているからいいんだけど。正直、此処での名前など只の飾り付けに過ぎない。
でも、コイツは。ただ何も知らぬ人間じゃなくて、何か考えている人間。
嫌いな人間。人の心を読むなんて苦手な俺には、面倒な。
この前出会った、何を考えているか分からない人間よりかマシだけど。)
【あいごころ。】
「唐揚げ…食べたい、ね。」
巫山戯た名前だ。本当に。だけど、本当に巫山戯ているのは、その表情。
…ああ。これは1番、厄介なのを引いたかもな。
“あいつ”とは違う。あれはただの狂人。…ならこっちは?…まだわからない。わからないからこそ、厄介。どういう性格なのかも、表情から見えない。…嫌な、タイプだ。嫌いな、ではなく。嫌な。
ーー殺しちゃえば?持ってるものなら簡単でしょ?
それは違う。それでいいならもうやってる。
ーーあっそ。
あの時から聞こえ始めたあの声。…ああ、また気分が悪くなってきた。どうすればいいか、わからないなぁ。…とりあえず、余裕でも見してみようか。狐面をそっと触って。いつもみたいに全てを見透かしてるように。にやりと。
「私はあいごころ。どうせ知ってるだろうけど。」
1回は辞めた自己紹介をどうぞ。なに、問題は無い。順序が逆になっただけだもの。そうだ、紛いなりにも警戒はしておこうか。
ランドセルを、床におろしておく。別に、警戒されてるって知られてもいいよ。どうせ、今更仮面を被ったってどうしようもない。
ちょっと、深呼吸。
【唐揚げ食べたい】
「ああ、知っているとも。」
("あい""こころ"────嗚呼、どちらも嫌い。
嫌い、ならば?
ならば、殺すまで。
…なんて、そんな野蛮な思考じゃない。
今は、様子見だ。無関係な者を殺すのは体力の無駄だから。
体力がもっとあれば、すぐにでも動いてやるのに。あーあ、面倒。
殺しはダメだよ、復讐もね。
言われなくても分かっているよ、■■■。
君だけが頼りなんだ、もう"僕"には────。
そんな君も、今は手元に居ない。
本人は、もう死んだ。
本体も、何もかも何処かへ行った。
…なんて、帰ればあるはずなのに。家に行けないの。帰りたくもないけど。
此処は、まるで煉獄ね。
口角は上げたまま、もう下がらなくなってしまったように。見知らぬ誰かの前で、下がるのも気が引ける。)
「ランドセルなんか置いて、随分警戒してるね。俺は思ってるようなアブナイ奴じゃないよ?
─────皆で、帰りたいだろう。俺はそれの協力がしたいんだ。」
(なんて、嘘八百。
帰りたいとか、協力とか。そんな希望に縋るのは辞めたんだ。どうせ、報われない。
"…ねえ、───。×××にあったって本当?"
嗚呼、煩い。五月蝿い。
外野が、口だけの癖に。何が"何かあったら手伝うよ"だ。
あの声、あの声が聞きたい。脳内に鳴り響く、あの声が。好きでも嫌いでもなかった、あの子の声が。
でも、ああ、───残念。)
「お前は"生き残っている"全員での生還を目指しているか?」
【あいごころ。】
「あら、私って有名人?」
そうやってまた軽口。誰に似たんだろうね。知ってるけど。有名人になんて、気取るつもりもないよ。…楽しくないから?そうかもしれないね。
「初対面だもの。多少警戒するものよ?
みんなで帰るために協力?あら、いい考えね。」
嘘つき。協力なんてするつもりないのに。きっと相手もそう。協力なんてしない。それに。私も、協力するつもりなんてないから。だから、これはただの会話。意味なんて、どこにもないから。
意味、かぁ。私は無意味になりたくないな、なんておもうよ。
ーーそっか。なら生きなきゃね?
そうだね。生きるよ。
ーー生きるためにどうするの?
…みんなで協力する?…ああ、馬鹿みたいだ。協力、なんて言葉はここじゃあなんの役にも立たないくせにね。現にほら、もう既に死んでるでしょう?殺されたんだよ。誰かに。
ーー変えられた、の間違えでしょ!
うるさい。お前には関係ない話だよ。ああ、こんな頭の中で会話するなんて、馬鹿みたいだよね。
相手の顔から視線は外さない。ランドセルの中から…あ、これは面白そうだね。これにしよう。
「ええ。“全員”をでの帰還がしたいかしらね。あなたもそうでしょう?」
生き残ってる、なんて条件付けちゃって。つまり死んだ人はどうでもいいのかな?それともあえて無視?…ああ、死んだものに意味なんてないからね。その点、考えが似てるのかもね。なら、あえてぼかしてあげる。どっちの意味で捉えてもいいんだよ?
ーーじゃあ、あの子も意味が無いの?
あの子は…いや、あの子は違う。まだ死んでないでしょう?きっと運営のいたずら。そうでしょう?
ーー確証は?
…うるさい。黙れ。
ああ、頭痛がしてきた。頭痛薬なんて、あったかな。
【唐揚げ食べたい】
「嗚呼、まあ…そうだね。俺がお前を警戒しているのと一緒かな。
…だろう?…ふふ、中々良い反応をするね。」
(と、感情も無く単調に。…感情はあるけど、それを出すのも億劫になってきているのか。
警戒、とか。しているだけ良いものだけど、結局いつかは死ぬのだから意味が無い。
だけど、死は怖いもの。そうでしょう?
どうかな。
…そういえば、君は怖がりじゃなかったね。死ぬときも何も思わなかったんだろうな。
そうでもないよ?
…君も嘘をつくようになったんだね、■■■。
もう分かりきっている君を、包み隠して。バレないように、なんて。もうみんな分かっているでしょう?
ポケットに片手を突っ込んで。中の物を掻き回す様にグルグルと。
嘘を重ねて、幻影の様に作り出した少女を思い浮かべながら。無駄な嘘すら言わず、純粋なホンモノの少女を思い出した。
あゝ、彼よ。お前を許してなるものか。)
「俺もそうだよ。"全員"の、生還が目標だ。
…どうやら、そうじゃない人も居るみたいだけどね。」
(はは、なんて笑いながら。彼女が濁してきたのだから、此方も濁させてもらおうか。
"そうじゃない人"───まあ、殺人鬼。これまで死んだ3人の死因は分からないけど、大方誰かが殺したんだろう。
殺人鬼なんて言い方をしたら、誰でもなり得てしまうから間違っている様な気がするけど。そんなの気を使えるほど、今の俺は優しくはない。
優しさなんて無用だ、優しいなんて名ばかり。でも、それが的確な言葉よ。
"優しくするからさ、それでいいだろう?"
嗚呼、辞めてくれよ。…そんな冗談は、もう二度と聞きたくないね。
毟って毟って、その記憶を消してしまうように。言葉を続けた。その、皮肉なものを。)
「フレンド申請、送っておくよ。」
【あいごころ。】
いい反応だって。いったいどういう意味でのいいなんだろうね。わからない。…ああ、ここまで相手がわからないなんて、初めてかもしれないなぁ。
「らしいわね。誰が殺したんだか。」
ああ、気持ち悪い。気分が悪い。吐き気がする。
悪趣味だ悪趣味だ悪趣味だ。人が死ぬことに、なんの意味なんてないじゃないか。死んでしまったらなにもない。そんなの、わかっているのにね。なのに、人殺し、なんてものは行われた。…あーあ。信用ならないなぁ。そんな人達ですら“全員”に含めるなんて。…もしかしたら、殺してからのつもりなのかな?
ーーいいじゃん!殺そうよ!
やだよ。悪趣味だ。
…そういえば、××××は、怖くなかったのかしら?いいえ、きっと怖かったでしょうに。何回も、あんな所に行かされるのだもの。生きている、じゃなくて生かされている。それでも、確かに意味はあったわけで。
ーーエゴだね。君の。
うん。私のエゴ。わかってる。
ランドセルのなかからそれを出して。相手に見えないように。最新の注意を払って。片手にもつ。ほら、私はこんなに警戒してるよ?ああ、ついでだ。これを床に置いておこうか。
ーー殺すの?
殺さないよ。まだ。多分。
「あら、ありがとう。」
またその言葉だ。この異常な空間に来て。何度もその言葉を聞いた。そんな言葉になれてしまった時点で。
ーー平常者、なんていない。そうでしょう?
フレンド、なんて笑えるなぁ。本当の友達、こんなところじゃ出来るわけないじゃん。どっちも利用して、利用されたりして…あれれ?ああ、だからフレンドか。…一緒だもんね。結局。そういうところ。
「…あなたは、このゲーム参加するつもりなのかしら?」
どういう意味で捉えるかなぁ…参加するっていったら。まあ、単純だよ。あなたはひとごろししますかってこと。ま、わかるよね。遠回しに言ったけど、同時に使い古された言い回しだもんね。
ああ、人を殺す、かぁ。なんでみんな殺しちゃうんだろうね。正当防衛とかなら仕方ないのかな。
ーーでも、君はちがう。
うん。殺すつもりは無いよ。多分。
ーー自信ないね?
あなたがいるからね。
…あ、しろくま溶け始めてる。勿体ないなぁ。
【唐揚げ食べたい】
「誰だろうねぇ。…協力が大事だってのに、それをぶち壊すような行為をして。
ふふ、どういたしまして?」
(元々壊れているものを更に壊したところで何かが変わるわけでも無く、ならば"殺人鬼"とやらに何か罪があるのか?
────無い。崩れかけのジェンガから、更に一つ抜いてみた…なんて行為のようなもの。
それに、極端に言えばこれは"殺し合いのゲーム"、その行動が正解なわけである。
然しまあ、周囲の反感を買うというのもその通りか。
警戒は緩めるな。
武器を取れ、殺される前に殺せ。
そんな物騒な言葉、誰が考えたのか分かんないけど。
こういう時に、使えるから案外便利なのかもね?
ふふ、確かに。
でも、殺す気は無いよ。今のところは。
"もしも"の時の為だ、警戒を怠るのは良く無いからね。
会話、会話会話。結果など分かっているのに、わざわざ遠回りをして導き出す。
ポケットの持ち物を確認して、一息。ネクタイ、油……後は廃病院で新たに手に入れたものか。
フレンドの承認がされたのを見て、コロパットをしまい。
最初からこの言葉の皮肉さには気付いていたが、考えれてみれば存外間違ってもいないなと。)
「参加?…ゲームへの参加、ねぇ。
…────この場所に居る時点で、参加したくても参加したく無くても強制参加だろう。
俺も、…お前もね。俺らに拒否権なんて与えられてない。」
(すぐに気が付いた、裏がある。
これは大方"お前は殺すか?"と言ったところか。
でも、敢えて。その跡には気付かないフリをしておく。
ただただ、"殺し殺されるかもしれないゲームへの参加"として受け取っておく。
殺す気はない。
でも、殺してもいいと思っている。
こんなクソみたいなクラス、壊れて然るべきであり。壊されるべくして壊された、と言っても過言ではない。
表面だけ繕ったクラスなんて要らないってこと?
嗚呼、そうだよ。よく分かったね、って分かるか。
そりゃ、ね。
じゃあ、殺すの?ダメだよ、殺しは。
殺さないよ。多分ね。でも、壊してもいいだろう。
さあ?私には何が違うのかサッパリ。
ぐるぐるぐるぐる。目眩のように廻る思考は、また止まることを知らず。それはつまり、いつ急に止まるかは分からないということ。
だから、このまま止まるのを恐れて。次の質問を、呟いた。)
「お前はこれからどうするつもりだ?」
【あいごころ。】
「本当に、迷惑な話しよね。」
軽口の言い合い。水面下での腹の探り合い。…なんて言うつもりは無いけれど。嫌だなぁこういうの。相手の底が見えない。何をしでかすのかわからない。
協力をぶち壊す?嘘。また嘘だよ。それも。だってぶち壊すような協力なんてどこにあるの?協力なんて幻想。どんなに願っても叶えられないユートピア。そんなものを願っているのなら、それはただのパラノイア患者ってところだね。
怖いなぁ。むこうも警戒してるっぽいね。ポケットになにか入ってるのかな?もしかしたら殺しにくるかも?なら。
ーー先手必勝じゃ無いの?
まだ殺しにくると決まったわけじゃないもの。私は“狂人”じゃないから。そんなことはしないよ。…あれ、もしかしたら狂人じゃないほうがやっちゃう?不安にかられて?じゃあ、私はもう…いや、やめようか。気分が悪いから何してしまうかわからない。
「たしかに強制参加ね。いきなり連れてこられたのだもの。…なーんて。真意はどうせ分かってるんでしょ?」
ああ、遠回し。全部。こんなことを言っても結局状況は変わりやしないよね。なら。もう少し自分のことさらけ出してみよう?ほら、あなたも見せて?あなたの中のその“暗い所”。
うん。わかった。これはあえて気付かないふりをしているね。おどけたふり。気付かないふり。…そんなの、見え透いてるよ?だとしたら、こんな会話に意味はないから。
ーー意味は無いだなんて、君も馬鹿だなぁ
本当のことでしょ?どうせどっちも分かっているならこちらから提示してしまった方が楽だもの。
ーー騙すのが“君”なのに?
騙してるわけじゃないよ。様子見してるだけ。ただ、何もしていないだけ。協力なんて無駄、と目を瞑ってるだけ。
「そうね。じゃあ。…例えば、あなたを殺してみる?とかどうかしら。」
何も変わらない。このままじゃ平行線でしょ?なら、少しだけ、揺さぶりましょう?別にここで殺すわけじゃない。そして、ここで殺されるわけにはいかない。ただ。“楽しみ”たいだけ。
ーー君もわかってるじゃないか。
…まあ、そんなのは建前だけれども。
ーーへぇ?真意はなにさ?
ただの揺さぶり。いつもの様子見。相手の心の奥を見るための、鍵。それがたまたまこの言葉だっただけ。ああでも、嫌だなぁ。…嘘でもこんなことを言うのは、自分が狂ってしまったように感じるから。
【唐揚げ食べたい】
「真意?どっちだろうね、まだ決めてないよ。暫くは傍観者で居たいからね。」
(と、一言。
まだ"そっちの方の"参加は未決定。だって手は汚したくない、そうでしょ?…でも、もし相手から仕掛けてきたら。反射的に汚さざるを得ないんだもの。
出来る限りは友好的に、相手の気に触れないように。触れても触れなくても襲われるときは襲われると、その身に感じているはずなのに。
隠して隠して、何重にも布で隠して。
俺は狂人だが、凶人じゃない。
それだけは自分で分かっているつもりだ。
じゃあ、彼女は?
彼女もきっと、同じなんだろうね。確証はないけど、きっと何かあるよ。隠してる、何かが。
よく分かるね?
なに、予測だよ。合ってるかもわからない。
大好きで、大嫌いで、無関心な関係者。縋り付く君も居ないのに、勝手に創り出しては居るフリをして哂う人。
ココロなんか読めないし、読みたかないが。
"同士"は雰囲気で分かる、…そんな気がするんだ。彼女には、得体の知れない何かが憑いているような。)
「ふふ、面白いこと言うね。
冗談か本当か知らないけど、殺したきゃ殺せばいいんじゃない?
だってそういうゲームで、君は俺を殺してもそれに参加しただけ。
嗚呼、抵抗はするけどね。君が思ってるより俺は弱いから、予想より早く死んじゃうかもね。」
(あっけらかんと、そう言った。満面に笑顔を敷き詰めながら、ケラリと笑っている。
"殺す"とか、そういう言葉が怖くないわけじゃない。俺は狂人だが狂ってはいないから、恐怖で足が震えてしまう…とか、そんな表現が合っているくらいには怖いけど。
でも、そこは。隠さなきゃ、演技をして。何処かのキョーカ姉さんのような、"平気"な演技を。
弱い、弱くない、強い、強くない、そんな言葉は飾りだろう。ここに来たら、"殺るか殺られるか"の世界。覚悟を決めた者だけが勝つ、ただそれだけの簡単なモノ。
でも、無理はしないで。
────…今更、そんな言葉意味ないよ。
殺しとか、復讐とかはダメ。
分かってるよ、分かってる。何度も聞いたさ。
だけど、俺は。勝たなきゃ、加害者になるとまでは言わなくても。被害者じゃ、ダメなんだ。
だって、だってだってだって。
"被害者は、どう足掻いても被害者だよ"
この言葉が、耳にこびり付いて離れないんだもの。
そうじゃないって、証明しなくちゃならないのに。
言葉に気を取られて、繰り返すような返答。まるで此処のNPCのようね。)
「で?本当はこれからどうするつもりなの?」
【あいごころ。】
「…そう。…ならいいわ。もともと殺すつもりもないもの。」
そういって右手を軽く挙げた。そこに握られてるのは銃。…まあ、水鉄砲ではあるのだけれど。ただのブラフ。殺すっていってどういう反応するかが見たかっただけ。…ああ、そっか。そういう人か。やっぱり“狂人”だなぁ…
ーー君に似てるんじゃない?
似てるかもね。相手のことなんて知らないし、知らなくていい。他人のことを知りたいっていうのもただのエゴだから。抵抗するって言うのは本当だろうね。でも、これをただの“ゲーム”と捉えているあたりも本当。…ああ、似てるなぁ。吐くほど似てる。似すぎて嫌になる。やっぱり嫌なタイプだった。“あいつ”は嫌い。“こいつ”は嫌。
ーーでも、それが現実。
そうね。なら現実なら認めないとね。きっと彼と私はどこか似てる。…じゃあ、私は。
ーーそうだよ。君は。
『君は、私は狂人じゃないか。』
…認めなくない。そんなの。だから。
ーー君は自分を騙すんだ。
「そうね。…まあ、今まで通り。まだ探索出来ていないところを見に行くだけ。それだけよ。」
そこに嘘はない。…本当だよ?私は、いま私に出来ることをするだけ。たとえ、私がどうなろうとも。…私が、“あいごころ。”じゃなくなっても。…ああ、そう。最後に丸をつけた理由。そういえば思い出した。言わないけれどね。
ーー君は悪趣味だよ。
私は悪趣味。そんなのは、もう分かり切っていることでしょ?…ああ、嫌だなぁ。こんなゲーム。悪趣味なことばかりで。私のエゴばかりが目に見えてしまうから。
「さて、私はそろそろ行くわ。」
…ああ。だめ。気づいてしまったけれども。気付かないふり。自分がズレてるだけじゃないことが分かってしまったけれども。…私はあいごころ。
“狂人”とは相反する“ズレた”やつ。そう、あらねばならない。そうでしょう?
ランドセルを背負ってテーブルを迂回。そのまま出口へと向かって歩き始める。
…じゃあね。“狂人”。
【唐揚げ食べたい】
「はは、やっぱり。お前は誰かを殺すようなタイプじゃないもの。俺と同じだ。」
(そう、平然と嘘を吐く。いや、嘘?本当?…嗚呼、もうどっちか分からないけど。どっちでもいい。そう発言したことには変わりないから、ちゃんと責任持たないとね。
…思ってもないことを、ココロの中に刻み込む。責任なんか、この世には何処にもないよ。誰も彼も他人に押し付けるんだから。
そうでもないよ。
いいや、そうさ。君の周りが特殊だったんじゃない?
それは、…あるかも。
ほら、やっぱり。
どうでもいいこと、あーだこーだと脳内で。ノータリンなのを自覚して、お好きに脳内喋ってどうぞ。
お祭り騒ぎな会話を、一旦無視してみて。)
「そっか、それも俺と同じだね。"全員"生存目指して、一緒に頑張ろう!」
(笑顔で、全て隠蔽してやるんだ。あの、俺に蓋をしたとある彼のように。
嫌いなのに、似ているってのも嫌味な話。何奴も此奴も自分に似ている部分があるものだから、生きるのも嫌になってしまう。
だからと言って、死ぬわけにはいかないんだけど。
もう、いろいろ考えるのも億劫だから。なにもかも考えるのが面倒で、直感で決めたこの偽名さえも嫌になってくる。
止めようかしら、この名前。…そういや変更は、出来なかったな。
もう温くなってしまった緑茶を一気に飲み干して、さあ"俺の行動"を始めよう。
狂人ならば狂人らしく、狂ってないところを見せればいい。)
「じゃあね。僕はこのホテルでも探索してみようかな。」
(そう声を掛けて、彼女を見送り。
後ろから見た立っている彼女はとても小さかったけれど、なんだかそれすらも隠してしまうような大きさがあった。
何の大きさだろうね?…俺には分からないな。
さようなら、“狂人”。また逢う日まで。
彼女の姿が見えなくなる。それを待っては、ホテルの探索を始めた。)
【あいごころ。】
ああ、気分が悪い。なんでこんなにも気分が悪いのだろうか。…いや、だめだ。これ以上は考えてはいけない。そう思考を打ち切る。
…1回休んだ方がいい。そう思って商店街から1番近いホテルへ向かった。こういう時は甘いものを食べるのが1番なのだ。
[ホテル]
到着。適当な部屋の番号を受け取るとそのままレストランへ。 窓際の席を選んで座る。
「…しろくまひとつお願いするわね。」
とりあえず今は和のテイストの気分だ。それにホテルの中は暖かい。アイスを食べても問題はないだろう。…ああ、久々の平穏にこころが癒されていくのを感じる。
【唐揚げ食べたい】
「緑茶を一つ」
(淡々と、そう歩きながら茶を頼み。
今は少し、ちゃんとした物を何かを食べる気分にはなれなかった。
あいごころ。の背後から、彼女へ近付くようにゆっくりとゆっくりと歩いて。
後ろ姿、声、口調。
全て、見たことのない者。嗚呼、まだ会っていない人が居るのね。…まあ、最初は26人も居たのだから当たり前だけれど。)
「…初めましてだよね?確か、…こころちゃん」
(雰囲気が違うのは、今は置いておくことにする。耳鳴りが酷いのも、今はどうでもいい。
確か彼女は、共有チャットで見たかな。誰かが送っていた写真と同じ見た目だから、気が付いた。
あまり、覚えてないけど。
なんて、記憶の片隅にあったものを取り出して。
間違ってようが、合ってようが、最早何でもいい。
背後から、ゆらりゆらり。
こころの肩を唐突に叩こうとしながら、それと同時に突然声をかけた。)
【あいごころ。】
「っ!!」
突然、声をかけられた。名前を知られている。…つまり、共有チャットで名前を知ったという事。情報は、もういくらか知られている、という事だ。
背後を取られている、というのはどうも落ち着かない。叩かれた手を払い避けるように、椅子から飛び降りる。…そのままテーブルを挟んで反対側へ。
…見たことがない。一体誰だろうか。 いや、26人もいれば見たことない人など、何人もいる。
「…あなたは?」
端的な質問。それだけで十分だろう。それに…
背後からやってくる奴に、いい思い出なんてないから。大抵、そういうやつはただのイタズラ好きか、抜け目のないピエロか、はたまた…
狂人か。
ああ、これは油断出来ないなぁ。こんなの、“あいつ”だけで良かったのに。…そういえば、こういう時は自分から自己紹介するんだっけ。けれどそんなのどうでもいい。少なくとも、背後から声をかけるような、失礼な者には。名前も、既に知られているようだし。
【唐揚げ食べたい】
「…おっと」
(そう声を漏らして、弾かれた手を軽く見て。そしてすぐ視線をこころの方へ戻せば、ニコリと笑みを向けた。
嗚呼、こいつは。
なるほど。何も分からないけれど。
油断は、出来ないな。
ふふ、なんて不気味に笑って。何が面白いのか、分かんないけど哂う。
笑顔が一番、とかそんなしょうもない理由すら無いけど。何となく、笑みが溢れてしまった。)
「…18th、"唐揚げ食べたい"。呼び方は何でもいい。」
(前までは呼び方を指定していたのに、変わったのには理由があるの?
無いよ、気分さ。
あんまり、良い気分じゃなくてね。
─────そう。なら、いいけど。
何時もの脳内会話。ぐるぐるぐるぐる、廻ってる。
其処に人は居ないのに、居るかのように脳内で話してみせる。
ああ、こんなことどうでもいいか。閑話休題。
少し静かなトーンで自己紹介をするわけだが。相手は自ら名乗る気はないようで。
まあ、知っているからいいんだけど。正直、此処での名前など只の飾り付けに過ぎない。
でも、コイツは。ただ何も知らぬ人間じゃなくて、何か考えている人間。
嫌いな人間。人の心を読むなんて苦手な俺には、面倒な。
この前出会った、何を考えているか分からない人間よりかマシだけど。)
【あいごころ。】
「唐揚げ…食べたい、ね。」
巫山戯た名前だ。本当に。だけど、本当に巫山戯ているのは、その表情。
…ああ。これは1番、厄介なのを引いたかもな。
“あいつ”とは違う。あれはただの狂人。…ならこっちは?…まだわからない。わからないからこそ、厄介。どういう性格なのかも、表情から見えない。…嫌な、タイプだ。嫌いな、ではなく。嫌な。
ーー殺しちゃえば?持ってるものなら簡単でしょ?
それは違う。それでいいならもうやってる。
ーーあっそ。
あの時から聞こえ始めたあの声。…ああ、また気分が悪くなってきた。どうすればいいか、わからないなぁ。…とりあえず、余裕でも見してみようか。狐面をそっと触って。いつもみたいに全てを見透かしてるように。にやりと。
「私はあいごころ。どうせ知ってるだろうけど。」
1回は辞めた自己紹介をどうぞ。なに、問題は無い。順序が逆になっただけだもの。そうだ、紛いなりにも警戒はしておこうか。
ランドセルを、床におろしておく。別に、警戒されてるって知られてもいいよ。どうせ、今更仮面を被ったってどうしようもない。
ちょっと、深呼吸。
【唐揚げ食べたい】
「ああ、知っているとも。」
("あい""こころ"────嗚呼、どちらも嫌い。
嫌い、ならば?
ならば、殺すまで。
…なんて、そんな野蛮な思考じゃない。
今は、様子見だ。無関係な者を殺すのは体力の無駄だから。
体力がもっとあれば、すぐにでも動いてやるのに。あーあ、面倒。
殺しはダメだよ、復讐もね。
言われなくても分かっているよ、■■■。
君だけが頼りなんだ、もう"僕"には────。
そんな君も、今は手元に居ない。
本人は、もう死んだ。
本体も、何もかも何処かへ行った。
…なんて、帰ればあるはずなのに。家に行けないの。帰りたくもないけど。
此処は、まるで煉獄ね。
口角は上げたまま、もう下がらなくなってしまったように。見知らぬ誰かの前で、下がるのも気が引ける。)
「ランドセルなんか置いて、随分警戒してるね。俺は思ってるようなアブナイ奴じゃないよ?
─────皆で、帰りたいだろう。俺はそれの協力がしたいんだ。」
(なんて、嘘八百。
帰りたいとか、協力とか。そんな希望に縋るのは辞めたんだ。どうせ、報われない。
"…ねえ、───。×××にあったって本当?"
嗚呼、煩い。五月蝿い。
外野が、口だけの癖に。何が"何かあったら手伝うよ"だ。
あの声、あの声が聞きたい。脳内に鳴り響く、あの声が。好きでも嫌いでもなかった、あの子の声が。
でも、ああ、───残念。)
「お前は"生き残っている"全員での生還を目指しているか?」
【あいごころ。】
「あら、私って有名人?」
そうやってまた軽口。誰に似たんだろうね。知ってるけど。有名人になんて、気取るつもりもないよ。…楽しくないから?そうかもしれないね。
「初対面だもの。多少警戒するものよ?
みんなで帰るために協力?あら、いい考えね。」
嘘つき。協力なんてするつもりないのに。きっと相手もそう。協力なんてしない。それに。私も、協力するつもりなんてないから。だから、これはただの会話。意味なんて、どこにもないから。
意味、かぁ。私は無意味になりたくないな、なんておもうよ。
ーーそっか。なら生きなきゃね?
そうだね。生きるよ。
ーー生きるためにどうするの?
…みんなで協力する?…ああ、馬鹿みたいだ。協力、なんて言葉はここじゃあなんの役にも立たないくせにね。現にほら、もう既に死んでるでしょう?殺されたんだよ。誰かに。
ーー変えられた、の間違えでしょ!
うるさい。お前には関係ない話だよ。ああ、こんな頭の中で会話するなんて、馬鹿みたいだよね。
相手の顔から視線は外さない。ランドセルの中から…あ、これは面白そうだね。これにしよう。
「ええ。“全員”をでの帰還がしたいかしらね。あなたもそうでしょう?」
生き残ってる、なんて条件付けちゃって。つまり死んだ人はどうでもいいのかな?それともあえて無視?…ああ、死んだものに意味なんてないからね。その点、考えが似てるのかもね。なら、あえてぼかしてあげる。どっちの意味で捉えてもいいんだよ?
ーーじゃあ、あの子も意味が無いの?
あの子は…いや、あの子は違う。まだ死んでないでしょう?きっと運営のいたずら。そうでしょう?
ーー確証は?
…うるさい。黙れ。
ああ、頭痛がしてきた。頭痛薬なんて、あったかな。
【唐揚げ食べたい】
「嗚呼、まあ…そうだね。俺がお前を警戒しているのと一緒かな。
…だろう?…ふふ、中々良い反応をするね。」
(と、感情も無く単調に。…感情はあるけど、それを出すのも億劫になってきているのか。
警戒、とか。しているだけ良いものだけど、結局いつかは死ぬのだから意味が無い。
だけど、死は怖いもの。そうでしょう?
どうかな。
…そういえば、君は怖がりじゃなかったね。死ぬときも何も思わなかったんだろうな。
そうでもないよ?
…君も嘘をつくようになったんだね、■■■。
もう分かりきっている君を、包み隠して。バレないように、なんて。もうみんな分かっているでしょう?
ポケットに片手を突っ込んで。中の物を掻き回す様にグルグルと。
嘘を重ねて、幻影の様に作り出した少女を思い浮かべながら。無駄な嘘すら言わず、純粋なホンモノの少女を思い出した。
あゝ、彼よ。お前を許してなるものか。)
「俺もそうだよ。"全員"の、生還が目標だ。
…どうやら、そうじゃない人も居るみたいだけどね。」
(はは、なんて笑いながら。彼女が濁してきたのだから、此方も濁させてもらおうか。
"そうじゃない人"───まあ、殺人鬼。これまで死んだ3人の死因は分からないけど、大方誰かが殺したんだろう。
殺人鬼なんて言い方をしたら、誰でもなり得てしまうから間違っている様な気がするけど。そんなの気を使えるほど、今の俺は優しくはない。
優しさなんて無用だ、優しいなんて名ばかり。でも、それが的確な言葉よ。
"優しくするからさ、それでいいだろう?"
嗚呼、辞めてくれよ。…そんな冗談は、もう二度と聞きたくないね。
毟って毟って、その記憶を消してしまうように。言葉を続けた。その、皮肉なものを。)
「フレンド申請、送っておくよ。」
【あいごころ。】
いい反応だって。いったいどういう意味でのいいなんだろうね。わからない。…ああ、ここまで相手がわからないなんて、初めてかもしれないなぁ。
「らしいわね。誰が殺したんだか。」
ああ、気持ち悪い。気分が悪い。吐き気がする。
悪趣味だ悪趣味だ悪趣味だ。人が死ぬことに、なんの意味なんてないじゃないか。死んでしまったらなにもない。そんなの、わかっているのにね。なのに、人殺し、なんてものは行われた。…あーあ。信用ならないなぁ。そんな人達ですら“全員”に含めるなんて。…もしかしたら、殺してからのつもりなのかな?
ーーいいじゃん!殺そうよ!
やだよ。悪趣味だ。
…そういえば、××××は、怖くなかったのかしら?いいえ、きっと怖かったでしょうに。何回も、あんな所に行かされるのだもの。生きている、じゃなくて生かされている。それでも、確かに意味はあったわけで。
ーーエゴだね。君の。
うん。私のエゴ。わかってる。
ランドセルのなかからそれを出して。相手に見えないように。最新の注意を払って。片手にもつ。ほら、私はこんなに警戒してるよ?ああ、ついでだ。これを床に置いておこうか。
ーー殺すの?
殺さないよ。まだ。多分。
「あら、ありがとう。」
またその言葉だ。この異常な空間に来て。何度もその言葉を聞いた。そんな言葉になれてしまった時点で。
ーー平常者、なんていない。そうでしょう?
フレンド、なんて笑えるなぁ。本当の友達、こんなところじゃ出来るわけないじゃん。どっちも利用して、利用されたりして…あれれ?ああ、だからフレンドか。…一緒だもんね。結局。そういうところ。
「…あなたは、このゲーム参加するつもりなのかしら?」
どういう意味で捉えるかなぁ…参加するっていったら。まあ、単純だよ。あなたはひとごろししますかってこと。ま、わかるよね。遠回しに言ったけど、同時に使い古された言い回しだもんね。
ああ、人を殺す、かぁ。なんでみんな殺しちゃうんだろうね。正当防衛とかなら仕方ないのかな。
ーーでも、君はちがう。
うん。殺すつもりは無いよ。多分。
ーー自信ないね?
あなたがいるからね。
…あ、しろくま溶け始めてる。勿体ないなぁ。
【唐揚げ食べたい】
「誰だろうねぇ。…協力が大事だってのに、それをぶち壊すような行為をして。
ふふ、どういたしまして?」
(元々壊れているものを更に壊したところで何かが変わるわけでも無く、ならば"殺人鬼"とやらに何か罪があるのか?
────無い。崩れかけのジェンガから、更に一つ抜いてみた…なんて行為のようなもの。
それに、極端に言えばこれは"殺し合いのゲーム"、その行動が正解なわけである。
然しまあ、周囲の反感を買うというのもその通りか。
警戒は緩めるな。
武器を取れ、殺される前に殺せ。
そんな物騒な言葉、誰が考えたのか分かんないけど。
こういう時に、使えるから案外便利なのかもね?
ふふ、確かに。
でも、殺す気は無いよ。今のところは。
"もしも"の時の為だ、警戒を怠るのは良く無いからね。
会話、会話会話。結果など分かっているのに、わざわざ遠回りをして導き出す。
ポケットの持ち物を確認して、一息。ネクタイ、油……後は廃病院で新たに手に入れたものか。
フレンドの承認がされたのを見て、コロパットをしまい。
最初からこの言葉の皮肉さには気付いていたが、考えれてみれば存外間違ってもいないなと。)
「参加?…ゲームへの参加、ねぇ。
…────この場所に居る時点で、参加したくても参加したく無くても強制参加だろう。
俺も、…お前もね。俺らに拒否権なんて与えられてない。」
(すぐに気が付いた、裏がある。
これは大方"お前は殺すか?"と言ったところか。
でも、敢えて。その跡には気付かないフリをしておく。
ただただ、"殺し殺されるかもしれないゲームへの参加"として受け取っておく。
殺す気はない。
でも、殺してもいいと思っている。
こんなクソみたいなクラス、壊れて然るべきであり。壊されるべくして壊された、と言っても過言ではない。
表面だけ繕ったクラスなんて要らないってこと?
嗚呼、そうだよ。よく分かったね、って分かるか。
そりゃ、ね。
じゃあ、殺すの?ダメだよ、殺しは。
殺さないよ。多分ね。でも、壊してもいいだろう。
さあ?私には何が違うのかサッパリ。
ぐるぐるぐるぐる。目眩のように廻る思考は、また止まることを知らず。それはつまり、いつ急に止まるかは分からないということ。
だから、このまま止まるのを恐れて。次の質問を、呟いた。)
「お前はこれからどうするつもりだ?」
【あいごころ。】
「本当に、迷惑な話しよね。」
軽口の言い合い。水面下での腹の探り合い。…なんて言うつもりは無いけれど。嫌だなぁこういうの。相手の底が見えない。何をしでかすのかわからない。
協力をぶち壊す?嘘。また嘘だよ。それも。だってぶち壊すような協力なんてどこにあるの?協力なんて幻想。どんなに願っても叶えられないユートピア。そんなものを願っているのなら、それはただのパラノイア患者ってところだね。
怖いなぁ。むこうも警戒してるっぽいね。ポケットになにか入ってるのかな?もしかしたら殺しにくるかも?なら。
ーー先手必勝じゃ無いの?
まだ殺しにくると決まったわけじゃないもの。私は“狂人”じゃないから。そんなことはしないよ。…あれ、もしかしたら狂人じゃないほうがやっちゃう?不安にかられて?じゃあ、私はもう…いや、やめようか。気分が悪いから何してしまうかわからない。
「たしかに強制参加ね。いきなり連れてこられたのだもの。…なーんて。真意はどうせ分かってるんでしょ?」
ああ、遠回し。全部。こんなことを言っても結局状況は変わりやしないよね。なら。もう少し自分のことさらけ出してみよう?ほら、あなたも見せて?あなたの中のその“暗い所”。
うん。わかった。これはあえて気付かないふりをしているね。おどけたふり。気付かないふり。…そんなの、見え透いてるよ?だとしたら、こんな会話に意味はないから。
ーー意味は無いだなんて、君も馬鹿だなぁ
本当のことでしょ?どうせどっちも分かっているならこちらから提示してしまった方が楽だもの。
ーー騙すのが“君”なのに?
騙してるわけじゃないよ。様子見してるだけ。ただ、何もしていないだけ。協力なんて無駄、と目を瞑ってるだけ。
「そうね。じゃあ。…例えば、あなたを殺してみる?とかどうかしら。」
何も変わらない。このままじゃ平行線でしょ?なら、少しだけ、揺さぶりましょう?別にここで殺すわけじゃない。そして、ここで殺されるわけにはいかない。ただ。“楽しみ”たいだけ。
ーー君もわかってるじゃないか。
…まあ、そんなのは建前だけれども。
ーーへぇ?真意はなにさ?
ただの揺さぶり。いつもの様子見。相手の心の奥を見るための、鍵。それがたまたまこの言葉だっただけ。ああでも、嫌だなぁ。…嘘でもこんなことを言うのは、自分が狂ってしまったように感じるから。
【唐揚げ食べたい】
「真意?どっちだろうね、まだ決めてないよ。暫くは傍観者で居たいからね。」
(と、一言。
まだ"そっちの方の"参加は未決定。だって手は汚したくない、そうでしょ?…でも、もし相手から仕掛けてきたら。反射的に汚さざるを得ないんだもの。
出来る限りは友好的に、相手の気に触れないように。触れても触れなくても襲われるときは襲われると、その身に感じているはずなのに。
隠して隠して、何重にも布で隠して。
俺は狂人だが、凶人じゃない。
それだけは自分で分かっているつもりだ。
じゃあ、彼女は?
彼女もきっと、同じなんだろうね。確証はないけど、きっと何かあるよ。隠してる、何かが。
よく分かるね?
なに、予測だよ。合ってるかもわからない。
大好きで、大嫌いで、無関心な関係者。縋り付く君も居ないのに、勝手に創り出しては居るフリをして哂う人。
ココロなんか読めないし、読みたかないが。
"同士"は雰囲気で分かる、…そんな気がするんだ。彼女には、得体の知れない何かが憑いているような。)
「ふふ、面白いこと言うね。
冗談か本当か知らないけど、殺したきゃ殺せばいいんじゃない?
だってそういうゲームで、君は俺を殺してもそれに参加しただけ。
嗚呼、抵抗はするけどね。君が思ってるより俺は弱いから、予想より早く死んじゃうかもね。」
(あっけらかんと、そう言った。満面に笑顔を敷き詰めながら、ケラリと笑っている。
"殺す"とか、そういう言葉が怖くないわけじゃない。俺は狂人だが狂ってはいないから、恐怖で足が震えてしまう…とか、そんな表現が合っているくらいには怖いけど。
でも、そこは。隠さなきゃ、演技をして。何処かのキョーカ姉さんのような、"平気"な演技を。
弱い、弱くない、強い、強くない、そんな言葉は飾りだろう。ここに来たら、"殺るか殺られるか"の世界。覚悟を決めた者だけが勝つ、ただそれだけの簡単なモノ。
でも、無理はしないで。
────…今更、そんな言葉意味ないよ。
殺しとか、復讐とかはダメ。
分かってるよ、分かってる。何度も聞いたさ。
だけど、俺は。勝たなきゃ、加害者になるとまでは言わなくても。被害者じゃ、ダメなんだ。
だって、だってだってだって。
"被害者は、どう足掻いても被害者だよ"
この言葉が、耳にこびり付いて離れないんだもの。
そうじゃないって、証明しなくちゃならないのに。
言葉に気を取られて、繰り返すような返答。まるで此処のNPCのようね。)
「で?本当はこれからどうするつもりなの?」
【あいごころ。】
「…そう。…ならいいわ。もともと殺すつもりもないもの。」
そういって右手を軽く挙げた。そこに握られてるのは銃。…まあ、水鉄砲ではあるのだけれど。ただのブラフ。殺すっていってどういう反応するかが見たかっただけ。…ああ、そっか。そういう人か。やっぱり“狂人”だなぁ…
ーー君に似てるんじゃない?
似てるかもね。相手のことなんて知らないし、知らなくていい。他人のことを知りたいっていうのもただのエゴだから。抵抗するって言うのは本当だろうね。でも、これをただの“ゲーム”と捉えているあたりも本当。…ああ、似てるなぁ。吐くほど似てる。似すぎて嫌になる。やっぱり嫌なタイプだった。“あいつ”は嫌い。“こいつ”は嫌。
ーーでも、それが現実。
そうね。なら現実なら認めないとね。きっと彼と私はどこか似てる。…じゃあ、私は。
ーーそうだよ。君は。
『君は、私は狂人じゃないか。』
…認めなくない。そんなの。だから。
ーー君は自分を騙すんだ。
「そうね。…まあ、今まで通り。まだ探索出来ていないところを見に行くだけ。それだけよ。」
そこに嘘はない。…本当だよ?私は、いま私に出来ることをするだけ。たとえ、私がどうなろうとも。…私が、“あいごころ。”じゃなくなっても。…ああ、そう。最後に丸をつけた理由。そういえば思い出した。言わないけれどね。
ーー君は悪趣味だよ。
私は悪趣味。そんなのは、もう分かり切っていることでしょ?…ああ、嫌だなぁ。こんなゲーム。悪趣味なことばかりで。私のエゴばかりが目に見えてしまうから。
「さて、私はそろそろ行くわ。」
…ああ。だめ。気づいてしまったけれども。気付かないふり。自分がズレてるだけじゃないことが分かってしまったけれども。…私はあいごころ。
“狂人”とは相反する“ズレた”やつ。そう、あらねばならない。そうでしょう?
ランドセルを背負ってテーブルを迂回。そのまま出口へと向かって歩き始める。
…じゃあね。“狂人”。
【唐揚げ食べたい】
「はは、やっぱり。お前は誰かを殺すようなタイプじゃないもの。俺と同じだ。」
(そう、平然と嘘を吐く。いや、嘘?本当?…嗚呼、もうどっちか分からないけど。どっちでもいい。そう発言したことには変わりないから、ちゃんと責任持たないとね。
…思ってもないことを、ココロの中に刻み込む。責任なんか、この世には何処にもないよ。誰も彼も他人に押し付けるんだから。
そうでもないよ。
いいや、そうさ。君の周りが特殊だったんじゃない?
それは、…あるかも。
ほら、やっぱり。
どうでもいいこと、あーだこーだと脳内で。ノータリンなのを自覚して、お好きに脳内喋ってどうぞ。
お祭り騒ぎな会話を、一旦無視してみて。)
「そっか、それも俺と同じだね。"全員"生存目指して、一緒に頑張ろう!」
(笑顔で、全て隠蔽してやるんだ。あの、俺に蓋をしたとある彼のように。
嫌いなのに、似ているってのも嫌味な話。何奴も此奴も自分に似ている部分があるものだから、生きるのも嫌になってしまう。
だからと言って、死ぬわけにはいかないんだけど。
もう、いろいろ考えるのも億劫だから。なにもかも考えるのが面倒で、直感で決めたこの偽名さえも嫌になってくる。
止めようかしら、この名前。…そういや変更は、出来なかったな。
もう温くなってしまった緑茶を一気に飲み干して、さあ"俺の行動"を始めよう。
狂人ならば狂人らしく、狂ってないところを見せればいい。)
「じゃあね。僕はこのホテルでも探索してみようかな。」
(そう声を掛けて、彼女を見送り。
後ろから見た立っている彼女はとても小さかったけれど、なんだかそれすらも隠してしまうような大きさがあった。
何の大きさだろうね?…俺には分からないな。
さようなら、“狂人”。また逢う日まで。
彼女の姿が見えなくなる。それを待っては、ホテルの探索を始めた。)
五番目の道化師(3rd)-柏木 愛(25th)
【柏木 愛】
「さっきの人はなんだったのでしょうか……」
(襲って来たかと思えば即消滅した謎の幽霊を訝しみながら、ペンションへとやって来た。
要件は、ピエロに呼び出された他ない。数少ない心を許せる相手からの呼び出しに、応じるのは当然であった。指定された部屋まで来ると、ノックする)
「こんにちは、柏木です」
【五番目の道化師】
ノックが聞こえて、呼び出したあの人が来たことがわかる。
道化師はドアを開けて「遅かったね」と柏木さんに微笑みかけながら部屋に招き入れると…まぁ、鍵かけるよね。不用心だし、誰か来ても仕方ないし。
「柏木さん、まぁ、座ってよ」
と、言うが…ソファどころか在ったはずのベッドもない。ご丁寧なことに敷いてあった絨毯やら家具やらもすべて片付けてあるようで…。部屋は壁掛け以外何もない。
「柏木さん、正座♪」
笑顔で言った道化師の顔は───ピエロメイクもしていないのにとても怖い笑みを浮かべていた。それはまるで……いや、例えるのはやめておこうか。
【柏木 愛】
「え、なんですかこの部屋。ミニマリストなんですか?ていうか何もないですけど……え?
……はい」
(部屋というより箱と呼んだ方が相応しい空間の中で困惑する。いきなり正座をしろと言われてもなんのことやら。しかし、ピエロちゃんの顔が半端じゃなく怖かったので、大人しく部屋の中央で正座した。硬い床が当たって、既に痛い)
【五番目の道化師】
「柏木さん、お説教のお時間です。五時間耐久コースいってみよう♪」
笑顔で告げたその言葉。
簡単に言うと───まぁ、五時間は正座し続けろ。ということである。
「前は気絶していたから言えなかったから言わせてもらうね!
気分が落ち込んでるのはわかるけど、自分が窒息するくらい胸に埋もれてどうするの!!男子が女子の胸が好きなのは承知しているけど馬鹿じゃないの!!人の胸で死ぬ気か!!
あれで助けた人が死んでたらすっっごい気まずいのわかる!?柏木さんは幸せなのかもしれないけどトラウマになるからね!!胸が好きなのは結構だけど窒息するんじゃない!」
これがまず一つ目のに言いたかったことである
【柏木 愛】
「え?え?E?」
(お説教と言われて大混乱。おかしいなぁ、怒られるような事はしてないなぁ。もしかして写真の件?これ以上写真の件で俺の心を削るのはヤメテ?と思ったが、そもそも写真のことは彼女は知らないはず……などと思考を巡らせていた時に浴びせられる怒声。
すっかり忘れていたが、そんなこともあったな……)
「ご、ごめんなさい……あの、足痛いんすけど……これ五時間は死にますよ……」
【五番目の道化師】
「正座が嫌…?
───じゃあ、五時間だけ『雪が積った場所で真っ裸にして放置』してあげようか?」
笑顔で言った。
ちなみに雪の中で裸長時間放置はなんとなくであるため、誰かから話を聞いたわけではない。なんとなく、勘が<言え>と言ったから言っただけである。
【柏木 愛】
「あ、ゴメンナサイ……コノママデイマス……」
(これは完全にエムのことを言っている。エムを裸で外に連れ出したことを知っているのか!と確信せざるを得なかった。偶然って怖い。ちなみに柏木はエムが風邪を引いたことを知らない。
耐えるしかない……膝の上で組んだ手をギュッと握った)
【五番目の道化師】
道化師は柏木の反応を見て……『あっ、なんか説教される心当たりが他にあるな』と察してしまった。
「おっかしいなぁ。私、胸での窒息の説教だけしかしないつもりだったんだけどなぁ?
───柏木さん、お説教の内容。別の事を考えてたでしょ。胸の件が思いつかないくらい……かなり、罪深いやつ」
グイっと顔を近づけて目を見る。嘘は見抜くよ。と、示す行動だった。柏木さんはきっと呪われているんだな……と、中の人がかわいそうになるくらい哀れである
【柏木 愛】
「ハッ!?いや、そんなことはないです。お○ぱいに目が眩んだことが最大の罪だと思っております。我、お○ぱいを断じて己を律する。ごめんなさいピエロちゃん。ごめんなさいおっ○い」
(ドキリと心臓が跳ね上がり、慌てて目を逸らす。この女はヤバイ。夫の浮気とかを鋭く見抜くタイプであろう。
ていうか胸だけの話で五時間ってそれはもう猥談の域だろ!と思ったがとても口には出せず、むしろそっちの方向に持っていくことにした)
【五番目の道化師】
(はい、アウト)
心の中で呟かれる言葉。
真偽を確かめられてる際に一番やってはいけないのは目を反らすこと。つまり、やましいことを考えていたな?
「更に一時間、増やしましょう」
淡々とそう言い放った道化師は口を割るまで永遠と時間を伸ばし続けるつもりのようだ。ちなみにだが、道化師はガチで浮気を許さない人なので付き合う人は要注意である。浮気が道化師にバレた瞬間に殺され──は、しないがきつく説教されることを保証しよう。
【柏木 愛】
「エェ!?いや、それは……。
ご、ごめんなさいでしたぁ!実は幼女二人の裸を撮ってなんやかんやしてました!でもそれは二度としません!写真も消しました!ほら!」
(非常にマズイ。このままでは二度と歩けない身体になってしまう。言い逃れが通用しない相手であることを察すると、正座の体勢のまま身体をくの字に曲げ、己の罪を素直に告白するのだった。
コロパッドを床に置いて、写真が残っていないことを示す。あたかも自分で改心したかのように言ってるが、真実は……お察し)
【五番目の道化師】
「幼女……二人、ねぇ?と、いうことはエムちゃんを風邪引かせたのは柏木さんだったんだね?」
ニンマリと笑みを浮かべる道化師はそっと柏木さんの後ろへ回り込むと「えい」という掛け声とともに柏木さんの足の裏を思い切り踏んづけた。既に足がしびれているなら大ダメージだろう。
「ねぇ、柏木さん。あなた…男性に初めてを奪われたとか言ってたよね。気がついてないようだから言っとくけど
───お前、同じようなことしてるんだけど。」
【柏木 愛】
「え、エムちゃんが風邪を……!?ングッ!」
(痺れた足に走るSHOCKING!激痛に声を上げ、飛び跳ねそうになるが、姿勢を崩すとヤバイことになりそうだったので必死に耐えるのであった。もう柏木くんかわいそう!)
「お、同じことを……俺が……!?」
【五番目の道化師】
「無自覚って怖いよねぇ。お前は物理的にやられたけど、写真を取られたあの子達は触れられなくても同じ目に会ってるんだよ?
ねぇ…、想像してみろよ。裸で、遮るもの無しにジロジロ見られてしまう屈辱を…。
さぞ、興奮したでしょうね…『加害者になったお前』は」
本当は傷ついた心を傷つけたくはないんだけど…なんか、また繰り返しそうだし。こういう輩ってちゃんと釘刺しとかないと繰り返しちゃうだろうから、わかりやすい言葉で教えとかないといけないよね…。と、考えに考え抜いた言葉だった。
【柏木 愛】
「あ、ああ……ご、ごめんなさい……俺が間違ってました……」
(被害者の気持ちなど考えたこともなかった……!←
たしかにこころちゃんに至っては普通に泣いていたし、それを見て興奮してしまった自分はなんて罪深い人間なんだ……!己の罪の大きさを自覚し、涙ぐむ。
柏木君は感化されやすいので、将来詐欺とかに遭うタイプだと。あと正直足が痛すぎる。そろそろ五時間経った????)
【五番目の道化師】
「間違ってたと思うなら、二度と裸体を撮影してはダメだからね。コロパットはもちろん、カメラでも。」
時計を見て……おや、一時間しか経ってないのか←
でも、反省したみたいだし正座は解いてもいいかもしれない。
「反省したならもう自由にしていいよ。あぁ、それと私は<そういうことに関して>の勘は良い方だから気を付けてね?」
つまり、あんまり馬鹿やると『また』お説教だゾ☆と、いうことである。次やらかすようであったら火を吹く自信があるのでホントやめてほしい。
【柏木 愛】
「は、はい!ごめんなさいでしたぁ!」
(きっと自分は深く反省しているだろうと自信があるので、遠慮なく床に転がった。脚部に10万ボルトを食らったかのような痺れが走り続けている。これあと四時間やってたら多分死んでたと思う。確実に)
「マジここ、恐ろしい人しかいないです。俺も命は惜しいので、自重します、はい……」
(ヒガンバナ然りピエロ然り、怒らせるとタダでは済まない人達に目をつけられた以上、彼の凶行もここまでであろう……多分)
【五番目の道化師】
「安心して、殺されないだけマシ」
今、注意しとくのはたかが変態行為をしたが故にクラスメイトが殺されないためだ。もし、これからも続くようなら……注意する前に死んでしまうかもしれない。
そう、なっては嫌だから長々しい説教をしたのだ。
「えい」
ちなみに、今、柏木さんの足をつついたのは単なるイタズラである。
【柏木 愛】
「そ、そうですね……ヒガンバナさんの時は冗談抜きで死ぬかと……あひゅぅ!!やめてください!なんでもしますから!」
(痺れた足にそれは禁忌である。床を転がってピエロから離れ、壁に激突する)
【五番目の道化師】
(あ……っ、ホントにまだ足痺れてたんだ)
なんか、ごめんね?と、心の中で謝罪する。
それにしてもあれだね。『死ぬと思った』って…むしろよく生きてたね。
「柏木さん…少なくとも女性の体でいる間は『何でもしますから』は言っちゃダメだよ。また同じ目に遭うよ?」
ちょいちょい、と手招きするが…もしかして痺れた足をつついたことで警戒されちゃったかな?道化師はフローリングの床に座りながら背負っていたリュックを床に下ろした。
【柏木 愛】
「は、はい……何でもしますって、なんか、口癖みたいなもので、中々抜けないです」
(足の痺れが若干和らいできて、よろよろと四つん這いになりながらピエロの元へ)
「ピエロちゃんって絶対Sですよね……俺色んな人から虐げられすぎて、なんかまた新しい扉を開きそうです」
【五番目の道化師】
(新しい扉…?)
なんの単語なんだろう?と、首を傾げたくなる道化師はリュックの中から…なんということだろう。柏木さんの服が出てきた。
「洗っといたよ」
お前、いつの間に持ち帰ったんだよ。そして、いつ洗濯したんだよ!別にペンションで洗濯しても良かっただろう!?と、思ったが…洗濯機が見つけられなかったんだ。わざわざホテルに帰って洗ったよ!!(描写忘れ)
【柏木 愛】
「お、俺の服っ!」
(有難い。あの後ショッピングモールで別の服を見繕ったのだが、最初に選んだそれが一番気に入っていたからだ。自分もヨタヨタと四つん這いでリュックのもとへ行き、その中身を取り出した。
出てきたのは、あの時借りていたピエロ服である)
「お、俺も洗っときました!」
(なんたる偶然)
【五番目の道化師】
「あっ、私の服。洗っといてくれたんだ。別に良いのに」
洗ってくれるなんて優しいなぁ。柏木さんは。
ピエロの練習をしていた時の同僚はそんなこと一切してくれなかったのに。道化師は柏木さんの服を手渡し、変わりに自分の服を受け取った。
【柏木 愛】
「いや、俺みたいな汚い奴が着たんですから当然ですよ」
(ぺこぺこしながら服の交換をし、自分の服をリュックに詰め込んだ)
「あ、あの、こんな俺ですけど、これからも仲良くしてくれますか……?お、俺、心の拠り所(写真)がなくて、怖くて
」
【五番目の道化師】
「もう、自分を汚いやつとか言わないの!」
仲良くしてくれるか?と、聞かれたら道化師の答えはただ一つだ。「もちろんだよ!」と、道化師はそう言って柏木さんに抱きつく(だから、そい(略))
「怖いのは一緒だし!何かあったらいつでも連絡してくれてもいいからね!」
まるで、女友達を相手にしているかのような扱いを柏木さんにしているが…そいつ男なんだから…()
【柏木 愛】
「おおっ……!」
(抱きつかれるとおっ〇いに意識が言っちゃうんだなぁ。みつを。
でもあまり態度に出すとまた恐ろしい目に遭いそうだったので、ニヤニヤする程度で抑え込んだ)
「あ、ありがとうございますぞぉ、デュフ」
【五番目の道化師】
思いっきり態度に出ちゃってるんだよなぁ。だけど、あんな説教したばかりだし大目にみるか。道化師は柏木さんの顔を、コメントを見て見ぬふりをした。
「柏木さん、ホントに何かあったら連絡ちょうだいね?知らないうちに死んじゃってたとか嫌だからね…っ!」
ちゃっかり、気づかれないように片手で何かを操作しながら──
【柏木 愛】
「こ、こっちこそですよ!ピエロちゃんが死んじゃったら俺、やばいです。悲しさのあまり幼女という幼女を食っちまうかもしれません」
(冗談のつもりだったが、もしかしたらガチかもしれない。
とにかく彼は心を一新し、煩悩のみに眩むのではなく、真面目に生き残る方法を模索しようと思うのであった)
【五番目の道化師】
「こらこら、幼女は食べ物じゃないし。そこは悲しみを乗り越えて前に進もうか」
そっと、操作していたものを仕舞ってから柏木さんのことを抱きつくのをやめる。
「私はここの家具を元に戻してから探索に戻るつもりですが…柏木さんはどうしますか?」
【柏木 愛】
「さっきの人はなんだったのでしょうか……」
(襲って来たかと思えば即消滅した謎の幽霊を訝しみながら、ペンションへとやって来た。
要件は、ピエロに呼び出された他ない。数少ない心を許せる相手からの呼び出しに、応じるのは当然であった。指定された部屋まで来ると、ノックする)
「こんにちは、柏木です」
【五番目の道化師】
ノックが聞こえて、呼び出したあの人が来たことがわかる。
道化師はドアを開けて「遅かったね」と柏木さんに微笑みかけながら部屋に招き入れると…まぁ、鍵かけるよね。不用心だし、誰か来ても仕方ないし。
「柏木さん、まぁ、座ってよ」
と、言うが…ソファどころか在ったはずのベッドもない。ご丁寧なことに敷いてあった絨毯やら家具やらもすべて片付けてあるようで…。部屋は壁掛け以外何もない。
「柏木さん、正座♪」
笑顔で言った道化師の顔は───ピエロメイクもしていないのにとても怖い笑みを浮かべていた。それはまるで……いや、例えるのはやめておこうか。
【柏木 愛】
「え、なんですかこの部屋。ミニマリストなんですか?ていうか何もないですけど……え?
……はい」
(部屋というより箱と呼んだ方が相応しい空間の中で困惑する。いきなり正座をしろと言われてもなんのことやら。しかし、ピエロちゃんの顔が半端じゃなく怖かったので、大人しく部屋の中央で正座した。硬い床が当たって、既に痛い)
【五番目の道化師】
「柏木さん、お説教のお時間です。五時間耐久コースいってみよう♪」
笑顔で告げたその言葉。
簡単に言うと───まぁ、五時間は正座し続けろ。ということである。
「前は気絶していたから言えなかったから言わせてもらうね!
気分が落ち込んでるのはわかるけど、自分が窒息するくらい胸に埋もれてどうするの!!男子が女子の胸が好きなのは承知しているけど馬鹿じゃないの!!人の胸で死ぬ気か!!
あれで助けた人が死んでたらすっっごい気まずいのわかる!?柏木さんは幸せなのかもしれないけどトラウマになるからね!!胸が好きなのは結構だけど窒息するんじゃない!」
これがまず一つ目のに言いたかったことである
【柏木 愛】
「え?え?E?」
(お説教と言われて大混乱。おかしいなぁ、怒られるような事はしてないなぁ。もしかして写真の件?これ以上写真の件で俺の心を削るのはヤメテ?と思ったが、そもそも写真のことは彼女は知らないはず……などと思考を巡らせていた時に浴びせられる怒声。
すっかり忘れていたが、そんなこともあったな……)
「ご、ごめんなさい……あの、足痛いんすけど……これ五時間は死にますよ……」
【五番目の道化師】
「正座が嫌…?
───じゃあ、五時間だけ『雪が積った場所で真っ裸にして放置』してあげようか?」
笑顔で言った。
ちなみに雪の中で裸長時間放置はなんとなくであるため、誰かから話を聞いたわけではない。なんとなく、勘が<言え>と言ったから言っただけである。
【柏木 愛】
「あ、ゴメンナサイ……コノママデイマス……」
(これは完全にエムのことを言っている。エムを裸で外に連れ出したことを知っているのか!と確信せざるを得なかった。偶然って怖い。ちなみに柏木はエムが風邪を引いたことを知らない。
耐えるしかない……膝の上で組んだ手をギュッと握った)
【五番目の道化師】
道化師は柏木の反応を見て……『あっ、なんか説教される心当たりが他にあるな』と察してしまった。
「おっかしいなぁ。私、胸での窒息の説教だけしかしないつもりだったんだけどなぁ?
───柏木さん、お説教の内容。別の事を考えてたでしょ。胸の件が思いつかないくらい……かなり、罪深いやつ」
グイっと顔を近づけて目を見る。嘘は見抜くよ。と、示す行動だった。柏木さんはきっと呪われているんだな……と、中の人がかわいそうになるくらい哀れである
【柏木 愛】
「ハッ!?いや、そんなことはないです。お○ぱいに目が眩んだことが最大の罪だと思っております。我、お○ぱいを断じて己を律する。ごめんなさいピエロちゃん。ごめんなさいおっ○い」
(ドキリと心臓が跳ね上がり、慌てて目を逸らす。この女はヤバイ。夫の浮気とかを鋭く見抜くタイプであろう。
ていうか胸だけの話で五時間ってそれはもう猥談の域だろ!と思ったがとても口には出せず、むしろそっちの方向に持っていくことにした)
【五番目の道化師】
(はい、アウト)
心の中で呟かれる言葉。
真偽を確かめられてる際に一番やってはいけないのは目を反らすこと。つまり、やましいことを考えていたな?
「更に一時間、増やしましょう」
淡々とそう言い放った道化師は口を割るまで永遠と時間を伸ばし続けるつもりのようだ。ちなみにだが、道化師はガチで浮気を許さない人なので付き合う人は要注意である。浮気が道化師にバレた瞬間に殺され──は、しないがきつく説教されることを保証しよう。
【柏木 愛】
「エェ!?いや、それは……。
ご、ごめんなさいでしたぁ!実は幼女二人の裸を撮ってなんやかんやしてました!でもそれは二度としません!写真も消しました!ほら!」
(非常にマズイ。このままでは二度と歩けない身体になってしまう。言い逃れが通用しない相手であることを察すると、正座の体勢のまま身体をくの字に曲げ、己の罪を素直に告白するのだった。
コロパッドを床に置いて、写真が残っていないことを示す。あたかも自分で改心したかのように言ってるが、真実は……お察し)
【五番目の道化師】
「幼女……二人、ねぇ?と、いうことはエムちゃんを風邪引かせたのは柏木さんだったんだね?」
ニンマリと笑みを浮かべる道化師はそっと柏木さんの後ろへ回り込むと「えい」という掛け声とともに柏木さんの足の裏を思い切り踏んづけた。既に足がしびれているなら大ダメージだろう。
「ねぇ、柏木さん。あなた…男性に初めてを奪われたとか言ってたよね。気がついてないようだから言っとくけど
───お前、同じようなことしてるんだけど。」
【柏木 愛】
「え、エムちゃんが風邪を……!?ングッ!」
(痺れた足に走るSHOCKING!激痛に声を上げ、飛び跳ねそうになるが、姿勢を崩すとヤバイことになりそうだったので必死に耐えるのであった。もう柏木くんかわいそう!)
「お、同じことを……俺が……!?」
【五番目の道化師】
「無自覚って怖いよねぇ。お前は物理的にやられたけど、写真を取られたあの子達は触れられなくても同じ目に会ってるんだよ?
ねぇ…、想像してみろよ。裸で、遮るもの無しにジロジロ見られてしまう屈辱を…。
さぞ、興奮したでしょうね…『加害者になったお前』は」
本当は傷ついた心を傷つけたくはないんだけど…なんか、また繰り返しそうだし。こういう輩ってちゃんと釘刺しとかないと繰り返しちゃうだろうから、わかりやすい言葉で教えとかないといけないよね…。と、考えに考え抜いた言葉だった。
【柏木 愛】
「あ、ああ……ご、ごめんなさい……俺が間違ってました……」
(被害者の気持ちなど考えたこともなかった……!←
たしかにこころちゃんに至っては普通に泣いていたし、それを見て興奮してしまった自分はなんて罪深い人間なんだ……!己の罪の大きさを自覚し、涙ぐむ。
柏木君は感化されやすいので、将来詐欺とかに遭うタイプだと。あと正直足が痛すぎる。そろそろ五時間経った????)
【五番目の道化師】
「間違ってたと思うなら、二度と裸体を撮影してはダメだからね。コロパットはもちろん、カメラでも。」
時計を見て……おや、一時間しか経ってないのか←
でも、反省したみたいだし正座は解いてもいいかもしれない。
「反省したならもう自由にしていいよ。あぁ、それと私は<そういうことに関して>の勘は良い方だから気を付けてね?」
つまり、あんまり馬鹿やると『また』お説教だゾ☆と、いうことである。次やらかすようであったら火を吹く自信があるのでホントやめてほしい。
【柏木 愛】
「は、はい!ごめんなさいでしたぁ!」
(きっと自分は深く反省しているだろうと自信があるので、遠慮なく床に転がった。脚部に10万ボルトを食らったかのような痺れが走り続けている。これあと四時間やってたら多分死んでたと思う。確実に)
「マジここ、恐ろしい人しかいないです。俺も命は惜しいので、自重します、はい……」
(ヒガンバナ然りピエロ然り、怒らせるとタダでは済まない人達に目をつけられた以上、彼の凶行もここまでであろう……多分)
【五番目の道化師】
「安心して、殺されないだけマシ」
今、注意しとくのはたかが変態行為をしたが故にクラスメイトが殺されないためだ。もし、これからも続くようなら……注意する前に死んでしまうかもしれない。
そう、なっては嫌だから長々しい説教をしたのだ。
「えい」
ちなみに、今、柏木さんの足をつついたのは単なるイタズラである。
【柏木 愛】
「そ、そうですね……ヒガンバナさんの時は冗談抜きで死ぬかと……あひゅぅ!!やめてください!なんでもしますから!」
(痺れた足にそれは禁忌である。床を転がってピエロから離れ、壁に激突する)
【五番目の道化師】
(あ……っ、ホントにまだ足痺れてたんだ)
なんか、ごめんね?と、心の中で謝罪する。
それにしてもあれだね。『死ぬと思った』って…むしろよく生きてたね。
「柏木さん…少なくとも女性の体でいる間は『何でもしますから』は言っちゃダメだよ。また同じ目に遭うよ?」
ちょいちょい、と手招きするが…もしかして痺れた足をつついたことで警戒されちゃったかな?道化師はフローリングの床に座りながら背負っていたリュックを床に下ろした。
【柏木 愛】
「は、はい……何でもしますって、なんか、口癖みたいなもので、中々抜けないです」
(足の痺れが若干和らいできて、よろよろと四つん這いになりながらピエロの元へ)
「ピエロちゃんって絶対Sですよね……俺色んな人から虐げられすぎて、なんかまた新しい扉を開きそうです」
【五番目の道化師】
(新しい扉…?)
なんの単語なんだろう?と、首を傾げたくなる道化師はリュックの中から…なんということだろう。柏木さんの服が出てきた。
「洗っといたよ」
お前、いつの間に持ち帰ったんだよ。そして、いつ洗濯したんだよ!別にペンションで洗濯しても良かっただろう!?と、思ったが…洗濯機が見つけられなかったんだ。わざわざホテルに帰って洗ったよ!!(描写忘れ)
【柏木 愛】
「お、俺の服っ!」
(有難い。あの後ショッピングモールで別の服を見繕ったのだが、最初に選んだそれが一番気に入っていたからだ。自分もヨタヨタと四つん這いでリュックのもとへ行き、その中身を取り出した。
出てきたのは、あの時借りていたピエロ服である)
「お、俺も洗っときました!」
(なんたる偶然)
【五番目の道化師】
「あっ、私の服。洗っといてくれたんだ。別に良いのに」
洗ってくれるなんて優しいなぁ。柏木さんは。
ピエロの練習をしていた時の同僚はそんなこと一切してくれなかったのに。道化師は柏木さんの服を手渡し、変わりに自分の服を受け取った。
【柏木 愛】
「いや、俺みたいな汚い奴が着たんですから当然ですよ」
(ぺこぺこしながら服の交換をし、自分の服をリュックに詰め込んだ)
「あ、あの、こんな俺ですけど、これからも仲良くしてくれますか……?お、俺、心の拠り所(写真)がなくて、怖くて
」
【五番目の道化師】
「もう、自分を汚いやつとか言わないの!」
仲良くしてくれるか?と、聞かれたら道化師の答えはただ一つだ。「もちろんだよ!」と、道化師はそう言って柏木さんに抱きつく(だから、そい(略))
「怖いのは一緒だし!何かあったらいつでも連絡してくれてもいいからね!」
まるで、女友達を相手にしているかのような扱いを柏木さんにしているが…そいつ男なんだから…()
【柏木 愛】
「おおっ……!」
(抱きつかれるとおっ〇いに意識が言っちゃうんだなぁ。みつを。
でもあまり態度に出すとまた恐ろしい目に遭いそうだったので、ニヤニヤする程度で抑え込んだ)
「あ、ありがとうございますぞぉ、デュフ」
【五番目の道化師】
思いっきり態度に出ちゃってるんだよなぁ。だけど、あんな説教したばかりだし大目にみるか。道化師は柏木さんの顔を、コメントを見て見ぬふりをした。
「柏木さん、ホントに何かあったら連絡ちょうだいね?知らないうちに死んじゃってたとか嫌だからね…っ!」
ちゃっかり、気づかれないように片手で何かを操作しながら──
【柏木 愛】
「こ、こっちこそですよ!ピエロちゃんが死んじゃったら俺、やばいです。悲しさのあまり幼女という幼女を食っちまうかもしれません」
(冗談のつもりだったが、もしかしたらガチかもしれない。
とにかく彼は心を一新し、煩悩のみに眩むのではなく、真面目に生き残る方法を模索しようと思うのであった)
【五番目の道化師】
「こらこら、幼女は食べ物じゃないし。そこは悲しみを乗り越えて前に進もうか」
そっと、操作していたものを仕舞ってから柏木さんのことを抱きつくのをやめる。
「私はここの家具を元に戻してから探索に戻るつもりですが…柏木さんはどうしますか?」
ロティ(7th)-ですにゃん(26th)【DEAD END】
【ですにゃん】
商店街の店で可愛い柄のお菓子を購入し近くのベンチでもぐもぐとお菓子を食べる。カラフルな色の金平糖だ。
「あの子も好きだったな、この菓子」
視線を落とし、お菓子のパッケージを眺める。それを眺めるだけでふわふわしたあの「消せばいい」の言葉がしっかりしたモノに変わっていく気さえした。
ちゃんと、自分の身が守れて、あの子への道を邪魔するやつをやっつけられるモノ、探さなくちゃ。
そうは考えるものの座り込んでしばらく金平糖をかじり続ける
【ロティ】
「…………金平糖かい?」
そんな様子の相手には、ふと後ろから声が聞こえるだろう。
少し低い、中性的な声で、持っているものについて疑問を投げかけてみる。
星屑とも見える物。
金平糖なのは分かったけれど。
やはり話題になるものは、少しでも拾うべきと思っているのは変わらない。
拾えるものは拾う。
……なんて、よく言った物だ。
「ああ……すまない、いきなり話しかけて。
少し、気になったものでね……。」
【ですにゃん】
「うっ!わ!!」
背後から話しかけられ驚いた。それはもう、カラカラカラ〜と金平糖を落としてしまうくらいに、
落ちたのはもう食べられないなぁ、とパッケージだけ拾って話しかけてきた人に向き直る。
「・・・えっと、食べる?」
そう言いですにゃんは手のひらに乗っけてあるふた粒の金平糖を相手に見せる。食べようと思って手に持っていたものだ。
【ロティ】
「おや……良いのかい?
……なら、一つ貰うよ…ありがとう。」
貰っていいのだろうか、なんて思ったけれど。
相手の気持ちを無下には出来ないので、一つだけ貰うことにした。
口に含めば、でこぼことしながらも僅かに甘い香りと風味が口を染めて。
カリッと噛んで、少し落ち着く味に包まれる。
久々に食べた金平糖だけど……。
「……なんだろう、懐かしいね。
君、名前は?僕はロティ、よろしくね。」
何処か懐かしく感じた。
そんな事を呟きつつ、金平糖をくれた相手に名前を聞く。
礼儀としては、此方から名乗る。
その辺は、昔からうるさく気にしてきたのをふと思い出したりしつつ。
【ですにゃん】
一粒の金平糖を取り食べたロティを見上げついついイタズラ心で
「ククッ本当に食べちゃったよぉ〜」
立ちあがり後ろで手を組、2、3歩後ろに下がり、何も無いのだが意味有げにこう「くくっ」と笑う
「今、殺りあってるみたい、ですよね?・・・それなのに、初対面で知らない人から貰ったモノ食べる?・・・もし毒だったらって頭になかったの?」
あれ?あれあれ?おかしい、毒だよ〜ひひっってして反応みて遊ぶつもりだったのに・・・ぼく、なんだか、勝手に動いてる感覚 だぞ?
ですにゃんは「ううん、」と唸り声をあげ、頭を抱える。家に帰りたい。あの子に会いたい。その為には・・・?あの子に、会いたいっ・・・会いたい会いたい会いたいあいたいっ!
「ごめん、なさい。ごめんなさい。・・・ぼく、ですにゃんです。あの子に会うために、アナタを消さなくては行けません。」
混乱の渦。
あの子に会いたいという欲。それがですにゃんを動かした。いや、動かしたんじゃない。支配したのかもしれない。
【ロティ】
「毒…………だって…?」
その言葉を聞いた時に感じた感覚。
───毒……?
嗚呼…そうかそうか……毒か…。
大切な人に会うために…“僕”を殺す?
成程……なら、私は、こう言わせてもらう。
“笑わせるんじゃないこのエゴイストが”…と。
声は冷静に、そして冷徹に。
私の口からは、ただただそれだけが出た。
大切な人に会いたいから、生きて帰りたいのだろう。
そんな事……此方も同じだ。
だからこそ、死んで溜まるかという気持ちは私の中で、心の臓を昂らせる。
「フフ……ァハハハハハハッ!
毒!?僕を殺す!?
なぁにを言っているんだい、君はさァ!?
随分と……甘ったるい毒だねぇ!?」
これは……本来の僕?いいや私?
違う……単純に気に食わないだけだ、目の前のエゴイストが。
許せ……赦せ……ユルシテクレ……。
そんな私が、憎い。
ギターケースには金属バットを入れていた。
それを取り出し、店の硝子目掛けて振り、まわ割った。
硝子は相性が悪いのかな……また、頬が熱い。
でも、少しは冷静になれた。
「殺すって言うならさ……殺される覚悟も持っていっているんだろ?
……なぁ、甘ったれてんじゃねぇよなァ!?」
一喝、それだけをして私は金属バットを振って肩慣らし。
本当に毒ならそれまでだが……その時はその時だろう?
ハットを脱いで、私は、僕は……禁忌を犯す事を、此処に覚悟を持った。
【ですにゃん】
「うん、うんっ!そうだよね、君だって怒るよね、・・・死にたくないもんねぇ?」
ですにゃんは怒鳴りが鮮明に。だけど遠くに聞こえた。遠い、遠い遠い。こんなに遠いんじゃ僕は怖くない。僕に、届かない。
それどころか、「あは」と壊れた笑い声がでた。重かったキグルミはもう、身体の一部。馴染んでいた。
割られたガラスをみて「あーあ、バットとかさ!ガラス割っちゃうとか、ほんと、ずっるいなぁ…」と地面にあるガラスを蹴る。
「あは、あははは。ぼく、武器ないな、死んじゃうかもぉ、」
視界を上手く遮る猫頭。それはキット頭を守ってくれるだろう。やけに重いキグルミは動くの辛くなるけれど、だけど重たいよね?キットキット、痛いよね?
「あは」
死ぬ覚悟があるのか?って聞いてた。ないよ、そんな大きなの。だって、俺弱虫だもん。わがままだもん。たださ、今、何にも怖くないんだ。
ですにゃんは足が早かった。それはいつも逃げる帰る為の、だけど・・・走った。ロティに向かって。重たい体と速い速度でデカイ奴に当たったら相手も倒れるんじゃないかな?という浅はかな考えで
【ロティ】
「そうだなぁ……まあ、死ぬ覚悟が無いなら、殺される覚悟は持てよ?
なんたって……それはお前の選んだ道だからな?」
嗚呼……そうか、そうか…此方に来るか。
先程、死ぬ覚悟について聞いた……が、そんな物持っているとは思えない。
勿論……それは、私も同じだ。
殺される覚悟、なんて物……ある訳がない。
……しかし、“殺す”覚悟はある。
そして此処は商店街。
そして私が持っている物。
……あぁ、■■■……君の知識が役に立つよ。
ありがとう……そして、許せ。
「此処が商店街で良かったよ……算段は整った。
まずは……こうだ!」
硝子を割った店、そこからウォッカの瓶を二本取り出し、向かってくる相手の前に放り投げる。
そして、そのタイミングは相手のタックルが目の前に来た時。
ギターケースを盾にし、かつ少し斜め後方に跳ぶ事でタックルのダメージを減らしつつ、相手と遮蔽物に挟まれる事は無くなる。
そして、ウォッカはギターケースと相手の身体の間で挟まれて割れ、相手の着ぐるみに掛かる事だろう。
「痛った……けど、最終警告はしてあげよう…。
死にたくないなら、此処で帰ることを許す…今僕はライターを持っているからね……。
……もう一度言う…死にたくないなら、帰れ。」
【ですにゃん】
「あははは」
痛みを言葉出しているかの笑い声。ですにゃんは腹を抱えて笑った。楽しそうにとても、楽しそうに。だが響く笑い声はいたい。耳障りで耳を塞ぎたくなってしまうほどに、
「死にたくなかったらニゲロ?じゃあさ、アナタはなんなんでしょう?死にたいんですよね?もう、勝った気でいる。…。あぁ…慢心、だいっ嫌い」
相手は殺したくない、から見逃そうとしているのだ。だが、今殺っているのはコロシアイ。対等な筈なのだ。それなのに逃げていい。それはボクが弱いものと決めつけた証拠だ。
猫頭をカラカラと左右に揺らし全身にウォッカがかかった状態でロティに抱きつこうともう一度駆け、先程ロティがくれた割れた瓶を隠し持ち、ロティの腹目掛けて瓶を突き刺そうと。。。
「あはは、そぉだぁ!火だるま対決しよぉ〜?ライターで火をつけたらスタートで!勝った方が生きてるってやつなんだけどさぁ…あは」
何処かでわかっていた。逃げたらもう、戻れない。震えてるしか出来ないってこと。でも、この道を進むのも間違ってるってことも…。だけど、もう無理なんだ。正しい道はもうボクが壊してしまったと思うから。なあ?わかるよな?逃げても、戻っても、進んでも、止まっても。
(もう…ぼくには、地獄しか待ってないってこと。)
【ロティ】
「…………お前、馬鹿だな。」
此処で逃げていたならば、本当に見逃しても良かったのに……。
相手はそれを拒んだ、なら遠慮なんか捨てる。
相手が駆け始めるよりも早く、少し後方へ移動しつつライターを片手に。
そして、リュックの横ポケットに入れていた……今回……配られたアイテムの一つ。
……私は、ゴキジェットだった。
ゴキジェットとライター……もう、分かるね?
「……火達磨には、テメェだけなってろ。」
ライターの火をつけ、そこにゴキジェットを噴射する事で火炎放射器となる。
それは、離れた場所からでも相手のウォッカの染みた着ぐるみに火をつけるには十分だろう。
そして横薙ぎに動かす事で、着火面積を増やす。
これでいい……なあ、そうだろう?
【ですにゃん】
ぶぉわぁああという音、炎の熱気、自分の腹ら辺から燃え広がる炎。ゆらゆら自身の意志関係なしに揺れてしまうからだ。
「あはは、あはははは!!!ひっく」
どうして…気づかなかったのだろう。ウォッカといえば、アルコール度数が高くチビチビ飲んだり、炭酸飲料で割って飲んだりするあのお酒だ。ですにゃんは高校生。真面目くんだった為にお酒など飲んだことがなかった。…二本分も割られていたら酔ってしまうのともしょうがないだろう。
「炎だ。火だるまだぁ!…でもぼくだけなんて、可愛そうだよねぇ?そうだよね?【りぃちゃん】」
ですにゃんはロティに突っ込もうとして自分の足に躓き転ぶが、「あは」と笑い、立ち上がる。
「燃えてるね、ぼく。…そっか、そっかぁそっかあ!…きっと!りぃちゃんが望んだんだね!?ぼくに死んでって、早く会いたいよって!…そうだよねぇええ!?」
頭を押さえつけ、ロティから2、3歩下がり「だめだ、だめ、やっぱりかわいそうそうだけど別けてあげられないよ。ごめんね、きっとあの子の望だから」
きっと、イカれてる…と思うのだろう。自分以外を殺してでもあの子に会いたいという異常な依存。
「あぁ…金平糖の…かひゅ…毒って言うの、うそだよ、あは?」
燃えてる元はですにゃんなのだ。煙を吸い込み、ウォッカを吸い込んだキグルミはきっと、ですにゃんが死んだとしても燃え続けるだろう。それほどまでに炎は強い。
熱いっ…いたいいたいいたい、あつ"いよ"お"!ァアアアアアア!
口は、閉じていた。暴れなかった。ずっとじっとしてたよ、いいこでしょ?だから、お願い、辛いのもうやだから。ぼくのこと……。
【ロティ】
「毒が嘘か……そんな事、知ってるけど?
だってさぁ…毒なら何か起きるに決まってんじゃん?
それが起きないなら嘘、簡単だよねぇ?」
毒が嘘……なんて、知っている。
───だってそうだろう?
体に異変がない時点で、既に毒は嘘だろうと推測する事なんか簡単だ。
其れくらい、誰でも分かるんじゃないか?
…………なんて、ね。
商店街を充満するアルコールの匂いは、確実に周りに酒気を広げる。
此処で、相手を助ける……理由が無い。
───助けたい?
…………いいや、分からないね。
───理由は?
…………いいや、それも分からない。
───ユルシテクレル?
…………シルワケガナイダロウ?
「フフ……。
ふはははははハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!
はぁ…………なぁ…もう良いだろ……?
……さっさと死になよ、その方が楽だから。」
私は壊れたのかな、なんて思いつつ……。
壊れたのでは無いと、内心分かったのは秘密。
───だってそうだろう?
…………それが…。
…………僕の…。
…………私の…。
────────本当の、僕だから。
ふと、そんな事を思えば……私は、此処を去る。
……さようなら……。
煙草を加えて……僕は、此処を去る。
……友達だったかも知れない、君よ……。
【ですにゃん】
商店街の店で可愛い柄のお菓子を購入し近くのベンチでもぐもぐとお菓子を食べる。カラフルな色の金平糖だ。
「あの子も好きだったな、この菓子」
視線を落とし、お菓子のパッケージを眺める。それを眺めるだけでふわふわしたあの「消せばいい」の言葉がしっかりしたモノに変わっていく気さえした。
ちゃんと、自分の身が守れて、あの子への道を邪魔するやつをやっつけられるモノ、探さなくちゃ。
そうは考えるものの座り込んでしばらく金平糖をかじり続ける
【ロティ】
「…………金平糖かい?」
そんな様子の相手には、ふと後ろから声が聞こえるだろう。
少し低い、中性的な声で、持っているものについて疑問を投げかけてみる。
星屑とも見える物。
金平糖なのは分かったけれど。
やはり話題になるものは、少しでも拾うべきと思っているのは変わらない。
拾えるものは拾う。
……なんて、よく言った物だ。
「ああ……すまない、いきなり話しかけて。
少し、気になったものでね……。」
【ですにゃん】
「うっ!わ!!」
背後から話しかけられ驚いた。それはもう、カラカラカラ〜と金平糖を落としてしまうくらいに、
落ちたのはもう食べられないなぁ、とパッケージだけ拾って話しかけてきた人に向き直る。
「・・・えっと、食べる?」
そう言いですにゃんは手のひらに乗っけてあるふた粒の金平糖を相手に見せる。食べようと思って手に持っていたものだ。
【ロティ】
「おや……良いのかい?
……なら、一つ貰うよ…ありがとう。」
貰っていいのだろうか、なんて思ったけれど。
相手の気持ちを無下には出来ないので、一つだけ貰うことにした。
口に含めば、でこぼことしながらも僅かに甘い香りと風味が口を染めて。
カリッと噛んで、少し落ち着く味に包まれる。
久々に食べた金平糖だけど……。
「……なんだろう、懐かしいね。
君、名前は?僕はロティ、よろしくね。」
何処か懐かしく感じた。
そんな事を呟きつつ、金平糖をくれた相手に名前を聞く。
礼儀としては、此方から名乗る。
その辺は、昔からうるさく気にしてきたのをふと思い出したりしつつ。
【ですにゃん】
一粒の金平糖を取り食べたロティを見上げついついイタズラ心で
「ククッ本当に食べちゃったよぉ〜」
立ちあがり後ろで手を組、2、3歩後ろに下がり、何も無いのだが意味有げにこう「くくっ」と笑う
「今、殺りあってるみたい、ですよね?・・・それなのに、初対面で知らない人から貰ったモノ食べる?・・・もし毒だったらって頭になかったの?」
あれ?あれあれ?おかしい、毒だよ〜ひひっってして反応みて遊ぶつもりだったのに・・・ぼく、なんだか、勝手に動いてる感覚 だぞ?
ですにゃんは「ううん、」と唸り声をあげ、頭を抱える。家に帰りたい。あの子に会いたい。その為には・・・?あの子に、会いたいっ・・・会いたい会いたい会いたいあいたいっ!
「ごめん、なさい。ごめんなさい。・・・ぼく、ですにゃんです。あの子に会うために、アナタを消さなくては行けません。」
混乱の渦。
あの子に会いたいという欲。それがですにゃんを動かした。いや、動かしたんじゃない。支配したのかもしれない。
【ロティ】
「毒…………だって…?」
その言葉を聞いた時に感じた感覚。
───毒……?
嗚呼…そうかそうか……毒か…。
大切な人に会うために…“僕”を殺す?
成程……なら、私は、こう言わせてもらう。
“笑わせるんじゃないこのエゴイストが”…と。
声は冷静に、そして冷徹に。
私の口からは、ただただそれだけが出た。
大切な人に会いたいから、生きて帰りたいのだろう。
そんな事……此方も同じだ。
だからこそ、死んで溜まるかという気持ちは私の中で、心の臓を昂らせる。
「フフ……ァハハハハハハッ!
毒!?僕を殺す!?
なぁにを言っているんだい、君はさァ!?
随分と……甘ったるい毒だねぇ!?」
これは……本来の僕?いいや私?
違う……単純に気に食わないだけだ、目の前のエゴイストが。
許せ……赦せ……ユルシテクレ……。
そんな私が、憎い。
ギターケースには金属バットを入れていた。
それを取り出し、店の硝子目掛けて振り、まわ割った。
硝子は相性が悪いのかな……また、頬が熱い。
でも、少しは冷静になれた。
「殺すって言うならさ……殺される覚悟も持っていっているんだろ?
……なぁ、甘ったれてんじゃねぇよなァ!?」
一喝、それだけをして私は金属バットを振って肩慣らし。
本当に毒ならそれまでだが……その時はその時だろう?
ハットを脱いで、私は、僕は……禁忌を犯す事を、此処に覚悟を持った。
【ですにゃん】
「うん、うんっ!そうだよね、君だって怒るよね、・・・死にたくないもんねぇ?」
ですにゃんは怒鳴りが鮮明に。だけど遠くに聞こえた。遠い、遠い遠い。こんなに遠いんじゃ僕は怖くない。僕に、届かない。
それどころか、「あは」と壊れた笑い声がでた。重かったキグルミはもう、身体の一部。馴染んでいた。
割られたガラスをみて「あーあ、バットとかさ!ガラス割っちゃうとか、ほんと、ずっるいなぁ…」と地面にあるガラスを蹴る。
「あは、あははは。ぼく、武器ないな、死んじゃうかもぉ、」
視界を上手く遮る猫頭。それはキット頭を守ってくれるだろう。やけに重いキグルミは動くの辛くなるけれど、だけど重たいよね?キットキット、痛いよね?
「あは」
死ぬ覚悟があるのか?って聞いてた。ないよ、そんな大きなの。だって、俺弱虫だもん。わがままだもん。たださ、今、何にも怖くないんだ。
ですにゃんは足が早かった。それはいつも逃げる帰る為の、だけど・・・走った。ロティに向かって。重たい体と速い速度でデカイ奴に当たったら相手も倒れるんじゃないかな?という浅はかな考えで
【ロティ】
「そうだなぁ……まあ、死ぬ覚悟が無いなら、殺される覚悟は持てよ?
なんたって……それはお前の選んだ道だからな?」
嗚呼……そうか、そうか…此方に来るか。
先程、死ぬ覚悟について聞いた……が、そんな物持っているとは思えない。
勿論……それは、私も同じだ。
殺される覚悟、なんて物……ある訳がない。
……しかし、“殺す”覚悟はある。
そして此処は商店街。
そして私が持っている物。
……あぁ、■■■……君の知識が役に立つよ。
ありがとう……そして、許せ。
「此処が商店街で良かったよ……算段は整った。
まずは……こうだ!」
硝子を割った店、そこからウォッカの瓶を二本取り出し、向かってくる相手の前に放り投げる。
そして、そのタイミングは相手のタックルが目の前に来た時。
ギターケースを盾にし、かつ少し斜め後方に跳ぶ事でタックルのダメージを減らしつつ、相手と遮蔽物に挟まれる事は無くなる。
そして、ウォッカはギターケースと相手の身体の間で挟まれて割れ、相手の着ぐるみに掛かる事だろう。
「痛った……けど、最終警告はしてあげよう…。
死にたくないなら、此処で帰ることを許す…今僕はライターを持っているからね……。
……もう一度言う…死にたくないなら、帰れ。」
【ですにゃん】
「あははは」
痛みを言葉出しているかの笑い声。ですにゃんは腹を抱えて笑った。楽しそうにとても、楽しそうに。だが響く笑い声はいたい。耳障りで耳を塞ぎたくなってしまうほどに、
「死にたくなかったらニゲロ?じゃあさ、アナタはなんなんでしょう?死にたいんですよね?もう、勝った気でいる。…。あぁ…慢心、だいっ嫌い」
相手は殺したくない、から見逃そうとしているのだ。だが、今殺っているのはコロシアイ。対等な筈なのだ。それなのに逃げていい。それはボクが弱いものと決めつけた証拠だ。
猫頭をカラカラと左右に揺らし全身にウォッカがかかった状態でロティに抱きつこうともう一度駆け、先程ロティがくれた割れた瓶を隠し持ち、ロティの腹目掛けて瓶を突き刺そうと。。。
「あはは、そぉだぁ!火だるま対決しよぉ〜?ライターで火をつけたらスタートで!勝った方が生きてるってやつなんだけどさぁ…あは」
何処かでわかっていた。逃げたらもう、戻れない。震えてるしか出来ないってこと。でも、この道を進むのも間違ってるってことも…。だけど、もう無理なんだ。正しい道はもうボクが壊してしまったと思うから。なあ?わかるよな?逃げても、戻っても、進んでも、止まっても。
(もう…ぼくには、地獄しか待ってないってこと。)
【ロティ】
「…………お前、馬鹿だな。」
此処で逃げていたならば、本当に見逃しても良かったのに……。
相手はそれを拒んだ、なら遠慮なんか捨てる。
相手が駆け始めるよりも早く、少し後方へ移動しつつライターを片手に。
そして、リュックの横ポケットに入れていた……今回……配られたアイテムの一つ。
……私は、ゴキジェットだった。
ゴキジェットとライター……もう、分かるね?
「……火達磨には、テメェだけなってろ。」
ライターの火をつけ、そこにゴキジェットを噴射する事で火炎放射器となる。
それは、離れた場所からでも相手のウォッカの染みた着ぐるみに火をつけるには十分だろう。
そして横薙ぎに動かす事で、着火面積を増やす。
これでいい……なあ、そうだろう?
【ですにゃん】
ぶぉわぁああという音、炎の熱気、自分の腹ら辺から燃え広がる炎。ゆらゆら自身の意志関係なしに揺れてしまうからだ。
「あはは、あはははは!!!ひっく」
どうして…気づかなかったのだろう。ウォッカといえば、アルコール度数が高くチビチビ飲んだり、炭酸飲料で割って飲んだりするあのお酒だ。ですにゃんは高校生。真面目くんだった為にお酒など飲んだことがなかった。…二本分も割られていたら酔ってしまうのともしょうがないだろう。
「炎だ。火だるまだぁ!…でもぼくだけなんて、可愛そうだよねぇ?そうだよね?【りぃちゃん】」
ですにゃんはロティに突っ込もうとして自分の足に躓き転ぶが、「あは」と笑い、立ち上がる。
「燃えてるね、ぼく。…そっか、そっかぁそっかあ!…きっと!りぃちゃんが望んだんだね!?ぼくに死んでって、早く会いたいよって!…そうだよねぇええ!?」
頭を押さえつけ、ロティから2、3歩下がり「だめだ、だめ、やっぱりかわいそうそうだけど別けてあげられないよ。ごめんね、きっとあの子の望だから」
きっと、イカれてる…と思うのだろう。自分以外を殺してでもあの子に会いたいという異常な依存。
「あぁ…金平糖の…かひゅ…毒って言うの、うそだよ、あは?」
燃えてる元はですにゃんなのだ。煙を吸い込み、ウォッカを吸い込んだキグルミはきっと、ですにゃんが死んだとしても燃え続けるだろう。それほどまでに炎は強い。
熱いっ…いたいいたいいたい、あつ"いよ"お"!ァアアアアアア!
口は、閉じていた。暴れなかった。ずっとじっとしてたよ、いいこでしょ?だから、お願い、辛いのもうやだから。ぼくのこと……。
【ロティ】
「毒が嘘か……そんな事、知ってるけど?
だってさぁ…毒なら何か起きるに決まってんじゃん?
それが起きないなら嘘、簡単だよねぇ?」
毒が嘘……なんて、知っている。
───だってそうだろう?
体に異変がない時点で、既に毒は嘘だろうと推測する事なんか簡単だ。
其れくらい、誰でも分かるんじゃないか?
…………なんて、ね。
商店街を充満するアルコールの匂いは、確実に周りに酒気を広げる。
此処で、相手を助ける……理由が無い。
───助けたい?
…………いいや、分からないね。
───理由は?
…………いいや、それも分からない。
───ユルシテクレル?
…………シルワケガナイダロウ?
「フフ……。
ふはははははハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!
はぁ…………なぁ…もう良いだろ……?
……さっさと死になよ、その方が楽だから。」
私は壊れたのかな、なんて思いつつ……。
壊れたのでは無いと、内心分かったのは秘密。
───だってそうだろう?
…………それが…。
…………僕の…。
…………私の…。
────────本当の、僕だから。
ふと、そんな事を思えば……私は、此処を去る。
……さようなら……。
煙草を加えて……僕は、此処を去る。
……友達だったかも知れない、君よ……。
臨海 凪乃(6th)-撫子(13th)
【撫子】
はぁ…比較的快適…
(殺し合いが始まった。何となくわかっていたとはいえ、あまり認めたくはなかった。
まぁ始まったものは仕方ない、ずっとショッピングモールにいても何もできない、と、防寒着を着て(今度は試着室使用)から近くの電波塔に来てみていた。
目的はなかったと言えばそうだが、とりあえず見ておこう、と、そういうことだった。)
【臨海 凪乃】
「よく生きていたね……」
服装は違えど、目の前の少女は凍死寸前だった少女だ
ゲーム開始で数日……良く生きていたもんだ。
大したもんだ……。
「元気だったかい、13th
外は寒かったでしょう? 席につきたまえ。
暖かい紅茶なら用意しているよ……」
そういって席に座るように促す。
【撫子】
……あ、えーと、臨海だったよね。
生きていたって、今度は凍死もしないし、偶然誰とも会わなかっただけだから、まぁ当たり前というか。
(名前を忘れかけるだめな人。
それはともかく、数日間誰とも会わずに過ごすってどうやったのか、と言うと。
ホ テ ル に 引 き こ も っ た
暖かいんだから仕方ない。まぁそれは良くないと外に出て、ここに至る。
で、とりあえず促されたように椅子に座った。)
【臨海 凪乃】
「……蟄居 最適解だよ。
だって最初の期間は人間関係を深めるためだもの
そしてこの殺し合いだ、よくできてる 素晴らしい。
……ステーキが今できたところだよ
一緒に食べるかい?」
晩餐を促す
自分はどこか傍観者のよう
チェス盤を上から眺めてるような そんな感じで
「あぁ、毒はないから安心して。
そんな趣味はないのよ」
【撫子】
………否定はしないけど…
(何となく殺し合いを良しとしているみたいで納得できなかった。それは言わなかっただけで態度には表れているだろう。
言わなかったのは意味ないと思ったからだ。)
………言われると食べる気じゃなくなる…
(普通そう思うだろう。毒はないですよ、と言われてすぐに信じて食べる気になる人は警戒心がなさすぎるにも程がある。
殺し合いじゃなくても、もし普通の食卓で真顔でこう言われたら、多少は食欲に影響あるだろう。)
【臨海 凪乃】
「人肉はお好きではない?」
そういうと自ら肉を口に運ぶ。
何の抵抗もなく。
それどころか準備期間で用意した塩を振りまく
「殺し合いが好きか。 答えはノーよ
興味がないわ。好きにしたまえ」
まるで自分には関係ないような言い草
それもそのはず私はチェスのプレイヤーなのだ。
いくら盤面が動こうともチェックメイトにはならない。
【撫子】
………好きじゃないって言っておく。
紅茶は普通なの?
(こいつさらっとなんてもの食べさせようとしてるんだか。そしてなんで普通に食えるし、実はアフリカの少数民族出身なのか。
それはさておき、毒は入ってないと言われてもろくなものじゃない(食人族に失礼)とわかると、この紅茶も怪しかった。)
【臨海 凪乃】
「さすがに紅茶は普通だもの……。
問題ないわ。
アルグレイかカモミール、それともアッサムかダージリンがいい?」
水晶のチェス ビショップを端麗に拭いている
大好物の紅茶にそんな無粋なものは入れない
ただ。
「人肉を食べるからなんだというのか
それ以上にもっと残酷なことが起こってると言うのにね
あなたはどうするの?」
率直に聞く。
様々な陰謀が渦巻く銀世界 あなたは何を信じるの?
【撫子】
そんなに紅茶にこだわりはないから何でもいいけど…
(と言うと紅茶好きに失礼か?とは思う。
が、下手にそれらしいこと言って間違えるよりかはまだマシな答え方だろう。)
………どうするって…死にたくないから生き残ろうとはするけど…
(けど、の後は出てこない。生き残ろうとする、というのは、この場合誰かを殺すことが含まれる。
そういう気にはなれなかったため、言葉に詰まってしまった。何とも甘いことを言ってるように見えるだろう。)
【臨海 凪乃】
「助けてあげよう……
ただし、本気で生きたいと思うならね」
トンッ と ポーンを盤面において
「そもそもこのゲーム、生き残れば勝ちなのよ
すごくシンプルでわかりやすいわね……」
次はナイトを手に取ると、ふきんできれいに磨いていく。
「で、どうする?」
【撫子】
…生きたいに決まってるじゃんそんなの…
(本気で、の意味を計りかねた。それは誰かを殺す覚悟を持てということなのか、と。それは当然嫌だ。だが、誰だって死にたくない。
しかし、仮にここでそう言ったら、彼女は自分の敵となるかもしれない。そうはならなくても、味方になってもらえない可能性は十分あった。そう思うと、言葉を濁すだけしかできなかった。)
だからこそ、はっきりとは言えなかった。
【臨海 凪乃】
「本当に生き残りたいなら、方法は多度あれど
確実なのは、これよ。
Azothに下りなさい。 それが確実。
人も殺さないで、確実に保護できるわ。
それは、ルール3に書いてある通りよ」
そして紅茶を口に含む
本当によく冷えるわね………。
【撫子】
………でもそれって狙われることにならない…?確かに人を殺しにかかるAzothからは逃げられるし人も殺さずいられるけど、同時に多数を敵にするし…
(彼女が提案した方法が悪いとは言わない。殺す側の陣営につくという問題を考えなければ、生き残るには悪くない選択だと思っていた。
だが、その選択は敵を多くすると思うとそれがいいとは断言できなかった。別にAzothだけが人を殺すわけじゃない。Azoth以外の最大21人の内、何人が人を殺す力と意志を持っているか。問題はそこだ。
自分の命に関わる選択は慎重に選ばないといけない。だから、素直にはいとは言えなかった。)
【臨海 凪乃】
「…………狙う? いいや問題ないわ。
全員で下ればいいのよ。 反逆分子だけ始末して
それに貴女だけ生かすことなんて容易く出来るわ。
目の前の人間はAzothよ。
私のいう通りにすれば生きることができるわ」
淡々とそう答える。
何のためらいも無しに。
まるで親の七光で就職した社会人のような態度
「………そもそも敵だの何だの言ってるけど
ただの高校生に人を殺せる度胸があるのかしら。
それすら怪しいわ。
…………セレスティア、だなんて偽善組織があるけれど
アイツらが吹っかけてこなければ何もしないもの」
ルークの駒を丁寧に磨き上げながらそう答える
【撫子】
ちょ………
(大胆に出られた。自分の所属を、しかもAzoth所属をバラすとは。いや、騙されているのかもしれない。
そんなことを考えてみても、普段の生活でこんな駆け引きするわけもないからか全くわからない。)
そう思ってるけど……でも『もしも』は考えずにはいられないし…
(そもそもこの状況自体がその『もしも』であり得る範疇すら超えているのだし、本当に何があるかわからない。
状況と人では少し話が違うとも言えるが、イレギュラーがあるのはどちらでも同じだろう。)
【臨海 凪乃】
今ので確信した。
何を? さあ、何だろう?
とはいえ、私は駆け引きがしたいわけではない。
そんなことはどうでもいい。
「私がAzothなのは明日になればわかるわ。問題はそこじゃなくて……」
真実ならかなりの種を明かしているが
さて………
「私は単純にあなたが気に入ったのよ。 このゲーム、勝ち逃げしてみない?
…………参考までに聞くけど、このゲームで気にくわないやつを一人挙げるなら、だれ?」
【撫子】
………海月だけど…
(勝ち逃げについては答えない。安易には相手に自分を任せられないから、まだ味方になる…もとい従うとは言えなかった。
というか、気に入ったって何故なのか…)
【臨海 凪乃】
海月…… あぁ、23rdか
ああいう道化師が気に食わないなんて、貴女可愛いわね
一番脅威的でもないのよ
23rdが小物であるってわけじゃなくて
「23rdはきっと臆病な子よ
きっと誰よりも臆病な人間……。
道化を演じてるだけで、案外殺されるのが怖いのよ。
……まぁ、気に食わないのもなんとなくわかるわ」
尤も、向こうも私の腹を透かしに来ているだろうけど
ただ、愉しいなんて……虚勢なのでしょう?
ネイルで爪のお手入れをして、アロマな加湿器の電源を入れる
ここだけが殺し合いとは別で、隔離された優雅な空間
「明日、個人チャットを見ればいいわ。
海月の本名を教えてあげる。 気に食わないなら殺せばいいわ」
まぁ、その情報を信用するかは別として
「……まぁ、撫子ちゃんには無理ね。
あなたは人を殺せない人間だもの。 そうでしょう」
【撫子】
…………
(むすーっとした顔で相手の顔を見るだけだった。どこか気まずかったので渡された紅茶を一口。
いや、確かに気に食わないとは言った。だが、そこまでとは見ていない。
というより、誰であっても殺す勇気がないのだが、何よりそれを見透かしたような物言いをされるのが一番気に食わなかった。)
【臨海 凪乃】
不満そうに頬を膨らます撫子を見て微笑む
いい顔してる。 本当に貴女可愛いわね。
スプーンで、紅茶をかき混ぜながら
「殺せるの? 海月を。
無理でしょう?」
何処か彼女を試すような物言いをする。
どことなく意地悪をしたくなる。 そんな感じで
「……まぁ、海月を殺せなんて言わないわ。
殺す必要なんてないもの。
ただ、生きるためには殺す度胸は必要よ。
ここはそういう銀世界。
人を殺す事は悪ではないわ。正義でもないけれど」
そう言い終えるを喉を紅茶で潤す。
【撫子】
わかってるなら聞かないでよ…
(不機嫌そうにそう返す。わざとらしいことこの上ない質問への対応としてはまぁ当然なくらいだった。)
…………覚えておく…
(はい、と素直な返事はしなかった。殺すのは悪じゃない、なんて言われても自分の良心がそれを認めたりはしない。
ただ、同時に上手い反論も思いつかず、曖昧な返事になってしまった。)
【臨海 凪乃】
否定はしないのね
まぁ、それが道理な反応よね
いきなり殺せって言われても無理。
…………。
「貴女、一番人間人間してるわね。
まぁ、困ったらここに来なさい。私は基本ここにいるわ」
私からの話は以上
話に区切りをつけると ティータイムに戻る。
……この子、純粋すぎて心配ね。
そう思いながら。
【撫子】
人間人間してるって……?まぁいいや…何かあったらまた来る…か、個人チャットに送る。
(中の人含め初めて聞いた表現。褒められてるのか貶されてるのかも怪しい…まぁ悪くは言われてないと信じることにしたが。
なんて、色々文句ありげな態度はしているものの、困ったときは力になってくれるか、と多少の信用はしているようだった。)
【撫子】
はぁ…比較的快適…
(殺し合いが始まった。何となくわかっていたとはいえ、あまり認めたくはなかった。
まぁ始まったものは仕方ない、ずっとショッピングモールにいても何もできない、と、防寒着を着て(今度は試着室使用)から近くの電波塔に来てみていた。
目的はなかったと言えばそうだが、とりあえず見ておこう、と、そういうことだった。)
【臨海 凪乃】
「よく生きていたね……」
服装は違えど、目の前の少女は凍死寸前だった少女だ
ゲーム開始で数日……良く生きていたもんだ。
大したもんだ……。
「元気だったかい、13th
外は寒かったでしょう? 席につきたまえ。
暖かい紅茶なら用意しているよ……」
そういって席に座るように促す。
【撫子】
……あ、えーと、臨海だったよね。
生きていたって、今度は凍死もしないし、偶然誰とも会わなかっただけだから、まぁ当たり前というか。
(名前を忘れかけるだめな人。
それはともかく、数日間誰とも会わずに過ごすってどうやったのか、と言うと。
ホ テ ル に 引 き こ も っ た
暖かいんだから仕方ない。まぁそれは良くないと外に出て、ここに至る。
で、とりあえず促されたように椅子に座った。)
【臨海 凪乃】
「……蟄居 最適解だよ。
だって最初の期間は人間関係を深めるためだもの
そしてこの殺し合いだ、よくできてる 素晴らしい。
……ステーキが今できたところだよ
一緒に食べるかい?」
晩餐を促す
自分はどこか傍観者のよう
チェス盤を上から眺めてるような そんな感じで
「あぁ、毒はないから安心して。
そんな趣味はないのよ」
【撫子】
………否定はしないけど…
(何となく殺し合いを良しとしているみたいで納得できなかった。それは言わなかっただけで態度には表れているだろう。
言わなかったのは意味ないと思ったからだ。)
………言われると食べる気じゃなくなる…
(普通そう思うだろう。毒はないですよ、と言われてすぐに信じて食べる気になる人は警戒心がなさすぎるにも程がある。
殺し合いじゃなくても、もし普通の食卓で真顔でこう言われたら、多少は食欲に影響あるだろう。)
【臨海 凪乃】
「人肉はお好きではない?」
そういうと自ら肉を口に運ぶ。
何の抵抗もなく。
それどころか準備期間で用意した塩を振りまく
「殺し合いが好きか。 答えはノーよ
興味がないわ。好きにしたまえ」
まるで自分には関係ないような言い草
それもそのはず私はチェスのプレイヤーなのだ。
いくら盤面が動こうともチェックメイトにはならない。
【撫子】
………好きじゃないって言っておく。
紅茶は普通なの?
(こいつさらっとなんてもの食べさせようとしてるんだか。そしてなんで普通に食えるし、実はアフリカの少数民族出身なのか。
それはさておき、毒は入ってないと言われてもろくなものじゃない(食人族に失礼)とわかると、この紅茶も怪しかった。)
【臨海 凪乃】
「さすがに紅茶は普通だもの……。
問題ないわ。
アルグレイかカモミール、それともアッサムかダージリンがいい?」
水晶のチェス ビショップを端麗に拭いている
大好物の紅茶にそんな無粋なものは入れない
ただ。
「人肉を食べるからなんだというのか
それ以上にもっと残酷なことが起こってると言うのにね
あなたはどうするの?」
率直に聞く。
様々な陰謀が渦巻く銀世界 あなたは何を信じるの?
【撫子】
そんなに紅茶にこだわりはないから何でもいいけど…
(と言うと紅茶好きに失礼か?とは思う。
が、下手にそれらしいこと言って間違えるよりかはまだマシな答え方だろう。)
………どうするって…死にたくないから生き残ろうとはするけど…
(けど、の後は出てこない。生き残ろうとする、というのは、この場合誰かを殺すことが含まれる。
そういう気にはなれなかったため、言葉に詰まってしまった。何とも甘いことを言ってるように見えるだろう。)
【臨海 凪乃】
「助けてあげよう……
ただし、本気で生きたいと思うならね」
トンッ と ポーンを盤面において
「そもそもこのゲーム、生き残れば勝ちなのよ
すごくシンプルでわかりやすいわね……」
次はナイトを手に取ると、ふきんできれいに磨いていく。
「で、どうする?」
【撫子】
…生きたいに決まってるじゃんそんなの…
(本気で、の意味を計りかねた。それは誰かを殺す覚悟を持てということなのか、と。それは当然嫌だ。だが、誰だって死にたくない。
しかし、仮にここでそう言ったら、彼女は自分の敵となるかもしれない。そうはならなくても、味方になってもらえない可能性は十分あった。そう思うと、言葉を濁すだけしかできなかった。)
だからこそ、はっきりとは言えなかった。
【臨海 凪乃】
「本当に生き残りたいなら、方法は多度あれど
確実なのは、これよ。
Azothに下りなさい。 それが確実。
人も殺さないで、確実に保護できるわ。
それは、ルール3に書いてある通りよ」
そして紅茶を口に含む
本当によく冷えるわね………。
【撫子】
………でもそれって狙われることにならない…?確かに人を殺しにかかるAzothからは逃げられるし人も殺さずいられるけど、同時に多数を敵にするし…
(彼女が提案した方法が悪いとは言わない。殺す側の陣営につくという問題を考えなければ、生き残るには悪くない選択だと思っていた。
だが、その選択は敵を多くすると思うとそれがいいとは断言できなかった。別にAzothだけが人を殺すわけじゃない。Azoth以外の最大21人の内、何人が人を殺す力と意志を持っているか。問題はそこだ。
自分の命に関わる選択は慎重に選ばないといけない。だから、素直にはいとは言えなかった。)
【臨海 凪乃】
「…………狙う? いいや問題ないわ。
全員で下ればいいのよ。 反逆分子だけ始末して
それに貴女だけ生かすことなんて容易く出来るわ。
目の前の人間はAzothよ。
私のいう通りにすれば生きることができるわ」
淡々とそう答える。
何のためらいも無しに。
まるで親の七光で就職した社会人のような態度
「………そもそも敵だの何だの言ってるけど
ただの高校生に人を殺せる度胸があるのかしら。
それすら怪しいわ。
…………セレスティア、だなんて偽善組織があるけれど
アイツらが吹っかけてこなければ何もしないもの」
ルークの駒を丁寧に磨き上げながらそう答える
【撫子】
ちょ………
(大胆に出られた。自分の所属を、しかもAzoth所属をバラすとは。いや、騙されているのかもしれない。
そんなことを考えてみても、普段の生活でこんな駆け引きするわけもないからか全くわからない。)
そう思ってるけど……でも『もしも』は考えずにはいられないし…
(そもそもこの状況自体がその『もしも』であり得る範疇すら超えているのだし、本当に何があるかわからない。
状況と人では少し話が違うとも言えるが、イレギュラーがあるのはどちらでも同じだろう。)
【臨海 凪乃】
今ので確信した。
何を? さあ、何だろう?
とはいえ、私は駆け引きがしたいわけではない。
そんなことはどうでもいい。
「私がAzothなのは明日になればわかるわ。問題はそこじゃなくて……」
真実ならかなりの種を明かしているが
さて………
「私は単純にあなたが気に入ったのよ。 このゲーム、勝ち逃げしてみない?
…………参考までに聞くけど、このゲームで気にくわないやつを一人挙げるなら、だれ?」
【撫子】
………海月だけど…
(勝ち逃げについては答えない。安易には相手に自分を任せられないから、まだ味方になる…もとい従うとは言えなかった。
というか、気に入ったって何故なのか…)
【臨海 凪乃】
海月…… あぁ、23rdか
ああいう道化師が気に食わないなんて、貴女可愛いわね
一番脅威的でもないのよ
23rdが小物であるってわけじゃなくて
「23rdはきっと臆病な子よ
きっと誰よりも臆病な人間……。
道化を演じてるだけで、案外殺されるのが怖いのよ。
……まぁ、気に食わないのもなんとなくわかるわ」
尤も、向こうも私の腹を透かしに来ているだろうけど
ただ、愉しいなんて……虚勢なのでしょう?
ネイルで爪のお手入れをして、アロマな加湿器の電源を入れる
ここだけが殺し合いとは別で、隔離された優雅な空間
「明日、個人チャットを見ればいいわ。
海月の本名を教えてあげる。 気に食わないなら殺せばいいわ」
まぁ、その情報を信用するかは別として
「……まぁ、撫子ちゃんには無理ね。
あなたは人を殺せない人間だもの。 そうでしょう」
【撫子】
…………
(むすーっとした顔で相手の顔を見るだけだった。どこか気まずかったので渡された紅茶を一口。
いや、確かに気に食わないとは言った。だが、そこまでとは見ていない。
というより、誰であっても殺す勇気がないのだが、何よりそれを見透かしたような物言いをされるのが一番気に食わなかった。)
【臨海 凪乃】
不満そうに頬を膨らます撫子を見て微笑む
いい顔してる。 本当に貴女可愛いわね。
スプーンで、紅茶をかき混ぜながら
「殺せるの? 海月を。
無理でしょう?」
何処か彼女を試すような物言いをする。
どことなく意地悪をしたくなる。 そんな感じで
「……まぁ、海月を殺せなんて言わないわ。
殺す必要なんてないもの。
ただ、生きるためには殺す度胸は必要よ。
ここはそういう銀世界。
人を殺す事は悪ではないわ。正義でもないけれど」
そう言い終えるを喉を紅茶で潤す。
【撫子】
わかってるなら聞かないでよ…
(不機嫌そうにそう返す。わざとらしいことこの上ない質問への対応としてはまぁ当然なくらいだった。)
…………覚えておく…
(はい、と素直な返事はしなかった。殺すのは悪じゃない、なんて言われても自分の良心がそれを認めたりはしない。
ただ、同時に上手い反論も思いつかず、曖昧な返事になってしまった。)
【臨海 凪乃】
否定はしないのね
まぁ、それが道理な反応よね
いきなり殺せって言われても無理。
…………。
「貴女、一番人間人間してるわね。
まぁ、困ったらここに来なさい。私は基本ここにいるわ」
私からの話は以上
話に区切りをつけると ティータイムに戻る。
……この子、純粋すぎて心配ね。
そう思いながら。
【撫子】
人間人間してるって……?まぁいいや…何かあったらまた来る…か、個人チャットに送る。
(中の人含め初めて聞いた表現。褒められてるのか貶されてるのかも怪しい…まぁ悪くは言われてないと信じることにしたが。
なんて、色々文句ありげな態度はしているものの、困ったときは力になってくれるか、と多少の信用はしているようだった。)
みかんちゃん(2nd)-ヒガンバナ(11th)
【みかんちゃん】
ステンドグラスから差し込む光線は彩やかに乱反射して協会を照らす。
そこの最前列に座っていた。
協会に来た理由はなんてものは特になくて。
別段私の行動に理由なんてものは端からないのだけれど。
探索しようと思っていたのかもしれないけれど、それも後回し。協会まで歩いてきたらそれで疲れてしまったから。多分。
投げやりになったわけでも狂ったわけでも壊れたわけでもない
此処に来て壊れた人間は見てきたけれど、
少なくとも私は悪魔で正常だった。
とりあえずはこれからどうしようか、
なんて
せっかくだからお祈りでもしとく?
なんて
神頼みもいいところ。
【ヒガンバナ】
「…………お前さん、そう言う宗教の者だったのか?」
多少調子の戻った私は、何の気なしに教会に来ていた。
生憎と、私は仏教なので、こんな教会より寺院に行くべきなのだろうがまあ。
こうして入ってみると、懐かしい──と言っても数日ぶりだが──者に出会えた。
「調子はどうだ、蜜柑。
これが始まってからは会ってなかったな。」
【みかんちゃん】
「──やぁだ…誰かと思えばヒガンバナちゃんじゃないのぉ」
振り返って目に入る鮮烈な朱色には見覚えがあった。朱というよりその人物に見覚えがあった。
見覚えがあったから目が合って直ぐ嬉しそうに微笑むのだ。
微笑んで、ひらひら手をふって
「ふふ、私は無宗教よ。クリスマスはサンタを待つしお正月にはおせちを食べるわ。」
なんて彼女の言葉に冗談めかして小首を傾げてみせる。
【ヒガンバナ】
「ふふ、日本人らしい考え方だな。」
日本人は何でもかんでも取り入れてごちゃ混ぜにする。
そう言う私も、クリスマスも初詣もする人ではあるが。
「隣、失礼するぞ。」
蜜柑の隣に腰かけると、息を吐く。
最初は、何なんだこの男女は……なんて思ったが、こう言う状況になると、寧ろ安心できる何かがある。
彼……いや、彼女?に会えたのは、まだ本調子ではない私にとっては良かったのかもしれない。
「……変なものが、始まってしまったな。」
【みかんちゃん】
どうぞ〜と少しだけ横にズレて隣を空けると息を吐く彼女のほうを見て、眉尻を下げて笑う。
「そうね、どうしてこんなことするのかしらね。
仲間内で疑心暗鬼なんてほんと、やんなっちゃうわ。」
殺し合いと口にしなかったのはなんとなく。
嘘、なんとなくではないけれど。
殺し殺されよりも此処で怖いのは疑いや信用どうこうだと思うから。
殺し殺されは最悪起きるのが及第点。
もしかしたら彼女がそちら側かもしれないから、無闇に踏み込むようなことは口にしなかった。
【ヒガンバナ】
「……そうだな、本当に嫌な話だ。」
目の前の彼も、敵かもしれない。
そう考えなければいけないなんて、嫌な話にも程がある。
「……そうだ、お前さんもアイテム貰っただろう?
何を貰ったか教えてくれないか?」
私は……まあ、どこで使えば良いのか分からない物だったが、もしかしたらがある。
【みかんちゃん】
「貰ったわ、スタンガン。」
そう言ってポケットから取り出したのは紛れもなくスタンガン。
混沌とした共有チャットで多くが出鱈目であろうと一蹴してみても、実物が目の前にあればそれは真実であったのだと認めるには充分。
警戒する?寧ろその逆でしょう。
短絡的な人間であれば警戒するだろうが、少し賢明ならばスタンガンを使うほどのこと、荷物を奪うほどのことがあったのだと解釈するには容易なことで。
そう、解釈してもらうためにも偽ることなく隠すことなくそのアイテムを表に晒してみせた。
それから電源がついていないのを見せるように裏返して彼女に差し出した。
「あげるわ。女の子が持っていたほうがいいでしょう?」
なんて微笑みながら。
【ヒガンバナ】
「……スタンガン、か。
いや、それこそお前さんが持っていろ。
私には、これがある。」
腰に提げた刀に触り、存在を知らせる。
……斬るより速く名前を呼ばれるか、蟹座の能力を使われない限りは、私は負けぬだろう。
「……因みに、だが。
あの共有での話が本当なら、唐揚げのアイテムも持っているのか?」
そして気になったのは、彼の持っているもう一つのアイテム。
【みかんちゃん】
「そう?心配したけれど、自分で身が守れるならそれに越したことはないわ。」
受け取られることもなかったスタンガンを手持ち無沙汰にふらつかせては仕方なくポケットに直して。
「勿論それもあるわよ。けど、使う気はさらさらないし彼が使わないように預かった程度の物よ。
……彼、危ないし。」
なんて言えば18thと何かしらあったのだと臭わせるのも容易。
それでこちらは殺しもせず荷物の徴収をしたのだからそれはこちらを疑うより彼処を疑うに繋がる。
私は人を疑わないけれど、人は私を疑うから。
限りなく[信頼]を得るためには、幾らかの[疑い]の視点をずらさなくてはならない。
口で私は白です。というよりも簡単な方法。
「欲しいならあげるわ。彼の荷物物騒で持ってるだけで怖いもの。」
【ヒガンバナ】
「……唐揚げが危険、か……」
彼とも会った事はあるが。
……いや、あれは出会い方が悪かった。
あれでは危険人物は私の方になってしまう。
「人とは分からない物だな。
……もしも、持ち歩きたくないなら、私が預かろう。」
【みかんちゃん】
「──ええ、お願いするわ。」
まるでそれを待っていたとでもいうように傍らに置いていたリュックを手渡した。
端から自分のリュックは此処にはなく、あるのはからあげから奪ったリュックとスタンガンだけだったのだけれど。
何がしたいの?
──さぁ?
私の行動に理由はない。
そのリュックを渡すと立ち上がり、彼女のほうを見てまた微笑む。
「これからまた人は死ぬだろうけど、あなたは綺麗に咲いていて頂戴ね?
枯れそうになったらそのときは私が水を注いであげるから。」
【みかんちゃん】
ステンドグラスから差し込む光線は彩やかに乱反射して協会を照らす。
そこの最前列に座っていた。
協会に来た理由はなんてものは特になくて。
別段私の行動に理由なんてものは端からないのだけれど。
探索しようと思っていたのかもしれないけれど、それも後回し。協会まで歩いてきたらそれで疲れてしまったから。多分。
投げやりになったわけでも狂ったわけでも壊れたわけでもない
此処に来て壊れた人間は見てきたけれど、
少なくとも私は悪魔で正常だった。
とりあえずはこれからどうしようか、
なんて
せっかくだからお祈りでもしとく?
なんて
神頼みもいいところ。
【ヒガンバナ】
「…………お前さん、そう言う宗教の者だったのか?」
多少調子の戻った私は、何の気なしに教会に来ていた。
生憎と、私は仏教なので、こんな教会より寺院に行くべきなのだろうがまあ。
こうして入ってみると、懐かしい──と言っても数日ぶりだが──者に出会えた。
「調子はどうだ、蜜柑。
これが始まってからは会ってなかったな。」
【みかんちゃん】
「──やぁだ…誰かと思えばヒガンバナちゃんじゃないのぉ」
振り返って目に入る鮮烈な朱色には見覚えがあった。朱というよりその人物に見覚えがあった。
見覚えがあったから目が合って直ぐ嬉しそうに微笑むのだ。
微笑んで、ひらひら手をふって
「ふふ、私は無宗教よ。クリスマスはサンタを待つしお正月にはおせちを食べるわ。」
なんて彼女の言葉に冗談めかして小首を傾げてみせる。
【ヒガンバナ】
「ふふ、日本人らしい考え方だな。」
日本人は何でもかんでも取り入れてごちゃ混ぜにする。
そう言う私も、クリスマスも初詣もする人ではあるが。
「隣、失礼するぞ。」
蜜柑の隣に腰かけると、息を吐く。
最初は、何なんだこの男女は……なんて思ったが、こう言う状況になると、寧ろ安心できる何かがある。
彼……いや、彼女?に会えたのは、まだ本調子ではない私にとっては良かったのかもしれない。
「……変なものが、始まってしまったな。」
【みかんちゃん】
どうぞ〜と少しだけ横にズレて隣を空けると息を吐く彼女のほうを見て、眉尻を下げて笑う。
「そうね、どうしてこんなことするのかしらね。
仲間内で疑心暗鬼なんてほんと、やんなっちゃうわ。」
殺し合いと口にしなかったのはなんとなく。
嘘、なんとなくではないけれど。
殺し殺されよりも此処で怖いのは疑いや信用どうこうだと思うから。
殺し殺されは最悪起きるのが及第点。
もしかしたら彼女がそちら側かもしれないから、無闇に踏み込むようなことは口にしなかった。
【ヒガンバナ】
「……そうだな、本当に嫌な話だ。」
目の前の彼も、敵かもしれない。
そう考えなければいけないなんて、嫌な話にも程がある。
「……そうだ、お前さんもアイテム貰っただろう?
何を貰ったか教えてくれないか?」
私は……まあ、どこで使えば良いのか分からない物だったが、もしかしたらがある。
【みかんちゃん】
「貰ったわ、スタンガン。」
そう言ってポケットから取り出したのは紛れもなくスタンガン。
混沌とした共有チャットで多くが出鱈目であろうと一蹴してみても、実物が目の前にあればそれは真実であったのだと認めるには充分。
警戒する?寧ろその逆でしょう。
短絡的な人間であれば警戒するだろうが、少し賢明ならばスタンガンを使うほどのこと、荷物を奪うほどのことがあったのだと解釈するには容易なことで。
そう、解釈してもらうためにも偽ることなく隠すことなくそのアイテムを表に晒してみせた。
それから電源がついていないのを見せるように裏返して彼女に差し出した。
「あげるわ。女の子が持っていたほうがいいでしょう?」
なんて微笑みながら。
【ヒガンバナ】
「……スタンガン、か。
いや、それこそお前さんが持っていろ。
私には、これがある。」
腰に提げた刀に触り、存在を知らせる。
……斬るより速く名前を呼ばれるか、蟹座の能力を使われない限りは、私は負けぬだろう。
「……因みに、だが。
あの共有での話が本当なら、唐揚げのアイテムも持っているのか?」
そして気になったのは、彼の持っているもう一つのアイテム。
【みかんちゃん】
「そう?心配したけれど、自分で身が守れるならそれに越したことはないわ。」
受け取られることもなかったスタンガンを手持ち無沙汰にふらつかせては仕方なくポケットに直して。
「勿論それもあるわよ。けど、使う気はさらさらないし彼が使わないように預かった程度の物よ。
……彼、危ないし。」
なんて言えば18thと何かしらあったのだと臭わせるのも容易。
それでこちらは殺しもせず荷物の徴収をしたのだからそれはこちらを疑うより彼処を疑うに繋がる。
私は人を疑わないけれど、人は私を疑うから。
限りなく[信頼]を得るためには、幾らかの[疑い]の視点をずらさなくてはならない。
口で私は白です。というよりも簡単な方法。
「欲しいならあげるわ。彼の荷物物騒で持ってるだけで怖いもの。」
【ヒガンバナ】
「……唐揚げが危険、か……」
彼とも会った事はあるが。
……いや、あれは出会い方が悪かった。
あれでは危険人物は私の方になってしまう。
「人とは分からない物だな。
……もしも、持ち歩きたくないなら、私が預かろう。」
【みかんちゃん】
「──ええ、お願いするわ。」
まるでそれを待っていたとでもいうように傍らに置いていたリュックを手渡した。
端から自分のリュックは此処にはなく、あるのはからあげから奪ったリュックとスタンガンだけだったのだけれど。
何がしたいの?
──さぁ?
私の行動に理由はない。
そのリュックを渡すと立ち上がり、彼女のほうを見てまた微笑む。
「これからまた人は死ぬだろうけど、あなたは綺麗に咲いていて頂戴ね?
枯れそうになったらそのときは私が水を注いであげるから。」
マリア(9th)-海月(23rd)
【海月】
また、知らない場所を歩いてみる。
多分この場所…仮に雪国にしておこっか。この雪国の中心地がここらへんなら、その中でも一際目立つ建物。
「ショッピングモールであらかた衣食はそろってたけど…まさか、住もあるなんて、だよね。」
ホテルの中を探索していた。
と言っても、ボクはホテルなんて高級なところ、泊まったことないからどういった内装が普通なのかとかは分からないんだけれど、とにかく、何かないかな、と。
…でも何かあったところで、それが普通だと思っているボクには分からないかなぁ…
「…やっぱり一人で探索してると心細いよね。
あ、いや、ボクなんかが仲間なんて流石に身分が違い過ぎるし…ううん…何ていえばいいんだろう?」
【マリア】
私は、ホテルに居た。
ホテルに居て何をしていたかは、この場合問題ではない。
共有チャットなど嘘を山積みした集積場に等しいのだから、私がコンタクトを取りに来ていなくても、いても、咎められる理由があってたまるかと言うものだ。
とはいえ、私は真実を全て語る訳ではないというのは言わずもがなだし、この場合、実は本気でコンタクトを忘れたのかもしれないし、良縁結ばれた相手と、情事の後だったのかもしれないし、昼寝をしていたって良い。
だから。
少なくとも、何かしらの用事を持ち合わせて、私はホテルに居た、という事実と。それがあのピエロとの会話の後、というタイムテーブルだけが揃っていれば良い。
加えてもう一つ。
私は誰かと遭遇した。
これは必ず抑えておけ。
『…連れでも、なんでも良いんじゃないかしら。クラスメイトに身分違いがあるとは初耳だけど。』
士農工商、という言葉がある。
実際存在しなかったなんて言われてもいるが、身分違いがどうたらと聞いて、私はまずそれが浮かんだりもした。
もし彼女が江戸時代の学徒で、今訳あって主君の命により、竹千代派か国千代派かの動乱の末を決めるため、この学園を真っ二つに割っての殺人合戦の審判など務めていたりするなら、私はそれで短編小説でも書いてやるが、まさかそんな話もあるまい。
よって。
私は、この少女が多分に卑屈な人種なのだろうとだけ納得した。
だから、人畜無害だろうと声をかけたのであった。
慢心し。
警戒心もなく。
『私は9th。貴方は?』
【海月】
ただ探索をしているだけで、これほど多くの人間を見ることが出来るなんて、幸運だろうか。
…いや、その実態は同じ世界の同じクラスメイトなのだろうけれど、そもそもクラスメイトの人も良くは覚えられないボクからしたら何ら変わりのないことか。
それでも、此処に来てから、何故かクラスの人間たちの性格やら何までが、曖昧になってしまった気がするけれど。
そういう技術を首謀者が持っているのならお手上げだね、とでも思っておこう。
「あはは…手厳しいね。ボクがただキミたちと同じ立場にいるのが烏滸がましいってだけで…
ほら、ボクってこんな性格だからさ。皆とは釣り合わない、ゴミみたいな…ああ、ごめん、ごめんね。」
また。
そうやって苦笑して誤魔化すが、こういう卑屈なところはボクの取り柄なのか、それとも直すべき短所なのかはよく分からない。紙一重。
表面上は同じでも裏側の柄が何かは誰にも分からないのだから。
「9th…か。じゃあ、書式に則って、23rdって言っておこうか。
…共有チャットで見たことはあるような気がするけれど、今はそれも頼れないわけだし…初対面ってことで、いいかな。」
ボクの"名前"を聞いて来た、ということはこの人とは初対面で問題ないだろう。
それで、9thというのは見たことがあるような気がするのだけれど。
今はその情報源が混沌としている状況だし、あまり頼り過ぎも良くないもので。
【マリア】
『猿芝居はその辺にしたら?』
なんて、ことはなく。
私に言わせれば、ゴミだなんだと自分を言うような人間が、まさか真っ当に自分をそう思っている訳がない、と考えている。
何故なら。
そう思うなら、そもそも口など聞かなければ良いではないか。
ゴミは口を聞かない。
と、私は断じ。
それと同時に、直感した。
こればかりは、経験則と、勘で。
根拠を書くのが難しい、虫の知らせというようなもので。
少なくとも彼女の人間性は"これ"だけでは語れないだろうし、それ以外に腹に一物抱えていないわけがないと、私は推理した。
よって、芝居、と。
人間皆、仮面を被っているものさ、なんて、ニヒルな言動に逃げたりするのはバカバカしいが、ある程度本性を隠蔽する気持ちはわかる。大いにわかる。
それは嘘で。
私の得意分野かつ生命線だから。
だが。
何かが、致命的に違う。
嘘ではなく、偽り。
どうにも、作り物に見える。
『少なくとも、私が話す価値があると考えるのは、その"ゴミ"じゃない方で、なんだけれど。』
だが、間違うのは恥ずかしいので、ある程度、忠告や叱咤にも取れるように言葉を変え。
私は、誰何する。
【海月】
「……猿、芝居?」
何を言われたのか分からないけれど、とりあえず反響しておくことにした。
ボクとしては、芝居のつもりも、嘘のつもりも、仮面のつもりも何もない。自分がこの中で一番無価値なのは確定的に明らか、なのだから。
だからこそ、何を"芝居"だと言われたのかが分からなくて。
だから、"彼女"の次の言葉を聞いた瞬間。少し、納得した。
「……キミ、初対面、だよね?もしかして、気づいてるの?」
恐らくそう捉えるのが自然であろう発言だった。
そもそも、普通の人間に対してなら"その演技をやめたらどうだ"とでも謂うだろうし。
そうでなくても、人間に"こういった方"などという比べ方をする人を、ボクは見たことがない。
まあ、ボクが見たことがないだけで、いるのかもしれない。その場合、その人には誠心誠意で謝らなければいけないわけなのだけれど。
「…キミが気付いていると仮定して話すけれど、ボクは自分から変えることは難しいんだよね。
だから、こんなゴミな方で良かったら…なんだけど。まあ、ボクなんかとは話す価値もない、のかな…」
価値がないのは自明。
けれど、"ボク"に話す価値があるかどうかはボクには知り得ないわけで。
【マリア】
気付いてるの?
『いや、全く?』
気付いてるなんて、確かなものはもちろん無い。
単純な話し、煎じ詰めれば私は、自分を卑下するのは偽装の初歩も初歩、という考えが先んじているから、妙な疑いが生まれただけの話である。
当たったから、よかった。
私は、ひやりとしながらも、知らない、というのがブラフかのように、自信ありげに苦笑などして鼻を鳴らす。それはそれは満足げ。
『変えられないなら構わないけれど……次、一々ゴミだなんだって言ったらぶち殺すぞ。話が先に進まないじゃない?』
割と本気で。
私は、一々許可を出して話させたりだなんて保育士のような真似をする気は無い。
キャッチボールが許可制なら、何よりそれは精彩を欠くだろう。
だから、手っ取り早くぶん殴っておくか、という短絡的な姿勢を抑えておいて。
平和的に。
少なくとも非暴力主義的に。
釘を刺してから話す。
『…で。貴方の立ち位置について聞きたいわね、まずは。
貴方がこのゲームに何を考え、どうしたいのかを。』
【海月】
「ああ、ごめんごめん。つい、クセで。
キミがボクを殺したいっていうだけの釘の刺し方なら、別にそれはそれで殺してもらっても構わないんだけれど…
キミは話がしたいみたいだし、抑えておくことにするね?」
ボクも、人と対話することに許可が必要とは思わない。
けれど、正直言って、ボクは…ああ、こんな考え方をすると彼女の反感を買うんだったね。話が出来るうちは話しておいた方が彼女にとって良いだろう。
彼女の発言が本当であれ、嘘であれ。
"こうしろ""こうするな"には従う。だって、それが皆の要望なんでしょ?
「…立ち位置、かあ。ボクは皆の味方、というより、皆の敵ではいないつもりでいるからさ。
別にこのゲームに関しては、何も考えていないよ。キミたちがこのゲームに対してどう考えているかによる、といった感じかな。」
人に流される。
初対面の人にこういう話し方をすれば、こういう印象を持たれてしまうだろうか?
けれど、それでも良い。ボクはみんなに"死ね"と言われたら死ぬし、"殺せ"と言われたら殺す。
今はその対象が目の前の彼女というだけで、ボクの目の前にいる人がこころさんであればこころさんの要望は聞くし、柏木さんであれば柏木さんの要望は聞く。
その場しのぎ?
いいや、ボクの思い。
"みんな"が平和であれば、"みんな"が楽しめていれば、"みんな"が嬉しいのなら、それでボクがどうなろうと。
"みんな"じゃない人たちがどうなろうと。
「だから、ボクからどうしたいか、って言うのもないんだよね。」
【マリア】
『……気味が悪いわね。』
珍しく、腹の中の感情をそのまま言葉に出した。
みんながどうするかによる。
君のしたいようにしろ。
この言葉を、私は初めて不気味に感じたように思う。
普通の場合、ある程度の主体が
あってこそ、合わせる、となる。
極端に言ったら、生死とか、三大欲求とか。越えてはならない一線して、取るに足らない部分を人は流される。
例えば。
今日の昼食を他人に任せても。
将来の仕事まで合わせない。
だが。
このデスゲームでそれを、皆を先に守護にすることをさも当然のように口をするのだとしたら。
恥も外聞もなく。
身も蓋もなく。
こいつは――――――……
―――――預けてはならない部分すら委託している。
なら。
こいつの裏側のもう一人は?
それはきっと、危険な奴だ。
アゾートだろうと、セレスティアであろうと、狂人だろうと。
いつか必ず私の邪魔になる。
『でも、興味が無くはないわ。
私と―――――組まない?
いや、組め、って命令形で言った方が良いかしら。』
だから。
唯々諾々と言うことを聞きそうなうちに、ある程度行動を把握しておきたい。
絞り込んでおきたい。
最悪だ。
私があの兎以来初めて。
人間を、警戒している。
【海月】
あは。気味が悪い、と言われるのはいつものことで。
――でも、興味があると言われるのもいつものことで。
そういう人たちは実際は、ボクじゃなくて、”ボク”に興味を抱いていて、いつの間にか消えているわけなのだけれど。
目の前の彼女はどうだろう?ボクを見ている?
まあ、ボクみたいな人間を見ているだなんて、有り得ないとは言いたいけれど、普通の状況ならね。
「あはは…組む、かぁ。ボクからしてみれば悪くはない響きなんだけど。
それって、キミ…ひいてはキミの仲間だけに一方的に協力してほしいってことでしょ?
ボクは”みんな”の味方だから、あまりそういうのは、好きじゃない…かな。」
もし目の前の彼女にボクではない敵が現れたとき。
ボクはその人を初めて”敵”と認識しなければいけない。
そんなの嫌じゃないか。
ある二人組がいたとしよう。その二人組は極端に仲が悪く、今にも喧嘩しそうなときに、ああ偶然ボクが通りがかったとして。
ボクはその人たちを止めない。
だって、喧嘩したいのがその二人の一番喜ぶ道なんでしょう?
だったら、こんな無価値なヤツにそれを止める権利はないよね。
「…と言いたいところなんだけど。命令形でも言ってくるってことは。
何かボクが従いたくなるような動機…あるいは、脅し?っていう言い方で正しいかな?
持っているのか、勘ぐっちゃうけど。」
【マリア】
『あるわ。貴方に利のある条件。
そう!何を隠そう私は――……』
口を開く。
文脈を無視し、唐突に。
無鉄砲に。
藪から棒に。
意味ありげにもったいぶって。
大して意味の無い語をする。
『皆を守る愛の戦士☆
マジカル♡セレスティア――!』
スーツを放り投げ、魔法少女のコスプレに変身。
フリフリを死ぬほどつけた恐るべき最終決戦用装備!
そう。
私がホテルに戻ったのは、変身を一般人に見られナイタメダッタノダ!
……無論嘘である。
『ムーン・うさぴょんだぴょんっ!!』
両手でうさみみを作り、きゅるん☆と、精一杯の作り声で名乗りを上げる。
筆者もそろそろ疲れたのかもしれない。週明けの朝っぱらである。
だが。
少なくとも。
所属を(真偽はともかく一応)明かしたというのは、交渉の体裁をぎりぎり作ったのではなかろうか。
いや、無理である。
【海月】
「うん。えーと、9thさん。どうしたの?」
正直、実直に、素直に話すと。
何も理解できていなかった。
……この人は、ええと、ムーンうさぴょんさん?長いしうささんでいい…かな。勝手に略称を作ってしまうのは気が引けるけど。
ノリは置いておいて、"セレスティア"って名乗ったあたりが気になる。
彼女が本当にセレスティアなのか?という議題はいったん置いておこう。
確かにボクがセレスティアと協力するのは極論合理的だし、当然のことだろう。
みんなならそうするかもしれない。
でも、ボクは"セレスティア"の味方だけれど、"アゾート"の味方にもなるし、場合によっては"狂人"の味方にもなる。
その状況下で、陣営というカテゴリーを引き合いに出されて。
協力するか?
「…セレスティアだったとしても、かな…。キミが個人的に、"みんな"の一人としてお願いをしてくれるというなら、ボクとしては是が否でもないことなんだけれど。」
【マリア】
『略すな。』
割と本気だった。
折角の人の名乗りを略すな。
実に、不愉快だ。
まあ、セレスティアがこんな名乗りを義務付けられているはずも無い。もちろん、無い。
いや、無くはない可能性はある。
一分か。
一厘か。
可能性とは不可能を否定するためにある言葉だから、言ったもん勝ちである。
ただし、この場合。
セレスティアが、こんな名乗りを強制する面白集団ならば、私は終わった後、一目散に全滅させてやりに行くだろうから、少なくとも本部爆破くらいはしてやるだろうから、可能性はゼロだった。
その場合なら。
うさぎなんて無視して帰るぞ。
いや、もう帰ろうかな。
だが、取り敢えず機先を制した。
くっくっく、頭脳の勝ちだ。
私は、私が誰かを警戒などした、という事実の意趣返しにこんな珍妙な真似をしただけである。
顔で損をしているが。
ギャグもいけるのだ。
無論嘘である。
こんな馬鹿を理解するに値しない、と。所属についてだけ、ほかの細かいことより先に、譲歩を引き出すのが目的である。
なんて、言ってはいるが。
格好は魔法少女だ。
死にたくなってくる。
死のうかな。
『うんっ♡皆のために、皆として、お願いするんだぴょんっ☆
皆、生きて帰りたいって思うから、殺し合いになってるんだ!
だから、生きて還すのが皆の意思だって言っても大丈夫だぴょんっ。ぴょんっ……』
というわけで。
猿真似。
ならぬ兎真似で。
交渉のテーブルに、私は座ることが出来た。不服である。
【海月】
「あはは。ごめん…それで、皆の意思が、"生きて帰りたい"、か…」
彼女の必死な努力は少し置いておいて、考えよう。もし、みんな生きて帰りたかったとして。
ボクは"みんな"のうちどれくらいを生きて帰せば釣り合うのかな?
このコロシアイにはアゾートというモノがいるわけで。そいつらは少なくとも、彼女の意思を飲むなら、敵として殺さなければいけない。
セレスティアの"生きて帰す"にアゾートは含まれていない。
…みんなはどうだろう?
ああ、でも、アゾートがみんな"死にたい"と願っていたなら、ボクとしては矛盾はしない。
もしそうでなかったとしても、今目の前の彼女は"協力してほしい"と願っているわけだし。
"ボク"ならどうする?
"ボク"の意思はボクには分からないけれど。まあ、いいよね。
「…分かった。それじゃあ、キミに協力する…組むことにしておくよ。
みんなの意思らしいし、ね。」
【マリア】
『なら―――――……』
勝った。と、私は戦勝国気取りで要求を出す。
『頼みたい事は当面は二つ。』
とはいえ、二十一か条と洒落込んだりは勿論しない。
二つ。
二つ、だけである。
+ 一するなら二十一か条か。
なるほど、なら最後に足すか。
『一つ。貴方が持っているのであろう、"名前"を、私に個人メッセージで貰えるかしら。同盟らしい要求でしょう。
殺害するためではなく。
自衛と、抑止力に。』
一つめ。
まあ、妥当である。
自衛隊だって、決して武器を捨てないように。
専守防衛なら専守防衛らしく、それらしい攻撃装置は必要なのである。無いなら、ないで良いが。
『もう一つ。まあ、これに関しては、私の結果次第になるところではあるんだけれど……
――――……だから。
私が、死んだら―――――……』
こちらが、本命である。
少しばかり内密が求められるので、私は耳打ちする。
正直に話したとは限らないが。
『合言葉は、カレーグラタンと、エビドリア。良いかしら?』
これで、二 十 一。
しめて二十一か条の要求である。
こんな。別にどうでもいい言い回しが、なんとなく気に入ってしまわなければ、若しかしたら、要求も減っていたのだろうが。
または。
九十九か条まで増えたかもしれなかったりするのだろうが。
バカバカしい。
つまらない。
今更、私は冷めた。
【海月】
成程ね。それは、"ボクにとって"良い内容、かもしれない。
ああ、もちろん、ボク何かがものの存否を決めるわけがないのだから、これは"ボク"の話ということにして。
二つというのに、要求は三つ。ああ、最初に二つと言って、次に一つ足したのか。
それなら、要求をしておいて一つ撤回したら二一一条にでもなるのだろうか?なんて。
「名前の要求、ね。最もらしいけれど。ボクがキミの不本意で死んでしまう、ということも、避けたいんだけどね。
けれど、良いよ。ボクはキミのお願いを聞いている立場なのだから、否定する権利なんてボクにはない。」
そして。もう一つ。
彼女としては、"それ"を確かめることが最優先なのだろう。セレスティアとしてだろうか。
まあ、彼女の頼みを聞いているボクが、あまり深く考えることでもない。
言ってしまえば、人形。
糸と人形師がいれば成り立つだけのモノ。
「ああ、分かったよ。合言葉も。あまり多量なモノは食べられないんだけどね」
なんて。洒落でも聞かせてみたら彼女は喜んでくれるだろうか?
彼女が喜んでくれるなら、ボクは金でも洒落でも名前でも、それこそ腕でも命でも出すのだけれど。
彼女が今ボクから欲しいのは合言葉と名前だけみたいだ。
「ああ、確認。こんなところで交錯が起きてもいけないからね。
"名前"っていうのは、ボクの名前?それとも、"ボク"の名前か。本名だったりするかな。」
三種類も名前があるなんて。と言えば、四種類も五種類も名前がある人間に抗議されるだろうか。
でも、それだけあるし、それだけしかないのだから仕方ないでしょう。
海の月、なんて仮の名を撤廃すれば、一種類にはなってしまうんだけれど。
――それを除いても答えは自明か。
【マリア】
『さあなあ。』
蓮っ葉な口調で、私は答える。
話口調くらい、いくつかあっても不自然はないだろう。
何せ。
これは名前を割られたら終わりで
よって。
性別すら危うく。
さらに言ったら。
話し方なんて即死である。
だから、別に、私が唐突に男性的な口調になることもある。
嘘である。
単に私が、些細な食い違いにイラついたからであった。
言っていなかったが、私は割と口が悪かったりするのだ。
それ自体、嘘かもな。
まあ、とはいえ。
女性的、とか。
男性的、とか。
言ったは良いが、確かスウェーデンだったかでは、中性というのもあるらしい。実は、私がスウェーデン人で、北欧の、EUに所属する何千という沿岸の島々と内陸部の湖、さらに広大な北方林や氷河の山々で知られるスカンジナビアの国の住人で。(Wikipedia)
それ以外なら、元も子も無い。
元々、私という人の子すら、実は存在していないかもしれない。
まあ要するに、だ。
私がいいたいのは、他人を推理する場合は、何もかもの可能性を考えろ、という話だ。
概ね、不要な考え方だが。
『まあ、ともかく。
お前が保有するだけを支払えば良いんじゃないか…?
自分の生命線の本名も、ボク、とならの名前も。何かしらで得た他人の名前も。皆、送れば良い。
識別さえつけばな。
別に、口に出さなければお前が死んだりすることもないだろう…
いいか?
遠回りしたが。
・お前の本名
・お前の呼称
・誰かしらの本名
を要求している。』
フレンド申請をし、私は待つ。
【海月】
ただの協力体制にしては些か強引だなあ、なんて。
思ったりすることはない。
彼女がボクにお願いをして、ボクがそれを承諾したのだから、彼女の願いは何であれ全て叶えなければいけない。
なんて。
ボクみたいな価値のないヤツがそこまでの重荷を背負えるわけもないのだけれど。
けれど、要求には応えるわけで。
「"分かった"よ。キミの要求に全て答えられるかはボクの知り得るところではないけれど、努力はさせてもらうね。」
そう言って、申請を承認して。ちょっと時間を置いて情報でも渡してみれば。
彼女から何か反応でもあったりするのだろうけれど。
「…さて。キミからの要求が以上なら、ボクはもう行こうかな。
同じ場所に長居をするのは好きじゃないから。」
無論、ボクがというわけではない。いや、これはボクがなのだろうけれど。
同じ場所にいすぎて、他の人へ迷惑をかけるだなんて、ボクからしたら胸を痛めて死んでしまうような事例。
避けられるものならば避けるべきだ。"みんな"が悲しむことなど。
【マリア】
『どうぞ?
…時間を取らせたわね。
お疲れ様。貴方のことは末永く有効利用させて頂くわ。』
適当に見送り。
私は、死人の通知を見つめる。
そろそろ、やるべき事をやるか。
そんな気持ちになったりした。
流石に、何もしない暗愚ではない。アゾートが生かしてくれる可能性になんて、懸けるのがいかにバカバカしいか、知れたこと。
能動的に動くべきだ。
まあ、これ自体。
『まあ、嘘かもしれないけど。』
【海月】
また、知らない場所を歩いてみる。
多分この場所…仮に雪国にしておこっか。この雪国の中心地がここらへんなら、その中でも一際目立つ建物。
「ショッピングモールであらかた衣食はそろってたけど…まさか、住もあるなんて、だよね。」
ホテルの中を探索していた。
と言っても、ボクはホテルなんて高級なところ、泊まったことないからどういった内装が普通なのかとかは分からないんだけれど、とにかく、何かないかな、と。
…でも何かあったところで、それが普通だと思っているボクには分からないかなぁ…
「…やっぱり一人で探索してると心細いよね。
あ、いや、ボクなんかが仲間なんて流石に身分が違い過ぎるし…ううん…何ていえばいいんだろう?」
【マリア】
私は、ホテルに居た。
ホテルに居て何をしていたかは、この場合問題ではない。
共有チャットなど嘘を山積みした集積場に等しいのだから、私がコンタクトを取りに来ていなくても、いても、咎められる理由があってたまるかと言うものだ。
とはいえ、私は真実を全て語る訳ではないというのは言わずもがなだし、この場合、実は本気でコンタクトを忘れたのかもしれないし、良縁結ばれた相手と、情事の後だったのかもしれないし、昼寝をしていたって良い。
だから。
少なくとも、何かしらの用事を持ち合わせて、私はホテルに居た、という事実と。それがあのピエロとの会話の後、というタイムテーブルだけが揃っていれば良い。
加えてもう一つ。
私は誰かと遭遇した。
これは必ず抑えておけ。
『…連れでも、なんでも良いんじゃないかしら。クラスメイトに身分違いがあるとは初耳だけど。』
士農工商、という言葉がある。
実際存在しなかったなんて言われてもいるが、身分違いがどうたらと聞いて、私はまずそれが浮かんだりもした。
もし彼女が江戸時代の学徒で、今訳あって主君の命により、竹千代派か国千代派かの動乱の末を決めるため、この学園を真っ二つに割っての殺人合戦の審判など務めていたりするなら、私はそれで短編小説でも書いてやるが、まさかそんな話もあるまい。
よって。
私は、この少女が多分に卑屈な人種なのだろうとだけ納得した。
だから、人畜無害だろうと声をかけたのであった。
慢心し。
警戒心もなく。
『私は9th。貴方は?』
【海月】
ただ探索をしているだけで、これほど多くの人間を見ることが出来るなんて、幸運だろうか。
…いや、その実態は同じ世界の同じクラスメイトなのだろうけれど、そもそもクラスメイトの人も良くは覚えられないボクからしたら何ら変わりのないことか。
それでも、此処に来てから、何故かクラスの人間たちの性格やら何までが、曖昧になってしまった気がするけれど。
そういう技術を首謀者が持っているのならお手上げだね、とでも思っておこう。
「あはは…手厳しいね。ボクがただキミたちと同じ立場にいるのが烏滸がましいってだけで…
ほら、ボクってこんな性格だからさ。皆とは釣り合わない、ゴミみたいな…ああ、ごめん、ごめんね。」
また。
そうやって苦笑して誤魔化すが、こういう卑屈なところはボクの取り柄なのか、それとも直すべき短所なのかはよく分からない。紙一重。
表面上は同じでも裏側の柄が何かは誰にも分からないのだから。
「9th…か。じゃあ、書式に則って、23rdって言っておこうか。
…共有チャットで見たことはあるような気がするけれど、今はそれも頼れないわけだし…初対面ってことで、いいかな。」
ボクの"名前"を聞いて来た、ということはこの人とは初対面で問題ないだろう。
それで、9thというのは見たことがあるような気がするのだけれど。
今はその情報源が混沌としている状況だし、あまり頼り過ぎも良くないもので。
【マリア】
『猿芝居はその辺にしたら?』
なんて、ことはなく。
私に言わせれば、ゴミだなんだと自分を言うような人間が、まさか真っ当に自分をそう思っている訳がない、と考えている。
何故なら。
そう思うなら、そもそも口など聞かなければ良いではないか。
ゴミは口を聞かない。
と、私は断じ。
それと同時に、直感した。
こればかりは、経験則と、勘で。
根拠を書くのが難しい、虫の知らせというようなもので。
少なくとも彼女の人間性は"これ"だけでは語れないだろうし、それ以外に腹に一物抱えていないわけがないと、私は推理した。
よって、芝居、と。
人間皆、仮面を被っているものさ、なんて、ニヒルな言動に逃げたりするのはバカバカしいが、ある程度本性を隠蔽する気持ちはわかる。大いにわかる。
それは嘘で。
私の得意分野かつ生命線だから。
だが。
何かが、致命的に違う。
嘘ではなく、偽り。
どうにも、作り物に見える。
『少なくとも、私が話す価値があると考えるのは、その"ゴミ"じゃない方で、なんだけれど。』
だが、間違うのは恥ずかしいので、ある程度、忠告や叱咤にも取れるように言葉を変え。
私は、誰何する。
【海月】
「……猿、芝居?」
何を言われたのか分からないけれど、とりあえず反響しておくことにした。
ボクとしては、芝居のつもりも、嘘のつもりも、仮面のつもりも何もない。自分がこの中で一番無価値なのは確定的に明らか、なのだから。
だからこそ、何を"芝居"だと言われたのかが分からなくて。
だから、"彼女"の次の言葉を聞いた瞬間。少し、納得した。
「……キミ、初対面、だよね?もしかして、気づいてるの?」
恐らくそう捉えるのが自然であろう発言だった。
そもそも、普通の人間に対してなら"その演技をやめたらどうだ"とでも謂うだろうし。
そうでなくても、人間に"こういった方"などという比べ方をする人を、ボクは見たことがない。
まあ、ボクが見たことがないだけで、いるのかもしれない。その場合、その人には誠心誠意で謝らなければいけないわけなのだけれど。
「…キミが気付いていると仮定して話すけれど、ボクは自分から変えることは難しいんだよね。
だから、こんなゴミな方で良かったら…なんだけど。まあ、ボクなんかとは話す価値もない、のかな…」
価値がないのは自明。
けれど、"ボク"に話す価値があるかどうかはボクには知り得ないわけで。
【マリア】
気付いてるの?
『いや、全く?』
気付いてるなんて、確かなものはもちろん無い。
単純な話し、煎じ詰めれば私は、自分を卑下するのは偽装の初歩も初歩、という考えが先んじているから、妙な疑いが生まれただけの話である。
当たったから、よかった。
私は、ひやりとしながらも、知らない、というのがブラフかのように、自信ありげに苦笑などして鼻を鳴らす。それはそれは満足げ。
『変えられないなら構わないけれど……次、一々ゴミだなんだって言ったらぶち殺すぞ。話が先に進まないじゃない?』
割と本気で。
私は、一々許可を出して話させたりだなんて保育士のような真似をする気は無い。
キャッチボールが許可制なら、何よりそれは精彩を欠くだろう。
だから、手っ取り早くぶん殴っておくか、という短絡的な姿勢を抑えておいて。
平和的に。
少なくとも非暴力主義的に。
釘を刺してから話す。
『…で。貴方の立ち位置について聞きたいわね、まずは。
貴方がこのゲームに何を考え、どうしたいのかを。』
【海月】
「ああ、ごめんごめん。つい、クセで。
キミがボクを殺したいっていうだけの釘の刺し方なら、別にそれはそれで殺してもらっても構わないんだけれど…
キミは話がしたいみたいだし、抑えておくことにするね?」
ボクも、人と対話することに許可が必要とは思わない。
けれど、正直言って、ボクは…ああ、こんな考え方をすると彼女の反感を買うんだったね。話が出来るうちは話しておいた方が彼女にとって良いだろう。
彼女の発言が本当であれ、嘘であれ。
"こうしろ""こうするな"には従う。だって、それが皆の要望なんでしょ?
「…立ち位置、かあ。ボクは皆の味方、というより、皆の敵ではいないつもりでいるからさ。
別にこのゲームに関しては、何も考えていないよ。キミたちがこのゲームに対してどう考えているかによる、といった感じかな。」
人に流される。
初対面の人にこういう話し方をすれば、こういう印象を持たれてしまうだろうか?
けれど、それでも良い。ボクはみんなに"死ね"と言われたら死ぬし、"殺せ"と言われたら殺す。
今はその対象が目の前の彼女というだけで、ボクの目の前にいる人がこころさんであればこころさんの要望は聞くし、柏木さんであれば柏木さんの要望は聞く。
その場しのぎ?
いいや、ボクの思い。
"みんな"が平和であれば、"みんな"が楽しめていれば、"みんな"が嬉しいのなら、それでボクがどうなろうと。
"みんな"じゃない人たちがどうなろうと。
「だから、ボクからどうしたいか、って言うのもないんだよね。」
【マリア】
『……気味が悪いわね。』
珍しく、腹の中の感情をそのまま言葉に出した。
みんながどうするかによる。
君のしたいようにしろ。
この言葉を、私は初めて不気味に感じたように思う。
普通の場合、ある程度の主体が
あってこそ、合わせる、となる。
極端に言ったら、生死とか、三大欲求とか。越えてはならない一線して、取るに足らない部分を人は流される。
例えば。
今日の昼食を他人に任せても。
将来の仕事まで合わせない。
だが。
このデスゲームでそれを、皆を先に守護にすることをさも当然のように口をするのだとしたら。
恥も外聞もなく。
身も蓋もなく。
こいつは――――――……
―――――預けてはならない部分すら委託している。
なら。
こいつの裏側のもう一人は?
それはきっと、危険な奴だ。
アゾートだろうと、セレスティアであろうと、狂人だろうと。
いつか必ず私の邪魔になる。
『でも、興味が無くはないわ。
私と―――――組まない?
いや、組め、って命令形で言った方が良いかしら。』
だから。
唯々諾々と言うことを聞きそうなうちに、ある程度行動を把握しておきたい。
絞り込んでおきたい。
最悪だ。
私があの兎以来初めて。
人間を、警戒している。
【海月】
あは。気味が悪い、と言われるのはいつものことで。
――でも、興味があると言われるのもいつものことで。
そういう人たちは実際は、ボクじゃなくて、”ボク”に興味を抱いていて、いつの間にか消えているわけなのだけれど。
目の前の彼女はどうだろう?ボクを見ている?
まあ、ボクみたいな人間を見ているだなんて、有り得ないとは言いたいけれど、普通の状況ならね。
「あはは…組む、かぁ。ボクからしてみれば悪くはない響きなんだけど。
それって、キミ…ひいてはキミの仲間だけに一方的に協力してほしいってことでしょ?
ボクは”みんな”の味方だから、あまりそういうのは、好きじゃない…かな。」
もし目の前の彼女にボクではない敵が現れたとき。
ボクはその人を初めて”敵”と認識しなければいけない。
そんなの嫌じゃないか。
ある二人組がいたとしよう。その二人組は極端に仲が悪く、今にも喧嘩しそうなときに、ああ偶然ボクが通りがかったとして。
ボクはその人たちを止めない。
だって、喧嘩したいのがその二人の一番喜ぶ道なんでしょう?
だったら、こんな無価値なヤツにそれを止める権利はないよね。
「…と言いたいところなんだけど。命令形でも言ってくるってことは。
何かボクが従いたくなるような動機…あるいは、脅し?っていう言い方で正しいかな?
持っているのか、勘ぐっちゃうけど。」
【マリア】
『あるわ。貴方に利のある条件。
そう!何を隠そう私は――……』
口を開く。
文脈を無視し、唐突に。
無鉄砲に。
藪から棒に。
意味ありげにもったいぶって。
大して意味の無い語をする。
『皆を守る愛の戦士☆
マジカル♡セレスティア――!』
スーツを放り投げ、魔法少女のコスプレに変身。
フリフリを死ぬほどつけた恐るべき最終決戦用装備!
そう。
私がホテルに戻ったのは、変身を一般人に見られナイタメダッタノダ!
……無論嘘である。
『ムーン・うさぴょんだぴょんっ!!』
両手でうさみみを作り、きゅるん☆と、精一杯の作り声で名乗りを上げる。
筆者もそろそろ疲れたのかもしれない。週明けの朝っぱらである。
だが。
少なくとも。
所属を(真偽はともかく一応)明かしたというのは、交渉の体裁をぎりぎり作ったのではなかろうか。
いや、無理である。
【海月】
「うん。えーと、9thさん。どうしたの?」
正直、実直に、素直に話すと。
何も理解できていなかった。
……この人は、ええと、ムーンうさぴょんさん?長いしうささんでいい…かな。勝手に略称を作ってしまうのは気が引けるけど。
ノリは置いておいて、"セレスティア"って名乗ったあたりが気になる。
彼女が本当にセレスティアなのか?という議題はいったん置いておこう。
確かにボクがセレスティアと協力するのは極論合理的だし、当然のことだろう。
みんなならそうするかもしれない。
でも、ボクは"セレスティア"の味方だけれど、"アゾート"の味方にもなるし、場合によっては"狂人"の味方にもなる。
その状況下で、陣営というカテゴリーを引き合いに出されて。
協力するか?
「…セレスティアだったとしても、かな…。キミが個人的に、"みんな"の一人としてお願いをしてくれるというなら、ボクとしては是が否でもないことなんだけれど。」
【マリア】
『略すな。』
割と本気だった。
折角の人の名乗りを略すな。
実に、不愉快だ。
まあ、セレスティアがこんな名乗りを義務付けられているはずも無い。もちろん、無い。
いや、無くはない可能性はある。
一分か。
一厘か。
可能性とは不可能を否定するためにある言葉だから、言ったもん勝ちである。
ただし、この場合。
セレスティアが、こんな名乗りを強制する面白集団ならば、私は終わった後、一目散に全滅させてやりに行くだろうから、少なくとも本部爆破くらいはしてやるだろうから、可能性はゼロだった。
その場合なら。
うさぎなんて無視して帰るぞ。
いや、もう帰ろうかな。
だが、取り敢えず機先を制した。
くっくっく、頭脳の勝ちだ。
私は、私が誰かを警戒などした、という事実の意趣返しにこんな珍妙な真似をしただけである。
顔で損をしているが。
ギャグもいけるのだ。
無論嘘である。
こんな馬鹿を理解するに値しない、と。所属についてだけ、ほかの細かいことより先に、譲歩を引き出すのが目的である。
なんて、言ってはいるが。
格好は魔法少女だ。
死にたくなってくる。
死のうかな。
『うんっ♡皆のために、皆として、お願いするんだぴょんっ☆
皆、生きて帰りたいって思うから、殺し合いになってるんだ!
だから、生きて還すのが皆の意思だって言っても大丈夫だぴょんっ。ぴょんっ……』
というわけで。
猿真似。
ならぬ兎真似で。
交渉のテーブルに、私は座ることが出来た。不服である。
【海月】
「あはは。ごめん…それで、皆の意思が、"生きて帰りたい"、か…」
彼女の必死な努力は少し置いておいて、考えよう。もし、みんな生きて帰りたかったとして。
ボクは"みんな"のうちどれくらいを生きて帰せば釣り合うのかな?
このコロシアイにはアゾートというモノがいるわけで。そいつらは少なくとも、彼女の意思を飲むなら、敵として殺さなければいけない。
セレスティアの"生きて帰す"にアゾートは含まれていない。
…みんなはどうだろう?
ああ、でも、アゾートがみんな"死にたい"と願っていたなら、ボクとしては矛盾はしない。
もしそうでなかったとしても、今目の前の彼女は"協力してほしい"と願っているわけだし。
"ボク"ならどうする?
"ボク"の意思はボクには分からないけれど。まあ、いいよね。
「…分かった。それじゃあ、キミに協力する…組むことにしておくよ。
みんなの意思らしいし、ね。」
【マリア】
『なら―――――……』
勝った。と、私は戦勝国気取りで要求を出す。
『頼みたい事は当面は二つ。』
とはいえ、二十一か条と洒落込んだりは勿論しない。
二つ。
二つ、だけである。
+ 一するなら二十一か条か。
なるほど、なら最後に足すか。
『一つ。貴方が持っているのであろう、"名前"を、私に個人メッセージで貰えるかしら。同盟らしい要求でしょう。
殺害するためではなく。
自衛と、抑止力に。』
一つめ。
まあ、妥当である。
自衛隊だって、決して武器を捨てないように。
専守防衛なら専守防衛らしく、それらしい攻撃装置は必要なのである。無いなら、ないで良いが。
『もう一つ。まあ、これに関しては、私の結果次第になるところではあるんだけれど……
――――……だから。
私が、死んだら―――――……』
こちらが、本命である。
少しばかり内密が求められるので、私は耳打ちする。
正直に話したとは限らないが。
『合言葉は、カレーグラタンと、エビドリア。良いかしら?』
これで、二 十 一。
しめて二十一か条の要求である。
こんな。別にどうでもいい言い回しが、なんとなく気に入ってしまわなければ、若しかしたら、要求も減っていたのだろうが。
または。
九十九か条まで増えたかもしれなかったりするのだろうが。
バカバカしい。
つまらない。
今更、私は冷めた。
【海月】
成程ね。それは、"ボクにとって"良い内容、かもしれない。
ああ、もちろん、ボク何かがものの存否を決めるわけがないのだから、これは"ボク"の話ということにして。
二つというのに、要求は三つ。ああ、最初に二つと言って、次に一つ足したのか。
それなら、要求をしておいて一つ撤回したら二一一条にでもなるのだろうか?なんて。
「名前の要求、ね。最もらしいけれど。ボクがキミの不本意で死んでしまう、ということも、避けたいんだけどね。
けれど、良いよ。ボクはキミのお願いを聞いている立場なのだから、否定する権利なんてボクにはない。」
そして。もう一つ。
彼女としては、"それ"を確かめることが最優先なのだろう。セレスティアとしてだろうか。
まあ、彼女の頼みを聞いているボクが、あまり深く考えることでもない。
言ってしまえば、人形。
糸と人形師がいれば成り立つだけのモノ。
「ああ、分かったよ。合言葉も。あまり多量なモノは食べられないんだけどね」
なんて。洒落でも聞かせてみたら彼女は喜んでくれるだろうか?
彼女が喜んでくれるなら、ボクは金でも洒落でも名前でも、それこそ腕でも命でも出すのだけれど。
彼女が今ボクから欲しいのは合言葉と名前だけみたいだ。
「ああ、確認。こんなところで交錯が起きてもいけないからね。
"名前"っていうのは、ボクの名前?それとも、"ボク"の名前か。本名だったりするかな。」
三種類も名前があるなんて。と言えば、四種類も五種類も名前がある人間に抗議されるだろうか。
でも、それだけあるし、それだけしかないのだから仕方ないでしょう。
海の月、なんて仮の名を撤廃すれば、一種類にはなってしまうんだけれど。
――それを除いても答えは自明か。
【マリア】
『さあなあ。』
蓮っ葉な口調で、私は答える。
話口調くらい、いくつかあっても不自然はないだろう。
何せ。
これは名前を割られたら終わりで
よって。
性別すら危うく。
さらに言ったら。
話し方なんて即死である。
だから、別に、私が唐突に男性的な口調になることもある。
嘘である。
単に私が、些細な食い違いにイラついたからであった。
言っていなかったが、私は割と口が悪かったりするのだ。
それ自体、嘘かもな。
まあ、とはいえ。
女性的、とか。
男性的、とか。
言ったは良いが、確かスウェーデンだったかでは、中性というのもあるらしい。実は、私がスウェーデン人で、北欧の、EUに所属する何千という沿岸の島々と内陸部の湖、さらに広大な北方林や氷河の山々で知られるスカンジナビアの国の住人で。(Wikipedia)
それ以外なら、元も子も無い。
元々、私という人の子すら、実は存在していないかもしれない。
まあ要するに、だ。
私がいいたいのは、他人を推理する場合は、何もかもの可能性を考えろ、という話だ。
概ね、不要な考え方だが。
『まあ、ともかく。
お前が保有するだけを支払えば良いんじゃないか…?
自分の生命線の本名も、ボク、とならの名前も。何かしらで得た他人の名前も。皆、送れば良い。
識別さえつけばな。
別に、口に出さなければお前が死んだりすることもないだろう…
いいか?
遠回りしたが。
・お前の本名
・お前の呼称
・誰かしらの本名
を要求している。』
フレンド申請をし、私は待つ。
【海月】
ただの協力体制にしては些か強引だなあ、なんて。
思ったりすることはない。
彼女がボクにお願いをして、ボクがそれを承諾したのだから、彼女の願いは何であれ全て叶えなければいけない。
なんて。
ボクみたいな価値のないヤツがそこまでの重荷を背負えるわけもないのだけれど。
けれど、要求には応えるわけで。
「"分かった"よ。キミの要求に全て答えられるかはボクの知り得るところではないけれど、努力はさせてもらうね。」
そう言って、申請を承認して。ちょっと時間を置いて情報でも渡してみれば。
彼女から何か反応でもあったりするのだろうけれど。
「…さて。キミからの要求が以上なら、ボクはもう行こうかな。
同じ場所に長居をするのは好きじゃないから。」
無論、ボクがというわけではない。いや、これはボクがなのだろうけれど。
同じ場所にいすぎて、他の人へ迷惑をかけるだなんて、ボクからしたら胸を痛めて死んでしまうような事例。
避けられるものならば避けるべきだ。"みんな"が悲しむことなど。
【マリア】
『どうぞ?
…時間を取らせたわね。
お疲れ様。貴方のことは末永く有効利用させて頂くわ。』
適当に見送り。
私は、死人の通知を見つめる。
そろそろ、やるべき事をやるか。
そんな気持ちになったりした。
流石に、何もしない暗愚ではない。アゾートが生かしてくれる可能性になんて、懸けるのがいかにバカバカしいか、知れたこと。
能動的に動くべきだ。
まあ、これ自体。
『まあ、嘘かもしれないけど。』
ペペロンチーノ(15th)-ミライ(16th)
【ペペロンチーノ】
《西エリア 廃工場》
撫子と別れた後、本来の目的地であった廃工場に足を運んでいた。とうとう、ゲームが始まってしまったので、廃工場にあるであろう廃材等を拾って武器にでもしようかと思ったのだ。因みにここに来るまでに3日ほどかかっているが、中央エリアで食料を調達したり、南エリアを迂回して通っていたりしたためである。
廃工場内は廃れていたが、全面修理すれば使えないレベルではなかった。だが、それ以上に“人”が居たと思われる真新しい痕跡が幾つもある方が気になった。皆考えることは一緒なのか。だが、鉄パイプ一本でも、自衛には少し過剰すぎる。だから、殺し合いの道具を探すならここがベストだろう。
「?????」
無言で廃工場内を探索する。どうやら、複数人の人間が入ったようだ。荒らされ方、というか探索の仕方や痕跡の残り具合がバラバラなのだ。徒党を組んで探索した訳ではなさそうだ。
【ミライ】
西エリアの廃工場。物好きでもなければ来ないような場所に、派手なピンク髪の女が一人。スキーウェアに上下を包み、両手をポケットに突っ込んだまま辺りをしきりに観察していた。
(壁に穴が目立つ、屋根も崩れそう。ひらけた空間も多い……これは拠点にするには不向きだな)
女といえば、新たな根城とできる場所を探していた。現在寝泊まりしている山小屋も良いが、いささか狭いうえに立地が悪かった。
だが??この廃工場はナシだな??という結論が出るや、目的は物色にシフトした。
女は、ペペロンチーノがいる事には気づかなかった。理由としては、人の気配よりも周りの痕跡の方に興味を惹かれたからであった。先客の痕跡(それも直近のものではない)に、どんな人物が来たかを想像していたからである。女は近くで見ようと一歩踏み出した瞬間に、足元にあった瓶の破片を踏み壊してしまう。
バキッと大きい音と共に破片は割れ、その音はやけに反響した。この音はペペロンチーノにも届くだろうが、二人の位置は目視できないくらいには離れている(だろう)ので気配に気付くくらいだろう。
【ペペロンチーノ】
「???、やはり誰かいるのか?」
物音を聞いてもさして驚いた反応は見せなかった。ここに来た時点で既に自分以外の参加者がいるだろうという予想をしていたからだ。いや、予想と言うよりは、いると思って入った方が緊急事態でも冷静に対処できると考えただけだが。しかし、個人的には誰もいない方が良かった。見境無しに襲いかかって来ないとも限らないし。
音のした方へと特になんの警戒もなく近づいていく。仮に、音を立てた者が自分に敵意を抱いているとしたら、どう近づこうが問答無用で襲いかかって来るだろう。なら、真正面からぶつかる方が選択肢の幅は広がる。駄目ならまたその時に考えればよい。
「おい、誰かいるのか?」
音のした方にそう声をかける。因みにミライのいる場所は遮蔽物のせいで目視できない。回り込めば目視することが可能だろう。彼は壁の向こう側にいる人物が何者なのか分からないため、取り敢えず出方を伺っているという所か。
【ミライ】
『おい、誰かいるのか?』という声が聞こえて来た時、女は心底驚愕した。とっさにポケットの中の獲物を掴んだが、聞こえるのは声だけで姿が見えないとわかると、掴む力は緩んだ。
(声に…応えるべきか?)(だが敵意ある存在かもしれないぞ?)(敵意ある奴が自分から存在をバラすか?)(自分も返答するべきか?しない方がいいのでは)(だが反応しなかった場合どうなる?敵対するかも)
こういった様々な考えがぐるぐると巡って、逃げるという選択肢も一度浮かんだ後。“応えるべきだろう”という結論に思考が落ち着いた。
「??あぁ!こっちに敵意はない!」
口頭で言ったところでどれだけの信憑性があるだろうか。事実、女は警戒態勢であったし、いつでも対応できるような姿勢でもって辺りを観察していた
【ペペロンチーノ】
「??そうか」
返ってきた声を聞いて一瞬訝しげな表情をする。何故なら、彼の想像していた答えと異なっていたからである。普通ならまず最初に声をかけてきた彼を警戒するような言葉を発するだろう。しかし、声の主は敵ではない事を伝えるという予想外な返事だったので、少し驚いた。
「何をしていたんだ?自衛用の武器探しか?」
先の相手の言葉を何らかの意図があると考え、更に質問を重ねる。これで素直に答えたならば、少し警戒しなければならない。というのも、彼はミライの言葉には何らかの意図があると判断しているため、ここで再び予想外な返答が来たら罠や攻撃を警戒する。スナイパーが兵士の足を撃ち抜いて、その兵士の叫び声で集まってきた他の兵士を抹殺するのと同じ。音や物で対象をおびき寄せる策は無数にあるのだから。
【ミライ】
女——ミライと言った——は、ここで素直に答えるのは得策ではないように思えた。武器探しなんて白状してしまえば訝しむだろうし、何より今後敵対しますよと言っているようなもの。たとえ自衛用とはいえ、武器を探している人間に好意的な感想を抱くだろうか?否、それはないだろう。
なにより武器探しをしている=武器をもっていない=無防備と取られてもおかしくはない。敵対されたらコトだ。誰だって死にたくはないだろう。死にたくないならば、敵対は避けなければならない。
「あぁ〜……いや!」
「寝床探しサ!」「まァここはずいぶん“アウトドア向き”だけどね!」
いくらか会話を交わした相手は、ミライの発するものが女声であることに気づくかもしれない。女バレするだろうことはミライにとって考えが及ばなかったことだけに、これはある意味不注意でもあった。
【ペペロンチーノ】
「まぁそうだな。こんな所じゃ、真っ先に狙われるだろうな」
少し苦しい言い訳だな、とか思いつつ、壁の向こう側にいる彼女が応えをぼやかした理由について考えてみる。人が嘘をつく時は大抵なにか別のことを隠したい時だ。真実の隠蔽、要するに武器を探していたのだろう。こんな所にいる時点で大体想像はつくのだが、先ほどの彼女の返答で確信が持てた。争奪戦にならないように、穏便にことを運ばなければならない。
「俺は他の参加者を探していたんだ。ゲームが始まったが、情報が殆ど無くてな。それで他の参加者に聞こうとしてた」
もっともらしいことを言いながら、ゆっくりと壁の方へと近づいていく。と言っても、足音は聞こえるため近づいて来ているのは分かるだろう。壁の手前まで来ると壁の端の方に注意を向けて相手の反応を待った。
【ミライ】
(もっともらしい…けど、どうだかな)
現実味がないにしろ“殺し合い”が始まってるような状況だぞ?殺されるかもしれないのに人探しとは——よほどの手練れか、不用心者の二択にひとつ。
不用心者ならどれほどいいか。だが最悪のケースを考えるなら、ヘタな手を打てば自分の墓を掘る結果になるだろう。足音を聞き取ったミライは、左右から出るのは悪手と思って、ゆっくりと壁の射線上に後退する。くれぐれも足元には気をつけながら、視線は壁の端からできるだけ外さない。
(足音を殺せるか否かは4:6の確率)
*ダイスロール*
1〜10→音を立ててしまう
10〜20→音を殺せる
結果〔1〕→音をたててしまった!
【ペペロンチーノ】
後ずさるような音が壁の向こう側から聞こえた。逃げようとしているのか或いは────
なんにせよ、下手に動くのは悪手であろう。だが彼はその音を聞いても殆ど動じず、普通に壁を迂回してとうとう彼女の下まで辿り着いた。こちらに敵意はないし、向こう側に敵意が無いことは先ほどの行動で分かった。ならば何も起きないだろうという安直な考えである。まるで同じオタクだから仲良くできるでしょと、言うぐらいの暴論。まぁ、ここでアクションを起こすような相手ならとっくの昔に彼の命は失われているだろう。
「まぁ、そう警戒するな。さっき言っただろう?情報集めのために人を探してるって。ここでお前と争ってもなんのメリットも無いんだ」
これは彼だけでなく、彼女にも同じ事が言えるだろう。つまり、武器の奪い合いを避けようとしているのだ。ただ双方が傷を負うだけでなく、その痕跡から他の参加者に追跡されたり情報を教えることになるかもしれない。それはなんとしても避けるべきだ。
【ミライ】
「………………わかった。信じよう」
姿を現したペペロンチーノの言葉に警戒を緩める。両手をポケットに突っ込み、姿勢を少し崩した。メリットを考えるなら、彼の言い分に一理ある。情報交換で済むより最上はない。武器の取り合いや争いは避けるべきだし、相手も同じ思考であれば尚のこと無意味だ。
「アンタ、名前は?」
女はミライと名乗って、ペペロンチーノに今自分が“丸腰”であると伝えた(それが嘘か否かは彼女にしか分からないが)。ミライは場所を移そうと提案して、数メートル先にあるひらけた場所を指差した
【ペペロンチーノ】
「俺はペペロンチーノだ。まぁ名前なんてどうでもいい。好きに呼んでくれ」
彼女の指さした方向へと歩きながらそう答える。無防備⋯確かに、武器を探しに来たのならそうであろう(もっと性能の良い武器を探しているという可能性もあるが)。しかし、そうか、と頷きながら内心では彼女のポケットを注視していた。ポケットに入る程度の武装ではそれほどの殺傷力は無い───しかし、武器というのは大きくて殺傷力が高ければいいというものではない。例えば、アーサー王が使用したとされる聖剣エクスカリバー。強大な力を持つが、一点物で替えがきくものではない。壊したり、失くしたり、奪われたりしたらアウトだ。少し極端な例であったが、もっと身近なレベルに例えるなら、ペーパーナイフに毛が生えた程度の、2、3回使ったら折れてしまうナイフより、100円ショップで売っている包丁の方が切れ味が良く長持ちする場合もある。また、武器というものはわかりやすい“攻撃性”である。日本刀を提げた者に近づこうとは思わないのと同義。一目で武器とわかるものは使わないのが吉だ。
だから、武器というものは使いやすく、バレにくく、量産できるものがよい。それを踏まえた上で、ポケットに入る程度の武装とは、ある観点で見れば最高の武器と言えるだろう。
「さて、早速本題に入ろう。まず、お前がこれまでに会った参加者について教えてくれないか?」
【ミライ】
「…それを教えてもいいケド—— 」
「そっちもちゃんと情報を出してくれるンだろうねェ?」
失笑するような口調で片眉を上げてみせる。少し訝しむような言い分だが、その冗談めかした様子で本気で疑っているわけでは無いのが伝わってくる。
ひらけた場所に着いたミライは、近くの柱に寄りかかる。依然ポケットに手は突っ込んだまま、ペペロンチーノを一瞥する。まるで見極めるかのような視線を送りながら、今まで会ったクラスメイト(あくまでそれと思わしき、だが)の名前を挙げていく。
「そうだなァ…」
「ピエロ…唐揚げ…ヒガンバナ———今ンところ、名前でピンとくる奴はいるかナ?」
名前を挙げたのは会ったクラスメイトの中でも大丈夫そうな者だけだった。曲がりなりにも他人の名前を言う上で、挙げるのは極力危険に対策できるであろう人物だけに絞った。
対してミライが求めた情報提供は、
⦅アンタの会ったクラスメイトのゾディアック一つ⦆であった。ペペロンチーノの求めた情報に対して対価が大きく感じるが、これは彼に鎌を掛ける意味合いもあった
【ペペロンチーノ】
「その3人の名前には心当たりがないな⋯俺が会ったのは───」
と、今まで会った3人の参加者の名前を挙げていく。一人だけ名前の分からない少女がいるが、適当に答えておいた。
「ゾディアック⋯か。些か対価が大きすぎる気がするんだが?」
彼が今まで会った中で、ゾディアックの情報を漏らした者はいない。ここでハッタリをかまして、彼女が彼が適当に答えた者のゾディアックを知っていたのなら、信用度は一気に下がる。彼女が挙げた名前は3人だけだったが、それだけではないことくらい読み取れた。恐らくだが海月と撫子辺りと対峙している筈だ。海月は共有チャットの情報から察するに、色んなところに首を突っ込んでいる。彼女と会っている可能性も高い。撫子は人が集まりやすい中央エリアのホテルに居たからというなんの根拠もない勘のようなものだ。しかし、可能性としては絶対に無いとは言い切れない。
「そうだな⋯ゾディアックの“情報”が聞きたいなら、俺からもう一つ質問させてくれ。お前が今まで会った中で平気で人を殺しそうな奴は何人くらいいた?」
【ミライ】
ゾディアックの情報を簡単には引き出せないと知り、これは一筋縄にはいかないだろうなと察した。そう思いながら、ひょうひょうと何かふざけた様子で口を開いた
「ン〜…そうだなァ」
「“臭う”やつは何人かいたネ。それも結構躊躇なさそうなのが?」
ミライの言い分の半分は嘘であり、半分は本当であった。“臭う”——いざと言うとき、決意を持って人を殺しそうな——人物には心当たりがあったし、実際ヒガンバナや唐揚げなどからはその気配を感じた。
しかしミライは、その数を盛ってペペロンチーノに伝えていた。その理由は、【人は情報が安全であればあるほど信憑性を薄く感じる】という彼女自身の持論から来ていた
「これで見合うかな?ゾディアックの情報にサ」
【ペペロンチーノ】
「ふむ、そうだな⋯」
嘘の情報を流すとしても、相手は選ばなければならない。自分の会ったことのある人物で、かつ、彼女がゾディアックを知らない人物。安全策を取るならスキー場で会った少女なのだが、名前も知らない相手のゾディアックの情報だけ知っているというのは不自然だ。海月は論外、リスクが高すぎる。なら────
「撫子⋯といったか。そいつのゾディアックは人の生き死に関わるものらしい。これ以上の情報は持ってない」
博打ではある。最初から知らない、情報を持っていないというのは簡単だが、その言葉一つで彼の有利性は消え、この場における順位は最下位まで下がるだろう。ここだけは、なんとしても凌ぎきらねばならなかった。
【ミライ】
「…………………なるほど」
と、それだけをポツリを呟いてミライは黙った。この情報の信憑性について、彼女はしばらく考えていた。
というのも、この質問をした時から相手の出す情報に信憑性があるとは思っていなかったし、それを承知で質問した節もあった。ゾディアックの内容なんて誰でも隠したがるだろうし、それを知っているのは随分親しくないとダメだろう。
(———この男…ボロネーゼだったか?が撫子さんの名前を出したのには正直驚いた。自分が会ったことのある人物で、それも名前を挙げなかったものをズバリ言われるとは。偶然も偶然だな)
(例えこのカルボナーラが撫子さんと知り合いでも、自分が知り合いと悟られるのは……何か不味い気がする。半分は完全な勘だが、敵に回られた時に撫子さんを巻き込む形になると後ろめたいってのもある)
「……その撫子って人とはどういう関係なんだい?」「ゾディアックの情報を知ってるなんて、ズイブン親しいんじゃないのサ」
あくまで自分は撫子を知らない人ですよ、といつた振る舞いに徹する。肘で小突くように茶化す言い回しでペペロンチーノに言葉を返すと、思い出したように尋ねる
「そういえば、アンタはアイテムって貰ったかい」
ゲーム開始と共にいつのまにか入っていた例のアイテム。全員に渡ったものなのか確認したいのサ、と付け加えて
【ペペロンチーノ】
「親しいわけではないんだがな。人は“そういう”状況に追い詰められた時に、ポロッと情報を零してしまうこともあるということだな」
端的に言うと、脅して情報を吐かせたと言っている。ストレートに表現してしまうと、かなりの警戒心を抱くだろう。最悪の場合、戦闘になるかもしれない。だからわざわざ遠回しな言い方をしたのだ。と言っても、受け取り方次第では普通に警戒されるだろう。つまり彼は“警戒されても問題がない”ということを相手に誇示するために敢えて下手な言い回しを用いたのだ。
「アイテム⋯?あぁ、アレのことか。貰ったぞ。役に立ちそうにはないが」
勿論彼もアイテムを受け取っている。だが、とてもじゃないが役に立つとは思えなかった。彼自身がそういった類のものを嫌っているから、とも言える。どうせなら即戦力になるような物が欲しかった。
【ミライ】
「…………それは結構なコトで」
ずいぶんな言い方だな、と思いながら思考を巡らせる。まるで拷問でもしたみたいな言い方だが、ここまで周到な奴がいまさら墓穴を掘るとは考えづらい。ブラフとも考えられる。まぁどういう意図のかまでは図れないけれど、挑発が目的にしても乗らぬが吉だろう。
「ビミョーなの引いちゃったかナ?」「私もあんまり“良い”とは言えないんだけどねェ、交渉のカード程度にはなるだろうと踏んでてネ」
良いモン引いた奴と交換でもしたいのだヨ、そう呟いてみせる。他愛もない話だが、彼女の言葉に偽りはなかった
【ペペロンチーノ】
「まぁ、こんなろくでもないゲームを考えついて開催できるような奴が、便利な道具なんて与えるわけがないがな」
吐き捨てるように言うと、先ほどの危険な表情とは打って変わって屈託のない笑みを浮かべる。ただ単に変わり身が早いだけではない。何らかのスイッチがあるのだろう。
彼女の「いい道具を持ってる奴と交換したい」という言葉に同意しながら何気なく辺りを見回した。金属片や埃、蜘蛛の巣で埋め尽くされた廃工場は、その密閉された天井のせいで真昼だというのに夜のように暗かった。当初の目的は果たせそうにない。とはいえ、このまま目の前の胡散臭い彼女と話し続ける訳にもいかない。ここらで切り上げた方が良さそうだ。
「⋯⋯おっと、少し長居しすぎたな。こんな所、早急に立ち去りたかったのだが⋯まぁ仕方ない。俺は行くぞ。俺の目的は果たせたからな。じゃ、お前も“気をつけろよ”」
それだけ言うと彼女に背を向けてゆっくりと出口の方に向かって歩き出す。かなり無防備な格好だが、この状況で彼に刃を向けることは流石にしないだろう。もしそれができるのであれば、とうの昔に彼はくたばっている。
【ミライ】
「あぁ、いい話し相手だったヨ」
出口に向かうペペロンチーノの背中を見つめながら、言葉を投げかける。背後から襲う考えも一瞬浮かんだが、メリットを考えるとやめておくことにした。
真実か否かは置いておいて、情報は敵入ったのだ。ならばそれ相応の誠意は見せなければダメだろう。いくら例外的な状況とはいえ、人間的感性を失ってはいけない。
(アイツの名前なんて言ったかなァ…ジェノベーゼ?…かな)
とはいえミライは名前すらもうあやふやなようであったが。姿が消えるまで背中を見つめた後、手頃な(穴あきの無い)瓶や缶を数本拾って帰ろうとする
【ペペロンチーノ】
《西エリア 廃工場》
撫子と別れた後、本来の目的地であった廃工場に足を運んでいた。とうとう、ゲームが始まってしまったので、廃工場にあるであろう廃材等を拾って武器にでもしようかと思ったのだ。因みにここに来るまでに3日ほどかかっているが、中央エリアで食料を調達したり、南エリアを迂回して通っていたりしたためである。
廃工場内は廃れていたが、全面修理すれば使えないレベルではなかった。だが、それ以上に“人”が居たと思われる真新しい痕跡が幾つもある方が気になった。皆考えることは一緒なのか。だが、鉄パイプ一本でも、自衛には少し過剰すぎる。だから、殺し合いの道具を探すならここがベストだろう。
「?????」
無言で廃工場内を探索する。どうやら、複数人の人間が入ったようだ。荒らされ方、というか探索の仕方や痕跡の残り具合がバラバラなのだ。徒党を組んで探索した訳ではなさそうだ。
【ミライ】
西エリアの廃工場。物好きでもなければ来ないような場所に、派手なピンク髪の女が一人。スキーウェアに上下を包み、両手をポケットに突っ込んだまま辺りをしきりに観察していた。
(壁に穴が目立つ、屋根も崩れそう。ひらけた空間も多い……これは拠点にするには不向きだな)
女といえば、新たな根城とできる場所を探していた。現在寝泊まりしている山小屋も良いが、いささか狭いうえに立地が悪かった。
だが??この廃工場はナシだな??という結論が出るや、目的は物色にシフトした。
女は、ペペロンチーノがいる事には気づかなかった。理由としては、人の気配よりも周りの痕跡の方に興味を惹かれたからであった。先客の痕跡(それも直近のものではない)に、どんな人物が来たかを想像していたからである。女は近くで見ようと一歩踏み出した瞬間に、足元にあった瓶の破片を踏み壊してしまう。
バキッと大きい音と共に破片は割れ、その音はやけに反響した。この音はペペロンチーノにも届くだろうが、二人の位置は目視できないくらいには離れている(だろう)ので気配に気付くくらいだろう。
【ペペロンチーノ】
「???、やはり誰かいるのか?」
物音を聞いてもさして驚いた反応は見せなかった。ここに来た時点で既に自分以外の参加者がいるだろうという予想をしていたからだ。いや、予想と言うよりは、いると思って入った方が緊急事態でも冷静に対処できると考えただけだが。しかし、個人的には誰もいない方が良かった。見境無しに襲いかかって来ないとも限らないし。
音のした方へと特になんの警戒もなく近づいていく。仮に、音を立てた者が自分に敵意を抱いているとしたら、どう近づこうが問答無用で襲いかかって来るだろう。なら、真正面からぶつかる方が選択肢の幅は広がる。駄目ならまたその時に考えればよい。
「おい、誰かいるのか?」
音のした方にそう声をかける。因みにミライのいる場所は遮蔽物のせいで目視できない。回り込めば目視することが可能だろう。彼は壁の向こう側にいる人物が何者なのか分からないため、取り敢えず出方を伺っているという所か。
【ミライ】
『おい、誰かいるのか?』という声が聞こえて来た時、女は心底驚愕した。とっさにポケットの中の獲物を掴んだが、聞こえるのは声だけで姿が見えないとわかると、掴む力は緩んだ。
(声に…応えるべきか?)(だが敵意ある存在かもしれないぞ?)(敵意ある奴が自分から存在をバラすか?)(自分も返答するべきか?しない方がいいのでは)(だが反応しなかった場合どうなる?敵対するかも)
こういった様々な考えがぐるぐると巡って、逃げるという選択肢も一度浮かんだ後。“応えるべきだろう”という結論に思考が落ち着いた。
「??あぁ!こっちに敵意はない!」
口頭で言ったところでどれだけの信憑性があるだろうか。事実、女は警戒態勢であったし、いつでも対応できるような姿勢でもって辺りを観察していた
【ペペロンチーノ】
「??そうか」
返ってきた声を聞いて一瞬訝しげな表情をする。何故なら、彼の想像していた答えと異なっていたからである。普通ならまず最初に声をかけてきた彼を警戒するような言葉を発するだろう。しかし、声の主は敵ではない事を伝えるという予想外な返事だったので、少し驚いた。
「何をしていたんだ?自衛用の武器探しか?」
先の相手の言葉を何らかの意図があると考え、更に質問を重ねる。これで素直に答えたならば、少し警戒しなければならない。というのも、彼はミライの言葉には何らかの意図があると判断しているため、ここで再び予想外な返答が来たら罠や攻撃を警戒する。スナイパーが兵士の足を撃ち抜いて、その兵士の叫び声で集まってきた他の兵士を抹殺するのと同じ。音や物で対象をおびき寄せる策は無数にあるのだから。
【ミライ】
女——ミライと言った——は、ここで素直に答えるのは得策ではないように思えた。武器探しなんて白状してしまえば訝しむだろうし、何より今後敵対しますよと言っているようなもの。たとえ自衛用とはいえ、武器を探している人間に好意的な感想を抱くだろうか?否、それはないだろう。
なにより武器探しをしている=武器をもっていない=無防備と取られてもおかしくはない。敵対されたらコトだ。誰だって死にたくはないだろう。死にたくないならば、敵対は避けなければならない。
「あぁ〜……いや!」
「寝床探しサ!」「まァここはずいぶん“アウトドア向き”だけどね!」
いくらか会話を交わした相手は、ミライの発するものが女声であることに気づくかもしれない。女バレするだろうことはミライにとって考えが及ばなかったことだけに、これはある意味不注意でもあった。
【ペペロンチーノ】
「まぁそうだな。こんな所じゃ、真っ先に狙われるだろうな」
少し苦しい言い訳だな、とか思いつつ、壁の向こう側にいる彼女が応えをぼやかした理由について考えてみる。人が嘘をつく時は大抵なにか別のことを隠したい時だ。真実の隠蔽、要するに武器を探していたのだろう。こんな所にいる時点で大体想像はつくのだが、先ほどの彼女の返答で確信が持てた。争奪戦にならないように、穏便にことを運ばなければならない。
「俺は他の参加者を探していたんだ。ゲームが始まったが、情報が殆ど無くてな。それで他の参加者に聞こうとしてた」
もっともらしいことを言いながら、ゆっくりと壁の方へと近づいていく。と言っても、足音は聞こえるため近づいて来ているのは分かるだろう。壁の手前まで来ると壁の端の方に注意を向けて相手の反応を待った。
【ミライ】
(もっともらしい…けど、どうだかな)
現実味がないにしろ“殺し合い”が始まってるような状況だぞ?殺されるかもしれないのに人探しとは——よほどの手練れか、不用心者の二択にひとつ。
不用心者ならどれほどいいか。だが最悪のケースを考えるなら、ヘタな手を打てば自分の墓を掘る結果になるだろう。足音を聞き取ったミライは、左右から出るのは悪手と思って、ゆっくりと壁の射線上に後退する。くれぐれも足元には気をつけながら、視線は壁の端からできるだけ外さない。
(足音を殺せるか否かは4:6の確率)
*ダイスロール*
1〜10→音を立ててしまう
10〜20→音を殺せる
結果〔1〕→音をたててしまった!
【ペペロンチーノ】
後ずさるような音が壁の向こう側から聞こえた。逃げようとしているのか或いは────
なんにせよ、下手に動くのは悪手であろう。だが彼はその音を聞いても殆ど動じず、普通に壁を迂回してとうとう彼女の下まで辿り着いた。こちらに敵意はないし、向こう側に敵意が無いことは先ほどの行動で分かった。ならば何も起きないだろうという安直な考えである。まるで同じオタクだから仲良くできるでしょと、言うぐらいの暴論。まぁ、ここでアクションを起こすような相手ならとっくの昔に彼の命は失われているだろう。
「まぁ、そう警戒するな。さっき言っただろう?情報集めのために人を探してるって。ここでお前と争ってもなんのメリットも無いんだ」
これは彼だけでなく、彼女にも同じ事が言えるだろう。つまり、武器の奪い合いを避けようとしているのだ。ただ双方が傷を負うだけでなく、その痕跡から他の参加者に追跡されたり情報を教えることになるかもしれない。それはなんとしても避けるべきだ。
【ミライ】
「………………わかった。信じよう」
姿を現したペペロンチーノの言葉に警戒を緩める。両手をポケットに突っ込み、姿勢を少し崩した。メリットを考えるなら、彼の言い分に一理ある。情報交換で済むより最上はない。武器の取り合いや争いは避けるべきだし、相手も同じ思考であれば尚のこと無意味だ。
「アンタ、名前は?」
女はミライと名乗って、ペペロンチーノに今自分が“丸腰”であると伝えた(それが嘘か否かは彼女にしか分からないが)。ミライは場所を移そうと提案して、数メートル先にあるひらけた場所を指差した
【ペペロンチーノ】
「俺はペペロンチーノだ。まぁ名前なんてどうでもいい。好きに呼んでくれ」
彼女の指さした方向へと歩きながらそう答える。無防備⋯確かに、武器を探しに来たのならそうであろう(もっと性能の良い武器を探しているという可能性もあるが)。しかし、そうか、と頷きながら内心では彼女のポケットを注視していた。ポケットに入る程度の武装ではそれほどの殺傷力は無い───しかし、武器というのは大きくて殺傷力が高ければいいというものではない。例えば、アーサー王が使用したとされる聖剣エクスカリバー。強大な力を持つが、一点物で替えがきくものではない。壊したり、失くしたり、奪われたりしたらアウトだ。少し極端な例であったが、もっと身近なレベルに例えるなら、ペーパーナイフに毛が生えた程度の、2、3回使ったら折れてしまうナイフより、100円ショップで売っている包丁の方が切れ味が良く長持ちする場合もある。また、武器というものはわかりやすい“攻撃性”である。日本刀を提げた者に近づこうとは思わないのと同義。一目で武器とわかるものは使わないのが吉だ。
だから、武器というものは使いやすく、バレにくく、量産できるものがよい。それを踏まえた上で、ポケットに入る程度の武装とは、ある観点で見れば最高の武器と言えるだろう。
「さて、早速本題に入ろう。まず、お前がこれまでに会った参加者について教えてくれないか?」
【ミライ】
「…それを教えてもいいケド—— 」
「そっちもちゃんと情報を出してくれるンだろうねェ?」
失笑するような口調で片眉を上げてみせる。少し訝しむような言い分だが、その冗談めかした様子で本気で疑っているわけでは無いのが伝わってくる。
ひらけた場所に着いたミライは、近くの柱に寄りかかる。依然ポケットに手は突っ込んだまま、ペペロンチーノを一瞥する。まるで見極めるかのような視線を送りながら、今まで会ったクラスメイト(あくまでそれと思わしき、だが)の名前を挙げていく。
「そうだなァ…」
「ピエロ…唐揚げ…ヒガンバナ———今ンところ、名前でピンとくる奴はいるかナ?」
名前を挙げたのは会ったクラスメイトの中でも大丈夫そうな者だけだった。曲がりなりにも他人の名前を言う上で、挙げるのは極力危険に対策できるであろう人物だけに絞った。
対してミライが求めた情報提供は、
⦅アンタの会ったクラスメイトのゾディアック一つ⦆であった。ペペロンチーノの求めた情報に対して対価が大きく感じるが、これは彼に鎌を掛ける意味合いもあった
【ペペロンチーノ】
「その3人の名前には心当たりがないな⋯俺が会ったのは───」
と、今まで会った3人の参加者の名前を挙げていく。一人だけ名前の分からない少女がいるが、適当に答えておいた。
「ゾディアック⋯か。些か対価が大きすぎる気がするんだが?」
彼が今まで会った中で、ゾディアックの情報を漏らした者はいない。ここでハッタリをかまして、彼女が彼が適当に答えた者のゾディアックを知っていたのなら、信用度は一気に下がる。彼女が挙げた名前は3人だけだったが、それだけではないことくらい読み取れた。恐らくだが海月と撫子辺りと対峙している筈だ。海月は共有チャットの情報から察するに、色んなところに首を突っ込んでいる。彼女と会っている可能性も高い。撫子は人が集まりやすい中央エリアのホテルに居たからというなんの根拠もない勘のようなものだ。しかし、可能性としては絶対に無いとは言い切れない。
「そうだな⋯ゾディアックの“情報”が聞きたいなら、俺からもう一つ質問させてくれ。お前が今まで会った中で平気で人を殺しそうな奴は何人くらいいた?」
【ミライ】
ゾディアックの情報を簡単には引き出せないと知り、これは一筋縄にはいかないだろうなと察した。そう思いながら、ひょうひょうと何かふざけた様子で口を開いた
「ン〜…そうだなァ」
「“臭う”やつは何人かいたネ。それも結構躊躇なさそうなのが?」
ミライの言い分の半分は嘘であり、半分は本当であった。“臭う”——いざと言うとき、決意を持って人を殺しそうな——人物には心当たりがあったし、実際ヒガンバナや唐揚げなどからはその気配を感じた。
しかしミライは、その数を盛ってペペロンチーノに伝えていた。その理由は、【人は情報が安全であればあるほど信憑性を薄く感じる】という彼女自身の持論から来ていた
「これで見合うかな?ゾディアックの情報にサ」
【ペペロンチーノ】
「ふむ、そうだな⋯」
嘘の情報を流すとしても、相手は選ばなければならない。自分の会ったことのある人物で、かつ、彼女がゾディアックを知らない人物。安全策を取るならスキー場で会った少女なのだが、名前も知らない相手のゾディアックの情報だけ知っているというのは不自然だ。海月は論外、リスクが高すぎる。なら────
「撫子⋯といったか。そいつのゾディアックは人の生き死に関わるものらしい。これ以上の情報は持ってない」
博打ではある。最初から知らない、情報を持っていないというのは簡単だが、その言葉一つで彼の有利性は消え、この場における順位は最下位まで下がるだろう。ここだけは、なんとしても凌ぎきらねばならなかった。
【ミライ】
「…………………なるほど」
と、それだけをポツリを呟いてミライは黙った。この情報の信憑性について、彼女はしばらく考えていた。
というのも、この質問をした時から相手の出す情報に信憑性があるとは思っていなかったし、それを承知で質問した節もあった。ゾディアックの内容なんて誰でも隠したがるだろうし、それを知っているのは随分親しくないとダメだろう。
(———この男…ボロネーゼだったか?が撫子さんの名前を出したのには正直驚いた。自分が会ったことのある人物で、それも名前を挙げなかったものをズバリ言われるとは。偶然も偶然だな)
(例えこのカルボナーラが撫子さんと知り合いでも、自分が知り合いと悟られるのは……何か不味い気がする。半分は完全な勘だが、敵に回られた時に撫子さんを巻き込む形になると後ろめたいってのもある)
「……その撫子って人とはどういう関係なんだい?」「ゾディアックの情報を知ってるなんて、ズイブン親しいんじゃないのサ」
あくまで自分は撫子を知らない人ですよ、といつた振る舞いに徹する。肘で小突くように茶化す言い回しでペペロンチーノに言葉を返すと、思い出したように尋ねる
「そういえば、アンタはアイテムって貰ったかい」
ゲーム開始と共にいつのまにか入っていた例のアイテム。全員に渡ったものなのか確認したいのサ、と付け加えて
【ペペロンチーノ】
「親しいわけではないんだがな。人は“そういう”状況に追い詰められた時に、ポロッと情報を零してしまうこともあるということだな」
端的に言うと、脅して情報を吐かせたと言っている。ストレートに表現してしまうと、かなりの警戒心を抱くだろう。最悪の場合、戦闘になるかもしれない。だからわざわざ遠回しな言い方をしたのだ。と言っても、受け取り方次第では普通に警戒されるだろう。つまり彼は“警戒されても問題がない”ということを相手に誇示するために敢えて下手な言い回しを用いたのだ。
「アイテム⋯?あぁ、アレのことか。貰ったぞ。役に立ちそうにはないが」
勿論彼もアイテムを受け取っている。だが、とてもじゃないが役に立つとは思えなかった。彼自身がそういった類のものを嫌っているから、とも言える。どうせなら即戦力になるような物が欲しかった。
【ミライ】
「…………それは結構なコトで」
ずいぶんな言い方だな、と思いながら思考を巡らせる。まるで拷問でもしたみたいな言い方だが、ここまで周到な奴がいまさら墓穴を掘るとは考えづらい。ブラフとも考えられる。まぁどういう意図のかまでは図れないけれど、挑発が目的にしても乗らぬが吉だろう。
「ビミョーなの引いちゃったかナ?」「私もあんまり“良い”とは言えないんだけどねェ、交渉のカード程度にはなるだろうと踏んでてネ」
良いモン引いた奴と交換でもしたいのだヨ、そう呟いてみせる。他愛もない話だが、彼女の言葉に偽りはなかった
【ペペロンチーノ】
「まぁ、こんなろくでもないゲームを考えついて開催できるような奴が、便利な道具なんて与えるわけがないがな」
吐き捨てるように言うと、先ほどの危険な表情とは打って変わって屈託のない笑みを浮かべる。ただ単に変わり身が早いだけではない。何らかのスイッチがあるのだろう。
彼女の「いい道具を持ってる奴と交換したい」という言葉に同意しながら何気なく辺りを見回した。金属片や埃、蜘蛛の巣で埋め尽くされた廃工場は、その密閉された天井のせいで真昼だというのに夜のように暗かった。当初の目的は果たせそうにない。とはいえ、このまま目の前の胡散臭い彼女と話し続ける訳にもいかない。ここらで切り上げた方が良さそうだ。
「⋯⋯おっと、少し長居しすぎたな。こんな所、早急に立ち去りたかったのだが⋯まぁ仕方ない。俺は行くぞ。俺の目的は果たせたからな。じゃ、お前も“気をつけろよ”」
それだけ言うと彼女に背を向けてゆっくりと出口の方に向かって歩き出す。かなり無防備な格好だが、この状況で彼に刃を向けることは流石にしないだろう。もしそれができるのであれば、とうの昔に彼はくたばっている。
【ミライ】
「あぁ、いい話し相手だったヨ」
出口に向かうペペロンチーノの背中を見つめながら、言葉を投げかける。背後から襲う考えも一瞬浮かんだが、メリットを考えるとやめておくことにした。
真実か否かは置いておいて、情報は敵入ったのだ。ならばそれ相応の誠意は見せなければダメだろう。いくら例外的な状況とはいえ、人間的感性を失ってはいけない。
(アイツの名前なんて言ったかなァ…ジェノベーゼ?…かな)
とはいえミライは名前すらもうあやふやなようであったが。姿が消えるまで背中を見つめた後、手頃な(穴あきの無い)瓶や缶を数本拾って帰ろうとする
ヒガンバナ(11th)-唐揚げ食べたい(18th)
【唐揚げ食べたい】
(ショッピングモールにて。
失ったアイテムを取り戻そうと奮起している唐揚げは、静かに歩いていた。
マッチ、ライター、チャッカマン、いろいろあるけれど。
何がいい?───迷ったら、全部買ってしまえ。どうせタダなのだから。
後、失った布も欲しい。ハンカチでも買っておこうか?
ということで全部購入して、序でに新しいカバンも買っておいて。今まで重かったから、これで楽になる。
病院で貰っておいたメスとか、アルコールとか、注射器に麻酔薬。針とか、ハサミもある。…そんなもんね、彼処での収穫は。
これでまた、アレが作れる。…作るとは、言ってないぜ。)
「こんなもんだろ……」
("あのアイテム"が無いのが辛いが、いざとなったら全て燃やしてそれだけ奪ってしまえ。元々自分のなのだから、お咎めはないだろう?
さて、どうしようかな。
声が聞こえない。
大丈夫、大丈夫だから。近くには居ないけど、きっと"僕"を守ってくれているから。
"お前が警戒しないのが悪いんだ"
もう二度と、繰り返さない為に。全部壊してやろう、なんて。
やる気なんてない癖に、密かに思うのだ。ショッピングモールを徘徊しながら、静かに。)
【ヒガンバナ】
「……また、奪われたアイテムを作り直すつもりか?」
彼の背後から声をかける。
仕入れた物から、作ろうとしている物は明白であり、蜜柑が奪ったものを作り直そうとしていると予想できた。
「…………かなり物騒な物を作ろうとしているな。
まあ、仕方ないのかもしれんが。」
【唐揚げ食べたい】
「…ん?…ああ!君は……」
(ゆっくり、ゆっくりと振り返って。…嗚呼、此奴は誰だっけ。確か、確かヒガンバナ。そんな不吉な名前だった気がする。
此奴は、確か。刀みたいな、そんな何かを持ってた気がする。怖いね、露骨に武器を持っている人間は危なくて嫌いだ。
好きな人間なんか居ないけど、それでも彼女のことは嫌いだ。
名前さえ、思い出せなかったけれど。無関心じゃないだけ、マシだろう。)
「はは、そうかもね。無くなっちゃったからさー。
物騒?君が言う?そんな刀持って、俺よりもよっぽど物騒だと思うけど。」
(刀持って"物騒なものを作ってるな"とか、お前が言えたことじゃないだろう。
隠し持ってるのが、とか。そういう目線で言えば卑怯ではあるが。
露骨に殺意を向けられる方が怖いね、嗚呼怖い。
でも、そんな殺意とかどうでもよくて。
気になることが一つあるだろう。その"リュック"。
だから、笑顔全開で聞いてみるんだ。)
「で、なんでお前がそれ持ってんの?」
【ヒガンバナ】
「……そうだな、私も刀を持っているんだ。
貴様が"火炎瓶"なんぞ作ったとしても、私には本来咎める権利は無いんだろうさ。」
お互い危険な物を作っているんだから、仕方ないね、で終わらせても良かったのだが。
やはり、そうも言っていられない。
このままでは、きっと殺し合いは加速する。
「これは、蜜柑から預かった。
危ないから持っていたくはないとさ。」
このリュックには、彼の持っていたアイテムが、恐らく丸々そのまま入っている。
【唐揚げ食べたい】
「じゃあおあいこ様ね。俺はこれ使うつもり無いからさ。襲われたら使うけど。」
(平然と呟く。"仕方ない"で済まそうとしている。
だってこれは護身用、本来使う気なんてないんだから。
それよりよっぽど、その刀の方が危ない。だってそれで、殺そうと思ったらすぐに殺せる。ほら、今も。
俺はまだ"作ってない"からね。
ほら、持ち物見てごらんよ。その原材料はあっても物騒な武器なんか無いだろう?あは、"火炎瓶"ってなんのこと?
…なんて大根な芝居をして、ヘラリと笑い。)
「…ふーん、じゃあ何で奪ったりなんかしたんだろうね。そのままで良かったのに。
じゃ、それ返してくれる?"アイテム"だけでもいいからさ。…嗚呼、もしかしてアイツが持ってっちゃったかな?」
(舌が回ること回ること。
"アイテム"はそう、簡単に言えば"ゲーム開始時に配布された物"か。アイテムって言い方で伝わるだろうと踏んで、そう迫る。
返されたからなんだ、とかは無いけど。殺す気なんて無いんだから、貰って"用済みだ"なんてするわけないでしょ?
やだなぁ、もう。…今は殺さないよ。今は、ね。
カバンに左手を突っ込んだまま、強請るように右手を出して。警戒はしたまま、少しずつ彼女へと近付いて行く。
笑顔、咲顔。笑え嗤え微笑え哂え、笑顔を止めるな。)
「人のモノ奪っちゃダメだよって、彼に言っておいてね。」
【ヒガンバナ】
「……残念ながら、おあいこには出来ぬ。
これは、このまま私が預からせて貰う。」
火災になれば、かなり被害が広がる可能性もある。
だから、これらの物を返す訳にはいかない。
「悪く思うな。
状況が状況だからな。」
【唐揚げ食べたい】
「そりゃ、残念だ。アイテムは火災に関係無いから返してほしいところだけど。
でも、割りに合わないな。こっちは被害者だぜ?スタンガン食らって荷物まで奪われて、流石にいくら怪しいからって酷い仕打ちじゃないか?Azothでもあるまいし。」
(まあこのゲームに公平性を求めるのは間違っていると、自分でも思うけど。
だけど、それ以上に間違っている。
まだ何もやってない。危ないことなんて何一つしていない。やったことと言えば、ワクワク☆ショッピングとドキドキ☆クッキングをして唐揚げを食べたくらいだ。
それに。
彼女が持っていて安全という証拠は?
だってそうだろ、刀持ってる奴にそれを任せられるのか?
────答えはNOだ。)
「分かった。火炎瓶が危ないからリュックが渡せないというなら、今ここで材料の蒸留酒ごと割って破壊してもらって構わない。
だからリュックを渡せ。
大体、お前は信用ならないんだよ。刀振り回してる奴が火炎瓶持ってたら、急に火を灯されて投げつけられるんじゃないかって。
そう思ったら怖くて眠れないね!」
(あのアイテムが入ってるとか、入ってないとか、そんなのは最早どうでもいい。持ち物を入れる袋が増える、それだけでいいじゃないか。
まあそりゃ、アイテムが有れば良いに越したことは無いけど。
無くても、後で返して貰えばいいもんね?
ふふ、なんてね。危なっかしい事はしたくないから、此処は平和的に行きたいけれど。
だって目の前の人、脳筋そうで怖いんだもの。)
「どうかな、それでもう危ない物はないでしょ?」
【ヒガンバナ】
「……確かに、憐れに思うが、許せ。」
私は、『自分のリュック』から、アイテムを取り出して『相手のリュック』に入れる。
……アイテムがアイテムなので、見せたって構わないだろう。
「……こちらをやる。空だがな。
……いや嘘だ、ポケットティッシュとビニール袋が幾つか入ってる筈だ。」
結果として、彼が用意したアイテムはリュックに詰められているが。
……こちらとしては、彼の要望を全て聞く義理はない……一応。
どうせ今となっては、信用など欠片もない。
【唐揚げ食べたい】
「ふーん…」
(リュックを渡されて、それを受け取り。
あーあ、中身。入れ替わったじゃないか。なんで分かんないかな、こういうの。
あ、もしかして自分の方が有利だと思ってる?
なら仕方ないね、そりゃ此方に不利なものを渡すわけだ。
笑みを続けたまま、ケラケラと。まるで"リュック手に入ったしこれでもいいよ!"なんて、善良な天使のように。
そして言葉を続ける。)
「何これ、ふざけてんの?」
(笑い、嗤い、嗤い、微笑い、咲い、果たして今はどれでしょう?…ああ、どちらでもないかもね。
彼女から貰ったリュックを適当な壁側へポイ、と置けば。
天使のような笑みから見えた性格の悪さは、彼女にはどう写っただろうか。ここまでくると興味などないな、と。)
「"俺の"リュック中身丸ごとだって、言わないと分かんなかった?
そっかそっか、じゃあ今言ったから早くちょーだい。
嗚呼、最悪くれなくてもいいよ。"俺のアイテム"が入ってるかだけでも教えてくれたらそれで満足だからさ。」
(数歩下がり、彼女が踏み込んでこなければ刀が届かないであろう場所まで後ろへ。
カバンへ突っ込む手を右手に変えて、いつでも"アレ"が使えるように。
警戒を解くな。時を待て。
此処はショッピングモール。"武器になり得るモノ"なら幾らでもある。
優勢にもなり得るが、劣勢にもなり得る。
だから、"殺られる前に殺れ"。
嗚呼、殺す気なんてないんだけどな。せめて"俺のアイテム"が入ってるかだけでも知れたらいいのに。)
「だから、次は無いよ。賢明なお前なら分かるでしょ?
…────よろしくね、ヒガンちゃん。」
【ヒガンバナ】
「…………私は、これが貴様が貰ったアイテムだと聞いたが?」
そう言って、私は蜜柑から教えられたアイテムを取り出して見せる。
……これが、『違う』などと言われてしまえば……私は、彼を疑わなければならなくなる。
「だが、こんな危険なもの……渡せぬだろう?」
【唐揚げ食べたい】
「はは、違うよ」
(取り出されたのは"火炎瓶"。嗚呼、それはつまり。なるほど、そういうことか。
彼女は、彼に騙されていた。なるほど。
ならば、こちらから敵意を示す理由は無い。だって、誰も彼も"あの男"に騙されたんだから。
本当の危険因子があの男なのに気付かず、全て蓋をされた。
そうでしょう?
はは、馬鹿みたい。だとしたら、やっぱりそこには無いんだろうね?
無駄足を踏んだか、…否。これは喜ぶべきでは無いか?
彼に会う理由が出来てしまったな、とね。)
「その"火炎瓶"は、アイテムじゃない。俺が自衛用に作ったんだ、お前の刀と同じだよ。
彼は、お前すら利用したんだね。残念だ。」
(何が残念なのか、分からないが。
なんにせよ、彼は自分以上に危険だろう。何を考えているかも分からず、挙げ句の果てには"操る糸"が欲しいと僕に強請って。
これ程までに詰まらない人間は見たことないや。
まだ、"アイツ"の方が。いや、考えるのも嫌になってくるな。)
【ヒガンバナ】
「……はぁ、そうか。」
ため息を吐いて、落胆する。
私はそんなに信用ならないか?
それとも、彼はあんな風に振る舞っておきながら嘘吐きなのか?
……どちらにしても、嫌な話だ。
「……なら、貴様が望むものは無い。
私は、火炎瓶がアイテムだと教えられ、入っている物も火炎瓶と材料のみだった。」
【唐揚げ食べたい】
「…やっぱり。彼が取ったんだ。」
(予想はしていた。アレは正直言って、"このゲームにおいて、使い道がありすぎて逆に使い所に困る"ようなアイテム。
少々誇張したが、アレを持っているだけで有利に立てる可能性が広がるのだから盗られていても何ら可笑しくはない。
さて、じゃあ。どうしようか。
先程から声が聞こえない。会話はしているはずなのに、聞こえないの。
なんで。
…ああ、いいや。全て放り投げてしまえ。
こうなると、彼ともまた会う必要がありそうだね?ふふ、楽しみに待っているがいいさ。
2nd"みかんちゃん"、可愛らしい名前にどんな裏が隠されているのやら。
果てさて、それより今は現状に目を向けて。正直もう彼女は用済みである故、個々に長居する必要もない。
でも、脅迫まがいな事をしてしまったことに謝りくらいはいれておこうか。)
「…、はあ……。
ごめんね?ヒガンちゃん、脅迫みたいなことして。こんな場所だから気が立ってるのかも。
あ!コレはお前の優しさに免じて貰ってあげるぜ!
その代わりその"火炎瓶"はお前の自由に使ってもらって構わないからさ!」
(一度床に置いたあのリュックを拾って、背中に背負えば。
申し訳程度にヘラヘラと"ごめんね〜"なんて言って、謝る気など毛頭無い。
然し、コレは。武器にはならないとはいえ、配られたアイテムならば"貴重な交渉手段"になる。有り難く貰っておこう。
勿論、警戒は別れて姿が見えなくなるまで解くつもりはない。帰り際にいきなり刀で斬られたり、火炎瓶を投げつけられたりする可能性も考慮しなければ。
少しずつ、ヒガンバナへ身体を向けながら後退をし始める。このまま去ろうかな、なんて。)
「じゃあ、またね!また何かあったら連絡くれよな!
…あと、後で個人チャットの方で俺の"本当のアイテム"について教えてあげるからさ。もし見つけたり、彼が持ってたりしたら取っといてくれる?」
【ヒガンバナ】
「…………の、様だな。
私も自然な形で渡された物だから、疑わなかった。」
一体、唐揚げは何を手に入れ、何を奪われたのか。
……蜜柑がこうまでして嘘を吐くのだから、相当の物なのだろう。
もしも、名前が分かる眼鏡とかだったら……なんて想像してしまうと、鳥肌が立つ。
「……正直、火炎瓶も要らぬのだが……まあ良い。
ではな、唐揚げ。」
【唐揚げ食べたい】
(ショッピングモールにて。
失ったアイテムを取り戻そうと奮起している唐揚げは、静かに歩いていた。
マッチ、ライター、チャッカマン、いろいろあるけれど。
何がいい?───迷ったら、全部買ってしまえ。どうせタダなのだから。
後、失った布も欲しい。ハンカチでも買っておこうか?
ということで全部購入して、序でに新しいカバンも買っておいて。今まで重かったから、これで楽になる。
病院で貰っておいたメスとか、アルコールとか、注射器に麻酔薬。針とか、ハサミもある。…そんなもんね、彼処での収穫は。
これでまた、アレが作れる。…作るとは、言ってないぜ。)
「こんなもんだろ……」
("あのアイテム"が無いのが辛いが、いざとなったら全て燃やしてそれだけ奪ってしまえ。元々自分のなのだから、お咎めはないだろう?
さて、どうしようかな。
声が聞こえない。
大丈夫、大丈夫だから。近くには居ないけど、きっと"僕"を守ってくれているから。
"お前が警戒しないのが悪いんだ"
もう二度と、繰り返さない為に。全部壊してやろう、なんて。
やる気なんてない癖に、密かに思うのだ。ショッピングモールを徘徊しながら、静かに。)
【ヒガンバナ】
「……また、奪われたアイテムを作り直すつもりか?」
彼の背後から声をかける。
仕入れた物から、作ろうとしている物は明白であり、蜜柑が奪ったものを作り直そうとしていると予想できた。
「…………かなり物騒な物を作ろうとしているな。
まあ、仕方ないのかもしれんが。」
【唐揚げ食べたい】
「…ん?…ああ!君は……」
(ゆっくり、ゆっくりと振り返って。…嗚呼、此奴は誰だっけ。確か、確かヒガンバナ。そんな不吉な名前だった気がする。
此奴は、確か。刀みたいな、そんな何かを持ってた気がする。怖いね、露骨に武器を持っている人間は危なくて嫌いだ。
好きな人間なんか居ないけど、それでも彼女のことは嫌いだ。
名前さえ、思い出せなかったけれど。無関心じゃないだけ、マシだろう。)
「はは、そうかもね。無くなっちゃったからさー。
物騒?君が言う?そんな刀持って、俺よりもよっぽど物騒だと思うけど。」
(刀持って"物騒なものを作ってるな"とか、お前が言えたことじゃないだろう。
隠し持ってるのが、とか。そういう目線で言えば卑怯ではあるが。
露骨に殺意を向けられる方が怖いね、嗚呼怖い。
でも、そんな殺意とかどうでもよくて。
気になることが一つあるだろう。その"リュック"。
だから、笑顔全開で聞いてみるんだ。)
「で、なんでお前がそれ持ってんの?」
【ヒガンバナ】
「……そうだな、私も刀を持っているんだ。
貴様が"火炎瓶"なんぞ作ったとしても、私には本来咎める権利は無いんだろうさ。」
お互い危険な物を作っているんだから、仕方ないね、で終わらせても良かったのだが。
やはり、そうも言っていられない。
このままでは、きっと殺し合いは加速する。
「これは、蜜柑から預かった。
危ないから持っていたくはないとさ。」
このリュックには、彼の持っていたアイテムが、恐らく丸々そのまま入っている。
【唐揚げ食べたい】
「じゃあおあいこ様ね。俺はこれ使うつもり無いからさ。襲われたら使うけど。」
(平然と呟く。"仕方ない"で済まそうとしている。
だってこれは護身用、本来使う気なんてないんだから。
それよりよっぽど、その刀の方が危ない。だってそれで、殺そうと思ったらすぐに殺せる。ほら、今も。
俺はまだ"作ってない"からね。
ほら、持ち物見てごらんよ。その原材料はあっても物騒な武器なんか無いだろう?あは、"火炎瓶"ってなんのこと?
…なんて大根な芝居をして、ヘラリと笑い。)
「…ふーん、じゃあ何で奪ったりなんかしたんだろうね。そのままで良かったのに。
じゃ、それ返してくれる?"アイテム"だけでもいいからさ。…嗚呼、もしかしてアイツが持ってっちゃったかな?」
(舌が回ること回ること。
"アイテム"はそう、簡単に言えば"ゲーム開始時に配布された物"か。アイテムって言い方で伝わるだろうと踏んで、そう迫る。
返されたからなんだ、とかは無いけど。殺す気なんて無いんだから、貰って"用済みだ"なんてするわけないでしょ?
やだなぁ、もう。…今は殺さないよ。今は、ね。
カバンに左手を突っ込んだまま、強請るように右手を出して。警戒はしたまま、少しずつ彼女へと近付いて行く。
笑顔、咲顔。笑え嗤え微笑え哂え、笑顔を止めるな。)
「人のモノ奪っちゃダメだよって、彼に言っておいてね。」
【ヒガンバナ】
「……残念ながら、おあいこには出来ぬ。
これは、このまま私が預からせて貰う。」
火災になれば、かなり被害が広がる可能性もある。
だから、これらの物を返す訳にはいかない。
「悪く思うな。
状況が状況だからな。」
【唐揚げ食べたい】
「そりゃ、残念だ。アイテムは火災に関係無いから返してほしいところだけど。
でも、割りに合わないな。こっちは被害者だぜ?スタンガン食らって荷物まで奪われて、流石にいくら怪しいからって酷い仕打ちじゃないか?Azothでもあるまいし。」
(まあこのゲームに公平性を求めるのは間違っていると、自分でも思うけど。
だけど、それ以上に間違っている。
まだ何もやってない。危ないことなんて何一つしていない。やったことと言えば、ワクワク☆ショッピングとドキドキ☆クッキングをして唐揚げを食べたくらいだ。
それに。
彼女が持っていて安全という証拠は?
だってそうだろ、刀持ってる奴にそれを任せられるのか?
────答えはNOだ。)
「分かった。火炎瓶が危ないからリュックが渡せないというなら、今ここで材料の蒸留酒ごと割って破壊してもらって構わない。
だからリュックを渡せ。
大体、お前は信用ならないんだよ。刀振り回してる奴が火炎瓶持ってたら、急に火を灯されて投げつけられるんじゃないかって。
そう思ったら怖くて眠れないね!」
(あのアイテムが入ってるとか、入ってないとか、そんなのは最早どうでもいい。持ち物を入れる袋が増える、それだけでいいじゃないか。
まあそりゃ、アイテムが有れば良いに越したことは無いけど。
無くても、後で返して貰えばいいもんね?
ふふ、なんてね。危なっかしい事はしたくないから、此処は平和的に行きたいけれど。
だって目の前の人、脳筋そうで怖いんだもの。)
「どうかな、それでもう危ない物はないでしょ?」
【ヒガンバナ】
「……確かに、憐れに思うが、許せ。」
私は、『自分のリュック』から、アイテムを取り出して『相手のリュック』に入れる。
……アイテムがアイテムなので、見せたって構わないだろう。
「……こちらをやる。空だがな。
……いや嘘だ、ポケットティッシュとビニール袋が幾つか入ってる筈だ。」
結果として、彼が用意したアイテムはリュックに詰められているが。
……こちらとしては、彼の要望を全て聞く義理はない……一応。
どうせ今となっては、信用など欠片もない。
【唐揚げ食べたい】
「ふーん…」
(リュックを渡されて、それを受け取り。
あーあ、中身。入れ替わったじゃないか。なんで分かんないかな、こういうの。
あ、もしかして自分の方が有利だと思ってる?
なら仕方ないね、そりゃ此方に不利なものを渡すわけだ。
笑みを続けたまま、ケラケラと。まるで"リュック手に入ったしこれでもいいよ!"なんて、善良な天使のように。
そして言葉を続ける。)
「何これ、ふざけてんの?」
(笑い、嗤い、嗤い、微笑い、咲い、果たして今はどれでしょう?…ああ、どちらでもないかもね。
彼女から貰ったリュックを適当な壁側へポイ、と置けば。
天使のような笑みから見えた性格の悪さは、彼女にはどう写っただろうか。ここまでくると興味などないな、と。)
「"俺の"リュック中身丸ごとだって、言わないと分かんなかった?
そっかそっか、じゃあ今言ったから早くちょーだい。
嗚呼、最悪くれなくてもいいよ。"俺のアイテム"が入ってるかだけでも教えてくれたらそれで満足だからさ。」
(数歩下がり、彼女が踏み込んでこなければ刀が届かないであろう場所まで後ろへ。
カバンへ突っ込む手を右手に変えて、いつでも"アレ"が使えるように。
警戒を解くな。時を待て。
此処はショッピングモール。"武器になり得るモノ"なら幾らでもある。
優勢にもなり得るが、劣勢にもなり得る。
だから、"殺られる前に殺れ"。
嗚呼、殺す気なんてないんだけどな。せめて"俺のアイテム"が入ってるかだけでも知れたらいいのに。)
「だから、次は無いよ。賢明なお前なら分かるでしょ?
…────よろしくね、ヒガンちゃん。」
【ヒガンバナ】
「…………私は、これが貴様が貰ったアイテムだと聞いたが?」
そう言って、私は蜜柑から教えられたアイテムを取り出して見せる。
……これが、『違う』などと言われてしまえば……私は、彼を疑わなければならなくなる。
「だが、こんな危険なもの……渡せぬだろう?」
【唐揚げ食べたい】
「はは、違うよ」
(取り出されたのは"火炎瓶"。嗚呼、それはつまり。なるほど、そういうことか。
彼女は、彼に騙されていた。なるほど。
ならば、こちらから敵意を示す理由は無い。だって、誰も彼も"あの男"に騙されたんだから。
本当の危険因子があの男なのに気付かず、全て蓋をされた。
そうでしょう?
はは、馬鹿みたい。だとしたら、やっぱりそこには無いんだろうね?
無駄足を踏んだか、…否。これは喜ぶべきでは無いか?
彼に会う理由が出来てしまったな、とね。)
「その"火炎瓶"は、アイテムじゃない。俺が自衛用に作ったんだ、お前の刀と同じだよ。
彼は、お前すら利用したんだね。残念だ。」
(何が残念なのか、分からないが。
なんにせよ、彼は自分以上に危険だろう。何を考えているかも分からず、挙げ句の果てには"操る糸"が欲しいと僕に強請って。
これ程までに詰まらない人間は見たことないや。
まだ、"アイツ"の方が。いや、考えるのも嫌になってくるな。)
【ヒガンバナ】
「……はぁ、そうか。」
ため息を吐いて、落胆する。
私はそんなに信用ならないか?
それとも、彼はあんな風に振る舞っておきながら嘘吐きなのか?
……どちらにしても、嫌な話だ。
「……なら、貴様が望むものは無い。
私は、火炎瓶がアイテムだと教えられ、入っている物も火炎瓶と材料のみだった。」
【唐揚げ食べたい】
「…やっぱり。彼が取ったんだ。」
(予想はしていた。アレは正直言って、"このゲームにおいて、使い道がありすぎて逆に使い所に困る"ようなアイテム。
少々誇張したが、アレを持っているだけで有利に立てる可能性が広がるのだから盗られていても何ら可笑しくはない。
さて、じゃあ。どうしようか。
先程から声が聞こえない。会話はしているはずなのに、聞こえないの。
なんで。
…ああ、いいや。全て放り投げてしまえ。
こうなると、彼ともまた会う必要がありそうだね?ふふ、楽しみに待っているがいいさ。
2nd"みかんちゃん"、可愛らしい名前にどんな裏が隠されているのやら。
果てさて、それより今は現状に目を向けて。正直もう彼女は用済みである故、個々に長居する必要もない。
でも、脅迫まがいな事をしてしまったことに謝りくらいはいれておこうか。)
「…、はあ……。
ごめんね?ヒガンちゃん、脅迫みたいなことして。こんな場所だから気が立ってるのかも。
あ!コレはお前の優しさに免じて貰ってあげるぜ!
その代わりその"火炎瓶"はお前の自由に使ってもらって構わないからさ!」
(一度床に置いたあのリュックを拾って、背中に背負えば。
申し訳程度にヘラヘラと"ごめんね〜"なんて言って、謝る気など毛頭無い。
然し、コレは。武器にはならないとはいえ、配られたアイテムならば"貴重な交渉手段"になる。有り難く貰っておこう。
勿論、警戒は別れて姿が見えなくなるまで解くつもりはない。帰り際にいきなり刀で斬られたり、火炎瓶を投げつけられたりする可能性も考慮しなければ。
少しずつ、ヒガンバナへ身体を向けながら後退をし始める。このまま去ろうかな、なんて。)
「じゃあ、またね!また何かあったら連絡くれよな!
…あと、後で個人チャットの方で俺の"本当のアイテム"について教えてあげるからさ。もし見つけたり、彼が持ってたりしたら取っといてくれる?」
【ヒガンバナ】
「…………の、様だな。
私も自然な形で渡された物だから、疑わなかった。」
一体、唐揚げは何を手に入れ、何を奪われたのか。
……蜜柑がこうまでして嘘を吐くのだから、相当の物なのだろう。
もしも、名前が分かる眼鏡とかだったら……なんて想像してしまうと、鳥肌が立つ。
「……正直、火炎瓶も要らぬのだが……まあ良い。
ではな、唐揚げ。」
エム(17th)-あいごころ。(20th)
【エム】
レストランから出てしばらく、エムは薬を飲んで少し休憩したあと、キャンプ場に訪れました。
理由といえば、探索もしてなかったし、じっとしているのもつまらなかったからでした。
風邪なんだから安静に、というのも理解は出来ますが、こんな状況でのんびり寝っ転がって休んでいても、ほかの人たちが死んでしまうかも知れませんから、じっとなんてしてられません。
「……けほっけほっ」
咳をしながら、色んなところを探してみたりして、とにかく、キャンプ場を歩き回りました。
少し汗もかいちゃいましたけど。
【あいごころ。】
…気分が悪い。なんでこんなにも?…ああ。私がズレてるだけだから。
こういう時は、どうすればいいのかな?…いいや、景色でもみようか?こんな作られたようなゲームのまやかしだけれども。皮肉気味に笑う。
ああ、だめ。思考が悪い方向に行ってしまう。
――あなたが“狂人”だからでしょ?だから不安なんでしょ?
だから違う。それは違うから。なんど言っても頭の中の声は止まない。…そりゃそうか。だってこの声は…いいや。認めちゃいけないね。
「あ…」
ぼんやりと歩いていたらどこかに出た…ああ、そういえばキャンプ場なんてところもあったな。ここも探索しないと…うん。大丈夫。まだ私は私で入れている。再確認。
とりあえずどこから探そうか。辺りを見渡して…ああ、人がいる。…嫌だなぁ。今は誰にも会いたくないのに。一人でいたかった。あの子は。あの煌めくような金髪は…エム、お姉ちゃんだね…。
「…また会ったね。」
そういえば、この子はどういう子だったかな。あの時は何も分かってなかったら。きっと警戒なんて忘れてた。軽く笑いながら近づいていく。…嫌だなぁ。こんな、もう、誰に対しても警戒してしまってるね。…だってそうだろう。協力なんてできる人、どこにもいないだろうし。
――あの子は殺すの?
殺さないよ。今はね。
――さっきと一緒。殺す気あるの?
殺す気ないよ。当たり前。…悪趣味だからね。ああ、やっぱりこれは私のエゴだ。私の、悪趣味な、エゴ。別にエムお姉ちゃんは嫌いなタイプじゃない。嫌なタイプじゃない。ただ、“やりやすいタイプ”。…なんでだろうね。罪悪感なんて、もう感じないのはさ。
ねえ、もう私はどうすればいいのかな?
【エム】
「…………?」
あたりを探し回って、結局大したものも見つからなくて、骨折り損ならぬ、風邪引き損かな? なんて、いつもみたいに勝手に自分のなかで言葉遊びなんかしてみたり。
体のだるさを誤魔化すように、頭を回転させて頑張ってみたりはするけど、さすがに誤魔化しきれるものでもなくて。
暑いな……そう思っていた時に、視界の端で黒が揺れた。
「……あ、こころちゃんか、また会ったね?」
少し熱で紅潮している顔のまま、少し無理をしたように、にこりと微笑んで、話しかけてくれたこころちゃんに、そう声をかけた。
少し汗かいてるし、風邪も引いてるし、こんな鼻声聞かれちゃって少し恥ずかしいな、なんて今更なことも考えながらも、目線はこころちゃんから離さない。
話題はどんなものにしようか。
――――裸の写真は消しておいたよ!
これはさすがに突拍子も無さすぎるから、却下かな。
――――雰囲気変わったね? イメチェンでもした?
こころちゃんのカレカノでもあるまいし、こんな状況じゃ誰だって雰囲気は変わる、また却下。
「…………生きてて安心したよ、怪我とかもないよね?」
少し、いやかなり変わった印象があるけど、こんな状況じゃそんなこともよくあること。
柏木のお兄さんだって、やってることはあれだけど、不安だったからやってしまったことだろうし、きっとそういうもの。
今できるのは、今まで通り、“お姉ちゃん”として接してあげることくらいかな、なんてね。
【あいごころ。】
またあったね。…ああ、なんだ。この状況でもまた、だってさ。…そんなこと。あるんだね。きっとまた、さようならって言って別れるだろうけど。結局、また会えるなんてことを信じるなんて。この状況じゃなんの役にも立ちやしない。そこにあるのは、愚かな願望だけ。
「うん…また。」
それだけ返す。…こんなゲームに希望を見出すのは、少し私には難しい。無意味で、無価値で、悪趣味で、…なにより壊れている。
――なら、好き勝手やればいいんじゃない?
それは違う。希望は見いだせないけれど、まだ絶望してる訳じゃない。…絶望なんて、もう経験してきたんだ。だから、もう落ちる隙間すらないでしょう?
――だから君は狂ってる。
ズレてる、の間違いでしょう。…私は、まだ保てているから。それに、まだこのゲームを楽しいだなんて思えてない。それが、まだ私がズレてるだけと認識させる唯一のこと。
――あはは!粘るねぇ!まだ認めないんだ?
認めるも何もそれが私でしょ?…ああ、堂々廻りね。なんどこんなことを繰り返してきた?頭の中でグルグルと。何度も何度も何度も。私は違うって否定してる。
…いつ、終わる?
「エム…お姉ちゃんも生きてて良かったわ。大丈夫。怪我は無いわ。」
エムお姉ちゃんっていうのに少しだけ抵抗があるけれど。でも、そっちのほうが“都合がいい”から。多分、こういっていれば相手は喜ぶ。それはわかり切っているからそう呼ぶ。…大丈夫、罪悪感は無い…ない、はず。
…怪我はない、かぁ…もし怪我してたらどうするんだろうね?心配する?それとも治療してくれる?怪我した時にあなたはいなかったのに。たまたま見つけたからそんなことを言う。…ああ、やっぱり協力だなんて幻想だよ。もう、何も信じられない。
…もう、私だけで。
【エム】
「そう、怪我がないなら良かった」
にこりと微笑みながら、いつものように答えた。
いや、少しお姉さんぶったかもしれない。
風邪をひいて弱っていても、それでもお姉さんぶるって言うのは、もう半ば刷り込みに近いなにかなのかな、なんて。
色々探していて中腰だったのを、うん、と伸ばしてストレッチ。
まだ体は動きそうだね。
「…………あぁ、そうだ。こころちゃんが呼びずらいなら、お姉ちゃん、なんて付けなくてもいいよ」
伊達に姉を名乗っていない、という訳では無いけど、こころちゃんがお姉ちゃんというのを少し言い淀んだのを見逃すわけがない。
そして、そんな言いづらそうに呼ばれても、欠片も嬉しくはないのだ。
名前を嫌そうに呼ばれて、喜ぶ人がいないのと同じように。
そもそも、お姉ちゃんと呼んで舞い上がってしまったのが、その要因か。
ちゃんと気を使ってくれるのだから、相変わらず優しいなって。
「…………それにしても、随分と変わったね、こころちゃん」
結局、エムの乏しいボキャブラリーじゃ大した会話の種も見つからなくて、最終的に却下した話題を持ち出さなくちゃならなくなる。
そんな自分が少し嫌だ、とは思うけど、それもそれでエムなのだから、仕方ないか。
「…………なにかあったの? お姉ちゃんに……っと違った、エムでも良ければ、少しくらいは話を聞くよ?」
きっと、ゲームが始まってから何かあったんだろう。
なんだか、前のこころちゃんよりも随分と暗く感じる。
エムの考えすぎなのか、それとも女の勘なのか。
なんて、本当に女かどうかは置いておくけどね。
【あいごころ。】
怪我ないならよかった、ね。まあもう何も言うことはないかな。心配してるのか。それともその振りかな?…いいや、多分これはそんな人間じゃないね。“あいつ”とも、私とも違う普通の人。
…普通に、“平常者じゃなくなった人”だ。
「……なら、今はエムちゃんって言わせて。」
バレた。ああ、なんだ、結構鋭いところはあるのかな?…いいや、別に。それも布石の1つ。彼女を軽く操りやすくするための、布石だから。ああ、別に洗脳とかそういうことじゃないさ。ただ、簡単に手のひらで踊って欲しいだけ。わかりやすい性格をしてるなら、それを手中に収めておきたいだなんて、誰もが思うことだ。…そうでしょう?だって、動きやすくなるのならば、打つべく手は打っておく。最悪の想定をするならば、それぐらいはしないとね?
「そうかな?」
口調は迷ったけれどあえて崩す。随分と変わった?…いいや、私は“私”。変わってなんていないはず。
――気づけよ、そろそろ。
…嫌だ。あなたになんて気づきたくない。だからこんなにも自分を騙しているんでしょ?
狐面を触って。軽く深呼吸。大丈夫。etcにはまとめられない。
「大丈夫だよ、何も無いよ。」
そういって。 自然な表情で笑顔に……あれ?笑顔って、自然な笑顔ってどうやるんだっけ?
あれ?笑顔ってなんでなるんだっけ?
【エム】
「うん、それでいいよ」
こころちゃんにエムちゃん、と呼ばれると、どうもむず痒い。
多分、身長が低いから年下にそう呼ばれてるような感覚になるからかな。とはいえ、結局のところみんな同い年なんだけどね。エムも、こころちゃんも、みんな。
「変わった……っていうのはどうだろうな。
見た目とかは、もちろん変わったりはしてないんだけど、なんて言えばいいんだろうな……」
雰囲気だろうか、オーラだろうか、それとも本当は見た目とか?
一体何が違うのか分からないし、そもそも付き合い自体は大して長くはないのだから、分かるはずもないんだけど。
――――それでも、違う
曖昧すぎて、具体化できない。
些細すぎて、見つけられない。
あまりにも抽象的で、あまりにも自分勝手な感想だけれど、それでもやはり何かが違う。
…………あぁ、やっと分かった。
「――――何も無い、なんて、嘘でしょ?
エムでもさすがに分かるよ」
違う違うと思っていたのは、多分『ボク』にしか気づけないような、そんなこと。
『エム』じゃダメでも、『ボク』なら理解出来るような、そんな些細なこと。
体裁的には、エムを一人称にはしておくけどね。
「笑顔がぎこちないよ、前のこころちゃんなら、もっと自然な笑顔だった」
そう、そういうこと。
一見自然に見えても、繕うことを何度もしてきて、何度も笑顔の練習をしてきたから、それにも気づけた。
もしかしたら、それすらも勘違いかもしれない、思いこみすぎかもしれない。
それならそれでいい、それならエムが疲れてた、風邪が原因で全て済むから。
でももし予想が当たっていたら……
…………エムは、どうするんだろうな。
【あいごころ。】
「ぇ…?」
笑顔がぎこちない?…それは、きっと上手く笑えてなかったってこと?…ああ、そういうことだろう。
なんで、なんでだろう。前なら、息を吸うように嘘をつけた。前なら、息を吸うように狂言を吐けた。いまでも、警戒すべき相手ならそんなこと簡単に出来る。
…あれ?警戒すべき相手って?
“あいつ”は?うん。警戒すべきだ。あの巫山戯た名前の狂人も、警戒すべきだ。目の前の少女も、警戒すべきだ。本心をさらけ出すな。信じるな。お前の“それ”が露呈したのであれば、お前はお前でなくなる。お前でありたいのであれば、誰にも心を許しちゃいけない。それは分かってるだろう?
――なんども言ってるんだけどなぁ。素直になれば全部終わらせてあげるのに。
私はそれを望んでいないからこんなにも苦しんでいるんだ。私は、騙し続けなきゃ行けないんだ。
――騙し続けるって言ってるけどさぁ。
――お前、自分が誰かわかってる?
…え?私は、私は“あいごころ。”だよね…不敵に笑って、ちょっとドジで、それでいて抜け目のない。そんな子。…じゃあ今は?今の私はだれ?…あれ、いったいここは?何が起きているの?なんで?どおして?どうしたの?
『あなたなんていなくなればいいのよ』
過去からの絶望が、誰かを飲み込んでいく。抑えていたはずの感情が、メッキが剥がれた所から、ドロドロと、ドロドロと流れ出す。…ああ、これは、知っている。この感情は。
“愉悦”だ。
他人を騙してきた。みんな信じられなかったから。自分を騙してきた。そうしないとやっていけなかったから。そして。全てを騙せていけたと思っていた。…ああ、でもダメだ。上手くやり過ぎたんだ。全て。もう。私は、“私はだれかわからない”
――なら、私にまかせてよ。
…それだけは、ダメな気がする。
――本当に、それでいいの?その先に何があるかわからないの?
…この先にあるもの?
――そう。騙し続けた先にあるものなんて、大抵決まっているものさ。ああ、大丈夫。気味の悪い予感は当たってるからさ。その通り。
…ただの、虚無だよ?
ちがう、ちがぅ…あ、ああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ…………
痛い。頭が。痛い。心が。いったい私は、もう誰をどうすればいいかわからない。
狐面を触る…何も変わらない。こんな時にこの癖は、なにもしてくれなかった。
膝をつく。何かが壊れたように。何かが剥がれたように。私には、生きながら、何も残ってはいないの?
…もう、わからない。だれかわたしをたすけてください。だれかにわたしを、すがわせてください。
【エム】
「…………当たっちゃった……か」
外れて欲しい予想だったけど、どうも当たってしまったらしい。こういう所だけ勘が鋭いんだから、『ボク』もなかなかに面倒なやつだなと思う。『エム』の感想だけど。
――――演じてるのかな?
さぁ、どうだろうね。
演じてるだけなら、まだ『ボク』でも対応できたはずだよ。
それが出来ないなら、多分それは違う。
今回は“演じてる”と言うよりもむしろ……
――――偽ってるのかな?
そう、それだ。
今回はどちらかと言えばそっちの方が正しい気がする。
いつぞやにやった、“あれ”と同じ感じがする。
自分を偽って何とかやってこれてるような人。
――――大変そうだね。
そうだね、『ボク』とはまずベクトルが違うから良くはわからないけど、嘘をつき続けるのは辛いんじゃないかな。
『エム』だって、誰かに嘘をつく時は辛かったりするだろ? たぶん、それ以上に辛いだろうね。
……ほら、案の定こうなった。
急に膝をつく彼女を、『ボク』は無感動にその様子を眺めていた。『エム』の方は気が気でないだろうけど、少なくとも仮の姿の得体の知れないクラスメイトに、『ボク』が何かを感じることは無い。
――――助けに行かなきゃ!
なんで?
これはデスゲームだよ?
ああやって野垂れ死にしてくれた方が、『ボク』、にとっても都合がいいはずじゃない。
まだ助けようとするの?
――――当たり前だよ! だってこころちゃんはっ
こころちゃんが、なに?
『ボク』にとっては赤の他人。
クラスメイトならまだしも、仮の姿のアバター。それをどうして助けようとできるの?
『エム』は口をつぐみます。
本当は話してなんか居ないけど、発声してないけど。
『ボク』の言う通りです、これは殺し合いで、生き残れば勝ちです。
そのために誰かを殺したりするのも仕方ありません。
…………でも、死なせるのは『エム』が許しません。
「……こころちゃん! 大丈夫?」
慌てて駆け寄って、手を差し伸べました。
『ボク』と『エム』は違うんですから。
――――それが『エム』の考えなら、『ボク』は構わないけどね。せいぜい頑張りなよ。
【あいごころ。】
「だいじょ…うぶ?」
誰が?誰に大丈夫なの?私?私ってだれ?…あいごころ。って、誰だったっけ?
――あーあ、だから言ったじゃないか。素直になればいいのにって。
でも、それは…ダメだって…あれ、なんでダメなんだっけ…わからない…もう誰か…私?をたすけ…
――壊れちゃいそうだね。…少し休みなよ。ここは私がどうにかしてあげる。
…で、でも。それはダメだって確かに誰かが言っていたから。
――大丈夫。君が心配するような事は起こさない。私は“素直”だからね?君が壊れてしまっては困るんだよ。だから。
…ああ、そっか。だから、お前は…あなたは…
――私を、頼りなさい。“私”
…あなたも、“あいごころ。”なんだね。
狐面を“ズラす”
…心配されてるんだっけ?なら、泣かないとね?
地面が私の涙を吸っていく。そう、いまは辛いとか、悲しいとかそういうこころ。
「…うん、もうだいしょーぶ。“こころお姉ちゃん”」
私はいつも通り。さて、少しだけ違うのは、少しだけ、落ち着いた頃とは違くなっちゃうかな?
――――だって“素直”な私だもの。
さぁ、始めましょうか?私なりの“あいごころ。”を。
【エム】
「…………そう、よかったよ」
――――気配が変わった。
なんて、大層なこと言うつもりは無いけど、ただ雰囲気はさっきよりもいくらか変わった気がする。
さっきまでエムちゃんと呼ばれていたから、急にお姉ちゃんと呼ばれて驚いたのか、それとも単純に口調の変化が目だったからなのか。
どちらにせよ、また変わった。
今は多分、クレープを一緒に食べたあの時のこころちゃんに似てる……
――――どうするの?『エム』
どうするもこうするもないよ、『エム』にやれることをするだけ。
こころちゃんが望んだ“お姉ちゃん”を演じるだけ。
――――それで利用されてもいいの?
妹に望まれたことをするのがお姉ちゃんじゃないの?
たとえ利用されたって、構わないもん。
――――それは『ボク』が困るな。もし死ね、なんて望まれたら死んでしまうじゃない。
こころちゃんはそんなことのぞまないよ。
――――確証がないのに信じられるなんて、『エム』。キミはそれでも『ボク』なの?
もう少し疑いというものを持って欲しかったよ……『交代』だ。
「…………また少し変わったね、口調。前よりも随分幼くなった気がするよ?」
不本意ながら、キャラ作りだけなら人一倍やってきたから、些細な変化でも気づくことは容易い。
今回は、1度聞いたこともある話し方だったから直ぐにわかった、というのもあるけど。
――――こころちゃんに酷いことしないでよ?『ボク』
しないよ、あくまで『エム』になりきって、上手くやるだけだ。
やる事やったらまた替わるよ。
そんな自問自答をこっそりと繰り返しながら、『エム』がするような笑みを完璧に再現する。
こんなことは簡単だ。
なんと言ったって、『エム』は『ボク』なんだから。
【あいごころ。】
「そうかな?うん、そうかも!」
何も気づかないでおく。変わったっていのはそちらにも言えることなんだけれどもね。…口調、まで気づくなんて。“エムお姉ちゃん”、そんなに察しよかったっけなぁ…まあ、こちらが気づいてないだけなのかもしれないけどね。
自分の口調が変わったことについてもなにも分からないでおく。鈍くいよう。気づかないでいよう。それが、最善だから。
…うん?殺すのか、だって?君は心配性だなぁ。僕としても君が嫌がることはしたくないさ。殺す、だなんてご法度。…せめて自衛する時ぐらいは許してね?…けれど。
「でもね、エムお姉ちゃん。」
ジリッとエムお姉ちゃんに近づく。ああ、やっぱり我慢出来ないなぁ…少しだけ、少しだけならいいかな?
「こころね…」
顔を上げる。今の私はどんな表情をしてるだろうか。歓喜?それとも悲哀?それとも…狂気?まあ、どれでもいいか。このあと起こるであろうことには関係の無いこと。ああ、私は…
「こころ…おなかすいたのー!」
おなかすいた!甘い物食べたいのです!もう偽るのは疲れたから!もう甘いのが食べたいのです!!!!
【エム】
……………………えぇ?
あまりの落差に『ボク』は思わず困惑する。
あの流れでこうくる? いくらなんでも唐突過ぎない? こんな突拍子もないシナリオ『ボク』見たことないよ?
――――弁解の言葉はある?『ボク』
待って、『エム』これには海より深いわけがあるんだ。
……人肉食べてテンションおかしくなってました。
『ボク』は悪くないです。全部人肉食べさせてきたアイツとかアイツが悪いです。
――――『交代』ね?
「…………じゃあ、ご飯食べに行こっか!」
『ボク』の早とちりにも困ったものです。
こんな可愛いこころちゃんが嘘なんてつくわけないのです。
『ボク』はしばらくの間おやすみです。異論は聞きいれません。
「何食べに行きましょうか、クレープ? アイス? それともパフェ?」
こうなったら風邪なんておちおち引いてもいられません。
というより、『ボク』が心底驚いてくれたおかげで風邪なんてどこかに飛んでいってしまいました。
薬が効いただけなんて言わせません。
こうなったらとことん楽しんでやります。
デスゲーム? 生きて帰る? こちとら病み上がりですそんなこと知ったこっちゃありません。
今日明日くらいは優しい幼女は休ませてもらって、わがままになります。
この際とことんやってやりますとも。
【あいごころ。】
「しろくま!!」
さっき食べ損ねたから、もう1回食べたい!10個ぐらい!…ああ、どうやらさっきの違和感は気の所為かな?まあ、おなかすいたしどうでもいいや!
「こころね、エムお姉ちゃん会いたかったの!」
エムお姉ちゃん優しいし、一緒にいて安心するし…なにより不安だったから。エムお姉ちゃんが、なにかされてないか…エムお姉ちゃんに何かあったら私…きっと。…あ、そういえば。
「エムお姉ちゃん、柏木になにかされなかった?」
あのクソゴミ変態野郎にエムお姉ちゃんはなにかされなかった心配です。…エムお姉ちゃん、優しいから。例えば優しさに漬け込んで裸の写真撮られてたりしてないか。…まあ、エムお姉ちゃん変なところで優しいからきっと言ってくれないかもしれないけれど。
「なにかあったら、こころ心配だよ?」
心境を包み隠さず言う。もし、あれになにかされてたら不安だけれども…
…ああ、素直だなぁ私。
【エム】
「しろくまかぁ……うん、一緒に食べにいこうか沢山!!」
あぁ……こころちゃん可愛い……姉になれてよかった…………
そんな思考を数十程度反芻しつつ、にこやかに笑みを浮かべてこころちゃんの手を取ります。
「本当? エムも会いたかったから、一緒だね!
柏木のお兄さんには、大したこと“は”されなかったよ?
むしろ、こころちゃんの写真を消して、ビシッと叱っておいたからね!」
だからもう安心していいよ! と得意げに言いながら、シロクマを食べるためにホテルの方へと向かいます。
まさか、あの写真もバレて柏木が殺されかけてる、ましてやお母さんに、なんてことを今のエムが知る由もないのです。
後で知ったらお母さんを叱ったあと、柏木に殴り込みに行くのは確定していますが、それはまた別の話。
こうやって素直に話してくれるところを見ると、やっぱりこころちゃんいい子だなって、心底思います。
エムもこんな子になりたかったです。
――――その見た目でそれだけやれば十分じゃない?
『ボク』はすっこんでてください。
――――うぃっす……
【あいごころ。】
「うん!食べる!」
エムお姉ちゃんに手を握られてとても嬉しくなります!いっぱい食べるぞー!
私もニコニコしながらエムお姉ちゃんと一緒にホテルに向かいます。
「本当?エムお姉ちゃん優しいから変な写真撮らせちゃうんじゃないかって…」
そしてあいつのことだからその優しさに漬け込んでるんじゃないかって。やっぱり今度あったら一言いったほうがいいかもしれません。むー!
「でも、写真をけしてくれたのはありがとう!こころ、やっぱり恥ずかしかったから…」
すこしだけ、涙が出そうになります…でも、エムお姉ちゃんが消してくれたならなんの心配もありませんよね…?ああ、ダメ。このままだと。目を拭うとニコリと笑って。
「エムお姉ちゃんと一緒にいると、安心する。」
私の思ったことを。包み隠さず、言います。…でも、やっぱり真意を隠して伝えてしまうのは悪い癖。でも、この癖は治ることはないだろうなって同時に思います。…ここに込めた意味、それは。
――――あなたは信用出来る。
…会話だけで信用、だなんて馬鹿げた話かもしれない。けれど、そこにあるのは純粋な期待。…あなたは裏切らないっていう、期待です。
エムお姉ちゃんはきっとそんな人。信用して、裏切らない人で、そして。きっと。…裏表のある人。別に悪い意味じゃないのです。裏表なんて誰でもある。大切なのはその“裏”が信用出来るかどうか。まだ、その裏が信用出来るかどうか分からないけれど。裏切られたらそれでいいのです。その時は――――
いいえ、なんでもないです。その時に考えましょう。
【エム】
「写真なんて撮らせるわけないよ〜、エムだって女の子なんだから、自分の体は大切にしてるんだよ?」
おっしゃる通り、撮らせました、それはもう何枚も。
でも、こころちゃんの裸写真がこの世から抹消されたと言うだけでエムは風邪をひくだけの成果は得ることが出来ました。
もちろん、風邪は辛かったし、もっと言えばそのうちに何人も死んでしまったのが悲しくもあったけど、それでもそれだけの仕事はできたのです。
満足です、今度見つけたらこころちゃんの涙を見させやがった柏木のお兄さんは殴りますが、満足です。
「…………うん、エムも安心するよ」
――――目標、達成したみたいだね。
誰かさんの早とちりもありましたが、何とかいけましたよ。
もう少しポジティブに考えるようにしたらどうですか?『ボク』
――――今は『エム』がポジティブ担当だからね。『ボク』はあくまでネガティブに徹するよ。
『エム』は好きなだけ、明るく振る舞うといいよ。
また、そんな自問自答。
こうなってくると、もしかしたらエムは多重人格なのかな、なんて思ってきます。
こうやって、普通は会話も出来るわけないんだから、そんか事はないんでしょうけどね。
まぁ、そんなことないんですけど。
【あいごころ。】
「ふーん…わかった。なら安心だね。」
よかった、というようにほっと胸を撫で下ろします。…やっぱりあれはあとで軽く実験かなにかしてやりましゃうか。もとの世界じゃ人体実験なんて出来ないし貴重な体験ですよね?
「……」
安心する、か。…きっと込めた真意は伝わってないかもしれないなぁ。でも、私は信用してるからね。…たとえ、エムお姉ちゃんがどう思っていようとも。だから。だから。…私は私を裏切らなきゃ行けないのです。
「エムお姉ちゃん。」
少しだけ手を引っ張ってエムお姉ちゃんを近くに寄せて。背伸びをして相手のみみに両手を起きます。…そう。ヒソヒソ話するための。
「お姉ちゃん大好きだから、こころの秘密の場所教えるね?」
そういって相手の耳元に口をちかづけます。…なんだか、ちょっとだけ恥ずかしいけれども。エムお姉ちゃんなら問題ないのです。…ああ、背が近いっていいなって少しだけ失礼なことを思いながらこう言いました。
「――――――――――――だよ。」
そういって、離れます。…大丈夫、上手くヒソヒソできたはずです。
【エム】
「…………へぇ、それはいいこと聞いたなぁ。ありがと! 2人だけの秘密だね!!」
こころちゃんの口に耳を近づけて、その言葉をしっかりと聞きました。
今度、行ってみよう。
そう決めました。
これはその方がきっといいはずですから。
本当にいいことを聞きました。
「…………よし、じゃあお礼にエムが沢山しろくまを買ってあげよう!!」
まぁ、ここじゃあ全部お金なんてかからないようなものですし、買うも何も無いんですけど。
それでも、形だけでもお姉さんしたいですし、お礼もしてみたいのです。
【あいごころ。】
「ほんと!?やったー!」
両手を上げて喜びます。いっぱいのしろくまでいっぱいの幸せがいっぱいですから!
…買うっていうのはすこしおかしいんじゃないかなっていうことは言っちゃ行けません。野暮ってやつです。
「詳しい場所は後で話すね?」
そういってエムお姉ちゃんに笑いかけます。ああ、いっぱいのしろくまかぁ!おなかいっぱいたべるぞ!と意気込んで。えいえいおー!と掛け声を。
そうして、また手を繋ぐと一緒にホテルまで歩いていきました。
【エム】
レストランから出てしばらく、エムは薬を飲んで少し休憩したあと、キャンプ場に訪れました。
理由といえば、探索もしてなかったし、じっとしているのもつまらなかったからでした。
風邪なんだから安静に、というのも理解は出来ますが、こんな状況でのんびり寝っ転がって休んでいても、ほかの人たちが死んでしまうかも知れませんから、じっとなんてしてられません。
「……けほっけほっ」
咳をしながら、色んなところを探してみたりして、とにかく、キャンプ場を歩き回りました。
少し汗もかいちゃいましたけど。
【あいごころ。】
…気分が悪い。なんでこんなにも?…ああ。私がズレてるだけだから。
こういう時は、どうすればいいのかな?…いいや、景色でもみようか?こんな作られたようなゲームのまやかしだけれども。皮肉気味に笑う。
ああ、だめ。思考が悪い方向に行ってしまう。
――あなたが“狂人”だからでしょ?だから不安なんでしょ?
だから違う。それは違うから。なんど言っても頭の中の声は止まない。…そりゃそうか。だってこの声は…いいや。認めちゃいけないね。
「あ…」
ぼんやりと歩いていたらどこかに出た…ああ、そういえばキャンプ場なんてところもあったな。ここも探索しないと…うん。大丈夫。まだ私は私で入れている。再確認。
とりあえずどこから探そうか。辺りを見渡して…ああ、人がいる。…嫌だなぁ。今は誰にも会いたくないのに。一人でいたかった。あの子は。あの煌めくような金髪は…エム、お姉ちゃんだね…。
「…また会ったね。」
そういえば、この子はどういう子だったかな。あの時は何も分かってなかったら。きっと警戒なんて忘れてた。軽く笑いながら近づいていく。…嫌だなぁ。こんな、もう、誰に対しても警戒してしまってるね。…だってそうだろう。協力なんてできる人、どこにもいないだろうし。
――あの子は殺すの?
殺さないよ。今はね。
――さっきと一緒。殺す気あるの?
殺す気ないよ。当たり前。…悪趣味だからね。ああ、やっぱりこれは私のエゴだ。私の、悪趣味な、エゴ。別にエムお姉ちゃんは嫌いなタイプじゃない。嫌なタイプじゃない。ただ、“やりやすいタイプ”。…なんでだろうね。罪悪感なんて、もう感じないのはさ。
ねえ、もう私はどうすればいいのかな?
【エム】
「…………?」
あたりを探し回って、結局大したものも見つからなくて、骨折り損ならぬ、風邪引き損かな? なんて、いつもみたいに勝手に自分のなかで言葉遊びなんかしてみたり。
体のだるさを誤魔化すように、頭を回転させて頑張ってみたりはするけど、さすがに誤魔化しきれるものでもなくて。
暑いな……そう思っていた時に、視界の端で黒が揺れた。
「……あ、こころちゃんか、また会ったね?」
少し熱で紅潮している顔のまま、少し無理をしたように、にこりと微笑んで、話しかけてくれたこころちゃんに、そう声をかけた。
少し汗かいてるし、風邪も引いてるし、こんな鼻声聞かれちゃって少し恥ずかしいな、なんて今更なことも考えながらも、目線はこころちゃんから離さない。
話題はどんなものにしようか。
――――裸の写真は消しておいたよ!
これはさすがに突拍子も無さすぎるから、却下かな。
――――雰囲気変わったね? イメチェンでもした?
こころちゃんのカレカノでもあるまいし、こんな状況じゃ誰だって雰囲気は変わる、また却下。
「…………生きてて安心したよ、怪我とかもないよね?」
少し、いやかなり変わった印象があるけど、こんな状況じゃそんなこともよくあること。
柏木のお兄さんだって、やってることはあれだけど、不安だったからやってしまったことだろうし、きっとそういうもの。
今できるのは、今まで通り、“お姉ちゃん”として接してあげることくらいかな、なんてね。
【あいごころ。】
またあったね。…ああ、なんだ。この状況でもまた、だってさ。…そんなこと。あるんだね。きっとまた、さようならって言って別れるだろうけど。結局、また会えるなんてことを信じるなんて。この状況じゃなんの役にも立ちやしない。そこにあるのは、愚かな願望だけ。
「うん…また。」
それだけ返す。…こんなゲームに希望を見出すのは、少し私には難しい。無意味で、無価値で、悪趣味で、…なにより壊れている。
――なら、好き勝手やればいいんじゃない?
それは違う。希望は見いだせないけれど、まだ絶望してる訳じゃない。…絶望なんて、もう経験してきたんだ。だから、もう落ちる隙間すらないでしょう?
――だから君は狂ってる。
ズレてる、の間違いでしょう。…私は、まだ保てているから。それに、まだこのゲームを楽しいだなんて思えてない。それが、まだ私がズレてるだけと認識させる唯一のこと。
――あはは!粘るねぇ!まだ認めないんだ?
認めるも何もそれが私でしょ?…ああ、堂々廻りね。なんどこんなことを繰り返してきた?頭の中でグルグルと。何度も何度も何度も。私は違うって否定してる。
…いつ、終わる?
「エム…お姉ちゃんも生きてて良かったわ。大丈夫。怪我は無いわ。」
エムお姉ちゃんっていうのに少しだけ抵抗があるけれど。でも、そっちのほうが“都合がいい”から。多分、こういっていれば相手は喜ぶ。それはわかり切っているからそう呼ぶ。…大丈夫、罪悪感は無い…ない、はず。
…怪我はない、かぁ…もし怪我してたらどうするんだろうね?心配する?それとも治療してくれる?怪我した時にあなたはいなかったのに。たまたま見つけたからそんなことを言う。…ああ、やっぱり協力だなんて幻想だよ。もう、何も信じられない。
…もう、私だけで。
【エム】
「そう、怪我がないなら良かった」
にこりと微笑みながら、いつものように答えた。
いや、少しお姉さんぶったかもしれない。
風邪をひいて弱っていても、それでもお姉さんぶるって言うのは、もう半ば刷り込みに近いなにかなのかな、なんて。
色々探していて中腰だったのを、うん、と伸ばしてストレッチ。
まだ体は動きそうだね。
「…………あぁ、そうだ。こころちゃんが呼びずらいなら、お姉ちゃん、なんて付けなくてもいいよ」
伊達に姉を名乗っていない、という訳では無いけど、こころちゃんがお姉ちゃんというのを少し言い淀んだのを見逃すわけがない。
そして、そんな言いづらそうに呼ばれても、欠片も嬉しくはないのだ。
名前を嫌そうに呼ばれて、喜ぶ人がいないのと同じように。
そもそも、お姉ちゃんと呼んで舞い上がってしまったのが、その要因か。
ちゃんと気を使ってくれるのだから、相変わらず優しいなって。
「…………それにしても、随分と変わったね、こころちゃん」
結局、エムの乏しいボキャブラリーじゃ大した会話の種も見つからなくて、最終的に却下した話題を持ち出さなくちゃならなくなる。
そんな自分が少し嫌だ、とは思うけど、それもそれでエムなのだから、仕方ないか。
「…………なにかあったの? お姉ちゃんに……っと違った、エムでも良ければ、少しくらいは話を聞くよ?」
きっと、ゲームが始まってから何かあったんだろう。
なんだか、前のこころちゃんよりも随分と暗く感じる。
エムの考えすぎなのか、それとも女の勘なのか。
なんて、本当に女かどうかは置いておくけどね。
【あいごころ。】
怪我ないならよかった、ね。まあもう何も言うことはないかな。心配してるのか。それともその振りかな?…いいや、多分これはそんな人間じゃないね。“あいつ”とも、私とも違う普通の人。
…普通に、“平常者じゃなくなった人”だ。
「……なら、今はエムちゃんって言わせて。」
バレた。ああ、なんだ、結構鋭いところはあるのかな?…いいや、別に。それも布石の1つ。彼女を軽く操りやすくするための、布石だから。ああ、別に洗脳とかそういうことじゃないさ。ただ、簡単に手のひらで踊って欲しいだけ。わかりやすい性格をしてるなら、それを手中に収めておきたいだなんて、誰もが思うことだ。…そうでしょう?だって、動きやすくなるのならば、打つべく手は打っておく。最悪の想定をするならば、それぐらいはしないとね?
「そうかな?」
口調は迷ったけれどあえて崩す。随分と変わった?…いいや、私は“私”。変わってなんていないはず。
――気づけよ、そろそろ。
…嫌だ。あなたになんて気づきたくない。だからこんなにも自分を騙しているんでしょ?
狐面を触って。軽く深呼吸。大丈夫。etcにはまとめられない。
「大丈夫だよ、何も無いよ。」
そういって。 自然な表情で笑顔に……あれ?笑顔って、自然な笑顔ってどうやるんだっけ?
あれ?笑顔ってなんでなるんだっけ?
【エム】
「うん、それでいいよ」
こころちゃんにエムちゃん、と呼ばれると、どうもむず痒い。
多分、身長が低いから年下にそう呼ばれてるような感覚になるからかな。とはいえ、結局のところみんな同い年なんだけどね。エムも、こころちゃんも、みんな。
「変わった……っていうのはどうだろうな。
見た目とかは、もちろん変わったりはしてないんだけど、なんて言えばいいんだろうな……」
雰囲気だろうか、オーラだろうか、それとも本当は見た目とか?
一体何が違うのか分からないし、そもそも付き合い自体は大して長くはないのだから、分かるはずもないんだけど。
――――それでも、違う
曖昧すぎて、具体化できない。
些細すぎて、見つけられない。
あまりにも抽象的で、あまりにも自分勝手な感想だけれど、それでもやはり何かが違う。
…………あぁ、やっと分かった。
「――――何も無い、なんて、嘘でしょ?
エムでもさすがに分かるよ」
違う違うと思っていたのは、多分『ボク』にしか気づけないような、そんなこと。
『エム』じゃダメでも、『ボク』なら理解出来るような、そんな些細なこと。
体裁的には、エムを一人称にはしておくけどね。
「笑顔がぎこちないよ、前のこころちゃんなら、もっと自然な笑顔だった」
そう、そういうこと。
一見自然に見えても、繕うことを何度もしてきて、何度も笑顔の練習をしてきたから、それにも気づけた。
もしかしたら、それすらも勘違いかもしれない、思いこみすぎかもしれない。
それならそれでいい、それならエムが疲れてた、風邪が原因で全て済むから。
でももし予想が当たっていたら……
…………エムは、どうするんだろうな。
【あいごころ。】
「ぇ…?」
笑顔がぎこちない?…それは、きっと上手く笑えてなかったってこと?…ああ、そういうことだろう。
なんで、なんでだろう。前なら、息を吸うように嘘をつけた。前なら、息を吸うように狂言を吐けた。いまでも、警戒すべき相手ならそんなこと簡単に出来る。
…あれ?警戒すべき相手って?
“あいつ”は?うん。警戒すべきだ。あの巫山戯た名前の狂人も、警戒すべきだ。目の前の少女も、警戒すべきだ。本心をさらけ出すな。信じるな。お前の“それ”が露呈したのであれば、お前はお前でなくなる。お前でありたいのであれば、誰にも心を許しちゃいけない。それは分かってるだろう?
――なんども言ってるんだけどなぁ。素直になれば全部終わらせてあげるのに。
私はそれを望んでいないからこんなにも苦しんでいるんだ。私は、騙し続けなきゃ行けないんだ。
――騙し続けるって言ってるけどさぁ。
――お前、自分が誰かわかってる?
…え?私は、私は“あいごころ。”だよね…不敵に笑って、ちょっとドジで、それでいて抜け目のない。そんな子。…じゃあ今は?今の私はだれ?…あれ、いったいここは?何が起きているの?なんで?どおして?どうしたの?
『あなたなんていなくなればいいのよ』
過去からの絶望が、誰かを飲み込んでいく。抑えていたはずの感情が、メッキが剥がれた所から、ドロドロと、ドロドロと流れ出す。…ああ、これは、知っている。この感情は。
“愉悦”だ。
他人を騙してきた。みんな信じられなかったから。自分を騙してきた。そうしないとやっていけなかったから。そして。全てを騙せていけたと思っていた。…ああ、でもダメだ。上手くやり過ぎたんだ。全て。もう。私は、“私はだれかわからない”
――なら、私にまかせてよ。
…それだけは、ダメな気がする。
――本当に、それでいいの?その先に何があるかわからないの?
…この先にあるもの?
――そう。騙し続けた先にあるものなんて、大抵決まっているものさ。ああ、大丈夫。気味の悪い予感は当たってるからさ。その通り。
…ただの、虚無だよ?
ちがう、ちがぅ…あ、ああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ…………
痛い。頭が。痛い。心が。いったい私は、もう誰をどうすればいいかわからない。
狐面を触る…何も変わらない。こんな時にこの癖は、なにもしてくれなかった。
膝をつく。何かが壊れたように。何かが剥がれたように。私には、生きながら、何も残ってはいないの?
…もう、わからない。だれかわたしをたすけてください。だれかにわたしを、すがわせてください。
【エム】
「…………当たっちゃった……か」
外れて欲しい予想だったけど、どうも当たってしまったらしい。こういう所だけ勘が鋭いんだから、『ボク』もなかなかに面倒なやつだなと思う。『エム』の感想だけど。
――――演じてるのかな?
さぁ、どうだろうね。
演じてるだけなら、まだ『ボク』でも対応できたはずだよ。
それが出来ないなら、多分それは違う。
今回は“演じてる”と言うよりもむしろ……
――――偽ってるのかな?
そう、それだ。
今回はどちらかと言えばそっちの方が正しい気がする。
いつぞやにやった、“あれ”と同じ感じがする。
自分を偽って何とかやってこれてるような人。
――――大変そうだね。
そうだね、『ボク』とはまずベクトルが違うから良くはわからないけど、嘘をつき続けるのは辛いんじゃないかな。
『エム』だって、誰かに嘘をつく時は辛かったりするだろ? たぶん、それ以上に辛いだろうね。
……ほら、案の定こうなった。
急に膝をつく彼女を、『ボク』は無感動にその様子を眺めていた。『エム』の方は気が気でないだろうけど、少なくとも仮の姿の得体の知れないクラスメイトに、『ボク』が何かを感じることは無い。
――――助けに行かなきゃ!
なんで?
これはデスゲームだよ?
ああやって野垂れ死にしてくれた方が、『ボク』、にとっても都合がいいはずじゃない。
まだ助けようとするの?
――――当たり前だよ! だってこころちゃんはっ
こころちゃんが、なに?
『ボク』にとっては赤の他人。
クラスメイトならまだしも、仮の姿のアバター。それをどうして助けようとできるの?
『エム』は口をつぐみます。
本当は話してなんか居ないけど、発声してないけど。
『ボク』の言う通りです、これは殺し合いで、生き残れば勝ちです。
そのために誰かを殺したりするのも仕方ありません。
…………でも、死なせるのは『エム』が許しません。
「……こころちゃん! 大丈夫?」
慌てて駆け寄って、手を差し伸べました。
『ボク』と『エム』は違うんですから。
――――それが『エム』の考えなら、『ボク』は構わないけどね。せいぜい頑張りなよ。
【あいごころ。】
「だいじょ…うぶ?」
誰が?誰に大丈夫なの?私?私ってだれ?…あいごころ。って、誰だったっけ?
――あーあ、だから言ったじゃないか。素直になればいいのにって。
でも、それは…ダメだって…あれ、なんでダメなんだっけ…わからない…もう誰か…私?をたすけ…
――壊れちゃいそうだね。…少し休みなよ。ここは私がどうにかしてあげる。
…で、でも。それはダメだって確かに誰かが言っていたから。
――大丈夫。君が心配するような事は起こさない。私は“素直”だからね?君が壊れてしまっては困るんだよ。だから。
…ああ、そっか。だから、お前は…あなたは…
――私を、頼りなさい。“私”
…あなたも、“あいごころ。”なんだね。
狐面を“ズラす”
…心配されてるんだっけ?なら、泣かないとね?
地面が私の涙を吸っていく。そう、いまは辛いとか、悲しいとかそういうこころ。
「…うん、もうだいしょーぶ。“こころお姉ちゃん”」
私はいつも通り。さて、少しだけ違うのは、少しだけ、落ち着いた頃とは違くなっちゃうかな?
――――だって“素直”な私だもの。
さぁ、始めましょうか?私なりの“あいごころ。”を。
【エム】
「…………そう、よかったよ」
――――気配が変わった。
なんて、大層なこと言うつもりは無いけど、ただ雰囲気はさっきよりもいくらか変わった気がする。
さっきまでエムちゃんと呼ばれていたから、急にお姉ちゃんと呼ばれて驚いたのか、それとも単純に口調の変化が目だったからなのか。
どちらにせよ、また変わった。
今は多分、クレープを一緒に食べたあの時のこころちゃんに似てる……
――――どうするの?『エム』
どうするもこうするもないよ、『エム』にやれることをするだけ。
こころちゃんが望んだ“お姉ちゃん”を演じるだけ。
――――それで利用されてもいいの?
妹に望まれたことをするのがお姉ちゃんじゃないの?
たとえ利用されたって、構わないもん。
――――それは『ボク』が困るな。もし死ね、なんて望まれたら死んでしまうじゃない。
こころちゃんはそんなことのぞまないよ。
――――確証がないのに信じられるなんて、『エム』。キミはそれでも『ボク』なの?
もう少し疑いというものを持って欲しかったよ……『交代』だ。
「…………また少し変わったね、口調。前よりも随分幼くなった気がするよ?」
不本意ながら、キャラ作りだけなら人一倍やってきたから、些細な変化でも気づくことは容易い。
今回は、1度聞いたこともある話し方だったから直ぐにわかった、というのもあるけど。
――――こころちゃんに酷いことしないでよ?『ボク』
しないよ、あくまで『エム』になりきって、上手くやるだけだ。
やる事やったらまた替わるよ。
そんな自問自答をこっそりと繰り返しながら、『エム』がするような笑みを完璧に再現する。
こんなことは簡単だ。
なんと言ったって、『エム』は『ボク』なんだから。
【あいごころ。】
「そうかな?うん、そうかも!」
何も気づかないでおく。変わったっていのはそちらにも言えることなんだけれどもね。…口調、まで気づくなんて。“エムお姉ちゃん”、そんなに察しよかったっけなぁ…まあ、こちらが気づいてないだけなのかもしれないけどね。
自分の口調が変わったことについてもなにも分からないでおく。鈍くいよう。気づかないでいよう。それが、最善だから。
…うん?殺すのか、だって?君は心配性だなぁ。僕としても君が嫌がることはしたくないさ。殺す、だなんてご法度。…せめて自衛する時ぐらいは許してね?…けれど。
「でもね、エムお姉ちゃん。」
ジリッとエムお姉ちゃんに近づく。ああ、やっぱり我慢出来ないなぁ…少しだけ、少しだけならいいかな?
「こころね…」
顔を上げる。今の私はどんな表情をしてるだろうか。歓喜?それとも悲哀?それとも…狂気?まあ、どれでもいいか。このあと起こるであろうことには関係の無いこと。ああ、私は…
「こころ…おなかすいたのー!」
おなかすいた!甘い物食べたいのです!もう偽るのは疲れたから!もう甘いのが食べたいのです!!!!
【エム】
……………………えぇ?
あまりの落差に『ボク』は思わず困惑する。
あの流れでこうくる? いくらなんでも唐突過ぎない? こんな突拍子もないシナリオ『ボク』見たことないよ?
――――弁解の言葉はある?『ボク』
待って、『エム』これには海より深いわけがあるんだ。
……人肉食べてテンションおかしくなってました。
『ボク』は悪くないです。全部人肉食べさせてきたアイツとかアイツが悪いです。
――――『交代』ね?
「…………じゃあ、ご飯食べに行こっか!」
『ボク』の早とちりにも困ったものです。
こんな可愛いこころちゃんが嘘なんてつくわけないのです。
『ボク』はしばらくの間おやすみです。異論は聞きいれません。
「何食べに行きましょうか、クレープ? アイス? それともパフェ?」
こうなったら風邪なんておちおち引いてもいられません。
というより、『ボク』が心底驚いてくれたおかげで風邪なんてどこかに飛んでいってしまいました。
薬が効いただけなんて言わせません。
こうなったらとことん楽しんでやります。
デスゲーム? 生きて帰る? こちとら病み上がりですそんなこと知ったこっちゃありません。
今日明日くらいは優しい幼女は休ませてもらって、わがままになります。
この際とことんやってやりますとも。
【あいごころ。】
「しろくま!!」
さっき食べ損ねたから、もう1回食べたい!10個ぐらい!…ああ、どうやらさっきの違和感は気の所為かな?まあ、おなかすいたしどうでもいいや!
「こころね、エムお姉ちゃん会いたかったの!」
エムお姉ちゃん優しいし、一緒にいて安心するし…なにより不安だったから。エムお姉ちゃんが、なにかされてないか…エムお姉ちゃんに何かあったら私…きっと。…あ、そういえば。
「エムお姉ちゃん、柏木になにかされなかった?」
あのクソゴミ変態野郎にエムお姉ちゃんはなにかされなかった心配です。…エムお姉ちゃん、優しいから。例えば優しさに漬け込んで裸の写真撮られてたりしてないか。…まあ、エムお姉ちゃん変なところで優しいからきっと言ってくれないかもしれないけれど。
「なにかあったら、こころ心配だよ?」
心境を包み隠さず言う。もし、あれになにかされてたら不安だけれども…
…ああ、素直だなぁ私。
【エム】
「しろくまかぁ……うん、一緒に食べにいこうか沢山!!」
あぁ……こころちゃん可愛い……姉になれてよかった…………
そんな思考を数十程度反芻しつつ、にこやかに笑みを浮かべてこころちゃんの手を取ります。
「本当? エムも会いたかったから、一緒だね!
柏木のお兄さんには、大したこと“は”されなかったよ?
むしろ、こころちゃんの写真を消して、ビシッと叱っておいたからね!」
だからもう安心していいよ! と得意げに言いながら、シロクマを食べるためにホテルの方へと向かいます。
まさか、あの写真もバレて柏木が殺されかけてる、ましてやお母さんに、なんてことを今のエムが知る由もないのです。
後で知ったらお母さんを叱ったあと、柏木に殴り込みに行くのは確定していますが、それはまた別の話。
こうやって素直に話してくれるところを見ると、やっぱりこころちゃんいい子だなって、心底思います。
エムもこんな子になりたかったです。
――――その見た目でそれだけやれば十分じゃない?
『ボク』はすっこんでてください。
――――うぃっす……
【あいごころ。】
「うん!食べる!」
エムお姉ちゃんに手を握られてとても嬉しくなります!いっぱい食べるぞー!
私もニコニコしながらエムお姉ちゃんと一緒にホテルに向かいます。
「本当?エムお姉ちゃん優しいから変な写真撮らせちゃうんじゃないかって…」
そしてあいつのことだからその優しさに漬け込んでるんじゃないかって。やっぱり今度あったら一言いったほうがいいかもしれません。むー!
「でも、写真をけしてくれたのはありがとう!こころ、やっぱり恥ずかしかったから…」
すこしだけ、涙が出そうになります…でも、エムお姉ちゃんが消してくれたならなんの心配もありませんよね…?ああ、ダメ。このままだと。目を拭うとニコリと笑って。
「エムお姉ちゃんと一緒にいると、安心する。」
私の思ったことを。包み隠さず、言います。…でも、やっぱり真意を隠して伝えてしまうのは悪い癖。でも、この癖は治ることはないだろうなって同時に思います。…ここに込めた意味、それは。
――――あなたは信用出来る。
…会話だけで信用、だなんて馬鹿げた話かもしれない。けれど、そこにあるのは純粋な期待。…あなたは裏切らないっていう、期待です。
エムお姉ちゃんはきっとそんな人。信用して、裏切らない人で、そして。きっと。…裏表のある人。別に悪い意味じゃないのです。裏表なんて誰でもある。大切なのはその“裏”が信用出来るかどうか。まだ、その裏が信用出来るかどうか分からないけれど。裏切られたらそれでいいのです。その時は――――
いいえ、なんでもないです。その時に考えましょう。
【エム】
「写真なんて撮らせるわけないよ〜、エムだって女の子なんだから、自分の体は大切にしてるんだよ?」
おっしゃる通り、撮らせました、それはもう何枚も。
でも、こころちゃんの裸写真がこの世から抹消されたと言うだけでエムは風邪をひくだけの成果は得ることが出来ました。
もちろん、風邪は辛かったし、もっと言えばそのうちに何人も死んでしまったのが悲しくもあったけど、それでもそれだけの仕事はできたのです。
満足です、今度見つけたらこころちゃんの涙を見させやがった柏木のお兄さんは殴りますが、満足です。
「…………うん、エムも安心するよ」
――――目標、達成したみたいだね。
誰かさんの早とちりもありましたが、何とかいけましたよ。
もう少しポジティブに考えるようにしたらどうですか?『ボク』
――――今は『エム』がポジティブ担当だからね。『ボク』はあくまでネガティブに徹するよ。
『エム』は好きなだけ、明るく振る舞うといいよ。
また、そんな自問自答。
こうなってくると、もしかしたらエムは多重人格なのかな、なんて思ってきます。
こうやって、普通は会話も出来るわけないんだから、そんか事はないんでしょうけどね。
まぁ、そんなことないんですけど。
【あいごころ。】
「ふーん…わかった。なら安心だね。」
よかった、というようにほっと胸を撫で下ろします。…やっぱりあれはあとで軽く実験かなにかしてやりましゃうか。もとの世界じゃ人体実験なんて出来ないし貴重な体験ですよね?
「……」
安心する、か。…きっと込めた真意は伝わってないかもしれないなぁ。でも、私は信用してるからね。…たとえ、エムお姉ちゃんがどう思っていようとも。だから。だから。…私は私を裏切らなきゃ行けないのです。
「エムお姉ちゃん。」
少しだけ手を引っ張ってエムお姉ちゃんを近くに寄せて。背伸びをして相手のみみに両手を起きます。…そう。ヒソヒソ話するための。
「お姉ちゃん大好きだから、こころの秘密の場所教えるね?」
そういって相手の耳元に口をちかづけます。…なんだか、ちょっとだけ恥ずかしいけれども。エムお姉ちゃんなら問題ないのです。…ああ、背が近いっていいなって少しだけ失礼なことを思いながらこう言いました。
「――――――――――――だよ。」
そういって、離れます。…大丈夫、上手くヒソヒソできたはずです。
【エム】
「…………へぇ、それはいいこと聞いたなぁ。ありがと! 2人だけの秘密だね!!」
こころちゃんの口に耳を近づけて、その言葉をしっかりと聞きました。
今度、行ってみよう。
そう決めました。
これはその方がきっといいはずですから。
本当にいいことを聞きました。
「…………よし、じゃあお礼にエムが沢山しろくまを買ってあげよう!!」
まぁ、ここじゃあ全部お金なんてかからないようなものですし、買うも何も無いんですけど。
それでも、形だけでもお姉さんしたいですし、お礼もしてみたいのです。
【あいごころ。】
「ほんと!?やったー!」
両手を上げて喜びます。いっぱいのしろくまでいっぱいの幸せがいっぱいですから!
…買うっていうのはすこしおかしいんじゃないかなっていうことは言っちゃ行けません。野暮ってやつです。
「詳しい場所は後で話すね?」
そういってエムお姉ちゃんに笑いかけます。ああ、いっぱいのしろくまかぁ!おなかいっぱいたべるぞ!と意気込んで。えいえいおー!と掛け声を。
そうして、また手を繋ぐと一緒にホテルまで歩いていきました。
(彼はベッドの上に居た。
外を見るでも、何をするでもなく。ただただ、隅に座り込んでいた。
意識がぼんやりする。そういえば、此処に来てからというもの睡眠というのを余りしていなかった気がする。横になってみて、寝不足と疲れがドッと舞い込んできたようだ。
此処に来てからの数日間、兎に角様々な出来事があった。
姿が変わって、偽名で呼び合って。
"フレンド登録"なんていう皮肉な機能を使ったり、空っぽの頭で"次"の事を思考したり。
まあ、大変だった。
でも、総じて言えるのは。
元の世界より幾分かマシか、という点か。
二年前、キョーカ姉さんが修学旅行で消えてから。俺の生活は、変わっていく。
と言っても。────×××が起こるまでは、極々平凡であったのだが。
思い出したくもないな。
今日はもう、寝てしまおうか。
そう思って目を閉じた。
───その、刹那だ。
"あのアナウンス"が流れたのは。)
「始まったか──────!!!」
(鳴り響く合図。
鉄のような天使の声。
『───じゃ、そんなわけで楽しんで!』
嗚呼、これはきっと。
この壮大な人狼ゲームが、遂に始まってしまったということ。
"本物の命"を賭けた、"偽物の姿"でのゲーム。クラスメイトとはいえ所詮他人。気を許してはいけない、情に揺さぶられてはいけない、生か死かの極限状態。
いつのまにか現れたリュックを持っては、息を整える。
全てはみんなで生き残る為。
全ては自身の密かな目的を達成する為。
キョーカ姉さん、もし貴方が見ていたら。
どうか、"僕"に力を。
なんて言葉は、邪道か。
さあ、気を引き締めて。
行こうか。
──────ゲーム、スタート。)
外を見るでも、何をするでもなく。ただただ、隅に座り込んでいた。
意識がぼんやりする。そういえば、此処に来てからというもの睡眠というのを余りしていなかった気がする。横になってみて、寝不足と疲れがドッと舞い込んできたようだ。
此処に来てからの数日間、兎に角様々な出来事があった。
姿が変わって、偽名で呼び合って。
"フレンド登録"なんていう皮肉な機能を使ったり、空っぽの頭で"次"の事を思考したり。
まあ、大変だった。
でも、総じて言えるのは。
元の世界より幾分かマシか、という点か。
二年前、キョーカ姉さんが修学旅行で消えてから。俺の生活は、変わっていく。
と言っても。────×××が起こるまでは、極々平凡であったのだが。
思い出したくもないな。
今日はもう、寝てしまおうか。
そう思って目を閉じた。
───その、刹那だ。
"あのアナウンス"が流れたのは。)
「始まったか──────!!!」
(鳴り響く合図。
鉄のような天使の声。
『───じゃ、そんなわけで楽しんで!』
嗚呼、これはきっと。
この壮大な人狼ゲームが、遂に始まってしまったということ。
"本物の命"を賭けた、"偽物の姿"でのゲーム。クラスメイトとはいえ所詮他人。気を許してはいけない、情に揺さぶられてはいけない、生か死かの極限状態。
いつのまにか現れたリュックを持っては、息を整える。
全てはみんなで生き残る為。
全ては自身の密かな目的を達成する為。
キョーカ姉さん、もし貴方が見ていたら。
どうか、"僕"に力を。
なんて言葉は、邪道か。
さあ、気を引き締めて。
行こうか。
──────ゲーム、スタート。)
殺し合いの開幕を、私はホテルの一室で迎えた。
ベッドの上には、安っぽいが割と頑丈な作りのエナメルバッグ。
裁縫道具。そして、幾ばくかの食料。薬品の類。
シャツに袖を通し、ボタンを手早く止め、ネクタイを巻く。
そして、ズボンを履いて、外套を放り投げるように纏えば、額にあたる硬い感触に上々の仕掛けの出来映えを実感し、針を通す。
さて―――自問自答しよう。
私は、何のために戦うのかを。
殺し合いから生徒を救うため?
Noだ。結果的にそうなるとしても、それだけ。目的ではない。
なら、大恩あるセレスティアの為に、というのはどうだろう。
Noだ。そんな殊勝なことは無い。
しかし、アゾートともこれから、罷り間違って付き合いがあるかもしれない。なら、その親睦に首でも持っていくのはどうだ。
Noだ。私は鎌倉武士では無い。
確か、前回は願いを叶えるステージがあった。なら、今は亡き師の復活にかけるのはどうか。
Noだ。バカバカしい。
兎への復讐の為なら、さしもの私にも、納得がいくだろう。
それで行くべきではないか?
―――――No。
兎への復讐は、通過点。
本当にやりたいのは、私の過去に、ケリをつける事。
違うか?
『―――――Yesだ。』
さあ、ゲームを初めよう。
なんて、それ自体嘘なのかもしれないぜ。
ベッドの上には、安っぽいが割と頑丈な作りのエナメルバッグ。
裁縫道具。そして、幾ばくかの食料。薬品の類。
シャツに袖を通し、ボタンを手早く止め、ネクタイを巻く。
そして、ズボンを履いて、外套を放り投げるように纏えば、額にあたる硬い感触に上々の仕掛けの出来映えを実感し、針を通す。
さて―――自問自答しよう。
私は、何のために戦うのかを。
殺し合いから生徒を救うため?
Noだ。結果的にそうなるとしても、それだけ。目的ではない。
なら、大恩あるセレスティアの為に、というのはどうだろう。
Noだ。そんな殊勝なことは無い。
しかし、アゾートともこれから、罷り間違って付き合いがあるかもしれない。なら、その親睦に首でも持っていくのはどうだ。
Noだ。私は鎌倉武士では無い。
確か、前回は願いを叶えるステージがあった。なら、今は亡き師の復活にかけるのはどうか。
Noだ。バカバカしい。
兎への復讐の為なら、さしもの私にも、納得がいくだろう。
それで行くべきではないか?
―――――No。
兎への復讐は、通過点。
本当にやりたいのは、私の過去に、ケリをつける事。
違うか?
『―――――Yesだ。』
さあ、ゲームを初めよう。
なんて、それ自体嘘なのかもしれないぜ。
共有チャットを流れるままに目で追って疲れたというように目を閉じた。
嗚呼、狂信だ。
なんて盲信だ。
さぁ見せしめだと言わんばかりに一人死に、始まりますは殺戮ショー。
ついに蓋は開いてしまった。
見えてしまえば答えは一つに収束してカタチになってしまう。
ソレを人は現実として受け入れなくてはならない。
後悔も懺悔も此処から先は誰もが背負わなければならない。
そしてその現実にはまた蓋をする必要が出てくるわけで。
蓋をすれば見えないも同義。
だから私はソレに蓋をして、人の道化を見ないフリ気づかないフリ。
俄然、疑心暗鬼の渦中に呑まれようとも。
あのときとなんら変わりはしないもの。
なんだ、他人事かよ。
とんだ死にたがりねあなた。
誰でもない誰かが嘲る。
だから自分はその誰かに
死にたがりだなんて今更。
今日死んだって?
もう、死んでるよ。
なんて朗らかに笑う。
別に死にたいわけじゃない。私は私のまま、私のために生きているだけ。
他人を肯定し、自己を肯定し…。
勿論、博愛しますとも。
自分のことにも蓋をしておけば見ないフリ、できるもの。それが得意分野だから。
あ、そういえば
──××の声。
此処に来てからは一度も聞いてない。
[あなたが死ねば私も死ねるのに。]
嗚呼、狂信だ。
なんて盲信だ。
さぁ見せしめだと言わんばかりに一人死に、始まりますは殺戮ショー。
ついに蓋は開いてしまった。
見えてしまえば答えは一つに収束してカタチになってしまう。
ソレを人は現実として受け入れなくてはならない。
後悔も懺悔も此処から先は誰もが背負わなければならない。
そしてその現実にはまた蓋をする必要が出てくるわけで。
蓋をすれば見えないも同義。
だから私はソレに蓋をして、人の道化を見ないフリ気づかないフリ。
俄然、疑心暗鬼の渦中に呑まれようとも。
あのときとなんら変わりはしないもの。
なんだ、他人事かよ。
とんだ死にたがりねあなた。
誰でもない誰かが嘲る。
だから自分はその誰かに
死にたがりだなんて今更。
今日死んだって?
もう、死んでるよ。
なんて朗らかに笑う。
別に死にたいわけじゃない。私は私のまま、私のために生きているだけ。
他人を肯定し、自己を肯定し…。
勿論、博愛しますとも。
自分のことにも蓋をしておけば見ないフリ、できるもの。それが得意分野だから。
あ、そういえば
──××の声。
此処に来てからは一度も聞いてない。
[あなたが死ねば私も死ねるのに。]
「――――――――そっか、始まっちゃったんだ」
教会でピエロと別れたあと、流れ始めたアナウンス。
そして、手近な場所に現れたリュック。
来なければいいのにと思っていた時間が、とうとう来てしまったらしい。
姿は違えど、少なからず気心の知れた相手と行うデスゲーム、殺し合い。
こんなこと、終わらせなければならない。
リュックサックの中身を確認して、苦笑する。
「…………まぁ、やるだけやってみようかな」
なんともまぁ、やりにくいものだけど。
みんなで生きて帰りたいから。
それが『エム』の願いだから。
とりあえず、誰かと合流しよう。
信頼できるような誰かが、いる訳では無いけど。
教会でピエロと別れたあと、流れ始めたアナウンス。
そして、手近な場所に現れたリュック。
来なければいいのにと思っていた時間が、とうとう来てしまったらしい。
姿は違えど、少なからず気心の知れた相手と行うデスゲーム、殺し合い。
こんなこと、終わらせなければならない。
リュックサックの中身を確認して、苦笑する。
「…………まぁ、やるだけやってみようかな」
なんともまぁ、やりにくいものだけど。
みんなで生きて帰りたいから。
それが『エム』の願いだから。
とりあえず、誰かと合流しよう。
信頼できるような誰かが、いる訳では無いけど。
―――……かつ、こつ、と古びた時計の針の音を聞いて、ゆっくりと感覚を体に引き寄せていく。遠のきかけた非現実的な現実をしっかりと掴んでおく為に。後は寝るだけのつもりで照明を落とした薄暗い部屋の中でぼんやりとタブレット端末の明かりが顔を照らす。所謂`共有チャット`と呼ばれるそこでは、見聞きしない名前の者達があれこれと既に先への複線を張り巡らせていて、まるで歪な蜘蛛の巣が出来ていく様を見ているような心地だった。
さして、不快でもなかったが。
ただ、アナウンスがある前から嫌な感覚はずっとしていた。誰かと穏やかな時間を過ごすたびに、それを嘲笑されるような感覚がちりちりと項を焼くのだ。満を持してとでも言うように時間きっかりに流れた酔狂な声は嫌に楽しそうで、今にも再び騒ぎ出しそうな不穏の残滓を胸の中に残していった。粗目のように、体に残る。
「……騙しあい、など」
そんなもの、
さして、不快でもなかったが。
ただ、アナウンスがある前から嫌な感覚はずっとしていた。誰かと穏やかな時間を過ごすたびに、それを嘲笑されるような感覚がちりちりと項を焼くのだ。満を持してとでも言うように時間きっかりに流れた酔狂な声は嫌に楽しそうで、今にも再び騒ぎ出しそうな不穏の残滓を胸の中に残していった。粗目のように、体に残る。
「……騙しあい、など」
そんなもの、
始まった。
何処か予見していたのかもしれない。
こうなることは……どこか。 分かっていたのかもしれない。
人の絆だとか…… そういうものを植え付けさせて コロシアイさせる
だったら……最初から本体で殺し合えばいいのに。 なんて上告しても意味はない
「誰が最初に殺すのか 誰が最初に死ぬのか 次に誰が殺すのか 死ぬのか」
真っ赤な雪原 真っ赤な真っ赤な雪原に立つ 青
赤に染まった銀の刃を握る。 その赤を見つめる青
「……くだらない」
情報が混線するタイムラインをみて嘲笑する。
……さて、と これを見てみんなはどうするのか……
動かない人形を抱えて 吹雪の中へ消えていく。
何処か予見していたのかもしれない。
こうなることは……どこか。 分かっていたのかもしれない。
人の絆だとか…… そういうものを植え付けさせて コロシアイさせる
だったら……最初から本体で殺し合えばいいのに。 なんて上告しても意味はない
「誰が最初に殺すのか 誰が最初に死ぬのか 次に誰が殺すのか 死ぬのか」
真っ赤な雪原 真っ赤な真っ赤な雪原に立つ 青
赤に染まった銀の刃を握る。 その赤を見つめる青
「……くだらない」
情報が混線するタイムラインをみて嘲笑する。
……さて、と これを見てみんなはどうするのか……
動かない人形を抱えて 吹雪の中へ消えていく。
この世は自己満足でできた世界だ。
遊びたいから遊ぶ。食べたいから食べる。眠たいから寝る。そんな願望によって作られた世界。自己犠牲の精神なんていうけれども、そこにあるのは結局自分が身を呈してやったことにより他人を助けられた、という達成感。結局はそれを得るがための行為。まあ、つまりは自己満足といえ言葉に全ては丸く納まってしまう。
…廃工場の中を歩く。どうやら誰もいないようで。少しだけ安心した。道具集めは1人でやりたいものね。
あの時聞こえたアナウンス。どうやら、予測していたことがついに始まってしまったようだ。まあ、でも正直そこまで騒ぐほどのことでもない。…何故?だって予測してたことがあたった。それだけのことだもの。ただ、気分がいいとは言えないけれどね。
適当に使えそうなものを回収する。…へぇ。サリンなんてものもあるんだ。
このゲームもきっと突き詰めれば誰かの自己満足。自己満足っていうのはその欲が大きければ大きいほど誰かの犠牲を欲する。…そしてそれは、自己満足同士の衝突に繋がる。どちらが満足できるか。そしてそれはどちらかを“糧”にするまで終わることは無い。
…ランドセルがすこしおもくなっちゃったな。着物どうしよう。
私も、その自己満足を、持っている。きっと悪趣味だ、というのも自己満足でしかない。だってそれを見たくないってだけの我儘だから。…ああ、だからわからないんだよね。
…悲しむ理由ってやつが。
さて、そろそろでようか。あらかた欲しいものは回収したし。…ああ、そうそう。別に私も悲しくなる時はなるよ?私が言いたいのは…ううん。なんでもない。
遊びたいから遊ぶ。食べたいから食べる。眠たいから寝る。そんな願望によって作られた世界。自己犠牲の精神なんていうけれども、そこにあるのは結局自分が身を呈してやったことにより他人を助けられた、という達成感。結局はそれを得るがための行為。まあ、つまりは自己満足といえ言葉に全ては丸く納まってしまう。
…廃工場の中を歩く。どうやら誰もいないようで。少しだけ安心した。道具集めは1人でやりたいものね。
あの時聞こえたアナウンス。どうやら、予測していたことがついに始まってしまったようだ。まあ、でも正直そこまで騒ぐほどのことでもない。…何故?だって予測してたことがあたった。それだけのことだもの。ただ、気分がいいとは言えないけれどね。
適当に使えそうなものを回収する。…へぇ。サリンなんてものもあるんだ。
このゲームもきっと突き詰めれば誰かの自己満足。自己満足っていうのはその欲が大きければ大きいほど誰かの犠牲を欲する。…そしてそれは、自己満足同士の衝突に繋がる。どちらが満足できるか。そしてそれはどちらかを“糧”にするまで終わることは無い。
…ランドセルがすこしおもくなっちゃったな。着物どうしよう。
私も、その自己満足を、持っている。きっと悪趣味だ、というのも自己満足でしかない。だってそれを見たくないってだけの我儘だから。…ああ、だからわからないんだよね。
…悲しむ理由ってやつが。
さて、そろそろでようか。あらかた欲しいものは回収したし。…ああ、そうそう。別に私も悲しくなる時はなるよ?私が言いたいのは…ううん。なんでもない。
ああ、然ういえば。オレの話はしていても、"アイツ"の話はまだしていなかったか。
いつしか、主人格は覚えていないけど交代人格は覚えている、という感じの話をしたのを覚えてる?
まあ、つまり、話さなくても然ういうコトだと皆は納得してくれるだろう。"然う"いうコトだ。
皆は"胡蝶之夢"ってヤツをご存じかな?
自分が蝶になった夢を見ていたのか、今の自分は蝶が見ている夢なのか。なんて、些細な問題であること。
蝶の時は蝶であるというのが真実だし、自分である時は自分であるのが真実。どちらが本当なのか、どちらが嘘なのかだなんて、語るだけ無駄な話。
つまり、どちらでも良い。
人の感情に関しても同じことが言える。自分が本当はどう思っているのか、今思っていないコトが自分の本心なんじゃないか、とか。
そんなのは些細な問題。"今"愉しいのならそれでいいし、"今"愉しくないのならそれでいい。
オレは今を"愉しみ"に生きている。このゲエムを愉しみにしている。本心がどうだとか、本当に考えていることはどうだとかなんて、他の人からしてみれば"些細な問題"になってしまうわけで。
人間なんて然ういう"表面上の言動"だけで捉えられてしまう生き物なわけで。
其れだけで人の全てを量った気になるなど言語道断。でも、つまらないことではない。"然ういう"量り方、オレもやったことある。
でも、アイツは違うワケだ。
人はなにぶん、自分勝手な生き物なわけで。自分の好きに行動するのは"自分がそうしたいから"、相手の行動に合わせるのは"相手に全て任せたいから"だったり。
でもその裏では、必ず"何かの目標を達成したい"とかいう自己中心的な理由が存在するわけで。
アイツは、違う。何も考えていないし、何も成そうとはしていないし、何に喜びを覚えることも、何に怒りを抱くこともない。
ただ"他人の考えていることが全て"。無意識に行動を起こすから面倒なわけで。他人の意識が全て。
閑話休題。
アイツは"狂っている"とか"おかしい"のベクトルで量るヤツではない。狂っているヤツも"何かしらの目的をもって、何をするために"行動しているわけだ。
おかしいヤツも"自分で何をしたいか"くらいちゃんと把握している。
だったら、如何表現するのが正しいのか。
オレはアイツを"壊れている"って考えている。正気でも狂気でもない。無感情なのかもしれないし感情豊かなのかもしれない。でもそれはオレが知っている範囲じゃない。だってオレじゃないんだもの。
だからこそ、オレはアイツが一番怖い。
正直、死ぬのとか殺すのとか生きるだとかは其処まで。だって、そんなことに怯えているようじゃオレも狂人やってないもの。
でも、"アイツ"が何かを成すことは怖い。アイツが行動することで、知らぬうちに人を殺しているかもしれないし…
――それこそ、自分の意志がないところで、勝手に死んでいるのかもしれない。
多重人格は一心同体?いや、一方通行だ。相手の意志を勝手に汲み取らなければいけない。相手の行動を勝手に享受しなければいけない。
ああ、怖い。アイツは次、何をしてくる?
柏木ちゃんとかこころちゃんとかトロンパちゃんと話した時は、そこまで"何もしていなかった"。まあつまり、"オレの運が良かった"ってだけ。
ああ、でも、もう一つ。怖いモノがあった。
――――自分の本心。オレは、今、何を考えているの?
そんなの、答えは一つ。
――――オレは、今、このゲエムを愉しむことしか考えていないよ!
いつしか、主人格は覚えていないけど交代人格は覚えている、という感じの話をしたのを覚えてる?
まあ、つまり、話さなくても然ういうコトだと皆は納得してくれるだろう。"然う"いうコトだ。
皆は"胡蝶之夢"ってヤツをご存じかな?
自分が蝶になった夢を見ていたのか、今の自分は蝶が見ている夢なのか。なんて、些細な問題であること。
蝶の時は蝶であるというのが真実だし、自分である時は自分であるのが真実。どちらが本当なのか、どちらが嘘なのかだなんて、語るだけ無駄な話。
つまり、どちらでも良い。
人の感情に関しても同じことが言える。自分が本当はどう思っているのか、今思っていないコトが自分の本心なんじゃないか、とか。
そんなのは些細な問題。"今"愉しいのならそれでいいし、"今"愉しくないのならそれでいい。
オレは今を"愉しみ"に生きている。このゲエムを愉しみにしている。本心がどうだとか、本当に考えていることはどうだとかなんて、他の人からしてみれば"些細な問題"になってしまうわけで。
人間なんて然ういう"表面上の言動"だけで捉えられてしまう生き物なわけで。
其れだけで人の全てを量った気になるなど言語道断。でも、つまらないことではない。"然ういう"量り方、オレもやったことある。
でも、アイツは違うワケだ。
人はなにぶん、自分勝手な生き物なわけで。自分の好きに行動するのは"自分がそうしたいから"、相手の行動に合わせるのは"相手に全て任せたいから"だったり。
でもその裏では、必ず"何かの目標を達成したい"とかいう自己中心的な理由が存在するわけで。
アイツは、違う。何も考えていないし、何も成そうとはしていないし、何に喜びを覚えることも、何に怒りを抱くこともない。
ただ"他人の考えていることが全て"。無意識に行動を起こすから面倒なわけで。他人の意識が全て。
閑話休題。
アイツは"狂っている"とか"おかしい"のベクトルで量るヤツではない。狂っているヤツも"何かしらの目的をもって、何をするために"行動しているわけだ。
おかしいヤツも"自分で何をしたいか"くらいちゃんと把握している。
だったら、如何表現するのが正しいのか。
オレはアイツを"壊れている"って考えている。正気でも狂気でもない。無感情なのかもしれないし感情豊かなのかもしれない。でもそれはオレが知っている範囲じゃない。だってオレじゃないんだもの。
だからこそ、オレはアイツが一番怖い。
正直、死ぬのとか殺すのとか生きるだとかは其処まで。だって、そんなことに怯えているようじゃオレも狂人やってないもの。
でも、"アイツ"が何かを成すことは怖い。アイツが行動することで、知らぬうちに人を殺しているかもしれないし…
――それこそ、自分の意志がないところで、勝手に死んでいるのかもしれない。
多重人格は一心同体?いや、一方通行だ。相手の意志を勝手に汲み取らなければいけない。相手の行動を勝手に享受しなければいけない。
ああ、怖い。アイツは次、何をしてくる?
柏木ちゃんとかこころちゃんとかトロンパちゃんと話した時は、そこまで"何もしていなかった"。まあつまり、"オレの運が良かった"ってだけ。
ああ、でも、もう一つ。怖いモノがあった。
――――自分の本心。オレは、今、何を考えているの?
そんなの、答えは一つ。
――――オレは、今、このゲエムを愉しむことしか考えていないよ!
「………………」
(コロパッドに23枚(これでも厳選した)入っているエムのヌード写真を見て、思案に耽る。
ーーやっぱり何かが違う。
ユーラシア大陸よりも広い心を持つエムちゃんにあんなことやらせといて何が違うだよ、死ねよ、と思うのはごもっともである。中の人もそう思う。
でも、違う。
あの日、あの瞬間だったからこそ……あいごころ。ちゃんの写真は、この上ない輝きを放ったのだ)
「はぁ……。おっと、今は皆で帰る方法を考えないとですよね……」
(コロパッドに23枚(これでも厳選した)入っているエムのヌード写真を見て、思案に耽る。
ーーやっぱり何かが違う。
ユーラシア大陸よりも広い心を持つエムちゃんにあんなことやらせといて何が違うだよ、死ねよ、と思うのはごもっともである。中の人もそう思う。
でも、違う。
あの日、あの瞬間だったからこそ……あいごころ。ちゃんの写真は、この上ない輝きを放ったのだ)
「はぁ……。おっと、今は皆で帰る方法を考えないとですよね……」
気がついたときには自室に居た。
部屋の灯一つ付けずに身を投げ出すようにベッドに横たわっていたみたいで。
どのくらいこうしていただろうなんて考えてみたけれど、時の流れは緩やかなものだから。
きっと差程過ぎてはいないのだろうと、差し込む月明かりを見ながら朧気に思ってみた。
思ってみた、なんていうだけで本当は思考することすら億劫で。実は何も考えていないのかもしれないのだけれど。
一人で笑っていた。
というより、もう張り付いてしまった。笑顔が。
死は涼しい夜だ。
生は蒸し暑い昼間だ。
誰かがそう綴っていたのを見たことがあるけれど、生憎此処には
趣深い冷涼も
髪の張り付くような蒸し暑さも
在りはしないわけで。
在るのは凍えるような寒さだけだ。
その寒さは一人の私には余りにも冷たくて。
瘡蓋にならない記憶の古傷を何時までも膿ませて塞いでやくれない。
瘡蓋になったとしてもそれは気づけば剥いでしまうからきっと無意味なのだろう。
幾ら蓋をしても結局自分は自分でそれ以上でも以下でも無くてどうしようもなくなるのだ。
見た目を偽るくらいなら、名前を偽るくらいなら、性格を偽るくらいなら、
いっその事、
存在自体消してはくれないだろうか。
誤ち[過ち]自体消してはくれないだろうか。
全てを全て塗り替えてくれれば、こうも悩むことはなかったのに。
なんて気持ちにも全て蓋をしておいた。
今は、否
今までとなんら変わりなく自分は自分であるのだから、後悔も懺悔もあのときと同じく蓋をして笑い続ける。
何処までも清らかで白い無垢なる花に、
なれはしないけれど、
眠りにつけば明日の私は私として笑うのだからそれでいいのだと。
思うことにしようかしら。
分からないけど。
そういえば、あの時鏡に映った彼女は[い]の口を開けてこう言った。
[──死んでしまえ]
って。
いや、いつもの事か。
部屋の灯一つ付けずに身を投げ出すようにベッドに横たわっていたみたいで。
どのくらいこうしていただろうなんて考えてみたけれど、時の流れは緩やかなものだから。
きっと差程過ぎてはいないのだろうと、差し込む月明かりを見ながら朧気に思ってみた。
思ってみた、なんていうだけで本当は思考することすら億劫で。実は何も考えていないのかもしれないのだけれど。
一人で笑っていた。
というより、もう張り付いてしまった。笑顔が。
死は涼しい夜だ。
生は蒸し暑い昼間だ。
誰かがそう綴っていたのを見たことがあるけれど、生憎此処には
趣深い冷涼も
髪の張り付くような蒸し暑さも
在りはしないわけで。
在るのは凍えるような寒さだけだ。
その寒さは一人の私には余りにも冷たくて。
瘡蓋にならない記憶の古傷を何時までも膿ませて塞いでやくれない。
瘡蓋になったとしてもそれは気づけば剥いでしまうからきっと無意味なのだろう。
幾ら蓋をしても結局自分は自分でそれ以上でも以下でも無くてどうしようもなくなるのだ。
見た目を偽るくらいなら、名前を偽るくらいなら、性格を偽るくらいなら、
いっその事、
存在自体消してはくれないだろうか。
誤ち[過ち]自体消してはくれないだろうか。
全てを全て塗り替えてくれれば、こうも悩むことはなかったのに。
なんて気持ちにも全て蓋をしておいた。
今は、否
今までとなんら変わりなく自分は自分であるのだから、後悔も懺悔もあのときと同じく蓋をして笑い続ける。
何処までも清らかで白い無垢なる花に、
なれはしないけれど、
眠りにつけば明日の私は私として笑うのだからそれでいいのだと。
思うことにしようかしら。
分からないけど。
そういえば、あの時鏡に映った彼女は[い]の口を開けてこう言った。
[──死んでしまえ]
って。
いや、いつもの事か。
(パチリ。
目を開き、周囲を見渡して。すぐに消えたものはすぐに理解した。
モヌケの殻だね、なんて。何処か他人事のように呟いて。
残ったのはコロパットだけ。だから、それを手に取った。
そして文章を書きこみ、端末を閉じる。これくらいはさせてもらわないと、な?
まだチャンスはある。
一つイタイのは手に入れたアイテムだが、“アレは結局意味が無い”のだからどうでもいい。
オレはアレを全て分かっている。
折角作ったモノも、また調達すればいい話。もしかしたら、もっといい物を作れるかも。
楽観的、"ああやられたか"なんて。
そうでもしていないと壊れてしまいそうだから。…否、もう壊れているが。)
「──────、行こうか。」
(床に落ちたメスを一つとって、ニヤリと笑う。部屋から出ては、病院内を一通り巡って。必要かは分からないけれど、いくつか物品を手に取っておいた。
加害者になる────なんて、そんな大それた事は言わない。
だけど。
やられたら、やり返さなきゃ。
今の自分にはソレをする為の力があるんだから。
存分に使わなきゃ、失ったものは取り返す。もう二度と失わない為、俺はこの場を壊変する。
いつか■■■にも。
いつか×××にも。
嗚呼、楽しいね。楽しくなってきたよ。隠して隠して封をして包んで包んで、その結果。
全部、八つ当たりで壊してやろう。
────彼は、闇の淵に呑み込まれたようで。)
「…──────それじゃ、」
(ギュ、とメスを握り締め。
パーティーを始めようじゃないか、なんて巫山戯たことは言わないけれど。
でも、やってやらなきゃ。面白くないじゃない?
…ああ、どうやら。
いつの間にか、俺は"天使に成り下がった"みたいだ。
一気に外へ駆け出して。
その目はもう、二度と戻れないことを暗示していた。)
「──────一気に行くよッッ!!!」
(報復の刻は、───来た。来てしまったのだ。
さあ、3 2 1 で踏み出して。
嗚呼、別に。
殺すつもりはないですよ?
なんて、嘘(フェイク)で演技(フェイク)かもね。
そう言えば、唐揚げが食べたい気分だね。
唐揚げとお茶で御茶会議とでも洒落込もうじゃないか、天使?)
目を開き、周囲を見渡して。すぐに消えたものはすぐに理解した。
モヌケの殻だね、なんて。何処か他人事のように呟いて。
残ったのはコロパットだけ。だから、それを手に取った。
そして文章を書きこみ、端末を閉じる。これくらいはさせてもらわないと、な?
まだチャンスはある。
一つイタイのは手に入れたアイテムだが、“アレは結局意味が無い”のだからどうでもいい。
オレはアレを全て分かっている。
折角作ったモノも、また調達すればいい話。もしかしたら、もっといい物を作れるかも。
楽観的、"ああやられたか"なんて。
そうでもしていないと壊れてしまいそうだから。…否、もう壊れているが。)
「──────、行こうか。」
(床に落ちたメスを一つとって、ニヤリと笑う。部屋から出ては、病院内を一通り巡って。必要かは分からないけれど、いくつか物品を手に取っておいた。
加害者になる────なんて、そんな大それた事は言わない。
だけど。
やられたら、やり返さなきゃ。
今の自分にはソレをする為の力があるんだから。
存分に使わなきゃ、失ったものは取り返す。もう二度と失わない為、俺はこの場を壊変する。
いつか■■■にも。
いつか×××にも。
嗚呼、楽しいね。楽しくなってきたよ。隠して隠して封をして包んで包んで、その結果。
全部、八つ当たりで壊してやろう。
────彼は、闇の淵に呑み込まれたようで。)
「…──────それじゃ、」
(ギュ、とメスを握り締め。
パーティーを始めようじゃないか、なんて巫山戯たことは言わないけれど。
でも、やってやらなきゃ。面白くないじゃない?
…ああ、どうやら。
いつの間にか、俺は"天使に成り下がった"みたいだ。
一気に外へ駆け出して。
その目はもう、二度と戻れないことを暗示していた。)
「──────一気に行くよッッ!!!」
(報復の刻は、───来た。来てしまったのだ。
さあ、3 2 1 で踏み出して。
嗚呼、別に。
殺すつもりはないですよ?
なんて、嘘(フェイク)で演技(フェイク)かもね。
そう言えば、唐揚げが食べたい気分だね。
唐揚げとお茶で御茶会議とでも洒落込もうじゃないか、天使?)
「ふんふーんふーん…何書こうかなぁ〜」
ホテルの自分の部屋、部屋に備わっている椅子と机、椅子に座り無骨な少し大きめな手帳を広げながら唸る
何を書こうか……と
書くことは沢山ある、沢山ありまくる
「適当に幽霊になった時の日記でも書くかぁ〜」
そう言い、空白の手帳にペンを走らせる
幽霊日記内容
『10月22日 午前3時00分位
僕事ふ○なっしー、またの名はフリッツはあのメガネをかけた女に刀で斬り殺されてしまった…殺された理由は書かないが相手はなんかアゾートというこのゲームの黒幕と俺を勘違いして殺したのだろう……まぁ、理由は定かでは無いが。
しかし気がかりな事がある……1番気がかりなのは幽霊になっている事、あの時俺は死に、そのまま地獄に送られる筈だった……が自分の死体の近くで幽霊として復活した……人とも話せるし接触した相手はこちらの姿が見えるらしい、らしいと言うのはそれを聞いていないからだ反応と目線からして見えているだろう、確実に、そして一番の発見は幽霊でも物に触れれる事だこれには驚いた幽霊ならポルターガイストか何かで動かすと思っていたのだが……触れられるとは…まさかポルターガイストは数人の幽霊でやっていた…?
まぁ、そんな事はどうでもいい重要なのは協力関係であるあいごころ…という見た目ょぅι゛ょが店員の顔を見た瞬間店員を突き放し混乱していた事だ、理由がわからない……知り合いのようだったが……あの混乱の仕方は異常だハッキリ言って、知り合いがいたなら少し驚くとかそんな軽い反応を見せるのだが……もしかしてあの店員はあいごころの知り合いで既に死んでいる人間だった?
ならあの驚き要は納得が行く、まぁ情報が無いから決め打つのはまだ早いが』
「っとこんなもんか〜……引き出しの中に入れて鍵を掛ける、よしこれでOK」
引き出しを開け、鍵を掛ける、鍵を抜くと部屋に置いてあるふ○なっしーの中に隠す。
よしこれで良いだろうたぶん
「………ふぅぅ……さて、どうなる事やら……あ、ぼくの死体回収しとこ」
思い立ったが吉日、そそくさと自室を出ると停留所まで移動する
ホテルの自分の部屋、部屋に備わっている椅子と机、椅子に座り無骨な少し大きめな手帳を広げながら唸る
何を書こうか……と
書くことは沢山ある、沢山ありまくる
「適当に幽霊になった時の日記でも書くかぁ〜」
そう言い、空白の手帳にペンを走らせる
幽霊日記内容
『10月22日 午前3時00分位
僕事ふ○なっしー、またの名はフリッツはあのメガネをかけた女に刀で斬り殺されてしまった…殺された理由は書かないが相手はなんかアゾートというこのゲームの黒幕と俺を勘違いして殺したのだろう……まぁ、理由は定かでは無いが。
しかし気がかりな事がある……1番気がかりなのは幽霊になっている事、あの時俺は死に、そのまま地獄に送られる筈だった……が自分の死体の近くで幽霊として復活した……人とも話せるし接触した相手はこちらの姿が見えるらしい、らしいと言うのはそれを聞いていないからだ反応と目線からして見えているだろう、確実に、そして一番の発見は幽霊でも物に触れれる事だこれには驚いた幽霊ならポルターガイストか何かで動かすと思っていたのだが……触れられるとは…まさかポルターガイストは数人の幽霊でやっていた…?
まぁ、そんな事はどうでもいい重要なのは協力関係であるあいごころ…という見た目ょぅι゛ょが店員の顔を見た瞬間店員を突き放し混乱していた事だ、理由がわからない……知り合いのようだったが……あの混乱の仕方は異常だハッキリ言って、知り合いがいたなら少し驚くとかそんな軽い反応を見せるのだが……もしかしてあの店員はあいごころの知り合いで既に死んでいる人間だった?
ならあの驚き要は納得が行く、まぁ情報が無いから決め打つのはまだ早いが』
「っとこんなもんか〜……引き出しの中に入れて鍵を掛ける、よしこれでOK」
引き出しを開け、鍵を掛ける、鍵を抜くと部屋に置いてあるふ○なっしーの中に隠す。
よしこれで良いだろうたぶん
「………ふぅぅ……さて、どうなる事やら……あ、ぼくの死体回収しとこ」
思い立ったが吉日、そそくさと自室を出ると停留所まで移動する
暗い、所にいた
ただただ暗いそこで、特に何をするでも無く
じっとうずくまっていた
(………)
何をするでも無く
何ができるわけでも無かった
ならば仕方がない
初めから、お呼ばれでは無かった
それだけの事だ
(………)
殺そうと、思っていた
こんなゲームにせっかく呼ばれたのだ
できる限りの人を殺せるだけ殺してやろう、と
できなかった
いたぶる事ができても
泣かせる事ができても
最後の最後、殺す事は出来なかった
なら、このゲームにおける"トロンパ"に意味は無い
…そう、思っていたが
悔しさがあった
叫びたいほどの、悔しさが
「…そういえば、そんなこともあったっけか…はは…。」
笑う 嗤う 破顔う
「…なら。"僕"にも、やる事があるかな。」
ただただ暗いそこで、特に何をするでも無く
じっとうずくまっていた
(………)
何をするでも無く
何ができるわけでも無かった
ならば仕方がない
初めから、お呼ばれでは無かった
それだけの事だ
(………)
殺そうと、思っていた
こんなゲームにせっかく呼ばれたのだ
できる限りの人を殺せるだけ殺してやろう、と
できなかった
いたぶる事ができても
泣かせる事ができても
最後の最後、殺す事は出来なかった
なら、このゲームにおける"トロンパ"に意味は無い
…そう、思っていたが
悔しさがあった
叫びたいほどの、悔しさが
「…そういえば、そんなこともあったっけか…はは…。」
笑う 嗤う 破顔う
「…なら。"僕"にも、やる事があるかな。」
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