ログ集 
届かない声、と 2nd-3rd
みかんちゃん(2nd)-五番目の道化師(3rd)
【五番目の道化師】
北エリアから中央エリアへ戻るための路面電車が揺れる。誰もいないというのに席に座らず、つり革に捕まり、真っ白な景色を楽しむ道化師は、まだピエロメイクはしていなかった。ホテルに化粧道具を忘れてきたためだ。
「あっ、そろそろかな」
何度かこの電車に乗っているからそろそろ電車が停まるというのがわかる。ゆっくりとスピードが落ちていき…完全に停車。道化師は路面電車のドアを開け、停留所に戻ってきた。
早くホテルに帰ってサラシを巻きたい。ピエロメイクをしたい。道化師はそんなことを考えながらも停留所にある店々をみながら外へ向かおうとする。
【みかんちゃん】
………………。
停留所の売店。
売り場に佇むNPCを疎むように蔑むように見て、一笑。
──悪趣味ね。
何がとは言わないけれど。
一度は動揺したが二度目は平気だった。
これが確認出来たから、もう満足。
ちゃんと蓋は閉めきれたのだと安堵して、またこれから普通に笑えそうだと目を閉じた。
ふいの、足音。人の気配。
振り返って、いつも通りなんら変わりなく一寸違わず私として振る舞う。
「──あら？ご機嫌よう？」
見たことない人が歩いてたからとりあえずとご挨拶。
いや、彼女のことは多分見たことある気もするけれど。まぁ、挨拶するに越したことはないから。
【五番目の道化師】
「あっ！みかんちゃんだ！みかんちゃん！こんばんわ！」
相手の心情なんて露知らず道化師は明るく挨拶をした。少し、挨拶が子供っぽくなってしまった気がするが…まぁいいか。
「お久しぶりな気がするね。あっ、私のこと誰だかわかります？」
前回は確かメイクをしていたから…気づかれなくてもおかしくはない。わからなければ名乗り直すつもりなようで道化師は首を傾げながら問いかけてみた。
【みかんちゃん】
「んー…誰かしら？」
小首を傾げて困ったように笑って。
嘘、
「ピエロちゃんね。ふふ、声でわかるわよ？」
一拍置いておどけたようにそう応えた。
くすくす笑うのは知り合いとの再会に心を許しているからということで。
「にしてもあれ程頑なに落とさなかった勝負メイクはどうしたの？時間、かかるんでしょうに。」
【五番目の道化師】
「あっ、やっぱり声でわかるんだ。
化粧はね。うん、時間がかかるから今日はできなかったんだ。さっきまで急ぎの用事で出掛けてたからメイクするほどの時間なかったんだよ！」
あんまりずっとメイクをしていても肌が荒れそうだしね！と付け加えながら道化師は笑みを浮かべた。
「みかんちゃんは───あれ？雰囲気かわった？」
なんか、前回会ったときと雰囲気が違う気がする。何かあったのかな。道化師は首をかしげてみる。
【みかんちゃん】
「あぁ、なら今はプライベートだったのね、ごめんあそばせ？」
乙女が四六時中お化粧してるわけないものねなんて乙女の理解者であるかのような口振りは相も変わらず。
相も変わらず、なんだけれど雰囲気変わった？
いや、そんなつもりはないのだけれど。
ほら口調だって仕草だって笑顔だって何一つ変わりはしないはず。
気の所為よ。
もしくは、
「色々と始まってさすがの私も疲れちゃったのかしらねん。」
こっちのほうが真っ当。
普通に生きていればこのわけのわからない状況に疲れない人間がいないはずはないのだから。
「あなたは平気？」
自分のことより彼女のこと。
始まってから大変なことはなかったか、心配そうに問うてみた。
【五番目の道化師】
「皆、やっぱり参っちゃうよね…こんな状況」
私も道化師じゃなければ部屋に閉じ籠りたいレベルの異常事態だ。ただでさえ姿が変わってるだけでもあれなのに。
「うん、私は大丈夫です！道化師だからへこたれてられないし！」
笑顔でそう言った。
自分のことより…少しでも皆を元気付けなきゃ！と、道化師は常に考えていた。それはこのゲームが始まってからも変わりない。
【みかんちゃん】
「んふ、それを聞いて安心したわ♡」
道化師だから笑う。
そういう彼女は道化にしては随分と無垢に笑うものだ。
どうやったらそんなふうに笑えるのか。
雰囲気が変わった
だの
何か隠している
だの
そんなこと疑う余地のない笑顔を自分も浮かべたいのだけれど。浮かべてきたつもりなのに。
彼女は本当に無垢で真っ白なのだろう。
…──羨ましい。
訂正、微笑ましい。
訂正する必要はもうないと思ってはみても癖は治らない。まぁ、蓋なんて回せば開いたり閉まったりするのだからそう容易に仕舞いこむことができない。
そのくらい随分前から知っているわけで。
「今は帰りかしら？ホテルまでご一緒してもよろしくて？私も今から帰るところだったから。」
ついでにお話できたらそれにこしたことはないでしょうなんて付け加えて微笑んで。
【五番目の道化師】
「うん、今から帰るところだよ！」
いつも一人で歩いてるからみかんちゃんとお喋りしながらホテルへの道を歩けると考えると、それだけで楽しい気分になってくる。
道化師は背負っていたリュックを背負い直して歩き始めた。
「みかんちゃん！雪が降り出す前にいこう！電車に乗ってるときに雪雲が流れてるのを見たんだ！」
【みかんちゃん】
「雪？それは大変…ただでさえ寒いものね。早く帰るとしましょうか。」
それは困ると眉尻を下げて応えると彼女と並んで歩き始める。
停留所を振り返りはしない。
もう振り返る必要も立ち寄る必要もないから。
雪が降れば此処も遠くから見えやしないでしょう。
「そういえば、ピエロちゃんは配られたアイテムなんだったのかしら？みんながみんな違ったみたいだけれど…」
たわいのない世間話、といっても此処での話題はやっぱりそのくらいしかなくて。
でも一応お互い知っておいたほうがいいだろうからそれを率直に尋ねてみた。
【五番目の道化師】
「私は同人誌だったよ。ＧL(じーえる)モノって書いてあるんだけどよくわからなかった！ＧLってなんだろうね。」
ＧLってなんだろう。
一応、一通り読んでみたけどなんか女の子同士が闘ったり、絶望したり。不思議な物語だったなぁ。
「あっ、みかんちゃんは何届いた？」
【みかんちゃん】
「えぇ、なにそれ！？可笑しいの。そんなモノ貰っても困るわよねぇ？」
ある意味で悪意しか感じない配布物に目を丸くしておどけてみせて、それから笑いを堪えるようなそんな表情を浮かべる。
一言一句一喜一憂全てが友人と談笑するときとなんら変わりなく。
それからこちらは何かと問われれば少し困ったように迷ったように一拍空けて口を開く。
「──スタンガンだったわ。まぁ、護身用に殺しを使わないだけ運がいいのかしら…なんて」
物騒な物でごめんなさいね？なんて申し訳なさそうに付け加えてしまえばそれは仕方なく使うことしかないということを暗に指していて。
【五番目の道化師】
「うん、一応読んだけどなんの役に立つのかわからなくて困っちゃったよ！あっ、でも戦闘シーンは面白かったよ！」
ＧLものなのに戦闘シーンを重視して読んだらしい。
「スタンガン？あー、あのビリビリするやつだよね。気絶させるやつだっけ？」
パッと浮かばなかったけど、たしか気絶させるための道具だったはず。使うような場面が来なければ良いけど。
【みかんちゃん】
「そうそう、ビリビリ痺れちゃうやつよん。危なくなったら気絶させちゃうかもね？」
もう使ったのだけれど。
あぁ、けど使う相手は正解だったからあれは護身だったということにしておこうかしらね。
あまり乱用しすぎればあちらに向いた疑いはこちらに向いてしまうからもう使うつもりはない。
多分。
あ、
「よかったらあげましょうか？いざってとき、女の子が素手は大変でしょう？」
忘れていたとでもいうように彼女にいるかいらないかを尋ねる。
【五番目の道化師】
「えっ、でも…貰っても私、使い方わからないよ…。それに、それを受け取ってしまったらみかんちゃんの安全が…。」
私は一応、曲芸の応用を使えば戦えなくはないけど…他の人はそうもいかないんじゃないかな？護身用の配布アイテムは受けとってはいけない気がする…。
【みかんちゃん】
「──優しいのね、みんな。」
がっついてくれれば直ぐに手放せるのに。
かれもこれもなにもかも上手くはいかないのはいつものことでしょう。
守りたいのよ。
誰を？
違う、自分を。
彼も彼女も秘密も何もかも。
全部蓋をしめた瓶の中に詰めてしまいたいのに、詰めてしまえれば何もかも考えずに済むのに。
「じゃあ、今のは忘れて頂戴。無理強いするのも悪いもの。…何より、あなたの身の回りでそんなことが起きないことを祈るのが何よりよね？」
起きないことを信じなくちゃね。
信じることが何より大事。疑うなんてのは自分にやましいことがある人間がするものだ。
彼女が全てを信じるなら私はそれを信じて祈りましょうと。
協会でお祈りした影響かしらね。
【五番目の道化師】
「えぇ、祈ります。クラスメイトに人を殺してしまった人がいるとわかっていても、これ以上の犠牲がでないことを…」
どうして人を殺してしまったんだろう。なぜ、そんなふうに人を殺せてしまったんだろう。わからないけど…、怖いけど、私は笑みを浮かべよう。
「私が道化師であるかぎり、祈り続けます」
【みかんちゃん】
「綺麗ね。」
まるで対極の存在。
なりきろうとしてもなりきれないのは彼女のような存在か。訂正なんてしなくても、彼女は綺麗で華麗で儚くて。
祈るだけではどうしようもないのよ。
なんて意地悪い誰かが、私がそう口にしかけたけれど、今は黙って彼女の頭を撫でておいた。
意味はない。ないけれど、昔のことを××の笑顔を思い出した。
××の方が小さかったかしら。
けど、同じくらい暖かかった。
そのときの目は、綺麗だった。
そのときの瞳も、綺麗だった。
「それじゃあ、ここまでかしら？お部屋に戻るまでが遠足よ？…なぁんてね」
ホテルの入口にたどり着くと冗談のように笑って別れを告げる。
またね
いつも誰にでもいうそれが今日だけは言えなかった。
【五番目の道化師】
「んむぅ…」
頭を撫でられても私は子供じゃないんだけどなぁ。だって、みんな同い年のクラスメイトじゃん。姿が変わったとしてもそれは変わらないはずなんだけどなぁ…
「あ…っ、いっちゃった…」
またね、の言葉も言う暇なかったや。
道化師は困った表情をしたながら伝え損なった「またね」という言葉を呟いてから自分が宿泊している部屋へもどるのだった。
【五番目の道化師】
北エリアから中央エリアへ戻るための路面電車が揺れる。誰もいないというのに席に座らず、つり革に捕まり、真っ白な景色を楽しむ道化師は、まだピエロメイクはしていなかった。ホテルに化粧道具を忘れてきたためだ。
「あっ、そろそろかな」
何度かこの電車に乗っているからそろそろ電車が停まるというのがわかる。ゆっくりとスピードが落ちていき…完全に停車。道化師は路面電車のドアを開け、停留所に戻ってきた。
早くホテルに帰ってサラシを巻きたい。ピエロメイクをしたい。道化師はそんなことを考えながらも停留所にある店々をみながら外へ向かおうとする。
【みかんちゃん】
………………。
停留所の売店。
売り場に佇むNPCを疎むように蔑むように見て、一笑。
──悪趣味ね。
何がとは言わないけれど。
一度は動揺したが二度目は平気だった。
これが確認出来たから、もう満足。
ちゃんと蓋は閉めきれたのだと安堵して、またこれから普通に笑えそうだと目を閉じた。
ふいの、足音。人の気配。
振り返って、いつも通りなんら変わりなく一寸違わず私として振る舞う。
「──あら？ご機嫌よう？」
見たことない人が歩いてたからとりあえずとご挨拶。
いや、彼女のことは多分見たことある気もするけれど。まぁ、挨拶するに越したことはないから。
【五番目の道化師】
「あっ！みかんちゃんだ！みかんちゃん！こんばんわ！」
相手の心情なんて露知らず道化師は明るく挨拶をした。少し、挨拶が子供っぽくなってしまった気がするが…まぁいいか。
「お久しぶりな気がするね。あっ、私のこと誰だかわかります？」
前回は確かメイクをしていたから…気づかれなくてもおかしくはない。わからなければ名乗り直すつもりなようで道化師は首を傾げながら問いかけてみた。
【みかんちゃん】
「んー…誰かしら？」
小首を傾げて困ったように笑って。
嘘、
「ピエロちゃんね。ふふ、声でわかるわよ？」
一拍置いておどけたようにそう応えた。
くすくす笑うのは知り合いとの再会に心を許しているからということで。
「にしてもあれ程頑なに落とさなかった勝負メイクはどうしたの？時間、かかるんでしょうに。」
【五番目の道化師】
「あっ、やっぱり声でわかるんだ。
化粧はね。うん、時間がかかるから今日はできなかったんだ。さっきまで急ぎの用事で出掛けてたからメイクするほどの時間なかったんだよ！」
あんまりずっとメイクをしていても肌が荒れそうだしね！と付け加えながら道化師は笑みを浮かべた。
「みかんちゃんは───あれ？雰囲気かわった？」
なんか、前回会ったときと雰囲気が違う気がする。何かあったのかな。道化師は首をかしげてみる。
【みかんちゃん】
「あぁ、なら今はプライベートだったのね、ごめんあそばせ？」
乙女が四六時中お化粧してるわけないものねなんて乙女の理解者であるかのような口振りは相も変わらず。
相も変わらず、なんだけれど雰囲気変わった？
いや、そんなつもりはないのだけれど。
ほら口調だって仕草だって笑顔だって何一つ変わりはしないはず。
気の所為よ。
もしくは、
「色々と始まってさすがの私も疲れちゃったのかしらねん。」
こっちのほうが真っ当。
普通に生きていればこのわけのわからない状況に疲れない人間がいないはずはないのだから。
「あなたは平気？」
自分のことより彼女のこと。
始まってから大変なことはなかったか、心配そうに問うてみた。
【五番目の道化師】
「皆、やっぱり参っちゃうよね…こんな状況」
私も道化師じゃなければ部屋に閉じ籠りたいレベルの異常事態だ。ただでさえ姿が変わってるだけでもあれなのに。
「うん、私は大丈夫です！道化師だからへこたれてられないし！」
笑顔でそう言った。
自分のことより…少しでも皆を元気付けなきゃ！と、道化師は常に考えていた。それはこのゲームが始まってからも変わりない。
【みかんちゃん】
「んふ、それを聞いて安心したわ♡」
道化師だから笑う。
そういう彼女は道化にしては随分と無垢に笑うものだ。
どうやったらそんなふうに笑えるのか。
雰囲気が変わった
だの
何か隠している
だの
そんなこと疑う余地のない笑顔を自分も浮かべたいのだけれど。浮かべてきたつもりなのに。
彼女は本当に無垢で真っ白なのだろう。
…──羨ましい。
訂正、微笑ましい。
訂正する必要はもうないと思ってはみても癖は治らない。まぁ、蓋なんて回せば開いたり閉まったりするのだからそう容易に仕舞いこむことができない。
そのくらい随分前から知っているわけで。
「今は帰りかしら？ホテルまでご一緒してもよろしくて？私も今から帰るところだったから。」
ついでにお話できたらそれにこしたことはないでしょうなんて付け加えて微笑んで。
【五番目の道化師】
「うん、今から帰るところだよ！」
いつも一人で歩いてるからみかんちゃんとお喋りしながらホテルへの道を歩けると考えると、それだけで楽しい気分になってくる。
道化師は背負っていたリュックを背負い直して歩き始めた。
「みかんちゃん！雪が降り出す前にいこう！電車に乗ってるときに雪雲が流れてるのを見たんだ！」
【みかんちゃん】
「雪？それは大変…ただでさえ寒いものね。早く帰るとしましょうか。」
それは困ると眉尻を下げて応えると彼女と並んで歩き始める。
停留所を振り返りはしない。
もう振り返る必要も立ち寄る必要もないから。
雪が降れば此処も遠くから見えやしないでしょう。
「そういえば、ピエロちゃんは配られたアイテムなんだったのかしら？みんながみんな違ったみたいだけれど…」
たわいのない世間話、といっても此処での話題はやっぱりそのくらいしかなくて。
でも一応お互い知っておいたほうがいいだろうからそれを率直に尋ねてみた。
【五番目の道化師】
「私は同人誌だったよ。ＧL(じーえる)モノって書いてあるんだけどよくわからなかった！ＧLってなんだろうね。」
ＧLってなんだろう。
一応、一通り読んでみたけどなんか女の子同士が闘ったり、絶望したり。不思議な物語だったなぁ。
「あっ、みかんちゃんは何届いた？」
【みかんちゃん】
「えぇ、なにそれ！？可笑しいの。そんなモノ貰っても困るわよねぇ？」
ある意味で悪意しか感じない配布物に目を丸くしておどけてみせて、それから笑いを堪えるようなそんな表情を浮かべる。
一言一句一喜一憂全てが友人と談笑するときとなんら変わりなく。
それからこちらは何かと問われれば少し困ったように迷ったように一拍空けて口を開く。
「──スタンガンだったわ。まぁ、護身用に殺しを使わないだけ運がいいのかしら…なんて」
物騒な物でごめんなさいね？なんて申し訳なさそうに付け加えてしまえばそれは仕方なく使うことしかないということを暗に指していて。
【五番目の道化師】
「うん、一応読んだけどなんの役に立つのかわからなくて困っちゃったよ！あっ、でも戦闘シーンは面白かったよ！」
ＧLものなのに戦闘シーンを重視して読んだらしい。
「スタンガン？あー、あのビリビリするやつだよね。気絶させるやつだっけ？」
パッと浮かばなかったけど、たしか気絶させるための道具だったはず。使うような場面が来なければ良いけど。
【みかんちゃん】
「そうそう、ビリビリ痺れちゃうやつよん。危なくなったら気絶させちゃうかもね？」
もう使ったのだけれど。
あぁ、けど使う相手は正解だったからあれは護身だったということにしておこうかしらね。
あまり乱用しすぎればあちらに向いた疑いはこちらに向いてしまうからもう使うつもりはない。
多分。
あ、
「よかったらあげましょうか？いざってとき、女の子が素手は大変でしょう？」
忘れていたとでもいうように彼女にいるかいらないかを尋ねる。
【五番目の道化師】
「えっ、でも…貰っても私、使い方わからないよ…。それに、それを受け取ってしまったらみかんちゃんの安全が…。」
私は一応、曲芸の応用を使えば戦えなくはないけど…他の人はそうもいかないんじゃないかな？護身用の配布アイテムは受けとってはいけない気がする…。
【みかんちゃん】
「──優しいのね、みんな。」
がっついてくれれば直ぐに手放せるのに。
かれもこれもなにもかも上手くはいかないのはいつものことでしょう。
守りたいのよ。
誰を？
違う、自分を。
彼も彼女も秘密も何もかも。
全部蓋をしめた瓶の中に詰めてしまいたいのに、詰めてしまえれば何もかも考えずに済むのに。
「じゃあ、今のは忘れて頂戴。無理強いするのも悪いもの。…何より、あなたの身の回りでそんなことが起きないことを祈るのが何よりよね？」
起きないことを信じなくちゃね。
信じることが何より大事。疑うなんてのは自分にやましいことがある人間がするものだ。
彼女が全てを信じるなら私はそれを信じて祈りましょうと。
協会でお祈りした影響かしらね。
【五番目の道化師】
「えぇ、祈ります。クラスメイトに人を殺してしまった人がいるとわかっていても、これ以上の犠牲がでないことを…」
どうして人を殺してしまったんだろう。なぜ、そんなふうに人を殺せてしまったんだろう。わからないけど…、怖いけど、私は笑みを浮かべよう。
「私が道化師であるかぎり、祈り続けます」
【みかんちゃん】
「綺麗ね。」
まるで対極の存在。
なりきろうとしてもなりきれないのは彼女のような存在か。訂正なんてしなくても、彼女は綺麗で華麗で儚くて。
祈るだけではどうしようもないのよ。
なんて意地悪い誰かが、私がそう口にしかけたけれど、今は黙って彼女の頭を撫でておいた。
意味はない。ないけれど、昔のことを××の笑顔を思い出した。
××の方が小さかったかしら。
けど、同じくらい暖かかった。
そのときの目は、綺麗だった。
そのときの瞳も、綺麗だった。
「それじゃあ、ここまでかしら？お部屋に戻るまでが遠足よ？…なぁんてね」
ホテルの入口にたどり着くと冗談のように笑って別れを告げる。
またね
いつも誰にでもいうそれが今日だけは言えなかった。
【五番目の道化師】
「んむぅ…」
頭を撫でられても私は子供じゃないんだけどなぁ。だって、みんな同い年のクラスメイトじゃん。姿が変わったとしてもそれは変わらないはずなんだけどなぁ…
「あ…っ、いっちゃった…」
またね、の言葉も言う暇なかったや。
道化師は困った表情をしたながら伝え損なった「またね」という言葉を呟いてから自分が宿泊している部屋へもどるのだった。
柏木 愛という男 23rd-25th
海月(23rd)-柏木 愛(25th)
【海月】
相も変わらず、白い景色しか見えない電波塔の展望台で。
その白い景色を見ているわけで。
協力関係を汲んだ、というのは良いものの。
正直言って、ボクからすることというのはほとほとないワケで。"協力関係"という縄で縛られでもしている気分になる。
けれど、それが悪いかどうかで言うと、
「まあ、彼女の頼みだし、悪いとは言えないよね。」
独りになりたかったから、どうやら籠城していると思しき少女がいない時間帯を狙ってみたのだけれど、強ち間違いでもなかったのか。
"これから何をするのか"なんて、誰に聞いても答えは同じか。
【柏木 愛】
「いよし！癒しのピエロちゃんがいれば俺は頑張れます！やるぞ！やるぞ俺！おおーっ！」
(一人、場違いな気合を入れながら、SCTへとやってくる柏木。海月の姿を見るや否や、軽快に近寄り声をかける)
「海月ちゃん！元気？」
【海月】
「え、ああ…柏木さんか。うん、元気だと思うよ。」
何に意気込んでいるのか分からないけれど元気そうな姿の少女がやってきた。
あの女性らしい口調はやめたのか…いや、励まされたのか褒められたのか慰められたのか分からないけれど、変な気合を入れているあたり、何か諭されたんだろうけれど。
…まあ、深くは突っ込まないでおこう。
「柏木さんこそ元気？って、元気そうだけどね…何かあったの？」
【柏木 愛】
「俺は改心すると心に決めたんです！
あ、この前はすみませんでした、変なこと言って……」
(彼女の隣に立ち、雪国を一望する。何度か見た景色だが、見る度に違った様子に思えるのは、それだけ心境の起伏が激しいからなのか)
「俺、もうああいうことをするのはやめたんです。いや、そりゃ本音はやりたいですけど……命が惜しいので」
【海月】
「……この前？」
記憶を巡らせる。柏木さんと前会った時に何かあっただろうか…少し思い当たるものはあるけれど、ボクからみて変だとは思わなかった。
なら。
「……ああ、ごめん。ちょっと記憶にはないけど…まあ、大丈夫だよ。
…何をしていたのかは聞いてみたい気もするけれどね。命が惜しまれるようなコトしていたの？」
記憶にないことは気にはなる。彼女が誤魔化そうというなら深くは突っ込まないけれど。
教えてくれるなら、なんて、こんなゴミに教えることもないだろうか。
【柏木 愛】
「え？あ、ああ……覚えてないならいいんですよ。大したことじゃないです」
(そういえばこの子は、そういう子だった。初めは気がつかなかったが、今はあっち側の人格らしい。覚えていないのなら好都合だ。わざわざ己の醜態を晒す必要もない)
「ところで、その……二重人格？ってやつ、かなりきになるんですよね。ガチなんですか？生まれつき？」
(他人の心に土足で踏み込む行為だが、彼にそんなことを考える脳味噌はない)
【海月】
「…大したことじゃないならいいんだけれど。」
ボクのゴミみたいな勘は、大したことだって言っているんだけれど…
まあ、彼女がそういうコトにしておきたいのなら、ボクは乗っておくことにしようか。
「…二重人格。生まれつき……ではないかな。気付いたのは、いつだっけ。中学生…くらい。
そこも記憶が曖昧で。他の人に言われてやっと違和感が持てた、くらいかな。」
他の人、と言っても、指摘をしてくれる人間もボクの周りには一人しかいなかったんだけど。
ああ、彼女は今何をしてるかな、なんて。…今考えることでもないか。
「ボクには分からないから気になるんだけど、"ボク"って、どんな性格してるかな。
ほら、あっちの間の記憶、まるきり無いからさ。他の人も言葉を濁しちゃうし…」
【柏木 愛】
「うーん、そうですね……俺もあまり話したことないのですが、今の君より随分とお調子者、という印象を受けます。言葉を濁すってことは、それなりに迷惑をかけてるのではないですかね」
(歯に衣着せぬ物言い。特に何も考えていないからなのだが、彼女にとって薬となるか毒となるかは、彼女次第である)
「俺が裸を撮らせてくれって言った時は……あ」
(語るに落ちた)
【海月】
「あはは。ボクの半身が迷惑をかけていると思うと、皆への罪悪感で自殺でもしてしまいそうだよ。
お調子者、って言うのもボクには合わないし。」
舌っ足らずで、みんなの為にしか行動しない、むしろ迷惑を掛けないように生きてはいるつもり。
だから、割と本気で傷ついてはいるけれど。その分ボクで釣り合っているだなんて考えられもしないし。
「あはは……うん？裸？」
裸を撮らせてくれ、って、今の流れだと"ボク"に言った発言だよね？
…別にボクは裸を撮られてもどうとも思わないし、むしろみんなの為ならそれも厭わないくらいなんだけれど。
柏木さんだって男の子だからそういう気持ちも分からなくはない。
「…一応確認だけど、その裸を撮らせて、って、"ボク"に言ったんだよね？」
ただ、ボクの裸なんて、目にしたら目が傷ついてしまわないかな、なんて。
【柏木 愛】
「あー……」
(やってしまった、と思う。自分に似て自虐的な印象を受ける彼女にとって、これは傷ついてしまうことになるだろうか？柏木くんだってちょっとは相手の気持ち考えてるんだよ？わかる？こころちゃんの写真も自分だけの物にしてたし？エムちゃんにはちゃんと許可取ってたし？節度は守ってない？
などという気持ちは置いといて、仕方なく正直に話すことにした)
「そ、そう、ですね。欲に目が眩み……ちょっとどうかしてたと思います。カスでごめんなさい」
【海月】
ああ、いや、と反論を言いかけて。
そう言えば、彼女がそんな突発的に裸を撮らせてだなんて言うだろうか？
そもそも、最初に会ったときは言わなかった。あの時は、確か…
いや、やめておこう。ボクの勝手な推論で目の前の彼女を傷つけてしまったら、それこそ申し訳が立たない。
「いや、カスだなんて一言も…それに柏木さんも男だからね、気持ちは…分からなくはないかな。ボクはしないと思うけど」
皆の裸を見せてもらおうだなんて、口が避けても言えないもの。
…ただ、この雰囲気はどうにかしたい。これだと彼女だけが言い詰められているように見えてしまう。
「えっ、とさ…キミはこのコロシアイ、どう思ってる？」
当たり障りのない発言。
でも、この場では一番、皆を把握するのに向いている。
【柏木 愛】
「え、こ、このゲームについてですか？そうですね……」
(暫し遠くを眺めて、思案する。やがて徐に口を開いた)
「俺は、誰かが死ぬのも、自分が死ぬのも、絶対に嫌です。だから、こんなゲームに参加させられてる事は、本当に不幸だと思います。
でも、俺はここに来て、沢山の良い思いをしました。はじめておっ○いを触りましたし、はじめて女の子の裸を生で見ました。その分、キツイ思いも沢山しましたが……でも、ここに来なければ一生出来なかった体験だと思います。
だから俺は、もし今この瞬間、このゲームが終わるのなら……ちょっと、残念だなって、思っちゃいます。
ごめんなさい、本当にごめんなさい。死んで言った人には失礼ですが、本音を語ると、そういうことになります」
【海月】
そう。今、この瞬間、コロシアイが終わるのは口惜しいと。
…ずっと続けていたいっていう、願いかな？なんて、勘繰ってみてしまうけれど。
「あはは…ボクも、このコロシアイで得られるものはたくさんあると思うんだよね。
まず、こうやって皆と、本心だか虚心だかは分からないけれど、話をすることが…ボクはあまりなかったから。
”ボク”がどうなのかはしらないけれど。」
…そう言えば、一つ疑問に思ったことがある。
クラスメイトのこと。
正直、彼女の言っていたことを汲み取ってみると、ボクと”ボク”ははっきり言って似ていないのだろう。
けれど、その事に気付いた人が現れたのは、恐らく、このコロシアイが始まってから。
…いや、本当に？
…ボクたちは、クラスメイトのことを、朧気にしか覚えていない？何故？
それも、首謀者の仕業？だとしたら、
「とっても、クラスメイトの仲が深まる修学旅行…なんて。
流石にこんな残酷な修学旅行があってほしくはないけれどね。
…今この瞬間に、って言ってたけど。
いつか終わるなら、その時は、Azothが全滅して、ボクらが勝って終わりたい？キミは。」
【柏木 愛】
「うーん、俺は……エムちゃんと、前に話したんです。全員で生きて帰ろうって。だから俺はルールにも載ってる、全員で生きて帰る方法を目指します。
Azothが誰かなんて、わかりません。君かもしれませんし、ピエロちゃんかも、エムちゃんかもしれない。もし彼女たちがAzothでも、俺は絶対に死んで欲しくないです」
(甘ったれた考えだとは思う。既に3人が死んでいるのだから。それでも彼は、希望に縋る。前を向いている。
楽観的なのか、馬鹿なのか。
人によって、見方は変わってくるであろう)
【海月】
其れを、ボクは、
素晴らしい考え方だと称賛する。
みんなで仲良くなって絆も深まって誰も死なずのハッピーエンド。素敵だね。
キミがそれを望んでいるなら精一杯応援するし、ボクにできることはしよう。
なんて、”ボク”がどう思っているのかは、度外視。
「…そっか。ボクも、みんなで帰れるのなら、それが一番だと思ってるよ。
なんて…月並なことしか言えないんだけどね…
もし、AzothもCelestiaも同様に、みんなで帰ろうと思っていたのなら、それが一番だったんだけど。
…なんて、ごめんね、挫くような言い方しちゃって。
希望を持って、前を向いて頑張ることは、いいことだものね。ボクはみんなの為なら、その思念も応援するよ」
なんて。
Azothの思念も応援して、Celestiaの思念も応援して、今目の前の彼女の思念も応援してだなんて。
矛盾している？
してない。
【柏木 愛】
「まぁ、そんなこと言っても俺は余計なことばっかしてますし……手がかりなんて、何一つ見つけられてないんですけどね。本当、ゴミですよ俺。なんで生きてんのかな……」
（遠くを見ながら、自嘲気味に笑う。自分を卑下するのは何度目かわからないが、最近少し、心に突っかかるものがあった。
ピエロや、エムに、叱られたからだろうか？もう少し自分を大切にしてもいいのかなって、思い始めてきているのだった）
「なんかちょっと、僕と君似てますよね？仲良くやれそうな気がしません？」
【海月】
「ボクと、似ている？キミが…いや、他の人が？」
何を言っているんだ？この人は。
確かにまだ目の前の彼女は見つけられていない情報だらけかもしれない。
余計なことしかしていないのかもしれない。
だけど。
言うに事欠いて。
このボクと似ている？
「ああ、なんでそうやって夜に夜を塗りたくるようなことするの。鈴蘭の花が塵塗れで可哀想。
キミがゴミではないことは自明だし、ボクは価値がないことも自明だし、そこからキミとボクに何一つ似ている要素がないことも自明だ。
そもそも、何故生きているのかなんて。生に理由を求めるならさっきキミが言った道楽なんて正に其。
自分が周りにどう印象付けられて生きたいかなんて塵芥程の精算にもならないね。
ボクは、ボクに価値がないことを知っているから、ボクがどう思われようと、余計だと思われようとみんなの為に何かをするだけ。
…キミのような価値のある人間とは大違いだよ。」
然う。
ボクが誰かに似ているだなんてありえない。
ボクは誰より何よりこの世界のどんな価値のないものと比べても。
圧倒的に劣る。
だから、ボクが合わせないと。
キミとボクが似ていると言われてしまったなら、少しでも、目の前の柏木さんに合わせる
努力をしないと？
【柏木 愛】
「……え？」
（突如、壊れた機械のように言葉を羅列する彼女を見て、戦慄。何か怒らせるようなことを言ってしまったのだろうか？
彼女が吐く言葉の真意を読み取れず、ただただ困惑する。北風が吹いた。マフラーをたくし上げ、口元を隠す）
「な、なんかごめんなさいでした……！お、俺はただ、海月ちゃんと仲良くしたいなって……その、下心とか、ないです。そんなに」
（謝罪の方向性がだいぶズレている）
【海月】
「あは。キミが謝る必要はないよ。ボクがゴミで、価値のないものってだけだから。
…むしろ、そんなボクに似ているだとか、仲良くしたいだとか言ってくれて、柏木さんの心の広さがボクには底知れないかな…」
通らない。
彼女の言っている言葉は、聞こえてはいる。
でも、分からない。判らない。解らない。理解らない。
彼女はどうしてそんな、自ら、自分から足元を沈めて、壊すようなことを？
ボクみたいなヤツと、合わせることを。
「…ごめんね、ちょっと色々考えすぎて…疲れちゃったのかな。
…そう言えばさ、一つ質問があるんだ。」
ボクが合わせないといけない。
「もし、この場で、キミとボク何方かが死ななければいけないとしたら。
そして、その生死の選択権がキミにあるとしたら。
…どっちを選ぶ？」
【柏木 愛】
「な、なにを言ってるんですか？怖い、怖いですよ……」
（絶対に様子がおかしい。壊れてしまったのだろうか？だとしたら、助けてあげなくてはならない。
今この場でそれを制御できる可能性を持つのは、自分だけなのだから。
でも、足が動かない。 彼女に近づいてはならない。関わってはならないと、第六感が告げる。
気が付けば、後退りをしていた。だめだ、こんなことをしては。彼女の心に寄り添わなければ……）
「本当に、何を言ってるのか、わかりません。君か俺が死ぬ？前提が意味不明ですし、もし明日地球が滅びるなら？と同じくらい、不毛な話だと思います。だから、やめてください。そんなことを言うのは、やめてください。お願いします、なんでも、しますから」
【海月】
前提がおかしい？不毛？意味不明？
まさか。
今ここでボクがいきなり刃物でキミを斬りつけてくるかもしれないし、都合よくGMでも現れてそういった仕掛けを施してくるのかもしれない。
可能性だとか、そういったものを度外視にしても。
其から目を背ける意図がわからない。
ボクが察せていないせい？
やっぱりボクのせい？
周りの人たちにボクが迷惑をかけてばかり？周りの人たちが楽しんでいる中ボクだけボクだけ。
ああ、それなら、ボクが変わらないといけない。
――ボクなんかが、みんなの意見に、逆らっていいわけ、ないものね。
「……ああ、ごめんね。ボク、多分、疲れてるんだろうね…
キミに心配ばかりかけちゃってる。本当に申し訳ないよ…申し訳…」
穴があるなら入りたい。死ねるなら死にたい、とは言うけれど。
…いっそのこと、目の前の彼女が承諾するならば、死んで償ってしまうのも手？
【柏木 愛】
（その時彼は、何かがわかった。
自分と彼女は、確かに似ていなんかいない。自分がいつもやっている自虐なんか、誰かに優しい言葉をかけて欲しいだけの、かまってちゃんの戯言だ。
でも、彼女は違う。心の底から自己を嫌悪し、侮蔑し、否定する。闇の眩しさに、眩暈がした。
彼女に生半可な言葉をかけたところで、何かが変わることがない。
住んでいる世界も、考え方も、まるで違う。
人間という同じ姿かたちをしているだけの、違う生き物なのだ。
無理だ。諦めよう。速やかにここから去り、一刻も早くこの狂人の前から逃げ）
「オアアアアアアアアアアアアアッ！！」
（なかった。彼は海月に飛びかかり、組み付けるのなら、わき腹をくすぐりまくったり、胸を揉みまくったりするだろう。許せピエロちゃん。これは下心からくるものではない。いやちょっとはあるけど）
【海月】
「えっ」
気付いた。
けれど、反応出来なかった。普通に考えて、いきなり飛び掛かってきた相手を避けることができる？
ボクには出来ない。
「えっ、え？ど、う、どうしたの柏木さん？」
押し倒される。驚きはしたけれど、多分何か彼女に考えがあってのことなのだろうし、抵抗するということはないのだけれど。
…え、何故？
理由が知りたい。わからない。割と、本気で、今はわからない。
どうしたんだろう、柏木さん？大丈夫？
不意に、さっきまで考えていた何かが吹き飛んでしまったけれど。
今はそれより何かこっちのほうが優先的で重大な気がする。
こう言ってしまってはあれだけど、身の危険を感じる。
【柏木 愛】
「生きてる価値とか、存在意義とか、殺すとか殺されないとか……どうでもいいんですよ！そんな、人生の辛い部分にだけ目を向けてたら、キリがない！
煮詰まったらその時は、何もかもを忘れてやりたいことだけやりゃいいんですよ！そういうことをしないから海月さんは壊れちゃったんですよ！楽しいこと沢山覚えましょう！
ほらほらここか！？ここがええのか！？」
(押し倒した相手に覆いかぶさるように組み付いたまま、あんな所やこんな所をあれこれする。詳細に書くと色々やばいから、やめておこうね)
【海月】
「あ、えと…うん…？」
何もかもを忘れる。は、出来るとして。
…ボクの、楽しいこと？分からない。みんなに貢献することはとても嬉しいけれど。
みんなに貢献するのはボクとして当然のことで、価値のないボクが唯一できることで…
…ちがう？
こうじゃない？
どうすればいいのかな。分からないや。
…とりあえず、今は彼女の気が済むまで何もしないでおこう。仮の身体でも、ボクなんかで良かったら、なんだけれど。
煮詰まったら、っていつだろう。いつのこと？
ああ、確かこんなことを、彼女にも言われた気がする。
彼女はなんて言ってたっけ。
――そっか。
「えっと、その…頑張ってみるね？」
【柏木 愛】
「ハァ、ハァ……良かった……」
(彼女の心に、この想いが届いたのかはわからない。恐らく、殆ど作用しなかった。でも、この場に流れていた漆黒の空気の流れを変えられたのなら、良しとしよう。彼女から離れ、土下座)
「あの、今のは君が色々ヤバすぎて、止めたかったからの行動でありまして、ノーカンでお願いします。何でもしますから」
【海月】
「いや、そんな…むしろボクなんかを触ったことでキミが怒られるなんて、ボクの方が申し訳ないくらいだし…
それに、止めようとしてくれた…っていうなら、ボクがあれこれ言える立場じゃないよ」
まあ、それを度外視にしても、ボクがあれこれ言えることはないのだろうけど。
けれど、何かこれはこれで、憑き物が落ちたというか。
多分、彼女に諭された時もこんな感じだったんだろう。あまり、覚えてはいないけど。
………自殺は。
今は、いいかな。
「…その。ありがとう、柏木さん。いろいろ。」
何故か分からないけれど、言わなければいけない気がして。
【柏木 愛】
「い、いえ……」
(他人を制止するって大変だな、と身に染みて実感した。やはりこれからは、慎ましく生きて行こうと心に誓うのだった)
「あの、お互い生き延びましょうね。今死にたくても、将来は生きたいかもしれないじゃないですか。俺はそう思って、なんとか生きてるんで。それじゃ……」
(気まずさもそのままに、そそくさと立ち去ろうと)
【海月】
相も変わらず、白い景色しか見えない電波塔の展望台で。
その白い景色を見ているわけで。
協力関係を汲んだ、というのは良いものの。
正直言って、ボクからすることというのはほとほとないワケで。"協力関係"という縄で縛られでもしている気分になる。
けれど、それが悪いかどうかで言うと、
「まあ、彼女の頼みだし、悪いとは言えないよね。」
独りになりたかったから、どうやら籠城していると思しき少女がいない時間帯を狙ってみたのだけれど、強ち間違いでもなかったのか。
"これから何をするのか"なんて、誰に聞いても答えは同じか。
【柏木 愛】
「いよし！癒しのピエロちゃんがいれば俺は頑張れます！やるぞ！やるぞ俺！おおーっ！」
(一人、場違いな気合を入れながら、SCTへとやってくる柏木。海月の姿を見るや否や、軽快に近寄り声をかける)
「海月ちゃん！元気？」
【海月】
「え、ああ…柏木さんか。うん、元気だと思うよ。」
何に意気込んでいるのか分からないけれど元気そうな姿の少女がやってきた。
あの女性らしい口調はやめたのか…いや、励まされたのか褒められたのか慰められたのか分からないけれど、変な気合を入れているあたり、何か諭されたんだろうけれど。
…まあ、深くは突っ込まないでおこう。
「柏木さんこそ元気？って、元気そうだけどね…何かあったの？」
【柏木 愛】
「俺は改心すると心に決めたんです！
あ、この前はすみませんでした、変なこと言って……」
(彼女の隣に立ち、雪国を一望する。何度か見た景色だが、見る度に違った様子に思えるのは、それだけ心境の起伏が激しいからなのか)
「俺、もうああいうことをするのはやめたんです。いや、そりゃ本音はやりたいですけど……命が惜しいので」
【海月】
「……この前？」
記憶を巡らせる。柏木さんと前会った時に何かあっただろうか…少し思い当たるものはあるけれど、ボクからみて変だとは思わなかった。
なら。
「……ああ、ごめん。ちょっと記憶にはないけど…まあ、大丈夫だよ。
…何をしていたのかは聞いてみたい気もするけれどね。命が惜しまれるようなコトしていたの？」
記憶にないことは気にはなる。彼女が誤魔化そうというなら深くは突っ込まないけれど。
教えてくれるなら、なんて、こんなゴミに教えることもないだろうか。
【柏木 愛】
「え？あ、ああ……覚えてないならいいんですよ。大したことじゃないです」
(そういえばこの子は、そういう子だった。初めは気がつかなかったが、今はあっち側の人格らしい。覚えていないのなら好都合だ。わざわざ己の醜態を晒す必要もない)
「ところで、その……二重人格？ってやつ、かなりきになるんですよね。ガチなんですか？生まれつき？」
(他人の心に土足で踏み込む行為だが、彼にそんなことを考える脳味噌はない)
【海月】
「…大したことじゃないならいいんだけれど。」
ボクのゴミみたいな勘は、大したことだって言っているんだけれど…
まあ、彼女がそういうコトにしておきたいのなら、ボクは乗っておくことにしようか。
「…二重人格。生まれつき……ではないかな。気付いたのは、いつだっけ。中学生…くらい。
そこも記憶が曖昧で。他の人に言われてやっと違和感が持てた、くらいかな。」
他の人、と言っても、指摘をしてくれる人間もボクの周りには一人しかいなかったんだけど。
ああ、彼女は今何をしてるかな、なんて。…今考えることでもないか。
「ボクには分からないから気になるんだけど、"ボク"って、どんな性格してるかな。
ほら、あっちの間の記憶、まるきり無いからさ。他の人も言葉を濁しちゃうし…」
【柏木 愛】
「うーん、そうですね……俺もあまり話したことないのですが、今の君より随分とお調子者、という印象を受けます。言葉を濁すってことは、それなりに迷惑をかけてるのではないですかね」
(歯に衣着せぬ物言い。特に何も考えていないからなのだが、彼女にとって薬となるか毒となるかは、彼女次第である)
「俺が裸を撮らせてくれって言った時は……あ」
(語るに落ちた)
【海月】
「あはは。ボクの半身が迷惑をかけていると思うと、皆への罪悪感で自殺でもしてしまいそうだよ。
お調子者、って言うのもボクには合わないし。」
舌っ足らずで、みんなの為にしか行動しない、むしろ迷惑を掛けないように生きてはいるつもり。
だから、割と本気で傷ついてはいるけれど。その分ボクで釣り合っているだなんて考えられもしないし。
「あはは……うん？裸？」
裸を撮らせてくれ、って、今の流れだと"ボク"に言った発言だよね？
…別にボクは裸を撮られてもどうとも思わないし、むしろみんなの為ならそれも厭わないくらいなんだけれど。
柏木さんだって男の子だからそういう気持ちも分からなくはない。
「…一応確認だけど、その裸を撮らせて、って、"ボク"に言ったんだよね？」
ただ、ボクの裸なんて、目にしたら目が傷ついてしまわないかな、なんて。
【柏木 愛】
「あー……」
(やってしまった、と思う。自分に似て自虐的な印象を受ける彼女にとって、これは傷ついてしまうことになるだろうか？柏木くんだってちょっとは相手の気持ち考えてるんだよ？わかる？こころちゃんの写真も自分だけの物にしてたし？エムちゃんにはちゃんと許可取ってたし？節度は守ってない？
などという気持ちは置いといて、仕方なく正直に話すことにした)
「そ、そう、ですね。欲に目が眩み……ちょっとどうかしてたと思います。カスでごめんなさい」
【海月】
ああ、いや、と反論を言いかけて。
そう言えば、彼女がそんな突発的に裸を撮らせてだなんて言うだろうか？
そもそも、最初に会ったときは言わなかった。あの時は、確か…
いや、やめておこう。ボクの勝手な推論で目の前の彼女を傷つけてしまったら、それこそ申し訳が立たない。
「いや、カスだなんて一言も…それに柏木さんも男だからね、気持ちは…分からなくはないかな。ボクはしないと思うけど」
皆の裸を見せてもらおうだなんて、口が避けても言えないもの。
…ただ、この雰囲気はどうにかしたい。これだと彼女だけが言い詰められているように見えてしまう。
「えっ、とさ…キミはこのコロシアイ、どう思ってる？」
当たり障りのない発言。
でも、この場では一番、皆を把握するのに向いている。
【柏木 愛】
「え、こ、このゲームについてですか？そうですね……」
(暫し遠くを眺めて、思案する。やがて徐に口を開いた)
「俺は、誰かが死ぬのも、自分が死ぬのも、絶対に嫌です。だから、こんなゲームに参加させられてる事は、本当に不幸だと思います。
でも、俺はここに来て、沢山の良い思いをしました。はじめておっ○いを触りましたし、はじめて女の子の裸を生で見ました。その分、キツイ思いも沢山しましたが……でも、ここに来なければ一生出来なかった体験だと思います。
だから俺は、もし今この瞬間、このゲームが終わるのなら……ちょっと、残念だなって、思っちゃいます。
ごめんなさい、本当にごめんなさい。死んで言った人には失礼ですが、本音を語ると、そういうことになります」
【海月】
そう。今、この瞬間、コロシアイが終わるのは口惜しいと。
…ずっと続けていたいっていう、願いかな？なんて、勘繰ってみてしまうけれど。
「あはは…ボクも、このコロシアイで得られるものはたくさんあると思うんだよね。
まず、こうやって皆と、本心だか虚心だかは分からないけれど、話をすることが…ボクはあまりなかったから。
”ボク”がどうなのかはしらないけれど。」
…そう言えば、一つ疑問に思ったことがある。
クラスメイトのこと。
正直、彼女の言っていたことを汲み取ってみると、ボクと”ボク”ははっきり言って似ていないのだろう。
けれど、その事に気付いた人が現れたのは、恐らく、このコロシアイが始まってから。
…いや、本当に？
…ボクたちは、クラスメイトのことを、朧気にしか覚えていない？何故？
それも、首謀者の仕業？だとしたら、
「とっても、クラスメイトの仲が深まる修学旅行…なんて。
流石にこんな残酷な修学旅行があってほしくはないけれどね。
…今この瞬間に、って言ってたけど。
いつか終わるなら、その時は、Azothが全滅して、ボクらが勝って終わりたい？キミは。」
【柏木 愛】
「うーん、俺は……エムちゃんと、前に話したんです。全員で生きて帰ろうって。だから俺はルールにも載ってる、全員で生きて帰る方法を目指します。
Azothが誰かなんて、わかりません。君かもしれませんし、ピエロちゃんかも、エムちゃんかもしれない。もし彼女たちがAzothでも、俺は絶対に死んで欲しくないです」
(甘ったれた考えだとは思う。既に3人が死んでいるのだから。それでも彼は、希望に縋る。前を向いている。
楽観的なのか、馬鹿なのか。
人によって、見方は変わってくるであろう)
【海月】
其れを、ボクは、
素晴らしい考え方だと称賛する。
みんなで仲良くなって絆も深まって誰も死なずのハッピーエンド。素敵だね。
キミがそれを望んでいるなら精一杯応援するし、ボクにできることはしよう。
なんて、”ボク”がどう思っているのかは、度外視。
「…そっか。ボクも、みんなで帰れるのなら、それが一番だと思ってるよ。
なんて…月並なことしか言えないんだけどね…
もし、AzothもCelestiaも同様に、みんなで帰ろうと思っていたのなら、それが一番だったんだけど。
…なんて、ごめんね、挫くような言い方しちゃって。
希望を持って、前を向いて頑張ることは、いいことだものね。ボクはみんなの為なら、その思念も応援するよ」
なんて。
Azothの思念も応援して、Celestiaの思念も応援して、今目の前の彼女の思念も応援してだなんて。
矛盾している？
してない。
【柏木 愛】
「まぁ、そんなこと言っても俺は余計なことばっかしてますし……手がかりなんて、何一つ見つけられてないんですけどね。本当、ゴミですよ俺。なんで生きてんのかな……」
（遠くを見ながら、自嘲気味に笑う。自分を卑下するのは何度目かわからないが、最近少し、心に突っかかるものがあった。
ピエロや、エムに、叱られたからだろうか？もう少し自分を大切にしてもいいのかなって、思い始めてきているのだった）
「なんかちょっと、僕と君似てますよね？仲良くやれそうな気がしません？」
【海月】
「ボクと、似ている？キミが…いや、他の人が？」
何を言っているんだ？この人は。
確かにまだ目の前の彼女は見つけられていない情報だらけかもしれない。
余計なことしかしていないのかもしれない。
だけど。
言うに事欠いて。
このボクと似ている？
「ああ、なんでそうやって夜に夜を塗りたくるようなことするの。鈴蘭の花が塵塗れで可哀想。
キミがゴミではないことは自明だし、ボクは価値がないことも自明だし、そこからキミとボクに何一つ似ている要素がないことも自明だ。
そもそも、何故生きているのかなんて。生に理由を求めるならさっきキミが言った道楽なんて正に其。
自分が周りにどう印象付けられて生きたいかなんて塵芥程の精算にもならないね。
ボクは、ボクに価値がないことを知っているから、ボクがどう思われようと、余計だと思われようとみんなの為に何かをするだけ。
…キミのような価値のある人間とは大違いだよ。」
然う。
ボクが誰かに似ているだなんてありえない。
ボクは誰より何よりこの世界のどんな価値のないものと比べても。
圧倒的に劣る。
だから、ボクが合わせないと。
キミとボクが似ていると言われてしまったなら、少しでも、目の前の柏木さんに合わせる
努力をしないと？
【柏木 愛】
「……え？」
（突如、壊れた機械のように言葉を羅列する彼女を見て、戦慄。何か怒らせるようなことを言ってしまったのだろうか？
彼女が吐く言葉の真意を読み取れず、ただただ困惑する。北風が吹いた。マフラーをたくし上げ、口元を隠す）
「な、なんかごめんなさいでした……！お、俺はただ、海月ちゃんと仲良くしたいなって……その、下心とか、ないです。そんなに」
（謝罪の方向性がだいぶズレている）
【海月】
「あは。キミが謝る必要はないよ。ボクがゴミで、価値のないものってだけだから。
…むしろ、そんなボクに似ているだとか、仲良くしたいだとか言ってくれて、柏木さんの心の広さがボクには底知れないかな…」
通らない。
彼女の言っている言葉は、聞こえてはいる。
でも、分からない。判らない。解らない。理解らない。
彼女はどうしてそんな、自ら、自分から足元を沈めて、壊すようなことを？
ボクみたいなヤツと、合わせることを。
「…ごめんね、ちょっと色々考えすぎて…疲れちゃったのかな。
…そう言えばさ、一つ質問があるんだ。」
ボクが合わせないといけない。
「もし、この場で、キミとボク何方かが死ななければいけないとしたら。
そして、その生死の選択権がキミにあるとしたら。
…どっちを選ぶ？」
【柏木 愛】
「な、なにを言ってるんですか？怖い、怖いですよ……」
（絶対に様子がおかしい。壊れてしまったのだろうか？だとしたら、助けてあげなくてはならない。
今この場でそれを制御できる可能性を持つのは、自分だけなのだから。
でも、足が動かない。 彼女に近づいてはならない。関わってはならないと、第六感が告げる。
気が付けば、後退りをしていた。だめだ、こんなことをしては。彼女の心に寄り添わなければ……）
「本当に、何を言ってるのか、わかりません。君か俺が死ぬ？前提が意味不明ですし、もし明日地球が滅びるなら？と同じくらい、不毛な話だと思います。だから、やめてください。そんなことを言うのは、やめてください。お願いします、なんでも、しますから」
【海月】
前提がおかしい？不毛？意味不明？
まさか。
今ここでボクがいきなり刃物でキミを斬りつけてくるかもしれないし、都合よくGMでも現れてそういった仕掛けを施してくるのかもしれない。
可能性だとか、そういったものを度外視にしても。
其から目を背ける意図がわからない。
ボクが察せていないせい？
やっぱりボクのせい？
周りの人たちにボクが迷惑をかけてばかり？周りの人たちが楽しんでいる中ボクだけボクだけ。
ああ、それなら、ボクが変わらないといけない。
――ボクなんかが、みんなの意見に、逆らっていいわけ、ないものね。
「……ああ、ごめんね。ボク、多分、疲れてるんだろうね…
キミに心配ばかりかけちゃってる。本当に申し訳ないよ…申し訳…」
穴があるなら入りたい。死ねるなら死にたい、とは言うけれど。
…いっそのこと、目の前の彼女が承諾するならば、死んで償ってしまうのも手？
【柏木 愛】
（その時彼は、何かがわかった。
自分と彼女は、確かに似ていなんかいない。自分がいつもやっている自虐なんか、誰かに優しい言葉をかけて欲しいだけの、かまってちゃんの戯言だ。
でも、彼女は違う。心の底から自己を嫌悪し、侮蔑し、否定する。闇の眩しさに、眩暈がした。
彼女に生半可な言葉をかけたところで、何かが変わることがない。
住んでいる世界も、考え方も、まるで違う。
人間という同じ姿かたちをしているだけの、違う生き物なのだ。
無理だ。諦めよう。速やかにここから去り、一刻も早くこの狂人の前から逃げ）
「オアアアアアアアアアアアアアッ！！」
（なかった。彼は海月に飛びかかり、組み付けるのなら、わき腹をくすぐりまくったり、胸を揉みまくったりするだろう。許せピエロちゃん。これは下心からくるものではない。いやちょっとはあるけど）
【海月】
「えっ」
気付いた。
けれど、反応出来なかった。普通に考えて、いきなり飛び掛かってきた相手を避けることができる？
ボクには出来ない。
「えっ、え？ど、う、どうしたの柏木さん？」
押し倒される。驚きはしたけれど、多分何か彼女に考えがあってのことなのだろうし、抵抗するということはないのだけれど。
…え、何故？
理由が知りたい。わからない。割と、本気で、今はわからない。
どうしたんだろう、柏木さん？大丈夫？
不意に、さっきまで考えていた何かが吹き飛んでしまったけれど。
今はそれより何かこっちのほうが優先的で重大な気がする。
こう言ってしまってはあれだけど、身の危険を感じる。
【柏木 愛】
「生きてる価値とか、存在意義とか、殺すとか殺されないとか……どうでもいいんですよ！そんな、人生の辛い部分にだけ目を向けてたら、キリがない！
煮詰まったらその時は、何もかもを忘れてやりたいことだけやりゃいいんですよ！そういうことをしないから海月さんは壊れちゃったんですよ！楽しいこと沢山覚えましょう！
ほらほらここか！？ここがええのか！？」
(押し倒した相手に覆いかぶさるように組み付いたまま、あんな所やこんな所をあれこれする。詳細に書くと色々やばいから、やめておこうね)
【海月】
「あ、えと…うん…？」
何もかもを忘れる。は、出来るとして。
…ボクの、楽しいこと？分からない。みんなに貢献することはとても嬉しいけれど。
みんなに貢献するのはボクとして当然のことで、価値のないボクが唯一できることで…
…ちがう？
こうじゃない？
どうすればいいのかな。分からないや。
…とりあえず、今は彼女の気が済むまで何もしないでおこう。仮の身体でも、ボクなんかで良かったら、なんだけれど。
煮詰まったら、っていつだろう。いつのこと？
ああ、確かこんなことを、彼女にも言われた気がする。
彼女はなんて言ってたっけ。
――そっか。
「えっと、その…頑張ってみるね？」
【柏木 愛】
「ハァ、ハァ……良かった……」
(彼女の心に、この想いが届いたのかはわからない。恐らく、殆ど作用しなかった。でも、この場に流れていた漆黒の空気の流れを変えられたのなら、良しとしよう。彼女から離れ、土下座)
「あの、今のは君が色々ヤバすぎて、止めたかったからの行動でありまして、ノーカンでお願いします。何でもしますから」
【海月】
「いや、そんな…むしろボクなんかを触ったことでキミが怒られるなんて、ボクの方が申し訳ないくらいだし…
それに、止めようとしてくれた…っていうなら、ボクがあれこれ言える立場じゃないよ」
まあ、それを度外視にしても、ボクがあれこれ言えることはないのだろうけど。
けれど、何かこれはこれで、憑き物が落ちたというか。
多分、彼女に諭された時もこんな感じだったんだろう。あまり、覚えてはいないけど。
………自殺は。
今は、いいかな。
「…その。ありがとう、柏木さん。いろいろ。」
何故か分からないけれど、言わなければいけない気がして。
【柏木 愛】
「い、いえ……」
(他人を制止するって大変だな、と身に染みて実感した。やはりこれからは、慎ましく生きて行こうと心に誓うのだった)
「あの、お互い生き延びましょうね。今死にたくても、将来は生きたいかもしれないじゃないですか。俺はそう思って、なんとか生きてるんで。それじゃ……」
(気まずさもそのままに、そそくさと立ち去ろうと)
許された男 6th-14th
臨海 凪乃(6th)-聖☆ビキニマン(14th)
【臨海 凪乃】
たまたま共有チャットを見て気になったのは
柏木という人間が めがねがどうたらとか書いてあるのが気になる
黒ブチメガネ
ゲーム開始の時に手に入った謎のメガネ
場所はショッピングモールのKFC
ここは、フライドチキンのお店か……。
「ここが例の店なのね」
腹ごしらえを兼ねて、この謎に挑戦しますか……。
【聖☆ビキニマン】
「……お主は…」
同じく腹拵えに来ていたビキニマン。
入り口で彼女を見つけ。
「初めまして……だよな？」
【臨海 凪乃】
「あら、素敵な坊やもいたものね……
会話は肉体で交わすタイプ？ それとも、口でするタイプ？」
この雪国で外見が男性の人間を見たのは初めてだった。
引き締まった肉体…… なかなかいい身体をしている
妖艶な笑みをしてそう答える
「6th 臨海 よ好きに呼びなさい 坊や」
そう答えるとKFCの中に入っていく
【聖☆ビキニマン】
「14th、聖☆ビキニマン。本名は既に明かしてある。チャットで確認するが良い。……会話は無論、口でするとも。」
KFCに続いて入って。
「しかし、こんなところもあるのか。どう作っているのか気になるが……」
【臨海 凪乃】
本名ね、興味ないわ。 だけど
「私、口は堅いけど股は緩いわよ？」
謎の誘い文句。
久々に男を見たからかちょっとテンションが高い
……それは置いといて
無印●良品といい、KFCといい……いろいろあるわね。
とつぶやき、フライドチキンを頼む
そして席に着き、 横の壁に目を向ける
「トロンパ は Azoth …… ねぇ」
落書きを音読して一言
【聖☆ビキニマン】
「……高校生の女子がそんなことを言うもんじゃあないぜ。」
窘めるように言えば、同じものを頼む。
「トロンパ、ねえ。Azothが居る、ってのは本当なんだろうが。果たしてどこまで真実か。」
【臨海 凪乃】
「種の保存に忠実な人間らしい女子よ」
欲に忠実な人間 といったところだ。
注文通りに来たフライドチキンを竿に見立て
艶やかに食べる
ここのところ、人肉の生活が続いていたから
なんだか新鮮ね。
「さぁ、どうかしらね。 何が真実かなんて
分かりっこないわ。 探るだけ無駄よ」
と、一言
そして カーネルはどこだと探す
『カーネル』
『はよ眼鏡持って来いや。何モタモタしてんねん。明日は合コンやねんぞ。イメチェンしてモテなアカンのや。はよ眼鏡持って来いや。何モタモタしてんねん。明日は合コンやねんぞ。イメチェンしてモテなアカンのや。はよ眼鏡持って来いや。何モタモタしてんねん。明日は合コンやねんぞ。イメチェンしてモテなアカンのや。』
【聖☆ビキニマン】
「……まあ、探っても仕方ねえ、か。今は、な。」
案にいつか全て解き明かすと言いつつチキンを骨ごと一噛みで粉々にし。
「美味いな。」
【臨海 凪乃】
骨ごと砕く彼を見て、顎も歯も丈夫なのね と唖然
「まぁ……上等よね。
案外ここでの暮らしも不自由ないわ……
すごく準備がされているわね」
真実か確かめる方法があればいいのだが……ね
そして、メガネを さっきからうるさいオッサンにかける
『カーネル』
『お！？この眼鏡ごっつオシャンやん！いやーこれならキョーカちゃんはワシのもんやわ！おおきに！これやるわ！』
(カーネルは口から何かを吐き出した)
【聖☆ビキニマン】
「準備…そうッ！この”茶番“は、準備された”茶番“ッ！こうまで労力を払って、人の不幸を嗤うこの性根ッ！俺はーーーー」
カーネルの側に歩き、拳を構えて。
「俺は“お前ら”が 許せないッッッ！！！」
ドォン、と地震。
否、揺れたのは地盤ではない。彼の震脚に、島が揺れたのだ。
握り締めた拳は、その衝撃を十全に秘めた拳は、カーネルの顔面に叩き込まれて！
『カーネル』
『あ、ちょ、まだ童t』
(轟音と共に首から上が砕け散る。彼から音声が発せられることは二度となかった)
【臨海 凪乃】
あちゃあ
恩を暴力で返した……。
さっき渡したメガネはバラバラに砕け散った。
それどころか、カーネルの息の根さえも止まってしまった
……吐しゃ物から鍵を拾う。
鍵……。 これが全員脱出への希望 と。
そしてそれは…… ビキニマンと私だけが持っている、と
「……あなたとは敵対したくないわね……」
本心を吐露したのはいつ振りか……。
【聖☆ビキニマン】
「鍵は、感謝しよう。だが。これを持っていたということは、紛れもなくこいつが黒幕の一派である証。……黒幕は殺す、クラスメートは殺さない。“なにがあっても”。それが、俺の覚悟なんでな。」
呼吸とともに蒸気が発生し、暫し脱力。
「臨海。皆で、生きて帰るぞ。」
【臨海 凪乃】
「…………えぇ、みんなで生きて帰りましょう」
あまり取り乱すことのない臨海でさえ
少し固まってしまった
（ちょっとｵｼｯｺ…… ちびっちゃった……）
それはともかく
「じゃあ、そのカギはあなたに任せるわね」
そう言い残し、自分のポケットに鍵を入れ
KFCを去って行った
【聖☆ビキニマン】
「……ああ。」
見送り。
「コイツは……一つあれば良い。」
一つ呟けば、歩き出す。
握り締めた拳から、鍵”だった“鉄屑が零れ落ちた。
【臨海 凪乃】
たまたま共有チャットを見て気になったのは
柏木という人間が めがねがどうたらとか書いてあるのが気になる
黒ブチメガネ
ゲーム開始の時に手に入った謎のメガネ
場所はショッピングモールのKFC
ここは、フライドチキンのお店か……。
「ここが例の店なのね」
腹ごしらえを兼ねて、この謎に挑戦しますか……。
【聖☆ビキニマン】
「……お主は…」
同じく腹拵えに来ていたビキニマン。
入り口で彼女を見つけ。
「初めまして……だよな？」
【臨海 凪乃】
「あら、素敵な坊やもいたものね……
会話は肉体で交わすタイプ？ それとも、口でするタイプ？」
この雪国で外見が男性の人間を見たのは初めてだった。
引き締まった肉体…… なかなかいい身体をしている
妖艶な笑みをしてそう答える
「6th 臨海 よ好きに呼びなさい 坊や」
そう答えるとKFCの中に入っていく
【聖☆ビキニマン】
「14th、聖☆ビキニマン。本名は既に明かしてある。チャットで確認するが良い。……会話は無論、口でするとも。」
KFCに続いて入って。
「しかし、こんなところもあるのか。どう作っているのか気になるが……」
【臨海 凪乃】
本名ね、興味ないわ。 だけど
「私、口は堅いけど股は緩いわよ？」
謎の誘い文句。
久々に男を見たからかちょっとテンションが高い
……それは置いといて
無印●良品といい、KFCといい……いろいろあるわね。
とつぶやき、フライドチキンを頼む
そして席に着き、 横の壁に目を向ける
「トロンパ は Azoth …… ねぇ」
落書きを音読して一言
【聖☆ビキニマン】
「……高校生の女子がそんなことを言うもんじゃあないぜ。」
窘めるように言えば、同じものを頼む。
「トロンパ、ねえ。Azothが居る、ってのは本当なんだろうが。果たしてどこまで真実か。」
【臨海 凪乃】
「種の保存に忠実な人間らしい女子よ」
欲に忠実な人間 といったところだ。
注文通りに来たフライドチキンを竿に見立て
艶やかに食べる
ここのところ、人肉の生活が続いていたから
なんだか新鮮ね。
「さぁ、どうかしらね。 何が真実かなんて
分かりっこないわ。 探るだけ無駄よ」
と、一言
そして カーネルはどこだと探す
『カーネル』
『はよ眼鏡持って来いや。何モタモタしてんねん。明日は合コンやねんぞ。イメチェンしてモテなアカンのや。はよ眼鏡持って来いや。何モタモタしてんねん。明日は合コンやねんぞ。イメチェンしてモテなアカンのや。はよ眼鏡持って来いや。何モタモタしてんねん。明日は合コンやねんぞ。イメチェンしてモテなアカンのや。』
【聖☆ビキニマン】
「……まあ、探っても仕方ねえ、か。今は、な。」
案にいつか全て解き明かすと言いつつチキンを骨ごと一噛みで粉々にし。
「美味いな。」
【臨海 凪乃】
骨ごと砕く彼を見て、顎も歯も丈夫なのね と唖然
「まぁ……上等よね。
案外ここでの暮らしも不自由ないわ……
すごく準備がされているわね」
真実か確かめる方法があればいいのだが……ね
そして、メガネを さっきからうるさいオッサンにかける
『カーネル』
『お！？この眼鏡ごっつオシャンやん！いやーこれならキョーカちゃんはワシのもんやわ！おおきに！これやるわ！』
(カーネルは口から何かを吐き出した)
【聖☆ビキニマン】
「準備…そうッ！この”茶番“は、準備された”茶番“ッ！こうまで労力を払って、人の不幸を嗤うこの性根ッ！俺はーーーー」
カーネルの側に歩き、拳を構えて。
「俺は“お前ら”が 許せないッッッ！！！」
ドォン、と地震。
否、揺れたのは地盤ではない。彼の震脚に、島が揺れたのだ。
握り締めた拳は、その衝撃を十全に秘めた拳は、カーネルの顔面に叩き込まれて！
『カーネル』
『あ、ちょ、まだ童t』
(轟音と共に首から上が砕け散る。彼から音声が発せられることは二度となかった)
【臨海 凪乃】
あちゃあ
恩を暴力で返した……。
さっき渡したメガネはバラバラに砕け散った。
それどころか、カーネルの息の根さえも止まってしまった
……吐しゃ物から鍵を拾う。
鍵……。 これが全員脱出への希望 と。
そしてそれは…… ビキニマンと私だけが持っている、と
「……あなたとは敵対したくないわね……」
本心を吐露したのはいつ振りか……。
【聖☆ビキニマン】
「鍵は、感謝しよう。だが。これを持っていたということは、紛れもなくこいつが黒幕の一派である証。……黒幕は殺す、クラスメートは殺さない。“なにがあっても”。それが、俺の覚悟なんでな。」
呼吸とともに蒸気が発生し、暫し脱力。
「臨海。皆で、生きて帰るぞ。」
【臨海 凪乃】
「…………えぇ、みんなで生きて帰りましょう」
あまり取り乱すことのない臨海でさえ
少し固まってしまった
（ちょっとｵｼｯｺ…… ちびっちゃった……）
それはともかく
「じゃあ、そのカギはあなたに任せるわね」
そう言い残し、自分のポケットに鍵を入れ
KFCを去って行った
【聖☆ビキニマン】
「……ああ。」
見送り。
「コイツは……一つあれば良い。」
一つ呟けば、歩き出す。
握り締めた拳から、鍵”だった“鉄屑が零れ落ちた。
ちいさな契約 12th-13th
トロンパ(12th)-撫子(13th)
【撫子】
うへぶっ！？
（探索、という体でスキー場にいた。しかし、雪に足を取られて顔面から思いっきり転んでしまった。
まぁホテルに戻ろうか、とか思ってたのだが一回ここにも来ておきたくかった。だって、ここに来てから少しも遊べなかったのだから少しくらいはいいだろう。
……と思ってたのは数秒前まで、今は転んでやる気が飛んだ。）
【トロンパ】
「よう」
外に出てみたらなんか転んでるやつがいた。ちょうどいいので声をかける
「割と久しぶりだな。どうだ？調子は。」
【撫子】
………ぶへっ…と……久しぶりって数日振りだけどね。
（雪に埋まった顔を上げながら、立ち上がらずに答える。冷たいけど起きる気にならなかった。なぜか。）
………殺し合いの時点で最悪とだけ。
（ぶっちゃけ体調は普通。あれだけ体冷やしておいて風邪も引いてない。
ゲームとしての調子は…まぁいいわけがなかった。）
【トロンパ】
「まあ、な……」
ふむ、意外と驚かないんだな…
「……さて、話があるんだ。……組まないか？」
もったいぶる意味も無いので、さっさと本題に入る
【撫子】
………死人と組むって？意味あるのそれ？
（死んだ後について何も知らない人なら、まぁ妥当な反応。死んだ人は情報を流せないし、干渉もできない。
なら組んだって利益はないだろう。そう考えるのが普通だ。）
【トロンパ】
「ま、普通はそうなるけどな。意外とメリットはあるんだよ、幽霊にも。」
そう言って"説明"をする
「幽霊は干渉できない、とされているが…直接危害を加えるのを禁じられているだけだ。いざって時に武器をよこしたり、逆に相手の攻撃を止める事に関しては何も言われない。」
そう言って撫子の"帽子"をつまんで見せる
「こんな風に、な。…どうだ？俺も閉じ篭ってても暇なんだが」
【撫子】
………まぁ味方は多くて損はしないしできるならお願いするけど…
（どこか腑に落ちないと思いながらもそう答える。死人がゲームにそれなりの干渉力を持つってどうなのやら。
まぁ、いずれにせよこっちに損はない交渉だし、素直に協力をお願いすることにした。）
【トロンパ】
「んじゃ、そういう事で。こっちからの要求は…ま、出来高払いって事で。んじゃ。」
そう言うと、彼は姿を消した
【撫子】
何もすることないけどね。まぁ何かできたら協力するよ。
（そう言って手を振って見送る。まぁ味方が増えたわけだからこっちとしてはもう十分。
殺すための協力もしたくないし、それは生き残るための協力もしないことと変わんないし、出来高0じゃない？）
【撫子】
うへぶっ！？
（探索、という体でスキー場にいた。しかし、雪に足を取られて顔面から思いっきり転んでしまった。
まぁホテルに戻ろうか、とか思ってたのだが一回ここにも来ておきたくかった。だって、ここに来てから少しも遊べなかったのだから少しくらいはいいだろう。
……と思ってたのは数秒前まで、今は転んでやる気が飛んだ。）
【トロンパ】
「よう」
外に出てみたらなんか転んでるやつがいた。ちょうどいいので声をかける
「割と久しぶりだな。どうだ？調子は。」
【撫子】
………ぶへっ…と……久しぶりって数日振りだけどね。
（雪に埋まった顔を上げながら、立ち上がらずに答える。冷たいけど起きる気にならなかった。なぜか。）
………殺し合いの時点で最悪とだけ。
（ぶっちゃけ体調は普通。あれだけ体冷やしておいて風邪も引いてない。
ゲームとしての調子は…まぁいいわけがなかった。）
【トロンパ】
「まあ、な……」
ふむ、意外と驚かないんだな…
「……さて、話があるんだ。……組まないか？」
もったいぶる意味も無いので、さっさと本題に入る
【撫子】
………死人と組むって？意味あるのそれ？
（死んだ後について何も知らない人なら、まぁ妥当な反応。死んだ人は情報を流せないし、干渉もできない。
なら組んだって利益はないだろう。そう考えるのが普通だ。）
【トロンパ】
「ま、普通はそうなるけどな。意外とメリットはあるんだよ、幽霊にも。」
そう言って"説明"をする
「幽霊は干渉できない、とされているが…直接危害を加えるのを禁じられているだけだ。いざって時に武器をよこしたり、逆に相手の攻撃を止める事に関しては何も言われない。」
そう言って撫子の"帽子"をつまんで見せる
「こんな風に、な。…どうだ？俺も閉じ篭ってても暇なんだが」
【撫子】
………まぁ味方は多くて損はしないしできるならお願いするけど…
（どこか腑に落ちないと思いながらもそう答える。死人がゲームにそれなりの干渉力を持つってどうなのやら。
まぁ、いずれにせよこっちに損はない交渉だし、素直に協力をお願いすることにした。）
【トロンパ】
「んじゃ、そういう事で。こっちからの要求は…ま、出来高払いって事で。んじゃ。」
そう言うと、彼は姿を消した
【撫子】
何もすることないけどね。まぁ何かできたら協力するよ。
（そう言って手を振って見送る。まぁ味方が増えたわけだからこっちとしてはもう十分。
殺すための協力もしたくないし、それは生き残るための協力もしないことと変わんないし、出来高0じゃない？）
"邂逅"のそのあと 6th-11th
臨海 凪乃(6th)-ヒガンバナ(11th)
【ヒガンバナ】
何だかんだ目立つのに、何だかんだ来ていなかった、SCT。
今日はここに登ってみる事にした。
気晴らしは大事だ。
かなり高い塔なので、見張らしは良いことだろう。
【臨海 凪乃】
アロマな加湿器 オシャレな調度品で飾られた机
どこから持ってきたか、バブルなバスタブ。
異様な空間を放つ展望台の一角では、暇つぶしにネイルアートをする臨海
ショッピングモールである程度の調度品をそろえた後
適当なNPCを誘惑し、ここまで運ばせた悪女
この電波塔に来訪者は多々あれど
帯刀する人間までいるとは驚いた。
……刀を見て どこか確信したのか声をかける
「ねぇ、貴女。 こっち来ない？」
【ヒガンバナ】
「……なっ。」
流石にビックリした。
普通の展望台に、謎の生活スペースが有るのだから。
……こいつ何をやってるんだ。
「……あ、ああ。なんだ？」
そうしていると、まるでここの女王の様な人物から声を掛けられた。
……まあ、こちらからも話すことは色々あるので、言われた通りに近付いていく。
【臨海 凪乃】
「まぁ、座って。 立ち話もあれでしょう？」
パチンｯ と指を鳴らすと無機質なNPCが
机の上に料理を並べ始める。
そして、彼女がタバコを持つとすかさず火をつけてくる。
従順な子犬に育て上げたのである。
獄中生活も最早なに不自由はない。
「ありがとう、もういい。帰っていいわ。
女同士楽しみたい気分なの」
そういってNPCに席を外させる。
「初めて会うわね。 私は6thの臨海よ」
【ヒガンバナ】
「……中々、凄いことをしているな。」
人形の様な奴等だとしても、まるで扱いが奴隷だ。
しかも、タバコも吸う始末。
何から突っ込んだら良いのやら。
「……そうだな、私は11th……ヒガンバナだ。」
取り敢えず、私は椅子に腰かけて、偽名を名乗る。
【臨海 凪乃】
「凄い？ 男なんてね、ケツや胸を触らせておけば尻尾を喜んで振ってくる生き物よ
服の中に手を入れればすぐ落ちるわ。
曼珠沙華 花言葉は転生だったかしら。
折角の彼岸花ならもっと違う生き方をすればいいんじゃない？
あなた、ここに来る前も堅苦しそうだし」
かくいう私は浮気や不倫のオンパレードだったけれど。
「あぁ、貴女の元の姿が男かも知れないけど
あまり考えてないわ。 あなたは元の姿も女性だった。
そんな気がするもの」
タバコの煙をもくらせながら
「あなた、剣は扱えるの？
素人が扱うには難しいんじゃないかしら」
【ヒガンバナ】
「……堅苦しいは、言われ慣れた。
何、こう見えて菅田が変わる前よりは自分らしくいきているさ。」
なんて事を平然と言うんだ。
……この手の奴は苦手かも知れん。
だが、まだ言葉が通じるだけ、どうとでもなるか。
「ふっ、それはどうかな。
……と、言うのも不毛か。
剣なら友人から多少教わった、振れぬ事はない。」
──が男だろうが女だろうが、──の考えは変わらない。
身体なぞ、器にすぎない……と聞いたことがある。
【臨海 凪乃】
「……どちらにせよ殺気は本物
あなたは殺せる人間、違う？」
タバコを吸い終わると、NPCを呼び出して
手の甲で消火する。
ｱﾘｶﾞﾄｳｺﾞｻﾞｲﾏｽｩｳｳｳ と 言う声が響く
「私ね、 剣道部を探しているのよ。
姿が変わる前、剣道部に所属していた人間を
一番適合するのがアナタかもと思って……期待してたのだけど」
理由は伏せる、が ある程度察しが付くだろうか。
「違うなら帰っていいわ、……ねぇ？」
【ヒガンバナ】
「………………。」
殺気、か。
……恐らく、適当に言っているのだろう。
何しろ、──はまだ"殺気"など彼女の前では一切出していないのだから。
「…………剣道部か、確か一人だったか居たな。
剣道部なら、どうしたと言うのだ。」
……残念ながら、と言うか。
頭は弱い私は、言葉の裏なぞ読めぬ。
【臨海 凪乃】
「…………剣道部の女子を探してるのよ
理由は……言う必要はないわね」
『剣道部の女子』 これだけで言葉の真意が読み取れるはず
だが、彼女は違ったか。なら彼女は私の探してる人間じゃない。
「もしかして貴女が剣道部の女子だと思っていたのだけど……。
残念よ。 違うのね。
……まぁ、剣道部をやめたという阪端とかいう生徒もいたっけ……。
まぁいいわ。 私からの話は終わりよ」
そういうと紅茶に口をつける。
【ヒガンバナ】
「…………まさか、ここに残っている真意、分からぬとは言わぬよな？
貴様は、違うなら帰れと言ったのだぞ？」
私がここに残っている理由など、それしか無いだろう。
相手を軽く睨みながら、そう言った。
……睨まなくとも、今は目付きが悪いのだが。
「…………はぁ、で。
何となく、貴様の言いたいことは分かるが……だから何だと言うのだ。」
頭は弱いと言ったが、全く察せない訳ではないのだ。
【臨海 凪乃】
「……ふふ、いい顔になったじゃない」
過信はしないが……
これは 邂逅 と見てよさそうか
「話が早い、ならさっさとこのゲームに決着をつけましょう
さっさとこんなゲームを終わらせるのよ
……貴女はこれから先 どうするつもりか知らないけれど」
彼女に鍵を見せる
「全員脱出できる 例の鍵……
これは、私しか持ってないわ……」
とどのつまり、
全員生存できるかは私次第 といったところか。
去り際に あの筋肉質の男が鍵を砕いたのは見ていた。
【ヒガンバナ】
「なるほど、そうか。
……随分と、あのビキニマンとやらはお前さんを信用しているのだな？」
こんな重要な鍵を、彼女に渡すなど。
私だったら、絶対に渡すことは無いだろう。
……あ、それともこれも色仕掛けのせいなのか？
「……私のやることは決まっている。
鍵を集め、必要とあらば、斬る。
……どうにも、それ以外の事は出来ぬ質でな。」
【臨海 凪乃】
「二つ出たのよ……どういうわけかね……
だから信用とかは関係ないわ……
それに、肉体のいい男ほど、シモが逞しくないなんてよくある話
すぐに腰がガクガクになるわ……」
重要な話に下を挟む悪女、というか痴女
「……まぁ、全員脱出させたいなら頑張りなさい。
尤も、本気でそう思うなら私を切り捨てるでしょうけど……」
だってそのカギを持ってるのは私だけ
奪ってしまう方が得策ではないか。
……駆け引きがしたいわけじゃないのだけど
「あまり他人に肩入れしないことよ。
撫子ちゃんを飼ってる（つもり）私が言うのもあれだけど、ね」
にこっと笑う。
【ヒガンバナ】
「……二つ目、三つ目が見付かれば、お前さんのも渡して貰う事になるかもな。」
極力、下の話には触れない様にしつつ、話を進める。
全員脱出の鍵、取り敢えずは集めておいて損はない。
最終的に、彼女からは渡して貰おう。
「……そうだな。
善処する。」
他人に肩入れするな、か。
……私は、どうするか。
【臨海 凪乃】
「すべて見つかったその時は……お渡しするわ
それまで二人、生きていればね……」
こんな世界で二人、生きてる保証なんてない。
もし生きてたら、という仮契約としましょうか
いつ死ぬか、分からないもの……ね？
「私を煽って刃を抜かせた1stも死んでいるし……
Azoth候補だと言われた12thも死んだみたいだし……。
本当に何が起こるか分からないわ。
まぁ……今警戒するべき人間は いないのだけどね……
じゃあ、精々頑張りましょう。 お互いに。
話は以上よ」
【ヒガンバナ】
「…………ああ、何が起こるのやら。
ではな。」
これからもまだ、人は死ぬだろう。
……極力少ない内に、終わらせなければ。
さもないと…………
私は、この雪国の景色を見た後、コロパッドの画面を開く。
……まだ、色々と。
【ヒガンバナ】
何だかんだ目立つのに、何だかんだ来ていなかった、SCT。
今日はここに登ってみる事にした。
気晴らしは大事だ。
かなり高い塔なので、見張らしは良いことだろう。
【臨海 凪乃】
アロマな加湿器 オシャレな調度品で飾られた机
どこから持ってきたか、バブルなバスタブ。
異様な空間を放つ展望台の一角では、暇つぶしにネイルアートをする臨海
ショッピングモールである程度の調度品をそろえた後
適当なNPCを誘惑し、ここまで運ばせた悪女
この電波塔に来訪者は多々あれど
帯刀する人間までいるとは驚いた。
……刀を見て どこか確信したのか声をかける
「ねぇ、貴女。 こっち来ない？」
【ヒガンバナ】
「……なっ。」
流石にビックリした。
普通の展望台に、謎の生活スペースが有るのだから。
……こいつ何をやってるんだ。
「……あ、ああ。なんだ？」
そうしていると、まるでここの女王の様な人物から声を掛けられた。
……まあ、こちらからも話すことは色々あるので、言われた通りに近付いていく。
【臨海 凪乃】
「まぁ、座って。 立ち話もあれでしょう？」
パチンｯ と指を鳴らすと無機質なNPCが
机の上に料理を並べ始める。
そして、彼女がタバコを持つとすかさず火をつけてくる。
従順な子犬に育て上げたのである。
獄中生活も最早なに不自由はない。
「ありがとう、もういい。帰っていいわ。
女同士楽しみたい気分なの」
そういってNPCに席を外させる。
「初めて会うわね。 私は6thの臨海よ」
【ヒガンバナ】
「……中々、凄いことをしているな。」
人形の様な奴等だとしても、まるで扱いが奴隷だ。
しかも、タバコも吸う始末。
何から突っ込んだら良いのやら。
「……そうだな、私は11th……ヒガンバナだ。」
取り敢えず、私は椅子に腰かけて、偽名を名乗る。
【臨海 凪乃】
「凄い？ 男なんてね、ケツや胸を触らせておけば尻尾を喜んで振ってくる生き物よ
服の中に手を入れればすぐ落ちるわ。
曼珠沙華 花言葉は転生だったかしら。
折角の彼岸花ならもっと違う生き方をすればいいんじゃない？
あなた、ここに来る前も堅苦しそうだし」
かくいう私は浮気や不倫のオンパレードだったけれど。
「あぁ、貴女の元の姿が男かも知れないけど
あまり考えてないわ。 あなたは元の姿も女性だった。
そんな気がするもの」
タバコの煙をもくらせながら
「あなた、剣は扱えるの？
素人が扱うには難しいんじゃないかしら」
【ヒガンバナ】
「……堅苦しいは、言われ慣れた。
何、こう見えて菅田が変わる前よりは自分らしくいきているさ。」
なんて事を平然と言うんだ。
……この手の奴は苦手かも知れん。
だが、まだ言葉が通じるだけ、どうとでもなるか。
「ふっ、それはどうかな。
……と、言うのも不毛か。
剣なら友人から多少教わった、振れぬ事はない。」
──が男だろうが女だろうが、──の考えは変わらない。
身体なぞ、器にすぎない……と聞いたことがある。
【臨海 凪乃】
「……どちらにせよ殺気は本物
あなたは殺せる人間、違う？」
タバコを吸い終わると、NPCを呼び出して
手の甲で消火する。
ｱﾘｶﾞﾄｳｺﾞｻﾞｲﾏｽｩｳｳｳ と 言う声が響く
「私ね、 剣道部を探しているのよ。
姿が変わる前、剣道部に所属していた人間を
一番適合するのがアナタかもと思って……期待してたのだけど」
理由は伏せる、が ある程度察しが付くだろうか。
「違うなら帰っていいわ、……ねぇ？」
【ヒガンバナ】
「………………。」
殺気、か。
……恐らく、適当に言っているのだろう。
何しろ、──はまだ"殺気"など彼女の前では一切出していないのだから。
「…………剣道部か、確か一人だったか居たな。
剣道部なら、どうしたと言うのだ。」
……残念ながら、と言うか。
頭は弱い私は、言葉の裏なぞ読めぬ。
【臨海 凪乃】
「…………剣道部の女子を探してるのよ
理由は……言う必要はないわね」
『剣道部の女子』 これだけで言葉の真意が読み取れるはず
だが、彼女は違ったか。なら彼女は私の探してる人間じゃない。
「もしかして貴女が剣道部の女子だと思っていたのだけど……。
残念よ。 違うのね。
……まぁ、剣道部をやめたという阪端とかいう生徒もいたっけ……。
まぁいいわ。 私からの話は終わりよ」
そういうと紅茶に口をつける。
【ヒガンバナ】
「…………まさか、ここに残っている真意、分からぬとは言わぬよな？
貴様は、違うなら帰れと言ったのだぞ？」
私がここに残っている理由など、それしか無いだろう。
相手を軽く睨みながら、そう言った。
……睨まなくとも、今は目付きが悪いのだが。
「…………はぁ、で。
何となく、貴様の言いたいことは分かるが……だから何だと言うのだ。」
頭は弱いと言ったが、全く察せない訳ではないのだ。
【臨海 凪乃】
「……ふふ、いい顔になったじゃない」
過信はしないが……
これは 邂逅 と見てよさそうか
「話が早い、ならさっさとこのゲームに決着をつけましょう
さっさとこんなゲームを終わらせるのよ
……貴女はこれから先 どうするつもりか知らないけれど」
彼女に鍵を見せる
「全員脱出できる 例の鍵……
これは、私しか持ってないわ……」
とどのつまり、
全員生存できるかは私次第 といったところか。
去り際に あの筋肉質の男が鍵を砕いたのは見ていた。
【ヒガンバナ】
「なるほど、そうか。
……随分と、あのビキニマンとやらはお前さんを信用しているのだな？」
こんな重要な鍵を、彼女に渡すなど。
私だったら、絶対に渡すことは無いだろう。
……あ、それともこれも色仕掛けのせいなのか？
「……私のやることは決まっている。
鍵を集め、必要とあらば、斬る。
……どうにも、それ以外の事は出来ぬ質でな。」
【臨海 凪乃】
「二つ出たのよ……どういうわけかね……
だから信用とかは関係ないわ……
それに、肉体のいい男ほど、シモが逞しくないなんてよくある話
すぐに腰がガクガクになるわ……」
重要な話に下を挟む悪女、というか痴女
「……まぁ、全員脱出させたいなら頑張りなさい。
尤も、本気でそう思うなら私を切り捨てるでしょうけど……」
だってそのカギを持ってるのは私だけ
奪ってしまう方が得策ではないか。
……駆け引きがしたいわけじゃないのだけど
「あまり他人に肩入れしないことよ。
撫子ちゃんを飼ってる（つもり）私が言うのもあれだけど、ね」
にこっと笑う。
【ヒガンバナ】
「……二つ目、三つ目が見付かれば、お前さんのも渡して貰う事になるかもな。」
極力、下の話には触れない様にしつつ、話を進める。
全員脱出の鍵、取り敢えずは集めておいて損はない。
最終的に、彼女からは渡して貰おう。
「……そうだな。
善処する。」
他人に肩入れするな、か。
……私は、どうするか。
【臨海 凪乃】
「すべて見つかったその時は……お渡しするわ
それまで二人、生きていればね……」
こんな世界で二人、生きてる保証なんてない。
もし生きてたら、という仮契約としましょうか
いつ死ぬか、分からないもの……ね？
「私を煽って刃を抜かせた1stも死んでいるし……
Azoth候補だと言われた12thも死んだみたいだし……。
本当に何が起こるか分からないわ。
まぁ……今警戒するべき人間は いないのだけどね……
じゃあ、精々頑張りましょう。 お互いに。
話は以上よ」
【ヒガンバナ】
「…………ああ、何が起こるのやら。
ではな。」
これからもまだ、人は死ぬだろう。
……極力少ない内に、終わらせなければ。
さもないと…………
私は、この雪国の景色を見た後、コロパッドの画面を開く。
……まだ、色々と。
偽善的善意 2nd-9th
みかんちゃん(2nd)-マリア(9th)
【みかんちゃん】
商店街の参道脇に佇んで、はらはら落ちて解けてく雪を見ていた。
音を、聞いていた。
雪が降る日は雪が音を吸収するから街が静かになるのだと、それはハッタリか。
自動販売機のモーター音。
店の暖房器具の音。
風の音、枯葉の靡く音。
思ったよりも雑音が耳に煩くて。
耳鳴りも五月蝿くて。
きっと無音なんてものは生きているうちに聴ける[音]ではないのでしょうね。
一人何を思うでも考えるでもなく、誰かが来ることを待っていた。
否、
彼女が来るのを待っていた。
共有チャットで彼女が求めていたものは、
残念ながら私ではないのだけれど、
もしかしたらそうかもしれないのだけれど。
そんなことはどうでもいいことでありまして。
端から私には敵だの味方だの協力だの関係なくて。
だって、全てを信用しているから。
信用するななんて、疑えなんて、必要ない。
あるのは自身へ向けられる[視線]のみ。
だから、最初に協力だ信頼だ協力だ垂れ流した彼女を呼び出して。
細工は必要ないものだから、シンプルにお話がしたいのだとお茶会にでも誘ってみた。
【マリア】
私は商店街を歩いていた。
取り立てて、用事があったという訳では無い。というか、私に最初から用事の生まれようがない。
何故なら。
私の生存のセオリーは、能動的に動かないこと、である。
アゾートもセレスティアも、狂人も。結局、取るに足らない無所属の相手を進んで殺害はしない。
する暇がない。
だから、却って、どっち付かず、暇を持て余すべきなのだ。
致命的な場面までは。
だから、その点に関しては、あの引きこもりを評価して良い。
アイツは、セレスティアであれをやったから、見方によれば、殺されても良いが。
それに、一点に留まっていたなら、部屋ごと焼かれたりしたらどうするのであろうか。
という訳で、私は当座、歩き回りながら不干渉の立場に立つ。
罠に、かかるまでは。
という訳で。
少しずつ、動こうと思う。
牛の歩み。
ウサギとカメ。
ゆったりとやれば良い。
焦るから殺し合いになるのだ。
『……ねぇ。久しぶりね。』
私は、ふと見つけた"彼"に撓垂れ掛かり、緩く抱きつくようにして、声をかける。
【みかんちゃん】
歩み寄る彼女を抱きつく彼女をこれといって咎めることはなく、その緩やかな人の重みに寄り添う。
ゆくりと冷えきる空気を肺に溜め込んで、吐き出すと共に口元を緩めた。
「──ええ、お久しぶり。」
なんて微笑んで。
なんて抱き合うほど感傷的な間柄でもないのだけれど。
そんなことはどうでもいい。
彼女は誰かに殺されない自信があるのだろう。
私は誰かを殺さない自信があるのだろう。
自信なんてもの過信でしかないが。
「あなたは私のことを人畜無害だと言っていたけれど、今もそう思ってくれるかしら？」
最初の言葉。
彼女がこちらに投げた言葉を振り返るように呟いた。
【マリア】
『は？』
は？
私は聞き返す。
なんだ、新手のメンヘラか。
なるほど、なら確かにありえる質問だ。もゥまぢ無理…私人畜無害だから…か。
済まない。
脱線した。
こんな感想を抱いてなんていない。……かもしれない。
ただし、は？と言いたくなることはあった。彼が何かした、という確定的な―――少なくとも信ぴょう性のある―――情報を私は手に入れていないし。
第一、何もかも知ったような顔をしておきながら、私は何も知らなかったりもするし。
人畜無害か、という問に関してなら、私はYesを出せる。
だが。
今もそう思っているか？
と言われたなら。
今はそう思えない理由が。
それ相応の根拠が。
または、現象が。
あるのを想定せねばならない。
つまるところ。
下手をしたら、かなりリスキーな状況であるとも言える。
ついに無かった命運も尽きたか。
なら胸がすく思いだが。
割と私は臆病な人間なので。
『なんだって、そんな事を聞くのかわからないわ。
言えるわね。
確かに、人畜無害と言えるわ。
私に言わせれば、たかだかスタンガンなんかに驚く理由がわからないのよ。あんなもの、2万円くらい出せば買えるじゃない。ただの電化製品よ。
なら、何万もする炊飯器とか、冷蔵庫とか、テレビで人を殺す方がまだ一笑の価値もあるわ。』
待て。
何を言っている。
これでは、表立って喧嘩をうるような態度ではないか。
何か、私の口は私の敵か。
言ってなかったが、私の口は勝手に嘘をついてくれる。
気分的には、自動書記に近く。
結果としては、メダルゲームのいきなりジャラジャラと出てくるのにも近い。
だから、理解に苦しむのも時々排出されるのだ。
無論嘘である。
確固たる勝算があった。
なんて言うのは悲しいくらい嘘くさいか。
【みかんちゃん】
「ふふ、やだ…意外と饒舌なのね？」
結構、
「別にスタンガンで貴女をどうしようだの浅はかなこと考えやしないわよ。」
彼女が随時情報を、半信半疑ながらも取り入れていることが理解出来たから充分。
成程、何が始まるとは知っていても未来を透視出来るとか大それたソレではないの。
当たり前。
いや、流石の空想話も甚だしいか。
懐から取り出したスタンガンは地面に落として。
情報を何より白に塗り替えるソレを落として。
「あげるわ。」
拾ってみれば？
拾わないなら別に。
なんて試すようだけど
別段理由はない。
多分。
ただ、
「私は貴女に協力したいのよ。」
なんて安易で陳腐な言葉を投げかけてまた朗らかに笑ってみせるだけで。
【マリア】
『別にいらないわ。』
私は凶器は持たない主義だ。
持たない主義のように限界まで偽る主義だ。
少なくとも、とある剣士のようにぶら下げはしない。
だから、非殺傷武器は便利である。なので、要らないと言いつつも拾い上げ、懐に忍ばせた。
ふてぶてしい限りである。
それは良い。
どうでもいい。
だが。
『…で。私に協力って？』
協力、という言葉が気にかかる。
『オフレコにしたいなら、メッセージにくれるでも良いけれど。』
【みかんちゃん】
拾い上げる彼女を見送って。
その間も口元には已然柔らかな笑みを浮かべていた。
それから彼女の問いかけに何の繋ぎもなしに口を開けば
「ゾディアックは双子座で本名は佐藤太郎なのよ私。」
なんて紡いで。
一拍。
あら？なんて態とらしく口に人差し指をあてがい小首を傾げれば
「あ、佐藤くんは死んでたわね？…冗談。
うふふ、ブラックジョークよ♡ 笑って頂戴な？」
カラカラ笑ってウィンク一つ。
張り詰めた空気を和らげるには上出来だと思ったけれど。
「んっんー…本名もゾディアックも貴女にあげましょう。なぁに…協力、というより何か使えるならどうぞ利用してくださいな？って話。」
協力だと語弊があったかしらなんて軽く訂正を交える。訂正ばかりだがそこはご愛嬌でしょう。
【マリア】
『意味不明ね。
……それって、どういう事？』
意味不明。
理解不能。
これに尽きる。
別に、これが交換条件付きのものであるのだとするならば、簡単に理解できる。
だが、無い。
つまり、好きに利用しろ、の意。
本名という生命線と。
ゾディアックまで預けて。
共有チャットで、アゾートに靡いた(フリかもしれないが)私に、協力したい理由がわからない。
『貴方のメリットが見えない。
それじゃあ、なんの意味も無いじゃない。』
聞いてから、分かった。
閃いた。
まさか、そうか。
ひょっとすると、分かったぞ。
これは――――――……？
【みかんちゃん】
「──意味？
[ない]わよ、そんなもの」
そのままの意味。
常に[意味は無い]のが私。
理解不能？狂ってる？
残念ながら正常。
私は利己主義者でも利他主義者でもないわけで。
口にはしないけれど。
踊り子はより周知されることが必要だから。
「単純に親切よ？親切に理由なんか必要？
数削りがしたいなら名前を呼んでもらって構わないし困ったときには私に頼ればいい。
ほら、ただの親切よ。」
ただの親切？巫山戯てる。
そう一蹴して、一笑して、
踵を返すにはあまりに惜しい糸だと、どうかしら？
【マリア】
『……』
舌打ちする。
それはもう露骨に。
歯に衣着せず。
何がしたい。なんの意義がある。
それを、理解しきれていない。
それは当然だ。
それは必然だ。
その『何が』が最初から無い。
『まあ良いわ。親切として、受け取ることにする。以上よ。』
不服である。
不気味である。
許し難くすら思えた。
この借りは必ず返すと憎悪を露わにして。
私は、歩き去る。
【みかんちゃん】
「…うふふ、またね？」
相手の露骨な態度に眉一つ動かすことなく笑顔でその背中を見送った。
その背中が見えなっても未だ笑顔崩さず。
さて、次はどうしようか。
コレ、彼に返すには少しばかり惜しいのよね。
なんて、彼女には使わずに済んだ懐のソレを指で謎って。
いっその事、此処に置いていってしまおうか？
いや、それは少しつまらない。
つまらない？嘘。
誰かに上げるのはいいかもしれない。
面白くはないけど必要ではある。
そうすればまた誰かが私を型どってくれるだろうから。
意味もないけど、理由もないけど、必要はある。
今やってること全て、個を作るのに必要なことでありまして。
「ひゃぁあ…寒い寒い…早く帰りましょっ」
身体を震わせ自身を両手で抱いてホテルへの帰途を辿った。
【みかんちゃん】
商店街の参道脇に佇んで、はらはら落ちて解けてく雪を見ていた。
音を、聞いていた。
雪が降る日は雪が音を吸収するから街が静かになるのだと、それはハッタリか。
自動販売機のモーター音。
店の暖房器具の音。
風の音、枯葉の靡く音。
思ったよりも雑音が耳に煩くて。
耳鳴りも五月蝿くて。
きっと無音なんてものは生きているうちに聴ける[音]ではないのでしょうね。
一人何を思うでも考えるでもなく、誰かが来ることを待っていた。
否、
彼女が来るのを待っていた。
共有チャットで彼女が求めていたものは、
残念ながら私ではないのだけれど、
もしかしたらそうかもしれないのだけれど。
そんなことはどうでもいいことでありまして。
端から私には敵だの味方だの協力だの関係なくて。
だって、全てを信用しているから。
信用するななんて、疑えなんて、必要ない。
あるのは自身へ向けられる[視線]のみ。
だから、最初に協力だ信頼だ協力だ垂れ流した彼女を呼び出して。
細工は必要ないものだから、シンプルにお話がしたいのだとお茶会にでも誘ってみた。
【マリア】
私は商店街を歩いていた。
取り立てて、用事があったという訳では無い。というか、私に最初から用事の生まれようがない。
何故なら。
私の生存のセオリーは、能動的に動かないこと、である。
アゾートもセレスティアも、狂人も。結局、取るに足らない無所属の相手を進んで殺害はしない。
する暇がない。
だから、却って、どっち付かず、暇を持て余すべきなのだ。
致命的な場面までは。
だから、その点に関しては、あの引きこもりを評価して良い。
アイツは、セレスティアであれをやったから、見方によれば、殺されても良いが。
それに、一点に留まっていたなら、部屋ごと焼かれたりしたらどうするのであろうか。
という訳で、私は当座、歩き回りながら不干渉の立場に立つ。
罠に、かかるまでは。
という訳で。
少しずつ、動こうと思う。
牛の歩み。
ウサギとカメ。
ゆったりとやれば良い。
焦るから殺し合いになるのだ。
『……ねぇ。久しぶりね。』
私は、ふと見つけた"彼"に撓垂れ掛かり、緩く抱きつくようにして、声をかける。
【みかんちゃん】
歩み寄る彼女を抱きつく彼女をこれといって咎めることはなく、その緩やかな人の重みに寄り添う。
ゆくりと冷えきる空気を肺に溜め込んで、吐き出すと共に口元を緩めた。
「──ええ、お久しぶり。」
なんて微笑んで。
なんて抱き合うほど感傷的な間柄でもないのだけれど。
そんなことはどうでもいい。
彼女は誰かに殺されない自信があるのだろう。
私は誰かを殺さない自信があるのだろう。
自信なんてもの過信でしかないが。
「あなたは私のことを人畜無害だと言っていたけれど、今もそう思ってくれるかしら？」
最初の言葉。
彼女がこちらに投げた言葉を振り返るように呟いた。
【マリア】
『は？』
は？
私は聞き返す。
なんだ、新手のメンヘラか。
なるほど、なら確かにありえる質問だ。もゥまぢ無理…私人畜無害だから…か。
済まない。
脱線した。
こんな感想を抱いてなんていない。……かもしれない。
ただし、は？と言いたくなることはあった。彼が何かした、という確定的な―――少なくとも信ぴょう性のある―――情報を私は手に入れていないし。
第一、何もかも知ったような顔をしておきながら、私は何も知らなかったりもするし。
人畜無害か、という問に関してなら、私はYesを出せる。
だが。
今もそう思っているか？
と言われたなら。
今はそう思えない理由が。
それ相応の根拠が。
または、現象が。
あるのを想定せねばならない。
つまるところ。
下手をしたら、かなりリスキーな状況であるとも言える。
ついに無かった命運も尽きたか。
なら胸がすく思いだが。
割と私は臆病な人間なので。
『なんだって、そんな事を聞くのかわからないわ。
言えるわね。
確かに、人畜無害と言えるわ。
私に言わせれば、たかだかスタンガンなんかに驚く理由がわからないのよ。あんなもの、2万円くらい出せば買えるじゃない。ただの電化製品よ。
なら、何万もする炊飯器とか、冷蔵庫とか、テレビで人を殺す方がまだ一笑の価値もあるわ。』
待て。
何を言っている。
これでは、表立って喧嘩をうるような態度ではないか。
何か、私の口は私の敵か。
言ってなかったが、私の口は勝手に嘘をついてくれる。
気分的には、自動書記に近く。
結果としては、メダルゲームのいきなりジャラジャラと出てくるのにも近い。
だから、理解に苦しむのも時々排出されるのだ。
無論嘘である。
確固たる勝算があった。
なんて言うのは悲しいくらい嘘くさいか。
【みかんちゃん】
「ふふ、やだ…意外と饒舌なのね？」
結構、
「別にスタンガンで貴女をどうしようだの浅はかなこと考えやしないわよ。」
彼女が随時情報を、半信半疑ながらも取り入れていることが理解出来たから充分。
成程、何が始まるとは知っていても未来を透視出来るとか大それたソレではないの。
当たり前。
いや、流石の空想話も甚だしいか。
懐から取り出したスタンガンは地面に落として。
情報を何より白に塗り替えるソレを落として。
「あげるわ。」
拾ってみれば？
拾わないなら別に。
なんて試すようだけど
別段理由はない。
多分。
ただ、
「私は貴女に協力したいのよ。」
なんて安易で陳腐な言葉を投げかけてまた朗らかに笑ってみせるだけで。
【マリア】
『別にいらないわ。』
私は凶器は持たない主義だ。
持たない主義のように限界まで偽る主義だ。
少なくとも、とある剣士のようにぶら下げはしない。
だから、非殺傷武器は便利である。なので、要らないと言いつつも拾い上げ、懐に忍ばせた。
ふてぶてしい限りである。
それは良い。
どうでもいい。
だが。
『…で。私に協力って？』
協力、という言葉が気にかかる。
『オフレコにしたいなら、メッセージにくれるでも良いけれど。』
【みかんちゃん】
拾い上げる彼女を見送って。
その間も口元には已然柔らかな笑みを浮かべていた。
それから彼女の問いかけに何の繋ぎもなしに口を開けば
「ゾディアックは双子座で本名は佐藤太郎なのよ私。」
なんて紡いで。
一拍。
あら？なんて態とらしく口に人差し指をあてがい小首を傾げれば
「あ、佐藤くんは死んでたわね？…冗談。
うふふ、ブラックジョークよ♡ 笑って頂戴な？」
カラカラ笑ってウィンク一つ。
張り詰めた空気を和らげるには上出来だと思ったけれど。
「んっんー…本名もゾディアックも貴女にあげましょう。なぁに…協力、というより何か使えるならどうぞ利用してくださいな？って話。」
協力だと語弊があったかしらなんて軽く訂正を交える。訂正ばかりだがそこはご愛嬌でしょう。
【マリア】
『意味不明ね。
……それって、どういう事？』
意味不明。
理解不能。
これに尽きる。
別に、これが交換条件付きのものであるのだとするならば、簡単に理解できる。
だが、無い。
つまり、好きに利用しろ、の意。
本名という生命線と。
ゾディアックまで預けて。
共有チャットで、アゾートに靡いた(フリかもしれないが)私に、協力したい理由がわからない。
『貴方のメリットが見えない。
それじゃあ、なんの意味も無いじゃない。』
聞いてから、分かった。
閃いた。
まさか、そうか。
ひょっとすると、分かったぞ。
これは――――――……？
【みかんちゃん】
「──意味？
[ない]わよ、そんなもの」
そのままの意味。
常に[意味は無い]のが私。
理解不能？狂ってる？
残念ながら正常。
私は利己主義者でも利他主義者でもないわけで。
口にはしないけれど。
踊り子はより周知されることが必要だから。
「単純に親切よ？親切に理由なんか必要？
数削りがしたいなら名前を呼んでもらって構わないし困ったときには私に頼ればいい。
ほら、ただの親切よ。」
ただの親切？巫山戯てる。
そう一蹴して、一笑して、
踵を返すにはあまりに惜しい糸だと、どうかしら？
【マリア】
『……』
舌打ちする。
それはもう露骨に。
歯に衣着せず。
何がしたい。なんの意義がある。
それを、理解しきれていない。
それは当然だ。
それは必然だ。
その『何が』が最初から無い。
『まあ良いわ。親切として、受け取ることにする。以上よ。』
不服である。
不気味である。
許し難くすら思えた。
この借りは必ず返すと憎悪を露わにして。
私は、歩き去る。
【みかんちゃん】
「…うふふ、またね？」
相手の露骨な態度に眉一つ動かすことなく笑顔でその背中を見送った。
その背中が見えなっても未だ笑顔崩さず。
さて、次はどうしようか。
コレ、彼に返すには少しばかり惜しいのよね。
なんて、彼女には使わずに済んだ懐のソレを指で謎って。
いっその事、此処に置いていってしまおうか？
いや、それは少しつまらない。
つまらない？嘘。
誰かに上げるのはいいかもしれない。
面白くはないけど必要ではある。
そうすればまた誰かが私を型どってくれるだろうから。
意味もないけど、理由もないけど、必要はある。
今やってること全て、個を作るのに必要なことでありまして。
「ひゃぁあ…寒い寒い…早く帰りましょっ」
身体を震わせ自身を両手で抱いてホテルへの帰途を辿った。
温泉と、ルールは破るもの 3rd-7th
五番目の道化師(3rd)-ロティ(7th)
【五番目の道化師】
雪山の秘湯。
二度と来るものか！と思っていたけどなんとなくまた来てしまった。もしかしたら、あの時みた化け物もいないかもしれないし、今回は温泉を堪能できるかもしれない。そう、思ったのだ。
一応、脱ぐ前に湯に浸かる変なものがいないかは確認した。よし、今日は大丈夫そうだ。道化師は手早く服を脱ぎ、体を流し、静かに湯に浸かった。
(あぁ…癒されますぅ…)
【ロティ】
嘗て友達だったかも知れない君よ。
まずは……すまないと。
私は────
僕は────
謝る位、許してもらえるだろうか？
いや、もう許さなくても良い。
これは……禁忌。
そうだね…禁忌を犯すには、その代償を求められるのは当たり前だろう？
──禁忌を犯すと物を得て。
──犯す為に物を失う。
僕は…………私は…………
……“何”を得て、“何”を失ったんだろうね？
とりあえず、得たのは覚悟。
失ったのは………………心、かな？
……コレは、恐ろしい事だね。
……何が恐ろしいかって？
それは、あの子を殺めた時。
僕は……私は……
…………“躊躇わなかった”。
そんな事は後から知った、知らされた。
……なんて、思ったけど。
私には似合わない…僕には、どうかな？
考えて、考えて、考えて。
足取りは不確かに、そして、確実に。
雪山のロッジへ向かったこの足は、それを流せと私に言った。
嗚呼……もう、真面目は、疲れた。
そして……足は、ゆっくりと…温泉へ。
このよく分からない何か……。
それを、なんでも良いから流せと。
なんでも良いから、溶かせ……と。
許せ……なんて、言ってどうなると…。
嘲笑うのは私の腕で…。
僕は、私は…
──『『何を、したい？』』
二重に声が響いた様な錯覚と共に。
服を脱いで、温泉へ続く扉を開いた。
｢…………先客、かな…？｣
湯けむりで良く見えなかったけれど。
そして相手からも此方はあまり見えないだろうけれど。
確かに誰かそこに居て、確かに僕は此処に居る。
近付いて、近付いて。
その姿を見た時、なんだろうか。
拍子抜けというか、安心というか……。
知らない人には少し抵抗を持っていた時には、有難いものだったのだろう。
その道化師は、私を、安心させたのだから。
何も、戸惑う事は無かった……きっと、そう。
何も……無いならば…………。
｢……もしかして、ピエロ君…？
また会ったね、隣……お邪魔するよ。｣
見間違える筈もない。
こんなメイクをした奴が、そして見たばかりのこのメイクを、見間違える事は無い。
近くに屈み、挨拶と隣に失礼するという事を告げて。
そのまま湯船に浸かって、空を見上げた。
落ち着きたい……落ち着きたいのに、頭と身体はまだそれを許さない。
湯船に浸かった時に跳ねた水が頬に掛かる。
その水は、妙に傷に染みた。
……けど、あの子に比べたら、大した事は無いと、僕の中の私は、謳っていた。
【五番目の道化師】
「あっ、ロティさん」
ロティさんもお風呂に入りに来たんだ。まぁ、お風呂に入らない人なんていないもんね。道化師はバスタオルで体を隠しながら
「───ロティさん、女の人だったんだ…」
前回、会ったときは気がつかなかった。
てっきり男の人かと思ってたよ。なんて、道化師は隣に来たロティをみながら呑気にそんなことを。
【ロティ】
｢ん……あぁ、そうだよ。
言ってなかったね、僕は女だ、皆よく分からないって言うよ。｣
そう言えば言っていなかった。
なんて、思いながら、ピエロの方を見て。
言えば良かったかな……なんて、思ったけど、別に過ぎた事は良いかな。
風呂に浸かりながらピエロを見て。
やっぱりメイクは外さないのかと思う。
どうしようか、前に言ったようにメイクの下を見せてもらおうか……なんて。
どうしよう……いや、頼んで良いのか、なんて。
……とりあえず、一度落ち着きたい。
……まだ、落ち着けない。
……まだ、落ち着かない。
……まだ、落ち着きたい。
落ち着けるかな……気持ちの整理が着くまで時間が掛かりそうだけど。
少しは……冷静に、なれただろうか。
｢……そういえば、メイク落としていないんだね。
その下…少し気になるけど、見せてもらえるとか出来るかい？
…………あぁ、無理にとは言わないよ、ただ気になるだけだからね。｣
メイクを落としていないピエロにそう言う。
その下が、実は気になるのは伝える。
あわよくば見せてもらえるだろうか、なんて個人的なお願いを言ってみたり。
……が、勿論無理にとは言わない。
我儘なのは分かっているから。
【五番目の道化師】
そう言えば、次ロティさんと会ったときに化粧を落とすって約束してたような気もしなくはない。
別に今は風呂だし、化粧を落としてもいい気がする。───まぁ、ピエロメイクをしなおすメイク道具は持ち歩いていないからまた素顔で歩くことになるのだが。
「流石に湯船で化粧を落とすわけにはいかないから」
そう言って湯から上がったうえで桶に湯を汲み、洗顔…は、流石にないので蒸しタオルで化粧を落としはじめる。ちなみにロティが今、道化師の方に向いても背中しかみえないだろう。
【ロティ】
｢…………やってくれるのかい、済まないね…。｣
やってくれるのかと思い、そのままピエロを見送ってその背中を見ていた。
……が、やがてそれは見ない様にする。
そして桶の中に入れてきた物を手に取って。
それは、日本酒である。
ずっとずっと、ルールに縛られて来たのだ……此処で位良いだろう？
…………なんて、思ったんだ。
幸い、アルコールには強い体質らしい。
1回それは調べて分かったことだけど。
つまりは一度飲んだのだ。
これも……■■■と…だったかな……。
嗚呼……どうして君なんだ……なんて、思っているけど解決にはならなくて。
治す方法があるなら、私は、僕は、なんでもしてあげるって、此処に決めたんだ。
このよく分からない事件が解決すれば……。
もし願いが本当に叶うとするならば……。
…………■■■、君と……また…………。
｢…………また、やんちゃしような…。｣
なんて、空へ向かって呟いて。
私は酒を一口煽る。
その味は……とても、苦かった。
前に飲んだ時は…こんな味だったかな、なんて……思ったんだけど。
まあ、悪くは無いね。
…………良く、皆でやったよね…と、思いながらも空を見上げた。
【五番目の道化師】
元々、湯気で化粧が落ちやすくなっていたのか蒸しタオルで拭き取れば簡単に落ちてくれた。ほぼ白塗りしているだけのメイクだ。
タオル対して汚れていない気がするが、桶の中の湯に浸けて洗えば透明な湯が白く染まる。桶に湯を組み直し、水面に写る自分を確認すると…ちゃんと落ちたみたいだ。
「…おまたせ。
あー、寒い寒い。湯船に浸かって落とせばよかったかもしれない」
あまり水しぶきが立てないように静かに入り、肩までしっかりと湯に浸かる。風邪はめったに引かないほうだが寒いもの寒いのだ。道化師は冷えた体を暖かい湯で温める。
【ロティ】
初めてピエロの素顔を見て。
真っ先に抱いたのは、誰？という物だったが、普通に声やなんやらでピエロであることは分かった。
勿論、口に出すものでは無い。
否、口に出す必要は無いものだ。
温まるピエロを横目に次に思った事は、こんな顔だったのかという事。
まあ……見れたから良いかと思いつつ、酒を飲むとそのまま身体から伝わる熱と、酒の熱で温まる。
………………嗚呼、悪くないさ。
｢……そんな顔だったんだね、ピエロ君。
中々、悪くないじゃないか……これは我儘を言って良かったかもしれないね。｣
そして、ピエロの素顔について。
……やはり、少しくらい触れておこうか。
そんな素顔は、中々良いものだと思う。
これは我儘を聞いてもらった甲斐が有るのではと、本音かどうかはさておき、小さく笑いながらそう言って。
【五番目の道化師】
「でも、これ偽りの姿だからね。褒められても困るよ」
だって、本来の姿はこんなに髪短くないし。
チラっとロティの方へ目を向け───あれ？ロティってばお酒飲んでない？
「未成年はお酒飲んじゃダメなんだぞ〜」
冷えてしまった頬を暖めながらそんな事を言ってみる。
未成年飲酒禁止法は確か…子どもの成長を妨げる可能性があるからある法律だっけ。今の状況ではそんなこと関係ないだろうけど。
【ロティ】
｢そう言われてもね……窮屈な縛りの中で楽しむにはこれ位じゃないとね。
ルールに縛られたなら、そのルールは此処で位破るべきだ。｣
ルールなど知らない。
そんな窮屈なものの中で縛られ、そして制限されていたのでは苦しいだろう？
酒はそのうちの一つで、他は…喫煙だろうか…。
……でも、1番破っても問題ない物がある。
非人道的で、許されない物。
……なぁ、分かるだろう？
────人殺しだよ……？
此処で、人を一人、殺した。
こんな事を言うべきでは無い……が。
思った事がある。
…………死に際ほど、美しい。
…………死に際ほど、素晴らしい。
…………死に際ほど、楽しい。
嗚呼……僕は罪深いね…■■■……。
もっと人の死に際が見たいと思った、なんて……言ったら僕を許さない？
それとも、私を許さないのかな？
…………けど、“僕”はやらないよ…。
此処での必要性なんて、感じないからね。
｢……君も、飲むかい？
真面目にやって来たからさ、僕は此処でハメを外したんだよ…演じるのは疲れるんだ。｣
そんな事を思わせること無く。
ピエロに君も飲むかと問いかける。
今までルールを守り真面目にやってきたつもり。
だからこそ、此処でハメを外した。
……それがコレだ。
………………これも、君は、ユルシテクレル？
──なんて…………ね…。
【五番目の道化師】
「ハメを外す…ね」
お酒…飲んだことないんだけど。
どうしよう…ここは受けとるべきだろうか。まぁ、ここにはキツく叱る大人たちもいないから…受け取ってもいい気がするけど…。
「んー、私、お酒飲んだことがないからなぁ…」
ここは素直に言っておくのがいいだろう。(少し興味はあるが)強いか、弱いかもわからない。どうすればいいか、正直困るのだ。家族のなかでお酒を飲んでる人もいないから、体勢がある家系かもわからないし…
【ロティ】
｢なら……挑戦してみるといい。
此処なら、誰も咎める人は居ないだろう…何をやっても……ね。｣
それならば試してみるといい。
此処にいる限りは誰も咎める人は居ないだろうと伝えて、酒の入った容器を桶に乗せた。
何をやってもいい、それはそれだ。
何を言いたいか、なんて言うのは……分かるんじゃないか？
喫煙も、飲酒も、人殺しも……。
全部全部全部。
許してもらえる環境にある。
…………ねぇ、■■■…覚えているかな？
これが……人だよ。
｢ほら、遠慮は要らないよ。｣
酒を注ぎ、そのままピエロに差し出す。
半ば強制的に、かつ拒否権はある事は分かるかな？
なんて、思いながら……私は、僕は、彼女を小さな禁忌に近づける。
【五番目の道化師】
「え…っ、あ…じゃあ、ちょっとだけ…」
困惑した表情のまま酒の入った器を受け取り…一口飲んでみる。うん、たぶん大人味ってやつなんだろうね。
苦いや。
ん？でも、なんか……懐かしい味がする気が……
(あれ？なんで私はこの味をしってるの？)
首をかしげ、悩もうとしてみるが……思考をまとめる前になぜか、涙が溢れてくる。
───あれ…なんで、私は泣いているの……？
【ロティ】
｢…………泣いて、居るのかい…？｣
泣いているのかと聞いたのは…多分、私。
僕は……なんて聞こうかな。
なんて、思ったけどさ、やっぱり私が先に口を開いたのは言うまでもない。
泣いているのは……なんでかな……。
…………嗚呼、なんだろう、これを……知っている？
知っている……から、分からない。
分からない分からない分からない…。
……から、“僕”はそれを聞いたんだ。
問いかけが届くかは……知らないけれども。
｢……前に、なにかあったのかい？｣
何か酒に関する事であったのか。
……なんて、問いかけてみたけどさ…別に興味があるわけでもなかった。
ただ、気になったと言うだけ。
それ以上でもそれ以下でもない質問を……。
…………僕は。
…………私は。
2人で、ピエロの彼女に聞くのだ。
【五番目の道化師】
「ごめんなさい、わからないんです」
どうして泣いているのかわからない。
なんでこの味が懐かしく思えたのかわからない。
たしかに、久しぶりに口にしたような気がするのに…記憶がすっぽりと抜け落ちているような…そんな感じがする。
だけど、同時に…何かが警告してきてるような気がしなくもない。
───『これ以上、酒を口にするな』と……
【ロティ】
｢ふぅん………分からない、か…。｣
相手が分からないという。
なら、それは僕にも分からない。
もちろん私にも分からない。
……まあ、本人が思い出すまで頑張って貰うしかないけれど…。
分からないのは、何？
僕は……此奴の考えが分からない。
私は……なぜ泣いているのか分からない。
色々な疑問が私と僕の中で交差しつつ、今は“僕”を演じるのさ。
…………本当に、分からないなら…ね。
｢じゃあ……もう1つ聞かせて欲しい…。
…………君は、どうしたいんだい？｣
ならば、こちらから一つだけ。
そこまで思うのは何なのか知らないけど。
何かあるのは確かだろう？
僕の中に私が居るように。
私の中に僕が居るように。
────君の中には、誰が居るんだろうね。
なんて、思うんだ。
だから、そんな中の“君”に問う。
君は、どうしたいのかと。
【五番目の道化師】
どうしたい、か？それはどういう意味なんだろう。
誰に、問いかけた言葉なんだろう。
ダメだ、たった一口しか飲んでないはずなのにもう酔いが回ってきていて思考がうまく纏まらない。
疲れてるときは酔いが回りやすく、入浴中はさらに血行が促進されるからこんなに酔いの回りが早かったのか…それともアルコール度数が想像より高かったのか。
「それは、誰に向けた言葉？道化師としての私？それとも私個人？」
いや、逆だな。むしろ久しぶりにモヤがかかった思考が晴れた気がする。まぁ、『また』覚めたら記憶が飛ぶんだろうけど。
「どっちにしたって、私の答えは同じよ。『皆に笑顔でいてほしい』。そして『これ以上、人殺しはしないでほしい』。私の行動で皆が笑顔になるならそれでよし。
まぁ、今現状、それは叶いそうにないけどね」
クヒヒ、と<道化師>はロティを見て笑った。
【ロティ】
｢さぁ……僕は、どっちに聞いたんだろうね。
少なくとも……“僕”は、確実に君に聞いている、この意味が分かるかな？｣
さぁて、僕はどちらのピエロに聞いたんだろうね？
“僕”は、目の前にいるピエロに聞いたつもり。
…………けど…“私”はどうなるのかな？
……いや、やっぱり飽きて来たからいいや。
“私”は此処で引く。
あとは“僕”がやる。
───任せたよ……任されたからね。
｢……そうだねぇ…多分、叶わなそうだね。
だってさ……また一人、笑ってくれるかも知れない奴が死んだからね。｣
なんて、言っているけどさ。
それを引き起こしたのは紛れもなく、僕だ。
あの子は運が悪かったのかもしれない。
そう思いながら……ピエロの頬に手を伸ばす。
｢君の瞳は良い色をしている。
…………本当、傍に置いておける程だ……なんだろうねぇ……“宝石”かな…。
なら、その目を奪うのも楽しそうだよねぇ…。｣
此処で狂気の籠った目を向けて。
これは……“僕”かな…？
目を見ながら、狂乱の表情を見せながらそんなことを伝えて。
言わずもがな、奪うは物理。
…………まあ、それを実行する訳じゃない。
｢……なんて、冗談だよ。
すまないね……僕はそろそろ行くよ。｣
すぐに手を離して、不気味に微笑む。
そして冗談だと伝えればそのまま湯船から上がり、出て行こうと歩き出す。
【五番目の道化師】
そう、そういえばまた一人死んじゃったんだっけ。
会ったことがないのか、名前をしらないだけなのかはわからないけど…クラスメイトがまた一人いなくなってしまった。
頬に手が当てられて、狂気の籠った目が向けられた道化師は思う。
(───あぁ、みんな狂っていくね…)
冗談だと言われても、あの狂気はたぶん本物だろうね。
ロティが湯船から上がり、立ち去っていく様子を黙って見続けた。
【五番目の道化師】
雪山の秘湯。
二度と来るものか！と思っていたけどなんとなくまた来てしまった。もしかしたら、あの時みた化け物もいないかもしれないし、今回は温泉を堪能できるかもしれない。そう、思ったのだ。
一応、脱ぐ前に湯に浸かる変なものがいないかは確認した。よし、今日は大丈夫そうだ。道化師は手早く服を脱ぎ、体を流し、静かに湯に浸かった。
(あぁ…癒されますぅ…)
【ロティ】
嘗て友達だったかも知れない君よ。
まずは……すまないと。
私は────
僕は────
謝る位、許してもらえるだろうか？
いや、もう許さなくても良い。
これは……禁忌。
そうだね…禁忌を犯すには、その代償を求められるのは当たり前だろう？
──禁忌を犯すと物を得て。
──犯す為に物を失う。
僕は…………私は…………
……“何”を得て、“何”を失ったんだろうね？
とりあえず、得たのは覚悟。
失ったのは………………心、かな？
……コレは、恐ろしい事だね。
……何が恐ろしいかって？
それは、あの子を殺めた時。
僕は……私は……
…………“躊躇わなかった”。
そんな事は後から知った、知らされた。
……なんて、思ったけど。
私には似合わない…僕には、どうかな？
考えて、考えて、考えて。
足取りは不確かに、そして、確実に。
雪山のロッジへ向かったこの足は、それを流せと私に言った。
嗚呼……もう、真面目は、疲れた。
そして……足は、ゆっくりと…温泉へ。
このよく分からない何か……。
それを、なんでも良いから流せと。
なんでも良いから、溶かせ……と。
許せ……なんて、言ってどうなると…。
嘲笑うのは私の腕で…。
僕は、私は…
──『『何を、したい？』』
二重に声が響いた様な錯覚と共に。
服を脱いで、温泉へ続く扉を開いた。
｢…………先客、かな…？｣
湯けむりで良く見えなかったけれど。
そして相手からも此方はあまり見えないだろうけれど。
確かに誰かそこに居て、確かに僕は此処に居る。
近付いて、近付いて。
その姿を見た時、なんだろうか。
拍子抜けというか、安心というか……。
知らない人には少し抵抗を持っていた時には、有難いものだったのだろう。
その道化師は、私を、安心させたのだから。
何も、戸惑う事は無かった……きっと、そう。
何も……無いならば…………。
｢……もしかして、ピエロ君…？
また会ったね、隣……お邪魔するよ。｣
見間違える筈もない。
こんなメイクをした奴が、そして見たばかりのこのメイクを、見間違える事は無い。
近くに屈み、挨拶と隣に失礼するという事を告げて。
そのまま湯船に浸かって、空を見上げた。
落ち着きたい……落ち着きたいのに、頭と身体はまだそれを許さない。
湯船に浸かった時に跳ねた水が頬に掛かる。
その水は、妙に傷に染みた。
……けど、あの子に比べたら、大した事は無いと、僕の中の私は、謳っていた。
【五番目の道化師】
「あっ、ロティさん」
ロティさんもお風呂に入りに来たんだ。まぁ、お風呂に入らない人なんていないもんね。道化師はバスタオルで体を隠しながら
「───ロティさん、女の人だったんだ…」
前回、会ったときは気がつかなかった。
てっきり男の人かと思ってたよ。なんて、道化師は隣に来たロティをみながら呑気にそんなことを。
【ロティ】
｢ん……あぁ、そうだよ。
言ってなかったね、僕は女だ、皆よく分からないって言うよ。｣
そう言えば言っていなかった。
なんて、思いながら、ピエロの方を見て。
言えば良かったかな……なんて、思ったけど、別に過ぎた事は良いかな。
風呂に浸かりながらピエロを見て。
やっぱりメイクは外さないのかと思う。
どうしようか、前に言ったようにメイクの下を見せてもらおうか……なんて。
どうしよう……いや、頼んで良いのか、なんて。
……とりあえず、一度落ち着きたい。
……まだ、落ち着けない。
……まだ、落ち着かない。
……まだ、落ち着きたい。
落ち着けるかな……気持ちの整理が着くまで時間が掛かりそうだけど。
少しは……冷静に、なれただろうか。
｢……そういえば、メイク落としていないんだね。
その下…少し気になるけど、見せてもらえるとか出来るかい？
…………あぁ、無理にとは言わないよ、ただ気になるだけだからね。｣
メイクを落としていないピエロにそう言う。
その下が、実は気になるのは伝える。
あわよくば見せてもらえるだろうか、なんて個人的なお願いを言ってみたり。
……が、勿論無理にとは言わない。
我儘なのは分かっているから。
【五番目の道化師】
そう言えば、次ロティさんと会ったときに化粧を落とすって約束してたような気もしなくはない。
別に今は風呂だし、化粧を落としてもいい気がする。───まぁ、ピエロメイクをしなおすメイク道具は持ち歩いていないからまた素顔で歩くことになるのだが。
「流石に湯船で化粧を落とすわけにはいかないから」
そう言って湯から上がったうえで桶に湯を汲み、洗顔…は、流石にないので蒸しタオルで化粧を落としはじめる。ちなみにロティが今、道化師の方に向いても背中しかみえないだろう。
【ロティ】
｢…………やってくれるのかい、済まないね…。｣
やってくれるのかと思い、そのままピエロを見送ってその背中を見ていた。
……が、やがてそれは見ない様にする。
そして桶の中に入れてきた物を手に取って。
それは、日本酒である。
ずっとずっと、ルールに縛られて来たのだ……此処で位良いだろう？
…………なんて、思ったんだ。
幸い、アルコールには強い体質らしい。
1回それは調べて分かったことだけど。
つまりは一度飲んだのだ。
これも……■■■と…だったかな……。
嗚呼……どうして君なんだ……なんて、思っているけど解決にはならなくて。
治す方法があるなら、私は、僕は、なんでもしてあげるって、此処に決めたんだ。
このよく分からない事件が解決すれば……。
もし願いが本当に叶うとするならば……。
…………■■■、君と……また…………。
｢…………また、やんちゃしような…。｣
なんて、空へ向かって呟いて。
私は酒を一口煽る。
その味は……とても、苦かった。
前に飲んだ時は…こんな味だったかな、なんて……思ったんだけど。
まあ、悪くは無いね。
…………良く、皆でやったよね…と、思いながらも空を見上げた。
【五番目の道化師】
元々、湯気で化粧が落ちやすくなっていたのか蒸しタオルで拭き取れば簡単に落ちてくれた。ほぼ白塗りしているだけのメイクだ。
タオル対して汚れていない気がするが、桶の中の湯に浸けて洗えば透明な湯が白く染まる。桶に湯を組み直し、水面に写る自分を確認すると…ちゃんと落ちたみたいだ。
「…おまたせ。
あー、寒い寒い。湯船に浸かって落とせばよかったかもしれない」
あまり水しぶきが立てないように静かに入り、肩までしっかりと湯に浸かる。風邪はめったに引かないほうだが寒いもの寒いのだ。道化師は冷えた体を暖かい湯で温める。
【ロティ】
初めてピエロの素顔を見て。
真っ先に抱いたのは、誰？という物だったが、普通に声やなんやらでピエロであることは分かった。
勿論、口に出すものでは無い。
否、口に出す必要は無いものだ。
温まるピエロを横目に次に思った事は、こんな顔だったのかという事。
まあ……見れたから良いかと思いつつ、酒を飲むとそのまま身体から伝わる熱と、酒の熱で温まる。
………………嗚呼、悪くないさ。
｢……そんな顔だったんだね、ピエロ君。
中々、悪くないじゃないか……これは我儘を言って良かったかもしれないね。｣
そして、ピエロの素顔について。
……やはり、少しくらい触れておこうか。
そんな素顔は、中々良いものだと思う。
これは我儘を聞いてもらった甲斐が有るのではと、本音かどうかはさておき、小さく笑いながらそう言って。
【五番目の道化師】
「でも、これ偽りの姿だからね。褒められても困るよ」
だって、本来の姿はこんなに髪短くないし。
チラっとロティの方へ目を向け───あれ？ロティってばお酒飲んでない？
「未成年はお酒飲んじゃダメなんだぞ〜」
冷えてしまった頬を暖めながらそんな事を言ってみる。
未成年飲酒禁止法は確か…子どもの成長を妨げる可能性があるからある法律だっけ。今の状況ではそんなこと関係ないだろうけど。
【ロティ】
｢そう言われてもね……窮屈な縛りの中で楽しむにはこれ位じゃないとね。
ルールに縛られたなら、そのルールは此処で位破るべきだ。｣
ルールなど知らない。
そんな窮屈なものの中で縛られ、そして制限されていたのでは苦しいだろう？
酒はそのうちの一つで、他は…喫煙だろうか…。
……でも、1番破っても問題ない物がある。
非人道的で、許されない物。
……なぁ、分かるだろう？
────人殺しだよ……？
此処で、人を一人、殺した。
こんな事を言うべきでは無い……が。
思った事がある。
…………死に際ほど、美しい。
…………死に際ほど、素晴らしい。
…………死に際ほど、楽しい。
嗚呼……僕は罪深いね…■■■……。
もっと人の死に際が見たいと思った、なんて……言ったら僕を許さない？
それとも、私を許さないのかな？
…………けど、“僕”はやらないよ…。
此処での必要性なんて、感じないからね。
｢……君も、飲むかい？
真面目にやって来たからさ、僕は此処でハメを外したんだよ…演じるのは疲れるんだ。｣
そんな事を思わせること無く。
ピエロに君も飲むかと問いかける。
今までルールを守り真面目にやってきたつもり。
だからこそ、此処でハメを外した。
……それがコレだ。
………………これも、君は、ユルシテクレル？
──なんて…………ね…。
【五番目の道化師】
「ハメを外す…ね」
お酒…飲んだことないんだけど。
どうしよう…ここは受けとるべきだろうか。まぁ、ここにはキツく叱る大人たちもいないから…受け取ってもいい気がするけど…。
「んー、私、お酒飲んだことがないからなぁ…」
ここは素直に言っておくのがいいだろう。(少し興味はあるが)強いか、弱いかもわからない。どうすればいいか、正直困るのだ。家族のなかでお酒を飲んでる人もいないから、体勢がある家系かもわからないし…
【ロティ】
｢なら……挑戦してみるといい。
此処なら、誰も咎める人は居ないだろう…何をやっても……ね。｣
それならば試してみるといい。
此処にいる限りは誰も咎める人は居ないだろうと伝えて、酒の入った容器を桶に乗せた。
何をやってもいい、それはそれだ。
何を言いたいか、なんて言うのは……分かるんじゃないか？
喫煙も、飲酒も、人殺しも……。
全部全部全部。
許してもらえる環境にある。
…………ねぇ、■■■…覚えているかな？
これが……人だよ。
｢ほら、遠慮は要らないよ。｣
酒を注ぎ、そのままピエロに差し出す。
半ば強制的に、かつ拒否権はある事は分かるかな？
なんて、思いながら……私は、僕は、彼女を小さな禁忌に近づける。
【五番目の道化師】
「え…っ、あ…じゃあ、ちょっとだけ…」
困惑した表情のまま酒の入った器を受け取り…一口飲んでみる。うん、たぶん大人味ってやつなんだろうね。
苦いや。
ん？でも、なんか……懐かしい味がする気が……
(あれ？なんで私はこの味をしってるの？)
首をかしげ、悩もうとしてみるが……思考をまとめる前になぜか、涙が溢れてくる。
───あれ…なんで、私は泣いているの……？
【ロティ】
｢…………泣いて、居るのかい…？｣
泣いているのかと聞いたのは…多分、私。
僕は……なんて聞こうかな。
なんて、思ったけどさ、やっぱり私が先に口を開いたのは言うまでもない。
泣いているのは……なんでかな……。
…………嗚呼、なんだろう、これを……知っている？
知っている……から、分からない。
分からない分からない分からない…。
……から、“僕”はそれを聞いたんだ。
問いかけが届くかは……知らないけれども。
｢……前に、なにかあったのかい？｣
何か酒に関する事であったのか。
……なんて、問いかけてみたけどさ…別に興味があるわけでもなかった。
ただ、気になったと言うだけ。
それ以上でもそれ以下でもない質問を……。
…………僕は。
…………私は。
2人で、ピエロの彼女に聞くのだ。
【五番目の道化師】
「ごめんなさい、わからないんです」
どうして泣いているのかわからない。
なんでこの味が懐かしく思えたのかわからない。
たしかに、久しぶりに口にしたような気がするのに…記憶がすっぽりと抜け落ちているような…そんな感じがする。
だけど、同時に…何かが警告してきてるような気がしなくもない。
───『これ以上、酒を口にするな』と……
【ロティ】
｢ふぅん………分からない、か…。｣
相手が分からないという。
なら、それは僕にも分からない。
もちろん私にも分からない。
……まあ、本人が思い出すまで頑張って貰うしかないけれど…。
分からないのは、何？
僕は……此奴の考えが分からない。
私は……なぜ泣いているのか分からない。
色々な疑問が私と僕の中で交差しつつ、今は“僕”を演じるのさ。
…………本当に、分からないなら…ね。
｢じゃあ……もう1つ聞かせて欲しい…。
…………君は、どうしたいんだい？｣
ならば、こちらから一つだけ。
そこまで思うのは何なのか知らないけど。
何かあるのは確かだろう？
僕の中に私が居るように。
私の中に僕が居るように。
────君の中には、誰が居るんだろうね。
なんて、思うんだ。
だから、そんな中の“君”に問う。
君は、どうしたいのかと。
【五番目の道化師】
どうしたい、か？それはどういう意味なんだろう。
誰に、問いかけた言葉なんだろう。
ダメだ、たった一口しか飲んでないはずなのにもう酔いが回ってきていて思考がうまく纏まらない。
疲れてるときは酔いが回りやすく、入浴中はさらに血行が促進されるからこんなに酔いの回りが早かったのか…それともアルコール度数が想像より高かったのか。
「それは、誰に向けた言葉？道化師としての私？それとも私個人？」
いや、逆だな。むしろ久しぶりにモヤがかかった思考が晴れた気がする。まぁ、『また』覚めたら記憶が飛ぶんだろうけど。
「どっちにしたって、私の答えは同じよ。『皆に笑顔でいてほしい』。そして『これ以上、人殺しはしないでほしい』。私の行動で皆が笑顔になるならそれでよし。
まぁ、今現状、それは叶いそうにないけどね」
クヒヒ、と<道化師>はロティを見て笑った。
【ロティ】
｢さぁ……僕は、どっちに聞いたんだろうね。
少なくとも……“僕”は、確実に君に聞いている、この意味が分かるかな？｣
さぁて、僕はどちらのピエロに聞いたんだろうね？
“僕”は、目の前にいるピエロに聞いたつもり。
…………けど…“私”はどうなるのかな？
……いや、やっぱり飽きて来たからいいや。
“私”は此処で引く。
あとは“僕”がやる。
───任せたよ……任されたからね。
｢……そうだねぇ…多分、叶わなそうだね。
だってさ……また一人、笑ってくれるかも知れない奴が死んだからね。｣
なんて、言っているけどさ。
それを引き起こしたのは紛れもなく、僕だ。
あの子は運が悪かったのかもしれない。
そう思いながら……ピエロの頬に手を伸ばす。
｢君の瞳は良い色をしている。
…………本当、傍に置いておける程だ……なんだろうねぇ……“宝石”かな…。
なら、その目を奪うのも楽しそうだよねぇ…。｣
此処で狂気の籠った目を向けて。
これは……“僕”かな…？
目を見ながら、狂乱の表情を見せながらそんなことを伝えて。
言わずもがな、奪うは物理。
…………まあ、それを実行する訳じゃない。
｢……なんて、冗談だよ。
すまないね……僕はそろそろ行くよ。｣
すぐに手を離して、不気味に微笑む。
そして冗談だと伝えればそのまま湯船から上がり、出て行こうと歩き出す。
【五番目の道化師】
そう、そういえばまた一人死んじゃったんだっけ。
会ったことがないのか、名前をしらないだけなのかはわからないけど…クラスメイトがまた一人いなくなってしまった。
頬に手が当てられて、狂気の籠った目が向けられた道化師は思う。
(───あぁ、みんな狂っていくね…)
冗談だと言われても、あの狂気はたぶん本物だろうね。
ロティが湯船から上がり、立ち去っていく様子を黙って見続けた。
二人キャンプファイヤーも楽しいかな？ 17th-25th
エム(17th)-柏木 愛(25th)
【柏木 愛】
「オゥイイイッス……本日は……キャンプファイヤー当日ですけれども……参加者は……誰一人……」
（今回は別に参加者を募ったわけではないが、一人でぶつぶつと静かに呟く。
折り畳み式のチェアに腰かけ、毛布を肩に被りながら、盛大に燃え盛る焚き木を眺めていた。
満天の星空に、雪景色。炎の赤色が、それらを綺麗に彩っている。
最大限に欲求を満たしたはずの彼だが、心に穴は空いたままだ。やはり自分は、生まれながらにして芸術家なのだ……作品がなくては、生きていけない）
「キリシタンも、きっと、こんな気分だったんですね……」
【エム】
「またなんかよくわからないこといってますね、お兄さん。
参加者ならここに一人来てあげましたよ」
くしゅん、とくしゃみをしながら、厚着でキャンプファイヤーに近づいていきます。
ホテルでこころちゃんとアイスを食べまくり、お腹を壊してはや数時間。
暇だからと辺りを散歩していたら、明かりが見えてきて、近くに来てみればお兄さんがいたのです。
嫌な偶然もあったものです、風邪が治り始めてから再び会うなんて、少し府に落ちません。
まあ、それはそれとして。
「あのあと、エムの写真はどうなりましたか？ お兄さん」
直球、ストレートに聞きます。
持っていたのなら、それはそれでいいです。
消されていたら、自主的に消したのか、誰かに注意されて消したのか、どちらかで対応が変わります。
さて、どっちでしょうか。
【柏木 愛】
「……エムちゃん」
（妙に侘しい気持ちであった故、癒しの少女が現れたことで少し心が温まる。折り畳み式のチェアーをもう一つ広げ、隣に置いた。
どうぞ腰かけてください、という意味だ。他の人のチェアーまで用意していたのはつまり、そういうことを期待していたのだろう。
写真の事を問われると、静かに前を向き、小さくつぶやいた）
「……消えました……いえ、消されました。
さしずめ俺は……"翼をもがれた堕天使"……ってところですね」
（涙が一筋、頬を伝った）
【エム】
「…………またですか、さすがにもう撮らせませんからね？」
案の定というか、予想通りというか。
結局、秘密にといったことをこの人は話してしまうし、それで手痛い仕打ちを食らうのに、まだ懲りないみたいです、ドMなんでしょうか。
エムも、親切でバラスなっていってるんですけど、どうしてもわかってもらえないようでエムは少し悲しいです。
「エムの写真のこと、誰にばれました？」
ばれたなら、誰にばれたか、そこが問題です。
もしも親しかった人、嫌いな人にみられでもしたら大変ですから
【柏木 愛】
「せっかく撮らせてもらったのに、ごめんなさい……。
ヒガンバナって人です。エムちゃんのお母さんだとか……。コロパッドを見せないとぶち殺すぞって言われて(※言われてません)、それで……。
だから、もういいんです。流石に凝りました」
(涙を指で拭うと、へへっと強がって笑う。
なんか挫折から立ち直る青春ドラマのシーンみたいになってるけど、内容は極めて下劣である)
【エム】
「…………よりにもよってお母さんに……よく生きてましたね」
1番バレたくない人にバレた、もしくはバラされたみたいで。
本当に、どうしてあんなにばらさないように念を押したはずなのにバラしちゃうんでしょう。
隠すにしろ、騙すにしろ、そこまで難しいことでもないでしょうに……
ゲホッゲホッ、とまだ病み上がりゆえに咳をして。
まだお薬は飲んでおいた方がよさげですね。
「まぁ……いいです、見る限りじゃ、なかなか酷い目にあったみたいですから」
少なくともお母さんには相当なことされたはずです。
殺されてないのだとしても、それこそ下僕とかそういう扱いを受けてそうです。
ただ、『エム』はそういうの可哀想だと思いますから、仕方ないと、頭を軽く撫でてあげたりします。
――――そろそろそいつのことは殴っていい気がするよ『エム』
癒し枠なので(メタ)
【柏木 愛】
「ええ、まぁ……ちょっとでも言葉間違えてたら、死んでた気がします」
(全身全霊の土下座に徹したことを思い出して、身震いした。エムちゃんによしよしされると、この子はなんて良い子なんだと涙ぐみながら、自分の使ってた毛布を肩にかけてあげた。
咳を聞いて、彼女が風邪を引いたと聞いたことを思い出す)
「エムちゃんが風邪引いたのって、俺のせい、ですよね……。エ、エムちゃん、本当に良い人なのに、俺、め、迷惑かけてばかりで……ぐすっ、ごめんなさい、ごめんなさい……」
(漸く自分が彼女にしてきた事と、された事のギャップを自覚したのか、ボロボロと泣き出す。
今更気がついたのか？泣いて謝りゃいいと思ってんじゃねぇぞ。
エムちゃんは優しすぎてそういうことが言えないと思うので、中の人が言っておきます)
【エム】
「まぁ、お兄さんがどうしようもない人だっていうのは初めて会った時から分かってますから、今更ですよ」
初対面の幼女の裸体をガン見するってマナー違反にも程があるんですよね、今思うと。
なんでエムはこんな人に裸の写真なんて撮らせたんでしょう、いくらなんでも優しすぎはしませんかねエム。
とはいうものの、過ぎたことは忘れる、過去のことは水に流すのがエムの役目。
呆れるだけに留めておくことにします。
【柏木 愛】
「ご、ごめんなさいごめんなさい……俺、もうちょっと真面目に生きようかなって、思います、はい。
なんか、本当、良い人ばっかなんですよね。俺もっと、クラスの皆と話しておけば良かったなって、ええ。
あ、ココア飲みます……？」
(自分は間違っていた……というか、間違えまくっていた。もちろん自覚はあったわけだが、欲に負け、私利私欲に走ってしまった。
思い出せ柏木。自分の周りは親切な人だらけだったではないか。今こそ恩を返すべく決起する時である！
柏木は覚醒した。よってAzothに未来はない。覚悟せよ。
ずびずびと泣きながら決意を新たにし、傍に置いてあった小さな鍋を手に取った。ポータブルガスコンロで沸かしていたお湯だ。行動力だけは一丁前である)
【エム】
「その言葉、信用はしませんけど期待はしてますからね？」
期待というのは、もちろん言葉通りのことをお兄さんが実行してくれることです。
今までだいたいそんなことやってくれてないですから、信じはしません、ですが今度こそ、と期待だけはすることにしました。
期待するだけマシだと思ってください。
「準備だけはいいですね、ココアください」
毛布をかけてもらえたのはいいけど、やはりそれでも少し冷えてきてしまいます。
だから、ココアは有難くいただくことにしました。
【柏木 愛】
「任せてくださいよ！俺、やると決めたらやるんですよ。
俺、中学生の時、好きな子がいたんですよ。すげー変な子で、爬虫類が好きとか言ってて、ツチノコが見たいってずっと言ってたんですよ。だから俺一週間学校休んで、ツチノコ探したんすよ。
やばくないですか？俺頑張ったんですよ？まぁ見つからなかったし、その子には彼氏がいたんですけど」
(カップに粉末ココアとミルクを入れ、お湯を注ぎながら、くだらない話をする。それを手渡すと、自分の分のおかわりも作り始める)
「エムちゃんに一個聞きたいんですけど、俺ってAzothに見えます？自分で言うのもあれですけど、見えなくないですか？
俺はAzothじゃないって言ったら、皆信じてくれますかね」
【エム】
「…………さぁ、エムには超絶ド変態のどうしようもないお兄さんですから、Azothに見えるわけもないんですけど……
信じてもらいたいなら、お兄さんのコロパッドの役職ページを見せたらいいんじゃないですか？」
お兄さんの恋バナは正直興味はありません、スルーです。
ただ、信じてもらいたい、というその気持ちは理解できます。
エムも、誰かにお前裏切り者だな！！ なんて言われたら悲しいですし、そんなこと言われたくありません。
だから、信じてもらえる方法を教えてあげました。
絶対にAzothじゃないと理解してもらえる方法を。
これで証明できたなら、無条件で信頼を得ることも出来るでしょう。
出来ないのなら、疑われて当然です。
【柏木 愛】
「ハ、ハイ……すいません……」
(さっきから言葉がグサグサ刺さるゾ〜。当然の仕打ちというかむしろ緩いくらいなので、柏木くんは必死に耐える)
「役職ページなんてそんなのはないですよ。多分。
まぁ何が言いたいかっていいますと、Azothを見つけるより先にCelestiaさんを見つけようかなって思ったんですよ。
Celestiaさんは俺たちの味方なんですよね？俺がAzothじゃないとわかれば、守ってもらえるかなって。それだけじゃなくて、何か手伝えることもあればなって。
Celestiaさんが自分の役職を証明するのは簡単ですよね。ナンチャラの槍？を見せればいいのですから」
（こっちが無所属でもAzothは自分の正体を明かさないだろう。しかしCelestiaなら、無所属だと信じて貰えれば、守ってもらえるのでは！？やったぜ（歓喜）
という考えである。安易すぎると言われればそれまでだが）
【エム】
「え、そうなんですか？ エムてっきりあるものかと……」
初めて聞きました。
今までずっと、役職も配布されるものだと思っていましたから。
……まだ風邪が完璧には治ってないせいか、少しだけ記憶が混濁してるんでしょうか。
兎にも角にも、間違えたものは仕方ありません、普通に謝罪しました。
「……あぁ、ゲオルギウスの槍、でしたっけ？
バラしちゃうような人いるんでしょうか、誰が敵かもわからない状態で……」
そこも考えものです。
バラした相手がAzothだった、なんて笑い話にもなりません。
やっぱり、そこら辺は本当に信頼のおける人にしか言わない方がいいですよね。
【柏木 愛】
「まぁ、いないですよね……俺が無所属ってどうにかわかってもらえないかな……」
(遠くを眺めながらココアを啜る。
エムには言っていないが、自分の中で「全員で帰る」という意思は薄れつつある。彼は一人でかなりの時間探索をしたが、有用な手がかりは見つけられなかった。GMだもの。
もう、Azoth殺しちゃおうぜ。薄弱な意思が、そう囁いているのだ。
Celestiaと手を組みたいというのも、「自分の代わりにAzothを殺してほしい」と願っているからなのだ)
「なんか、変な話してすみませんでした。最初の話に戻りますけど、俺、もう変なことしないんで。
だから、一緒に帰れたら、クラスでも仲良くしてくれませんか？」
【エム】
「…………エムのこと、向こうでも見つけられたら仲良くしてあげますよ」
にこりと微笑みながら、そう言いました。
『エム』でいるのは、多分この姿の時だけですし、向こうに戻ったらきっとエムのことなんて誰もわからないでしょうから。
そんなことを考えながら、エムはココアを1口啜ります。
【柏木 愛】
「えー、教えてくれないんですか？過ぎたことになるんですし、教えてくれてもいいじゃないですか」
（フヒフヒと不気味に笑う。素の笑い声である。腕時計に目を移すと、とっくに１２時を回っていた）
「そろそろ戻って寝ましょうか。あんまり夜に外にいても、怖いですからね」
（キャンプファイアーの後始末に出るべく、立ち上がって腰を伸ばす）
【エム】
「秘密です」
人差し指をにこりと来た自分の口元に当てて、内緒のポーズ。
エムにしては珍しい、わざとやるあざとい仕草です。
今回はこれがサービス、ということにしておきましょう。
頼まれてない、ただの自己満足ですが。
「じゃあ、エムもお片付けお手伝いしますよ！」
そう言って、席を立ちました。
いつまでも座ってたりせずに、早速お手伝いを開始しました。
【柏木 愛】
「オゥイイイッス……本日は……キャンプファイヤー当日ですけれども……参加者は……誰一人……」
（今回は別に参加者を募ったわけではないが、一人でぶつぶつと静かに呟く。
折り畳み式のチェアに腰かけ、毛布を肩に被りながら、盛大に燃え盛る焚き木を眺めていた。
満天の星空に、雪景色。炎の赤色が、それらを綺麗に彩っている。
最大限に欲求を満たしたはずの彼だが、心に穴は空いたままだ。やはり自分は、生まれながらにして芸術家なのだ……作品がなくては、生きていけない）
「キリシタンも、きっと、こんな気分だったんですね……」
【エム】
「またなんかよくわからないこといってますね、お兄さん。
参加者ならここに一人来てあげましたよ」
くしゅん、とくしゃみをしながら、厚着でキャンプファイヤーに近づいていきます。
ホテルでこころちゃんとアイスを食べまくり、お腹を壊してはや数時間。
暇だからと辺りを散歩していたら、明かりが見えてきて、近くに来てみればお兄さんがいたのです。
嫌な偶然もあったものです、風邪が治り始めてから再び会うなんて、少し府に落ちません。
まあ、それはそれとして。
「あのあと、エムの写真はどうなりましたか？ お兄さん」
直球、ストレートに聞きます。
持っていたのなら、それはそれでいいです。
消されていたら、自主的に消したのか、誰かに注意されて消したのか、どちらかで対応が変わります。
さて、どっちでしょうか。
【柏木 愛】
「……エムちゃん」
（妙に侘しい気持ちであった故、癒しの少女が現れたことで少し心が温まる。折り畳み式のチェアーをもう一つ広げ、隣に置いた。
どうぞ腰かけてください、という意味だ。他の人のチェアーまで用意していたのはつまり、そういうことを期待していたのだろう。
写真の事を問われると、静かに前を向き、小さくつぶやいた）
「……消えました……いえ、消されました。
さしずめ俺は……"翼をもがれた堕天使"……ってところですね」
（涙が一筋、頬を伝った）
【エム】
「…………またですか、さすがにもう撮らせませんからね？」
案の定というか、予想通りというか。
結局、秘密にといったことをこの人は話してしまうし、それで手痛い仕打ちを食らうのに、まだ懲りないみたいです、ドMなんでしょうか。
エムも、親切でバラスなっていってるんですけど、どうしてもわかってもらえないようでエムは少し悲しいです。
「エムの写真のこと、誰にばれました？」
ばれたなら、誰にばれたか、そこが問題です。
もしも親しかった人、嫌いな人にみられでもしたら大変ですから
【柏木 愛】
「せっかく撮らせてもらったのに、ごめんなさい……。
ヒガンバナって人です。エムちゃんのお母さんだとか……。コロパッドを見せないとぶち殺すぞって言われて(※言われてません)、それで……。
だから、もういいんです。流石に凝りました」
(涙を指で拭うと、へへっと強がって笑う。
なんか挫折から立ち直る青春ドラマのシーンみたいになってるけど、内容は極めて下劣である)
【エム】
「…………よりにもよってお母さんに……よく生きてましたね」
1番バレたくない人にバレた、もしくはバラされたみたいで。
本当に、どうしてあんなにばらさないように念を押したはずなのにバラしちゃうんでしょう。
隠すにしろ、騙すにしろ、そこまで難しいことでもないでしょうに……
ゲホッゲホッ、とまだ病み上がりゆえに咳をして。
まだお薬は飲んでおいた方がよさげですね。
「まぁ……いいです、見る限りじゃ、なかなか酷い目にあったみたいですから」
少なくともお母さんには相当なことされたはずです。
殺されてないのだとしても、それこそ下僕とかそういう扱いを受けてそうです。
ただ、『エム』はそういうの可哀想だと思いますから、仕方ないと、頭を軽く撫でてあげたりします。
――――そろそろそいつのことは殴っていい気がするよ『エム』
癒し枠なので(メタ)
【柏木 愛】
「ええ、まぁ……ちょっとでも言葉間違えてたら、死んでた気がします」
(全身全霊の土下座に徹したことを思い出して、身震いした。エムちゃんによしよしされると、この子はなんて良い子なんだと涙ぐみながら、自分の使ってた毛布を肩にかけてあげた。
咳を聞いて、彼女が風邪を引いたと聞いたことを思い出す)
「エムちゃんが風邪引いたのって、俺のせい、ですよね……。エ、エムちゃん、本当に良い人なのに、俺、め、迷惑かけてばかりで……ぐすっ、ごめんなさい、ごめんなさい……」
(漸く自分が彼女にしてきた事と、された事のギャップを自覚したのか、ボロボロと泣き出す。
今更気がついたのか？泣いて謝りゃいいと思ってんじゃねぇぞ。
エムちゃんは優しすぎてそういうことが言えないと思うので、中の人が言っておきます)
【エム】
「まぁ、お兄さんがどうしようもない人だっていうのは初めて会った時から分かってますから、今更ですよ」
初対面の幼女の裸体をガン見するってマナー違反にも程があるんですよね、今思うと。
なんでエムはこんな人に裸の写真なんて撮らせたんでしょう、いくらなんでも優しすぎはしませんかねエム。
とはいうものの、過ぎたことは忘れる、過去のことは水に流すのがエムの役目。
呆れるだけに留めておくことにします。
【柏木 愛】
「ご、ごめんなさいごめんなさい……俺、もうちょっと真面目に生きようかなって、思います、はい。
なんか、本当、良い人ばっかなんですよね。俺もっと、クラスの皆と話しておけば良かったなって、ええ。
あ、ココア飲みます……？」
(自分は間違っていた……というか、間違えまくっていた。もちろん自覚はあったわけだが、欲に負け、私利私欲に走ってしまった。
思い出せ柏木。自分の周りは親切な人だらけだったではないか。今こそ恩を返すべく決起する時である！
柏木は覚醒した。よってAzothに未来はない。覚悟せよ。
ずびずびと泣きながら決意を新たにし、傍に置いてあった小さな鍋を手に取った。ポータブルガスコンロで沸かしていたお湯だ。行動力だけは一丁前である)
【エム】
「その言葉、信用はしませんけど期待はしてますからね？」
期待というのは、もちろん言葉通りのことをお兄さんが実行してくれることです。
今までだいたいそんなことやってくれてないですから、信じはしません、ですが今度こそ、と期待だけはすることにしました。
期待するだけマシだと思ってください。
「準備だけはいいですね、ココアください」
毛布をかけてもらえたのはいいけど、やはりそれでも少し冷えてきてしまいます。
だから、ココアは有難くいただくことにしました。
【柏木 愛】
「任せてくださいよ！俺、やると決めたらやるんですよ。
俺、中学生の時、好きな子がいたんですよ。すげー変な子で、爬虫類が好きとか言ってて、ツチノコが見たいってずっと言ってたんですよ。だから俺一週間学校休んで、ツチノコ探したんすよ。
やばくないですか？俺頑張ったんですよ？まぁ見つからなかったし、その子には彼氏がいたんですけど」
(カップに粉末ココアとミルクを入れ、お湯を注ぎながら、くだらない話をする。それを手渡すと、自分の分のおかわりも作り始める)
「エムちゃんに一個聞きたいんですけど、俺ってAzothに見えます？自分で言うのもあれですけど、見えなくないですか？
俺はAzothじゃないって言ったら、皆信じてくれますかね」
【エム】
「…………さぁ、エムには超絶ド変態のどうしようもないお兄さんですから、Azothに見えるわけもないんですけど……
信じてもらいたいなら、お兄さんのコロパッドの役職ページを見せたらいいんじゃないですか？」
お兄さんの恋バナは正直興味はありません、スルーです。
ただ、信じてもらいたい、というその気持ちは理解できます。
エムも、誰かにお前裏切り者だな！！ なんて言われたら悲しいですし、そんなこと言われたくありません。
だから、信じてもらえる方法を教えてあげました。
絶対にAzothじゃないと理解してもらえる方法を。
これで証明できたなら、無条件で信頼を得ることも出来るでしょう。
出来ないのなら、疑われて当然です。
【柏木 愛】
「ハ、ハイ……すいません……」
(さっきから言葉がグサグサ刺さるゾ〜。当然の仕打ちというかむしろ緩いくらいなので、柏木くんは必死に耐える)
「役職ページなんてそんなのはないですよ。多分。
まぁ何が言いたいかっていいますと、Azothを見つけるより先にCelestiaさんを見つけようかなって思ったんですよ。
Celestiaさんは俺たちの味方なんですよね？俺がAzothじゃないとわかれば、守ってもらえるかなって。それだけじゃなくて、何か手伝えることもあればなって。
Celestiaさんが自分の役職を証明するのは簡単ですよね。ナンチャラの槍？を見せればいいのですから」
（こっちが無所属でもAzothは自分の正体を明かさないだろう。しかしCelestiaなら、無所属だと信じて貰えれば、守ってもらえるのでは！？やったぜ（歓喜）
という考えである。安易すぎると言われればそれまでだが）
【エム】
「え、そうなんですか？ エムてっきりあるものかと……」
初めて聞きました。
今までずっと、役職も配布されるものだと思っていましたから。
……まだ風邪が完璧には治ってないせいか、少しだけ記憶が混濁してるんでしょうか。
兎にも角にも、間違えたものは仕方ありません、普通に謝罪しました。
「……あぁ、ゲオルギウスの槍、でしたっけ？
バラしちゃうような人いるんでしょうか、誰が敵かもわからない状態で……」
そこも考えものです。
バラした相手がAzothだった、なんて笑い話にもなりません。
やっぱり、そこら辺は本当に信頼のおける人にしか言わない方がいいですよね。
【柏木 愛】
「まぁ、いないですよね……俺が無所属ってどうにかわかってもらえないかな……」
(遠くを眺めながらココアを啜る。
エムには言っていないが、自分の中で「全員で帰る」という意思は薄れつつある。彼は一人でかなりの時間探索をしたが、有用な手がかりは見つけられなかった。GMだもの。
もう、Azoth殺しちゃおうぜ。薄弱な意思が、そう囁いているのだ。
Celestiaと手を組みたいというのも、「自分の代わりにAzothを殺してほしい」と願っているからなのだ)
「なんか、変な話してすみませんでした。最初の話に戻りますけど、俺、もう変なことしないんで。
だから、一緒に帰れたら、クラスでも仲良くしてくれませんか？」
【エム】
「…………エムのこと、向こうでも見つけられたら仲良くしてあげますよ」
にこりと微笑みながら、そう言いました。
『エム』でいるのは、多分この姿の時だけですし、向こうに戻ったらきっとエムのことなんて誰もわからないでしょうから。
そんなことを考えながら、エムはココアを1口啜ります。
【柏木 愛】
「えー、教えてくれないんですか？過ぎたことになるんですし、教えてくれてもいいじゃないですか」
（フヒフヒと不気味に笑う。素の笑い声である。腕時計に目を移すと、とっくに１２時を回っていた）
「そろそろ戻って寝ましょうか。あんまり夜に外にいても、怖いですからね」
（キャンプファイアーの後始末に出るべく、立ち上がって腰を伸ばす）
【エム】
「秘密です」
人差し指をにこりと来た自分の口元に当てて、内緒のポーズ。
エムにしては珍しい、わざとやるあざとい仕草です。
今回はこれがサービス、ということにしておきましょう。
頼まれてない、ただの自己満足ですが。
「じゃあ、エムもお片付けお手伝いしますよ！」
そう言って、席を立ちました。
いつまでも座ってたりせずに、早速お手伝いを開始しました。
あわいこいごころ。 20th-23rd【DEAD END】
あいごころ。(20th)-海月(23rd)【DEAD END】
【海月】
迷った時だとか、何か困った時だとか、特に何も考えてない時だとかは、展望台に来る。
何かを見下ろしている感覚が、不安定で、好きで。
「いつ見ても、此処の景色は綺麗だね。
…なんて、嘘だよ。無個性な白い空しかないのに何処をどう好きになればいいんだろうね。」
とか、呟いてみたり。
そうしたら今は雪と霧だらけの世界も少しは秋らしく赤くなったりするのかもしれない。
ああ、今の季節が秋かどうかも限らないかな。
まさか季節まで変えるなんて出来るかどうかは分からないけれど、可能性はなくもない。
それに、季節がどうとかの問題でもないか。
直に、いずれ、何処も赤く染まってしまうんだろうし。
「…そう考えると、強ちこの景色も、綺麗じゃないとは言えないかな」
まあ、血飛沫が降る世界も、それはそれで愉しいんだろうね！
【あいごころ。】
｢ドーレーミーファーミーレードー♪｣
かえるの歌を音階で歌う。…輪唱してくれる人はいないのかな？ま、いたとしても困るけれど。
今こころがいる所はTGC？TPA？…なんかよくわかんないけどなんちゃらタワーです。
来た理由はここなら景色が綺麗そうだから…っていうのは建前。本当はここ見たことないから一応探索しておこうっていうのが本音。
…そう言えば途中すごい豪華なタワーが見えたような見えなかったような…臨海ソープとかいう字が見えなくもなかった気がしたけどきっと気の所為。
展望台に上がる。長いエレベーターだ。ゴウンゴウンと音を立ててこころを上へ上へと連れていく。…ああ、1人も嫌いじゃないなぁとかどうでもいいことを考えてみる。
｢…あ｣
エレベーターを降りて展望台へ。…あ、見たことある人がいる。あれは…なかなか、この人とは縁があるなぁなんて苦笑する。
｢…クラゲお姉ちゃん。｣
何度目かの邂逅。でも、きっとこの状態で会うのは初めて…いや、2回目？んー…定義が微妙だけれども。とりあえず、まずは挨拶する。…さて、もう信用は出来ないね？というよりも、信用なんてできる人なんて元々少ない。それに信用する、なんて言ってもこちらの押しつけに過ぎないから。
【海月】
「………ああ。こころちゃんか。」
薄ら寒いような気配を感じた。誰のせい？
……誰のせいでもないか。
クラゲお姉ちゃん、ね。そう呼ばれることがあるなんて思わなかったんだけれど。
…いや。それを除いても、今の彼女は、何処か"おかしい"。
多分、何回も会っているオレだから気付けることなのか。それとも。
人が今までと違った様子を見せるとき。
それは、警戒とは違う何かを察しなければいけないとき。
「っはは、クラゲお姉ちゃんだなんて。普通に、海月、っていつもどおり呼ばない？
オレとこころちゃんの仲でしょ？」
なんて。
展望台の窓際の檻に寄りかかって、距離を置いて、まるで初対面の人への挨拶みたいに。
オレとこころちゃんの仲なんて、どうせ一晩も無く崩れる程度の浅はかなものだよ。
でも、ああ。
「それとも。今のこころちゃんには、何言っても無駄？」
【あいごころ。】
｢いいや、じゃあそうよんだほうがいいかな？“海月”。｣
まあ、実は“海月”なんて呼んだことないんだけどね。だいたいあなた、だったし。まあ、相手が推奨してくれたのであればそう呼ぶのがいいかな。だってほら、こころって素直だからね？
そして、この感じは恐らく“狂人”の方の海月。ただのめんどくさい方じゃなくてよかったかな。こちらとしてはそっちの方が慣れてるから。
｢いまのこころはただちょっとだけ口調が幼いだけだよ？ああ、もしかしてこの口調が気に触ったのかな？なら変えた方がいいかもね？｣
口調が幼いね、なんて言われたからその言葉を借りてみるよ。人の視点っていうのは大抵自己分析よりも正しいものだもの。
あ、口調なんて変えなくても別に問題ないよね。会話できれば問題ないもんね。…少しだけ、煽り方が変わっちゃったかなぁ。ま、問題はないかな？
どうせ油断ならないのはいつでも一緒だからね。さて、狐面を少し左に“ズラす”。そしてニコリと笑ってみせる。…何も、分かっていないようにね？
【海月】
ああ。
りかいしちゃった。
彼女は、狂っている…いや？"狂いかけ"。
崩れかけで、壊れかけ。あと二個ほど抜いてしまえば崩れるジェンガのような。
この状況だから、仕方ない。
だなんて、言える？
口調が幼いだとか、気に食わないだとか。
別にそんなことは割と些細で。いや、雰囲気の違いくらいにはなるかもしれないけれど。
素直。
それが最初の感想だった。
"オレが知っているこころちゃん"とは違うあいごころ。隠しているものはあるだろうけれど、それでも、何かを偽っているような目がない。
どうして？
「そう思ってるなら最初から変えてほしいものなんだけどねー！
…それで？キミは、"何"？」
誰、と聞くかも迷った。けれど、違う。
目の前の彼女は確かに"あいごころ"だ。オレが知っているとか知らないとかは関係がない。それは真実。
でも、オレが知っているこころちゃんとは、何かが、圧倒的に違う。
どこ？
目の前のキミが彼女と違うところは、"何"？
【あいごころ。】
｢ああ、“何”って聞くあたり、海月らしいね。本当に面白いくらいに面倒臭い。なーんてね。で、なんだっけ。私が何か、だね。そーだなぁ…私はただ“素直”なだけだよ？｣
そういってニッコリ笑う。ほら、何も心配してないような顔で。何も考えていないような顔で。まるでお話が出来て楽しいって言っているように。
別に根本が変わった訳でもない。ただ、“素直”なだけ。それだけだよ？
｢あ、ちなみに口調は変えるつもりないよー！あ、３回まわってわんとかやってくれるなら考えちゃうかも！｣
見たいなーなんて思いながらニコニコと。ああ、やっぱり海月との会話は一筋縄にはならないよねぇ。どうせこっちの変化にも気づいているからそんなことを言うわけで。まあ、“どこまで気づけてる”かは分からないけどね。ほら、こっちは一筋縄に行くつもりは無いよー…つまり、今まで通りチョロくはいかないかなって？あ、今もチョロいかぁとか思いながらひとりで勝手にしょぼんとします。
軽く海月に歩み寄って。
｢ま、要はそれだけ。なーんにも変わってないよ？｣
そういって両手を横に広げてみる。ただの愚か者を演じるように。笑ってみて。…だから海月も笑うといんじゃない？知らないけど。
【海月】
「…何も、変わってない、かぁ。」
ばーか。オレの目の前でキミが素直になるわけないでしょう。
本心を曝け出しもしない。
…………ああ、やめて。
まだ、壊れていないのが分かるから。その笑顔をやめて。
そうやって、何も考えずに、何かを考えるのをやめて。
「っはは、嘘つきだなぁこころちゃん！そうやって、素直だとか…
素直を演じているわけじゃない、偽りでもない。
キミはそこに"閉じ込めて"逃げてるんだね…？」
根本は変わっていない。きっと、この後病院にでも連れて行ったらいい反応を見せてくれるだろうし、前のように悪戯をしたら激昂してドジを踏むんだろう。
でも、違うよ。
オレはキミみたいな状態にいた人を知っている。
そいつはそうやって心に色々閉じ込めて、一時期何も考えずに色々考えて。
結局、器が割れて、全て溢れて。
そうやって壊れてしまうんだ。
やめてよ。壊れて、いかないでよ。
そうやって逃げないでよ。壊れようとしないでよ。
助け、させてよ。
いつの間にか。自分の方からも彼女に詰め寄って。
両手を横に広げて伸ばす彼女を。
抱き締めようとしていた。
「――――――――やめてよ…」
【あいごころ。】
｢閉じ込めている…か。｣
あぁ、二重人格か。たしかに今の状況はそれに似てるかもしれない。と、なればこころの中にある“私”はこころに傷を受けて閉じこもってしまったって感じるよね。…ああ、全くだ。全くもって。
｢…残念、だなぁ。もう少しわかってると思ってたんだけれど。｣
本当にボソリと呟く。多分、聞こえてないかな。大不正解。全く違うよ。それは。逃げている？ああ、“あれ”はそんな崇高な人間じゃないよ。本当の意味での“愚か者”。現実から目を背けただけの引き込もりだよ。だから。
｢――――わーい！｣
あえて元気に。あえて何も気づかないで。ただの純粋無垢な子供を演じよう。…いや、これが素か。演じる必要あんまなかったね。
そう言いながら抱きしめようとした相手の胸に飛びつく。スキンシップは大切だもんね！
｢そんな悲しい顔しちゃだめだよ？｣
残念だよ、海月。だから底抜けに笑ってあげる。これが、こころに出来ることだから。
ほら、笑いなよ？楽しくないでしょうこんなこと？ね？アハハ！
【海月】
わからない、分からない、判らない、解らないよ。
相手は"あいごころ"のはずなのに、オレが何をしているのか。彼女が何をしているのか。
回せ、頭を回せ。オレはそれが出来るはず。
悲しい顔をして、人の心配をして、こうやって人を受け入れて、そんなのオレじゃないじゃないか！
――無理だよ。
オレは狂人だけれど、壊れてはいないから、キミの気持ちはわからないよ。現実逃避？それともそれが本当のキミなのか。それをオレが理解できるはずないじゃないか。
――だったら、諦めようよ。
きっと"みんな"は優しいから、戸惑って"どうしたの"とは聞くんだろうけれど、そのうち彼女を受け入れる。
でも、オレはやさしいから、"どうしたの"とも聞けないしこころちゃんを引き出そうとしてしまうんだ。
――彼女も悲しい顔するなって言ってるよ！愉しもうよ！
「……悪趣味だね。こんな状況で笑ったり楽しんだり、出来るワケないじゃん？
むしろ、よく、そんな、悲しい顔するなって、励ませるよね。」
ああ。"悪趣味"だなんて。まるで誰かみたい。そうだ。こんなゲエム…
――そんなこと、微塵も思ってないんだけどね！
【あいごころ。】
｢悪趣味？そうかなぁ…こんな時だからこそ笑わないと！｣
あくまで無能のふり。なにも考えてない子供のように。…まあ、それが私だしね。
こんな時だからこそ笑わないと。ほら、暗い雰囲気に飲み込まれちゃう。きっと笑えば大丈夫、だからね？笑っちゃいなよ。ほら。
｢クラスメイトで殺し合い。誰も信じられないなんてこんな“悪趣味”なことないもん！でも、それでも私は笑顔でいるの！そうすればきっとみんな笑顔になれるでしょ？ああ、それとも海月は笑顔が嫌いだった？｣
あは、悪趣味だって！…前の私の悪趣味、とは違う意味で使ってあげる。みんなを信用してる、とでも言うかのように。まあ、“みんな”は信用してるよ？…個人になったらわかんないけど。少なくとも海月、あなたは…信用しないかもね。
｢ああ、でも狂人は笑顔なんて十八番でしょ？｣
ニッコリと。抱きついたまま相手の顔を見る。傍から見ればほのぼのとした光景かもね。まあ、ただの会話。きっと、そこに特に意味は無いのかも。まあ、きっとそれは違うと思うけれどね。少なくとも、私にとっては意味があるから。
【海月】
こんな時だからこそ、か。ああ、誰かが言っていたっけ。誰かまでは覚えていないけど。
笑顔でいれば笑顔になれる、とも誰かが言ってた気がするね。
――そんな甘いコトでこのゲエムを愉しめるワケないでしょ！
誰も信じられないのに、笑顔にして何の意味があるのさ。少なくとも、オレはそんなコト望んだつもりないよ。
壊れかけの時計。チクタクチクタク規則正しく、決まった動きをこなす。そんな義務的な笑顔が望まれるわけないだろうに。
ただ、オレも笑顔は嫌いじゃないよ。楽しめるならそれが一番でしょ。
――じゃあ、愉しむためにどうするべきか分かるよね！
抱きついている少女と目を合わせて。少しだけ笑って。
彼女の言葉に反応するように、こう言うんだ。
「そう？少なくとも、キミは狂人じゃないように見えるけど。」
笑顔が十八番、だなんて。そんなに笑顔を浮かべているキミが言っていいことじゃないじゃないか。
やめて。―――やめてよ。
「それとも、前はあんなにオレのコト悪趣味だのどうだの言っておいて。
気変わりでもしたの？」
【あいごころ。】
｢うーん…そうだね。私は狂人なんかじゃないよ？｣
ニコニコしながら。そうやって返す。無理のない、自然な笑顔で。…実際お喋りできて楽しいからね。別に狂人の十八番といっても狂人じゃなけりゃ笑えないわけじゃないもんね？だから、気付かないふり。相手が遠まわしに何を伝えようとしてるかも分からないふりをして、全部聞き流してしまおう。…それが、私だから、ね？
｢気変わり？してないよ！！相変わらず悪趣味だと思うもん。…ああ、でも。たしかに気変わりっていうのは間違いじゃないのかな？｣
悪趣味かあ。たしかに“あれ”はそんなこと言っていた。なら、ここはあれらしく返しておこうかな。私は素直だからね。
…でも、気変わりっていうのはあながち間違えでもないね。でもあってもいない。そんな微妙な解答だね。答えとしては不正解だけれども、その意味はたしかに伝わるかもしれない。…でも、それでも。私は気づかないかな。その微妙な違いにさ。そういうフリをしなきゃいけないから。
ああ、楽しいなぁ
純粋にそう思うよ。ねぇ、あなたはこころと喋ってて楽しいのかな？それとも…
辛いのかな？
【海月】
つらいよ。
たのしいのに、くるしいよ。
やめて。まだ、自分を否定しないで。
オレの知っている"あいごころ"は、不敵に笑って、ちょっとドジで、それでいて抜け目のない。そんな子。
…じゃあ今は？今のキミも、"あいごころ。" だけど、違う。そんなに素直なキミは。
「っはは。そっか、オレも狂人になったつもりはないよ。」
嘘吐け。自分が狂人であることなんて一番よく分かってるじゃないか。
まだ、オレは騙し続けなきゃいけないから。
他人を。自分を。全てを騙して、今では本当のオレがどれなのかも定かじゃないけれど。
――――キミも、おんなじだったはずだから。
「オレは、さ。エスパーでもなければ神でも天使でもないわけだから、人の心が読めたり人がどういう過去を送ってきたかは分からない。
だから、変に分かろうとするつもりもないし肯定や否定をするつもりもない。」
素直にい続けても、いつかは壊れてしまうんだ。だったらいつまでも騙し続けてよ。
もう一回話そうよ。もっと騙したいし、もっと騙されたいし、だからこそ。
「特にキミを愛してるーとか、そんなでもないし。
心から思ってるよ！なんて言うつもりもないよ。」
今度こそ、ぎゅっと抱きしめて。
「"だから"、今だけ、少しだけ"オレのこころちゃん"でいてよ。
もっと、騙して、騙されて。愉しい話も愉しくない話もたくさんして。
――騙し続けた先には、"真実"がある。オレ、知ってるから。」
辛いけれど。
楽しいよ。
【あいごころ。】
｢……｣
ああ…なんだ、面倒臭いなぁ…そっか。君はそうして欲しいんだね。こころに、嘘をついて欲しいんだね。１回は壊れてしまいそうになった、“それ”を、またつけ直して欲しいんだね。…あは。楽しいなぁ。わかったよ。じゃあ、“今だけ”はそうしてあげる。君の言う通りにしてあげる。君がそれで笑顔になるのならそうしてあげるよ。
じゃ。ちょっとだけ。ちょっとだけ目をつぶってあげるよ。
…壊れかけた仮面を修理して、修復して、つけ直す。きっと長くは持たない。でもそれでいい。
｢……苦しいわ。離れてちょうだい。｣
相手にそう伝える。軽く背中を叩く。離して欲しい、そういう合図だ。
｢悪いわね。少しだけ。少しだけ気が狂ってたみたい。｣
そういってクスクス笑う。そうして、いつものように。
狐面を、“触る”
【海月】
その声に、反応するように離れて。
さっきと同じように、檻に身体を傾けた。
「っはは。ごめんごめん！いやー、感動の再会？ってヤツかな？
こころちゃんが正気に戻ってくれたようで何よりだよ！」
なんて。今のキミとさっきのキミに、正気やら狂気やらの違いもないのだろうけれど。
キミは、代わるコトが出来る。一方通行？それとも双方向受信？
まあ今のオレには知る由もないしどうでもいいんだけどね！ああ、戻ってきてくれてよかった。ライバルは多い方が愉しいもんね？
――そっか。
いつだかに、そのお面を触る癖について心の中だか何処かで言及したような気がするけれど。
"そういう"ことだったんだ？
「で、そんな少しだけ気が狂ってた病み上がりこころちゃんに申し訳ないんだけどさ。
オレと交渉しない？」
此処からが"本番"。
引きずり出せた。じゃあ、ここから引っ張ってあげる。
【あいごころ。】
――ほら、感動の再開だってさ。
…頭の中で声が響く。…ああ、面倒臭いやつだね。せっかく素直になってたんじゃないの？…まあ、いいわ。ならば。私は私を騙るだけ。
｢感動の再会、ねぇ。最悪の邂逅の間違いじゃないかしら？｣
そういってクスクスと笑う。ああ、こんな会話も久々かもしれないなぁ。こうやって軽口を叩きながら相手の腹を見ようとする。…こいつとは、そんなことばかりしかして来なかったから。ああ、久々な雰囲気だなぁとちょっとだけ懐かしくなる。
｢気が狂ってるやつにそんなことを言われるなんてね。…交渉、ね。｣
交渉。こいつがもってくる交渉は大抵面倒臭いものだ。それと同時に、確かに有益なものである。…ならば、答えは1つ。
｢…話を聞かせなさい。それからよ。｣
そういって狐面を触る。…ああ、本番はここからなのでしょう？少しだけ。少しだけだけど…楽しみな自分がいる。やはり、私は少し“ズレ”てるのかもしれないなぁ。
【海月】
「最悪の邂逅だってね、オレ嫌われてやんの！悲しいなあ、オレはこころちゃんのコト好きだよ？」
とか、軽口を叩いてみたり。仕方ないんだ、"こうしていられる時間はもう今しかない"んだから。
目の前で"いつも"のようにクスクスと嗤っている彼女を見て、こっちも笑みが止らない。
ほら、こうやって。相手の目ではなく腹を見透かして話す。それがオレらでしょ。
「話、ねえ。まあ、言うなれば情報提供だよ！多分、キミの欲しい情報、あるんじゃないかなーって思うんだけど。
別にこっちから何かを要求することもない。ね？断然、キミがお得なハナシじゃないかな？」
そうやって、相手の反応を見る。
情報があるのは本当。渡すつもりなのも本当。要求するかどうかは…後出しの法則だからね！
オレの気が変わったらそんなこともあっちゃうかもしれないけれど。
【あいごころ。】
――相変わらず信用できない塊みたいなやつだねぇ。
その中から真実であろう部分を取り出していけばいいだけの話でしょう？真実の無い話なんてただの空想だもの。
｢情報提供。そう。なら先にそっちの要求を出しなさい。後出しは許さないわよ？｣
なんとでも言えるものね？なら先にそれを出せと釘を刺しておく。別に問題ないでしょう？要求を聞くぐらいならばあなたにも私にも損は無いものね。
ああ、まだ。まだ見えないわね。相手の狙い。何をしたいのか。なにを考えているのか…いや、何を考えているかなんて言うのは分からないわね。少なくとも、私には。だから、予測は出来ない。でも。ある程度の予想なら出来なくもない。例えば。…流石にこちらの方が美味しい話であること、とか。だからこそ警戒する。ああ、そう言えばこんなこと前もあったなぁと思う。二の舞にはなりたくないものね。
【海月】
要求はないって言っているのに。相変わらず、食えるのに食えないヤツだなぁ。
まあ、ライバルがそう簡単にやられても行けないし、ゲエムはハードモードだし、それがいいんだけれど。
今、とっても愉しいよ？
「要求、ねえ。まあ、"要求"はしないよ。"選択"はさせちゃうかもしれないけどね！
だから、本当にオレからのプレゼントみたいなもの。キミが頷いてくれるだけで済む話だよ。
…まあ、オレの"賭け"に巻き込んじゃうかもしれないけど。それは頷かないと分からない話、かな！」
賭け。
まあ、賭けというほど大層小さいものではないけれど。
けれど、その代わり、キミにはメリットしかない。情報を貰える、という大きな情報がね。
――さあ、どうする？
言っておくけど、オレはこころちゃんの味方だよ！
あ、言ってないね。じゃあ嘘かもしれないね！
【あいごころ。】
｢賭け、ね。｣
相手の賭けに巻き込まれる。か。それは相手と同じデメリットを背負うかもしれないということ。
敵になるのか味方になるのか。…ああ。どうなるか分からないけれど。相手の今までの言葉から察せられる事実なんて極一部。でも、相手の性格ならば敵に持ちかけることは、それなりの利益がなければまずありえない。…まあ、敵味方の判別が出来てるかすら謎だけれどもね。
――へぇ、やっぱり食えないやつだね。
やっぱり食えないやつ。そんな条件を突きつけられたのであれば。…乗ってやるしかないかな。相手に乗せられてるようで不本意ではあるけれども。こちらにとって利益があるのならば乗ってもいいだろう。
｢…わかった。いいわよ。その話、乗りましょう。｣
狐面を触る。そういって目を細めて、笑う。
これであなたと協力関係、なんてことはないと思うけれども少なくとも情報は受け取れる。あとは…相手次第、ね。
【海月】
ああ、その言葉。信じてたよ。
なんて、信じるなんて嘘だけどね！このゲエムで"人を信じる"ことがどれだけ苦痛か。
「じゃあ、そうだね。何処の誰に聞かれてるかもわからないし、個人チャットで送っておくよ。」
そう言って、少しの時間コロパッドを操作して。
――――一秒の猶予すら与えない。彼女がいつ気付くかもわからないのだから、不意を突け。
寄りかかっていた展望台の窓際の、手摺を掴んで、身体を浮かせた。
何故って？分からないかな。ここ、テストに出るところなのに。
賭けだよ。
キミがオレに乗せられる、なんて。乗せているつもりはあるけれど、"これ"は、むしろキミがオレを乗せる側に回るはずだよ。
だから、こそ、オレは"こう"する。キミの頭にオレがついて離れないように。
そう、これは賭け。
キミが素直にならず、そのまま見透かすような目で見ていられるように。素直だったキミがくれた"少しだけ"を永遠に出来るように。
そっちの方が、面白いでしょう？
なんて。思ってみたりもするわけで。
何にせよ、送ってしまった以上、オレはもう後戻りは出来ないし、キミもオレを見る目がちょっとばかし変わるんじゃないだろうか。
だから、一言も待たせない。何かを言われてしまえば負けだ。それも、賭けの一つ。
オレは、ここでリタイア<途中棄権>させてもらうよ。
手摺の上に、ひょいっと乗ってみる。
ああ、まあ、勿論落ちないように手も使ってるよ。そんな必要、もう無くなるんだけれど。
250mともなれば風も強くて、普通にしていたらすぐに落ちてしまう。
さて、今キミはどんな顔をしている？
笑ってる？泣いてる？怒ってる？うーん、ちょっと遠くて分からないなぁ。
確認をするつもりもないけれど。その前に"終わり"は来てしまう。
だから其処からは、"終わらない"ようにオレは賭けるだけ。祈るだけ。運ゲーも嗜みの一つだよね？
そういえば、こういう時は辞世の句とかいうのを言ったりするんだっけ？
ああ、困ったな。何も思いついてないや。
"またね"？いやいや、相手もこんな瀬戸際での嘘を鵜呑みにはしないだろう。オレもバレバレの嘘はつきたくないし、却下。
"信じてるよ"とか？ダメダメ、オレは然ういう柄じゃあないでしょ。仮に本当に信じていたとしても本人にそれを伝えるわけがないし、却下。
――じゃあ、"呪い"の言葉にしてみようか。
まじない？のろい？どっちでもいいよ、些細なコト。けれど、聞いたらきっと離れなくなる言葉だよ。
こういうのもオレの柄じゃあないだろうけれど。
最期くらい、嘘かも本当かもわからないコトを言って相手を困らせるのも、オレらしいと言えばらしい。
だから、聞いておいて。これがオレの"プレゼント"だよ。キミを引き付けて離さない魔法の言葉。おまじない。
手摺から手を離して、思いっきり蹴っ飛ばした。一瞬の身体が浮く感覚は、直ぐに落下に変わってしまうから。
急いで、はっきりと。
笑顔で"それ"を口にした。
「"あい"してるよ、"こころ"ちゃんっ！」
あわいこいごころと共に、250mの自由落下。笑顔でさようなら。
【あいごころ。】
彼女が向こうへ落ちていく。
その様子をただ見ていることしか出来なかった。
――へぇ！やるじゃん！
頭の中で声が響く。一体何が起きたのか。…ああ、なるほど。なら、これは分からない。…分からないよ。何が起きたの？
――ああ、面白いことになったね？
どこが面白いことなのよ。…このことのどこに。面白い要素があったのよ。
――さぁて、これからどうする？
どうしようもないよ。どうするべきかも分からない。
…海月。
｢…そう、あなたは、そうするのね。｣
…これは賭け。私が全てを賭けるための。あなたが全てを託したもの。なら。
｢…私も、覚悟を決めるしかないわね。｣
だから。…狐面を。
――――狐面を、外す。
【海月】
迷った時だとか、何か困った時だとか、特に何も考えてない時だとかは、展望台に来る。
何かを見下ろしている感覚が、不安定で、好きで。
「いつ見ても、此処の景色は綺麗だね。
…なんて、嘘だよ。無個性な白い空しかないのに何処をどう好きになればいいんだろうね。」
とか、呟いてみたり。
そうしたら今は雪と霧だらけの世界も少しは秋らしく赤くなったりするのかもしれない。
ああ、今の季節が秋かどうかも限らないかな。
まさか季節まで変えるなんて出来るかどうかは分からないけれど、可能性はなくもない。
それに、季節がどうとかの問題でもないか。
直に、いずれ、何処も赤く染まってしまうんだろうし。
「…そう考えると、強ちこの景色も、綺麗じゃないとは言えないかな」
まあ、血飛沫が降る世界も、それはそれで愉しいんだろうね！
【あいごころ。】
｢ドーレーミーファーミーレードー♪｣
かえるの歌を音階で歌う。…輪唱してくれる人はいないのかな？ま、いたとしても困るけれど。
今こころがいる所はTGC？TPA？…なんかよくわかんないけどなんちゃらタワーです。
来た理由はここなら景色が綺麗そうだから…っていうのは建前。本当はここ見たことないから一応探索しておこうっていうのが本音。
…そう言えば途中すごい豪華なタワーが見えたような見えなかったような…臨海ソープとかいう字が見えなくもなかった気がしたけどきっと気の所為。
展望台に上がる。長いエレベーターだ。ゴウンゴウンと音を立ててこころを上へ上へと連れていく。…ああ、1人も嫌いじゃないなぁとかどうでもいいことを考えてみる。
｢…あ｣
エレベーターを降りて展望台へ。…あ、見たことある人がいる。あれは…なかなか、この人とは縁があるなぁなんて苦笑する。
｢…クラゲお姉ちゃん。｣
何度目かの邂逅。でも、きっとこの状態で会うのは初めて…いや、2回目？んー…定義が微妙だけれども。とりあえず、まずは挨拶する。…さて、もう信用は出来ないね？というよりも、信用なんてできる人なんて元々少ない。それに信用する、なんて言ってもこちらの押しつけに過ぎないから。
【海月】
「………ああ。こころちゃんか。」
薄ら寒いような気配を感じた。誰のせい？
……誰のせいでもないか。
クラゲお姉ちゃん、ね。そう呼ばれることがあるなんて思わなかったんだけれど。
…いや。それを除いても、今の彼女は、何処か"おかしい"。
多分、何回も会っているオレだから気付けることなのか。それとも。
人が今までと違った様子を見せるとき。
それは、警戒とは違う何かを察しなければいけないとき。
「っはは、クラゲお姉ちゃんだなんて。普通に、海月、っていつもどおり呼ばない？
オレとこころちゃんの仲でしょ？」
なんて。
展望台の窓際の檻に寄りかかって、距離を置いて、まるで初対面の人への挨拶みたいに。
オレとこころちゃんの仲なんて、どうせ一晩も無く崩れる程度の浅はかなものだよ。
でも、ああ。
「それとも。今のこころちゃんには、何言っても無駄？」
【あいごころ。】
｢いいや、じゃあそうよんだほうがいいかな？“海月”。｣
まあ、実は“海月”なんて呼んだことないんだけどね。だいたいあなた、だったし。まあ、相手が推奨してくれたのであればそう呼ぶのがいいかな。だってほら、こころって素直だからね？
そして、この感じは恐らく“狂人”の方の海月。ただのめんどくさい方じゃなくてよかったかな。こちらとしてはそっちの方が慣れてるから。
｢いまのこころはただちょっとだけ口調が幼いだけだよ？ああ、もしかしてこの口調が気に触ったのかな？なら変えた方がいいかもね？｣
口調が幼いね、なんて言われたからその言葉を借りてみるよ。人の視点っていうのは大抵自己分析よりも正しいものだもの。
あ、口調なんて変えなくても別に問題ないよね。会話できれば問題ないもんね。…少しだけ、煽り方が変わっちゃったかなぁ。ま、問題はないかな？
どうせ油断ならないのはいつでも一緒だからね。さて、狐面を少し左に“ズラす”。そしてニコリと笑ってみせる。…何も、分かっていないようにね？
【海月】
ああ。
りかいしちゃった。
彼女は、狂っている…いや？"狂いかけ"。
崩れかけで、壊れかけ。あと二個ほど抜いてしまえば崩れるジェンガのような。
この状況だから、仕方ない。
だなんて、言える？
口調が幼いだとか、気に食わないだとか。
別にそんなことは割と些細で。いや、雰囲気の違いくらいにはなるかもしれないけれど。
素直。
それが最初の感想だった。
"オレが知っているこころちゃん"とは違うあいごころ。隠しているものはあるだろうけれど、それでも、何かを偽っているような目がない。
どうして？
「そう思ってるなら最初から変えてほしいものなんだけどねー！
…それで？キミは、"何"？」
誰、と聞くかも迷った。けれど、違う。
目の前の彼女は確かに"あいごころ"だ。オレが知っているとか知らないとかは関係がない。それは真実。
でも、オレが知っているこころちゃんとは、何かが、圧倒的に違う。
どこ？
目の前のキミが彼女と違うところは、"何"？
【あいごころ。】
｢ああ、“何”って聞くあたり、海月らしいね。本当に面白いくらいに面倒臭い。なーんてね。で、なんだっけ。私が何か、だね。そーだなぁ…私はただ“素直”なだけだよ？｣
そういってニッコリ笑う。ほら、何も心配してないような顔で。何も考えていないような顔で。まるでお話が出来て楽しいって言っているように。
別に根本が変わった訳でもない。ただ、“素直”なだけ。それだけだよ？
｢あ、ちなみに口調は変えるつもりないよー！あ、３回まわってわんとかやってくれるなら考えちゃうかも！｣
見たいなーなんて思いながらニコニコと。ああ、やっぱり海月との会話は一筋縄にはならないよねぇ。どうせこっちの変化にも気づいているからそんなことを言うわけで。まあ、“どこまで気づけてる”かは分からないけどね。ほら、こっちは一筋縄に行くつもりは無いよー…つまり、今まで通りチョロくはいかないかなって？あ、今もチョロいかぁとか思いながらひとりで勝手にしょぼんとします。
軽く海月に歩み寄って。
｢ま、要はそれだけ。なーんにも変わってないよ？｣
そういって両手を横に広げてみる。ただの愚か者を演じるように。笑ってみて。…だから海月も笑うといんじゃない？知らないけど。
【海月】
「…何も、変わってない、かぁ。」
ばーか。オレの目の前でキミが素直になるわけないでしょう。
本心を曝け出しもしない。
…………ああ、やめて。
まだ、壊れていないのが分かるから。その笑顔をやめて。
そうやって、何も考えずに、何かを考えるのをやめて。
「っはは、嘘つきだなぁこころちゃん！そうやって、素直だとか…
素直を演じているわけじゃない、偽りでもない。
キミはそこに"閉じ込めて"逃げてるんだね…？」
根本は変わっていない。きっと、この後病院にでも連れて行ったらいい反応を見せてくれるだろうし、前のように悪戯をしたら激昂してドジを踏むんだろう。
でも、違うよ。
オレはキミみたいな状態にいた人を知っている。
そいつはそうやって心に色々閉じ込めて、一時期何も考えずに色々考えて。
結局、器が割れて、全て溢れて。
そうやって壊れてしまうんだ。
やめてよ。壊れて、いかないでよ。
そうやって逃げないでよ。壊れようとしないでよ。
助け、させてよ。
いつの間にか。自分の方からも彼女に詰め寄って。
両手を横に広げて伸ばす彼女を。
抱き締めようとしていた。
「――――――――やめてよ…」
【あいごころ。】
｢閉じ込めている…か。｣
あぁ、二重人格か。たしかに今の状況はそれに似てるかもしれない。と、なればこころの中にある“私”はこころに傷を受けて閉じこもってしまったって感じるよね。…ああ、全くだ。全くもって。
｢…残念、だなぁ。もう少しわかってると思ってたんだけれど。｣
本当にボソリと呟く。多分、聞こえてないかな。大不正解。全く違うよ。それは。逃げている？ああ、“あれ”はそんな崇高な人間じゃないよ。本当の意味での“愚か者”。現実から目を背けただけの引き込もりだよ。だから。
｢――――わーい！｣
あえて元気に。あえて何も気づかないで。ただの純粋無垢な子供を演じよう。…いや、これが素か。演じる必要あんまなかったね。
そう言いながら抱きしめようとした相手の胸に飛びつく。スキンシップは大切だもんね！
｢そんな悲しい顔しちゃだめだよ？｣
残念だよ、海月。だから底抜けに笑ってあげる。これが、こころに出来ることだから。
ほら、笑いなよ？楽しくないでしょうこんなこと？ね？アハハ！
【海月】
わからない、分からない、判らない、解らないよ。
相手は"あいごころ"のはずなのに、オレが何をしているのか。彼女が何をしているのか。
回せ、頭を回せ。オレはそれが出来るはず。
悲しい顔をして、人の心配をして、こうやって人を受け入れて、そんなのオレじゃないじゃないか！
――無理だよ。
オレは狂人だけれど、壊れてはいないから、キミの気持ちはわからないよ。現実逃避？それともそれが本当のキミなのか。それをオレが理解できるはずないじゃないか。
――だったら、諦めようよ。
きっと"みんな"は優しいから、戸惑って"どうしたの"とは聞くんだろうけれど、そのうち彼女を受け入れる。
でも、オレはやさしいから、"どうしたの"とも聞けないしこころちゃんを引き出そうとしてしまうんだ。
――彼女も悲しい顔するなって言ってるよ！愉しもうよ！
「……悪趣味だね。こんな状況で笑ったり楽しんだり、出来るワケないじゃん？
むしろ、よく、そんな、悲しい顔するなって、励ませるよね。」
ああ。"悪趣味"だなんて。まるで誰かみたい。そうだ。こんなゲエム…
――そんなこと、微塵も思ってないんだけどね！
【あいごころ。】
｢悪趣味？そうかなぁ…こんな時だからこそ笑わないと！｣
あくまで無能のふり。なにも考えてない子供のように。…まあ、それが私だしね。
こんな時だからこそ笑わないと。ほら、暗い雰囲気に飲み込まれちゃう。きっと笑えば大丈夫、だからね？笑っちゃいなよ。ほら。
｢クラスメイトで殺し合い。誰も信じられないなんてこんな“悪趣味”なことないもん！でも、それでも私は笑顔でいるの！そうすればきっとみんな笑顔になれるでしょ？ああ、それとも海月は笑顔が嫌いだった？｣
あは、悪趣味だって！…前の私の悪趣味、とは違う意味で使ってあげる。みんなを信用してる、とでも言うかのように。まあ、“みんな”は信用してるよ？…個人になったらわかんないけど。少なくとも海月、あなたは…信用しないかもね。
｢ああ、でも狂人は笑顔なんて十八番でしょ？｣
ニッコリと。抱きついたまま相手の顔を見る。傍から見ればほのぼのとした光景かもね。まあ、ただの会話。きっと、そこに特に意味は無いのかも。まあ、きっとそれは違うと思うけれどね。少なくとも、私にとっては意味があるから。
【海月】
こんな時だからこそ、か。ああ、誰かが言っていたっけ。誰かまでは覚えていないけど。
笑顔でいれば笑顔になれる、とも誰かが言ってた気がするね。
――そんな甘いコトでこのゲエムを愉しめるワケないでしょ！
誰も信じられないのに、笑顔にして何の意味があるのさ。少なくとも、オレはそんなコト望んだつもりないよ。
壊れかけの時計。チクタクチクタク規則正しく、決まった動きをこなす。そんな義務的な笑顔が望まれるわけないだろうに。
ただ、オレも笑顔は嫌いじゃないよ。楽しめるならそれが一番でしょ。
――じゃあ、愉しむためにどうするべきか分かるよね！
抱きついている少女と目を合わせて。少しだけ笑って。
彼女の言葉に反応するように、こう言うんだ。
「そう？少なくとも、キミは狂人じゃないように見えるけど。」
笑顔が十八番、だなんて。そんなに笑顔を浮かべているキミが言っていいことじゃないじゃないか。
やめて。―――やめてよ。
「それとも、前はあんなにオレのコト悪趣味だのどうだの言っておいて。
気変わりでもしたの？」
【あいごころ。】
｢うーん…そうだね。私は狂人なんかじゃないよ？｣
ニコニコしながら。そうやって返す。無理のない、自然な笑顔で。…実際お喋りできて楽しいからね。別に狂人の十八番といっても狂人じゃなけりゃ笑えないわけじゃないもんね？だから、気付かないふり。相手が遠まわしに何を伝えようとしてるかも分からないふりをして、全部聞き流してしまおう。…それが、私だから、ね？
｢気変わり？してないよ！！相変わらず悪趣味だと思うもん。…ああ、でも。たしかに気変わりっていうのは間違いじゃないのかな？｣
悪趣味かあ。たしかに“あれ”はそんなこと言っていた。なら、ここはあれらしく返しておこうかな。私は素直だからね。
…でも、気変わりっていうのはあながち間違えでもないね。でもあってもいない。そんな微妙な解答だね。答えとしては不正解だけれども、その意味はたしかに伝わるかもしれない。…でも、それでも。私は気づかないかな。その微妙な違いにさ。そういうフリをしなきゃいけないから。
ああ、楽しいなぁ
純粋にそう思うよ。ねぇ、あなたはこころと喋ってて楽しいのかな？それとも…
辛いのかな？
【海月】
つらいよ。
たのしいのに、くるしいよ。
やめて。まだ、自分を否定しないで。
オレの知っている"あいごころ"は、不敵に笑って、ちょっとドジで、それでいて抜け目のない。そんな子。
…じゃあ今は？今のキミも、"あいごころ。" だけど、違う。そんなに素直なキミは。
「っはは。そっか、オレも狂人になったつもりはないよ。」
嘘吐け。自分が狂人であることなんて一番よく分かってるじゃないか。
まだ、オレは騙し続けなきゃいけないから。
他人を。自分を。全てを騙して、今では本当のオレがどれなのかも定かじゃないけれど。
――――キミも、おんなじだったはずだから。
「オレは、さ。エスパーでもなければ神でも天使でもないわけだから、人の心が読めたり人がどういう過去を送ってきたかは分からない。
だから、変に分かろうとするつもりもないし肯定や否定をするつもりもない。」
素直にい続けても、いつかは壊れてしまうんだ。だったらいつまでも騙し続けてよ。
もう一回話そうよ。もっと騙したいし、もっと騙されたいし、だからこそ。
「特にキミを愛してるーとか、そんなでもないし。
心から思ってるよ！なんて言うつもりもないよ。」
今度こそ、ぎゅっと抱きしめて。
「"だから"、今だけ、少しだけ"オレのこころちゃん"でいてよ。
もっと、騙して、騙されて。愉しい話も愉しくない話もたくさんして。
――騙し続けた先には、"真実"がある。オレ、知ってるから。」
辛いけれど。
楽しいよ。
【あいごころ。】
｢……｣
ああ…なんだ、面倒臭いなぁ…そっか。君はそうして欲しいんだね。こころに、嘘をついて欲しいんだね。１回は壊れてしまいそうになった、“それ”を、またつけ直して欲しいんだね。…あは。楽しいなぁ。わかったよ。じゃあ、“今だけ”はそうしてあげる。君の言う通りにしてあげる。君がそれで笑顔になるのならそうしてあげるよ。
じゃ。ちょっとだけ。ちょっとだけ目をつぶってあげるよ。
…壊れかけた仮面を修理して、修復して、つけ直す。きっと長くは持たない。でもそれでいい。
｢……苦しいわ。離れてちょうだい。｣
相手にそう伝える。軽く背中を叩く。離して欲しい、そういう合図だ。
｢悪いわね。少しだけ。少しだけ気が狂ってたみたい。｣
そういってクスクス笑う。そうして、いつものように。
狐面を、“触る”
【海月】
その声に、反応するように離れて。
さっきと同じように、檻に身体を傾けた。
「っはは。ごめんごめん！いやー、感動の再会？ってヤツかな？
こころちゃんが正気に戻ってくれたようで何よりだよ！」
なんて。今のキミとさっきのキミに、正気やら狂気やらの違いもないのだろうけれど。
キミは、代わるコトが出来る。一方通行？それとも双方向受信？
まあ今のオレには知る由もないしどうでもいいんだけどね！ああ、戻ってきてくれてよかった。ライバルは多い方が愉しいもんね？
――そっか。
いつだかに、そのお面を触る癖について心の中だか何処かで言及したような気がするけれど。
"そういう"ことだったんだ？
「で、そんな少しだけ気が狂ってた病み上がりこころちゃんに申し訳ないんだけどさ。
オレと交渉しない？」
此処からが"本番"。
引きずり出せた。じゃあ、ここから引っ張ってあげる。
【あいごころ。】
――ほら、感動の再開だってさ。
…頭の中で声が響く。…ああ、面倒臭いやつだね。せっかく素直になってたんじゃないの？…まあ、いいわ。ならば。私は私を騙るだけ。
｢感動の再会、ねぇ。最悪の邂逅の間違いじゃないかしら？｣
そういってクスクスと笑う。ああ、こんな会話も久々かもしれないなぁ。こうやって軽口を叩きながら相手の腹を見ようとする。…こいつとは、そんなことばかりしかして来なかったから。ああ、久々な雰囲気だなぁとちょっとだけ懐かしくなる。
｢気が狂ってるやつにそんなことを言われるなんてね。…交渉、ね。｣
交渉。こいつがもってくる交渉は大抵面倒臭いものだ。それと同時に、確かに有益なものである。…ならば、答えは1つ。
｢…話を聞かせなさい。それからよ。｣
そういって狐面を触る。…ああ、本番はここからなのでしょう？少しだけ。少しだけだけど…楽しみな自分がいる。やはり、私は少し“ズレ”てるのかもしれないなぁ。
【海月】
「最悪の邂逅だってね、オレ嫌われてやんの！悲しいなあ、オレはこころちゃんのコト好きだよ？」
とか、軽口を叩いてみたり。仕方ないんだ、"こうしていられる時間はもう今しかない"んだから。
目の前で"いつも"のようにクスクスと嗤っている彼女を見て、こっちも笑みが止らない。
ほら、こうやって。相手の目ではなく腹を見透かして話す。それがオレらでしょ。
「話、ねえ。まあ、言うなれば情報提供だよ！多分、キミの欲しい情報、あるんじゃないかなーって思うんだけど。
別にこっちから何かを要求することもない。ね？断然、キミがお得なハナシじゃないかな？」
そうやって、相手の反応を見る。
情報があるのは本当。渡すつもりなのも本当。要求するかどうかは…後出しの法則だからね！
オレの気が変わったらそんなこともあっちゃうかもしれないけれど。
【あいごころ。】
――相変わらず信用できない塊みたいなやつだねぇ。
その中から真実であろう部分を取り出していけばいいだけの話でしょう？真実の無い話なんてただの空想だもの。
｢情報提供。そう。なら先にそっちの要求を出しなさい。後出しは許さないわよ？｣
なんとでも言えるものね？なら先にそれを出せと釘を刺しておく。別に問題ないでしょう？要求を聞くぐらいならばあなたにも私にも損は無いものね。
ああ、まだ。まだ見えないわね。相手の狙い。何をしたいのか。なにを考えているのか…いや、何を考えているかなんて言うのは分からないわね。少なくとも、私には。だから、予測は出来ない。でも。ある程度の予想なら出来なくもない。例えば。…流石にこちらの方が美味しい話であること、とか。だからこそ警戒する。ああ、そう言えばこんなこと前もあったなぁと思う。二の舞にはなりたくないものね。
【海月】
要求はないって言っているのに。相変わらず、食えるのに食えないヤツだなぁ。
まあ、ライバルがそう簡単にやられても行けないし、ゲエムはハードモードだし、それがいいんだけれど。
今、とっても愉しいよ？
「要求、ねえ。まあ、"要求"はしないよ。"選択"はさせちゃうかもしれないけどね！
だから、本当にオレからのプレゼントみたいなもの。キミが頷いてくれるだけで済む話だよ。
…まあ、オレの"賭け"に巻き込んじゃうかもしれないけど。それは頷かないと分からない話、かな！」
賭け。
まあ、賭けというほど大層小さいものではないけれど。
けれど、その代わり、キミにはメリットしかない。情報を貰える、という大きな情報がね。
――さあ、どうする？
言っておくけど、オレはこころちゃんの味方だよ！
あ、言ってないね。じゃあ嘘かもしれないね！
【あいごころ。】
｢賭け、ね。｣
相手の賭けに巻き込まれる。か。それは相手と同じデメリットを背負うかもしれないということ。
敵になるのか味方になるのか。…ああ。どうなるか分からないけれど。相手の今までの言葉から察せられる事実なんて極一部。でも、相手の性格ならば敵に持ちかけることは、それなりの利益がなければまずありえない。…まあ、敵味方の判別が出来てるかすら謎だけれどもね。
――へぇ、やっぱり食えないやつだね。
やっぱり食えないやつ。そんな条件を突きつけられたのであれば。…乗ってやるしかないかな。相手に乗せられてるようで不本意ではあるけれども。こちらにとって利益があるのならば乗ってもいいだろう。
｢…わかった。いいわよ。その話、乗りましょう。｣
狐面を触る。そういって目を細めて、笑う。
これであなたと協力関係、なんてことはないと思うけれども少なくとも情報は受け取れる。あとは…相手次第、ね。
【海月】
ああ、その言葉。信じてたよ。
なんて、信じるなんて嘘だけどね！このゲエムで"人を信じる"ことがどれだけ苦痛か。
「じゃあ、そうだね。何処の誰に聞かれてるかもわからないし、個人チャットで送っておくよ。」
そう言って、少しの時間コロパッドを操作して。
――――一秒の猶予すら与えない。彼女がいつ気付くかもわからないのだから、不意を突け。
寄りかかっていた展望台の窓際の、手摺を掴んで、身体を浮かせた。
何故って？分からないかな。ここ、テストに出るところなのに。
賭けだよ。
キミがオレに乗せられる、なんて。乗せているつもりはあるけれど、"これ"は、むしろキミがオレを乗せる側に回るはずだよ。
だから、こそ、オレは"こう"する。キミの頭にオレがついて離れないように。
そう、これは賭け。
キミが素直にならず、そのまま見透かすような目で見ていられるように。素直だったキミがくれた"少しだけ"を永遠に出来るように。
そっちの方が、面白いでしょう？
なんて。思ってみたりもするわけで。
何にせよ、送ってしまった以上、オレはもう後戻りは出来ないし、キミもオレを見る目がちょっとばかし変わるんじゃないだろうか。
だから、一言も待たせない。何かを言われてしまえば負けだ。それも、賭けの一つ。
オレは、ここでリタイア<途中棄権>させてもらうよ。
手摺の上に、ひょいっと乗ってみる。
ああ、まあ、勿論落ちないように手も使ってるよ。そんな必要、もう無くなるんだけれど。
250mともなれば風も強くて、普通にしていたらすぐに落ちてしまう。
さて、今キミはどんな顔をしている？
笑ってる？泣いてる？怒ってる？うーん、ちょっと遠くて分からないなぁ。
確認をするつもりもないけれど。その前に"終わり"は来てしまう。
だから其処からは、"終わらない"ようにオレは賭けるだけ。祈るだけ。運ゲーも嗜みの一つだよね？
そういえば、こういう時は辞世の句とかいうのを言ったりするんだっけ？
ああ、困ったな。何も思いついてないや。
"またね"？いやいや、相手もこんな瀬戸際での嘘を鵜呑みにはしないだろう。オレもバレバレの嘘はつきたくないし、却下。
"信じてるよ"とか？ダメダメ、オレは然ういう柄じゃあないでしょ。仮に本当に信じていたとしても本人にそれを伝えるわけがないし、却下。
――じゃあ、"呪い"の言葉にしてみようか。
まじない？のろい？どっちでもいいよ、些細なコト。けれど、聞いたらきっと離れなくなる言葉だよ。
こういうのもオレの柄じゃあないだろうけれど。
最期くらい、嘘かも本当かもわからないコトを言って相手を困らせるのも、オレらしいと言えばらしい。
だから、聞いておいて。これがオレの"プレゼント"だよ。キミを引き付けて離さない魔法の言葉。おまじない。
手摺から手を離して、思いっきり蹴っ飛ばした。一瞬の身体が浮く感覚は、直ぐに落下に変わってしまうから。
急いで、はっきりと。
笑顔で"それ"を口にした。
「"あい"してるよ、"こころ"ちゃんっ！」
あわいこいごころと共に、250mの自由落下。笑顔でさようなら。
【あいごころ。】
彼女が向こうへ落ちていく。
その様子をただ見ていることしか出来なかった。
――へぇ！やるじゃん！
頭の中で声が響く。一体何が起きたのか。…ああ、なるほど。なら、これは分からない。…分からないよ。何が起きたの？
――ああ、面白いことになったね？
どこが面白いことなのよ。…このことのどこに。面白い要素があったのよ。
――さぁて、これからどうする？
どうしようもないよ。どうするべきかも分からない。
…海月。
｢…そう、あなたは、そうするのね。｣
…これは賭け。私が全てを賭けるための。あなたが全てを託したもの。なら。
｢…私も、覚悟を決めるしかないわね。｣
だから。…狐面を。
――――狐面を、外す。
コーヒーブレイクと共に 11th-13th
ヒガンバナ(11th)-撫子(13th)
【撫子】
……はぁー着いたぁー…寒かったぁ…
（ホテルのロビーに到着してから独り言。どうせ横のNPCくらいしか聞いてないしいいだろう、と結構大きい独り言だった。
さっきSCTから出てここに来るまで寒くて仕方がなかったし、早く自室の布団にくるまりたかった。
この上ない自堕落。殺し合いしてるとは思えない。）
【ヒガンバナ】
「……む？」
丁度ホテルのチェックインを済ませた所に、これまた高校生には見えない、もこもこの少女がやって来た。
思わず、少し失礼な事にそちらを見つめてしまう。
【撫子】
…………
（ちらっとそっちを見て、すぐに目を逸した。
………凄まじく気まずかった。今のすんごい独り言を思いっきり聞かれたと考えると…ね？）
【ヒガンバナ】
「……ああ、すまない。
始めまして、だな？私はヒガンバナだ。」
何だか気まずい雰囲気になってしまったので、彼女に謝りながら近付く。
出来るだけ怖がらせないように、鋭い目付きを表情を優しくして誤魔化しながら。
【撫子】
あー…うん…初めまして…私は撫子…番号で言えば13th…
（見なかったこと聞かなかったことにしてほしい、と思いながらも、目を逸して返事をする。まだ気まずさが残っているのだろう。）
【ヒガンバナ】
「撫子か……良い名だな。」
撫子、つまりは淑やかな日本人女性を表す大和撫子から取ったのだろう。
個人的には好きな偽名だ。
「ま、まあそんなに機嫌を悪くしないでくれ、本当に悪かった。」
【撫子】
いや、こっちが悪いから…えーと、気にしないで…
（独り言に関しては向こうは何も悪くないので大丈夫だった。ただ、こっちが気恥ずかしくて目を逸らしているというだけだった。
相手は気にしなくていいけどこっちは気にする、という状況だった。）
【ヒガンバナ】
「そうか……」
気にしないでと言われてしまったので気にしない事にする。
このままでは話も進まぬからな。
「そう言えば、突然の質問で申し訳無いが……これが始まるときに配られたアイテムが有っただろう？
お前さんは何を貰った？」
【撫子】
……将棋セット。あんまり使えないけどいい暇潰しになってるよ。
（言っていいものか悩んだが、まぁあれもらっても使い道がわからないし言ってもいいか、と白状する。
まぁ自室での暇潰しにくらいしか使えない…いや、強いて言うなら鈍器にはなる？どっちでもいいけどそれなら別の武器持ってきた方が速いだろう。）
【ヒガンバナ】
「なるほど……ありがとう。
まあ、確かに使い道は余りないな。」
将棋は……軽くしか分からない。
多分普通に戦ったら負ける。
「まあ、こちらから質問するのも失礼なのでな、何か聞きたいことあれば聞くぞ？」
【撫子】
………特に知りたいことはない…っていうか嘘も吐かれるかもだし、聞いても、ね。
（知りたいことはない、が理由の中心。そんな細かい情報戦する気はない。誰かを殺す気もないのだから。
それに、嘘を吐かれるリスクを考えれば下手な情報は混乱を招くだけかもしれないし、持つだけ無駄だろうから。）
【ヒガンバナ】
「……私も信用されてないな……仕方無いか。
何、私は嘘だの探りあいだの苦手なのだ。
お前さんの言葉は信じるし、嘘をつく気もないぞ。」
……と、言ったところで無駄なのだろうが。
「このあとは部屋で休むのか？
良ければ、軽く珈琲でも飲みながら話さないかと思ってな。」
【撫子】
騙し合いが激しいからね…まぁ、単純に知りたいことがなかったから信用してても何も聞かなかったよ。
（少し苦笑しながらそう話す。どこか申し訳なさそうな顔だが、そこまで心から悪いとも言うつもりはないのだろう。）
うーん…休むつもりだったけど、それもいいね。
一緒に行ってもいい？
（すぐに信用してついて行っていいものか、とは思ったが、まぁ酷い目に遭うことはないと信じて誘いに乗る。）
【ヒガンバナ】
「ああ、勿論だ。
……幾ら殺しあいが起こっているとしても、こうして誰かと話して、休まないとな。」
撫子と一緒に、ホテルの食事処に向かう。
私は珈琲のみを頼むが、彼女は……まあ、任せようか。
「好きな物を頼んでくれ。
こう言う時くらいはゆっくりと、な。」
【撫子】
（そのまま食事処へとついて行った。ホテル暮らしの自分の生命線。何度も行った。（書くことがないのでどうでもいいことを））
んー…まぁ適当に頼むよ。
（さっき話で珈琲と言ったしそれにするかな、と考え、すぐに頼みたいものは決まった。
しかし、珈琲の消費量が増えた気がする。元々あんまり飲まないのに。）
【ヒガンバナ】
二人の珈琲が運ばれ、少し猫舌な私はそれに息を吹き掛けて冷ます。
「…………そう言えば、また質問になってしまうのだが……ゾディアック、お互いに教え合わないか？
やはり、何分情報が少なくてな……」
【撫子】
んー…別にいいけど……
（余り気が進まないようだ。物理的な武器を除けば、自身が持てる最後の武器。それを出会ってすぐの相手に教えるのを躊躇うのも当たり前と言えばそうだろう。）
【ヒガンバナ】
「嫌なら良いんだ……やはり、ゾディアックを教えるだけでもかなりのリスクを伴うからな。」
珈琲を一口含み、喉の奥へと流し込む。
香ばしく、苦味も良い。
「……だが……ああ、こうして……人が更に死ぬ前に……
情報を揃えておきたいのだ。」
死亡アナウンス
海月、か……会った事はなかったのだが。
【撫子】
………あいつ…
（本気で死ねとは言ってないわあの馬鹿。
なんて、半ば理不尽な文句を心の中で垂れながら顔をしかめる。あっという間に人が死ぬ。
殺し合いが始まってまだ数日。もっと時間が経って末期の状態になったならともかく、既にこれ。
単純な言葉で表すなら、嫌になる、だった。）
【ヒガンバナ】
「……知り合いだったか。」
私は知らない相手ではあったが、彼女はあいつと言った。
恐らく知り合いだったのだろう。
……悲しい事だ。だから、早くしなければ。
「…………Azoth……全員脱出の鍵……
早く、どうにかしないとな。
……話の続きだ。
フレンド登録をしよう、そちらに情報を送って欲しい……こちらからも、出来る限りは送るが……期待はしないでほしい。」
【撫子】
腐れ縁だけどね…
（されど縁だった。少なくとも、クラスメイトという縁はあった。それを失って平気でいられる人間は『人』じゃないと言って差し支えない。）
……まぁそうしておくよ。こっちからもわかることがあったら送るから。
（そう言ってコロパッドを取り出す。どこからって？
懐、つまり胸からだ、喜べよ、ほら←）
【ヒガンバナ】
「腐れ縁も、無くなると悲しい物だ……
さて、承認ありがとう。」
余り、死の事については触れたくはない。
悲しくなるだけだからな。
……と言うより、胸から取り出したのか、パッド。
少し驚いた。
「……そう言えば、もう一つ聞きたいが……役職を持っている者。
つまり、Azoth、Celestia、狂人の可能性が有るものと会っていたりしないか？」
【撫子】
んー…まぁ候補くらいはね…
でも嘘かもわからないし、っていうか嘘だろうし。
（1人いる。自分からそう言っていた。まぁもう1人グレーがいるわけだが、そいつはグレーすぎる。
まぁグレーすぎない範囲で言えば、あれは味方してくれてる。少なくとも今は。だから、下手に相手はバラさないようにした。
おかげで怪しさMAXなのだが。）
【ヒガンバナ】
「まあ、そんなものだろうな……結局の所、確信を持てる情報はないか。」
幾つかのゾディアックで役職は調べられるが、どちらかと言うと皆名前を選んでいるのだろうきっと。
……そして、突然運営から謎のメールが届く。
それを見た私は、心臓が飛び出そうになった。
なぜ─────
……だが、その後直ぐに死亡通知。
名前は……
「……………………。
すまない、情報は……パッドに送っておいてくれ。
私は、行かなければ……！」
やはり、悠長にしている暇はない。
運営は、────を人質にする事も出来ると分かった以上、直ぐに行動に移さなければ。
私は立ち上がると、別れの挨拶もせずに立ち去ろうと。
【撫子】
え…あ、え！？
（何の通知が来たのか。そう尋ねようと思ったが呼び止めることはできなかった。
ほんと何が来たんだ…そう考えながらパッドを見て、すぐ知る羽目に遭ったのだが。）
【撫子】
……はぁー着いたぁー…寒かったぁ…
（ホテルのロビーに到着してから独り言。どうせ横のNPCくらいしか聞いてないしいいだろう、と結構大きい独り言だった。
さっきSCTから出てここに来るまで寒くて仕方がなかったし、早く自室の布団にくるまりたかった。
この上ない自堕落。殺し合いしてるとは思えない。）
【ヒガンバナ】
「……む？」
丁度ホテルのチェックインを済ませた所に、これまた高校生には見えない、もこもこの少女がやって来た。
思わず、少し失礼な事にそちらを見つめてしまう。
【撫子】
…………
（ちらっとそっちを見て、すぐに目を逸した。
………凄まじく気まずかった。今のすんごい独り言を思いっきり聞かれたと考えると…ね？）
【ヒガンバナ】
「……ああ、すまない。
始めまして、だな？私はヒガンバナだ。」
何だか気まずい雰囲気になってしまったので、彼女に謝りながら近付く。
出来るだけ怖がらせないように、鋭い目付きを表情を優しくして誤魔化しながら。
【撫子】
あー…うん…初めまして…私は撫子…番号で言えば13th…
（見なかったこと聞かなかったことにしてほしい、と思いながらも、目を逸して返事をする。まだ気まずさが残っているのだろう。）
【ヒガンバナ】
「撫子か……良い名だな。」
撫子、つまりは淑やかな日本人女性を表す大和撫子から取ったのだろう。
個人的には好きな偽名だ。
「ま、まあそんなに機嫌を悪くしないでくれ、本当に悪かった。」
【撫子】
いや、こっちが悪いから…えーと、気にしないで…
（独り言に関しては向こうは何も悪くないので大丈夫だった。ただ、こっちが気恥ずかしくて目を逸らしているというだけだった。
相手は気にしなくていいけどこっちは気にする、という状況だった。）
【ヒガンバナ】
「そうか……」
気にしないでと言われてしまったので気にしない事にする。
このままでは話も進まぬからな。
「そう言えば、突然の質問で申し訳無いが……これが始まるときに配られたアイテムが有っただろう？
お前さんは何を貰った？」
【撫子】
……将棋セット。あんまり使えないけどいい暇潰しになってるよ。
（言っていいものか悩んだが、まぁあれもらっても使い道がわからないし言ってもいいか、と白状する。
まぁ自室での暇潰しにくらいしか使えない…いや、強いて言うなら鈍器にはなる？どっちでもいいけどそれなら別の武器持ってきた方が速いだろう。）
【ヒガンバナ】
「なるほど……ありがとう。
まあ、確かに使い道は余りないな。」
将棋は……軽くしか分からない。
多分普通に戦ったら負ける。
「まあ、こちらから質問するのも失礼なのでな、何か聞きたいことあれば聞くぞ？」
【撫子】
………特に知りたいことはない…っていうか嘘も吐かれるかもだし、聞いても、ね。
（知りたいことはない、が理由の中心。そんな細かい情報戦する気はない。誰かを殺す気もないのだから。
それに、嘘を吐かれるリスクを考えれば下手な情報は混乱を招くだけかもしれないし、持つだけ無駄だろうから。）
【ヒガンバナ】
「……私も信用されてないな……仕方無いか。
何、私は嘘だの探りあいだの苦手なのだ。
お前さんの言葉は信じるし、嘘をつく気もないぞ。」
……と、言ったところで無駄なのだろうが。
「このあとは部屋で休むのか？
良ければ、軽く珈琲でも飲みながら話さないかと思ってな。」
【撫子】
騙し合いが激しいからね…まぁ、単純に知りたいことがなかったから信用してても何も聞かなかったよ。
（少し苦笑しながらそう話す。どこか申し訳なさそうな顔だが、そこまで心から悪いとも言うつもりはないのだろう。）
うーん…休むつもりだったけど、それもいいね。
一緒に行ってもいい？
（すぐに信用してついて行っていいものか、とは思ったが、まぁ酷い目に遭うことはないと信じて誘いに乗る。）
【ヒガンバナ】
「ああ、勿論だ。
……幾ら殺しあいが起こっているとしても、こうして誰かと話して、休まないとな。」
撫子と一緒に、ホテルの食事処に向かう。
私は珈琲のみを頼むが、彼女は……まあ、任せようか。
「好きな物を頼んでくれ。
こう言う時くらいはゆっくりと、な。」
【撫子】
（そのまま食事処へとついて行った。ホテル暮らしの自分の生命線。何度も行った。（書くことがないのでどうでもいいことを））
んー…まぁ適当に頼むよ。
（さっき話で珈琲と言ったしそれにするかな、と考え、すぐに頼みたいものは決まった。
しかし、珈琲の消費量が増えた気がする。元々あんまり飲まないのに。）
【ヒガンバナ】
二人の珈琲が運ばれ、少し猫舌な私はそれに息を吹き掛けて冷ます。
「…………そう言えば、また質問になってしまうのだが……ゾディアック、お互いに教え合わないか？
やはり、何分情報が少なくてな……」
【撫子】
んー…別にいいけど……
（余り気が進まないようだ。物理的な武器を除けば、自身が持てる最後の武器。それを出会ってすぐの相手に教えるのを躊躇うのも当たり前と言えばそうだろう。）
【ヒガンバナ】
「嫌なら良いんだ……やはり、ゾディアックを教えるだけでもかなりのリスクを伴うからな。」
珈琲を一口含み、喉の奥へと流し込む。
香ばしく、苦味も良い。
「……だが……ああ、こうして……人が更に死ぬ前に……
情報を揃えておきたいのだ。」
死亡アナウンス
海月、か……会った事はなかったのだが。
【撫子】
………あいつ…
（本気で死ねとは言ってないわあの馬鹿。
なんて、半ば理不尽な文句を心の中で垂れながら顔をしかめる。あっという間に人が死ぬ。
殺し合いが始まってまだ数日。もっと時間が経って末期の状態になったならともかく、既にこれ。
単純な言葉で表すなら、嫌になる、だった。）
【ヒガンバナ】
「……知り合いだったか。」
私は知らない相手ではあったが、彼女はあいつと言った。
恐らく知り合いだったのだろう。
……悲しい事だ。だから、早くしなければ。
「…………Azoth……全員脱出の鍵……
早く、どうにかしないとな。
……話の続きだ。
フレンド登録をしよう、そちらに情報を送って欲しい……こちらからも、出来る限りは送るが……期待はしないでほしい。」
【撫子】
腐れ縁だけどね…
（されど縁だった。少なくとも、クラスメイトという縁はあった。それを失って平気でいられる人間は『人』じゃないと言って差し支えない。）
……まぁそうしておくよ。こっちからもわかることがあったら送るから。
（そう言ってコロパッドを取り出す。どこからって？
懐、つまり胸からだ、喜べよ、ほら←）
【ヒガンバナ】
「腐れ縁も、無くなると悲しい物だ……
さて、承認ありがとう。」
余り、死の事については触れたくはない。
悲しくなるだけだからな。
……と言うより、胸から取り出したのか、パッド。
少し驚いた。
「……そう言えば、もう一つ聞きたいが……役職を持っている者。
つまり、Azoth、Celestia、狂人の可能性が有るものと会っていたりしないか？」
【撫子】
んー…まぁ候補くらいはね…
でも嘘かもわからないし、っていうか嘘だろうし。
（1人いる。自分からそう言っていた。まぁもう1人グレーがいるわけだが、そいつはグレーすぎる。
まぁグレーすぎない範囲で言えば、あれは味方してくれてる。少なくとも今は。だから、下手に相手はバラさないようにした。
おかげで怪しさMAXなのだが。）
【ヒガンバナ】
「まあ、そんなものだろうな……結局の所、確信を持てる情報はないか。」
幾つかのゾディアックで役職は調べられるが、どちらかと言うと皆名前を選んでいるのだろうきっと。
……そして、突然運営から謎のメールが届く。
それを見た私は、心臓が飛び出そうになった。
なぜ─────
……だが、その後直ぐに死亡通知。
名前は……
「……………………。
すまない、情報は……パッドに送っておいてくれ。
私は、行かなければ……！」
やはり、悠長にしている暇はない。
運営は、────を人質にする事も出来ると分かった以上、直ぐに行動に移さなければ。
私は立ち上がると、別れの挨拶もせずに立ち去ろうと。
【撫子】
え…あ、え！？
（何の通知が来たのか。そう尋ねようと思ったが呼び止めることはできなかった。
ほんと何が来たんだ…そう考えながらパッドを見て、すぐ知る羽目に遭ったのだが。）
弱さの欠片を頂戴。 5th-25th
まにょ(5th)-柏木 愛(25th)
【柏木 愛】
「歌って踊ろうハッピーバースデイ……」
〜これまでのあらすじ〜
美少女が周りに多いばかりに好き勝手変態してた柏木くんだが、色々あって真面目に動くことにしました。ちゃんちゃん。
そんなこんなでちょっとでも良いものが見つかればいいなと、船着き場にやってきた。海に来ると、つい海を眺めてしまうのは、きっとあるあるである。ポケットに手を突っ込み、せわしなく体を震わせながら、適当な歌を小さく口ずさむ）
「うーん、結局俺は男……女……どっちで過ごそうかしら……」
（場違いな葛藤を抱えながら、呆然と海を眺める）
【まにょ】
中央エリアの停留所から電車に乗って少し待てば、海に面した船着場のある西のエリアにたどり着く。今日は風が冷たい。雪は降っていないが、朝から澄み切った晴天だから薄荷のようにすっと透くような寒さがあるのだ。
そんな日なら海も遠くまで見えるだろうと思いきや、季節外れの蜃気楼よろしく薄い霧がぼんやりと揺らめいて地平の直線を遮ってしまう。やや残念に思いつつ、全うな手段では出られることは一切ないと僅かながらの希望も抱かせない徹底さには寧ろ助かっている次第だ。生半可に期待を残されるよりは、一喜一憂にエネルギーを裂かずに済む。こんな弱弱しい器に入ってからは顕著に思うのだが、意外と気持ちに体力は振り回される。少し前に流行った言葉だが、時代はエコだ。余計な体力を使わないように省エネモードでゆるりと振舞っていないとやっていられない。
心地良い風に吹かれながら、少し散歩したら帰ろうと思い海のほうへ近づいていく。船着場とあって浜辺とはまた違った硬質な雰囲気がある海辺には冬が良く似合っていた。人っ子一人居ないと思えば、立ち居地のせいか建物の影で見えなかったがぽつりと佇む人が居る。ここは動かない船着場、働くNPCのような人間が居るはずはない。となれば参加者のひとりで間違いないだろう。
声をかけるか少し悩んだものの、ここ数日余り積極的に動けては居ない。彼女は精力的に出かけているのに、自分だけ引きこもっていては仕方がないのではないだろうか。
―――少し勇気を出せば、何か、彼女の役に立てるかもしれません。
そんな考えが鎌首を擡げて、怯みかけた自分の心を鼓舞した。ゆっくりと近づいていき控えめに声をかける。
「あの…こんにちは。貴女も海を見にいらっしゃったのですか？」
何か考え込んでいるらしい柏木の呟きこそ聞こえなかったものの、海を見詰めていたから自分と同じ用事でここに来たのだろうか。そう思いつつ、胸元に手を当て、反応を窺うように視線を向けている。
【柏木 愛】
「あ……。いえ、海を見に来たわけじゃないです、はい、すいません。
ただやることが無かったので、海でも見に……あ、これじゃあ海を見に来ちゃってますね、すいません。
えっと、暇だっただけです、すみません」
（声を掛けられ、彼の方に首を向ける。デカイ、というのが第一印象であった。それにしては細く、病弱な印象を受ける。仮の身体というのは、本当にバラバラなのだなと、改めて実感した。
ペコペコと首だけのお辞儀を繰り返しながら、質問に答える。
彼は初対面の人間と話すとき、だいたいこんな感じである）
「あ、すいません俺、柏木愛です、はい、すいません」
【まにょ】
すいませんカウンターがこの世にあるのなら、彼女―――いや、彼かもしれない。器で性別を偽らないタイプも居ないとはいえないのだから―――との会話では数分は成すだけで優に100カウント獲得を狙えるだろう。そう豪語されても仕方ない程度に会話に謝罪文が挟まれていた。
謎の謝り倒しな反応に、自分は何か相手に失礼なことでもされていただろうか？と不安になってしまうものの、そのことできょとんとするのも数秒のことだ。すぐににこりと微笑んだ。
「私はまにょと申します。…そんなに謝らなくても、大丈夫です。寧ろこの状況で意欲的な人だったら、もう少し緊張してしまうところでした」
はにかみながら答え、ほうっと息を吐いた。相手を侮ったわけではないのだが、そこまで緊張感を持たずに話せそうな相手だと安心して零れた吐息だった。心なしか、柏木からも見て分かるように表情は和らいでいる。
【柏木 愛】
「まにょ……さん」
（口にすると思わず吹き出してしまいそうな擬音である。極めて常識的な人間に見える彼が何故にそのような偽名を選んだのか、気になるところであった）
「す、すいません、これ癖で……つい言っちゃうんです、すいません。
あ、俺、船の中調べてみたかったんですよ。ほら、「鍵」があるかもしれないじゃないですか。良かったら一緒にどうです？あ、嫌だったらすみません、はい」
【まにょ】
笑いを堪えるように動いたような柏木の口元を見て小さく笑う。この名前の効力はだいぶ強いようだった。
船の中と言う提案を聞いて、そういえば先日乗ってはみたが中を詳しく調べては居なかったなと思い返す。船の動力が稼動しないかだけは確認する為に調査したものの、目的ありきの調べ物は他の目的に関する見落としをしやすい。柏木の提案に異論はなかった。
「そうでしたか。では余り気にしないように心がけます。あぁ…噂の`鍵`ですね。是非ご一緒させてください」
快諾の返事をすると頷いて、船の方を見た。今は自分たち以外は誰も居ないようで、海が凪いでいるからか揺れも少ない。自分はこの間乗ってみて平気だったが、もし柏木に船酔いがあっても先日のマリアほど酷くはならないだろう。
【柏木 愛】
「あ、はい！ぜひお願いしますです、はい。あの、大丈夫ですか？落ちないでくださいね」
（やはりぺこぺこしながら、乗船する所へと足を運ぶ。
船に乗り込むまでの間、どうにも柏木は彼が心配であった。なんというか、今にも風に吹かれて海に転落しそうな……そして一度転落したら二度とはがって来れなそうな……そんなレベルの虚弱さを、彼の動作から感じ取っていたのかもしれない。
その船は、搭乗員五、六人程度の漁船であった。ということにした。調べるべき場所は限られており、さして時間もかからないだろう）
「あっ、もう気持ち悪い」
（彼もそういう体質なのだった）
【まにょ】
「あぁ………。あまり無理をなさらずに…限界でしたら先に下りてくださっても大丈夫ですからね」
船に乗った柏木のリアクションに途方にくれたような声が思わず出てきた。先ほど心配されたばかりの相手を心配することになろうとは。
取り合えず吐き気が酷くないようなら、自主的なリタイアを待つことにして自分も船に乗り込んだ。特に揺れているわけでもない船には難なく乗り込むことが出来た。船内は静かで荒らされた様子もなく、誰かが調べた風でもない。時折柏木の様子を見つつ、船内を調べ始めた。
【柏木 愛】
「いや、大丈夫です。流石に動いてない船で吐いたりはしません」
（若干青い顔でそう告げると、彼も調査を始める。彼は重箱の隅を楊枝でつつくように、小さな所から隈なく探索をしていた。
たまたまそれが功を奏したのか、緊急用の浮き輪の下に、何かを見つけたようだ。まにょの方に声をかける）
「まにょさん、なんか書かれてますよここに」
【まにょ】
物を見つけたわけではなく、何かが書かれていた、と言う声に顔を上げた。船内に落書き、ここの参加者が何かのメッセージを書き付けていたのだろうか。いや、そういうわけではないだろう。特定の相手に送るつもりなら初めからタブレットのチャットを使っているだろうし、全員に発信するにも共有チャットを使えば良い。チャットログの監視を避けて伝えたいことがあったのか？それも恐らくはないだろう。人の姿を一からまるきり変えてしまうような不思議な力を持った相手が、そんな子供だましのようなことに気づかないわけがない。
一先ず、それを読んでみるために近づいて後ろから覗き込む。
「……これは…悪戯書きでは、ないとは思いますが…」
まるで血文字を思わせるような文字列に嫌な気配を感じつつ、文章を記録しておこうと端末のカメラで撮影しておいた。後で見せるにも、チャットで知らせるにも、実際に書かれているものを見せたほうが何かの手がかりだったら分かりやすい。
「誰が誰へ、何の為に書いたのでしょうか…。どこを示しているのかもわかりませんし…」
きちんと撮影しているかどうかを確認して端末をしまうと、柏木に疑問を呈した。
【柏木 愛】
「うーん、誰かの悪戯ならそれはそれとして……もしこれがゲームマスターからのメッセージなら
……なんでしょう。人質？探して見つけろ、ということなんでしょうか？ちょっとよくわかりませんね……」
(これまで色々な人に会ってきたが、その中に、そういった人がいたということなのだろうか？
微かな胸騒ぎを覚える中、アナウンスが空に響いた)
「……え？」
(海月。何度か聞いた死亡アナウンスではあるが、今、よく知ってる人物の名前が呼ばれた気がした)
【まにょ】
覚えのない誰かの訃報に眉が下がる。ここに来てからこういうアナウンスが数回流れたが、自分のあずかり知らぬところで人が死ぬと言う、現代ではさして珍しくもない現象には未だ慣れる心地がしない。次はお前だ、次はお前だと囁かれるようで……。
「……また、どなたかがお亡くなりになったのですね」
自分とは違って、愕然としているような、驚きの表情を浮かべている柏木は今の訃報の人物に面識があるのだろう。その死に驚き、信じがたいと言うような表情を浮かべる程度には親しい間柄なのかもしれない。人事とも思い切れない靄が胸中に広がり、何ともいえない表情で柏木を見詰めた。
【柏木 愛】
「あ、あは……嘘ですよ、彼女が死ぬなんて、そんな……」
（震える手でコロパッドを確認する。参加者一覧に表示される、23番目の名前の横には……【DEAD END】の文字が、確かにあった）
「……。ト、トロンパさんは……死んだと思ったけど、生きてました！きっと海月さんも牡羊座で、これはただの偽装……ねぇ、そうですよね？そう思いません？」
（縋るような目つきで、まにょを見つめる。彼にそのような問いかけをしたところで、得られるものなど何もないのに）
【まにょ】
肯定してほしいと言う眼差しだった。それをするのはあまりにも容易いし、したことで崩れるかもしれないことを危惧するほどの関係性は目の前の人物とはなかった。即席の安心感を売って彼が満足するならそうしたって全く構わない。ただ、一過性の痛み止め程度の効果しかない言葉だ。エンジンは絶対直せないのに、直せるかもしれないという希望を持たせるのと同じで、落とす為に上げると言っても過言ではないだろう。
それでも、欲しいのだろうか。
「………」
暫し、黙考した。自分が、この瞬間だけの都合の良い人間になるべきか否かを。
「……自分の死を偽るというのは、その人が自分を`死んだことにしたい`からです。少なくとも、それを知らされていない人物には。もしも貴方の言うとおり、その方が牡羊座であり死を偽っているのなら、目的が成されるまでは貴方がその方の生を確信するのは難しいと思います」
希望は、ゼロではない。
「ただ、死を確信する方法はあるかもしれません。その方の死を目撃した人物を探してみるといいでしょう。…どちらの可能性も否定はしません」
同等の絶望も、ありのままに示す。
「何を信じたいか、何を知りたいか、それは貴方自身が決めるべきことです。さぁ、深呼吸をして…心をしっかり持たなければ、この環境では生きる気力を持ち続けられないのですから」
そっと彼の両肩に手を添えた。ちゃんとここに感覚を取り戻すように、余り強くない握力でぐっとしっかり掴んだ。他人の心を自分が決めることは出来ない。曖昧な答えで、それが一番無責任なのかもしれないが、こんな場所で自我を失ったらきっと一人でしっかりたつことはできないだろう。今の自分が高尚にそれを説ける立場にいるか自信はないが、自分にとって彼女がそうであったように、自分があろうとすることは出来る。
【柏木 愛】
「……っ……！」
彼の眼差しと言葉は、心にずぶりと、深くのめり込むようだった。流れるような透き通った声と、何かを訴えようとする意志がまざまざと伝わる目。
誰かの言葉はだいたい３秒後には忘れる柏木も、その言葉は心に響かせざるを得なかった。
「……ありがとう、ございます。俺、ちゃんとするって、決めたばっかりなのに……もう、壊れてしまいそうになるなんて、やっぱ、ダメですね、すいません……。
でも、まにょさんのお陰で、なんか、分かった気がします。
俺、彼女の死の真相を、突き止めます。その結果、死が偽装だったなら、笑い飛ばせばいいです。
もし、本当に死んでて、しかも殺されたんだとしたら……誰に、どうして殺されたのか、知る必要があると思います。誰かが知らなきゃ、いけないと思います。
それが俺である必要はありませんが、俺であってもいいはずです」
（身体と目の震えは止まっていた）
【まにょ】
まっすぐと、彼の中に一本の芯が通ったような気がした。ほっとして微笑み、一つ頷く。
「それが貴方の知りたいことなら、ご存分に。それが貴方の揺らがぬ信念となるなら、喜ばしいことです。でも決して忘れないでくださいね。…貴方のその気持ちも、考えも、全て命あってのことです」
力を入れていた手を離すとその手で柏木の手を包んだ。こんな場所で、誰かの死の理由を探ると言うことは、張り巡らされた謀略のさ中に手を突っ込むことと同義。それがどんな理由でしたことであれ、邪魔と感じて排除しようとする人間が出てこないとは限らない。寧ろ、藪を突けば蛇が出てもおかしくないのだ。
柏木の手を筒むまにょのそれは、とても温かいとは言いがたかった。肉が薄く、細くて、ふとしたことで折れてしまいそうなほど。その手が祈るようになけなしの力をこめる。
「―――どうか、お気をつけて」
瞼を伏せて囁く。小さな祈りが形を持ったように、か細い声で。
【柏木 愛】
「あぁ……」
（なんて美しい人なんだろう、と、瞑目した相手を見て思う。手を握られると、こちらの顔が少し赤くなり、動悸が高まる。
こ、この気持ちは一体……？握り返したその手は、大きいのに、どこか頼りない。守られたいし、守りたい。そんな印象を与える、不思議な手）
「……ありがとうございます。まにょさんも……どうか、死なないで」
（フレンド登録だけ済ませましょうと、わたわたとコロパッドを取り出した。
彼の顔をずっと見てると、変な気分になっちゃうわ……）
【まにょ】
不意にぎくしゃくとぎこちない動きをしだした柏木に不思議そうな視線を向けつつ、彼の取り出した端末を見てぴんと来た様子で自分も端末を取り出した。フレンド登録ですね？と自信満々な顔で端末を操作しだすと登録画面を表示した。
「ありがとうございます。…ふふ、これでふれんどが四人になりました」
ゲームが開始するまで、開始してからも殆ど人と会っていないせいか、交友関係が狭い状態にある。それが良いか悪いかは状況や相手にもよるだろうが、少なくとも柏木の名前が登録された画面を見るまにょは嬉しそうである。
「何かあったら、連絡してくださいね。相談ぐらいなら私でもお力添えできるので…」
【柏木 愛】
「は、はい……！」
（どうしてこの人は心なしか嬉しそうなんだ？飛んでしまいそうな程華奢な身体で、でも心はしっかりしてて優しくて、そんな彼がなぜこんな可愛い笑顔を浮かべるんだ？ていうか本当にクラスメート？(n回目)
やばい、これ以上ここにいると新しい扉を開いてしまいそうだ。
まにょさんには悪いが、足早に立ち去ることにしよう）
「ええ、ぜひお願いします。まにょさんに相談すれば、なんか、なんでもどうにかなりそうな気がします。それじゃ……！」
心の拠り所に、少しでも良い。こんな場所で誰かにとってそうあれるというのは、誇れることだと思いたい。
【柏木 愛】
「歌って踊ろうハッピーバースデイ……」
〜これまでのあらすじ〜
美少女が周りに多いばかりに好き勝手変態してた柏木くんだが、色々あって真面目に動くことにしました。ちゃんちゃん。
そんなこんなでちょっとでも良いものが見つかればいいなと、船着き場にやってきた。海に来ると、つい海を眺めてしまうのは、きっとあるあるである。ポケットに手を突っ込み、せわしなく体を震わせながら、適当な歌を小さく口ずさむ）
「うーん、結局俺は男……女……どっちで過ごそうかしら……」
（場違いな葛藤を抱えながら、呆然と海を眺める）
【まにょ】
中央エリアの停留所から電車に乗って少し待てば、海に面した船着場のある西のエリアにたどり着く。今日は風が冷たい。雪は降っていないが、朝から澄み切った晴天だから薄荷のようにすっと透くような寒さがあるのだ。
そんな日なら海も遠くまで見えるだろうと思いきや、季節外れの蜃気楼よろしく薄い霧がぼんやりと揺らめいて地平の直線を遮ってしまう。やや残念に思いつつ、全うな手段では出られることは一切ないと僅かながらの希望も抱かせない徹底さには寧ろ助かっている次第だ。生半可に期待を残されるよりは、一喜一憂にエネルギーを裂かずに済む。こんな弱弱しい器に入ってからは顕著に思うのだが、意外と気持ちに体力は振り回される。少し前に流行った言葉だが、時代はエコだ。余計な体力を使わないように省エネモードでゆるりと振舞っていないとやっていられない。
心地良い風に吹かれながら、少し散歩したら帰ろうと思い海のほうへ近づいていく。船着場とあって浜辺とはまた違った硬質な雰囲気がある海辺には冬が良く似合っていた。人っ子一人居ないと思えば、立ち居地のせいか建物の影で見えなかったがぽつりと佇む人が居る。ここは動かない船着場、働くNPCのような人間が居るはずはない。となれば参加者のひとりで間違いないだろう。
声をかけるか少し悩んだものの、ここ数日余り積極的に動けては居ない。彼女は精力的に出かけているのに、自分だけ引きこもっていては仕方がないのではないだろうか。
―――少し勇気を出せば、何か、彼女の役に立てるかもしれません。
そんな考えが鎌首を擡げて、怯みかけた自分の心を鼓舞した。ゆっくりと近づいていき控えめに声をかける。
「あの…こんにちは。貴女も海を見にいらっしゃったのですか？」
何か考え込んでいるらしい柏木の呟きこそ聞こえなかったものの、海を見詰めていたから自分と同じ用事でここに来たのだろうか。そう思いつつ、胸元に手を当て、反応を窺うように視線を向けている。
【柏木 愛】
「あ……。いえ、海を見に来たわけじゃないです、はい、すいません。
ただやることが無かったので、海でも見に……あ、これじゃあ海を見に来ちゃってますね、すいません。
えっと、暇だっただけです、すみません」
（声を掛けられ、彼の方に首を向ける。デカイ、というのが第一印象であった。それにしては細く、病弱な印象を受ける。仮の身体というのは、本当にバラバラなのだなと、改めて実感した。
ペコペコと首だけのお辞儀を繰り返しながら、質問に答える。
彼は初対面の人間と話すとき、だいたいこんな感じである）
「あ、すいません俺、柏木愛です、はい、すいません」
【まにょ】
すいませんカウンターがこの世にあるのなら、彼女―――いや、彼かもしれない。器で性別を偽らないタイプも居ないとはいえないのだから―――との会話では数分は成すだけで優に100カウント獲得を狙えるだろう。そう豪語されても仕方ない程度に会話に謝罪文が挟まれていた。
謎の謝り倒しな反応に、自分は何か相手に失礼なことでもされていただろうか？と不安になってしまうものの、そのことできょとんとするのも数秒のことだ。すぐににこりと微笑んだ。
「私はまにょと申します。…そんなに謝らなくても、大丈夫です。寧ろこの状況で意欲的な人だったら、もう少し緊張してしまうところでした」
はにかみながら答え、ほうっと息を吐いた。相手を侮ったわけではないのだが、そこまで緊張感を持たずに話せそうな相手だと安心して零れた吐息だった。心なしか、柏木からも見て分かるように表情は和らいでいる。
【柏木 愛】
「まにょ……さん」
（口にすると思わず吹き出してしまいそうな擬音である。極めて常識的な人間に見える彼が何故にそのような偽名を選んだのか、気になるところであった）
「す、すいません、これ癖で……つい言っちゃうんです、すいません。
あ、俺、船の中調べてみたかったんですよ。ほら、「鍵」があるかもしれないじゃないですか。良かったら一緒にどうです？あ、嫌だったらすみません、はい」
【まにょ】
笑いを堪えるように動いたような柏木の口元を見て小さく笑う。この名前の効力はだいぶ強いようだった。
船の中と言う提案を聞いて、そういえば先日乗ってはみたが中を詳しく調べては居なかったなと思い返す。船の動力が稼動しないかだけは確認する為に調査したものの、目的ありきの調べ物は他の目的に関する見落としをしやすい。柏木の提案に異論はなかった。
「そうでしたか。では余り気にしないように心がけます。あぁ…噂の`鍵`ですね。是非ご一緒させてください」
快諾の返事をすると頷いて、船の方を見た。今は自分たち以外は誰も居ないようで、海が凪いでいるからか揺れも少ない。自分はこの間乗ってみて平気だったが、もし柏木に船酔いがあっても先日のマリアほど酷くはならないだろう。
【柏木 愛】
「あ、はい！ぜひお願いしますです、はい。あの、大丈夫ですか？落ちないでくださいね」
（やはりぺこぺこしながら、乗船する所へと足を運ぶ。
船に乗り込むまでの間、どうにも柏木は彼が心配であった。なんというか、今にも風に吹かれて海に転落しそうな……そして一度転落したら二度とはがって来れなそうな……そんなレベルの虚弱さを、彼の動作から感じ取っていたのかもしれない。
その船は、搭乗員五、六人程度の漁船であった。ということにした。調べるべき場所は限られており、さして時間もかからないだろう）
「あっ、もう気持ち悪い」
（彼もそういう体質なのだった）
【まにょ】
「あぁ………。あまり無理をなさらずに…限界でしたら先に下りてくださっても大丈夫ですからね」
船に乗った柏木のリアクションに途方にくれたような声が思わず出てきた。先ほど心配されたばかりの相手を心配することになろうとは。
取り合えず吐き気が酷くないようなら、自主的なリタイアを待つことにして自分も船に乗り込んだ。特に揺れているわけでもない船には難なく乗り込むことが出来た。船内は静かで荒らされた様子もなく、誰かが調べた風でもない。時折柏木の様子を見つつ、船内を調べ始めた。
【柏木 愛】
「いや、大丈夫です。流石に動いてない船で吐いたりはしません」
（若干青い顔でそう告げると、彼も調査を始める。彼は重箱の隅を楊枝でつつくように、小さな所から隈なく探索をしていた。
たまたまそれが功を奏したのか、緊急用の浮き輪の下に、何かを見つけたようだ。まにょの方に声をかける）
「まにょさん、なんか書かれてますよここに」
【まにょ】
物を見つけたわけではなく、何かが書かれていた、と言う声に顔を上げた。船内に落書き、ここの参加者が何かのメッセージを書き付けていたのだろうか。いや、そういうわけではないだろう。特定の相手に送るつもりなら初めからタブレットのチャットを使っているだろうし、全員に発信するにも共有チャットを使えば良い。チャットログの監視を避けて伝えたいことがあったのか？それも恐らくはないだろう。人の姿を一からまるきり変えてしまうような不思議な力を持った相手が、そんな子供だましのようなことに気づかないわけがない。
一先ず、それを読んでみるために近づいて後ろから覗き込む。
「……これは…悪戯書きでは、ないとは思いますが…」
まるで血文字を思わせるような文字列に嫌な気配を感じつつ、文章を記録しておこうと端末のカメラで撮影しておいた。後で見せるにも、チャットで知らせるにも、実際に書かれているものを見せたほうが何かの手がかりだったら分かりやすい。
「誰が誰へ、何の為に書いたのでしょうか…。どこを示しているのかもわかりませんし…」
きちんと撮影しているかどうかを確認して端末をしまうと、柏木に疑問を呈した。
【柏木 愛】
「うーん、誰かの悪戯ならそれはそれとして……もしこれがゲームマスターからのメッセージなら
……なんでしょう。人質？探して見つけろ、ということなんでしょうか？ちょっとよくわかりませんね……」
(これまで色々な人に会ってきたが、その中に、そういった人がいたということなのだろうか？
微かな胸騒ぎを覚える中、アナウンスが空に響いた)
「……え？」
(海月。何度か聞いた死亡アナウンスではあるが、今、よく知ってる人物の名前が呼ばれた気がした)
【まにょ】
覚えのない誰かの訃報に眉が下がる。ここに来てからこういうアナウンスが数回流れたが、自分のあずかり知らぬところで人が死ぬと言う、現代ではさして珍しくもない現象には未だ慣れる心地がしない。次はお前だ、次はお前だと囁かれるようで……。
「……また、どなたかがお亡くなりになったのですね」
自分とは違って、愕然としているような、驚きの表情を浮かべている柏木は今の訃報の人物に面識があるのだろう。その死に驚き、信じがたいと言うような表情を浮かべる程度には親しい間柄なのかもしれない。人事とも思い切れない靄が胸中に広がり、何ともいえない表情で柏木を見詰めた。
【柏木 愛】
「あ、あは……嘘ですよ、彼女が死ぬなんて、そんな……」
（震える手でコロパッドを確認する。参加者一覧に表示される、23番目の名前の横には……【DEAD END】の文字が、確かにあった）
「……。ト、トロンパさんは……死んだと思ったけど、生きてました！きっと海月さんも牡羊座で、これはただの偽装……ねぇ、そうですよね？そう思いません？」
（縋るような目つきで、まにょを見つめる。彼にそのような問いかけをしたところで、得られるものなど何もないのに）
【まにょ】
肯定してほしいと言う眼差しだった。それをするのはあまりにも容易いし、したことで崩れるかもしれないことを危惧するほどの関係性は目の前の人物とはなかった。即席の安心感を売って彼が満足するならそうしたって全く構わない。ただ、一過性の痛み止め程度の効果しかない言葉だ。エンジンは絶対直せないのに、直せるかもしれないという希望を持たせるのと同じで、落とす為に上げると言っても過言ではないだろう。
それでも、欲しいのだろうか。
「………」
暫し、黙考した。自分が、この瞬間だけの都合の良い人間になるべきか否かを。
「……自分の死を偽るというのは、その人が自分を`死んだことにしたい`からです。少なくとも、それを知らされていない人物には。もしも貴方の言うとおり、その方が牡羊座であり死を偽っているのなら、目的が成されるまでは貴方がその方の生を確信するのは難しいと思います」
希望は、ゼロではない。
「ただ、死を確信する方法はあるかもしれません。その方の死を目撃した人物を探してみるといいでしょう。…どちらの可能性も否定はしません」
同等の絶望も、ありのままに示す。
「何を信じたいか、何を知りたいか、それは貴方自身が決めるべきことです。さぁ、深呼吸をして…心をしっかり持たなければ、この環境では生きる気力を持ち続けられないのですから」
そっと彼の両肩に手を添えた。ちゃんとここに感覚を取り戻すように、余り強くない握力でぐっとしっかり掴んだ。他人の心を自分が決めることは出来ない。曖昧な答えで、それが一番無責任なのかもしれないが、こんな場所で自我を失ったらきっと一人でしっかりたつことはできないだろう。今の自分が高尚にそれを説ける立場にいるか自信はないが、自分にとって彼女がそうであったように、自分があろうとすることは出来る。
【柏木 愛】
「……っ……！」
彼の眼差しと言葉は、心にずぶりと、深くのめり込むようだった。流れるような透き通った声と、何かを訴えようとする意志がまざまざと伝わる目。
誰かの言葉はだいたい３秒後には忘れる柏木も、その言葉は心に響かせざるを得なかった。
「……ありがとう、ございます。俺、ちゃんとするって、決めたばっかりなのに……もう、壊れてしまいそうになるなんて、やっぱ、ダメですね、すいません……。
でも、まにょさんのお陰で、なんか、分かった気がします。
俺、彼女の死の真相を、突き止めます。その結果、死が偽装だったなら、笑い飛ばせばいいです。
もし、本当に死んでて、しかも殺されたんだとしたら……誰に、どうして殺されたのか、知る必要があると思います。誰かが知らなきゃ、いけないと思います。
それが俺である必要はありませんが、俺であってもいいはずです」
（身体と目の震えは止まっていた）
【まにょ】
まっすぐと、彼の中に一本の芯が通ったような気がした。ほっとして微笑み、一つ頷く。
「それが貴方の知りたいことなら、ご存分に。それが貴方の揺らがぬ信念となるなら、喜ばしいことです。でも決して忘れないでくださいね。…貴方のその気持ちも、考えも、全て命あってのことです」
力を入れていた手を離すとその手で柏木の手を包んだ。こんな場所で、誰かの死の理由を探ると言うことは、張り巡らされた謀略のさ中に手を突っ込むことと同義。それがどんな理由でしたことであれ、邪魔と感じて排除しようとする人間が出てこないとは限らない。寧ろ、藪を突けば蛇が出てもおかしくないのだ。
柏木の手を筒むまにょのそれは、とても温かいとは言いがたかった。肉が薄く、細くて、ふとしたことで折れてしまいそうなほど。その手が祈るようになけなしの力をこめる。
「―――どうか、お気をつけて」
瞼を伏せて囁く。小さな祈りが形を持ったように、か細い声で。
【柏木 愛】
「あぁ……」
（なんて美しい人なんだろう、と、瞑目した相手を見て思う。手を握られると、こちらの顔が少し赤くなり、動悸が高まる。
こ、この気持ちは一体……？握り返したその手は、大きいのに、どこか頼りない。守られたいし、守りたい。そんな印象を与える、不思議な手）
「……ありがとうございます。まにょさんも……どうか、死なないで」
（フレンド登録だけ済ませましょうと、わたわたとコロパッドを取り出した。
彼の顔をずっと見てると、変な気分になっちゃうわ……）
【まにょ】
不意にぎくしゃくとぎこちない動きをしだした柏木に不思議そうな視線を向けつつ、彼の取り出した端末を見てぴんと来た様子で自分も端末を取り出した。フレンド登録ですね？と自信満々な顔で端末を操作しだすと登録画面を表示した。
「ありがとうございます。…ふふ、これでふれんどが四人になりました」
ゲームが開始するまで、開始してからも殆ど人と会っていないせいか、交友関係が狭い状態にある。それが良いか悪いかは状況や相手にもよるだろうが、少なくとも柏木の名前が登録された画面を見るまにょは嬉しそうである。
「何かあったら、連絡してくださいね。相談ぐらいなら私でもお力添えできるので…」
【柏木 愛】
「は、はい……！」
（どうしてこの人は心なしか嬉しそうなんだ？飛んでしまいそうな程華奢な身体で、でも心はしっかりしてて優しくて、そんな彼がなぜこんな可愛い笑顔を浮かべるんだ？ていうか本当にクラスメート？(n回目)
やばい、これ以上ここにいると新しい扉を開いてしまいそうだ。
まにょさんには悪いが、足早に立ち去ることにしよう）
「ええ、ぜひお願いします。まにょさんに相談すれば、なんか、なんでもどうにかなりそうな気がします。それじゃ……！」
心の拠り所に、少しでも良い。こんな場所で誰かにとってそうあれるというのは、誇れることだと思いたい。
軽いピクニックの事例 3rd-14th
五番目の道化師(3rd)-聖☆ビキニマン(14th)
【五番目の道化師】
東エリアの公園で道化師はレジャーシートを広げて、一人お弁当タイムをしていた。どうせ誰か誘ってもこの状況じゃ誰も来ないだろうし。一人で黙々と自分で作ったお弁当を食べていた。
(量、作りすぎましたねー)
呑気である。
クラスメイトが死んでるのに、この隙だらけの道化師はのほほんとあたたかいコーンスープを飲んで癒されている。今なら殺されても文句はいえないだろう。←
【聖☆ビキニマン】
「美味そうじゃあないか。お前が作ったのか？」
話しかける巨漢の手には骨付きチキン。
ヒョイパクッと一口で平らげると、丁寧にタオルで手を拭いて。
「ピクニックか。良い趣味だと思うぞ。…こんな時じゃなかったらな。」
【五番目の道化師】
「ひゃわ！？」
えっ、誰このバサクレス！？
ビクリッと体を震わせ、(骨付きチキンを一口で平らげたのをみて)警戒する。
「お弁当箱、食べないで！！」
バッ、とお弁当(箱)を庇うようにバサクレスから遠ざける。さすがにお弁当箱ごとは食べないと思うが…目の前の巨体をみたらお弁当箱なんて骨付きチキンと同じように食べられてしまうのでは？と、思ったらしい。
正直、どんな発想だ！と、中の人がツッコミをしてしまうくらいお馬鹿な発想である。
【聖☆ビキニマン】
「いや、そうはならんやろ」
思わず素面で突っ込む。
いや、そうはならんやろ。
「あー……いや、食べはせんよ。ただ、よくぞそこまで作ったものだと感心しただけである。」
【五番目の道化師】
「え…っ、あ、やだ…」
ピエロメイクをしていなったら、勘違いによる恥ずかしさによって顔が赤くなっていたのがハッキリとわかっていただろう。
「は、はい…せっかくピクニックに来るなら手の込んだものを持ってこようかと思いまして…」
いや、ホント恥ずかしい。顔を仰ぎたいくらい恥ずかしいわ。可笑しいな、数時間前に飲んだアルコールでも残って───るわけないよね。
【聖☆ビキニマン】
「……まァ、いいさ。この手のトラブルには慣れてるものでな。今更驚きはせん。」
ため息を吐くも、気にしてる風ではなく。
「というか汝、探索などはしなくて良いのか？」
【五番目の道化師】
「探索、ですか。一応してましたけど…殆どの場所が既に捜索した後でして…唯一見つけたヒントも眼鏡を持つ人が見つからなければ意味ありませんし…見つかりませんし…」
共通チャットでその事に関する情報が流れていた気がするが…チャットが大荒れしていたこともあって見ていないらしい。
「なんか、ゲームが始まった途端みんな豹変したように雰囲気変わってるし…」
そりゃ、ゲームという名の人殺しが始まればみんな変わるだろ。道化師はやっぱり、(理解はしているが)その場の雰囲気についていけてないらしい。
【聖☆ビキニマン】
「失礼。俺はあんたを責めたつもりは毛頭ないのだ。……見つからないならそれで良いし、見つかったならそれは僥倖。」
優しげな目で、相手を見下ろし。
「雰囲気が変わるのも仕方あるまい。……殺される恐怖、共感は出来んが理解はできる。」
【五番目の道化師】
(一部は<恐怖におびえる>って感じじゃなかったけどね)
むしろ、枷が外れてしまった人間って感じだったし。
道化師は苦笑して、バサクレスを見上げる。
「私も殺されたくはないですからねぇ。バサクレスさんは今のところ『狂気に歪んだ人』を見ましたか？」
堂々とバサクレスと呼ぶ道化師。
だって、名前しらないし、酷似したキャラクターがいるからそっちで呼びたかったのだ。
【聖☆ビキニマン】
「ビキニマン。本名はまあ、チャットに書いてある。……俺は見てないな。というより、居ないだろう。俺はクラスメートたちを信じている。」
とはいえ、根拠はないのだ。
だが、根拠などなくとも、彼は堂々と言ってのける。
「俺のクラスメートが、この程度で歪んじまうような奴らな訳がねえ。」
【五番目の道化師】
「よろしくね！バサクレス！」
偽名を呼ぶつもりないらしい。
なんだよ、ビキニマンって。やだよそんな名前を呼ぶの。
「そうなんだよねぇ。本来ならいないはずなのに『いた』。何が原因で狂ったのかはわからないけど…」
甘い卵焼きをかじりながら呟く言葉。
自分だってその目で狂気を見なければクラスメイトが人殺しをするはずがないっ！て、否定していたんだけど…間違いなく、あれは人を殺した人の目だった。
「あっ、私は五番目の道化師。ピエロって呼んでくれると助かるよ」
【聖☆ビキニマン】
「……ではピエロ。詳しく聞かせてくれないか？」
……クラスメートを疑うのではなく、“クラスメートでないもの”が紛れてるのを疑う方が確率は高い、と判断する。
でなければ、あの梨なんとかは死なないはずだ。なにか、作為的なものを感じた。中の人だとか、民意だとか、訳のわからない予感が頭を過ぎった。
【五番目の道化師】
「んー…ダメ。だって、バサクレス…ってば『そんな奴、クラスメイトなんかじゃない！』って軽率に処罰しちゃいそうだし」
例え、クラスに工作員が紛れ込んでいようと、事故にあってから洗脳されてしまったにしても…クラスメイトはクラスメイトだ。
「私は言わないよ。」
プイッとそっぽ向く道化師。
もし、自分の言葉でクラスメイトが死んだら…と、考えると言うに言えないのだ。
【聖☆ビキニマン】
「ふむ……ま、無理強いはせんとも。だが、軽率とは心外だな。」
とはいえ、それを正す気もあるわけではない。
「では、フレンド登録はしてくれぬか？」
【五番目の道化師】
「…だって、堅苦しい人って上部だけで断罪すること多いし」
つまり、道化師は『バサクレス=堅苦しい』と感じたらしい。
「…うん、まぁ…フレンド登録くらいなら」
そう言ってコロパットを取り出す。
【聖☆ビキニマン】
「堅苦しいか。はっは。まあ……否定はせんよ。」
フレンド登録を送り。
「……俺を怖がるだとか、信用できないだとか。そう思ってるかもしれない。だが、覚えておいてほしい。お前が助けを求める限り、お前を死なせちゃあしないぜ。」
【五番目の道化師】
「少なくとも、私は怖くないね。それに、バサクレスみたいな人って律儀に約束も守ってくれるし。その点に関しては信頼もしてるよー。」
だけど、守ってくれるかは…信じない。
だって…助けを呼んだところで瞬間移動ができるわけでもない。結局はその呼んだ助けを待つほどの時間がないときの方が多いのだから。
【聖☆ビキニマン】
「……ま、呼べよ。どの道、足掻く道は多い方が良いんだ。」
んん、と背伸びして。
「さあて、そろそろ行くかね。あんたはどうするんだ？」
【五番目の道化師】
「私はこのお弁当を食べた後、また人を探しながら色んな所を転々としますよ」
それ以外にやることないですし。
道化師はタコさんウィンナーを摘まみ
「何かあったら連絡しますね」
【聖☆ビキニマン】
「おう、頼んだわ。」
そして、歩いていき
【五番目の道化師】
東エリアの公園で道化師はレジャーシートを広げて、一人お弁当タイムをしていた。どうせ誰か誘ってもこの状況じゃ誰も来ないだろうし。一人で黙々と自分で作ったお弁当を食べていた。
(量、作りすぎましたねー)
呑気である。
クラスメイトが死んでるのに、この隙だらけの道化師はのほほんとあたたかいコーンスープを飲んで癒されている。今なら殺されても文句はいえないだろう。←
【聖☆ビキニマン】
「美味そうじゃあないか。お前が作ったのか？」
話しかける巨漢の手には骨付きチキン。
ヒョイパクッと一口で平らげると、丁寧にタオルで手を拭いて。
「ピクニックか。良い趣味だと思うぞ。…こんな時じゃなかったらな。」
【五番目の道化師】
「ひゃわ！？」
えっ、誰このバサクレス！？
ビクリッと体を震わせ、(骨付きチキンを一口で平らげたのをみて)警戒する。
「お弁当箱、食べないで！！」
バッ、とお弁当(箱)を庇うようにバサクレスから遠ざける。さすがにお弁当箱ごとは食べないと思うが…目の前の巨体をみたらお弁当箱なんて骨付きチキンと同じように食べられてしまうのでは？と、思ったらしい。
正直、どんな発想だ！と、中の人がツッコミをしてしまうくらいお馬鹿な発想である。
【聖☆ビキニマン】
「いや、そうはならんやろ」
思わず素面で突っ込む。
いや、そうはならんやろ。
「あー……いや、食べはせんよ。ただ、よくぞそこまで作ったものだと感心しただけである。」
【五番目の道化師】
「え…っ、あ、やだ…」
ピエロメイクをしていなったら、勘違いによる恥ずかしさによって顔が赤くなっていたのがハッキリとわかっていただろう。
「は、はい…せっかくピクニックに来るなら手の込んだものを持ってこようかと思いまして…」
いや、ホント恥ずかしい。顔を仰ぎたいくらい恥ずかしいわ。可笑しいな、数時間前に飲んだアルコールでも残って───るわけないよね。
【聖☆ビキニマン】
「……まァ、いいさ。この手のトラブルには慣れてるものでな。今更驚きはせん。」
ため息を吐くも、気にしてる風ではなく。
「というか汝、探索などはしなくて良いのか？」
【五番目の道化師】
「探索、ですか。一応してましたけど…殆どの場所が既に捜索した後でして…唯一見つけたヒントも眼鏡を持つ人が見つからなければ意味ありませんし…見つかりませんし…」
共通チャットでその事に関する情報が流れていた気がするが…チャットが大荒れしていたこともあって見ていないらしい。
「なんか、ゲームが始まった途端みんな豹変したように雰囲気変わってるし…」
そりゃ、ゲームという名の人殺しが始まればみんな変わるだろ。道化師はやっぱり、(理解はしているが)その場の雰囲気についていけてないらしい。
【聖☆ビキニマン】
「失礼。俺はあんたを責めたつもりは毛頭ないのだ。……見つからないならそれで良いし、見つかったならそれは僥倖。」
優しげな目で、相手を見下ろし。
「雰囲気が変わるのも仕方あるまい。……殺される恐怖、共感は出来んが理解はできる。」
【五番目の道化師】
(一部は<恐怖におびえる>って感じじゃなかったけどね)
むしろ、枷が外れてしまった人間って感じだったし。
道化師は苦笑して、バサクレスを見上げる。
「私も殺されたくはないですからねぇ。バサクレスさんは今のところ『狂気に歪んだ人』を見ましたか？」
堂々とバサクレスと呼ぶ道化師。
だって、名前しらないし、酷似したキャラクターがいるからそっちで呼びたかったのだ。
【聖☆ビキニマン】
「ビキニマン。本名はまあ、チャットに書いてある。……俺は見てないな。というより、居ないだろう。俺はクラスメートたちを信じている。」
とはいえ、根拠はないのだ。
だが、根拠などなくとも、彼は堂々と言ってのける。
「俺のクラスメートが、この程度で歪んじまうような奴らな訳がねえ。」
【五番目の道化師】
「よろしくね！バサクレス！」
偽名を呼ぶつもりないらしい。
なんだよ、ビキニマンって。やだよそんな名前を呼ぶの。
「そうなんだよねぇ。本来ならいないはずなのに『いた』。何が原因で狂ったのかはわからないけど…」
甘い卵焼きをかじりながら呟く言葉。
自分だってその目で狂気を見なければクラスメイトが人殺しをするはずがないっ！て、否定していたんだけど…間違いなく、あれは人を殺した人の目だった。
「あっ、私は五番目の道化師。ピエロって呼んでくれると助かるよ」
【聖☆ビキニマン】
「……ではピエロ。詳しく聞かせてくれないか？」
……クラスメートを疑うのではなく、“クラスメートでないもの”が紛れてるのを疑う方が確率は高い、と判断する。
でなければ、あの梨なんとかは死なないはずだ。なにか、作為的なものを感じた。中の人だとか、民意だとか、訳のわからない予感が頭を過ぎった。
【五番目の道化師】
「んー…ダメ。だって、バサクレス…ってば『そんな奴、クラスメイトなんかじゃない！』って軽率に処罰しちゃいそうだし」
例え、クラスに工作員が紛れ込んでいようと、事故にあってから洗脳されてしまったにしても…クラスメイトはクラスメイトだ。
「私は言わないよ。」
プイッとそっぽ向く道化師。
もし、自分の言葉でクラスメイトが死んだら…と、考えると言うに言えないのだ。
【聖☆ビキニマン】
「ふむ……ま、無理強いはせんとも。だが、軽率とは心外だな。」
とはいえ、それを正す気もあるわけではない。
「では、フレンド登録はしてくれぬか？」
【五番目の道化師】
「…だって、堅苦しい人って上部だけで断罪すること多いし」
つまり、道化師は『バサクレス=堅苦しい』と感じたらしい。
「…うん、まぁ…フレンド登録くらいなら」
そう言ってコロパットを取り出す。
【聖☆ビキニマン】
「堅苦しいか。はっは。まあ……否定はせんよ。」
フレンド登録を送り。
「……俺を怖がるだとか、信用できないだとか。そう思ってるかもしれない。だが、覚えておいてほしい。お前が助けを求める限り、お前を死なせちゃあしないぜ。」
【五番目の道化師】
「少なくとも、私は怖くないね。それに、バサクレスみたいな人って律儀に約束も守ってくれるし。その点に関しては信頼もしてるよー。」
だけど、守ってくれるかは…信じない。
だって…助けを呼んだところで瞬間移動ができるわけでもない。結局はその呼んだ助けを待つほどの時間がないときの方が多いのだから。
【聖☆ビキニマン】
「……ま、呼べよ。どの道、足掻く道は多い方が良いんだ。」
んん、と背伸びして。
「さあて、そろそろ行くかね。あんたはどうするんだ？」
【五番目の道化師】
「私はこのお弁当を食べた後、また人を探しながら色んな所を転々としますよ」
それ以外にやることないですし。
道化師はタコさんウィンナーを摘まみ
「何かあったら連絡しますね」
【聖☆ビキニマン】
「おう、頼んだわ。」
そして、歩いていき
戦車を王妃へ 6th-9th
臨海 凪乃(6th)-マリア(9th)
【臨海 凪乃】
ルーレット、ポーカー、スロット
SCTの内部はラスベガスのカジノのように花々としていた
同じ場所で 何者かが死んだというのに
ブラックジャック
AA
「スプリット」
AA
「スプリット」
AA
「スプリット4ハンド…… あなたはBUST また私の勝利ね」
総額12億ディーラーから巻き上げる。
まぁ、ここでのお金なんて何の価値もないのだけど
「23rdが死んだ……のね……
手札が減ってしまった……本当に、腸がにえくりかえるわ」
カードを机に叩きつける。
【マリア】
『大体の場合…カードゲームっていうのは、さ。』
袖の中に入れていたトランプを手元に握り、風を切る音と共に、私は手札を握る。
役はフルハウス。
ババ抜きとか、カードゲームとかでやる、あのカードを並べて持つやり方だ。
別に、なんの種もない。
さっき、カードをこっそり拾い、仕込み、また出しただけである。
三文芝居だ。
『手札に――――……替えがきくのが良い所よね。』
分かっているふりをする。
それが、私である。
何故なら。
概ね私は嘘つきで、偽物で。
ついでに。
贋物でもあるのだから。
如何に真実めいていても信じるな。私は嘘で出来ている。
人体の七割が水なら。
心の十割が嘘だ。
というのも、嘘かもしれないぜ。
【臨海 凪乃】
「駆け引きは得意そう……そんな感じがするわね」
声の主の方に向き直る。
「先に……名乗っておくわ。
6th 臨海よ。
あなた、共有チャットで見たことがあるわね。
Azothを嗅ぎまわってる人間がいるとか……
そんなあなたがここに何か用？」
今まで出会ったどんな人間よりも……。
盤面を動かす力がある 気がする。
【マリア】
「…………」
この外装に何の驚きもなく
自分のターンと言わんばかりに話をする
いつか来ると思ってた こういうタイプは。
『私は徹頭徹尾最初から最後まで、駆け引きなんてしてないぜ。全て手の内よ。』
無論嘘である。
単純な物見遊山の最中、先程のような声が聞こえて。
動かず座したまま、人が死ぬことで手札が消えたとなるのは、恐らくは、というか、少なくとも。
私のようなイレギュラーではないなら、まあ、単純な話。
役職位はあるだろうと推察出来なくはない。セレスティアの場合は、死活問題だからあんな程度では済まないだろう。
よって目当ての人間と思われる。
運である。
偶然である。
茶番である。
だが、私は。全てブラフのまま、語り続ける。
『何が用って…そりゃあ、貴方が1番分かるんじゃない？
アゾートを捜しまわっている奴が、こんな場所まで足を運んだんだとしたら、さ。』
お前がアゾートだろう？
とも。
殺しに来たんだぜ？
とも。
相手の役職次第でどうにでも取れるように、私は問う。
当たりか、ハズレか。
博打は嫌いではない。
【臨海 凪乃】
「…………へぇ」
ﾊﾟｷﾘｯ と 咥えていたココアシガレットを噛んでへし折る
飛び回るナイトでもないし
不意打ちができるビショップでもない
今のところ……重厚なルークで見ておくか
「さぁ、私はあなたと面識がないし……
あなたが誰かもわからないわね……」
私からすれば初対面な人間だ……が
１つ気になる点がある
17thを揺さぶった後の共有チャット
「で、仮に私を殺しに来たなら……
殺して御覧なさい。 自分の欲のために
それ以外の用事なら、帰ってくれていいわよ」
お出口はあちらですよと手を向ける
手を組もう
そんな事は考えてないんだと推測して
【マリア】
『見たことがあるんじゃなかったのかしらね。』
立ち話は、実は私が一番嫌うところだ。これに関しては、実は大概話す時何かに体を預けているというどうでもいい伏線がある。
遡ろうとした諸君。
君達は、多分私が独白のときに座っているのと、おねぇの彼に撓垂れ掛かりながら話しているので『お？』と微笑するかも知れないが、それ以前にそんな伏線はないのでそこまでで辞めるが吉だ。
要らないことを言ってしまった。
本題は。
問題は。
私が腰をどっかり据えて、帰り道を示すのを無視した事である。
勝手に、ディーラーにあたる向かいの席につき。机に足を載せ、スーツの襟を正し。髪をかきあげ。
私はゾーンという奴に入る。
『第一、何故最初から殺す殺さないなのかしら。下らない。
私が貴方を殺しに来たなら、タワーごと、とは言わなくても。
声が聞こえたそばから、部屋ごと燃やしていたわよ。』
下らない。
つまり、殺す気は、無い。
だから。要するに。
『まあ、簡単な話が。
手札を貴方が持ちたい理由を聞きたいのよね……。
貴方が仮に、善良なる生徒諸君の敵なら。というか、アゾートなんだとしたら、私は―――――――
組んでみたいんだけれど。』
ルークは。
クイーンになり得る。
【臨海 凪乃】
……ターンを相手にとられるなんていつ以来かしら
ひたすら自分がパスせざるを得ない状況に見える
7並べで6のカードをせき止められているような感覚だ
どうしてかしらね……
カモられる気がするのよ。
いままでカモにしてきた人間が、そう思うの
「……Azothと組む……ねぇ
その発言が出るってことは……Azothじゃなさそうだけど
組んでどうしたいの？」
撫子やエムには逆に吹っかけてきた臨海だが
逆に逆手に来ると少し困ってしまう。
いや、それ以上に
「Azothは自分がAzothだと証明できるものがないわ
私がAzothだとして……信じられる？」
【マリア】
『ギャンブラーの誤謬ってご存知かしら？』
流れを断ち切り、私は口を開く。
何も、相手の場が揃うのをなんて、待たなくても良いのである。
だから。
切り取る。
切除する。
そして、次のセリフを話そうとした時、アナウンスを聞き。
私は、口角を吊り上げる。
そう。
手札は――――――揃った。
『さっき赤だったから、黒だ。
みたいな誤解のことよ。
均一な可能性を無視して、パニックに陥る。まあ、陥らなくても、必勝法はないんだけれども。
けれど――――――
対処法はあるわよ。
賭けたい方に賭ける。
それがYesかNoかじゃない。
ギャンブラーはそうして漸く、楽しくなって来るのでは？』
要するに。
私は、私の大事な命を。
使命を。
願いを。
役目を。
将来を。
すり減らして博打を打つ。
その腹を決めている。
向き合う覚悟を決めている。
浪費者である。
『あとほらぁ……また偶然なんだけれどぉ……？
事、殺人に関してならァ、組まない理由、無くなったわよね…？
アゾートの勝ちに導いて、彼らの、いや、貴方の情で、生き残りを狙うのが私の策。
だけどぉ……怖いわぁん。
このままなら死んじゃうのが先かもしれないし、何より。実行犯を私は持ってるの！不思議な事よねぇ、本当にぃ………』
三日月に避ける口元。
狂乱に見開く瞳。
うざったいほど甘えた声で。
私は、カードをコールし。
『ほら、言えよ。
アゾートですって。ね♡』
満面の笑みを浮かべた。
【臨海 凪乃】
ずいぶんタイミングがいいアナウンス
ここまで追い打ちをかけられたのはいつ以来かしら
「……で、手を組むとして何をするつもりかしら
私は生憎23rdの本名しか知らないわよ？
まぁ……切り札を使うまもなく、海月は死んだけどね」
それが本当かどうかは別として
とりあえず、手を組む路線でいく。
珍しく警戒心を抱えて、だが……。
「私を捨てたければ好きにすればいいわ。
6と9なんて 見方を変えた自分のようなものだもの、ねえ？」
それはそれで、おもしろいこって
【マリア】
『棄てなんてしないわよ。
勿論、最後の最後まで、ね。大丈夫、私に任せて置けば良いわ。
安楽椅子探偵、だっけ。シャーロック・ホームズ。アレの気分で私を駒にして。』
無論、アナウンスが頼りだった訳では無い。また別の…さらに致命的なカードを握っておいたりもさしたのだが、温存に越したことは無かったりするのである。
なぜなら。
これは爆弾で。
下手をしたら、物語の根幹自体が揺るぐほどの―――――――
ズルだ。
権謀術数だ。
神算鬼謀。埒外の算術だ。
これに関しては、これだけは。
セレスティアにもアゾートにも、決して取れない手だと思う。
だから。
温存。
ネタバレは避ける。
指揮権はあちらに委任し。
私は、殺すことを選択する。
……なんて、また嘘かもな。
『ただし、私が殺人にどんな手段を用いたかは、聞かないで。
…飲めるなら。私の生還を、取り敢えずは契約に同盟するなら。
キスして。乙女座はないけど。』
自分の唇を指差し、私はそう、問いかける。悪意ある笑いは消えて、ただ、仏頂面だけがあった。
冷めるのは早いのである。
【臨海 凪乃】
「……面白いことを。 よほど欺く自信があるのね」
そういう人間、嫌いじゃないわ。
いっそ綺麗に騙して頂戴よ。
飼い駒が主に噛みついてくるならそれはそれで面白い
「そこまで自信があるのなら……退路は断つわよ」
ﾍﾞｷｯ っと へし折れた鍵
これは事実上、全員が脱出するという手段を断つという事だ。
おもしろい……そこまで言うなら乗りましょう
地の獄まで狂ってあげる
そう思った私は、すでに勢いで唇を重ねていた
「私も生憎……乙女座じゃないものでね……」
【マリア】
『自信？そんなもの要らないわ。やれない訳が無いもの。』
唇を重ね。
それを引き止めるよう抱きしめ。
私は――――――
いや。
私の、策は。
漸く幕を開ける。
【臨海 凪乃】
ルーレット、ポーカー、スロット
SCTの内部はラスベガスのカジノのように花々としていた
同じ場所で 何者かが死んだというのに
ブラックジャック
AA
「スプリット」
AA
「スプリット」
AA
「スプリット4ハンド…… あなたはBUST また私の勝利ね」
総額12億ディーラーから巻き上げる。
まぁ、ここでのお金なんて何の価値もないのだけど
「23rdが死んだ……のね……
手札が減ってしまった……本当に、腸がにえくりかえるわ」
カードを机に叩きつける。
【マリア】
『大体の場合…カードゲームっていうのは、さ。』
袖の中に入れていたトランプを手元に握り、風を切る音と共に、私は手札を握る。
役はフルハウス。
ババ抜きとか、カードゲームとかでやる、あのカードを並べて持つやり方だ。
別に、なんの種もない。
さっき、カードをこっそり拾い、仕込み、また出しただけである。
三文芝居だ。
『手札に――――……替えがきくのが良い所よね。』
分かっているふりをする。
それが、私である。
何故なら。
概ね私は嘘つきで、偽物で。
ついでに。
贋物でもあるのだから。
如何に真実めいていても信じるな。私は嘘で出来ている。
人体の七割が水なら。
心の十割が嘘だ。
というのも、嘘かもしれないぜ。
【臨海 凪乃】
「駆け引きは得意そう……そんな感じがするわね」
声の主の方に向き直る。
「先に……名乗っておくわ。
6th 臨海よ。
あなた、共有チャットで見たことがあるわね。
Azothを嗅ぎまわってる人間がいるとか……
そんなあなたがここに何か用？」
今まで出会ったどんな人間よりも……。
盤面を動かす力がある 気がする。
【マリア】
「…………」
この外装に何の驚きもなく
自分のターンと言わんばかりに話をする
いつか来ると思ってた こういうタイプは。
『私は徹頭徹尾最初から最後まで、駆け引きなんてしてないぜ。全て手の内よ。』
無論嘘である。
単純な物見遊山の最中、先程のような声が聞こえて。
動かず座したまま、人が死ぬことで手札が消えたとなるのは、恐らくは、というか、少なくとも。
私のようなイレギュラーではないなら、まあ、単純な話。
役職位はあるだろうと推察出来なくはない。セレスティアの場合は、死活問題だからあんな程度では済まないだろう。
よって目当ての人間と思われる。
運である。
偶然である。
茶番である。
だが、私は。全てブラフのまま、語り続ける。
『何が用って…そりゃあ、貴方が1番分かるんじゃない？
アゾートを捜しまわっている奴が、こんな場所まで足を運んだんだとしたら、さ。』
お前がアゾートだろう？
とも。
殺しに来たんだぜ？
とも。
相手の役職次第でどうにでも取れるように、私は問う。
当たりか、ハズレか。
博打は嫌いではない。
【臨海 凪乃】
「…………へぇ」
ﾊﾟｷﾘｯ と 咥えていたココアシガレットを噛んでへし折る
飛び回るナイトでもないし
不意打ちができるビショップでもない
今のところ……重厚なルークで見ておくか
「さぁ、私はあなたと面識がないし……
あなたが誰かもわからないわね……」
私からすれば初対面な人間だ……が
１つ気になる点がある
17thを揺さぶった後の共有チャット
「で、仮に私を殺しに来たなら……
殺して御覧なさい。 自分の欲のために
それ以外の用事なら、帰ってくれていいわよ」
お出口はあちらですよと手を向ける
手を組もう
そんな事は考えてないんだと推測して
【マリア】
『見たことがあるんじゃなかったのかしらね。』
立ち話は、実は私が一番嫌うところだ。これに関しては、実は大概話す時何かに体を預けているというどうでもいい伏線がある。
遡ろうとした諸君。
君達は、多分私が独白のときに座っているのと、おねぇの彼に撓垂れ掛かりながら話しているので『お？』と微笑するかも知れないが、それ以前にそんな伏線はないのでそこまでで辞めるが吉だ。
要らないことを言ってしまった。
本題は。
問題は。
私が腰をどっかり据えて、帰り道を示すのを無視した事である。
勝手に、ディーラーにあたる向かいの席につき。机に足を載せ、スーツの襟を正し。髪をかきあげ。
私はゾーンという奴に入る。
『第一、何故最初から殺す殺さないなのかしら。下らない。
私が貴方を殺しに来たなら、タワーごと、とは言わなくても。
声が聞こえたそばから、部屋ごと燃やしていたわよ。』
下らない。
つまり、殺す気は、無い。
だから。要するに。
『まあ、簡単な話が。
手札を貴方が持ちたい理由を聞きたいのよね……。
貴方が仮に、善良なる生徒諸君の敵なら。というか、アゾートなんだとしたら、私は―――――――
組んでみたいんだけれど。』
ルークは。
クイーンになり得る。
【臨海 凪乃】
……ターンを相手にとられるなんていつ以来かしら
ひたすら自分がパスせざるを得ない状況に見える
7並べで6のカードをせき止められているような感覚だ
どうしてかしらね……
カモられる気がするのよ。
いままでカモにしてきた人間が、そう思うの
「……Azothと組む……ねぇ
その発言が出るってことは……Azothじゃなさそうだけど
組んでどうしたいの？」
撫子やエムには逆に吹っかけてきた臨海だが
逆に逆手に来ると少し困ってしまう。
いや、それ以上に
「Azothは自分がAzothだと証明できるものがないわ
私がAzothだとして……信じられる？」
【マリア】
『ギャンブラーの誤謬ってご存知かしら？』
流れを断ち切り、私は口を開く。
何も、相手の場が揃うのをなんて、待たなくても良いのである。
だから。
切り取る。
切除する。
そして、次のセリフを話そうとした時、アナウンスを聞き。
私は、口角を吊り上げる。
そう。
手札は――――――揃った。
『さっき赤だったから、黒だ。
みたいな誤解のことよ。
均一な可能性を無視して、パニックに陥る。まあ、陥らなくても、必勝法はないんだけれども。
けれど――――――
対処法はあるわよ。
賭けたい方に賭ける。
それがYesかNoかじゃない。
ギャンブラーはそうして漸く、楽しくなって来るのでは？』
要するに。
私は、私の大事な命を。
使命を。
願いを。
役目を。
将来を。
すり減らして博打を打つ。
その腹を決めている。
向き合う覚悟を決めている。
浪費者である。
『あとほらぁ……また偶然なんだけれどぉ……？
事、殺人に関してならァ、組まない理由、無くなったわよね…？
アゾートの勝ちに導いて、彼らの、いや、貴方の情で、生き残りを狙うのが私の策。
だけどぉ……怖いわぁん。
このままなら死んじゃうのが先かもしれないし、何より。実行犯を私は持ってるの！不思議な事よねぇ、本当にぃ………』
三日月に避ける口元。
狂乱に見開く瞳。
うざったいほど甘えた声で。
私は、カードをコールし。
『ほら、言えよ。
アゾートですって。ね♡』
満面の笑みを浮かべた。
【臨海 凪乃】
ずいぶんタイミングがいいアナウンス
ここまで追い打ちをかけられたのはいつ以来かしら
「……で、手を組むとして何をするつもりかしら
私は生憎23rdの本名しか知らないわよ？
まぁ……切り札を使うまもなく、海月は死んだけどね」
それが本当かどうかは別として
とりあえず、手を組む路線でいく。
珍しく警戒心を抱えて、だが……。
「私を捨てたければ好きにすればいいわ。
6と9なんて 見方を変えた自分のようなものだもの、ねえ？」
それはそれで、おもしろいこって
【マリア】
『棄てなんてしないわよ。
勿論、最後の最後まで、ね。大丈夫、私に任せて置けば良いわ。
安楽椅子探偵、だっけ。シャーロック・ホームズ。アレの気分で私を駒にして。』
無論、アナウンスが頼りだった訳では無い。また別の…さらに致命的なカードを握っておいたりもさしたのだが、温存に越したことは無かったりするのである。
なぜなら。
これは爆弾で。
下手をしたら、物語の根幹自体が揺るぐほどの―――――――
ズルだ。
権謀術数だ。
神算鬼謀。埒外の算術だ。
これに関しては、これだけは。
セレスティアにもアゾートにも、決して取れない手だと思う。
だから。
温存。
ネタバレは避ける。
指揮権はあちらに委任し。
私は、殺すことを選択する。
……なんて、また嘘かもな。
『ただし、私が殺人にどんな手段を用いたかは、聞かないで。
…飲めるなら。私の生還を、取り敢えずは契約に同盟するなら。
キスして。乙女座はないけど。』
自分の唇を指差し、私はそう、問いかける。悪意ある笑いは消えて、ただ、仏頂面だけがあった。
冷めるのは早いのである。
【臨海 凪乃】
「……面白いことを。 よほど欺く自信があるのね」
そういう人間、嫌いじゃないわ。
いっそ綺麗に騙して頂戴よ。
飼い駒が主に噛みついてくるならそれはそれで面白い
「そこまで自信があるのなら……退路は断つわよ」
ﾍﾞｷｯ っと へし折れた鍵
これは事実上、全員が脱出するという手段を断つという事だ。
おもしろい……そこまで言うなら乗りましょう
地の獄まで狂ってあげる
そう思った私は、すでに勢いで唇を重ねていた
「私も生憎……乙女座じゃないものでね……」
【マリア】
『自信？そんなもの要らないわ。やれない訳が無いもの。』
唇を重ね。
それを引き止めるよう抱きしめ。
私は――――――
いや。
私の、策は。
漸く幕を開ける。
たあいのない霊会話 1st-20th
ふ〇なっしー(1st/DEAD)-あいごころ。(20th)
【あいごころ。】
さて、全く動揺なんてしていない。していないのでとりあえず公園で黄昏れることにした。とりあえず整理することが多すぎるのだ。
｢…とりあえずこの後はどうしよっか。｣
こころは全く動揺していないのでとりあえずなにをすべきか考えることにする。…といってもあまり今出来ることも少ない。ならば。
｢…自分から行動を起こすべきかなぁ。｣
そういって立ち上がります。ああ、全く動揺していません。その証明と言っては難ですがここまで躍動的に動けそうな感じに。
｢さて、そろそろ行きましょう。｣
こんなところで黄昏てる暇はありません。とりあえずまずは商店街でもいこうかと思い歩きだします。
【ふ〇なっしー】
『こんにちはなっしー、何号機なし？ふ○なっしーは修理された1号機なっし』
ドン！っとあいごころの真後ろに現れ話しかけるふ○なっしー。
こっちが本物
『……………どうするなし？』
【あいごころ。】
｢…ほんとうにどうしよっか。｣
少しだけ、感傷的になってるんだと思う。少なくとも。ライバルが死んで嬉しくなるような性格ではないから。…ライバルの、意味がなくなってしまったから。
｢…はぁ。だめだね。さすがに笑ってはいられないよ。｣
このいつでも陽気なことをしている梨に入れば笑えると思ってたのに。やっぱり着ぐるみは効果ないかなって。…ああ、そう言えばもう1人着ぐるみがいた気がする。死んでた気もするけど。
｢ふ○なっしーはどうやってあんな元気にはしゃいでたの？｣
そのせいでヘイトを買いまくってたきもしなくはないがきっと気の所為。ああ、着ぐるみの中って結構暖かいのね。…だめだ。思考がまとまらない。きっとこれも全部。海月お姉ちゃんのせい。
【ふ〇なっしー】
『ふ○なっしーが元気な理由は……特に無いなしね、ただやりたい事をやっただけなし。ふ○なっしーは人間じゃないから人間の掟には従っていられないなし』
ドンドン近づくふ○なっしー、あいごころ……いや第2のふ○なっしーのすぐ近くまで来ると
『ふ○なっしーの目的は殺される事だったなし、だからあんなにやりたい放題やったなし……殺される覚悟があるのならふ○なっしーも元気にはしゃぐなっしー』
【あいごころ。】
｢…そっか。なら、あんまりはしゃげないね！｣
託されたのだもの。死ぬ訳にはいかない。ならば。
｢…さて、なら。そろそろこちらも行動しようか？｣
そういってふ○なっしーに問いかける。さて、そろそろ巫山戯てる時間は終わり。状況整理しようか。
海月は死んだ。その代わり、こころに色々残してくれた。…この、真意はきっと。
｢…とりあえず、生きなきゃだめだね？｣
とにかく今やることはこのゲームを終わらせること。…まあ、今はそこまでないけれども。
さて、始めようか。
【ふ〇なっしー】
『そうなしね……ここからがふ○なっしー達のターンなっしー』
横に並ぶ、ふ○なっしーは死んだ、なら横に居るふ○なっしーは？なんなのだ？生きているのか？いや生きてはいるだろう
『ふ○なっしーはふ○なっしーの亡骸を被ったふ○なっしーなしふ○なっしーはどの道死ぬ運命なし、ふ○なっしーは人だから運命には逆らえないなしな……それでもいいのならふ○なっしーを被り続けるなっしー』
『死ぬのが嫌ならふ○なっしーを脱ぐなっしー』
【あいごころ。】
｢…うん。そうだね。｣
言われた通りにふ○なっしーを脱ぐ。ああ、ちょっと寒い。楽しそうだしひとつ持っていこうかな。それもいいよね？
｢さて、今日は本当に楽しい日だね。…退屈することがないからさ。｣
そういってふ○なっしーに向き直る。…ここから起こることはこころのターン。その結果待っているのはわからないし、なにが起きるかわからない。けれど。…ただで死ぬつもりなんて毛頭ないよ。少なくとも、こころはね？
｢それじゃあ、こころはいつも通り。いつも通りに行くことにするよ。｣
いつも通りのこころ。それは何にも気づかず。何も分からないただの子供。何も考えないように笑って、何も考えてないように泣いて。そしてその先にあるのはただのあいごころ。のみ。
…それが、こころであり、素直な私だから。
｢さて、それじゃあこれからどうする？｣
今度こそそう聞く。ニッコリ笑って。そうやってふ○なっしーに。
【ふ〇なっしー】
「……そうね、今持っている情報で達成しやすい物から攻略して行くのがセオリーね…まずは貴方が求めるアイテムの回収……から先かな？」
ふ○なっしーから抜け出す。ふ○なっしーの目的は終わっている、なら残された私がやるべき事は全力でこの状況を打開する事
「もしくは…………平気で人を殺すような殺人鬼の処分だな……」
そうあのメガネ、名は知らない、エムから聞いた話ではヒガンバナと言うらしいが……それは定かではない。
このゲームを有利に進める為に、出来るだけ犠牲を最小に済ます為にも殺さなければならない人物だと考えている
【あいごころ。】
｢そうだね。…なら、今必要なのは。｣
ランドセルの中から小銭の入った袋を取り出す。…あの八百屋から取ってきたものだ。恐らく必要なのはこの小銭とあとは…
｢豚の貯金箱。それを第1に欲しいかな。｣
人を殺す、というのは彼の極論。それはできれば最後の手段。…まあ、誰かを殺すことはあまりしたくないけどね。無意味だから。そんなことをするのはしたくない。だから、とりあえずは欲しいものを言う。
｢それさえあれば、鍵は手に入ると思うから。｣
偽ることはしない。今はそういう時じゃないから。…ああ、そういうことか。いつの間にか。少なくとも最初にあったときではないだろうけど。
私はこの人を信用してしまっているらしい。…ああ、変わっちゃったかな？とクスッと笑う。それでもいっか。それが私の欲望ならば、受け入れようじゃないか。
【ふ〇なっしー】
「鍵……ああ、鍵さえ手に入れば脱出の道へ1歩踏み出せる……まぁ殺しは最終手段だな…うむ」
と言ってニコニコしながらあいごころを見る。
楽しい、楽しいなぁ…やっぱり試したかいがあった
「意思さえ強く持てば大抵の事はどうとでもなる……だからこの先どんな事が起きても動揺しちゃあ駄目だ、動揺は死を招くから」
【あいごころ。】
｢…わかってる。もう、動揺してないよ。｣
きっと彼女は私を試したのかもしれないね。それと同時に、少しだけ心配してくれたのかな？…よくわかんないけれど。そう言えば彼女も試すことが好きだったね。死んでしまってからはなりを潜めてしまったけれど。
｢…これ、使ってみようかな。｣
ランドセルの中からあるものを取り出す。生前の彼女から受け取ったものだ。ふなっしーの顔が印刷されたトランプ。誰かを試すために使っていたゲームのための道具。相手と簡単な駆け引きが出来る遊び。…きっと近い将来、使うかもしれないね？
にこりと笑ってまた、仮面に手を伸ばして。仮面を付ける。
さあ、私はあいごころ。
愛を知らない、こころを考えないただ、何も考えていない人。
それを、演じるための道具を、狐面を、“ズラす”
｢さて、いこっか！｣
にひっといたずらっぽく笑ってみる。あなたのことも、私は信用してるから。
【ふ〇なっしー】
「ああ、そうだな……行こうか、私たちの為に」
そう言って 先に動く、目指す場所は不明……豚の貯金箱持っている奴に接触したいのだが如何せん名前を知らない
「んでどうすればいい？」
【あいごころ。】
｢まずは、“あの人”と接触したいかな。｣
まあどこにいるか知らないけれど。とりあえずDMでも送っておこうかな。
…ああ、待ってて海月。
絶対あなたの思いは無駄にしないよ？…このこころを偽ってでも。
そうして今1歩歩き出す。…きっとここから先は地獄だろうね。多分、きっと。…嘘かもしれないけどね？
【あいごころ。】
さて、全く動揺なんてしていない。していないのでとりあえず公園で黄昏れることにした。とりあえず整理することが多すぎるのだ。
｢…とりあえずこの後はどうしよっか。｣
こころは全く動揺していないのでとりあえずなにをすべきか考えることにする。…といってもあまり今出来ることも少ない。ならば。
｢…自分から行動を起こすべきかなぁ。｣
そういって立ち上がります。ああ、全く動揺していません。その証明と言っては難ですがここまで躍動的に動けそうな感じに。
｢さて、そろそろ行きましょう。｣
こんなところで黄昏てる暇はありません。とりあえずまずは商店街でもいこうかと思い歩きだします。
【ふ〇なっしー】
『こんにちはなっしー、何号機なし？ふ○なっしーは修理された1号機なっし』
ドン！っとあいごころの真後ろに現れ話しかけるふ○なっしー。
こっちが本物
『……………どうするなし？』
【あいごころ。】
｢…ほんとうにどうしよっか。｣
少しだけ、感傷的になってるんだと思う。少なくとも。ライバルが死んで嬉しくなるような性格ではないから。…ライバルの、意味がなくなってしまったから。
｢…はぁ。だめだね。さすがに笑ってはいられないよ。｣
このいつでも陽気なことをしている梨に入れば笑えると思ってたのに。やっぱり着ぐるみは効果ないかなって。…ああ、そう言えばもう1人着ぐるみがいた気がする。死んでた気もするけど。
｢ふ○なっしーはどうやってあんな元気にはしゃいでたの？｣
そのせいでヘイトを買いまくってたきもしなくはないがきっと気の所為。ああ、着ぐるみの中って結構暖かいのね。…だめだ。思考がまとまらない。きっとこれも全部。海月お姉ちゃんのせい。
【ふ〇なっしー】
『ふ○なっしーが元気な理由は……特に無いなしね、ただやりたい事をやっただけなし。ふ○なっしーは人間じゃないから人間の掟には従っていられないなし』
ドンドン近づくふ○なっしー、あいごころ……いや第2のふ○なっしーのすぐ近くまで来ると
『ふ○なっしーの目的は殺される事だったなし、だからあんなにやりたい放題やったなし……殺される覚悟があるのならふ○なっしーも元気にはしゃぐなっしー』
【あいごころ。】
｢…そっか。なら、あんまりはしゃげないね！｣
託されたのだもの。死ぬ訳にはいかない。ならば。
｢…さて、なら。そろそろこちらも行動しようか？｣
そういってふ○なっしーに問いかける。さて、そろそろ巫山戯てる時間は終わり。状況整理しようか。
海月は死んだ。その代わり、こころに色々残してくれた。…この、真意はきっと。
｢…とりあえず、生きなきゃだめだね？｣
とにかく今やることはこのゲームを終わらせること。…まあ、今はそこまでないけれども。
さて、始めようか。
【ふ〇なっしー】
『そうなしね……ここからがふ○なっしー達のターンなっしー』
横に並ぶ、ふ○なっしーは死んだ、なら横に居るふ○なっしーは？なんなのだ？生きているのか？いや生きてはいるだろう
『ふ○なっしーはふ○なっしーの亡骸を被ったふ○なっしーなしふ○なっしーはどの道死ぬ運命なし、ふ○なっしーは人だから運命には逆らえないなしな……それでもいいのならふ○なっしーを被り続けるなっしー』
『死ぬのが嫌ならふ○なっしーを脱ぐなっしー』
【あいごころ。】
｢…うん。そうだね。｣
言われた通りにふ○なっしーを脱ぐ。ああ、ちょっと寒い。楽しそうだしひとつ持っていこうかな。それもいいよね？
｢さて、今日は本当に楽しい日だね。…退屈することがないからさ。｣
そういってふ○なっしーに向き直る。…ここから起こることはこころのターン。その結果待っているのはわからないし、なにが起きるかわからない。けれど。…ただで死ぬつもりなんて毛頭ないよ。少なくとも、こころはね？
｢それじゃあ、こころはいつも通り。いつも通りに行くことにするよ。｣
いつも通りのこころ。それは何にも気づかず。何も分からないただの子供。何も考えないように笑って、何も考えてないように泣いて。そしてその先にあるのはただのあいごころ。のみ。
…それが、こころであり、素直な私だから。
｢さて、それじゃあこれからどうする？｣
今度こそそう聞く。ニッコリ笑って。そうやってふ○なっしーに。
【ふ〇なっしー】
「……そうね、今持っている情報で達成しやすい物から攻略して行くのがセオリーね…まずは貴方が求めるアイテムの回収……から先かな？」
ふ○なっしーから抜け出す。ふ○なっしーの目的は終わっている、なら残された私がやるべき事は全力でこの状況を打開する事
「もしくは…………平気で人を殺すような殺人鬼の処分だな……」
そうあのメガネ、名は知らない、エムから聞いた話ではヒガンバナと言うらしいが……それは定かではない。
このゲームを有利に進める為に、出来るだけ犠牲を最小に済ます為にも殺さなければならない人物だと考えている
【あいごころ。】
｢そうだね。…なら、今必要なのは。｣
ランドセルの中から小銭の入った袋を取り出す。…あの八百屋から取ってきたものだ。恐らく必要なのはこの小銭とあとは…
｢豚の貯金箱。それを第1に欲しいかな。｣
人を殺す、というのは彼の極論。それはできれば最後の手段。…まあ、誰かを殺すことはあまりしたくないけどね。無意味だから。そんなことをするのはしたくない。だから、とりあえずは欲しいものを言う。
｢それさえあれば、鍵は手に入ると思うから。｣
偽ることはしない。今はそういう時じゃないから。…ああ、そういうことか。いつの間にか。少なくとも最初にあったときではないだろうけど。
私はこの人を信用してしまっているらしい。…ああ、変わっちゃったかな？とクスッと笑う。それでもいっか。それが私の欲望ならば、受け入れようじゃないか。
【ふ〇なっしー】
「鍵……ああ、鍵さえ手に入れば脱出の道へ1歩踏み出せる……まぁ殺しは最終手段だな…うむ」
と言ってニコニコしながらあいごころを見る。
楽しい、楽しいなぁ…やっぱり試したかいがあった
「意思さえ強く持てば大抵の事はどうとでもなる……だからこの先どんな事が起きても動揺しちゃあ駄目だ、動揺は死を招くから」
【あいごころ。】
｢…わかってる。もう、動揺してないよ。｣
きっと彼女は私を試したのかもしれないね。それと同時に、少しだけ心配してくれたのかな？…よくわかんないけれど。そう言えば彼女も試すことが好きだったね。死んでしまってからはなりを潜めてしまったけれど。
｢…これ、使ってみようかな。｣
ランドセルの中からあるものを取り出す。生前の彼女から受け取ったものだ。ふなっしーの顔が印刷されたトランプ。誰かを試すために使っていたゲームのための道具。相手と簡単な駆け引きが出来る遊び。…きっと近い将来、使うかもしれないね？
にこりと笑ってまた、仮面に手を伸ばして。仮面を付ける。
さあ、私はあいごころ。
愛を知らない、こころを考えないただ、何も考えていない人。
それを、演じるための道具を、狐面を、“ズラす”
｢さて、いこっか！｣
にひっといたずらっぽく笑ってみる。あなたのことも、私は信用してるから。
【ふ〇なっしー】
「ああ、そうだな……行こうか、私たちの為に」
そう言って 先に動く、目指す場所は不明……豚の貯金箱持っている奴に接触したいのだが如何せん名前を知らない
「んでどうすればいい？」
【あいごころ。】
｢まずは、“あの人”と接触したいかな。｣
まあどこにいるか知らないけれど。とりあえずDMでも送っておこうかな。
…ああ、待ってて海月。
絶対あなたの思いは無駄にしないよ？…このこころを偽ってでも。
そうして今1歩歩き出す。…きっとここから先は地獄だろうね。多分、きっと。…嘘かもしれないけどね？
笑顔を貴方に送りたいから。 2nd-3rd【DEAD END】
みかんちゃん(2nd)-五番目の道化師(3rd)【DEAD END】
【五番目の道化師】
能天気に公園で一人ピクニックをしていた道化師は唐突に流れてきた放送の内容が理解できずにいた。
(うそ、そんな…っ！先輩が…うそだ…うそだ)
思わず力作のエビフライを地面に落としてしまうくらい同様していた。私はどうすればいいの？人なんて殺せないよ…っ！！
こういうときこそ誰かに連絡を取ればいいのかもしれないけど…誰に連絡を取ればいいの？わからない、わからない。どうすれば──
【みかんちゃん】
放送はぼんやりと水の溜まったような鼓膜にも確かに届いていた。
届いていたけれど、
それは全て砂嵐のテレビのような砂利混じりの雑音でしかなくて。
虚ろな目が、骸のような黒い目が、闇の中じっと見据えているような気がした。
狂ってなぞいない。
狂ってはいないのだけれど、狂えないから。
あの夢は此処にまで追いかけてきて私としての偽りの存在まで蝕む。
気づいたら部屋を飛び出していた。手ぶら宙ぶらりん世界がぐにゃりぐしゃりと窮屈で、歯車がズレる壊れる曲がる狂う。
蓋の仕方を忘れた。
あの時と同じだ。逃げて逃げて逃げて逃げて何処まで逃げても闇は取り巻いて離れやしない。
[あなたが死ねば私も死ねるのに]
[あなたが死ねばよかったのに]
[みんな死ねばよかったのに]
やめろやめてやめてやめてやめてやめてやめつやめてやめろやめろやめろやめろやめろやめろ…
…──やめてください
無我夢中に歩いて、夢遊病患者のようにそこに意識はなくて、意味はなくて、理由もなくて
逃げた先、白い花を見つけた。
野原に座る小さな彼女。
「あ……─────」
口元、笑みを浮かべて声をかけたいのに、
声が出なくて
笑えなくて
ただその後ろ姿に手を伸ばして、
やめた。
「こんにちは」
偽ることは今はしないで、
白い花のような彼女に声をかけた。
【五番目の道化師】
「みかん、ちゃん…っ」
声をかけられ、振り向くとそこにはみかんちゃんがいた。
私はどうしたらいいの？と、涙で視界を歪ませながらみかんちゃんを見た。
「さっきの…っ、放送聞きましたか？」
声が震え、掠れている。
頬に水が伝い落ちる感じがする…。
なんで、なんで…ただでさえこんな最悪な状況だったのに。大切な人たちまで巻き込んでしまうの？
「わたし…どうしたら…っ！！」
【みかんちゃん】
──さぁ？どうしようもないだろう。
昔、醜い大人がそう言って慰めました。
慰めたのではなく蹴落としました。
涙がポロポロ星屑みたいで綺麗。
彼女の姿はあの時の自分と同じだ。
幼かった自分の、力ない自分の、不条理に泣き崩れた無垢な花だ。
花が枯れるのは××が嫌うから、私も嫌い。
蓋が開いて中身が溢れて、どろどろどろどろ…
熟れた柘榴を潰して美味しいジャムでも作ろうか。
そう言って見送った後ろ姿。
熟れて潰れていたのは──の頭でしたけど。
大丈夫、まだ狂っちゃいない。まだ壊れちゃいない。もう狂いはしない。もう壊れはしない。
もう二の舞は御免だもの。
彼女に歩みよる。
ゆらりよろりと拙い足取りで、迷いなく真っ直ぐ歩みより、抱き寄せた。
「泣かないで？まだ救える方法はあるから。」
誰かを救いたいとか彼女を救いたいとか自分を救いたいとか、そんな意味はひとつもなくて。
だけど、今は信じた花に縋ってみせた。
「あなたが死ねば、──────」
耳元でそっと囁いた。
それが呪いの言葉に似ていたから嗤ってしまった。
【五番目の道化師】
救える方法がある。
私はその言葉を聞いた瞬間、それ以外方法がないと悟った。
みんなを犠牲にしたくないから…こうするのが一番いいんだって。
耳元で囁かれた言葉に対して、私は笑みを浮かべた。
「みかんちゃん、ありがとう」
私はあなたのことを信じるよ。
【みかんちゃん】
ありがとうとか。
彼女の無垢なる善意を利用して、道化を踊らせてしまうことになるというのに。
ならば、私は敢えてこう綴ろうか
「──こちらこそありがとう、ピエロちゃん」
満面に慈愛満ちたその笑みを浮かべて、涙？
そんなものは流す必要はない。
私、必要あること以外はしないもの。
抱き寄せたまま手を、
彼女の細い
白いその首に
伸ばして
思いっきり締め上げた。
慣れているから、殺り方は慣れていたから。
このくらい手慣れていて。
楽に枯れてしまう前に詰んでしまおうと、
その花を手折り罪増した。
──訂正、詰みました。
【五番目の道化師】
みかんちゃんの手が私の首を締め上げる。
苦しい、助けて…って言いたい。
だけど道化師たる私自身がそれを許さない。
笑みを、笑みを絶やすな。
道化師であるのなら───笑みを絶やすことは許されない。
「…っ…ぁ…」
苦しい、苦しいけど…それでみんながたすかるなら────…わたしは……
【みかんちゃん】
──────…。
美しいまま摘まれた花をそっと膝に乗せて花弁を濡らす涙を指で拭った。
その頬は血の気を失って白く奇麗。
最期まで綺麗な笑顔の君。
嗚呼、もう死んだ。
こんなのは盲信だ。
××と重ねて救われた気になった私は酷く愚かだと思う。
[──って絶対裏がある]
ないよ。あるけど。
[──ってなんか時々怖いよね]
何処が？わかってるけど。
この世界を自分の閉じた蓋の中だと気づいたのは今更。既に割れた瓶に気づかないで必死に閉めていた蓋の底。
カラッポ。
歪でぐしゃぐしゃでぐにゃぐにゃ。
これは断罪か？
魔女裁判もいいところじゃないか。
十字架に縛られた個は蝕む蛆虫に、心の内から食い荒らされて。
人を殺せ人に殺されろだの、この世界の神は案外現実の神と変わりはしないらしい。
そんな手には乗らないよ。
そんな汚い掌で踊るのは御免だ。
その汚い手に乗るのは私一人で充分だもの。
だって私は狂っちゃいない。
何故ならもう狂ったあとだったから。
[あなたが死ねば私も死ねる]
──ああ、
全くもって、その通り。
だから私は最期まで、慈愛満ちた腐れ天使を演じて、それから、
──みんなに恨まれてありのままに死のうか。
【五番目の道化師】
能天気に公園で一人ピクニックをしていた道化師は唐突に流れてきた放送の内容が理解できずにいた。
(うそ、そんな…っ！先輩が…うそだ…うそだ)
思わず力作のエビフライを地面に落としてしまうくらい同様していた。私はどうすればいいの？人なんて殺せないよ…っ！！
こういうときこそ誰かに連絡を取ればいいのかもしれないけど…誰に連絡を取ればいいの？わからない、わからない。どうすれば──
【みかんちゃん】
放送はぼんやりと水の溜まったような鼓膜にも確かに届いていた。
届いていたけれど、
それは全て砂嵐のテレビのような砂利混じりの雑音でしかなくて。
虚ろな目が、骸のような黒い目が、闇の中じっと見据えているような気がした。
狂ってなぞいない。
狂ってはいないのだけれど、狂えないから。
あの夢は此処にまで追いかけてきて私としての偽りの存在まで蝕む。
気づいたら部屋を飛び出していた。手ぶら宙ぶらりん世界がぐにゃりぐしゃりと窮屈で、歯車がズレる壊れる曲がる狂う。
蓋の仕方を忘れた。
あの時と同じだ。逃げて逃げて逃げて逃げて何処まで逃げても闇は取り巻いて離れやしない。
[あなたが死ねば私も死ねるのに]
[あなたが死ねばよかったのに]
[みんな死ねばよかったのに]
やめろやめてやめてやめてやめてやめてやめつやめてやめろやめろやめろやめろやめろやめろ…
…──やめてください
無我夢中に歩いて、夢遊病患者のようにそこに意識はなくて、意味はなくて、理由もなくて
逃げた先、白い花を見つけた。
野原に座る小さな彼女。
「あ……─────」
口元、笑みを浮かべて声をかけたいのに、
声が出なくて
笑えなくて
ただその後ろ姿に手を伸ばして、
やめた。
「こんにちは」
偽ることは今はしないで、
白い花のような彼女に声をかけた。
【五番目の道化師】
「みかん、ちゃん…っ」
声をかけられ、振り向くとそこにはみかんちゃんがいた。
私はどうしたらいいの？と、涙で視界を歪ませながらみかんちゃんを見た。
「さっきの…っ、放送聞きましたか？」
声が震え、掠れている。
頬に水が伝い落ちる感じがする…。
なんで、なんで…ただでさえこんな最悪な状況だったのに。大切な人たちまで巻き込んでしまうの？
「わたし…どうしたら…っ！！」
【みかんちゃん】
──さぁ？どうしようもないだろう。
昔、醜い大人がそう言って慰めました。
慰めたのではなく蹴落としました。
涙がポロポロ星屑みたいで綺麗。
彼女の姿はあの時の自分と同じだ。
幼かった自分の、力ない自分の、不条理に泣き崩れた無垢な花だ。
花が枯れるのは××が嫌うから、私も嫌い。
蓋が開いて中身が溢れて、どろどろどろどろ…
熟れた柘榴を潰して美味しいジャムでも作ろうか。
そう言って見送った後ろ姿。
熟れて潰れていたのは──の頭でしたけど。
大丈夫、まだ狂っちゃいない。まだ壊れちゃいない。もう狂いはしない。もう壊れはしない。
もう二の舞は御免だもの。
彼女に歩みよる。
ゆらりよろりと拙い足取りで、迷いなく真っ直ぐ歩みより、抱き寄せた。
「泣かないで？まだ救える方法はあるから。」
誰かを救いたいとか彼女を救いたいとか自分を救いたいとか、そんな意味はひとつもなくて。
だけど、今は信じた花に縋ってみせた。
「あなたが死ねば、──────」
耳元でそっと囁いた。
それが呪いの言葉に似ていたから嗤ってしまった。
【五番目の道化師】
救える方法がある。
私はその言葉を聞いた瞬間、それ以外方法がないと悟った。
みんなを犠牲にしたくないから…こうするのが一番いいんだって。
耳元で囁かれた言葉に対して、私は笑みを浮かべた。
「みかんちゃん、ありがとう」
私はあなたのことを信じるよ。
【みかんちゃん】
ありがとうとか。
彼女の無垢なる善意を利用して、道化を踊らせてしまうことになるというのに。
ならば、私は敢えてこう綴ろうか
「──こちらこそありがとう、ピエロちゃん」
満面に慈愛満ちたその笑みを浮かべて、涙？
そんなものは流す必要はない。
私、必要あること以外はしないもの。
抱き寄せたまま手を、
彼女の細い
白いその首に
伸ばして
思いっきり締め上げた。
慣れているから、殺り方は慣れていたから。
このくらい手慣れていて。
楽に枯れてしまう前に詰んでしまおうと、
その花を手折り罪増した。
──訂正、詰みました。
【五番目の道化師】
みかんちゃんの手が私の首を締め上げる。
苦しい、助けて…って言いたい。
だけど道化師たる私自身がそれを許さない。
笑みを、笑みを絶やすな。
道化師であるのなら───笑みを絶やすことは許されない。
「…っ…ぁ…」
苦しい、苦しいけど…それでみんながたすかるなら────…わたしは……
【みかんちゃん】
──────…。
美しいまま摘まれた花をそっと膝に乗せて花弁を濡らす涙を指で拭った。
その頬は血の気を失って白く奇麗。
最期まで綺麗な笑顔の君。
嗚呼、もう死んだ。
こんなのは盲信だ。
××と重ねて救われた気になった私は酷く愚かだと思う。
[──って絶対裏がある]
ないよ。あるけど。
[──ってなんか時々怖いよね]
何処が？わかってるけど。
この世界を自分の閉じた蓋の中だと気づいたのは今更。既に割れた瓶に気づかないで必死に閉めていた蓋の底。
カラッポ。
歪でぐしゃぐしゃでぐにゃぐにゃ。
これは断罪か？
魔女裁判もいいところじゃないか。
十字架に縛られた個は蝕む蛆虫に、心の内から食い荒らされて。
人を殺せ人に殺されろだの、この世界の神は案外現実の神と変わりはしないらしい。
そんな手には乗らないよ。
そんな汚い掌で踊るのは御免だ。
その汚い手に乗るのは私一人で充分だもの。
だって私は狂っちゃいない。
何故ならもう狂ったあとだったから。
[あなたが死ねば私も死ねる]
──ああ、
全くもって、その通り。
だから私は最期まで、慈愛満ちた腐れ天使を演じて、それから、
──みんなに恨まれてありのままに死のうか。
つつみこめ 20th-25th
あいごころ。(20th)-柏木 愛(25th)
【柏木 愛】
「嘘だ、そんな、嘘だっ……！」
(柏木は雪像アート展にて、ぶるぶる震えながら立ち尽くしていた。先程のGMのアナウンスを聞き、すぐさまコロパッドを開いた彼が目にしたのは……
ペットの亀の写真だった)
「亀美、お前だけは、お前だけは……絶対に……！」
【あいごころ。】
｢……｣
コロパットを見ながら歩きます。…そっか、彼はやっぱり本物だったんだね。…でも、ごめん。どうやら、もうこころはそっちには行けない理由が出来ちゃったから。すこしだけ、頑張らないとね。
…いや、やっぱり割り切れないかな。彼が死ぬのは少しだけ、いや、かなり…
｢ああ、やっぱりダメだね。人は簡単には変わらないものなのかなぁ？｣
そういって頭を抱えてグルグルと。うーん…わかんないや！
｢…あ！｣
そうして歩いてきた見つけたのは、見覚えのある人影。…そう。クソ野郎…じゃないや柏木です。
｢……｣
なんだろう。亀美って。声掛けない方がいいかな。うん。声掛けない方がいい気がする。なにも見なかったことにしてなにやら呟いている彼女の後ろを通ることに。…あー雪像が綺麗だなぁ。
【柏木 愛】
「ああああっ、こころちゃんっ！！」
(美少女の存在に彼が気がつかない筈がない。流れる涙と鼻水もそのままに、彼女に飛びつこうとして……ステイ。
一つ。セクハラはしないと色んな人に誓った。
一つ。心を正常に保てとまにょさんに言われた。
いい子、いい子。柏木なら出来る。
深呼吸を一つすると、鼻を啜った)
「こ、こころちゃん。えっと、メール見ました……よね？その、大変なことに、なってしまいましたね……」
【あいごころ。】
｢…うん。大変なことになってる｣
さすがに声をかけられて無視をできるほど冷徹な人間ではない。とりあえず振り返って相手の言葉に答えることにする。…うん。大丈夫。演じられる。
狐面を“ズラす”
｢とりあえず、今はまず落ち着いた方がいいよ。よしよし。｣
近くに近づくと背伸びをして相手の頭を撫でる。…大丈夫だ、というように。そして少しだけ微笑む。…ごめんね、柏木さん。まだ私はあなたを信用できない。でも、あなたを安心させるぐらいは出来るからさ。とりあえずいまは、落ち着いて。ね？
｢こんなことになっちゃったけれども。いついかなる時でも落ち着いておかないと、いずれ壊れちゃう。…柏木さんが壊れるところなんて、みたくないよ…｣
そういってしゅんとする。さて、柏木さん。…あなたがこの先どうするのか。どうなるのか。色々、教えて欲しいんだ。お願い。
【柏木 愛】
「ふへ、ありがとうございます……」
(幼女のよしよしには不思議なパワーがあることを身を以て知った。帰ったら論文を書こう)
「俺は大丈夫です。色んな人に会って、色んな人から薫陶を受けました。
……あの、実は一つ、考えがあるんですけど……この状況打破できる考えが……。でも、その、あまりに非人道的というか、アレすぎて、とても、とても」
【あいごころ。】
｢…そうだね。非人道的。きっとそれは、人を殺すってことかな？｣
そうやって問いかける。…うん。やはり、あなたはそういう選択を取るんだね。…それとも自殺するつもりなのかな？
少し近寄って柏木の傍に。そして相手の背中に手を伸ばして…
――ギュッ。
そうやって、抱きついた。不安、なんだね？きっと。この状況だもん。不安にならないわけないもんね。…ああ、そうだ。一応これ、持っておこうかな。
｢…怖いんだ、こころ。誰かがまた、“無意味”になっちゃいそうで。｣
抱きつきながらそう言った。無意味。そうやって表現する。それが私がズレているっていう表明になるから。…ああ、人肌って暖かいなぁ。
【柏木 愛】
「……こころちゃん」
(抱きしめられて、心臓が跳ね上がる。禁欲中なのわかってるのかな？襲って欲しいのかな？
反射的に抱きしめ返し、全身で彼女の震えを感じ取る。
そして、思い出した。海月の死を。
共有チャットのやりとりからして、彼女達には少なくとも関わりがあったのではないか？誰かが無意味になってしまうとは、海月の事を指しているのではないか？そう思うと、胸が痛まずにはいられなかった。
彼女を抱きしめたまま、彼女の耳元で、小さく呟く)
【あいごころ。】
｢…うん。そっか。｣
そういって万年の笑みを浮かべる。ああ、ならば。そう来るならば。…私も、信用しないわけには行かないじゃないか。このゲームは人を狂わせる。簡単に、単純に。ならば。私は。
｢…疑って、ごめんね。｣
―――左手に持ったナイフから、手を離した。
ポス、と落ちるナイフ。きっと柏木にも気づかれただろう。ただ、私は聞きたかったんだ。…あなたが、人を殺すかどうかを。
｢…あなたは、人を殺すつもりは無いんだね？｣
そうやって、ニッコリと笑う。ああ、試すようなまねしてごめんね？でも、これが一番わかり易かったから。これが一番やりやすかったから。…ああ、もっと上手くやれればよかったんだけどね。ごめんね？
【柏木 愛】
「は、はい……え？んん？え？」
(なにかがおちた。そっちみる。ナイフだ。いたそー。ん？どゆこと？俺、マジで刺される2秒前だったってこと？)
「う、うせやろ……」
(ガタガタと震える。ここに来て、何度命の危機に瀕しただろうか)
【あいごころ。】
｢…本当にごめん。｣
申し訳なく思ってる。…あなたは、私を信用したんだね。ならば、私もそれ相応の覚悟を見せないといけない。
｢柏木さん。でもね。この状況じゃだれも信用出来ないから。｣
…その時、アナウンスが流れた。
『5番目の道化師が死亡しました』
…ああ、そっか。また。“また無意味なものが出来てしまった”。
｢…こんなふうに、誰に殺されるかわからないんだもの。刺すつもりはなかった。でも。｣
あなたを脅すようなコトをしてしまって申し訳なく思ってる。…そう、伝えた。でも、こればかりは必要な事だった。…本当にごめん。
｢…お詫びに、私に出来ることならなんでもするよ？｣
そう言った。…いや、思わずそう言ってしまったと言うべきか。相手があの“柏木”であるということを忘れてしまったのが原因だろう。
…あ、大丈夫かな？理性もつかな？
【柏木 愛】
「………………」
(ん？今何でもするって言ったよね？
冗談でも何でもなく、彼女は今、そう言った。
嗚呼、いつもの柏木ならば理性が消し飛び、彼女にあんなことやこんなことを要求しただろう。
しかし、非常に残念なことに、彼女の言葉は耳に届いていなかった。
『五番目の道化師が死亡しました』
アナウンスはたしかに、そう言った)
「……ピエロちゃん……」
(バーベキューを開いた時、ただ一人来てくれたのは彼女だった。一緒に食材を切り、景色を眺めながら、食事を楽しんだ。写真も撮った。
自分が色々と暴走していた時、叱ってくれたのは彼女だった。こんな自分を厳しくも優しく慰め、二人で帰ろうと言ってくれた。
そんな彼女が、死ぬはず、ない……)
【あいごころ。】
｢柏木、さん…｣
ああ、これは、ダメな全長だ。このままだと彼女も死んでしまう。…黒に、飲まれてしまう。しってるんだ。私も。誰にも頼れない、その地獄を。…ああ、ダメだよ。それじゃあ。それじゃああなたも。
｢…あたなも、壊れちゃう。｣
…どうすればいい？…ああ、簡単だったね。こころで、あの人の分を埋めよう。こころで、空いた穴を塞ごう。
絶望した表情を見せる彼女に少しだけ微笑んだ。
｢…ごめんね？｣
そうして。
彼女と顔を近づける。…こころには、これぐらいしか思いつかなかったから。もし、あなたがこれで笑顔を見せるなら、こころはやってあげる。…だから、お願い。
――――絶望、しないで？
そして、彼女の唇と、こころの唇を。
――重ねました。
…少しの時間だけだけど。やっぱり。…すごく、恥ずかしいなぁ…
【柏木 愛】
「……！」
(柔らかい、天使のような口付けだった。彼はすぐさま現実に引き戻される。ああ、嬉しい。
こんな美少女がキスをしてくれるなんて、嬉しくて堪らない！もっと、次は、もっと濃いのを！さっき何でもするって言ったよね！？その先に俺はいるぞぉ！)
「……あれ……」
(心と身体が、リンクしなかった。力なく崩れ落ち、その場に座り込む。涙が止まらなかった。もう、何も考えられない程に、次から次へと、涙が溢れる。
でも、彼女には応えてあげなくてはならない。彼女がどのような気持ちで自分に唇を預けたのか、わからないわけではない。だから、精一杯の笑顔で、ありがとうと)
「……ごめんなさい……」
(無理に決まっていた)
【あいごころ。】
｢…うん。辛いよね。きっと。あの人はあなたの心の支えの1人だったんだよね。｣
ああ、だめだ。彼女が死んできっと悲しいんだろうね。苦しいんだろうね。でも、ごめん。こころには。
その気持ち、分からないんだ。
だから。大切なおもちゃに例えるしかないんだ。それが無くなったらどう思うか。きっとこういうことだろうって考えて、考えて、予想するぐらいしか出来ないから。…ああ、また、こころは嘘をつくんだね。…結局。
｢だから。割り切れ、だなんて言わないよ。…あの人の代わりにしろ、とも言わない。でもね。あなたは、このままだと潰れてしまう。だから。だから。……私を、頼って。｣
きっと1人だ潰れてしまうから。泣いている、彼女の頭をまた、撫でる。…落ち着いてくれないかな。落ち着いてくれてるといいな。こころが代わりになれるか分からないけれど。でも。
｢だから、大丈夫。…ここに、こころはいるから。｣
そういって、ニッコリと笑うんだ。
【柏木 愛】
「……ぐすっ、ごめんなさい……。
お、俺、しっかりするって、決めたんですけど。
今は、今だけは……こうさせて、ください」
(前に乗り出すと、先程のように彼女を抱擁した。心の内を掻き乱されたような虚無感に、耐えられない。今は、少しでも彼女と触れ合っていたかった。
温かく、小さく、柔らかい身体は、自分と彼女が、まだ生きていて、まだ立ち上がれることを、示唆しているようだった)
【あいごころ。】
｢…人はね、弱いんだ。簡単なことですぐ、意思なんて崩れちゃうんだよ。｣
そういって頭をなで続ける。…きっと、子の人は素直で、いい人なんだろうね。わかるよ。だから、今は支えになってあげないと、きっといつか狂ってしまうから。
｢…あなたは、生きることを諦めるの？｣
いつか問いかけたことをいま、また問いかける。こんなことになってしまった。こんなゲームに巻き込まれてしまった。…もう、後戻りなんて出来ないよ？だから、今、答えを聞こうと思う。
あなたは、人を殺す覚悟はあるのかって。暗に込めた意味をいま、あなたに突きつける。…これは人を殺せって言ってるわけじゃない。人が死ぬ覚悟は、ありますか。そういう意味だから。
【柏木 愛】
「こころちゃん、俺は……俺は……」
(嗚咽をあげて泣きながら、子供のように彼女にあやされる。そうしていないと、彼女の言う通り、崩れてしまいそうだった)
「俺は、ぐすっ、諦めません。死んでしまった、人、たちを、想えるのは、生きてる人だけです。ぐすっ。俺が生きてる限り、それは、放棄しちゃいけません。だから、やれます。やります」
(無論、誰が死んでもOKという意味ではない。願わくば誰も死なず、2度と悲しみたくはない。でも、この先自分が生き続けるのなら、それは避けて通れない道なのだろう。ならば、耐えて、乗り越えてみせる。それが出来なければ、なんのために死者に涙を流したのだ)
【あいごころ。】
｢そっか。なら。｣
そういって私は柏木さんにボソリと呟きます。…きっと、この言葉が彼女にとっての希望になると信じて。
｢―――――だよ。あなたは、生きることを諦めないんだね？｣
そういって柏木さんから離れます。そして、手を自分の口に持って行って。ニシシ、と悪戯っぽく笑ってみました。
｢さて、そろそろ立ち上がろうよ。…あ、これ拾っておこう。｣
そういってナイフを拾い上げます。一応武器は多いに越したことないので…あ、でもやっぱり。
｢これ、あげるね。｣
柏木さんにナイフを手渡します。…まあ、少しあれかな。物騒かもしれないな、って思いますけど…まあ、この状況だと仕方ありません。
少しだけ苦笑します。…さて、それじゃあ。
｢じゃあね、柏木さん。｣
そういって手を振りました。
【柏木 愛】
(それを聞いて、目を見開く。そうか、それなら……)
「わかりました、俺、マジで頑張ります。ありがとうございました。こころちゃんがいなければ俺、やばかったです」
(立ち上がり、膝についた雪を払う。ナイフは有難く頂戴することにした。自衛手段は、必要だろう)
「お気をつけて！」
(立ち去る少女に、元気よく手を振った)
【柏木 愛】
「嘘だ、そんな、嘘だっ……！」
(柏木は雪像アート展にて、ぶるぶる震えながら立ち尽くしていた。先程のGMのアナウンスを聞き、すぐさまコロパッドを開いた彼が目にしたのは……
ペットの亀の写真だった)
「亀美、お前だけは、お前だけは……絶対に……！」
【あいごころ。】
｢……｣
コロパットを見ながら歩きます。…そっか、彼はやっぱり本物だったんだね。…でも、ごめん。どうやら、もうこころはそっちには行けない理由が出来ちゃったから。すこしだけ、頑張らないとね。
…いや、やっぱり割り切れないかな。彼が死ぬのは少しだけ、いや、かなり…
｢ああ、やっぱりダメだね。人は簡単には変わらないものなのかなぁ？｣
そういって頭を抱えてグルグルと。うーん…わかんないや！
｢…あ！｣
そうして歩いてきた見つけたのは、見覚えのある人影。…そう。クソ野郎…じゃないや柏木です。
｢……｣
なんだろう。亀美って。声掛けない方がいいかな。うん。声掛けない方がいい気がする。なにも見なかったことにしてなにやら呟いている彼女の後ろを通ることに。…あー雪像が綺麗だなぁ。
【柏木 愛】
「ああああっ、こころちゃんっ！！」
(美少女の存在に彼が気がつかない筈がない。流れる涙と鼻水もそのままに、彼女に飛びつこうとして……ステイ。
一つ。セクハラはしないと色んな人に誓った。
一つ。心を正常に保てとまにょさんに言われた。
いい子、いい子。柏木なら出来る。
深呼吸を一つすると、鼻を啜った)
「こ、こころちゃん。えっと、メール見ました……よね？その、大変なことに、なってしまいましたね……」
【あいごころ。】
｢…うん。大変なことになってる｣
さすがに声をかけられて無視をできるほど冷徹な人間ではない。とりあえず振り返って相手の言葉に答えることにする。…うん。大丈夫。演じられる。
狐面を“ズラす”
｢とりあえず、今はまず落ち着いた方がいいよ。よしよし。｣
近くに近づくと背伸びをして相手の頭を撫でる。…大丈夫だ、というように。そして少しだけ微笑む。…ごめんね、柏木さん。まだ私はあなたを信用できない。でも、あなたを安心させるぐらいは出来るからさ。とりあえずいまは、落ち着いて。ね？
｢こんなことになっちゃったけれども。いついかなる時でも落ち着いておかないと、いずれ壊れちゃう。…柏木さんが壊れるところなんて、みたくないよ…｣
そういってしゅんとする。さて、柏木さん。…あなたがこの先どうするのか。どうなるのか。色々、教えて欲しいんだ。お願い。
【柏木 愛】
「ふへ、ありがとうございます……」
(幼女のよしよしには不思議なパワーがあることを身を以て知った。帰ったら論文を書こう)
「俺は大丈夫です。色んな人に会って、色んな人から薫陶を受けました。
……あの、実は一つ、考えがあるんですけど……この状況打破できる考えが……。でも、その、あまりに非人道的というか、アレすぎて、とても、とても」
【あいごころ。】
｢…そうだね。非人道的。きっとそれは、人を殺すってことかな？｣
そうやって問いかける。…うん。やはり、あなたはそういう選択を取るんだね。…それとも自殺するつもりなのかな？
少し近寄って柏木の傍に。そして相手の背中に手を伸ばして…
――ギュッ。
そうやって、抱きついた。不安、なんだね？きっと。この状況だもん。不安にならないわけないもんね。…ああ、そうだ。一応これ、持っておこうかな。
｢…怖いんだ、こころ。誰かがまた、“無意味”になっちゃいそうで。｣
抱きつきながらそう言った。無意味。そうやって表現する。それが私がズレているっていう表明になるから。…ああ、人肌って暖かいなぁ。
【柏木 愛】
「……こころちゃん」
(抱きしめられて、心臓が跳ね上がる。禁欲中なのわかってるのかな？襲って欲しいのかな？
反射的に抱きしめ返し、全身で彼女の震えを感じ取る。
そして、思い出した。海月の死を。
共有チャットのやりとりからして、彼女達には少なくとも関わりがあったのではないか？誰かが無意味になってしまうとは、海月の事を指しているのではないか？そう思うと、胸が痛まずにはいられなかった。
彼女を抱きしめたまま、彼女の耳元で、小さく呟く)
【あいごころ。】
｢…うん。そっか。｣
そういって万年の笑みを浮かべる。ああ、ならば。そう来るならば。…私も、信用しないわけには行かないじゃないか。このゲームは人を狂わせる。簡単に、単純に。ならば。私は。
｢…疑って、ごめんね。｣
―――左手に持ったナイフから、手を離した。
ポス、と落ちるナイフ。きっと柏木にも気づかれただろう。ただ、私は聞きたかったんだ。…あなたが、人を殺すかどうかを。
｢…あなたは、人を殺すつもりは無いんだね？｣
そうやって、ニッコリと笑う。ああ、試すようなまねしてごめんね？でも、これが一番わかり易かったから。これが一番やりやすかったから。…ああ、もっと上手くやれればよかったんだけどね。ごめんね？
【柏木 愛】
「は、はい……え？んん？え？」
(なにかがおちた。そっちみる。ナイフだ。いたそー。ん？どゆこと？俺、マジで刺される2秒前だったってこと？)
「う、うせやろ……」
(ガタガタと震える。ここに来て、何度命の危機に瀕しただろうか)
【あいごころ。】
｢…本当にごめん。｣
申し訳なく思ってる。…あなたは、私を信用したんだね。ならば、私もそれ相応の覚悟を見せないといけない。
｢柏木さん。でもね。この状況じゃだれも信用出来ないから。｣
…その時、アナウンスが流れた。
『5番目の道化師が死亡しました』
…ああ、そっか。また。“また無意味なものが出来てしまった”。
｢…こんなふうに、誰に殺されるかわからないんだもの。刺すつもりはなかった。でも。｣
あなたを脅すようなコトをしてしまって申し訳なく思ってる。…そう、伝えた。でも、こればかりは必要な事だった。…本当にごめん。
｢…お詫びに、私に出来ることならなんでもするよ？｣
そう言った。…いや、思わずそう言ってしまったと言うべきか。相手があの“柏木”であるということを忘れてしまったのが原因だろう。
…あ、大丈夫かな？理性もつかな？
【柏木 愛】
「………………」
(ん？今何でもするって言ったよね？
冗談でも何でもなく、彼女は今、そう言った。
嗚呼、いつもの柏木ならば理性が消し飛び、彼女にあんなことやこんなことを要求しただろう。
しかし、非常に残念なことに、彼女の言葉は耳に届いていなかった。
『五番目の道化師が死亡しました』
アナウンスはたしかに、そう言った)
「……ピエロちゃん……」
(バーベキューを開いた時、ただ一人来てくれたのは彼女だった。一緒に食材を切り、景色を眺めながら、食事を楽しんだ。写真も撮った。
自分が色々と暴走していた時、叱ってくれたのは彼女だった。こんな自分を厳しくも優しく慰め、二人で帰ろうと言ってくれた。
そんな彼女が、死ぬはず、ない……)
【あいごころ。】
｢柏木、さん…｣
ああ、これは、ダメな全長だ。このままだと彼女も死んでしまう。…黒に、飲まれてしまう。しってるんだ。私も。誰にも頼れない、その地獄を。…ああ、ダメだよ。それじゃあ。それじゃああなたも。
｢…あたなも、壊れちゃう。｣
…どうすればいい？…ああ、簡単だったね。こころで、あの人の分を埋めよう。こころで、空いた穴を塞ごう。
絶望した表情を見せる彼女に少しだけ微笑んだ。
｢…ごめんね？｣
そうして。
彼女と顔を近づける。…こころには、これぐらいしか思いつかなかったから。もし、あなたがこれで笑顔を見せるなら、こころはやってあげる。…だから、お願い。
――――絶望、しないで？
そして、彼女の唇と、こころの唇を。
――重ねました。
…少しの時間だけだけど。やっぱり。…すごく、恥ずかしいなぁ…
【柏木 愛】
「……！」
(柔らかい、天使のような口付けだった。彼はすぐさま現実に引き戻される。ああ、嬉しい。
こんな美少女がキスをしてくれるなんて、嬉しくて堪らない！もっと、次は、もっと濃いのを！さっき何でもするって言ったよね！？その先に俺はいるぞぉ！)
「……あれ……」
(心と身体が、リンクしなかった。力なく崩れ落ち、その場に座り込む。涙が止まらなかった。もう、何も考えられない程に、次から次へと、涙が溢れる。
でも、彼女には応えてあげなくてはならない。彼女がどのような気持ちで自分に唇を預けたのか、わからないわけではない。だから、精一杯の笑顔で、ありがとうと)
「……ごめんなさい……」
(無理に決まっていた)
【あいごころ。】
｢…うん。辛いよね。きっと。あの人はあなたの心の支えの1人だったんだよね。｣
ああ、だめだ。彼女が死んできっと悲しいんだろうね。苦しいんだろうね。でも、ごめん。こころには。
その気持ち、分からないんだ。
だから。大切なおもちゃに例えるしかないんだ。それが無くなったらどう思うか。きっとこういうことだろうって考えて、考えて、予想するぐらいしか出来ないから。…ああ、また、こころは嘘をつくんだね。…結局。
｢だから。割り切れ、だなんて言わないよ。…あの人の代わりにしろ、とも言わない。でもね。あなたは、このままだと潰れてしまう。だから。だから。……私を、頼って。｣
きっと1人だ潰れてしまうから。泣いている、彼女の頭をまた、撫でる。…落ち着いてくれないかな。落ち着いてくれてるといいな。こころが代わりになれるか分からないけれど。でも。
｢だから、大丈夫。…ここに、こころはいるから。｣
そういって、ニッコリと笑うんだ。
【柏木 愛】
「……ぐすっ、ごめんなさい……。
お、俺、しっかりするって、決めたんですけど。
今は、今だけは……こうさせて、ください」
(前に乗り出すと、先程のように彼女を抱擁した。心の内を掻き乱されたような虚無感に、耐えられない。今は、少しでも彼女と触れ合っていたかった。
温かく、小さく、柔らかい身体は、自分と彼女が、まだ生きていて、まだ立ち上がれることを、示唆しているようだった)
【あいごころ。】
｢…人はね、弱いんだ。簡単なことですぐ、意思なんて崩れちゃうんだよ。｣
そういって頭をなで続ける。…きっと、子の人は素直で、いい人なんだろうね。わかるよ。だから、今は支えになってあげないと、きっといつか狂ってしまうから。
｢…あなたは、生きることを諦めるの？｣
いつか問いかけたことをいま、また問いかける。こんなことになってしまった。こんなゲームに巻き込まれてしまった。…もう、後戻りなんて出来ないよ？だから、今、答えを聞こうと思う。
あなたは、人を殺す覚悟はあるのかって。暗に込めた意味をいま、あなたに突きつける。…これは人を殺せって言ってるわけじゃない。人が死ぬ覚悟は、ありますか。そういう意味だから。
【柏木 愛】
「こころちゃん、俺は……俺は……」
(嗚咽をあげて泣きながら、子供のように彼女にあやされる。そうしていないと、彼女の言う通り、崩れてしまいそうだった)
「俺は、ぐすっ、諦めません。死んでしまった、人、たちを、想えるのは、生きてる人だけです。ぐすっ。俺が生きてる限り、それは、放棄しちゃいけません。だから、やれます。やります」
(無論、誰が死んでもOKという意味ではない。願わくば誰も死なず、2度と悲しみたくはない。でも、この先自分が生き続けるのなら、それは避けて通れない道なのだろう。ならば、耐えて、乗り越えてみせる。それが出来なければ、なんのために死者に涙を流したのだ)
【あいごころ。】
｢そっか。なら。｣
そういって私は柏木さんにボソリと呟きます。…きっと、この言葉が彼女にとっての希望になると信じて。
｢―――――だよ。あなたは、生きることを諦めないんだね？｣
そういって柏木さんから離れます。そして、手を自分の口に持って行って。ニシシ、と悪戯っぽく笑ってみました。
｢さて、そろそろ立ち上がろうよ。…あ、これ拾っておこう。｣
そういってナイフを拾い上げます。一応武器は多いに越したことないので…あ、でもやっぱり。
｢これ、あげるね。｣
柏木さんにナイフを手渡します。…まあ、少しあれかな。物騒かもしれないな、って思いますけど…まあ、この状況だと仕方ありません。
少しだけ苦笑します。…さて、それじゃあ。
｢じゃあね、柏木さん。｣
そういって手を振りました。
【柏木 愛】
(それを聞いて、目を見開く。そうか、それなら……)
「わかりました、俺、マジで頑張ります。ありがとうございました。こころちゃんがいなければ俺、やばかったです」
(立ち上がり、膝についた雪を払う。ナイフは有難く頂戴することにした。自衛手段は、必要だろう)
「お気をつけて！」
(立ち去る少女に、元気よく手を振った)
物々コウカン 2nd-20th
みかんちゃん(2nd)-あいごころ。(20th)
【あいごころ。】
｢…ふぅ。｣
やっとついた、と言わんばかりに息を吐く。…まあこの体だと移動するのも大変だからね。…ここに来たのも理由がある。まあ、理由といっても全くもって私事であるんだけどね。
｢…ここでもあったなぁ。｣
…海月。自分に全てを託して死んで行ったあの“道化”。…だから、こころは戻ってこれたし。生きようとも思えてる。…大丈夫。まだ、こころは自分を見失ってない。
｢…安らかに眠れますように。｣
死者を弔う、なんて言うつもりは無い。私にそれが出来るわけないから。でも、それでも何となく見様見真似でやってみた。…これで、少しは心が落ち着けばいいなって。
｢…まあ、だから何って話だけれども｣
そうして少し苦笑してみる。…ああ、きっとあの時の私は、楽しかったんだろうなぁ…
【みかんちゃん】
昨日までの私を取り替えて、今日の私として地を踏んだ。
この足取りに意味はなく、この思考に意味はない。
懺悔も後悔も背負うこともなく。
底の無い瓶に詰めても零れていくだけだろうから。
瓶が割れていたのだと気づいてしまえば蓋を閉める必要はもうなくなった。
必要ないことはしないから意味の無いことと理由の無いことをただ、繰り返そうと思う。
此処は瓶の中だ。
そう捉えておけば、蓋をしていたときよりも胸がすく思い。
協会の扉を開いたその先。
先客に柔らかな笑みを浮かべて声を紡いだ。
「ご機嫌よう？随分と、ご無沙汰ね？」
なんて相変わらず呑気に、少しだけ疲れを色付けて。
【あいごころ。】
｢あ！みかんちゃん！｣
ニッコリと笑みを浮かべて、小走りで近寄ります…ああ、この人はまだ…
…信用、出来ないかな。
だから警戒。いい人に見せながら近づいてくる人ほど、ろくな奴はいませんから。…ああ、信用と言えば。こころは1人、裏切られてしまいましたね。
――こころさん、またね！
…またね、だって。…結局また、会えなかったじゃないですか。さようならのほうが、正しかったじゃなですか。…ああ、本当に。
…嘘つき。
｢みかんちゃん…人が、また死んじゃったね。｣
そういって顔を伏せました。…それが誰を指しているのかは分からないけれど。…きっと、こころが言っているのはあのピエロのこと。底抜けにお人好しの。あの、信用してたピエロのこと。
…ピエロは何人いるんだ、だなんて心の中で苦笑。
でも、それを表情にはだしません。あくまで、何も知らない。何もわからないように。それが、こころだから。
【みかんちゃん】
「──ええ、そうね。」
また、誰かが死んだわね。
誰？知らないけど。
花が萎れたのは見たけれど[誰]が死んだのやら。
まぁ、
きっと誰かがまた死んだのだろう。
ならばあのとき同様、私は眉尻を下げて弱々しく笑みを浮かべるのだ。
励ましたくても、励ませない。
そんな風に。
××の前でやっていたことと同じで。
「だから、貴女がまだ生きていただけでも…ええ、心底安心した。…知り合いを失うのは辛いもの。」
そう言って彼女の頭を撫でるのだ。
花を手折ったその手で、撫でる。
──あー…馬鹿らしい。全てが。
【あいごころ。】
｢…うん。｣
頭を撫でられて少しだけ安心する…ああ、このまま心を許せるのであればどんなに楽なことか。…でも、それだとだめ。このゲームはそんなに優しくできてないと思うから。このゲームはきっとうまく、こころたちを絶望させるように出来てるはずだから。ここで、少しだけ。試さないといけないのかもしれない。
…狐面を、ズラす。
｢…一つだけ、聞かせてください。｣
撫で続ける相手の手を掴むとそのまま降ろしておく。少しだけ相手から離れて。…不安そうな表情を浮かべて、実直に。率直に。簡潔に。素直に。
｢…あなたは、人を殺すつもりはありますか？｣
…震える声を悟られないように、しっかりと相手の目を見て言った。
…ああ、嫌だなぁ。こんな事を聞かないといけないなんて。…本当に、悪趣味だ。
手を後ろに回して、見られないように。後ろ手に、狂気を持った。
…凶器を、持った。
【みかんちゃん】
促されるままにその手を彼女から離して、
その口の動きを目に入れて
その音を震えを耳に入れて
道化師の写鏡のように笑顔を浮かべた。
私は道化ではなく、絡繰りのほうが正しいのだけれど。道化の笑顔が余りにも奇麗で綺麗だったから、見様見真似に笑ってみた。
猿真似もいいところ。
警戒の音がする。
酷く雑音。哀れ警鐘。悲しきサイレン。
全部、聴こえてるのよ。
貴女のその[音]
行き場を失ったその手はそのままに、もう片方の手で白い布に包んだソレを取り出して、持ち上げると白い布ははらりゆらりと重力に合わせて不規則に落下。
きらり姿を現すその銃口。
それを彼女の前に突き出して、
さあ、これは最大の賭けとでも──
いや、そんな言葉余りにも幼稚過ぎるか。
「──あるわよ。」
嗤う。
刹那、指を
引いた。
──[音]が鳴る。
鳴ったけど、
それだけ。
「なぁんて、ね？冗談♡」
それもそう。
何故ならコレはよく出来た作り物だから。
銃口から煙が出る辺り、リアルね？
いやいや何故悪趣味な。
なんて思うかもしれないけれど、
そこは謝罪しておくとして。
口で説明するより早いと思ったから。
なんてことにしておこう。
「これ、あげるわ。貰い物なの。どんなものかは今のでわかったでしょう？」
【あいごころ。】
｢…あは、｣
そっか。そういうことか。まあ、そういうことをしてくるなんてね。
きっと、これは意思表示。…殺すつもりは無いっていう。でも、それと同時に分かったこともある。…きっと、この人は。…何かをやった。
それが誰かを殺したことに直結するか分からないけれど。間接的に関わりを持ったか知らないけれど。この人は。
――――質問を、はぐらかしたかったんだ。
…なら、いいよ。そちらがその気なら、こっちもその気になるよ。
…後ろ手に持った“凶器”を、相手に突き出した。…ああ、こんなの子供騙しにもならないけれど。弔いのために持ってきたもの。誰かを脅すにも役に立たないもの。だから。
おもちゃのナイフを、相手に突き出して。
｢…なら、こっちはこれをあげるよ。｣
おもちゃとおもちゃ。物々交換には、丁度いいでしょう。それに、これぐらいが、こころにできることだから。…仮面を被ったこころには、ね。
…ねぇ、あなたは一体何をしたの？わからない。わからないよ。だから。こころは。
…あなたを警戒することにする。
そして、こころはまたニッコリと笑います。
【みかんちゃん】
突き出されたその[凶器]に微動だにせず
何故ならする必要のない行動だったから。
偽物かわかったから？いや、そんなに私の目は肥えてなどいない。何処ぞの刃物職人でもないのだから。
ただ、本物だったとしても必要はなかった。
──かもしれない。
何れにせよ彼女はこちらを警戒しながらも今この瞬間殺しはしないと認識したのであればそれで充分上出来である。
上出来？小さい子供に見えたからつい上から物を言ってしまった。
訂正しておきましょう。
「あら、いいわね…物々交換。」
なんて柔らかく笑い返して、偽物をとりかえっこ。
互いに偽物。
互いに偽り。
互いが仮面を被っていること、彼女も私ももうとっくに気がついているはずなのに
互いに、知らん顔。
だから少しだけ、知ってもらうことにしようか。
交換する際その手を引いて、彼女の耳元に顔を寄せた。
「──────。」
依然変わらぬ微笑みを口元に浮かべて。
離れたその距離はとりあえずこのままで。
【あいごころ。】
｢…そっか。｣
その言葉を聞いて。ああ、なるほどって。…でもね。ああ、確かに同時に納得はした。
｢…そうだね。なら、私も1つ。｣
そういって内緒話をするように囁いた。
｢――――――｣
そういって悪戯っぽく微笑んで。
｢…それじゃ、こころいくね？｣
そういって協会の入口へと歩んでいく。
…ああ、仮面は、そろそろ外れそうだなぁ…いや、外してもいいかもしれない。きっと、あの時。拳銃を突きつけられた時に感じたのは…恐怖じゃ、なかったから。
…あれは、きっと。
｢……昇華しないと、ね？｣
そういって入口へと歩いてく私の口は、上がっていたことに。あなたは気づいていないでしょうね。
【みかんちゃん】
「──あぁ、そうだったの」
内緒話にからりと笑った。
それだけ。
彼女が自身をどう捉えようも彼女の中で個として僅かに入れたなら、これは全て必要だったのだろう。
完全な信頼なんてありやしないのだから。
だからそれ以上に彼女に何か言葉を返すでも与えるでもなくその背中を見送って。
見送りながら、人差し指を彼女に突き出してみせて
「──バンッ」
なんて小さく呟いて少しだけ巫山戯てみた。
ああ、それじゃあばいばい。
貴女は私と違う場所でまた、
踊っていてね。
【あいごころ。】
｢…ふぅ。｣
やっとついた、と言わんばかりに息を吐く。…まあこの体だと移動するのも大変だからね。…ここに来たのも理由がある。まあ、理由といっても全くもって私事であるんだけどね。
｢…ここでもあったなぁ。｣
…海月。自分に全てを託して死んで行ったあの“道化”。…だから、こころは戻ってこれたし。生きようとも思えてる。…大丈夫。まだ、こころは自分を見失ってない。
｢…安らかに眠れますように。｣
死者を弔う、なんて言うつもりは無い。私にそれが出来るわけないから。でも、それでも何となく見様見真似でやってみた。…これで、少しは心が落ち着けばいいなって。
｢…まあ、だから何って話だけれども｣
そうして少し苦笑してみる。…ああ、きっとあの時の私は、楽しかったんだろうなぁ…
【みかんちゃん】
昨日までの私を取り替えて、今日の私として地を踏んだ。
この足取りに意味はなく、この思考に意味はない。
懺悔も後悔も背負うこともなく。
底の無い瓶に詰めても零れていくだけだろうから。
瓶が割れていたのだと気づいてしまえば蓋を閉める必要はもうなくなった。
必要ないことはしないから意味の無いことと理由の無いことをただ、繰り返そうと思う。
此処は瓶の中だ。
そう捉えておけば、蓋をしていたときよりも胸がすく思い。
協会の扉を開いたその先。
先客に柔らかな笑みを浮かべて声を紡いだ。
「ご機嫌よう？随分と、ご無沙汰ね？」
なんて相変わらず呑気に、少しだけ疲れを色付けて。
【あいごころ。】
｢あ！みかんちゃん！｣
ニッコリと笑みを浮かべて、小走りで近寄ります…ああ、この人はまだ…
…信用、出来ないかな。
だから警戒。いい人に見せながら近づいてくる人ほど、ろくな奴はいませんから。…ああ、信用と言えば。こころは1人、裏切られてしまいましたね。
――こころさん、またね！
…またね、だって。…結局また、会えなかったじゃないですか。さようならのほうが、正しかったじゃなですか。…ああ、本当に。
…嘘つき。
｢みかんちゃん…人が、また死んじゃったね。｣
そういって顔を伏せました。…それが誰を指しているのかは分からないけれど。…きっと、こころが言っているのはあのピエロのこと。底抜けにお人好しの。あの、信用してたピエロのこと。
…ピエロは何人いるんだ、だなんて心の中で苦笑。
でも、それを表情にはだしません。あくまで、何も知らない。何もわからないように。それが、こころだから。
【みかんちゃん】
「──ええ、そうね。」
また、誰かが死んだわね。
誰？知らないけど。
花が萎れたのは見たけれど[誰]が死んだのやら。
まぁ、
きっと誰かがまた死んだのだろう。
ならばあのとき同様、私は眉尻を下げて弱々しく笑みを浮かべるのだ。
励ましたくても、励ませない。
そんな風に。
××の前でやっていたことと同じで。
「だから、貴女がまだ生きていただけでも…ええ、心底安心した。…知り合いを失うのは辛いもの。」
そう言って彼女の頭を撫でるのだ。
花を手折ったその手で、撫でる。
──あー…馬鹿らしい。全てが。
【あいごころ。】
｢…うん。｣
頭を撫でられて少しだけ安心する…ああ、このまま心を許せるのであればどんなに楽なことか。…でも、それだとだめ。このゲームはそんなに優しくできてないと思うから。このゲームはきっとうまく、こころたちを絶望させるように出来てるはずだから。ここで、少しだけ。試さないといけないのかもしれない。
…狐面を、ズラす。
｢…一つだけ、聞かせてください。｣
撫で続ける相手の手を掴むとそのまま降ろしておく。少しだけ相手から離れて。…不安そうな表情を浮かべて、実直に。率直に。簡潔に。素直に。
｢…あなたは、人を殺すつもりはありますか？｣
…震える声を悟られないように、しっかりと相手の目を見て言った。
…ああ、嫌だなぁ。こんな事を聞かないといけないなんて。…本当に、悪趣味だ。
手を後ろに回して、見られないように。後ろ手に、狂気を持った。
…凶器を、持った。
【みかんちゃん】
促されるままにその手を彼女から離して、
その口の動きを目に入れて
その音を震えを耳に入れて
道化師の写鏡のように笑顔を浮かべた。
私は道化ではなく、絡繰りのほうが正しいのだけれど。道化の笑顔が余りにも奇麗で綺麗だったから、見様見真似に笑ってみた。
猿真似もいいところ。
警戒の音がする。
酷く雑音。哀れ警鐘。悲しきサイレン。
全部、聴こえてるのよ。
貴女のその[音]
行き場を失ったその手はそのままに、もう片方の手で白い布に包んだソレを取り出して、持ち上げると白い布ははらりゆらりと重力に合わせて不規則に落下。
きらり姿を現すその銃口。
それを彼女の前に突き出して、
さあ、これは最大の賭けとでも──
いや、そんな言葉余りにも幼稚過ぎるか。
「──あるわよ。」
嗤う。
刹那、指を
引いた。
──[音]が鳴る。
鳴ったけど、
それだけ。
「なぁんて、ね？冗談♡」
それもそう。
何故ならコレはよく出来た作り物だから。
銃口から煙が出る辺り、リアルね？
いやいや何故悪趣味な。
なんて思うかもしれないけれど、
そこは謝罪しておくとして。
口で説明するより早いと思ったから。
なんてことにしておこう。
「これ、あげるわ。貰い物なの。どんなものかは今のでわかったでしょう？」
【あいごころ。】
｢…あは、｣
そっか。そういうことか。まあ、そういうことをしてくるなんてね。
きっと、これは意思表示。…殺すつもりは無いっていう。でも、それと同時に分かったこともある。…きっと、この人は。…何かをやった。
それが誰かを殺したことに直結するか分からないけれど。間接的に関わりを持ったか知らないけれど。この人は。
――――質問を、はぐらかしたかったんだ。
…なら、いいよ。そちらがその気なら、こっちもその気になるよ。
…後ろ手に持った“凶器”を、相手に突き出した。…ああ、こんなの子供騙しにもならないけれど。弔いのために持ってきたもの。誰かを脅すにも役に立たないもの。だから。
おもちゃのナイフを、相手に突き出して。
｢…なら、こっちはこれをあげるよ。｣
おもちゃとおもちゃ。物々交換には、丁度いいでしょう。それに、これぐらいが、こころにできることだから。…仮面を被ったこころには、ね。
…ねぇ、あなたは一体何をしたの？わからない。わからないよ。だから。こころは。
…あなたを警戒することにする。
そして、こころはまたニッコリと笑います。
【みかんちゃん】
突き出されたその[凶器]に微動だにせず
何故ならする必要のない行動だったから。
偽物かわかったから？いや、そんなに私の目は肥えてなどいない。何処ぞの刃物職人でもないのだから。
ただ、本物だったとしても必要はなかった。
──かもしれない。
何れにせよ彼女はこちらを警戒しながらも今この瞬間殺しはしないと認識したのであればそれで充分上出来である。
上出来？小さい子供に見えたからつい上から物を言ってしまった。
訂正しておきましょう。
「あら、いいわね…物々交換。」
なんて柔らかく笑い返して、偽物をとりかえっこ。
互いに偽物。
互いに偽り。
互いが仮面を被っていること、彼女も私ももうとっくに気がついているはずなのに
互いに、知らん顔。
だから少しだけ、知ってもらうことにしようか。
交換する際その手を引いて、彼女の耳元に顔を寄せた。
「──────。」
依然変わらぬ微笑みを口元に浮かべて。
離れたその距離はとりあえずこのままで。
【あいごころ。】
｢…そっか。｣
その言葉を聞いて。ああ、なるほどって。…でもね。ああ、確かに同時に納得はした。
｢…そうだね。なら、私も1つ。｣
そういって内緒話をするように囁いた。
｢――――――｣
そういって悪戯っぽく微笑んで。
｢…それじゃ、こころいくね？｣
そういって協会の入口へと歩んでいく。
…ああ、仮面は、そろそろ外れそうだなぁ…いや、外してもいいかもしれない。きっと、あの時。拳銃を突きつけられた時に感じたのは…恐怖じゃ、なかったから。
…あれは、きっと。
｢……昇華しないと、ね？｣
そういって入口へと歩いてく私の口は、上がっていたことに。あなたは気づいていないでしょうね。
【みかんちゃん】
「──あぁ、そうだったの」
内緒話にからりと笑った。
それだけ。
彼女が自身をどう捉えようも彼女の中で個として僅かに入れたなら、これは全て必要だったのだろう。
完全な信頼なんてありやしないのだから。
だからそれ以上に彼女に何か言葉を返すでも与えるでもなくその背中を見送って。
見送りながら、人差し指を彼女に突き出してみせて
「──バンッ」
なんて小さく呟いて少しだけ巫山戯てみた。
ああ、それじゃあばいばい。
貴女は私と違う場所でまた、
踊っていてね。
夢のように幻る 12th-19th
トロンパ(12th)-アダム(19th)
【トロンパ】
さて
「もうマジ無理…」状態から脱却し、とある"目的"を持って動き出したトロンパは
温泉に浸かっていた
「はぁ〜…湯がしみる…」
久しぶりの温泉である。この温もりに、この開放感に、そして何より-
「……この"体"に感謝、ってな…あー、生きてるって素晴らしい…」
そう言って自身の"体"に触れる。
…そう。彼は現在"生きていた"のだ
「……ま、せっかくのチャンスだと思いますかね…この状況は…」
何はともあれ肉体があるんだから今は取り敢えずこの湯を楽しもうと。のんびり浸かっていた
【アダム】
殺し合い、デスゲームが始まって数日が経った。情報収集はある程度済んだため休憩、つまり温泉だ。
情報収集はある程度済んでいるとはいえ、未だ目的の人を見つけられていない為焦りと不安が心に立ち篭める。
そのせいか神妙な顔付きになっている。
だがそれはデスゲームに対するものでは無い。
殺し合いが起きたのも全て問題ではない。
修学旅行にトラブルは付き物なのだから。
「お、トロンパじゃん。久し振りだねー」
真っ裸になり、扉を開ければ見知った顔が居た。その頃には既に神妙な顔付きなどとは縁のない能天気な顔となっていた。
まるでこの状況を理解していないかのような。
「トロンパは温泉好きだね〜。それともなに、求めてるの？
まあ冗談は置いといて最近どうよ」
彼女が言うと冗談にはならない。それは彼女自身も知っている。知っているけれどもトロンパを弄りたいのだ。
理由、そんなもの楽しいからに決まっている。
弄られる本人からしたらたまったもんじゃないけれど
【トロンパ】
「おー？…お前か。まあ、ボチボチだなー。…幽霊ってのも中々に乙なもんだったぜ」
適当な事を適当に適当する。あー温泉キモちぃ
「……ところで、お前なんか陣営だったりする？」
ぼんやりと相手の裸体を眺めながら、特に重要な事でもないと言わんばかりに
質問をする
【アダム】
幽霊？つまりトロンパは1回死んでいる。
なるほど、あと1回死ねば他人の力でない限り復活しないのか。
「陣営？私は陣営なんてないよ。無所属。
だけど私は色々なことを知ってるよ、この状況とか予め知ってた。」
うふふと笑いながら湯に浸かるトロンパに近付く。
勿論、殺すためとかそういう訳ではない。ただ隣に浸かるためだ。
湯に浸かれば気持ちよさそうななんとも言えない顔を一瞬見せる。
「なーんて、私が言ったら信じる？信じない？
まあ、何処にも所属してないってのは嘘になるかな。だってホラ、学校に所属してるし。」
そういう所属ではないけれどトロンパにそう告げる。
そして右腕をトロンパの首筋にかけて肩を組んだ。
男と女が真っ裸で密着して肩組んで羞恥心は無いのかだって？そんなもん犬に喰わせた。
だが、1度死んでいるのならば人肌が恋しくなるのでは？そう考えた彼女なりの優しさでもある。
【トロンパ】
「………………………………………そうか。…うーん、どうしたもんか…」
何事も無いように口では応えるが、何事もあるのは返答に要した時間と若干右にさらされる視線から分かるだろう
人はそう簡単には変わらない
(……あったけぇなぁ……)
湯の温もりとは違う、人の温もり
「…まぁ、俺も陣営とか無いしな…でも、そこで無所属じゃなくて学校所属って言うのはいいな…」
【アダム】
「でしょでしょ？」
そこを褒められれば嬉しそうにする。
トロンパの困ったような視線は気にしてない。てか気付いてない。どうやらそこまで気が回らないらしい。
そもそもそこまで気を回す必要性は二人の間では最早不要となっているのだが
「まあ困った時は遠慮なく私に言いなよ。お互い敵どうしじゃないし、なんなら私が守ってあげる？
私、中々腕はある方だよ」
それを自分で自信満々に言うのか、そう思われても仕方ない。
更にいえばアダムは女でトロンパは男、普通守られるのはアダムで守るのはトロンパだろう。
だがここは常識が破綻している。1つくらい、何かがあべこべでも良いだろう。
【トロンパ】
(かわいい)
何故そうなるのかに説明とか要らんだろ、もう。
「…はは、流石に守られっぱなしはカッコ悪い気もするが…まぁ、そうだな…守り守られってのなら、悪くは無いかもな。」
お互い必要な時に助け合う
こんな所でも無ければ、割とよくある事なのだが。
(…いや。俺が見えなくなってただけかもな。)
「…さんきゅーな。おかげでちょっと元気出たよ。そっちも、なんか困った事とかあったら言ってくれ、できる限り手伝うからさ」
【アダム】
「元気出た？それは良かったわ」
にっと笑う。良い笑顔。
「まあお互い死なないように頑張りましょ。特にトロンパは1回死んでいるのだから次は無いわよ？」
と釘を刺せば最後に逆上せちゃうから先に上がるわねと告げる。
立ち上がる際、トロンパの頬に音を立ててキスをすればさっさと立ち去る。
そのキスはまるでフランスで別れ際にするもののようだ。
だがする場所が違うことまで気付くかは分からない。
【トロンパ】
さて
「もうマジ無理…」状態から脱却し、とある"目的"を持って動き出したトロンパは
温泉に浸かっていた
「はぁ〜…湯がしみる…」
久しぶりの温泉である。この温もりに、この開放感に、そして何より-
「……この"体"に感謝、ってな…あー、生きてるって素晴らしい…」
そう言って自身の"体"に触れる。
…そう。彼は現在"生きていた"のだ
「……ま、せっかくのチャンスだと思いますかね…この状況は…」
何はともあれ肉体があるんだから今は取り敢えずこの湯を楽しもうと。のんびり浸かっていた
【アダム】
殺し合い、デスゲームが始まって数日が経った。情報収集はある程度済んだため休憩、つまり温泉だ。
情報収集はある程度済んでいるとはいえ、未だ目的の人を見つけられていない為焦りと不安が心に立ち篭める。
そのせいか神妙な顔付きになっている。
だがそれはデスゲームに対するものでは無い。
殺し合いが起きたのも全て問題ではない。
修学旅行にトラブルは付き物なのだから。
「お、トロンパじゃん。久し振りだねー」
真っ裸になり、扉を開ければ見知った顔が居た。その頃には既に神妙な顔付きなどとは縁のない能天気な顔となっていた。
まるでこの状況を理解していないかのような。
「トロンパは温泉好きだね〜。それともなに、求めてるの？
まあ冗談は置いといて最近どうよ」
彼女が言うと冗談にはならない。それは彼女自身も知っている。知っているけれどもトロンパを弄りたいのだ。
理由、そんなもの楽しいからに決まっている。
弄られる本人からしたらたまったもんじゃないけれど
【トロンパ】
「おー？…お前か。まあ、ボチボチだなー。…幽霊ってのも中々に乙なもんだったぜ」
適当な事を適当に適当する。あー温泉キモちぃ
「……ところで、お前なんか陣営だったりする？」
ぼんやりと相手の裸体を眺めながら、特に重要な事でもないと言わんばかりに
質問をする
【アダム】
幽霊？つまりトロンパは1回死んでいる。
なるほど、あと1回死ねば他人の力でない限り復活しないのか。
「陣営？私は陣営なんてないよ。無所属。
だけど私は色々なことを知ってるよ、この状況とか予め知ってた。」
うふふと笑いながら湯に浸かるトロンパに近付く。
勿論、殺すためとかそういう訳ではない。ただ隣に浸かるためだ。
湯に浸かれば気持ちよさそうななんとも言えない顔を一瞬見せる。
「なーんて、私が言ったら信じる？信じない？
まあ、何処にも所属してないってのは嘘になるかな。だってホラ、学校に所属してるし。」
そういう所属ではないけれどトロンパにそう告げる。
そして右腕をトロンパの首筋にかけて肩を組んだ。
男と女が真っ裸で密着して肩組んで羞恥心は無いのかだって？そんなもん犬に喰わせた。
だが、1度死んでいるのならば人肌が恋しくなるのでは？そう考えた彼女なりの優しさでもある。
【トロンパ】
「………………………………………そうか。…うーん、どうしたもんか…」
何事も無いように口では応えるが、何事もあるのは返答に要した時間と若干右にさらされる視線から分かるだろう
人はそう簡単には変わらない
(……あったけぇなぁ……)
湯の温もりとは違う、人の温もり
「…まぁ、俺も陣営とか無いしな…でも、そこで無所属じゃなくて学校所属って言うのはいいな…」
【アダム】
「でしょでしょ？」
そこを褒められれば嬉しそうにする。
トロンパの困ったような視線は気にしてない。てか気付いてない。どうやらそこまで気が回らないらしい。
そもそもそこまで気を回す必要性は二人の間では最早不要となっているのだが
「まあ困った時は遠慮なく私に言いなよ。お互い敵どうしじゃないし、なんなら私が守ってあげる？
私、中々腕はある方だよ」
それを自分で自信満々に言うのか、そう思われても仕方ない。
更にいえばアダムは女でトロンパは男、普通守られるのはアダムで守るのはトロンパだろう。
だがここは常識が破綻している。1つくらい、何かがあべこべでも良いだろう。
【トロンパ】
(かわいい)
何故そうなるのかに説明とか要らんだろ、もう。
「…はは、流石に守られっぱなしはカッコ悪い気もするが…まぁ、そうだな…守り守られってのなら、悪くは無いかもな。」
お互い必要な時に助け合う
こんな所でも無ければ、割とよくある事なのだが。
(…いや。俺が見えなくなってただけかもな。)
「…さんきゅーな。おかげでちょっと元気出たよ。そっちも、なんか困った事とかあったら言ってくれ、できる限り手伝うからさ」
【アダム】
「元気出た？それは良かったわ」
にっと笑う。良い笑顔。
「まあお互い死なないように頑張りましょ。特にトロンパは1回死んでいるのだから次は無いわよ？」
と釘を刺せば最後に逆上せちゃうから先に上がるわねと告げる。
立ち上がる際、トロンパの頬に音を立ててキスをすればさっさと立ち去る。
そのキスはまるでフランスで別れ際にするもののようだ。
だがする場所が違うことまで気付くかは分からない。
二者択一 8th-18th
酢豚に極稀に入ってるパイナポー(8th)-唐揚げ食べたい(18th)
【唐揚げ食べたい】
(ゆらり、ゆらりと揺れる船。
此処から何処かに行くことは出来ないけれど、このまま何処かへ行ってしまいたい気分。
そう、18th"唐揚げ食べたい"は船着場にいた。
船の中に、倒れ込むように寝転がっている。
死体のようだが、彼は死ぬどころか攻防戦すらしておらず。…強いて言えば、"とある彼"にスタンガンをぶつけられたくらいなものか。)
「…あー…………」
(何をするでもなく、そこに居た。
探索をするとか、そんなことはどうでもよくて。誰か人を待つような姿に見えるだろうが、そんな約束などしておらず。
人が奇跡的に来れば探索をする気も出るのだろうが、殆ど寝ていない自分は疲れ切っていた。
コロパットを見たのか、頭の横の方に置いてあり。其処へ突っ伏すように寝ているのだから、それもまた乱雑に殺されたようで。
早く探索しなよ。
…人でも来ればする気も出るんだけどね。
どうしてそんなやる気がないの？
もう色々と、疲れたんだ。君と会ってないからかもね。
ふふ、会ったでしょう？
�燹懲；；’焼發如△諭���
二人の声が揃う脳内会話。こういうことは、久し振りかもしれないな。
船は、相変わらず揺れている。)
【酢豚パイナポー】
「うーさーぎおーいし
かーのーやーま
こーぶーなつーりし
かーのーがーわー
ゆぅめーはいぃまーもめぇぐりてー…」
こんこんこんこん。船内へと響く革靴の音。
その人物は日本の童謡を口ずさみながら、壁を3本の指でなぞるようにして進んでいく。
動きにより掠れるコートの音。
ショッピングモール買ったジャンバーの上から羽織ったけれど、未だ寒さを感じないことはない。いやはや、前言撤回前言撤回。
ぶつかってかつんかつんいって邪魔だ邪魔。
コートはぶかぶか寒さは拭えず。必要性を感じることは一切無い。ならば、それは無駄であることは自明の理である。論理的な思考だ(自己主張)
「ふ
る
さ
と
。
…ってね。」
くすくすと、何が面白いのやらか。パイナポーは微笑む、微笑む。自身の貰ったこのゾディアック…使い所さんが多くて困ってしまう。
使わないにこした事は無いんだけど。
【唐揚げ食べたい】
「……………」
(聞こえてくる歌声を流して、うだうだと床に突っ伏したまま。
何か動く訳でもなければ、声に反応するわけでもなく。
なぜ人が来たのに動かないの？
…なんでだろうね、自分でもよく分かんないや。
ぱーっ、とやればいいのに。
それが出来るのは君だけだよ、なんてね。
けらけら、と船の床に頬をくっ付けては静かに笑う。会話が面白いのか、それとも彼女の呑気な歌声が面白いのか。)
「…ふるさと、だっけ。それ」
(静かに、何処か独り言のように呟いた。相手に聞かれてても、聞かれてなくても構わない。どっちでもいいけど、取り敢えずこのまま寝ているだけというのもアレだから。
くすくす、クスクス。彼女の笑い声を聞いて。同調するように笑い声を漏らしながら。
嗚呼、彼女は誰だっけ。
きっと会ったことがないんだろうな、と。
まあ、会ってても何も変わらないか。)
【酢豚パイナポー】
さてはて、動き出すパイナポー。
彼女が黒き眼、その瞳の先に見ゆる景色は白いシャングリラか黒い三途の河か。
どちらにせよ、ろくなもんじゃないって事は自分が一番知っている。知らされている、知ってしまっている。
くすくすくすくす。笑う少女は歩く、歩く。
船首から操舵室、ボイラー通って客室へ。
ゆっくり気ままに己がペース。
まぁ、御生憎様、残念無念無縁無知。
パイナポーは何も見つける事はない。それが一番良い事だ。知らないと言う罪と知りすぎる罠、どこで聞いたかどこで知ったか。まぁ、ここには関係なきお話であろうて。
「………ぁあ。ご機嫌ようです、お初にお目にかかるお人さん。今日の調子は如何程ですか？」
がちゃり、ぱたん。がちゃり、ぱたん。
生前には行えない船内探索。精々強面のおっさんに怒られるが関の山だっただろう。
ワンチャンス、おじさんおばさんの興味すらわかない情事を覗くことになるかもしれぬが。
…全くもってどうでもいい。探索も、戦闘も、生存も。無駄無駄、要らない、どうでもいい。
そもそもの話、自身のアイデンティティさえ消え去るのが定めのお話。ただ時間を浪費する為の意味なきゲーム、ただの暇つぶしに過ぎぬ。
繰り返すこと5度。ドアガチャRTAを始めようかなんて考える頃合、見つけた見つけた第1村人。いや、船内に居るし舟人か？…どうでもいいけど。
【酢豚パイナポー】
「…──────、」
(ガチャリ、と音を立てては現れる少女。自由に動き回り話しているあたり案の定参加者か。
"あー…"なんて呻きながら、体勢を直して壁際へ座り込み。
首でも寝違えたのか、ぐるりと首を回しては左手で自身の首を摩った。
伏せ細めた眼でパイナポーを見つめれば、表情を変えることなく傍のコロパットを手に取り。参加者名簿を一つずつ見て、"嗚呼コイツか"と頷いた。)
「…パイナポー、ちゃんだっけ。君」
(知らないけど。だって会ったことないもの。
今確認して今初見のはずなのに、まるで何処かで一度出会ったかのような言い草。
"今日の調子"なんざどうでもよかろうと、スルーを決め込んだようで。色々と疲れたのか、軽く窶れた顔を見せた。
随分大変そう？
そりゃ、こんなゲームに巻き込まれたんだからね。
でもそれは、
…そう、"みんな同じ"。でも"みんな違う"よ。
ふーん？…まあ、そんなもんか。
こんな日でも回り続ける会話はある種雑音と言ってもいい。…いや然し、それが安定剤としての用途を発揮しているならばBGMのように流したままでよかろう。
まあ、脳内事情など誰も興味などない。ここで一つ、お決まりのセリフでも如何かな。
"殺人を犯せるか"なんて、遠回しに聞いてみるあの言葉。…そういえばいつか出会った狐面の少女がやっていたっけ。)
「君は"ゲームの参加者"か？」
【酢豚パイナポー】
唐揚げがコロパッドへと視線を送っている間、無論勿論同じとも。パイナポーが行う怪しい行動その答えは如何に。
はい、正解は。パイナポーもコロパッドを見ていたのでした。ちゃんちゃん。
「ええ、そうですよ。唐揚げさん。」
まぁ、全くもって。誰も興味すらわかぬ脳内劇場。
客は0人、上映中は立つのはお控えください。でないとふぁんふぁん、警報なるのでご注意を。
言葉遊びや比喩を入れたはいいものの、つまらないはしたないどうでもいい。
残らない言葉など意味がない、報われない努力など意味がない、必要ない痛みなど意味がない。ないないないない…ないない、ナイ。
ま、アイツ風に言うのなら。
“これも嘘かもしれないがな”
…なんちゃって。
「私は参加者ですよ、参加者。それ以外に形容するならみんなのみかた、なんていいんじゃないですか？」
「勿論、嘘かもしれないし。嘘じゃないかもしれないしですけど。けどけど。」
「そう言う貴方は如何ですか？」
扉は開けっぱなし、寒い空気が侵ってくる。
翻すコートはカーキのサイズが合わず。きっと男性物…膝下まであるコートなどオシャレにもならないからさ。
心の中では男性…こう言うと決まって性同一性障害なんて言われちゃうけど。
兎も角。
男の自分としては、このコートを選ぶのは自然の摂理。カマトト振りも板にはつかない。ばちゃっと潰れてずるずる堕ちる。
全く…失敗ばっかりだ。
【唐揚げ食べたい】
「みんなのみかた、ねぇ。」
(そんな嘘、誰が信じると思う？…嗚呼、いや。嘘と決まったわけではないね。
こんな世の中にも"Celestia"とかいう正義の味方が居るらしいじゃないか。
全く馬鹿らしい、違う違う。…協力したいものだな、なんて。
彼女がそのCelestiaかもしれないが、その信憑性など無いに初対面の自分には等しく。
むしろAzothなのでは、なんて思考がチラついている。恐ろしい恐ろしい、殺されたくないね。)
「俺も参加者か、参加したくはないけど。
みんなのみかた、とかそういうセリフは嫌いだから言わないでおくよ。
敵じゃ無いとは思うけどね。」
(そんなのも、フェイクかもしれないけど。
…そんな、何処かの誰かを真似たような事は言わないでおく。…いや、その誰かが誰かなど知らないか。目の前の彼女を真似したのかもしれない。
当たり障りの無い、"誰もがこういうニュアンスのセリフを言うであろう"なんて言葉を呟く。
言葉に個性を乗せるのは苦手なんだ、とかそういうのは初期の自分へ喧嘩を売っているようなものだから言わないでおくけど。
ロングのジャケット、いやパーカーと言うべきか。膝下ほどまである長さの布は、座ることによって地面に広がっている。
寒くないのか、と言われれば勿論"寒い"のだけれど。
寒さに負けていたら何も出来ないだろうに。
嗚呼、いけないいけない。寒いとか思ってたら、寒くなってきた。
やめようか、こういう思考。突拍子もない質問で掻き消してみせようか。)
「お前はこのゲームについて何か知ってるか？」
(意訳、情報を寄越せ。
嗚呼、何の条件も無しに聞こうとはしているが。…別にこちらからの何かが無いというわけでは無い。
条件があればそれを飲むかもしれないし、飲まないかもしれないわけだ。
モノによっては、飲む条件は満たせないかもしれないが。)
【酢豚パイナポー】
ああ。その言葉を待っていた。
逐次確認していた共有チャット。
歯痒く思う情報の羅列。信憑性にかける物が氾濫するのは耐えられない、一度痛い目見てれば分かるのは道理だ。
そのせいで、親友も失ったんだし。
「ーーーー成る程。願っても無い話、そちらの持つ情報さえあれば、私はもう少し楽に動ける。」
「嘘誠は考えないようにしましょう。貴方が“善い人か否か”と言う事は大切ですから、ね。」
くすくすくすくす。
パイナポーは笑う。
無意味に無価値に。
幸いにして、この体は生前の技術は受け継いでいるようだ。色々確認して得た結果、使いどころはないけれど、使うべきはやってくる。
「とりあえず、私の質問をひとつ。お通しみたいなものです。これがないと始まりませんしね。」
またまたパロティだけど。適切に。
…さぁ、種を蒔こうか。
「唐揚げさん。ーーーーーーーーー？」
【唐揚げ食べたい】
「……ああ、」
(一言、水面に見える消える泡沫のように呟いて。
"ああ"なんて反射的に出た言葉に特に意味があるはずが無く、ただ彼女の言葉に頷くような一言。"YES"のような何かに答える意も勿論無い。
言いかけた言葉、言いたい言葉、言えない言葉、色々とあるが。
それを隠してしまおう、邪魔だから。そんな言葉は存在自体、消してしまおう。)
「─────……？」
(お通し、だとか。そんな居酒屋にでも行かなきゃ出ないもの、未だ高校生の自分には分からない話。
嗚呼、でも聞いたことある。お通し、とか言って出る癖に代金を払う必要があるとかないとか。その程度の知識。
だから分からなかった。彼女の口から出る次の言葉とか、全部。)
「……、っは…？
────…残念ながら、興味は無いな。」
(驚いた。この反応が普通なのか異常なのかは分からないが、酷く恐怖するような素振りをするほどには驚いた。
何故そんな驚くの、とかそういう質問は野暮。答えなどないし答えたくは無い。
もしかしたら普通に人生を歩んでいれば、興味も出ていたかもしれないもの。だって、そういうお年頃。
でも、拒否反応。無理無理無理。
聞いて、疑問して。…でも、答えは即答だった。)
【酢豚パイナポー】
「え。…ホント…ですか？」
まさしく予想外、予定外。
パイナポーの予想では、この質問には快く“あります”の一言を言ってくるだろうと考えていたのだから、仕方ない。
「あの、恥ずかしく思わなくていいんですよ？
私は、理解ありますから。ええ。
ホントです、嘘じゃないですよ？
あの…
ホントですか？
今なら違うって言えるんですよ？
どうしますか？
OKorYES,おまけの“はい”でどうですか？」
まくし立てるように、早口のパイナポー。
返答の選択肢は無いのか、なんて言いたくなる。…あぁ、内容も無かったか。まさしく内容は無いよう、である。…下らない。
【唐揚げ食べたい】
「いや…え？ん？え？？？」
(え、何で無いって言ったらそんな困惑されるの？え？こっちが困惑なんだけどえ？？？？
…というのは置いておいて、非常に自分は今困惑している。
"興味ある？"の質問に対して"興味ない"と答えたら、どうしてそんなにビックリされるのか。寧ろいきなりあんな質問された自分の方が驚きたいくらいだ。
どうしてそう答えたの？
だって興味がないから。
でも、彼女困惑してるだろう？
そんなの、知らないよ。
あああああああ、グルグルグルグル煩いな。興味無いものは無いんだよ、ある物も全部無くなっちまったんだ。)
「…いや、え…
無いよ？
うん、全然無い。
ちょっと苦い思い出があってね、だからNOだよNO、圧倒的にNOだよ。
てか何でNOの選択肢無いの？」
(これには思わず唐揚げくんもニッコリ。(ドン引き気味)
まるでアイスクリームスリの外国人の如くまくし立てている彼女を横目に、例のアナウンス。
『その人物もここ、雪国に連れてこられている。』
え？
『────その８人の写真に写っている人物を、抹殺する。』
待てよ、それは、なんで、あの子が───
"どうするの？"
僕は、君を助けなきゃいけない。
でも、それには。死体が、必要で。
すぐさまコロパットを拝見し。
写真に写るは"確かに大切な人物"。
これは、きっと。
目の前の彼女にも、居るのか？…なら、今の状況は。
とても、)
「─────不味いんじゃないか？これは。」
【酢豚パイナポー】
「貴方ッ……！！！
もしかしてっ……
“ソッチ”やりたいのですかッ…！！！」
驚愕。新事実。
大凡予想をしていなかった返答。きっとこうだろうと考えて、出した質問の斜め45を貫いてきた最強かつ最悪の一手。
ああ…なんと言う事か。私は嵌められてしまうのだろうか。いやハメられはしないか、同性だし。
コペルニクス的転回とはよく言ったもの。コペルニクスさんもこんな感じに考えられることを想定してないだろう。
つまり相手はコペルニクスより上位の存在…？(支離滅裂な思考/発言)
「いや確かに私はもう少し考えるかしておかないとそもそも痛いのは嫌ですしそう言うのは本当の好きな人ができてから覚悟して臨みたいですしでも今確実に必要な事だしもしかしたらそういうのにハマっちゃうかもしれないですけどそれは嫌ですしでもでもでも……
…分かりました。
…私が…“受け”になります…ッ！」
いっそ悲痛なまでの覚悟。覚悟はいいか？俺はできてる。どんな羞恥を喰らおうとも…我が心は折れぬと知れーーーーーーーー。
と、迷走妄想アホっぽい事を考えていると。
響き渡るアナウンス。
やっぱりこれは…死を告げる鐘であるんじゃないかな…なんて、コロパッドを開いてぼんやり。うすぼんやり。
「……成る程、成る程。
貴方は…それで。どうしますか？」
【唐揚げ食べたい】
「…？…！！？！？！！！？！？」
(俺もう目の前の人間のこと分からないよ…分かりたくもないけど。
多分ヤバい思考しているんだろう、それは流石に分かるぞ。"受け"とかなんか、…些か発想飛躍し過ぎてて不安になってくる。
そんなバカな思考は置いといて。
今は、あのアナウンスについて考えるべきか。大切な人・物の命が関わっていて、助けるには人を殺めるか自身が死ななければならない。
嗚呼、"このゲーム"には相応しいイベントといったところだが。
それは客観的に見ただけの思考であり、参加者当人である自身としては危機的状況であることに違いない。
今ここで話している、彼女と今から殺し合いが始まるかもしれない。
それは何としても、避けたい。…と、正気のの狂人は考える。)
「受けとかなんだか知らないけど、俺はそんなのしない。
そして、今のアナウンスだが。
────俺としては、なるべく人は殺したくない。このゲームに"全員生存"なんてルートがあるんだから、このイベントにもあると信じたい。
だから俺は、その可能性に賭けたいと思った。」
(と、前置きをして。
もちろん嘘を吐いているつもりはない。自分は殺人を快楽とするような悪趣味な殺人鬼じゃないから、このゲームは正直不快としか思えないのも本当。
そして、出来る限り"大人数"…否、"全員"で帰りたいのも本当。その全員が、どれだけの者を指しているか分からないが。
まあそんなのも、演技かもしれないが。
…というのは今回ばかりは置いておくことにする。)
「だけど、
もしお前が俺を今殺しに来るんだとしたら、俺はお前を殺す。正当防衛、としてね。
それくらいの覚悟はあるさ────それで、お前こそどうなんだ？」
【酢豚パイナポー】
ああ、面倒臭い。全くもって。
レコードの如く鳴り響く過去からの交信電波は、断続的に自身の中にある理性という名の白い石と感情という名の黒い水を揺さぶる。
「あらあら…それは、それは。」
パイナポーは失敗しない。
二度と、再び、またも。
悲劇は繰り返さない。
もう、悲しむのはやめだ。
コロパッドへと片目だけの視線を送って、パイナポーは過去へと意識を飛ばす。そこに見えるのはセピア色のフィルム。
もはや擦り切れて映れなくなった映像。何度も見たから、夢を、明後日を。その先を。
「それは、YES、とも。
NO、とも。
柔軟性は大事ですよ？
ほら…よく聞くじゃないですか。柔は剛を制す、なんて。勿論、柔らかい意思は要らないのですけど。けどけど。」
「でもぉ…そうですね。今は唐揚げちゃんと戦う事を避けましょうか。
ベストな選択肢、無難に無難に♪
私もまだ、擦り切れた映画を観ていたいですし、ね。」
【唐揚げ食べたい】
「……ふーん、そう。」
(それが彼女の選んだ選択。…いや、そんな大層としたものではないけれど。
俺を殺しにくるか、俺を殺しにこないか、なんてこのゲームにおいては小さな問題だろう。実際殺された、となれば話は別であるが。
単調に、自分で尋ねたことに対して無感情にそう応え。
───まあどうやら。時間が迫り、彼女が回答を導く前に。
既に誰かが答えを導いていたようで、此処で殺されても無意味になるだけだった訳だが。
死亡アナウンス。
此処で聞くのは何回目か。
もう、何人死んだか分からないが。正直、ホッとした。死んでくれてありがとうと、そんな悪趣味なことを言いたい気分だ。
表情には現れなかったが、あの写真を見た時から鼓動が止まらず鳴り響いていて、"早く誰か死んでくれ"と切望していたのは秘密である。)
「…賢明な判断。
だけど、───もう終わったみたいだよ。クラスメイトの中にこんな人が居るってのは残念なことだが、"決意"した人間が居たみたいだ。
呆れちゃうよね、大切な人の為に他人を殺すなんて。」
(結末は一瞬の内に。自殺なんて考えは毛頭無く、誰かが殺したのだろうと自身の中で確定させるのは瞬間的だった。
自身の為に、自身の欲の為に自らの手を汚す人間にはなりたくないと思うが。然し、残り時間が僅かになれば自身がそれをやろうと思っていたのも事実。
自身の思考を棚に上げて、他人の行動を卑下するのはある種人間らしいとも言える。
そういう奴程"他人の為"なんて言って自己防衛するから迷惑甚だしい。
…とかいうブーメランを、此処は一先ずフルスイングしておこうか。)
「じゃあ、お互い協力していこう。俺はもう此処から離れることにする。
フレンド申請しておくから、登録しておくといい。得があるとは言えないが、少なくとも損はない。」
(取り敢えず、"協力"とかいう言葉は便利だ。自分の行動を正当化するのに最適だから。
だからこそこの言葉が嫌いなわけであるが、それでも使ってしまうのは"使いやすい"というのが理由の一つとして挙げられるか。
ゆらり、と影が動き。立ち上がれば、"フレンド申請"とかいう皮肉なスイッチを業務的に押し。
そして、コロパットを仕舞う。
トン、トンと歩き始めてはパイナポーが入ってきた扉へと向かい。
生気も無く、死体の如く動き始めた。)
「じゃあ、またな。」
【唐揚げ食べたい】
(ゆらり、ゆらりと揺れる船。
此処から何処かに行くことは出来ないけれど、このまま何処かへ行ってしまいたい気分。
そう、18th"唐揚げ食べたい"は船着場にいた。
船の中に、倒れ込むように寝転がっている。
死体のようだが、彼は死ぬどころか攻防戦すらしておらず。…強いて言えば、"とある彼"にスタンガンをぶつけられたくらいなものか。)
「…あー…………」
(何をするでもなく、そこに居た。
探索をするとか、そんなことはどうでもよくて。誰か人を待つような姿に見えるだろうが、そんな約束などしておらず。
人が奇跡的に来れば探索をする気も出るのだろうが、殆ど寝ていない自分は疲れ切っていた。
コロパットを見たのか、頭の横の方に置いてあり。其処へ突っ伏すように寝ているのだから、それもまた乱雑に殺されたようで。
早く探索しなよ。
…人でも来ればする気も出るんだけどね。
どうしてそんなやる気がないの？
もう色々と、疲れたんだ。君と会ってないからかもね。
ふふ、会ったでしょう？
�燹懲；；’焼發如△諭���
二人の声が揃う脳内会話。こういうことは、久し振りかもしれないな。
船は、相変わらず揺れている。)
【酢豚パイナポー】
「うーさーぎおーいし
かーのーやーま
こーぶーなつーりし
かーのーがーわー
ゆぅめーはいぃまーもめぇぐりてー…」
こんこんこんこん。船内へと響く革靴の音。
その人物は日本の童謡を口ずさみながら、壁を3本の指でなぞるようにして進んでいく。
動きにより掠れるコートの音。
ショッピングモール買ったジャンバーの上から羽織ったけれど、未だ寒さを感じないことはない。いやはや、前言撤回前言撤回。
ぶつかってかつんかつんいって邪魔だ邪魔。
コートはぶかぶか寒さは拭えず。必要性を感じることは一切無い。ならば、それは無駄であることは自明の理である。論理的な思考だ(自己主張)
「ふ
る
さ
と
。
…ってね。」
くすくすと、何が面白いのやらか。パイナポーは微笑む、微笑む。自身の貰ったこのゾディアック…使い所さんが多くて困ってしまう。
使わないにこした事は無いんだけど。
【唐揚げ食べたい】
「……………」
(聞こえてくる歌声を流して、うだうだと床に突っ伏したまま。
何か動く訳でもなければ、声に反応するわけでもなく。
なぜ人が来たのに動かないの？
…なんでだろうね、自分でもよく分かんないや。
ぱーっ、とやればいいのに。
それが出来るのは君だけだよ、なんてね。
けらけら、と船の床に頬をくっ付けては静かに笑う。会話が面白いのか、それとも彼女の呑気な歌声が面白いのか。)
「…ふるさと、だっけ。それ」
(静かに、何処か独り言のように呟いた。相手に聞かれてても、聞かれてなくても構わない。どっちでもいいけど、取り敢えずこのまま寝ているだけというのもアレだから。
くすくす、クスクス。彼女の笑い声を聞いて。同調するように笑い声を漏らしながら。
嗚呼、彼女は誰だっけ。
きっと会ったことがないんだろうな、と。
まあ、会ってても何も変わらないか。)
【酢豚パイナポー】
さてはて、動き出すパイナポー。
彼女が黒き眼、その瞳の先に見ゆる景色は白いシャングリラか黒い三途の河か。
どちらにせよ、ろくなもんじゃないって事は自分が一番知っている。知らされている、知ってしまっている。
くすくすくすくす。笑う少女は歩く、歩く。
船首から操舵室、ボイラー通って客室へ。
ゆっくり気ままに己がペース。
まぁ、御生憎様、残念無念無縁無知。
パイナポーは何も見つける事はない。それが一番良い事だ。知らないと言う罪と知りすぎる罠、どこで聞いたかどこで知ったか。まぁ、ここには関係なきお話であろうて。
「………ぁあ。ご機嫌ようです、お初にお目にかかるお人さん。今日の調子は如何程ですか？」
がちゃり、ぱたん。がちゃり、ぱたん。
生前には行えない船内探索。精々強面のおっさんに怒られるが関の山だっただろう。
ワンチャンス、おじさんおばさんの興味すらわかない情事を覗くことになるかもしれぬが。
…全くもってどうでもいい。探索も、戦闘も、生存も。無駄無駄、要らない、どうでもいい。
そもそもの話、自身のアイデンティティさえ消え去るのが定めのお話。ただ時間を浪費する為の意味なきゲーム、ただの暇つぶしに過ぎぬ。
繰り返すこと5度。ドアガチャRTAを始めようかなんて考える頃合、見つけた見つけた第1村人。いや、船内に居るし舟人か？…どうでもいいけど。
【酢豚パイナポー】
「…──────、」
(ガチャリ、と音を立てては現れる少女。自由に動き回り話しているあたり案の定参加者か。
"あー…"なんて呻きながら、体勢を直して壁際へ座り込み。
首でも寝違えたのか、ぐるりと首を回しては左手で自身の首を摩った。
伏せ細めた眼でパイナポーを見つめれば、表情を変えることなく傍のコロパットを手に取り。参加者名簿を一つずつ見て、"嗚呼コイツか"と頷いた。)
「…パイナポー、ちゃんだっけ。君」
(知らないけど。だって会ったことないもの。
今確認して今初見のはずなのに、まるで何処かで一度出会ったかのような言い草。
"今日の調子"なんざどうでもよかろうと、スルーを決め込んだようで。色々と疲れたのか、軽く窶れた顔を見せた。
随分大変そう？
そりゃ、こんなゲームに巻き込まれたんだからね。
でもそれは、
…そう、"みんな同じ"。でも"みんな違う"よ。
ふーん？…まあ、そんなもんか。
こんな日でも回り続ける会話はある種雑音と言ってもいい。…いや然し、それが安定剤としての用途を発揮しているならばBGMのように流したままでよかろう。
まあ、脳内事情など誰も興味などない。ここで一つ、お決まりのセリフでも如何かな。
"殺人を犯せるか"なんて、遠回しに聞いてみるあの言葉。…そういえばいつか出会った狐面の少女がやっていたっけ。)
「君は"ゲームの参加者"か？」
【酢豚パイナポー】
唐揚げがコロパッドへと視線を送っている間、無論勿論同じとも。パイナポーが行う怪しい行動その答えは如何に。
はい、正解は。パイナポーもコロパッドを見ていたのでした。ちゃんちゃん。
「ええ、そうですよ。唐揚げさん。」
まぁ、全くもって。誰も興味すらわかぬ脳内劇場。
客は0人、上映中は立つのはお控えください。でないとふぁんふぁん、警報なるのでご注意を。
言葉遊びや比喩を入れたはいいものの、つまらないはしたないどうでもいい。
残らない言葉など意味がない、報われない努力など意味がない、必要ない痛みなど意味がない。ないないないない…ないない、ナイ。
ま、アイツ風に言うのなら。
“これも嘘かもしれないがな”
…なんちゃって。
「私は参加者ですよ、参加者。それ以外に形容するならみんなのみかた、なんていいんじゃないですか？」
「勿論、嘘かもしれないし。嘘じゃないかもしれないしですけど。けどけど。」
「そう言う貴方は如何ですか？」
扉は開けっぱなし、寒い空気が侵ってくる。
翻すコートはカーキのサイズが合わず。きっと男性物…膝下まであるコートなどオシャレにもならないからさ。
心の中では男性…こう言うと決まって性同一性障害なんて言われちゃうけど。
兎も角。
男の自分としては、このコートを選ぶのは自然の摂理。カマトト振りも板にはつかない。ばちゃっと潰れてずるずる堕ちる。
全く…失敗ばっかりだ。
【唐揚げ食べたい】
「みんなのみかた、ねぇ。」
(そんな嘘、誰が信じると思う？…嗚呼、いや。嘘と決まったわけではないね。
こんな世の中にも"Celestia"とかいう正義の味方が居るらしいじゃないか。
全く馬鹿らしい、違う違う。…協力したいものだな、なんて。
彼女がそのCelestiaかもしれないが、その信憑性など無いに初対面の自分には等しく。
むしろAzothなのでは、なんて思考がチラついている。恐ろしい恐ろしい、殺されたくないね。)
「俺も参加者か、参加したくはないけど。
みんなのみかた、とかそういうセリフは嫌いだから言わないでおくよ。
敵じゃ無いとは思うけどね。」
(そんなのも、フェイクかもしれないけど。
…そんな、何処かの誰かを真似たような事は言わないでおく。…いや、その誰かが誰かなど知らないか。目の前の彼女を真似したのかもしれない。
当たり障りの無い、"誰もがこういうニュアンスのセリフを言うであろう"なんて言葉を呟く。
言葉に個性を乗せるのは苦手なんだ、とかそういうのは初期の自分へ喧嘩を売っているようなものだから言わないでおくけど。
ロングのジャケット、いやパーカーと言うべきか。膝下ほどまである長さの布は、座ることによって地面に広がっている。
寒くないのか、と言われれば勿論"寒い"のだけれど。
寒さに負けていたら何も出来ないだろうに。
嗚呼、いけないいけない。寒いとか思ってたら、寒くなってきた。
やめようか、こういう思考。突拍子もない質問で掻き消してみせようか。)
「お前はこのゲームについて何か知ってるか？」
(意訳、情報を寄越せ。
嗚呼、何の条件も無しに聞こうとはしているが。…別にこちらからの何かが無いというわけでは無い。
条件があればそれを飲むかもしれないし、飲まないかもしれないわけだ。
モノによっては、飲む条件は満たせないかもしれないが。)
【酢豚パイナポー】
ああ。その言葉を待っていた。
逐次確認していた共有チャット。
歯痒く思う情報の羅列。信憑性にかける物が氾濫するのは耐えられない、一度痛い目見てれば分かるのは道理だ。
そのせいで、親友も失ったんだし。
「ーーーー成る程。願っても無い話、そちらの持つ情報さえあれば、私はもう少し楽に動ける。」
「嘘誠は考えないようにしましょう。貴方が“善い人か否か”と言う事は大切ですから、ね。」
くすくすくすくす。
パイナポーは笑う。
無意味に無価値に。
幸いにして、この体は生前の技術は受け継いでいるようだ。色々確認して得た結果、使いどころはないけれど、使うべきはやってくる。
「とりあえず、私の質問をひとつ。お通しみたいなものです。これがないと始まりませんしね。」
またまたパロティだけど。適切に。
…さぁ、種を蒔こうか。
「唐揚げさん。ーーーーーーーーー？」
【唐揚げ食べたい】
「……ああ、」
(一言、水面に見える消える泡沫のように呟いて。
"ああ"なんて反射的に出た言葉に特に意味があるはずが無く、ただ彼女の言葉に頷くような一言。"YES"のような何かに答える意も勿論無い。
言いかけた言葉、言いたい言葉、言えない言葉、色々とあるが。
それを隠してしまおう、邪魔だから。そんな言葉は存在自体、消してしまおう。)
「─────……？」
(お通し、だとか。そんな居酒屋にでも行かなきゃ出ないもの、未だ高校生の自分には分からない話。
嗚呼、でも聞いたことある。お通し、とか言って出る癖に代金を払う必要があるとかないとか。その程度の知識。
だから分からなかった。彼女の口から出る次の言葉とか、全部。)
「……、っは…？
────…残念ながら、興味は無いな。」
(驚いた。この反応が普通なのか異常なのかは分からないが、酷く恐怖するような素振りをするほどには驚いた。
何故そんな驚くの、とかそういう質問は野暮。答えなどないし答えたくは無い。
もしかしたら普通に人生を歩んでいれば、興味も出ていたかもしれないもの。だって、そういうお年頃。
でも、拒否反応。無理無理無理。
聞いて、疑問して。…でも、答えは即答だった。)
【酢豚パイナポー】
「え。…ホント…ですか？」
まさしく予想外、予定外。
パイナポーの予想では、この質問には快く“あります”の一言を言ってくるだろうと考えていたのだから、仕方ない。
「あの、恥ずかしく思わなくていいんですよ？
私は、理解ありますから。ええ。
ホントです、嘘じゃないですよ？
あの…
ホントですか？
今なら違うって言えるんですよ？
どうしますか？
OKorYES,おまけの“はい”でどうですか？」
まくし立てるように、早口のパイナポー。
返答の選択肢は無いのか、なんて言いたくなる。…あぁ、内容も無かったか。まさしく内容は無いよう、である。…下らない。
【唐揚げ食べたい】
「いや…え？ん？え？？？」
(え、何で無いって言ったらそんな困惑されるの？え？こっちが困惑なんだけどえ？？？？
…というのは置いておいて、非常に自分は今困惑している。
"興味ある？"の質問に対して"興味ない"と答えたら、どうしてそんなにビックリされるのか。寧ろいきなりあんな質問された自分の方が驚きたいくらいだ。
どうしてそう答えたの？
だって興味がないから。
でも、彼女困惑してるだろう？
そんなの、知らないよ。
あああああああ、グルグルグルグル煩いな。興味無いものは無いんだよ、ある物も全部無くなっちまったんだ。)
「…いや、え…
無いよ？
うん、全然無い。
ちょっと苦い思い出があってね、だからNOだよNO、圧倒的にNOだよ。
てか何でNOの選択肢無いの？」
(これには思わず唐揚げくんもニッコリ。(ドン引き気味)
まるでアイスクリームスリの外国人の如くまくし立てている彼女を横目に、例のアナウンス。
『その人物もここ、雪国に連れてこられている。』
え？
『────その８人の写真に写っている人物を、抹殺する。』
待てよ、それは、なんで、あの子が───
"どうするの？"
僕は、君を助けなきゃいけない。
でも、それには。死体が、必要で。
すぐさまコロパットを拝見し。
写真に写るは"確かに大切な人物"。
これは、きっと。
目の前の彼女にも、居るのか？…なら、今の状況は。
とても、)
「─────不味いんじゃないか？これは。」
【酢豚パイナポー】
「貴方ッ……！！！
もしかしてっ……
“ソッチ”やりたいのですかッ…！！！」
驚愕。新事実。
大凡予想をしていなかった返答。きっとこうだろうと考えて、出した質問の斜め45を貫いてきた最強かつ最悪の一手。
ああ…なんと言う事か。私は嵌められてしまうのだろうか。いやハメられはしないか、同性だし。
コペルニクス的転回とはよく言ったもの。コペルニクスさんもこんな感じに考えられることを想定してないだろう。
つまり相手はコペルニクスより上位の存在…？(支離滅裂な思考/発言)
「いや確かに私はもう少し考えるかしておかないとそもそも痛いのは嫌ですしそう言うのは本当の好きな人ができてから覚悟して臨みたいですしでも今確実に必要な事だしもしかしたらそういうのにハマっちゃうかもしれないですけどそれは嫌ですしでもでもでも……
…分かりました。
…私が…“受け”になります…ッ！」
いっそ悲痛なまでの覚悟。覚悟はいいか？俺はできてる。どんな羞恥を喰らおうとも…我が心は折れぬと知れーーーーーーーー。
と、迷走妄想アホっぽい事を考えていると。
響き渡るアナウンス。
やっぱりこれは…死を告げる鐘であるんじゃないかな…なんて、コロパッドを開いてぼんやり。うすぼんやり。
「……成る程、成る程。
貴方は…それで。どうしますか？」
【唐揚げ食べたい】
「…？…！！？！？！！！？！？」
(俺もう目の前の人間のこと分からないよ…分かりたくもないけど。
多分ヤバい思考しているんだろう、それは流石に分かるぞ。"受け"とかなんか、…些か発想飛躍し過ぎてて不安になってくる。
そんなバカな思考は置いといて。
今は、あのアナウンスについて考えるべきか。大切な人・物の命が関わっていて、助けるには人を殺めるか自身が死ななければならない。
嗚呼、"このゲーム"には相応しいイベントといったところだが。
それは客観的に見ただけの思考であり、参加者当人である自身としては危機的状況であることに違いない。
今ここで話している、彼女と今から殺し合いが始まるかもしれない。
それは何としても、避けたい。…と、正気のの狂人は考える。)
「受けとかなんだか知らないけど、俺はそんなのしない。
そして、今のアナウンスだが。
────俺としては、なるべく人は殺したくない。このゲームに"全員生存"なんてルートがあるんだから、このイベントにもあると信じたい。
だから俺は、その可能性に賭けたいと思った。」
(と、前置きをして。
もちろん嘘を吐いているつもりはない。自分は殺人を快楽とするような悪趣味な殺人鬼じゃないから、このゲームは正直不快としか思えないのも本当。
そして、出来る限り"大人数"…否、"全員"で帰りたいのも本当。その全員が、どれだけの者を指しているか分からないが。
まあそんなのも、演技かもしれないが。
…というのは今回ばかりは置いておくことにする。)
「だけど、
もしお前が俺を今殺しに来るんだとしたら、俺はお前を殺す。正当防衛、としてね。
それくらいの覚悟はあるさ────それで、お前こそどうなんだ？」
【酢豚パイナポー】
ああ、面倒臭い。全くもって。
レコードの如く鳴り響く過去からの交信電波は、断続的に自身の中にある理性という名の白い石と感情という名の黒い水を揺さぶる。
「あらあら…それは、それは。」
パイナポーは失敗しない。
二度と、再び、またも。
悲劇は繰り返さない。
もう、悲しむのはやめだ。
コロパッドへと片目だけの視線を送って、パイナポーは過去へと意識を飛ばす。そこに見えるのはセピア色のフィルム。
もはや擦り切れて映れなくなった映像。何度も見たから、夢を、明後日を。その先を。
「それは、YES、とも。
NO、とも。
柔軟性は大事ですよ？
ほら…よく聞くじゃないですか。柔は剛を制す、なんて。勿論、柔らかい意思は要らないのですけど。けどけど。」
「でもぉ…そうですね。今は唐揚げちゃんと戦う事を避けましょうか。
ベストな選択肢、無難に無難に♪
私もまだ、擦り切れた映画を観ていたいですし、ね。」
【唐揚げ食べたい】
「……ふーん、そう。」
(それが彼女の選んだ選択。…いや、そんな大層としたものではないけれど。
俺を殺しにくるか、俺を殺しにこないか、なんてこのゲームにおいては小さな問題だろう。実際殺された、となれば話は別であるが。
単調に、自分で尋ねたことに対して無感情にそう応え。
───まあどうやら。時間が迫り、彼女が回答を導く前に。
既に誰かが答えを導いていたようで、此処で殺されても無意味になるだけだった訳だが。
死亡アナウンス。
此処で聞くのは何回目か。
もう、何人死んだか分からないが。正直、ホッとした。死んでくれてありがとうと、そんな悪趣味なことを言いたい気分だ。
表情には現れなかったが、あの写真を見た時から鼓動が止まらず鳴り響いていて、"早く誰か死んでくれ"と切望していたのは秘密である。)
「…賢明な判断。
だけど、───もう終わったみたいだよ。クラスメイトの中にこんな人が居るってのは残念なことだが、"決意"した人間が居たみたいだ。
呆れちゃうよね、大切な人の為に他人を殺すなんて。」
(結末は一瞬の内に。自殺なんて考えは毛頭無く、誰かが殺したのだろうと自身の中で確定させるのは瞬間的だった。
自身の為に、自身の欲の為に自らの手を汚す人間にはなりたくないと思うが。然し、残り時間が僅かになれば自身がそれをやろうと思っていたのも事実。
自身の思考を棚に上げて、他人の行動を卑下するのはある種人間らしいとも言える。
そういう奴程"他人の為"なんて言って自己防衛するから迷惑甚だしい。
…とかいうブーメランを、此処は一先ずフルスイングしておこうか。)
「じゃあ、お互い協力していこう。俺はもう此処から離れることにする。
フレンド申請しておくから、登録しておくといい。得があるとは言えないが、少なくとも損はない。」
(取り敢えず、"協力"とかいう言葉は便利だ。自分の行動を正当化するのに最適だから。
だからこそこの言葉が嫌いなわけであるが、それでも使ってしまうのは"使いやすい"というのが理由の一つとして挙げられるか。
ゆらり、と影が動き。立ち上がれば、"フレンド申請"とかいう皮肉なスイッチを業務的に押し。
そして、コロパットを仕舞う。
トン、トンと歩き始めてはパイナポーが入ってきた扉へと向かい。
生気も無く、死体の如く動き始めた。)
「じゃあ、またな。」
霊体だからそれなりに 3rd-11th
五番目の道化師(3rd)-ヒガンバナ(11th)
【ヒガンバナ】
私は、先ずあの廃工場へと向かった。
そこで仕入れるのは、やはり刀の材料の鉄板。
本来なら、刀を打って作りたい所だが、そんな事は出来ないので諦める。
それから、あの病院へと戻った。
そこで、今度はメスを幾つか持った。
小さい刃物だが、やはり人を切る物なので、実はかなり切れ味がいい。
……これを数本。
蟹座のゾディアックは怖いが、これを腰のベルトに装着出来るようにした。
そして、最後に。
仕入れてきた鉄板を、また手術室で削り、研ぎ始めた。
慣れているお陰か、二本目も何とか完成した。
武器を更に充実させた私は、何の気なしに雪像の前に来ていた。
普段だったら、誰が作ったかも分からない、儚い芸術作品に心動かされていたのだろうが。
今は、何も感じることはない。
さて、斬るべき敵は、何処にいる。
【五番目の道化師】
適当に色んなエリアを渡り歩いていたら見たことのある人がいたので声をかける。
「こんにちわ。そんなに物騒なものを持ち歩いてどうしたんですか？」
確か、この人に会ったときはピエロメイクをしていたから気づいてくれるかはわからないけど…人を見かけたら話しかけなければ意味がない。
こんな広い場所でようやく人を見つけたのだから。私は寂しい思いを抑えながら声をかけたのだった。
【ヒガンバナ】
「……む？
貴様、は…………」
ふと、声をかけられ振り向くと……見知らぬ者が居た。
いや、会ったことは無い筈なのに、何処かであった気がする。
……元の姿の時の記憶だろうか？
「……これは……敵を斬る為の物だ。」
【五番目の道化師】
ほら、気づいてもらえなかった。
やっぱりピエロメイクは奇抜すぎるんだよ、声で気がつく人たちがおかしいんだよ。
「敵…ですか、あなたの敵とは誰なのですか？」
とりあえず、名乗っておいた方がいいか。
だって、まだ此処では会ったことがないクラスメイトと勘違いされたら困るもんね。
「あぁ、そういえば私の素顔はまだ見せていませんでしたね。ヒガンバナさん、<五番目の道化師>…といえば私が誰だかわかりますか？」
死んだらメイクが取れるなんて聞いてないよ！！いや、あれは後付けモノだから仕方ないのかもしれないけど…！！
【ヒガンバナ】
「私の敵は…………って、貴様あの道化か！？
なんだ、メイクが無ければ普通じゃないか！？」
何処かで会ったなと思っていたら、成る程確かに声はあの道化と同じだ。
いや、驚いた。
あのメイクの下に、この様な可愛らしい顔が有ったとは。
「全く、それならメイクをさっさと取ってほしかったな……あのメイクは苦手なのだ……」
【五番目の道化師】
「…ピエロメイク、ホントに不評。
ていか、廃工場に出没する素振りをする女性の方が私は怖いと思いますがね。」
イメージしてほしい。
薄暗い廃工場でひたすら刀っぽいもので素振りをし続ける女性を。怖くない？怖いよねぇ。
「一応、直前までピエロメイクはしてたんですよ？でも、気がついたら…メイクは…」
四時間もかけたのに…悲しい。
【ヒガンバナ】
「……それは……その、まあ怖いがな。
取り敢えず、もうメイクはしないでほしい。
普通に素顔のまま、大道芸でもしていてくれ。」
彼女の言わんとする事は分かるが、お互い様だ。
……やはり素振りはもっと人気の無いところでしよう。
「……む、そう言えば……あっ、そう言えば……
ちょっと待て、道化……貴様、死んで……」
ふと、何か引っ掛かるので、思い出してみる。
確か、大切なものを人質に取られて、その後直ぐに…………五番目の道化師は死んだ筈では？
【五番目の道化師】
「まぁ、もう暫くはメイクしませんけどね」
だって、する意味ないし。するとしたら帰ってからだなぁ。
「え…っ、今更ですか？えぇ、確かに私は死にましたね。あのアナウンスがあった後、すぐに。
ついでに目が覚めたのはお昼っころなのでその間の情報はまったく知りません」
ちょっと、困ったような表情をしながら私は笑みを浮かべてみる。
【ヒガンバナ】
「ちょ、ちょっと待て！？
ならば何だ！？き、貴様は！ゆ、ゆゆ、幽霊だとでも言うのか！？！？」
ここだけの話だが……実は幽霊も苦手なのだ……
何故、彼女は悉く私の苦手な物になるのだ。
【五番目の道化師】
「あのねぇ…バスが崖に転落した時点で姿形がかわっていようと対して変わらんでしょ。いまさら死人の一人が現れたって驚く必要はないよね？」
まず、忘れないで欲しいのは此処にいるクラスメイトは全員あの時、確かにバスに乗っていて、そのバスが崖から落ちたことによってこの状況に巻き込まれたのである。だから、その事を踏まえると…既に死人は歩き回ってるわけなんだから私が歩き回っても変わらない気がする。
「幽霊かどうかはヒガンバナさんの捉え方次第かと。この通り、物が掴めるから生きてるのかもしれないし、ポルターガイスト現象的な感じで触れているのかもしれない。
さて、ヒガンバナさん。
私は死んでると思う？生きてると思う？」
まぁ、確実に死んだのは確かなんだけどね。
【ヒガンバナ】
「そ、それとこれとは違うだろう！？
い、いや、確かに私も考えようによっては幽霊になるかもしれないのは分かるが……」
それだって、幽霊はさわれないし、斬れないし、脅かしてくるし、呪ってくるし…………
「……うむ、幽霊ではない。
そう考えないと、私は今すぐ逃げ出さなければならないからな。」
つまり、自己暗示。
【五番目の道化師】
「あはは、じゃあ生きてるってことで♪」
我ながら適当だなぁ…と、思う。だって、せっかく人に会えたのに逃げられたら困るし…。
「あー…不安なら、触れてみる？」
人と幽霊が触れられるかどうかはわからないけど…たぶん、生きてるか死んでるかくらいは……わかって、くれる…よね？
【ヒガンバナ】
「……そうだな、生きていると言うことに。
……あと、触れるのは止めておく。
すり抜けたりしたら、冗談抜きで卒倒する自信がある。」
別に、こうして会話している分には何も問題は無いのだから。
このままでいよう。
「……それにしても、なぜ死んだのだ……」
【五番目の道化師】
「あー…死んだ理由？夜の公園で一人ピクニックしてたんだけど…、窒息…かな？」
なんで窒息したのかは覚えていない。
アナウンスを聞いたのは確かお弁当を食べている時だったから───
「たぶん…、アナウンスの内容に驚いてお弁当の中に入ってたおかずを喉に詰まらせた…？」
どんな死因だ！？と、突っ込まないでくれ。
本気で覚えていない。
【ヒガンバナ】
「……酷い理由だな。
自殺の方が、まだ納得するぞ。」
喉を詰まらせて死ぬなど……呆れて頭を抱える。
全く、こんな状況で何をやっているのだ。
「……まあいい、精々早めに成仏……じゃない。
精々頑張るんだな。」
【五番目の道化師】
「あはは…ですよねぇ…」
たぶん、自殺はないから事故死か他殺かなんだよね。
でもクラスメイトに殺意ある人間が混じり混んでいるはずないから事故死だろう。
「えぇ…さっき『生きてる』って答えたのに『成仏しろ』って死んでるみたいじゃないですか」
冗談を笑うように、私は笑みを浮かべる。
「頑張りますよー、生きていようが、死んでいようが関係なく
【ヒガンバナ】
私は、先ずあの廃工場へと向かった。
そこで仕入れるのは、やはり刀の材料の鉄板。
本来なら、刀を打って作りたい所だが、そんな事は出来ないので諦める。
それから、あの病院へと戻った。
そこで、今度はメスを幾つか持った。
小さい刃物だが、やはり人を切る物なので、実はかなり切れ味がいい。
……これを数本。
蟹座のゾディアックは怖いが、これを腰のベルトに装着出来るようにした。
そして、最後に。
仕入れてきた鉄板を、また手術室で削り、研ぎ始めた。
慣れているお陰か、二本目も何とか完成した。
武器を更に充実させた私は、何の気なしに雪像の前に来ていた。
普段だったら、誰が作ったかも分からない、儚い芸術作品に心動かされていたのだろうが。
今は、何も感じることはない。
さて、斬るべき敵は、何処にいる。
【五番目の道化師】
適当に色んなエリアを渡り歩いていたら見たことのある人がいたので声をかける。
「こんにちわ。そんなに物騒なものを持ち歩いてどうしたんですか？」
確か、この人に会ったときはピエロメイクをしていたから気づいてくれるかはわからないけど…人を見かけたら話しかけなければ意味がない。
こんな広い場所でようやく人を見つけたのだから。私は寂しい思いを抑えながら声をかけたのだった。
【ヒガンバナ】
「……む？
貴様、は…………」
ふと、声をかけられ振り向くと……見知らぬ者が居た。
いや、会ったことは無い筈なのに、何処かであった気がする。
……元の姿の時の記憶だろうか？
「……これは……敵を斬る為の物だ。」
【五番目の道化師】
ほら、気づいてもらえなかった。
やっぱりピエロメイクは奇抜すぎるんだよ、声で気がつく人たちがおかしいんだよ。
「敵…ですか、あなたの敵とは誰なのですか？」
とりあえず、名乗っておいた方がいいか。
だって、まだ此処では会ったことがないクラスメイトと勘違いされたら困るもんね。
「あぁ、そういえば私の素顔はまだ見せていませんでしたね。ヒガンバナさん、<五番目の道化師>…といえば私が誰だかわかりますか？」
死んだらメイクが取れるなんて聞いてないよ！！いや、あれは後付けモノだから仕方ないのかもしれないけど…！！
【ヒガンバナ】
「私の敵は…………って、貴様あの道化か！？
なんだ、メイクが無ければ普通じゃないか！？」
何処かで会ったなと思っていたら、成る程確かに声はあの道化と同じだ。
いや、驚いた。
あのメイクの下に、この様な可愛らしい顔が有ったとは。
「全く、それならメイクをさっさと取ってほしかったな……あのメイクは苦手なのだ……」
【五番目の道化師】
「…ピエロメイク、ホントに不評。
ていか、廃工場に出没する素振りをする女性の方が私は怖いと思いますがね。」
イメージしてほしい。
薄暗い廃工場でひたすら刀っぽいもので素振りをし続ける女性を。怖くない？怖いよねぇ。
「一応、直前までピエロメイクはしてたんですよ？でも、気がついたら…メイクは…」
四時間もかけたのに…悲しい。
【ヒガンバナ】
「……それは……その、まあ怖いがな。
取り敢えず、もうメイクはしないでほしい。
普通に素顔のまま、大道芸でもしていてくれ。」
彼女の言わんとする事は分かるが、お互い様だ。
……やはり素振りはもっと人気の無いところでしよう。
「……む、そう言えば……あっ、そう言えば……
ちょっと待て、道化……貴様、死んで……」
ふと、何か引っ掛かるので、思い出してみる。
確か、大切なものを人質に取られて、その後直ぐに…………五番目の道化師は死んだ筈では？
【五番目の道化師】
「まぁ、もう暫くはメイクしませんけどね」
だって、する意味ないし。するとしたら帰ってからだなぁ。
「え…っ、今更ですか？えぇ、確かに私は死にましたね。あのアナウンスがあった後、すぐに。
ついでに目が覚めたのはお昼っころなのでその間の情報はまったく知りません」
ちょっと、困ったような表情をしながら私は笑みを浮かべてみる。
【ヒガンバナ】
「ちょ、ちょっと待て！？
ならば何だ！？き、貴様は！ゆ、ゆゆ、幽霊だとでも言うのか！？！？」
ここだけの話だが……実は幽霊も苦手なのだ……
何故、彼女は悉く私の苦手な物になるのだ。
【五番目の道化師】
「あのねぇ…バスが崖に転落した時点で姿形がかわっていようと対して変わらんでしょ。いまさら死人の一人が現れたって驚く必要はないよね？」
まず、忘れないで欲しいのは此処にいるクラスメイトは全員あの時、確かにバスに乗っていて、そのバスが崖から落ちたことによってこの状況に巻き込まれたのである。だから、その事を踏まえると…既に死人は歩き回ってるわけなんだから私が歩き回っても変わらない気がする。
「幽霊かどうかはヒガンバナさんの捉え方次第かと。この通り、物が掴めるから生きてるのかもしれないし、ポルターガイスト現象的な感じで触れているのかもしれない。
さて、ヒガンバナさん。
私は死んでると思う？生きてると思う？」
まぁ、確実に死んだのは確かなんだけどね。
【ヒガンバナ】
「そ、それとこれとは違うだろう！？
い、いや、確かに私も考えようによっては幽霊になるかもしれないのは分かるが……」
それだって、幽霊はさわれないし、斬れないし、脅かしてくるし、呪ってくるし…………
「……うむ、幽霊ではない。
そう考えないと、私は今すぐ逃げ出さなければならないからな。」
つまり、自己暗示。
【五番目の道化師】
「あはは、じゃあ生きてるってことで♪」
我ながら適当だなぁ…と、思う。だって、せっかく人に会えたのに逃げられたら困るし…。
「あー…不安なら、触れてみる？」
人と幽霊が触れられるかどうかはわからないけど…たぶん、生きてるか死んでるかくらいは……わかって、くれる…よね？
【ヒガンバナ】
「……そうだな、生きていると言うことに。
……あと、触れるのは止めておく。
すり抜けたりしたら、冗談抜きで卒倒する自信がある。」
別に、こうして会話している分には何も問題は無いのだから。
このままでいよう。
「……それにしても、なぜ死んだのだ……」
【五番目の道化師】
「あー…死んだ理由？夜の公園で一人ピクニックしてたんだけど…、窒息…かな？」
なんで窒息したのかは覚えていない。
アナウンスを聞いたのは確かお弁当を食べている時だったから───
「たぶん…、アナウンスの内容に驚いてお弁当の中に入ってたおかずを喉に詰まらせた…？」
どんな死因だ！？と、突っ込まないでくれ。
本気で覚えていない。
【ヒガンバナ】
「……酷い理由だな。
自殺の方が、まだ納得するぞ。」
喉を詰まらせて死ぬなど……呆れて頭を抱える。
全く、こんな状況で何をやっているのだ。
「……まあいい、精々早めに成仏……じゃない。
精々頑張るんだな。」
【五番目の道化師】
「あはは…ですよねぇ…」
たぶん、自殺はないから事故死か他殺かなんだよね。
でもクラスメイトに殺意ある人間が混じり混んでいるはずないから事故死だろう。
「えぇ…さっき『生きてる』って答えたのに『成仏しろ』って死んでるみたいじゃないですか」
冗談を笑うように、私は笑みを浮かべる。
「頑張りますよー、生きていようが、死んでいようが関係なく
強制指導 6th-25th
臨海 凪乃(6th)-柏木 愛(25th)
【柏木 愛】
「な、なんですかあれは……」
(成長を続ける柏木は、偶々訪れた船着場で呆然。そりゃそうである。豪華客船が航海してるのだから。
明らかに近づいてはいけない何かを放っていたが、好奇心に勝てなかった柏木は、近くのモーターボートに乗り込む。エンジンが無いって設定どこ行った？)
「ここでは何が行われているのでしょうか……社交パーティー？限定じゃんけん？いずれにせよ、確かめずにはいられません！海月ちゃんの死の真相のためにも！」
(船に近づくとNPCが手を貸してくれ、乗船することが出来た。人を探すべく、慣れない場所を歩き回る)
【臨海 凪乃】
景観と自然、殺し合いという牢獄の破壊行為
人間の欲望を乗せる 客船 ドエスポワール
ディスコ ディスコ ﾃﾞｨﾃﾞｨﾃﾞｨﾃﾞｨｽｺ!!!
ミラーボールとネオンに彩られた船内に
けたたましいハイカラな音楽
中では感情のないNPCがまるでバブル期の日本を思わせる
歌や踊りでパリピを盛り上げていたのだった。
シャンパンタワーにシャンパンを流し込み
豪遊。
ただひたすらに豪遊。
椅子に座る臨海は、ペルシャ猫を愛でている。
「あら、また会ったわね」
【柏木 愛】
「……うん……」
(騒がしい場所は、苦手だ。どうあっても自分とは理解し合えない人間たちが蠢き犇く、悪夢のような空間だった。顔を少しだけ歪ませながら、彼女の前に歩いていく。
ツッコミたい部分は枚挙に暇がない)
「え、えーと……これ、凄いですね……。貴方がセッティングしたんですか……？ていうか、何がしたいのですか……？」
【臨海 凪乃】
「いいえまさか……
管理者にお願いしたらいいって言ってたわよ」
少し緩すぎる気はしないでもないが
「私が用意なんてするわけないじゃない
適当な人間にやらせたわよ
SCT…… 飛び降りの自殺があったでしょう?
不謹慎でしかないわ」
自分もあそこから飛び降りたけど。
……で、
「その話でも?」
【柏木 愛】
「飛び降りの、自殺？」
(彼は海月がSCTから転落死したことを知らない。もしやと思い、彼女に詰め寄った)
「それ、もしかして海月ちゃんの事ですか！？彼女、自殺したんですか！？」
【臨海 凪乃】
「あぁ……あなた、小鳥遊ちゃんのお友達だった?
それは残念だったわね……
さぁ……どういうわけか死んだらしいわよ」
それくらいしか知ってることはない
何故飛び降りたかは謎である。
「あの子、結構使える駒だったのに……」
本当に残念だ
猫を撫でながらそう答える。
【柏木 愛】
「……自殺……」
(彼女の言葉に信憑性があるわけではないが、現時点で得られる最も有力な情報だった。
海月が自殺なんてするわけない！などと言えるはずもなかった。大して彼女のことを知らないのだから。
柏木は海月が、やたらと厭世的であったことを思い出した。彼女はとうとう、人生を続けることに耐えられなくなったのだろうか？)
「…………そう……。まぁ、友達だと思ってたのは、俺だけだと思います……。
……臨海さんは、殺しても死ななそうですよね」
【臨海 凪乃】
「死ぬときは死ぬ。 殺されるときは殺される
それは誰だってそうよ。
時に【相手の苗字】君…… 私の駒になってみない？」
シャンパングラス越しに彼を見つめる
【柏木 愛】
(その言葉を聞いて、血の気が引いた。彼女が今発したのは、紛れもなく自分の苗字だったからだ。なぜ彼女がそれを知っている……？
自問して直ぐに、気がつく。そうだ、自分はここに来てから、正体を偽るということを、全くもってしていなかったではないか。
あまりの愚かさに目眩がした。後悔先に立たずとは、まさにこのことである)
「こ、殺さないでください！なんでもしますから！」
(安定の土下座)
【臨海 凪乃】
ルーレット台を回す 出た目は9
思わず蹴ってしまった
もっと面白い数字を出せ！ と言わんばかりに
「あぁ、一応いっておくけれど
ノーキル宣言をするわ。
私はあなたを殺さない。 いいかしら？
絶対に私は殺さない」
私は人を殺したいわけじゃない
そして柏木の目の前に……ナイフを置く
「持っていきなさい。
あなたにはやってもらいたいことがあるの
あと、これも伝えておくわね
私はAzoth よ。 つまり、貴女を必ず生かすことができるわ」
【柏木 愛】
「ひい！」
(ルーレット台の蹴られる激しい音に、ビクリと肩を震わせた。
土下座の姿勢のまま、目の前に投げられたナイフと、彼女の顔を見比べる)
「あ、Azoth……。お、俺がするべきこととは……？」
(本当に彼女がAzothなら、彼女が言っているのはルール3の事だろう。手を貸せば、自分は生かされるというのか？
何にせよ本名を握られてる以上、自分は彼女に協力する他ない。青い顔を震わせながら、自分は何をしなければならないのか、彼女に尋ねた)
【臨海 凪乃】
「別に殺せなんて言わない
あなたに人が殺せないことくらいわかってる
≪3rdの死因を報告しなさい≫
3rdが不審死を遂げている。
あのアナウンスが起こってすぐに死んでいる
行動があまりにも早すぎる……。
私の予想が正しければ……3rdはクロよ」
幾らなんでも、都合がよすぎる。
裏で何かが糸退いてるのは明白だろう
「それとも、13thの撫子ちゃんを殺せ……の方がよかった？
まぁ、何か困ったことがあれば……9thを頼りなさい
きっとあなたの役に立つわよ。
成功報酬は……生と性……どう？
【柏木 愛】
「3rd……ピエロちゃん、ですか……」
(願ってもいない事だった。彼女がなぜ死亡したのか、言われずとも探るつもりだったのだから)
「そ、それならやります！全力でやります！」
(成功報酬にも目が眩んだ)
【臨海 凪乃】
「道化師が多いわね……
道化は仮面の中で笑うって言うけど……
人を殺すよりは簡単な仕事でしょう?
3rdは知り合いみたいね
無理な仕事はさせないつもりなの。なんてホワイトなんでしょう……。
仮に3rdが他殺だったとしても
殺害相手を恨まないことよ……。
殺しは……殺せる人間に請け負うべきだから
そうね、11thや9thあたりにでも報告しておきなさい
あなたの役目は生き残る事よ。
ポーンは、最後まで歩めばクイーンにもなれるのだから」
折角の運営が用意したシステムを秒で不意にしたんだ。
それ相応の覚悟はしてもらう
「話は以上よ」
【柏木 愛】
「な、なんですかあれは……」
(成長を続ける柏木は、偶々訪れた船着場で呆然。そりゃそうである。豪華客船が航海してるのだから。
明らかに近づいてはいけない何かを放っていたが、好奇心に勝てなかった柏木は、近くのモーターボートに乗り込む。エンジンが無いって設定どこ行った？)
「ここでは何が行われているのでしょうか……社交パーティー？限定じゃんけん？いずれにせよ、確かめずにはいられません！海月ちゃんの死の真相のためにも！」
(船に近づくとNPCが手を貸してくれ、乗船することが出来た。人を探すべく、慣れない場所を歩き回る)
【臨海 凪乃】
景観と自然、殺し合いという牢獄の破壊行為
人間の欲望を乗せる 客船 ドエスポワール
ディスコ ディスコ ﾃﾞｨﾃﾞｨﾃﾞｨﾃﾞｨｽｺ!!!
ミラーボールとネオンに彩られた船内に
けたたましいハイカラな音楽
中では感情のないNPCがまるでバブル期の日本を思わせる
歌や踊りでパリピを盛り上げていたのだった。
シャンパンタワーにシャンパンを流し込み
豪遊。
ただひたすらに豪遊。
椅子に座る臨海は、ペルシャ猫を愛でている。
「あら、また会ったわね」
【柏木 愛】
「……うん……」
(騒がしい場所は、苦手だ。どうあっても自分とは理解し合えない人間たちが蠢き犇く、悪夢のような空間だった。顔を少しだけ歪ませながら、彼女の前に歩いていく。
ツッコミたい部分は枚挙に暇がない)
「え、えーと……これ、凄いですね……。貴方がセッティングしたんですか……？ていうか、何がしたいのですか……？」
【臨海 凪乃】
「いいえまさか……
管理者にお願いしたらいいって言ってたわよ」
少し緩すぎる気はしないでもないが
「私が用意なんてするわけないじゃない
適当な人間にやらせたわよ
SCT…… 飛び降りの自殺があったでしょう?
不謹慎でしかないわ」
自分もあそこから飛び降りたけど。
……で、
「その話でも?」
【柏木 愛】
「飛び降りの、自殺？」
(彼は海月がSCTから転落死したことを知らない。もしやと思い、彼女に詰め寄った)
「それ、もしかして海月ちゃんの事ですか！？彼女、自殺したんですか！？」
【臨海 凪乃】
「あぁ……あなた、小鳥遊ちゃんのお友達だった?
それは残念だったわね……
さぁ……どういうわけか死んだらしいわよ」
それくらいしか知ってることはない
何故飛び降りたかは謎である。
「あの子、結構使える駒だったのに……」
本当に残念だ
猫を撫でながらそう答える。
【柏木 愛】
「……自殺……」
(彼女の言葉に信憑性があるわけではないが、現時点で得られる最も有力な情報だった。
海月が自殺なんてするわけない！などと言えるはずもなかった。大して彼女のことを知らないのだから。
柏木は海月が、やたらと厭世的であったことを思い出した。彼女はとうとう、人生を続けることに耐えられなくなったのだろうか？)
「…………そう……。まぁ、友達だと思ってたのは、俺だけだと思います……。
……臨海さんは、殺しても死ななそうですよね」
【臨海 凪乃】
「死ぬときは死ぬ。 殺されるときは殺される
それは誰だってそうよ。
時に【相手の苗字】君…… 私の駒になってみない？」
シャンパングラス越しに彼を見つめる
【柏木 愛】
(その言葉を聞いて、血の気が引いた。彼女が今発したのは、紛れもなく自分の苗字だったからだ。なぜ彼女がそれを知っている……？
自問して直ぐに、気がつく。そうだ、自分はここに来てから、正体を偽るということを、全くもってしていなかったではないか。
あまりの愚かさに目眩がした。後悔先に立たずとは、まさにこのことである)
「こ、殺さないでください！なんでもしますから！」
(安定の土下座)
【臨海 凪乃】
ルーレット台を回す 出た目は9
思わず蹴ってしまった
もっと面白い数字を出せ！ と言わんばかりに
「あぁ、一応いっておくけれど
ノーキル宣言をするわ。
私はあなたを殺さない。 いいかしら？
絶対に私は殺さない」
私は人を殺したいわけじゃない
そして柏木の目の前に……ナイフを置く
「持っていきなさい。
あなたにはやってもらいたいことがあるの
あと、これも伝えておくわね
私はAzoth よ。 つまり、貴女を必ず生かすことができるわ」
【柏木 愛】
「ひい！」
(ルーレット台の蹴られる激しい音に、ビクリと肩を震わせた。
土下座の姿勢のまま、目の前に投げられたナイフと、彼女の顔を見比べる)
「あ、Azoth……。お、俺がするべきこととは……？」
(本当に彼女がAzothなら、彼女が言っているのはルール3の事だろう。手を貸せば、自分は生かされるというのか？
何にせよ本名を握られてる以上、自分は彼女に協力する他ない。青い顔を震わせながら、自分は何をしなければならないのか、彼女に尋ねた)
【臨海 凪乃】
「別に殺せなんて言わない
あなたに人が殺せないことくらいわかってる
≪3rdの死因を報告しなさい≫
3rdが不審死を遂げている。
あのアナウンスが起こってすぐに死んでいる
行動があまりにも早すぎる……。
私の予想が正しければ……3rdはクロよ」
幾らなんでも、都合がよすぎる。
裏で何かが糸退いてるのは明白だろう
「それとも、13thの撫子ちゃんを殺せ……の方がよかった？
まぁ、何か困ったことがあれば……9thを頼りなさい
きっとあなたの役に立つわよ。
成功報酬は……生と性……どう？
【柏木 愛】
「3rd……ピエロちゃん、ですか……」
(願ってもいない事だった。彼女がなぜ死亡したのか、言われずとも探るつもりだったのだから)
「そ、それならやります！全力でやります！」
(成功報酬にも目が眩んだ)
【臨海 凪乃】
「道化師が多いわね……
道化は仮面の中で笑うって言うけど……
人を殺すよりは簡単な仕事でしょう?
3rdは知り合いみたいね
無理な仕事はさせないつもりなの。なんてホワイトなんでしょう……。
仮に3rdが他殺だったとしても
殺害相手を恨まないことよ……。
殺しは……殺せる人間に請け負うべきだから
そうね、11thや9thあたりにでも報告しておきなさい
あなたの役目は生き残る事よ。
ポーンは、最後まで歩めばクイーンにもなれるのだから」
折角の運営が用意したシステムを秒で不意にしたんだ。
それ相応の覚悟はしてもらう
「話は以上よ」
ソロル集
温暖を望む。 13th
ここまで、一日一人のペースで人が死んでいることになる。
27人いた仲間…のはずだった人達はもう既に24人。残酷なことだ。そう思うのが普通…
「………そんなの今に始まったことでもないかなぁ…」
独り言。誰も聞いていないなんて確証はなかったけど、まぁまず誰も聞いてはいるまい。
次は誰が死んでしまうのか。それは自分かもしれない割には随分とあっさり考えてしまう。何回も届いた死亡通知のせいで慣れてしまったのか。
いやはや、嫌な世界だ。殺したくないとか、クラスメイトのことは信用してるとか言った割にはもう信じていやしない。
「寒いなぁ…」
空気的にも寒いし、他の何かも寒いとは感じていた。何がかなんて言わないが。
さっさとホテルに戻ろ、なんてぼんやり考えつつ、停留所に足を踏み入れるのだった。
27人いた仲間…のはずだった人達はもう既に24人。残酷なことだ。そう思うのが普通…
「………そんなの今に始まったことでもないかなぁ…」
独り言。誰も聞いていないなんて確証はなかったけど、まぁまず誰も聞いてはいるまい。
次は誰が死んでしまうのか。それは自分かもしれない割には随分とあっさり考えてしまう。何回も届いた死亡通知のせいで慣れてしまったのか。
いやはや、嫌な世界だ。殺したくないとか、クラスメイトのことは信用してるとか言った割にはもう信じていやしない。
「寒いなぁ…」
空気的にも寒いし、他の何かも寒いとは感じていた。何がかなんて言わないが。
さっさとホテルに戻ろ、なんてぼんやり考えつつ、停留所に足を踏み入れるのだった。
てのひら会議 9th
『……さて。』
いよいよ、身の振り方というのを深刻に考えるようになった。
殺すか。
生かすか。
その二択についてである。
私は、ホテルに据え置かれた瀟洒な花柄の座椅子に背をあずけ。
どうでもよく置かれていた、ご自由にお使いくださいと銘打たれた紅茶のティーパックで作った、しょうもない、飲んで美味しいただの紅茶を啜りながら。
どうでも良くないことを考える。
殺す、として。
その算段は付いているし、既に動ける状態にある。
アゾートとの連絡さえ付けば。
生かす、として。
それは概ね未知数で。
実に、分が悪い。
なら。
私は、短絡的にジャッジしようとする。
まあ待て。
私が、それを抑える。
私の、前回における殺害数は、実は、大量殺人鬼ぶっておきながら、二人である。片方は、騙し討ち以下のやり口だった。
よって、一人、と換算して良い。
今現在が3人
名前を(一応)持っているのが2人
とある限定条件で確実に消せるであろう相手が1人。
私が戦って…1人。か。
微妙だ。足りるか分からん。
ついでに。
あの剣士をだまくらかしたとして、あと1人くらいだろう。
1stを殺したのは、彼女だと(直接戦闘型に、最も嫌いな奴を聞いたのはこのためであった訳だ)概ね推察出来る。
だから、殺人を"知ってしまっている"。なら、快楽殺人鬼でもないなら、そう何人もは不可能である。
要するに、二人分足りないのだ。
いや、待てよ。
剣士。
ならぬ。
拳士。
拳、に。
武士の士、で。
あの拳士ならば。
或いは、打開し得る可能性があるか？
―――――Yesだ。
最後のエースが、手元にある。
切る時は、切ろうとも。
動く時は大胆に、かつ致命的に。
アドバンテージは取り尽くした。
後は、Goサインがあれば良い。
魔弾の引き金さえ引かれれば。
あの厄介な海月にも。
残るセレスティアにも、狂人にも。最早誰にも止まらない。
生き残りのオッズを、ダークホースとしてひっくり返す。
言うなれば。
第三の女、というところか。
いよいよ、身の振り方というのを深刻に考えるようになった。
殺すか。
生かすか。
その二択についてである。
私は、ホテルに据え置かれた瀟洒な花柄の座椅子に背をあずけ。
どうでもよく置かれていた、ご自由にお使いくださいと銘打たれた紅茶のティーパックで作った、しょうもない、飲んで美味しいただの紅茶を啜りながら。
どうでも良くないことを考える。
殺す、として。
その算段は付いているし、既に動ける状態にある。
アゾートとの連絡さえ付けば。
生かす、として。
それは概ね未知数で。
実に、分が悪い。
なら。
私は、短絡的にジャッジしようとする。
まあ待て。
私が、それを抑える。
私の、前回における殺害数は、実は、大量殺人鬼ぶっておきながら、二人である。片方は、騙し討ち以下のやり口だった。
よって、一人、と換算して良い。
今現在が3人
名前を(一応)持っているのが2人
とある限定条件で確実に消せるであろう相手が1人。
私が戦って…1人。か。
微妙だ。足りるか分からん。
ついでに。
あの剣士をだまくらかしたとして、あと1人くらいだろう。
1stを殺したのは、彼女だと(直接戦闘型に、最も嫌いな奴を聞いたのはこのためであった訳だ)概ね推察出来る。
だから、殺人を"知ってしまっている"。なら、快楽殺人鬼でもないなら、そう何人もは不可能である。
要するに、二人分足りないのだ。
いや、待てよ。
剣士。
ならぬ。
拳士。
拳、に。
武士の士、で。
あの拳士ならば。
或いは、打開し得る可能性があるか？
―――――Yesだ。
最後のエースが、手元にある。
切る時は、切ろうとも。
動く時は大胆に、かつ致命的に。
アドバンテージは取り尽くした。
後は、Goサインがあれば良い。
魔弾の引き金さえ引かれれば。
あの厄介な海月にも。
残るセレスティアにも、狂人にも。最早誰にも止まらない。
生き残りのオッズを、ダークホースとしてひっくり返す。
言うなれば。
第三の女、というところか。
道化師の概念 3rd
ロティが立ち去った後も道化師はまだ湯に浸かっていた。真っ白な雪景色を眺めながら…道化師は静かに溜め息を吐く。
「……皆、変わっていくなぁ」
それなのに、私は何も変わらない。
これは良いことなのか、悪いことなのか…。私にはわからない。
「…ははっ、今回は記憶残りそう」
どうやらこの体は人並みにはアルコールの態勢があったようだ。いや、それとも…呑気なことを言いながら『酔ってる暇はない』と理解してたのかな？なーんで、酔うはずのもので意識がハッキリとするのか…。
あれか、いい加減現実を見ろと？
「ふざけないでよ…ばーかっ」
ジャボン！と、音を立てて湯に潜り一分ほど息を止めながら思考する。
(水面に映るは…幻想みたいな風景なのに現実はいつも非情で生きている一人の人間なんかを見てくれない。
私は──道化師でありピエロだ。
これから私はどうなるのかな。
いや、悩むまでもなく死ぬだろうね。)
道化は道化らしく、叶いもしない願望を抱いたまま沈む(死ぬ)んだろうな。このままだと間違いなく。
「…あーぁ、あれが嘘じゃなくて本当のことだったらよかったのになぁ」
友好関係を深めれば、帰れる。あれが嘘でなければどれほど幸せだったんだろうね。ホント、現実って非情だよ。
(もう少しだけ風呂に浸かっていよう…)
─── 尚、道化師が風呂から上がるのはこの二時間後のことであった。
「……皆、変わっていくなぁ」
それなのに、私は何も変わらない。
これは良いことなのか、悪いことなのか…。私にはわからない。
「…ははっ、今回は記憶残りそう」
どうやらこの体は人並みにはアルコールの態勢があったようだ。いや、それとも…呑気なことを言いながら『酔ってる暇はない』と理解してたのかな？なーんで、酔うはずのもので意識がハッキリとするのか…。
あれか、いい加減現実を見ろと？
「ふざけないでよ…ばーかっ」
ジャボン！と、音を立てて湯に潜り一分ほど息を止めながら思考する。
(水面に映るは…幻想みたいな風景なのに現実はいつも非情で生きている一人の人間なんかを見てくれない。
私は──道化師でありピエロだ。
これから私はどうなるのかな。
いや、悩むまでもなく死ぬだろうね。)
道化は道化らしく、叶いもしない願望を抱いたまま沈む(死ぬ)んだろうな。このままだと間違いなく。
「…あーぁ、あれが嘘じゃなくて本当のことだったらよかったのになぁ」
友好関係を深めれば、帰れる。あれが嘘でなければどれほど幸せだったんだろうね。ホント、現実って非情だよ。
(もう少しだけ風呂に浸かっていよう…)
─── 尚、道化師が風呂から上がるのはこの二時間後のことであった。
疑問視 9th
取り敢えず生き残る、というのが当座の私の目標である。
まあ、私は考え方をすぐ変えるので、これだって本当かはわからなかったりするが。
そもそも何もかも嘘かもしれなかったりするのだが。
一応の難敵が死に、取り敢えず余裕がある程度出たのは確かだ。
だから。
やるべき罪滅ぼしをしよう。
その為に死ぬなら良いじゃないか。いや、良くはないのだが。
良くはないし。
死にたくもないが。
命懸けの努力、というのはしても良いのではないかと考える。
まあ。なんだ？
別に、前回を引きずってこれをする訳では無い。
なんで私が、と泣いた少女を思い出したりなんてしていないし、あの悲劇が人を壊すと良く知るから、それを少なからず救おうなんて思ったりはしていない。
かもしれない。
最終的な勝者になるフェイズは必ず来るから、それまでの暇つぶしである。勘違いするな。
お前達の為じゃない。
なんて、最近の潮流に乗ってみたりしたのかもしれないし。
最初からこれを心のどこかで願っていたりしたのかもしれない。
なんて悲しいくらい嘘くさいか。
まあ、私は考え方をすぐ変えるので、これだって本当かはわからなかったりするが。
そもそも何もかも嘘かもしれなかったりするのだが。
一応の難敵が死に、取り敢えず余裕がある程度出たのは確かだ。
だから。
やるべき罪滅ぼしをしよう。
その為に死ぬなら良いじゃないか。いや、良くはないのだが。
良くはないし。
死にたくもないが。
命懸けの努力、というのはしても良いのではないかと考える。
まあ。なんだ？
別に、前回を引きずってこれをする訳では無い。
なんで私が、と泣いた少女を思い出したりなんてしていないし、あの悲劇が人を壊すと良く知るから、それを少なからず救おうなんて思ったりはしていない。
かもしれない。
最終的な勝者になるフェイズは必ず来るから、それまでの暇つぶしである。勘違いするな。
お前達の為じゃない。
なんて、最近の潮流に乗ってみたりしたのかもしれないし。
最初からこれを心のどこかで願っていたりしたのかもしれない。
なんて悲しいくらい嘘くさいか。
愛の意味 20th
海月が死んだ。それは、予測できない一瞬の出来事。…分からなかった。だって狂人の考えることなんてわからないもの。でも。
予想はしてた気がする。あいつがあえて、私を呼び出した時から。なんとなく。何かをやるって。
――ああ、そうだね。でも安心して。君にそれを背負わせるつもりは無いから。
…わかってる。もう私は“壊れかけ”だから。
――無理を言って直した仮面だ。“あの時だけ”は持ったけれども。…今回はさすがに強すぎた。
…知ってる。だから。
――うん。わかってる。
…あとはお願い。
――あとは任せて。
外した狐面を眺める。ああ、あの人は素直の意味を最後までわかっていなかった。私が素直になるのは“私”だけ。だから。
私は、私の欲望を満たすために嘘をつくことは構わないもの。
…ああ、でも。一つだけ。一つだけ私の行動を遮るものがある。それは。
｢…本当に、やってくれたよ。…海月お姉ちゃん。｣
…なら、こころも頑張らないとね？
滲む視界に見えるのは、希望だろうか。それとも、ただの絶望だろうか。
いいや、そこに残ってるのは、ただの“真実”だけだ。…その2つを決めるのは。…今を生きるこころ達だけ。…そうでしょう？
｢…愛してる、か。…わからないなぁ｣
予想はしてた気がする。あいつがあえて、私を呼び出した時から。なんとなく。何かをやるって。
――ああ、そうだね。でも安心して。君にそれを背負わせるつもりは無いから。
…わかってる。もう私は“壊れかけ”だから。
――無理を言って直した仮面だ。“あの時だけ”は持ったけれども。…今回はさすがに強すぎた。
…知ってる。だから。
――うん。わかってる。
…あとはお願い。
――あとは任せて。
外した狐面を眺める。ああ、あの人は素直の意味を最後までわかっていなかった。私が素直になるのは“私”だけ。だから。
私は、私の欲望を満たすために嘘をつくことは構わないもの。
…ああ、でも。一つだけ。一つだけ私の行動を遮るものがある。それは。
｢…本当に、やってくれたよ。…海月お姉ちゃん。｣
…なら、こころも頑張らないとね？
滲む視界に見えるのは、希望だろうか。それとも、ただの絶望だろうか。
いいや、そこに残ってるのは、ただの“真実”だけだ。…その2つを決めるのは。…今を生きるこころ達だけ。…そうでしょう？
｢…愛してる、か。…わからないなぁ｣
理解とは別物の 5th
柏木と別れて数十分経った頃だろうか。船から降りてそろそろ帰ろうと歩き出した途端に届いたメール。足を止めてメールを開くと、そこに写っていた人物に思わず端末を取り落としそうになる。
「……………………」
何度も読み返した。
何度も読み返した。
何度読み返しても駄目だった。
頭の中からすり抜けていく。何度文章を読んでも目が滑るようで頭が上手く認識しない。先ほどの柏木もこんな心地だったのだろう、でも今の自分に縋れる相手は居ない。
自分で立ち直らなくては。
そうは思うのに指先は震え、頭からすうっと血が引いていく。頬を撫でていく冷風すら冷たいと感じない。感覚が鈍っている錯覚に陥る。完全に脳がパニックを起こしていた。喉がひくついて上手く呼吸が出来ない。頭の中では先ほど船で見た文字列がくっきりと浮かんでいた。自分をあざ笑うように、焼け付かせるように、痛いくらいに分からせようとしてくる。
―――『わすれるな きみのだいじなひと ここにいる』
大切な人。大切なあの人。私の命より価値あるあの人が、ここにいる。
小さく頭を振った。端末を握り締めて、一歩、一歩、また一歩…歩みの感覚は狭まり、いつしか早歩きになって、やがて宛てもないのに走り出していた。体力のない体ではそう長く走れないことなど火を見るより明らかであったが、そんな無謀に身を投じてしまうほど今の彼は冷静さを欠いていた。呼吸に混じる声が嗚咽のようで、それでも焦りと恐怖に涙も出ない。
持久力のない足が縺れ、雪の積もっていないアスファルトの上に転ぶ。端末は音を立てて転がって、手のひらや走って乱れた着物から覗く脛には擦り傷が出来て見る見るうちに赤くなっていく。白魚のような足を伝ってアスファルトに赤い斑を落とすと、肩で息をしながら深く俯いた。
ずきずきとした痛みが、少しずつ自分を冷静にしていく。
「……どうして、いつも、あの人ばかり…」
溢された涙声は淀んだアスファルトに吸い込まれていった。ショックと怪我で座り込んだ体は暫く動けそうにない。それでも、自分の足で立たなくては…自分と同じように、生き残った参加者全員が誰か大切な人を人質に取られているのだ。こんな場所で無防備にしているのは、自分が格好の餌食であると大声で宣伝しているようなものだ。
分かっては、いる。
分かっては、いるのだ。そんなことは。
「……………………」
何度も読み返した。
何度も読み返した。
何度読み返しても駄目だった。
頭の中からすり抜けていく。何度文章を読んでも目が滑るようで頭が上手く認識しない。先ほどの柏木もこんな心地だったのだろう、でも今の自分に縋れる相手は居ない。
自分で立ち直らなくては。
そうは思うのに指先は震え、頭からすうっと血が引いていく。頬を撫でていく冷風すら冷たいと感じない。感覚が鈍っている錯覚に陥る。完全に脳がパニックを起こしていた。喉がひくついて上手く呼吸が出来ない。頭の中では先ほど船で見た文字列がくっきりと浮かんでいた。自分をあざ笑うように、焼け付かせるように、痛いくらいに分からせようとしてくる。
―――『わすれるな きみのだいじなひと ここにいる』
大切な人。大切なあの人。私の命より価値あるあの人が、ここにいる。
小さく頭を振った。端末を握り締めて、一歩、一歩、また一歩…歩みの感覚は狭まり、いつしか早歩きになって、やがて宛てもないのに走り出していた。体力のない体ではそう長く走れないことなど火を見るより明らかであったが、そんな無謀に身を投じてしまうほど今の彼は冷静さを欠いていた。呼吸に混じる声が嗚咽のようで、それでも焦りと恐怖に涙も出ない。
持久力のない足が縺れ、雪の積もっていないアスファルトの上に転ぶ。端末は音を立てて転がって、手のひらや走って乱れた着物から覗く脛には擦り傷が出来て見る見るうちに赤くなっていく。白魚のような足を伝ってアスファルトに赤い斑を落とすと、肩で息をしながら深く俯いた。
ずきずきとした痛みが、少しずつ自分を冷静にしていく。
「……どうして、いつも、あの人ばかり…」
溢された涙声は淀んだアスファルトに吸い込まれていった。ショックと怪我で座り込んだ体は暫く動けそうにない。それでも、自分の足で立たなくては…自分と同じように、生き残った参加者全員が誰か大切な人を人質に取られているのだ。こんな場所で無防備にしているのは、自分が格好の餌食であると大声で宣伝しているようなものだ。
分かっては、いる。
分かっては、いるのだ。そんなことは。
もう一歩だけ 9th
まあ要は、策とはペテンである。
私の手にかかって死んだ事にしてしまえば、容易いわけだ。
同盟の維持も。
アゾートの探知も。
別に、なりすましは構わない。
というか、望むところだ。
何のためにアゾート(自称)と組んだと思っている。炙りだすには格好の餌ではないか。
……さて。
まあ、色々あって。
詐欺という私の伝家の宝刀を抜かずに済むらしく重畳だが。
そろそろ報いでも受けた方が良いのだろうか。
バチが当たるかもな。
だが、神も仏もあるものか。
神も仏も無い中、血も涙もないのが私である。
人でなしの度合いで言ったら、私は人外より人でなしだ。
さて。
アゾートは罠だとは思うだろうが、動かざるを得まい。
私の名前を握ってくれている事だろう。近いうちには。
なら。
ならば。
また一手、進めるか。
私の手にかかって死んだ事にしてしまえば、容易いわけだ。
同盟の維持も。
アゾートの探知も。
別に、なりすましは構わない。
というか、望むところだ。
何のためにアゾート(自称)と組んだと思っている。炙りだすには格好の餌ではないか。
……さて。
まあ、色々あって。
詐欺という私の伝家の宝刀を抜かずに済むらしく重畳だが。
そろそろ報いでも受けた方が良いのだろうか。
バチが当たるかもな。
だが、神も仏もあるものか。
神も仏も無い中、血も涙もないのが私である。
人でなしの度合いで言ったら、私は人外より人でなしだ。
さて。
アゾートは罠だとは思うだろうが、動かざるを得まい。
私の名前を握ってくれている事だろう。近いうちには。
なら。
ならば。
また一手、進めるか。
彼女に手が届かない 26th
ずっと、眠っていた気がした。重たくて…逃げたくて。逃げられなくて立ち止まった。ずっと、暗かった。
「あはは」
暗かったけれど、仕方がなかった。小さいぼくはうずくまって泣いていた。「いたいよ、父さん」と笑っていた。きっと壊れた子供だった。
ぼくを殴りつける父さんは「愛していたのにどうして」と顔を真っ赤にして泣いた。お母さんに置いてかれて父さんは優しかった父さんじゃなくなった。
「あははは」
あの子が家に来たのは半年くらいたった頃。また、新しいお母さんがきた。また、【しあわせ】がかえってきた、そう思ったけど、いらないのもいた。
…あの子だ。
お母さんと父さんに愛されてるあの子。愛せなかったぼくは異常だった。異質な存在だった。愛さないと"いけなかった"
「可愛いりぃちゃんに早く学校から帰ってきて遊びたいよな？そうだよな？」
「はい」
「良い子だ」
りぃちゃんはぼくの事を笑顔で「おにいちゃん」って呼んだ。父さんはぼくがりぃちゃんを愛せてないってしると父さんは【愛】をいっぱいくれた。痛いけど、口をずっと閉じてて静かにしてると良い子だって誉められるんだ。うれしい。
りぃちゃんはぼくを見ててくれた。お母さんはぼくが見えないみたい。
「りぃちゃんは凄い可愛い」
「りぃちゃんはぼくの生きる全て」
「りぃちゃん、りぃちゃんは…りぃちゃんが望んだら、全て叶えなくちゃ」
だって、りぃちゃんがいなかったらぼくは此処にいれないから。
ふわっと体が軽くなった気がして目をあけた。昔の夢を見ていた気がする。辺りを見渡すと、いや、
「…あれ？」
手だ。人間の手。黒い毛むくじゃらな体じゃなくなってる事に気づき、猫頭を触る感覚で頭に触れる。
人間の肌。ヒヤリとした。生きてる？ここは？りぃちゃんは？
頭がくるくるぐるぐる回る。わからない、わからない。なにも頭で考えられない。真っ白だ。それでも声はでた。
「行かなくちゃ」
その声がでたと同じに体が勝手に走り出した。体はいく場所がわかっているように…
道をぐねぐねと曲がりなにも無いところについた。そこに１人…ぼくの愛しい人が
「りぃちゃん」
泣いていた。
「クソヤロ…じゃん」
りぃちゃんの下には黒焦げた何かが落ちている。りぃちゃんが悲しんでるなんで？泣いるの？分かんないな？りぃちゃん泣いたことなかったのに。
「りぃちゃん？りぃちゃ」
「うっせーよ！黙れよっ！置いてったクソヤローがよ！もうお前なんて、お前なんて嫌いだ！！！」
こちらをキッと睨み付けりぃちゃんは大声で叫び走り去っていった。
「…？分かんないなぁ…ん？あれ？なんで？ここの気色…なんか見たことあ…。違うなりぃちゃんはぼくを嫌いって言わない。りぃちゃんは泣いたりしないし、あれ？じゃあ猫みたいなキグルミだったのは…？」
ああ、そうか
「夢だ。そうか！夢だったんだ！プラネタリウム見てたのも、秘湯のお化けもナメックセイジンのあの子も…ボクの妄想なのか。こうなったらいいなっていう」
「でも、りぃちゃんが泣く夢はなんか…やだなぁ」
ボクは黒焦げの何かにムカつきを覚え踏みつけた。始めて泣いたのが、りぃちゃんを泣かしたのがこの黒焦げかも知れないと思って。
「あはは」
ガンガンと踏みつけた。気は収まらなかった、けど何か。忘れている気がしてもどかしい気分になる。
ぐわんと視界がぼやけてああ、もう一度寝ようと目を閉じた。きっと、ボクは眠いんだ。
「あはは」
暗かったけれど、仕方がなかった。小さいぼくはうずくまって泣いていた。「いたいよ、父さん」と笑っていた。きっと壊れた子供だった。
ぼくを殴りつける父さんは「愛していたのにどうして」と顔を真っ赤にして泣いた。お母さんに置いてかれて父さんは優しかった父さんじゃなくなった。
「あははは」
あの子が家に来たのは半年くらいたった頃。また、新しいお母さんがきた。また、【しあわせ】がかえってきた、そう思ったけど、いらないのもいた。
…あの子だ。
お母さんと父さんに愛されてるあの子。愛せなかったぼくは異常だった。異質な存在だった。愛さないと"いけなかった"
「可愛いりぃちゃんに早く学校から帰ってきて遊びたいよな？そうだよな？」
「はい」
「良い子だ」
りぃちゃんはぼくの事を笑顔で「おにいちゃん」って呼んだ。父さんはぼくがりぃちゃんを愛せてないってしると父さんは【愛】をいっぱいくれた。痛いけど、口をずっと閉じてて静かにしてると良い子だって誉められるんだ。うれしい。
りぃちゃんはぼくを見ててくれた。お母さんはぼくが見えないみたい。
「りぃちゃんは凄い可愛い」
「りぃちゃんはぼくの生きる全て」
「りぃちゃん、りぃちゃんは…りぃちゃんが望んだら、全て叶えなくちゃ」
だって、りぃちゃんがいなかったらぼくは此処にいれないから。
ふわっと体が軽くなった気がして目をあけた。昔の夢を見ていた気がする。辺りを見渡すと、いや、
「…あれ？」
手だ。人間の手。黒い毛むくじゃらな体じゃなくなってる事に気づき、猫頭を触る感覚で頭に触れる。
人間の肌。ヒヤリとした。生きてる？ここは？りぃちゃんは？
頭がくるくるぐるぐる回る。わからない、わからない。なにも頭で考えられない。真っ白だ。それでも声はでた。
「行かなくちゃ」
その声がでたと同じに体が勝手に走り出した。体はいく場所がわかっているように…
道をぐねぐねと曲がりなにも無いところについた。そこに１人…ぼくの愛しい人が
「りぃちゃん」
泣いていた。
「クソヤロ…じゃん」
りぃちゃんの下には黒焦げた何かが落ちている。りぃちゃんが悲しんでるなんで？泣いるの？分かんないな？りぃちゃん泣いたことなかったのに。
「りぃちゃん？りぃちゃ」
「うっせーよ！黙れよっ！置いてったクソヤローがよ！もうお前なんて、お前なんて嫌いだ！！！」
こちらをキッと睨み付けりぃちゃんは大声で叫び走り去っていった。
「…？分かんないなぁ…ん？あれ？なんで？ここの気色…なんか見たことあ…。違うなりぃちゃんはぼくを嫌いって言わない。りぃちゃんは泣いたりしないし、あれ？じゃあ猫みたいなキグルミだったのは…？」
ああ、そうか
「夢だ。そうか！夢だったんだ！プラネタリウム見てたのも、秘湯のお化けもナメックセイジンのあの子も…ボクの妄想なのか。こうなったらいいなっていう」
「でも、りぃちゃんが泣く夢はなんか…やだなぁ」
ボクは黒焦げの何かにムカつきを覚え踏みつけた。始めて泣いたのが、りぃちゃんを泣かしたのがこの黒焦げかも知れないと思って。
「あはは」
ガンガンと踏みつけた。気は収まらなかった、けど何か。忘れている気がしてもどかしい気分になる。
ぐわんと視界がぼやけてああ、もう一度寝ようと目を閉じた。きっと、ボクは眠いんだ。
死んでも出来る事 3rd
ふと、目が覚めた。
辺りを見渡し、私はさっきまで何をしていたんだっけ？と首をかしげる。此処は公園。既に日が昇っているから、いつのまにか寝てたのかな…？
(いや、違う)
私が無防備に外で寝るはずがない…。
意識を失う前、私は何を───…って、あぁ、そうだ。私は死んだんだっけね。すっかり忘れるところだった。
地面に転がったコロパットが写し出す、私の死亡アナウンス。よかった…瀕死の状態で放置されたわけでもないらしい。
(これでひとまず人質が殺されることはなくなったね。また、同じことが起きないとも限らないけど…)
───さて、死んだ私はこれから何処へ行こうか。生前と変わらず適当に歩き回るのが最善かな。動かないでこの場にいたらなにも始まらないし。
私は公園から立ち去る。
そして、公園に残されたものは…夜を越えてしまったが故に凍りついてしまったピクニックをしていた証拠だけだった。
辺りを見渡し、私はさっきまで何をしていたんだっけ？と首をかしげる。此処は公園。既に日が昇っているから、いつのまにか寝てたのかな…？
(いや、違う)
私が無防備に外で寝るはずがない…。
意識を失う前、私は何を───…って、あぁ、そうだ。私は死んだんだっけね。すっかり忘れるところだった。
地面に転がったコロパットが写し出す、私の死亡アナウンス。よかった…瀕死の状態で放置されたわけでもないらしい。
(これでひとまず人質が殺されることはなくなったね。また、同じことが起きないとも限らないけど…)
───さて、死んだ私はこれから何処へ行こうか。生前と変わらず適当に歩き回るのが最善かな。動かないでこの場にいたらなにも始まらないし。
私は公園から立ち去る。
そして、公園に残されたものは…夜を越えてしまったが故に凍りついてしまったピクニックをしていた証拠だけだった。
こころの意図 20th
｢……｣
1人誰もいない商店街を歩く。…ああ、また人がいなくなった。“無意味”になった。
私にとってそれは。とても悲しいことだと思う。…多分ね。
ああ、だめだ。思考をまとめないと。なんだか、手遅れになってしまいそうで。それは、きっと気の所為だろうけど。…今まで出した自分は“表”。…さて、そろそろだろうね。
自分の欲に正直に。それが今の私だった。…でも、一つだけ。“気付かないふり”をしてる欲がある。それは、私が願ったことだから。それを無視し続けて、壊れかけてしまったから。…だから、適度に。適当に。適切に。…昇華しないといけないから。
｢そろそろ、裏を出してもいいのかな。｣
そういってクスリと笑う。…別に戻ったわけじゃない。ただ、先に進めるだけ。1歩中にある黒いものを、取り出すだけ。
…無意味、なものなんて要らないから。悪趣味な人が作ったものなんて嫌いだから。だから、私は。
…無意味なものに、意味を持たせよう。
｢さぁ、はじめよっか♪｣
楽しみだなぁ…ああ、本当に、あいごころ。は。“こころは悪趣味だ”。
1人誰もいない商店街を歩く。…ああ、また人がいなくなった。“無意味”になった。
私にとってそれは。とても悲しいことだと思う。…多分ね。
ああ、だめだ。思考をまとめないと。なんだか、手遅れになってしまいそうで。それは、きっと気の所為だろうけど。…今まで出した自分は“表”。…さて、そろそろだろうね。
自分の欲に正直に。それが今の私だった。…でも、一つだけ。“気付かないふり”をしてる欲がある。それは、私が願ったことだから。それを無視し続けて、壊れかけてしまったから。…だから、適度に。適当に。適切に。…昇華しないといけないから。
｢そろそろ、裏を出してもいいのかな。｣
そういってクスリと笑う。…別に戻ったわけじゃない。ただ、先に進めるだけ。1歩中にある黒いものを、取り出すだけ。
…無意味、なものなんて要らないから。悪趣味な人が作ったものなんて嫌いだから。だから、私は。
…無意味なものに、意味を持たせよう。
｢さぁ、はじめよっか♪｣
楽しみだなぁ…ああ、本当に、あいごころ。は。“こころは悪趣味だ”。
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